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ファインマンさんは超天才: C.サイクス

ファインマンさんは超天才:C.サイクス

内容紹介
誰も解けなかった問題をわずか二時間で解いてしまう。三つの難問を同時にこなしてしまう。ファインマンさんの頭脳は冴えわたり、とどまるところを知らない。並みの天才ではなく、まさに超天才。学者としても人間としても型破りで愉快な「魔術師」ファインマンの素顔が、仲間の科学者、家族や友人によって語られる。もちろん本人へのインタビューもふんだんに盛り込まれている。インタビューと写真で傑出した科学者の個性が浮き彫りにされる。2012年4月刊行。


理数系書籍のレビュー記事は本書で250冊目。

明日、5月11日のファインマン先生の誕生日を意識して読んでみた1冊。2012年4月に刊行された。この本が出版されていたのは知っていたが、タイトルが安っぽくて気に入らなかったから注文するには至っていなかった。原題は「No Ordinary Genius」。直訳すれば「並の天才にあらず」ということになる。でもこれでは本のタイトルとしてはふさわしくない。自分なら次のようなタイトルにすると思う。

「天才を超えていたファインマンさん」
「破格の天才、ファインマンさん」
「型破りな天才、ファインマンさん」


インターネットやSNSが発達したおかげで目だってしまうのかもしれないけれども、日ごろ新聞やニュースで報じられる出来事はため息が出るものがほとんどだ。元気がよいのはせいぜいスポーツニュースくらいに思えてしまう。

国家レベルから個人レベルまで、過去の失敗に学ぶこともなく、科学や技術が進歩して便利になっても相変わらず人間は間違いばかり繰り返している。日本や世界はこの先どうなってしまうのだろうと思わずにはいられない。

そのような暗澹たる思いにとらわれてしまったときは、ぜひファインマン先生の著書を読んでほしい。目からうろこが落ちるようなエピソードをドキドキ、ワクワクながら読んでいるうちにもやもやが晴れてスッキリした気分になれるはずだ。


ファインマン先生ほど物理学を、そして人生を楽しみ、そのワクワク感を周りの人に広めた人を僕は他に知らない。そして先生の型破りな天才ぶりは先日の「ファインマン先生の自伝本と講演本」という記事で紹介した最初の3冊でじゅうぶん伝わってくる。自分もファインマン先生のように楽しく生きられたらどんなに素晴らしいだろうかと感化される。

ファインマン先生の科学に対する姿勢や考え方を知ると、日頃僕らがテレビで見聞きしている「サイエンス」や学校で学んでいる理科や科学がどれだけ表面的で知恵の浅いものなのかということがわかってしまうのだ。

身の回りの謎を解明していくのはこんなにワクワクすることなのか!そして自分で解明できなくても学ぶということはこんなに楽しいことなのか!ファインマン先生の愉快な語りは、僕たちにそのことを気がつかせてくれる。

前回紹介した3冊でじゅうぶんそのことが伝わるのならば、本書を読む意味はどこにあるのだろうか?章立てを見ると、これまでの本と内容がかぶっている。


著者はクリストファー・サイクスというドキュメンタリー映画のプロデューサーである。1954年イギリス生まれ。オックスフォード大学で英文学を学び、卒業後はBBCテレビ科学部門で資料調査員、監督、プロデューサーを務め、1983年に独立して現在に至っている。

本書を読む意味をひとことで言えば、ファインマン先生の素晴らしい生き方を再確認するための本だということである。著者が先生ご自身とご家族をはじめ、先生に直接感化された同僚や友人たちにインタビューをしてまとめたのが本書だ。そしてファインマン先生自身の発言と活躍を紹介するとともに、それを目の当たりにした人たちによる貴重な証言をまとめたものである。だからこれまでの本と内容がかぶっていたとしても、それは周囲の視点から見た話であり、これまで知らなかった事実、新しい発見がある。特にスペースシャトル爆発事故原因究明の話の中で元空軍大将クティナの明かしたことはファインマン先生も後になって知った事実だ。

先生の妹さんも物理学者だったこと、息子さんがコンピュータ学者であることも僕は本書で知った。先生とかかわりをもった物理学者も一流の人たちがほとんど。専門の立場から見ても問題に対するファインマン先生の発想や解決手法は驚異的なものだった。そして同僚からだけでなく、先生はかかわったさまざまな職業の人たちから慕われていたことがよくわかるのだ。

次のような人たちがファインマン先生の思い出を語っている。

カール・ファインマン(コンピュータ学者、リチャードの息子)
ジョーン・ファインマン(物理学者、リチャードの妹)
ミシェル・ファインマン(写真家、リチャードの娘)
ハンス・A・ベーテ(物理学者)
フォースティン・ブレイ(音楽家)
リチャード・デービス(物理学者)
フリーマン・ダイソン(物理学者)
エドワード・フレドキン(物理学者)
デービッド・L・グッドスティーン(物理学者)
アルバート・R・ヒッブス(物理学者)
W・ダニエル・ヒリス(コンピュータ学者)
ドナルド・J・クティナ(元空軍大将)
キャスリーン・マックアルパイン-マイヤーズ(教師、画家のモデル)
マービン・ミンスキー(コンピュータ学者)
リチャード・シャーマン(物理学者)
トム・ヴァン・サント(画家)
ジョン・アーチボルド・ホイーラー(物理学者)
ジラヤー・ゾーシアン(画家)


あと本書がお勧めなのは写真がたくさん載っているところだ。幼少期から晩年までのファインマン先生はもちろん、ご両親、兄弟や奥様の写真、著名な物理学者の先生方の若いころの写真など。これほどの数の写真が見れるのは本書以外にはないと思う。

どの章も読み応えがあり、期待が裏切られることはなかった。特に感動したのは先生がお亡くなりになるまでのことを書いた最終章。以前「ファインマン計算機科学:ファインマン, A.ヘイ, R.アレン」という記事の最後で、亡くなる間際の昏睡状態の中、先生らしさを貫かれていたことを紹介したが、それだけではなかったことが本書で明かされていた。まさに死んでいくその最中に先生はもうひとつやってのけていたのだ。

ネタバレになるのでここでは明かさないが、それはあまりにも先生らしい行為で僕はふたたび胸をうたれた。先生は生き方をワクワクさせる秘訣だけでなく、死ぬとはどういうことかを看取っていた人たちに伝えていたのだ。

本書のタイトル「No Ordinary Genius」は、先生が物理学者としてだけでなく、生きることや死ぬことについても天才だったことを意味しているのだと僕は思った。

それがどういうことかはぜひ本書をお読みになり、知っていただきたい。


ファインマンさんは超天才:C.サイクス
No Ordinary Genius: The Illustrated Richard Feynman:C.Sykes

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Richard Feynman - No Ordinary Genius



関連記事:

ファインマン先生の自伝本と講演本
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9bf47cf51085c74caf34a11068a17285

ファインマンさんの流儀:ローレンス M.クラウス著、吉田三知世訳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9ec9faa4bd78881bd1986bf7773cc390

ファインマン物理学: 英語版とフランス語版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1dbcd1e1b02616ef1363ced99a912072

ファインマン物理学(英語版)が全巻ネット公開されました。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e94dd49d7d8cc395e29d37927e30173d

The Feynman Lectures on Physics: The New Millennium Edition
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cb58141ade509fb63952d49ef57c70c7

ファインマンの経路積分に入門しよう!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f47de5854daf4eb38339a73791544a8

量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2b9d934a542cf04be54cbede8b16ecde

ファインマン計算機科学:ファインマン, A.ヘイ, R.アレン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4f7f453019fd463ed2bfdeaa7b288d79


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まえがき

1:ものごとをつきとめる楽しみ
2:爆弾と愛と
3:ノーベル賞をしとめる方法
4:トップレス・バーほか 楽しく生きる方法
5:想像してごらん!
6:物理をする
7:途方もないアイデア 細かい字と巨大なコンピュータ
8:チャレンジャー
9:タンヌ・トゥーバを求めて
10:死ぬこと

写真出典
訳者あとがき
解説 ファインマンとドラムを打つ ラルフ・レイトン

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