NHKニューヨーク白熱教室(4回シリーズ)
毎週金曜日 Eテレ 午後11時から11時54分まで(2か国語放送)
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/newyork/index.html
ニューヨーク市立大学シティーカレッジ
ミチオ・カク 教授
超弦理論が専門で、世界で最もその名を知られている物理学者の一人。日系3世。物理学のみならず未来論についての啓蒙活動で知られる。コンピューターの驚異的発展、バーチャル世界の膨張、不老不死研究、心や意識の未来など、これまでにない全く新しい未来像を提示し続けている。最新の科学を一般の人向けにわかりやすく情熱的に伝える力量が世界で高く評価されている。
NHKニューヨーク白熱教室:第3回 科学が変える未来社会
人類史の中で物理学の発展は社会を大きく変えてきた。では、このまま科学が進歩すると近未来の社会はどう変貌するのか? コンピューターはコンタクトレンズに組み入れられ人間が意識するだけであらゆる情報の入手が可能になり、医療では常に超小型の医療ロボが体内を巡回し、痛んだ臓器は交換可能となる。そして不老不死も可能になるという。理論物理学者が語る、SFとは一線を画したリアルな未来社会の姿を探求する。
先週放送が開始したNHK白熱教室の新シリーズ。数々のポピュラー・サイエンス書や講演で知られているニューヨーク市立大学シティーカレッジの理論物理学者、ミチオ・カク先生による現代物理学講座だ。
第3回は「科学が変える未来社会」をテーマに話が進んだ。
今回は夢物語を語るカク先生に対して批判的な記事を書くことになるのだろうなと思っていたのだが、そうはならずに僕は納得させられてしまった。紹介されていた未来の科学技術のほとんどが、どこかで読んだり耳にしていたものばかりだったからだ。
ICやメモリーチップのめざましい小型化はすでに実証済みだから、コンタクトレンズに埋め込むことのできるコンピュータやスクリーンというのも、おそらく実現すると思う。
とはいっても「不老不死」だけは実現しないと僕は思う。
ただし「動物の寿命を2倍にする実験には成功している。」ことは知らなかったので今夜は驚いているのだが。。。あとワニの寿命がわかっていないことも僕は知らなかった。
もし人間の寿命が2倍になったとしたら、社会はどのように変わるのだろう?いったい何歳まで仕事をすればよいのだろう?
あと少し安心できたのは「未来の教育」の形態の話。オンライン講座だけでは生徒のモチベーションは維持できないから、必ず生身の教師の個別指導が必要になるということ。人間の教育はロボット任せにできるはずはないし、してはいけないと思うのだ。
番組終了後にツイッターを検索してみたのだが、今回の放送に批判的、懐疑的なツイートはほとんど見つからなかった。それは番組が科学技術がもつ負の側面について触れていなかったためかもしれない。つまりそれは未来の兵器技術のことだ。
思い巡らすことはいくつもあるのだが、今夜の流れを箇条書きにしておく。
- 物理学の未来、社会の未来について
- 万物の理論に我々は迫りつつある、万物の理論はなにをもたらすか
- 20年後、50年後、コンピュータはどうなってるか、ロボット、医療、注文できるか、不老不死は
- 未来は予測できるのか
- ジュール・ヴェルヌ、19世紀に100年後を予測した
- 月世界旅行の宇宙船のサイズの誤差は10%、月までは3日かかることを予測していた
- 1860年頃、「20世紀のパリ」を予測した小説
- 鉄骨でできたガラス張りの高層ビル、ガスを燃料とする交通手段、出版されなかった
- 当時の最先端の思想家、天文学者、産業界のリーダーと話をした
- トップクラスの科学者300人と話をした
- 未来を創る科学技術とは
- 豊かさはどこからくるか、富は科学から生まれる
- 政治家は「富は課税によって生まれる」と信じている
- 富そのものの量は増やせる
- レーザーとトランジスタ、テレビ、ラジオ、MRI、GPS
- 科学技術が社会に富をもたらす
- 第1の波は蒸気機関によって富がもたらされた
- 第2の波は電気、エンジンによって富がもたらされた
- 第3はハイテクとコンピュータの波、レーザー、コンピュータ、インターネット、タブレット端末
- 第4の波は人工知能、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーによって富がもたらされる
- ムーアの法則:ICチップのトランジスタ数は18ヶ月ごとに2倍になる
- 次のステージ:コンピュータの姿は消える
- 2020年:コンピュータは電気のように存在すら気に留められなくなる
- 2020年:コンタクトレンズの中にインターネットにつながる装置が組み込まれる
- 自動通訳がコンタクトレンズの中で見れる
- パーティでどのパートナーを選べばよいか相手の経歴が映されるようになる
- 建設、宇宙飛行士、無限の知識
- 未来の紙の姿:追ったり曲げたり自由自在、壁紙も同様
- 壁に人工知能をもったロボットドクターがあらわれ、最新の医療情報を提供してくれる
- 運転中の事故:腕時計の中のロボット弁護士が助けてくれる
- 未来の車の姿:自律走行、
- 未来の癌の診断:トイレにICチップが備えられ、癌細胞が数百個の時点で発見できる
- 腫瘍やコンピュータという単語はなくなる
- ナノテクノロジーによりひとつひとつの癌細胞を攻撃できる、現在のような抗がん剤は不要になる
- 診察:細胞サイズの顕微鏡を体内に入れて癌細胞を見つける。(カプセル内視鏡)
- 体内に入れたICチップが健康を守るようになる
- MRIは磁場を均一にする必要があるから装置が大きくなる
- 現在はブリーフケースのサイズにでき、将来は携帯電話のサイズまで理論上は小さくできる
- バイオテクノロジー
- 人工臓器を作れるようになる:耳、骨、皮膚、軟骨、血管、心臓弁、膀胱弁、肝臓などが培養されるようになる
- 人の臓器を注文して購入できるようになるかも:老化に対抗する
- 臓器不全という言葉がなくなる
- 3Dプリンタにより臓器を作れるようになる
- 腎臓や肺なども作れるか:いまは膵臓の製造にターゲットを絞っている
- 複雑な臓器は後回し
- 不老不死は実現するのか?
- 動物の寿命を2倍に伸ばすことには成功している
- 霊長類の実験は2年前。人間の実験はまだ行われていない。
- 長生きする動物:ワニの寿命はわかっていない。老化が死因になることはない。
- 鯨の寿命も長い。不老不死に見える。
- クルマの老化は、駆動装置や燃料装置、タイヤ、エンジンの消耗によってわかる
- 細胞のエンジンはミトコンドリア、ミトコンドリアの老化はDNAのコピーミスによってわかる
- 老化とはDNAの複製時におきるコピーミスの蓄積
- 遺伝子治療によるDNAの修復
- カロリー制限による寿命の延長が期待される
- チンパンジーの場合:98%遺伝的に人間と同じ、人間のほうが寿命が2倍長い
- 脳のサイズをコントロールする遺伝子は発見されている
- 熱力学第2法則:エントロピー増大の法則(閉鎖系)、どんなものでも無秩序になって滅ぶ
- なぜわれわれは秩序だって存在できるのか?、進化は不可能ではないか?という矛盾があるのだが
- 地球は閉鎖系ではない、太陽がエネルギーを与えてくれる、それがその矛盾を解決する
- 不老不死によって地球の人口爆発はおきないか?なぜ2000年に人類滅亡しなかったのか?
- ひとつは農業の技術革新、品種改良
- もうひとつは人口推移の予測ミス:子供の数は社会保障のようなもの
- 都市化によって子供の数が減る、日本の人口減少、次はヨーロッパ、アメリカの人口が減る
- 未来の仕事はどうなるか
- 将来仕事はあるのだろうか?ロボットが働くだけになるのか?
- 反復作業だけの仕事は将来なくなる:自動車の製造はロボットが行う
- 仲介行のような仕事はなくなる:代理人、ブローカー、(ネットサービスによって置き換えられる)
- ロボットにはできない付加価値がある仕事はなくならない
- 建築作業員や庭師、警察官の仕事はなくならない:反復作業ではないから
- 独創性、創造性が要求される仕事はなくならない
- イギリスはロックミュージックの収益が炭鉱労働による収益より大きい
- 教師の役割:発展途上国ではオンライン講座は90%は脱落してしまう。それはプレッシャーや個人的なアドバイスがないから
- よいオンライン講座はコンピュータの良さと生身の教師の指導を組み合わせたものが必要
- 2100年に生きる人間:医療は不老不死、核融合の実現、羽のある馬に乗っているかもしれない
- 次回は脳と心の未来:テレパシー、テレキネシス、ブレインネットなどの話をする
なお、第2回までの放送はすでにネット上に公開されてしまっている。見逃した方は
ここから検索 してみるとよいだろう。(この記事を投稿した時点では「
NHKオンデマンドの見逃し番組 」からは見れるようになっていない。)
以下、ミチオ・カク先生の著書をジャンル別に紹介しよう。
科学教養書:
「
アインシュタイン よじれた宇宙(コスモス)の遺産:ミチオ・カク 」- 2007年刊行
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内容
アインシュタインの相対性理論はイメージとして現れた。光と並んで走るイメージ、いすから落ちるイメージ。そして宇宙の謎を統一する未完の試み、統一場理論。アインシュタインのイメージを軸に、現代理論物理学の権威ミチオ・カクがその生涯と業績を分かりやすく解説する。
科学(?)教養書もしくは科学SF書: Kindle版がお買い得だ。
「
パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ:ミチオ・カク 」(
Kindle版 )(
紹介記事 )- 2006年刊行
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内容
ブラックホールへの決死の旅や、タイムマシン、もうひとつの宇宙、そして多次元空間―本書は宇宙論の世界を席捲する革新的な宇宙の姿を鮮やかに描き出す。今日、ひも理論とその発展理論であるM理論は圧倒的な支持を得て、世界の名だたる物理学者や天文学者が、最先端の波検出器、重力レンズ、衛星、天体望遠鏡を動員し、多宇宙(マルチバース)理論の検証に取り組んでいる。もしパラレルワールドが存在するのなら、いつかこの宇宙が暗く凍ったビッグフリーズを迎えるとき、われわれの未来の先進文明は、次元の「救命ボート」によってこの宇宙を脱出し、パラレルワールドへと至る方法を見つけるであろう。
「
サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か:ミチオ・カク 」(
Kindle版 )- 2008年刊行
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内容
今でも当たり前のGPSや携帯電話は、かつて想像の世界にしか存在しなかった。だとしたら、タイムトラベルやテレポーテーションも、実現できる日が来るかもしれない。『スター・トレック』や『透明人間』など、古今のSF作品に登場する「ありえない」テクノロジーは、いつ、どのように実現できるのか…。現代物理学界を代表するミチオ・カク博士も、昔はSF大好き少年だった!だれもが持つ「少年時代の夢」をかなえる最先端の科学理論をカク博士が熱く語った、全米ベストセラーのポピュラー・サイエンス書。
「
2100年の科学ライフ:ミチオ・カク 」(
Kindle版 )- 2012年刊行
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内容
コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行…近未来(現在~2030年)、世紀の半ば(2030年~2070年)、遠い未来(2070年~2100年)の各段階で、現在のテクノロジーはどのように発展し、人々の日常生活はいかなる形になるのか。世界屈指の科学者300人以上の取材をもとに物理学者ミチオ・カクが私たちの「未来」を描きだす。
「
フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する:ミチオ・カク 」(
Kindle版 ) - 2015年刊行
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内容
テレパシー・記憶の増強・AI…SFが現実になる!「心」をめぐる科学の最前線、そこから導かれる驚愕の未来図。NHK「NEXT WORLD私たちの未来」出演の理論物理学者が綴る第一級のサイエンス・ノンフィクション。
専門書: 通常の教科書である。場の量子論までの物理学を学んでいることが前提。(参考:「
超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍 」)
「
超弦理論 :ミチオ・カク 」- 1989年刊行
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内容
過去50年もの間解けなかった、場の量子論と一般相対論の統一という問題を解決する超弦理論についての本格的入門書。2000年刊行の改訂版では省かれた「
アティヤ=シンガーの指数定理 」の証明が掲載されている。
「
超弦理論とM理論:ミチオ・カク 」(
購入リンク2 )- 2000年刊行
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内容
過去50年もの間解けなかった、場の量子論と一般相対論の統一という問題を解決する超弦理論と、その最近の定式化であるM理論を追加して改訂した本格的入門書。1989年刊「超弦理論」の改題改訂。
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