左から:CASIO fx-10 (1974)、fx-15 (1975)、fx-19 (1976)
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あいかわらず僕の電卓集めは続いている。
今日は1970年代にタイムトラベルしてみることにしよう。当時発売された関数電卓3機種の話である。
日本で初めて関数電卓が発売されたのは1972年のこと。CASIO fx-1という卓上型電卓だ。(参考ページ)当時の大卒初任給は8万2600円だったが、この電卓は32万5千円もしたので普通の学生や社会人にはというてい買うことができない。卓上型ではその後、廉価版のfx-2 (1972)やfx-3 (1975)が発売された。
庶民が関数電卓を手にすることができたのはその2年後、1974年のことであった。日本初のポケット関数電卓CASIO fx-10である。価格は24,800円。10関数内蔵で単三電池4本で動作する。(この電卓の詳細は関数電卓博物館のこのページで確認できる。)
ただfx-10は価格を抑えるためにfx-1よりも機能を落とし、次のようなことが犠牲になっていた。(fx-1は16関数内蔵だったがfx-10は10関数しかない。)
- メモリー機能がない。
- 冪乗計算の冪数は自然数のみ。(複利計算の年が自然数の場合のみ)
- 三角関数の逆関数は計算できない。
- 三角関数や指数関数の有効桁数(精度)は6桁。
この電卓の登場によって科学者や技術者たちはそれまで使ってきた機械式計算機や計算尺を使わずにすむようになったのだ。
犠牲になった最初の3つの問題を解決する形で翌年発売されたのがfx-15だ。価格は16,500円と安くなった。(大卒初任給:9万1300円 )日本で初めてのメモリー付き関数電卓である。そのほかにも次の機能強化がなされている。科学計算用電卓としては必須の機能だ。
- 数値の指数表示やその計算ができるようになった。(10のマイナス99からプラス99乗まで)つまり、[EXP]キーがついた。
そしてその翌年の1976年にはfx-19が発売された。価格は9,800円。(大卒初任給:9万4300円 )これなら学生でも買うことができる。そしてこの電卓の目玉は「世界初の分数計算機能、統計計算機能つきの関数電卓」だったのだ。次のような機能アップが行われている。
- 分数計算ができるようになった。
- 標準偏差をはじめとする統計計算機能が備わった。
- 三角関数と指数関数の有効桁数が8桁になった。
- 三角関数のための角度の単位を選択できるようになった。(DEG、RAD,GRAD)
fx-10の発売からたった2年で関数電卓はこのような進化を遂げたのだ。この時代は電卓に限らず次々に登場する新製品に驚かされ、(僕は小学生だったが)大人たちは便利になっていく生活を実感し、仕事と子育てに忙殺されながらも実体が伴う経済成長を日々感じることができていた。
電卓の計算速度はこの3機種だけをとってみても大きく向上している。次の動画でみていただきたい。
CASIO fx-10での計算例:
1)355÷113を計算。(円周率の近似値)
2)sin 30°を計算。
3)cos 30°を計算。
4)tan 30°を計算。
5)指数関数 e^1 を計算し、その逆関数 ln で元の1に戻るか確認。
6)log 2を計算。(底は10)
7)2の平方根を計算し、2乗して2に戻るか確認。
8)2の立方根を計算し、その結果を3乗して2に戻るかを確認。
CASIO fx-15での計算例:
1)sin 35°を計算し、その逆(arcsin)を計算して35°に戻るかを確認。
2)cos 35°を計算し、その逆(arccos)を計算して35°に戻るかを確認。
3)tan 35°を計算し、その逆(arctan)を計算して35°に戻るかを確認。
4)10の平方根を計算し、2乗して10に戻るか確認。
5)10の立方根を計算し、その結果を3乗して10に戻るかを確認。
CASIO fx-19での計算例:
1)355÷113を計算。(円周率の近似値)
2)sin 30°を計算し、その逆(arcsin)を計算して30°に戻るかを確認。
3)cos 30°を計算し、その逆(arccos)を計算して30°に戻るかを確認。
4)tan 30°を計算し、その逆(arctan)を計算して30°に戻るかを確認。
5)指数関数 e^1 を計算し、その逆関数 ln で元の1に戻るか確認。
6)log 2を計算。(底は10)
7)2の平方根を計算し、2乗して2に戻るか確認。
8)2の立方根を計算し、その結果を3乗して2に戻るかを確認。
その後、ポケット型の関数電卓は手帳型のプログラム電卓に進化し、1979年にはCASIO fx-502Pが、1981年にはfx-602Pが発売されている。詳細は「プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P)」という記事でお読みいただきたい。
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ところで今回紹介した電卓や家電製品が世に送り出されていたこの時期、あるとんでもないモノが私たちの知らないところで開発されていたのだ。私たちはそれを1976年の秋に初めて目にすることになる。これについては次回の記事で紹介することにしよう。
関連ページ:
FX Series (Casio)
http://www.dentaku-museum.com/calc/calc/2-casio/5-casiofx/casiofx.html
関数電卓マニアの部屋
http://teamcoil.sp.u-tokai.ac.jp/calculator/index.html
歴代のCASIOパーソナル電卓
http://www.epocalc.net/pages/mes_calcs_03.htm
カシオ電卓の歴史(カシオのサイト内)
http://casio.jp/dentaku/info/history/beginning/
電卓博物館
http://www.dentaku-museum.com/
電卓の歴史
http://www.kogures.com/hitoshi/history/dentaku/index.html
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関連記事:
機械式計算機ノスタルジア(タイガー計算器)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/226dd92e17d66ac624b7279776aa77f6
計算尺ノスタルジア (コンサイス計算尺、ヘンミ計算尺)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b91ae7814c1830a9aaf7da77aadf88a8
関数電卓ノスタルジア (HP-12C, HP-15C, HP-16C)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/03e84c4fe4608f263779c5f442bf29f9
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http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fd85dc6fb9d752e66342666970fa18b0
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http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c31d67db36639471e9bc3209f88b3de
算数チャチャチャ(NHKみんなのうた)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5f45451ee92873728f3046ed36cdce71
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あいかわらず僕の電卓集めは続いている。
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日本で初めて関数電卓が発売されたのは1972年のこと。CASIO fx-1という卓上型電卓だ。(参考ページ)当時の大卒初任給は8万2600円だったが、この電卓は32万5千円もしたので普通の学生や社会人にはというてい買うことができない。卓上型ではその後、廉価版のfx-2 (1972)やfx-3 (1975)が発売された。
庶民が関数電卓を手にすることができたのはその2年後、1974年のことであった。日本初のポケット関数電卓CASIO fx-10である。価格は24,800円。10関数内蔵で単三電池4本で動作する。(この電卓の詳細は関数電卓博物館のこのページで確認できる。)
ただfx-10は価格を抑えるためにfx-1よりも機能を落とし、次のようなことが犠牲になっていた。(fx-1は16関数内蔵だったがfx-10は10関数しかない。)
- メモリー機能がない。
- 冪乗計算の冪数は自然数のみ。(複利計算の年が自然数の場合のみ)
- 三角関数の逆関数は計算できない。
- 三角関数や指数関数の有効桁数(精度)は6桁。
この電卓の登場によって科学者や技術者たちはそれまで使ってきた機械式計算機や計算尺を使わずにすむようになったのだ。
犠牲になった最初の3つの問題を解決する形で翌年発売されたのがfx-15だ。価格は16,500円と安くなった。(大卒初任給:9万1300円 )日本で初めてのメモリー付き関数電卓である。そのほかにも次の機能強化がなされている。科学計算用電卓としては必須の機能だ。
- 数値の指数表示やその計算ができるようになった。(10のマイナス99からプラス99乗まで)つまり、[EXP]キーがついた。
そしてその翌年の1976年にはfx-19が発売された。価格は9,800円。(大卒初任給:9万4300円 )これなら学生でも買うことができる。そしてこの電卓の目玉は「世界初の分数計算機能、統計計算機能つきの関数電卓」だったのだ。次のような機能アップが行われている。
- 分数計算ができるようになった。
- 標準偏差をはじめとする統計計算機能が備わった。
- 三角関数と指数関数の有効桁数が8桁になった。
- 三角関数のための角度の単位を選択できるようになった。(DEG、RAD,GRAD)
fx-10の発売からたった2年で関数電卓はこのような進化を遂げたのだ。この時代は電卓に限らず次々に登場する新製品に驚かされ、(僕は小学生だったが)大人たちは便利になっていく生活を実感し、仕事と子育てに忙殺されながらも実体が伴う経済成長を日々感じることができていた。
電卓の計算速度はこの3機種だけをとってみても大きく向上している。次の動画でみていただきたい。
CASIO fx-10での計算例:
1)355÷113を計算。(円周率の近似値)
2)sin 30°を計算。
3)cos 30°を計算。
4)tan 30°を計算。
5)指数関数 e^1 を計算し、その逆関数 ln で元の1に戻るか確認。
6)log 2を計算。(底は10)
7)2の平方根を計算し、2乗して2に戻るか確認。
8)2の立方根を計算し、その結果を3乗して2に戻るかを確認。
CASIO fx-15での計算例:
1)sin 35°を計算し、その逆(arcsin)を計算して35°に戻るかを確認。
2)cos 35°を計算し、その逆(arccos)を計算して35°に戻るかを確認。
3)tan 35°を計算し、その逆(arctan)を計算して35°に戻るかを確認。
4)10の平方根を計算し、2乗して10に戻るか確認。
5)10の立方根を計算し、その結果を3乗して10に戻るかを確認。
CASIO fx-19での計算例:
1)355÷113を計算。(円周率の近似値)
2)sin 30°を計算し、その逆(arcsin)を計算して30°に戻るかを確認。
3)cos 30°を計算し、その逆(arccos)を計算して30°に戻るかを確認。
4)tan 30°を計算し、その逆(arctan)を計算して30°に戻るかを確認。
5)指数関数 e^1 を計算し、その逆関数 ln で元の1に戻るか確認。
6)log 2を計算。(底は10)
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8)2の立方根を計算し、その結果を3乗して2に戻るかを確認。
その後、ポケット型の関数電卓は手帳型のプログラム電卓に進化し、1979年にはCASIO fx-502Pが、1981年にはfx-602Pが発売されている。詳細は「プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P)」という記事でお読みいただきたい。
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