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君死にたまふことなかれ(アクアスタジオ)

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内容
大東亜戦争敗戦後・・・戦時中軍事工廠だった場所に挺身隊だった彼女たちはあつまっていた・・・。

丸尾多恵が当時書き続けていた日記を本にしたいと皆を集めたのだ。

戦時中、女子挺身隊として働いていた彼女たちは、それぞれの過去を振り返るのだが・・・。


GWはたっぷり物理の勉強をするはずだったが、今日は観劇をして過ごすことになった。

今朝は朝寝坊をたっぷり愉しんだ後、午前中はブログにコメントを下さった読者に返信を書いていた。

さてそろそろいつものカフェに出かけようかと思っていたところ、知り合いの浦野朱里さんから連絡がきた。演劇のお誘いである。教えていただいた彼女のブログを見ると昨日から東日本橋のアクアスタジオというところで「君死にたまふことなかれ」という劇に出演しているようだ。

浦野朱里さんのブログとツイッターはこちら。

あかりオフィシャルブログ(LAUGHFACE INC.)
http://ameblo.jp/hapykira/

Twitter: @akari17171


今年は戦後70年ということもあるし、憲法改正の是非や従軍慰安婦問題など、とかく戦争のことがセンシティブに取り上げられる昨今だ。今どきの若い人は戦争のことをどうとらえ、日本をこれからどうしていきたいのだろう?自分の世代の考えよりも若い世代のとらえかたのほうが気になっている。

与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を題名にしているくらいだから、これはおそらく反戦系の劇なのだろうと思ったのだが、内容紹介には「大東亜戦争」と書かれていたり、フライヤーに「旭日旗」の画像が使われているなど「あれ?どっちなの?」と思わせるふしもある。政治色を打ち出した劇なのだろうか?

少しだけ解説すると、現代の日本史の教科書で使われている「太平洋戦争」や「第二次世界大戦」のことを、当時戦争を遂行していた軍部や日本政府は「大東亜戦争」と呼んでいたわけ。戦争する目的のひとつだった「大東亜共栄圏の建設」という構想の流れを汲む名称である。

どちらにしてもとりあえず見に行けばわかるのだろう。

浦野さんはおとなしそうに見えて、芯が強いタイプ。演劇をしていることを僕は知らなかったから、演じている浦野さんの姿は想像できない。

やはり見に行って確かめるしかない。


劇場は東日本橋にあるアクアスタジオ。最寄り駅は「馬喰横山」なので笹塚からだと乗り換えなしで行ける。いつものカフェでの勉強を早々に切り上げ、開場1時間前には到着。GW真っ最中のビジネス街は人通りもクルマもほとんどなく閑散としていた。おまけにアクアスタジオの入口がわかりにくい。GPSとGoobleマップがピンポイントで目的地を示してくれているのが大いに役立った。

舞台のセットは軍事工廠のひと部屋。開演前に流される音楽の中に「ハナミヅキ」が使われていたので、およその傾向が想像できた。

開演直後の真っ暗闇の後に登場したのは5人の女性。洋装の人が多いので戦後のシーンだとわかる。もともとこの軍事工廠で「女子挺身隊」として働いていた人たちが再会して戦争当時のことを話すシーンである。舞台のセットや衣装も時代考証がしっかりしているし、台詞も当時の日本語が正確に再現されていることがすぐわかった。演じているのは今時の20代前半の女の子ばかりだけど、彼らを指導している人の中は昔のことをきちんとおさえている大人がいるのだろう。そういうことは見始めてすぐわかった。

日常生活では現代の女の子らしい生活をおくっているだろう彼女たちも、服装や髪型を変えるとイメージはずいぶん変わる。僕が幼い頃目にした昔の女性たちがそこにいた。

でもひとつだけ不自然なことに僕は気がついた。彼女たちはみな白い足袋を履いていたのだ。履物が草履の人は違和感がないのだが、ヒール靴に足袋はどう見ても不自然。時代考証ミスなのか??

舞台は真っ暗になり40秒ほどして次のシーンが照らし出されたとき謎は解けた。その舞台は戦争中の昭和19年の同じ部屋。先ほどの女の子たちはモンペ姿になり、白い鉢巻をしている。人数も2人増えて7人になった。

たった40秒ほどで服装ががらりと変わったのに僕は驚いた。(その後、ふたたび戦後の洋装に変わる場面もあるのだが、そのときは50秒くらいで服装チェンジである。)

なるほど、足袋まで履きかえる時間はさすがにない。彼女たちが履いていたの草履と足袋だった。


出演者は挺身隊の女子のほか、男優も4人いた。購入した台本によると少尉、坂本という若者、林学科長、軍医という役どころだ。

戦時中の言葉遣いがきっちり再現されているのに僕は驚いた。挺身隊への仕事の指示は「軍令」のようなものだ。女の子たちの台詞や喋り方も気迫のある軍隊式になり、動作もしゃきっとしたものにかわる。90度近くまで素早く腰を曲げる女の子たちのお辞儀を見たのは生まれて初めてのことだった。

いや~、すごい。真面目で硬派な劇だとは予想していたけど、実によく昔の有様を再現している。

胸を打つシーンがたくさんあった。とても見応えのある芝居だった。

舞台効果で感心したのは曇りガラスごしに映される部屋の窓の外の照明だ。朝、昼、夕方の日光の色を自然に変化させて時の流れを表現する。僕のような演劇素人は、このようなところに目がいってしまうのだ。


「佐藤あき」という役を演じていた知り合いの浦野さんの演技も素晴らしかった。柔和でほんわかしたお顔立ちからとは真逆な気迫に満ちた台詞に、この世界にかける彼女の意気込みを感じた。あと、どの出演者にも公平に台詞が与えられていて、どの役者さんも完璧に演じ切っていたように思う。

「今どきの若い人は。。。」とネガティブな面ばかりとりあげられやすい昨今、僕が学生だった頃にはたくさんいた真摯な若者が今でもたくさんいることを頼もしく思った休日になった。


時代考証がしっかりしているなあと思い、脚本をお書きになった野口麻衣子さんのことを調べてみたら、1974年生まれの女優であることがわかった。戦後29年も経ってから生まれた方なので、戦時中のことをよほどよく調べられたのだろう。僕より若い世代の中にも、より若い世代の模範になる立派な方がいるのだなと思ってうれしくなった。

野口麻衣子(現在 小田切麻衣子)
http://talent.yahoo.co.jp/pf/detail/pp17328

野口麻衣子さんのブログ
http://ameblo.jp/maiko1213/


笑いをとる台詞などひとつもない。左だ右だという政治的な主張もなく、戦中戦後に交わされた会話だけで進行する演劇だ。昔おきていたことをありのまま再現して伝えよう、そしてこれから日本はどういう選択をしたらよいのかは観客ひとりひとりの判断に任せよう。そのような印象を僕は受けた。

私たちに与えられた左か右か?改憲か護憲か?の選択肢はあくまで現代からの視点で言えること。当時の国民には旭日旗をかかげた「戦争」という現実があるだけで、考える自由、「君死にたまふことなかれ」と願う自由は残されていたものの、発言する自由、行動を選択する自由は与えられていなかった。「お国のために死ぬ」ことは、他に選択肢のない状況でぶつける先のない悲しみを無理矢理押さえつけるために作られた方便である。


「君死にたまふことなかれ(アクアスタジオ)」は5月6日まで見ることができる。お近くの方は、ぜひご覧になってほしい。



前売・当日 ¥3,100(税込) ※日時指定 / 全席自由 / 要予約

予約方法など詳細は、以下のページで確認していただきたい。

「君死にたまふことなかれ(アクアスタジオ)」
http://www.airstudio.jp/aquastudio/top_150502.html


余談:

開演前にトイレに行っておこうと受付を出ると、そこにはなんと元オリンピック選手の大林素子さんが立ち話をされているではないか。僕はうかつにも「あっ!」と声を出してしまったので、「いえ、笹塚のカフェでときどきお見かけしていたものですから。。」とご挨拶ともとれない釈明をする羽目に。オリンピックの頃以来、僕はファンの一人だったので、思いがけない場所で出会うとそりゃびっくりするわけで。。。

帰宅して大林さんのツイッターを確認したら、次のような投稿があった。大林さんはどうやらこの劇の関係者のようである。

画像をクリックすると、その投稿が開く。


行きつけの笹塚のカフェには、たまに思いもよらぬ大物があらわれる。

数年前、僕が勉強している隣でカフェオレをすすっている地味な服装のご老人がいた。しばらくすると彼はおもむろに携帯電話を取り出して話しだした「もしもし、堺屋太一ですが。」

頭から背骨にかけて数万ボルトの電流が走った。「ええっ!」とは思ったものの畏れ多くて僕は隣に座っているご老人を直視することができなかった。


関連記事:

地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相:飯田進
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ac46ac40b155a4ef430bd92074db2a5b

復刻版 チャート式 代数学、幾何学(数研出版)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/709402c3bc0ad74ebb4fe0969f9f7e42

ゴドーを待ちながら:サミュエル ベケット
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fb9147540f30317b405ab342e42a4c9


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ホンのひととき 終わらない読書: 中江有里

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ホンのひととき 終わらない読書: 中江有里」(Kindle版

内容紹介
ああ、もっと読みたい。
偏読、雑読、併読、積ん読――楽しみ方いろいろあります。
年間300冊の本を読み、読書家で知られる女優の初エッセイ

子ども時代の読書体験、児玉清さんとの出会い――いつも、そこに「本」があった。
遠藤周作、東野圭吾、村上春樹、山本文緒など、大好きな「物語」の世界で想像の翼を広げ、ときに「今を生き抜く」ヒントが詰まった話題のノンフィクション、ビジネス書など、実用書の数々を手に取り、現実をかみしめる。
本書は毎日新聞本紙連載された読書エッセイと「週刊エコノミスト」に連載された3年半に及ぶ読書日記を中心に、選りすぐりの約100冊の本への想いを綴った。
女優であり、作家、脚本家として物語を紡ぐ、著者の感性と日常がみずみずしい。
「読書」という営みからあぶり出される女優の素顔が詰まった珠玉の初エッセイ。
2014年5月刊行、224ページ

著者について
中江有里(なかえ・ゆり)
ホームページ:http://www.yuri-nakae.com/
Twitter: @yurinbow
1973年生まれ。大阪府出身。女優・作家。
89年芸能界デビュー。2002年「納豆ウドン」で第23回「BKラジオドラマ脚本懸賞」で最高賞を受賞。読書家としても知られ、NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年司会を務めた。現在、NHK「ひるまえほっと」で本の紹介を担当するほか新聞、Webに読書エッセイを連載中。NHK高校講座「国語表現」でMCを担当。著書に『結婚写真』(小学館文庫)『ティンホイッスル』(角川書店)『いくつわかる? 名作のイントロ』(明治書院)。


理数系ブログを書いている手前、読む本が偏るのは仕方がない。たまには他のジャンルの本を読むよう心がけているのだが、選ぶのはどうしても自分の好きな本だけになってしまう。

世の中には僕が手にとらない種類の本が山ほどある。馴染みのない世界の知見を広めたり、小説に没頭して時間が経つのを忘れてみたい。そのような思いで本屋に行ってみる。ところがあまりに多すぎてどれを選んでよいのか途方に暮れる。老眼が進んでからは試し読みするのも難しくなってきた。理数系の本をたくさん読みたいから、それ以外の本を乱読する余裕はない。読んでよかったと思える本だけを選びたいのだ。

そのように迷える子羊のような心境の僕に救いの手を差し伸べてくれたのが本書だった。(「中年男に子羊はないだろう。」というブーイングが聞こえてきそうだけど。)


著者は中江有里さん。僕の世代には好感度ナンバー1(僕はそう思っている)の女優・作家だ。中江さんは年間300冊以上を読破する超読書家である。

女優、作家として活躍されるほか、NHK高校講座「国語表現」でMCを担当され、NHKの「ひるまえほっと」では「中江有里のブックレビュー」というコーナーを担当されている。ソフトで落ち着いた語り口が彼女の魅力だと思う。

彼女が読書好き(というより「本の虫」)であることを僕が知ったのはアナログテレビ時代の1991年に放送が始まったNHK BS「週間ブックレビュー」を見たときだ。(中江さんは2004年 - 2012年3月の期間、司会を務めている。)

週間ブックレビュー」は21年続いた数少ないテレビの書評番組だった。豊富な読書経験を穏やかに語る児玉清さんが司会をされていたのは1993年度~2010年度(週替わりで担当)である。このような良質な番組が無くなってしまったのは、ものすごく残念だ。

けれどもNHKでは2013年4月から月1回のペースで「中江有里のブックレビュー」というコーナーを放送している。毎回3~4冊紹介しているので、バックナンバーを開けばかなりの数のお勧め本情報が得られる。これは貴重だ。このコーナーはずっと続けてほしい。


中江さんのお勧め本をまとめた本書は次のような3部構成である。

I ホンのひととき(エッセイ)
II 読書日記 2011~2014
III 書評の本棚


I部では中江さんはご自身のこと、どのようにして本好きになっていったか、人生の先輩として尊敬していた児玉清さんへの想い、本を読むことの楽しみなどを語っている。

II部とIII部はこれまで読んだ本の紹介と感想が書かれている。小説に限らず、あらゆるジャンルの本をお読みになっていることに驚かされた。科学分野では「山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた」という本が紹介されていた。巻末の「掲載書籍一覧」を数えてみたところ、本書全体で紹介れている本は111冊もある。


知識を得たり物事を理解するための読書は大切だ。けれども、それ以外のジャンルの読書をしないと、人は自然に自分の考え方、感じ方に凝り固まってしまいがちなものである。小説やエッセイ、評論などを読むことで、ふだん自分の意識にのぼらない世界を知り、自分とは全く違う著者の考え方、感じ方を疑似体験することができる。著者や本の中の登場人物に共感したり反感をもったりしながら、自分の感性の位置づけを再確認できると思う。

本書の中でいちばん僕の心に残ったのは、中江さんが同じ本を読むことの大切さについて語った次の言葉だ。

「同じ本を何度も繰り返し読むこともお勧めします。同じ本ならいくら読んでも内容は変わりません。だからこそ、読み手である自分の変化に敏感になるのです。- 中江有里」


作家として中江さんは小説もお書きになっている。児玉清さんがお書きになった本とともに、検索リンクを張っておこう。

中江有里さんがお書きになった本を: Amazonで検索する

児玉清さんがお書きになった本を: Amazonで検索する


一見、寄り道だと思える本の中には、他人と関わりながら生きていく自分の人生をより豊かにする養分がたくさん含まれていると思うのだ。


中江さんのテレビ出演情報:

直近で中江さんが出演されるテレビ番組を紹介しておこう。今週は次の2つの番組に出演予定なので、ぜひご覧いただきたい。

5月13日(水)午前11時05分~ NHK総合(関東地域のみ)「ひるまえほっと」’中江有里のブックレビュー’に出演します。
5月15日(金)午前8時15分~ NHK総合「あさイチ」”特選エンタ”のコーナーに出演します。


余談: 今読んでいる「固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン」は、ようやく半分あたりを過ぎた。読み終えるまでにはあともう少しかかりそうだ。


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ホンのひととき 終わらない読書: 中江有里」(Kindle版



I ホンのひととき(エッセイ)
II 読書日記 2011~2014
III 書評の本棚

物理、工学、数学系の大学1年生にお勧めしたい2冊の副読本

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大学には入ったものの、どうも授業についていけていないような気がする。こんなはずじゃなかったと思い始めた1年生のみなさんに、今日はとっておきの2冊を紹介しよう。どちらも物理学や工学を学ぶために必要な「物理数学」の副読本だ。(2冊目のほうは厳密に言えば「物理と数学」なのだが、数学の部分が物理数学である。)

理数系の大学4年間で学ぶ数学には、いくつかの難所がある。計算ができるようになっても意味がよくわからなかったり、計算そのものがややこしかったり、理由はいろいろあるのだが、それらの難所は僕を含めてこれまで諸先輩がみな苦労してきたところだ。


人に聞きたくても恥ずかしいし、勇気を出して先生や友達に聞いても「なんだ、そんなこともわかってないのか!」と馬鹿にされるかもしれない。

それでも、このままだとますます取り残されてしまう。なんとかしなければ。。。

入学して2ヶ月が過ぎ、そんなもやもやした気持になっている方に、この2冊をお勧めしたい。どちらも「副読本」なので、あらかじめ教科書で該当する部分を学んでからお読みになるとよいだろう。

これら2冊はあなたが卒業までに学ぶ数学を理解する上で、大きな助けとなることを保証する。どちらも「意味を理解させる」ための本なのだ。


まず1冊目はこちら。1987年に初版が刊行された。いわゆる「伝説の書」である。

物理数学の直観的方法〈普及版〉 (ブルーバックス):長沼伸一郎」(Kindle版



内容紹介
大胆なイメージ化により、難解な概念を短時間でマスターする。ベクトル解析、フーリエ変換、複素積分など、理工系学生の前に立ちはだかる数学の「10の難所」をカバー。試験前に途方にくれる幾多の学生を救い、「難解な数学的手法の意味が、目からウロコが落ちるように理解できた」「はじめて腑に落ちた」と絶大な支持を得た不朽の名著!(ブルーバックス・2011年9月刊)

紹介記事はこちらをお読みいただきたい。

物理数学の直観的方法〈普及版〉 (ブルーバックス):長沼伸一郎
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ab9396e295687179ac3a71553b8165a1

物理数学の直観的方法 第2版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f0691787cd4b47a715f3d0e2c409f76


そして2冊目は琉球大学の前野先生がお書きになったこの本。2010年刊行。

今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘」:サポートページ



内容紹介
物理や数学を学んでいて、ふと疑問が湧いてくることはありませんか。疑問の中には、誰かに聞きたいのだけれども、そんなことは当たり前といって軽くあしらわれてしまうのでは、と思い、そのままにしてしまう…というものもあるでしょう。しかし、そういった疑問にこそ物理や数学の本質が隠れているのです。
本書では、著者自身が疑問と思ってきたことや、先生という立場になって学生さんから受けた質問をもとに、“なぜ”が自然に理解できるように解説します。

紹介記事はこちらをお読みいただきたい。

今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8777ea8175e9c48e0170df5b930f42d9


関連記事:

よくわかる物理数学の基本と仕組み
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f4860b933fb8596cfc1c6f197ec02892

よくわかる物理数学演習
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/52f9c8fe3ee5dc17149eab21f704ed82

大学で学ぶ数学とは(概要編)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07137c47d16d95ddde8f5c4cb6f37d55

大学で学ぶ数学とは(実用数学編)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/975ad3faa2f6fd558b48c76513466945

発売情報: 明解線形代数 改訂版(日本評論社)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ff90d70dd8f4e3a9cd4262bd159277ee


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固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン

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固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン

内容紹介:
学部生にも大学院生にも使えるよう工夫され、内容の取捨選択がしやすく、種々の目的、異なる水準でもうまく使い分けられる。固体物理学の現象の記述と理論的解析による統一という著者の目標は完全に達成されている。1981年刊行、309ページ。

著者について:
ニール・W・アシュクロフト(ウィキペディア経歴詳細
イギリスの物理学者(固体物理学)、1938年生。1958年ニュージーランド大学卒業。学位は1964年ケンブリッジ大学。シカゴ大学およびコーネル大学で博士研究員、1975年教授。1990年にHorace White Professor of Physics。2006年名誉教授。

デヴィッド・マーミン(ウィキペディアホームページ
コーネル大学名誉教授(物理学)。米国物理学会のリリエンフェルト賞および米国物理教育学会のクロプステッグ賞を受賞。米国科学アカデミー、米国芸術科学アカデミーの会員。この数十年の間に、量子論の基礎的な問題に関する多くの著作を執筆しており、科学の啓蒙に関する明瞭さと機知には定評がある。

訳者について:
松原武生(まつばらたけお)
1921-2014 昭和後期-平成時代の理論物理学者。
大正10年4月3日生まれ。北大教授をへて昭和30年京大教授となる。61年岡山理大教授。誘電体、超伝導、超流動などを研究。「温度グリーン関数」の概念を提案した。36年仁科記念賞。日本物理学会会長をつとめた。平成26年12月15日死去。93歳。大阪府出身。大阪帝大卒。著作に「超流動と超伝導」「固体物理学」など。

町田一成(まちだかずしげ)
1968年東京教育大学理学部卒業。1973年同上理学研究科博士課程修了。京都大学理学部助手、岡山大学理学部助教授、教授を経て、岡山大学大学院自然科学研究科教授。


理数系書籍のレビュー記事は本書で275冊目。

ようやく2冊目を読み終えた。このように精緻な教科書は読むのはとても根気がいる。

章立ては次のとおりだ。

第11章:バンド構造を計算する他の方法
第12章:電子の動力学の半古典的モデル
第13章:金属伝導の半古典的理論
第14章:フェルミ面の測定
第15章:いくつかの金属のバンド構造
第16章:緩和時間近似を越えた近似
第17章:独立電子近似を越えた近似
第18章:表面効果
付録

金属のバンド構造を具体的に計算するために見つけられたさまざまな方法を説明するのが2冊目である。一般に金属中に含まれている電子どうしの相互作用はシュレディンガー方程式の多体問題だから解析的には計算できないので、この本で紹介されているのはすべて近似計算だ。それらは電子の繰り込み理論や量子電磁気学(QED)以前の半古典的モデルによる近似である。


本書で特に重要なキーワードを解説しているページと短い説明を書いておこう。

バンド構造: http://hooktail.sub.jp/solid/band/

結晶中ではイオン殻による周期的な電場によって、電子のとり得るエネルギーは、いくつかの帯状(バンド状)の領域に限られる。この領域をエネルギーバンドと呼び、電子が取ることの出来ないエネルギー領域をエネルギーギャップと呼ぶ。エネルギーバンド中にどのように電子が入っているかによって、その固体の電気伝導性や光学的特性などが決まる。

独立電子近似:

電子は負の電荷をもっているので互いに避けるように運動する独立電子モデルとはこの「避ける行為」を無視する近似だ。各電子個々のシュレディンガー方程式を考えることで近似する方法である。

自由電子近似:

電子の感じるポテンシャルが非常に弱い場合、電子の振る舞いはほとんど自由な電子とみなすことができる。この自由電子として扱う近似が自由電子近似である。(自由電子モデル、自由電子模型とも言う。)これの対極的な近似が、強結合近似。

セルラー法、マフィンティンポテンシャル、APW法、KKR法、OPW法:

ウィキペディアの「第一原理バンド計算」、「マフィンティンポテンシャル」を参照。

半古典的モデル:

古典力学との対応原理に基づき、古典力学を援用した量子力学の近似理論。準古典論とも呼ばれる。物性物理においては電子波束を古典粒子的に扱うことをいう。

ド・ハース-ファン・アルフェン効果:

金属の磁化率(帯磁率)が、(十分に低温では)磁場の逆数に比例して振動する現象。この現象は1930年にドハースとファンアルフェンによって実験で発見された。物性物理学の分野においては、重い電子系など、電子の有効質量やフェルミ面の劇的な変化に関連した分野に置いて盛んに用いられる手法の一つとなっている。測定については電気伝導度の比較的高い物質の単結晶が適している。

自由電子のランダウ準位:

磁場の中で荷電粒子がサイクロトロン運動(円運動)するときに取り得る、不連続(離散的)なエネルギーの準位のことである。

磁気音響効果:

超音波が金属に吸収されるとき磁界が存在すると吸収率が大幅に変化する現象をいう。金属の磁界強度に対する超音波吸収においては次の3種類のいずれかが観測される。
(1)サイクロトロン共鳴,(2)幾何学的共鳴吸収,(3) ドハース‐ファンアルフェン効果

ヴィーデマン・フランツの法則:

金属の熱伝導率Kと、電気伝導率σの比が温度に比例することを示したものである。この経験則は、1853年に金属が異なっても温度が同じであればK/σの値がほぼ同じであると報告したグスタフ・ヴィーデマンとルドルフ・フランツから名づけられた。K/σが温度に比例することは1872年にルードヴィヒ・ローレンツが発見した。金属の場合、熱伝導と電気伝導の両方の大部分を自由電子が担うので、この関係が成り立っている。

ハートリー方程式:

多電子系の波動関数を求める代表的な近似法のひとつ。波動関数をスピン軌道の積で近似する。ハートリーの方程式は連立の微積分方程式であるので解くのは簡単ではない。ダグラス・ハートリーは原子の場合に電子間クーロン相互作用を表す項に中心力場近似を用い、かつ自己無撞着場の方法を用いて解を求めることに成功した。ハートリー近似は最も簡単な一電子近似であるが、波動関数が電子座標の入れ替えに対して反対称化されていない。よって電子間の交換相互作用が考慮されていない。またこの点を改良したハートリー・フォック近似と違って、軌道を決めるシュレーディンガー方程式において軌道に作用する演算子が軌道ごとに異なるため、軌道間の直交性が保証されないなどの欠点を持っている。現在ではハートリー近似よりもハートリー・フォック近似のほうが用いられることが多い。

ハートリー・フォック方程式:

多電子系を表すハミルトニアンの固有関数(波動関数)を一個のスレーター行列式で近似(ハートリー=フォック近似)した場合に、それが基底状態に対する最良の近似となるような(スピンを含む)1電子分子軌道の組を探し出すため方程式である。ウラジミール・フォックによって導かれた。分子軌道法の基本となる方程式である。(参考記事:「分子軌道法: 物理学と化学の境界」)

フェルミ液体: https://staff.aist.go.jp/t-yanagisawa/activity/fermi-liquid.html

フェルミ統計に従う量子液体。 1956年 L.D.ランダウが液体ヘリウム3をモデルとしたフェルミ液体の現象論を発表した。ヘリウム3はフェルミ統計に従い,低温ではフェルミ縮退する。一方、液体であるから相互作用は相当強い。金属内の伝導電子系をフェルミ液体として扱うことも可能である。


以下、本書に掲載されている図版を載せておこう。これらの図の原典は1960年代に書かれたれた教科書や論文から本書に引用されたものだ。


















この教科書で学んでみようという方は、こちらからどうぞ。

固体物理の基礎 上・1 固体電子論概論: アシュクロフト、マーミン」- 1981(紹介記事
固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン」- 1981
固体物理の基礎 下・1 固体フォノンの諸問題: アシュクロフト、マーミン」- 1981
固体物理の基礎 下・2 固体の物性各論: アシュクロフト、マーミン」- 2008

   


翻訳のもとになった英語版はこの本だ。1976年刊行。

Solid State Physics 1e: Neil W. Ashcroft, N.David Mermin」(ハードカバー)(ペーパーバック




関連ページ: ネットで学びたい方はこちらからどうぞ。

目で見て操作する「分子の世界」-そのミクロ構造と物性-
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0200a/start.html

物性物理学(筑波大学物理学系 小野田雅重先生のページ)
http://www.px.tsukuba.ac.jp/~onoda/cmp/cmp.html

結晶回折学 講義資料
http://ceram.material.tohoku.ac.jp/~takamura/class/crystal/crystal.html

ときわ台学:物質・材料の掟 (公開版)
http://www.f-denshi.com/000okite/000matrl.html


関連記事:

固体物理の基礎 上・1 固体電子論概論: アシュクロフト、マーミン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/af3b66dbda3564a4c49f5d7f722ad777

物性物理30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/00d399f545bc69dfa213015f153a312a

基礎の固体物理学: 斯波弘行
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d2287a9fdbc66eac443fe0888d835602

分子軌道法: 物理学と化学の境界
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/adb9c9e55a1ea2f1883b2a4bfced8f93


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固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン



上・2:固体のバンド理論

第11章:バンド構造を計算する他の方法
- 独立電子近似
- 価電子帯波動関数の一般的特徴
- セルラー法
- マフィン-ティン・ポテンシャル
- 補強された平面波(APW)法
- グリーン関数(KKR)法
- 直交化された平面波(OPW)法
- 擬ポテンシャル

第12章:電子の動力学の半古典的モデル
- ブロッホ電子の波束
- 半古典的モデルの一般的特徴
- 静電場
- 正孔の一般論
- 一様な静磁場
- ホール効果と磁気抵抗

第13章:金属伝導の半古典的理論
- 緩和時間近似
- 非平衡分布関数の一般形
- 直流電気伝導度
- 交流電気伝導度
- 熱伝導度
- 熱電気効果
- 磁場中の伝導度

第14章:フェルミ面の測定
- ド・ハース-ファン・アルフェン効果
- 他の振動的な電流磁気効果
- 自由電子のランダウ準位
- ブロッホ電子のランダウ準位
- 振動現象の物理的起源
- 電子スピンの効果
- 磁気音響効果
- 超音波減衰
- 異常表皮効果
- サイクロトロン共鳴
- サイズ効果

第15章:いくつかの金属のバンド構造
- アルカリ金属
- 貴金属
- 2価の単純金属
- 3価の単純金属
- 4価の単純金属
- 半金属
- 遷移金属
- 希土類金属
- 合金

第16章:緩和時間近似を越えた近似
- 電子散乱の原因
- 散乱確率と緩和時間
- 衝突の一般的な記述法
- ボルツマン方程式
- 不純物散乱
- ヴィーデマン・フランツの法則
- マチーセン則
- 等方的な物質における散乱

第17章:独立電子近似を越えた近似
- ハートリー方程式
- ハートリー・フォック方程式
- 相関
- 遮蔽:誘電関数
- トーマス・フェルミとリンドハルトの遮蔽
- ハートリー・フォック近似の遮蔽
- フェルミ液体論

第18章:表面効果
- 仕事関数
- 接触電位
- 熱イオン放射
- 低速電子回折
- 電界イオン顕微鏡
- 表面電子準位

付録
G:シュレディンガー方程式に対する変分原理
H:半古典的運動方程式のハミルトン形式とリュヴィルの定理
I:周期関数に対するグリーンの定理
J:一様な電場または磁場内でバンド遷移の起こらないための条件
K:固体の光学的性質

索引


その他の巻の章立て

上・1:固体電子論概論

第1章:金属のドゥルーデ(Drude)理論
第2章:金属のゾンマーフェルト理論
第3章:自由電子モデルの破綻
第4章:結晶格子
第5章:逆格子
第6章:X線回折による結晶構造の決定
第7章:ブラベー格子の分類と結晶構造の分類
第8章:周期ポテンシャル中の電子状態、一般的性質
第9章:弱い周期ポテンシャルの中の電子
第10章:強く束縛された方法
付録

下・1:固体フォノンの諸問題

第19章:固体の分類
第20章:凝集エネルギー
第21章:静止格子模型の破綻
第22章:調和結晶の古典論
第23章:調和結晶の量子論
第24章:フォノン分散関係の測定
第25章:結晶の非調和効果
第26章:金属中のフォノン
第27章絶縁体の誘電的性質
付録

下・2:半導体、磁性体、超伝導体論

第28章:均質な半導体
第29章:不均質な半導体
第30章:結晶中の欠陥
第31章:反磁性と常磁性
第32章:電子相互作用と磁気的構造
第33章:磁気的秩序
第34章:超伝導
付録

夜のウォーキング、その後5(累積4000Km)

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2013年4月7日から一昨日までに歩いた累積距離

2013年3月8日に始めた夜のウォーキング。ナイキのランニングアプリで歩いた距離を記録始めたのは300Km歩いた1か月後からだった。一昨日、累積メーターが4000Kmを超えたので記事として記録しておこう。

昨年11月から今日までは次のような距離を歩いている。合計1069Km。2月下旬から仕事が忙しくなっているのと、3月から4月末まで父が入院していてサポートに時間が取られていたのでウォーキングはほとんどできなくなっていた。

2014年
11月:143Km
12月:326Km

2015年
1月:142Km
2月:177Km
3月:65Km
4月:123Km
5月:93Km

合計1069Km

昨年11月に新調してから1000Km歩いたシューズはもうぼろぼろで、踵に穴が開きそうな状態だ。そろそろ新しいのを買っておこう。


ウォーキングは自宅から三軒茶屋までの往復10Kmをコースにとることが多いのだが、途中の下北沢駅前で漫読家の「東方力丸さん」がパフォーマンスをしているのをときどき見かける。

彼のことを知らなかったので、初めて見たときはびっくりして遠くからしばらく見ていたのだが、若い人たちは怖がることなく彼を取り囲むように座ってパフォーマンスを愉しんでいたのが印象的だった。いかにも下北沢らしいこういう若者文化(サブカル)が生まれる風土はすたれることなく続いてほしいと僕は思うのだ。


YouTubeで東方力丸さんの動画を:検索する

漫読家:東方力丸(とうほうりきまる)
http://www.dub.co.jp/touhou-rikimaru/

【路上の哲学】 「やり続けないと説得力がない」 漫読家・東方力丸氏にインタビュー
http://rocketnews24.com/2009/08/23/


関連記事:

1日人間ドック(2010年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/78d08050074f97baefb45084b0e936e2

ウォーキングと夜桜(2013年3月)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/055b88c503e142d7b9559e5965de5550

夜のウォーキング、三軒茶屋へ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cfd8a6fb66f8d236da95531fd108d8cf

夜のウォーキングのその後
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/65eb0d670f88ee2225670772ad03793e

夜のウォーキング、その後2
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a64b260d065375c77a79c2839dc414be

夜のウォーキング、その後3
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7da6bbf0006e187662cf2cf1822b82fe

夜のウォーキング、その後4(累積3000Km)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6e55742ebae984371eed25cc70de75bb

1日人間ドックとウォーキング
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/630184969180751eecfdfcfeb6ff54c0


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発売情報: Le Petit Robert 仏仏辞典 2016年版

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今日はフランス語上級者に向けた記事。2016年版のLe Petit Robert 仏仏辞典が発売された。収録語数は30万語。

この辞書は毎年改訂され、この時期に発売されるフランス人にとっての「広辞苑」である。今年も新しい版が発売された。日本のアマゾンサイトから3種類が購入できる。


Dictionnaire Le Robert(オフィシャルサイト)
http://www.lerobert.com/


デスクサイズ(標準サイズ)
Le Petit Robert Langue Francaise Dictionnaire 2016: Monolingual French Dictionary: Desk Size
17.5 x 7 x 24.7 cm
2880ページ


デスクサイズ(標準サイズ):インターネット接続版
(プチ・ロベール仏仏辞典と固有名詞辞典オンライン版にアクセスできるお得なアクセスキーつき。※2018年1月1日までがアクセス期限となります。)
Le Petit Robert Langue Francaise 2016: Monolingual French Dictionary with Internet Connector Device
17.5 x 7 x 24.7 cm
2880ページ


大型サイズ
Le Petit Robert Langue Francaise Dictionnaire 2016: Monolingual French Dictionary
19.7 x 7 x 28 cm
2880ページ



Le Petit Robert仏仏辞典には固有名詞辞典をはじめ、さまざまな種類がある。これらは欧明社からお買い求めなるとよいだろう。

欧明社(フランス語書籍専門)
http://www.omeisha.com/


アプリ版:

このLe Petit Robert仏仏辞典はDixel mobileという名前でスマートフォンアプリ版、iPad版が発売されている。収録語数は12万6千語。これは2014年版のLe Petit Robertが元になっている。スマートフォン版は図版無し、iPad版は図版有り。

Dictionnaire Le Robert Mobile: iPhone版 iPad版 Android版

またiPad版については2014年版のLe Petit Robert仏仏辞典がアプリとして購入できる。こちらは高い。: iPad版



関連記事:

発売情報:カシオ電子辞書 XD-K7200(2015年フランス語モデル)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/270cb56045f8be862850467b2c5a3a94

小学館ロベール仏和大辞典(iPhone / iPad アプリ)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/02af8bb1e929b8f415f7efc32a92bd56

ロワイヤル仏和中辞典(辞書談義)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aed33d08239da123dcc66c5ec08f0bc7

無料のオンライン仏和・和仏辞典を発見!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b3cae83cd882dd93d5efb788c1ac1498

ファインマン物理学: 英語版とフランス語版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1dbcd1e1b02616ef1363ced99a912072

発売情報: フランス語版「ファインマン物理学」の新版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf630deb00e6c315897d6f47ba3dd5a


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重力とは何か(NHK文化センター、青山教室)

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5月30(土)は港区青山にあるNHK文化センターで大栗博司先生による「重力とは何か」という講座を聴講した。

5/30 重力とは何か
講師カリフォルニア工科大学 理論物理学研究所所長及び教授 大栗博司(ホームページ
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 主任研究員
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1057085.html

人気番組NHKスペシャル『神の数式』の監修も務めた大栗博司先生

私たちを地球につなぎ止めている重力は、宇宙の謎を解く鍵でもあります。いま重力の研究は、ニュートン、アインシュタインの時代に続き、第三の黄金時代を迎えています。この講座では、重力に関する様々な話題を紹介し、時間と空間が伸び縮みする相対論の世界から、ホーキングのパラドックスを経て、宇宙は10次元だという超弦理論にいたる、科学者たちの数千年におよぶ冒険をたどります。


1時間半の講座で先生の著書「重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」(2012年刊行)の要点を解説する一般市民向けの内容である。

NHK文化センターは青山一丁目交差点にある青山ツインタワーの西館の中。道をはさんで反対側には赤坂御用地、近くには明治神宮外苑の銀杏並木があり、都心にしては緑が多い地域である。

とはいっても僕にとっては勤めている会社のすぐ近くなので、駅を降りるといつもの見慣れた風景が広がっている。通勤しているときの気分が蘇ってきた。

会場へは1時間前に到着。4階の受付の前で待っていたところ大栗先生がお見えになったのでご挨拶させていただいた。それから少しすると「科学講座仲間」のたけのやさんがいらっしゃったので一緒に5階の教室へ向かった。教室は2部屋をつなげていたので広い。席数を数えるのを忘れたが100人くらいは聴講できるような感じだった。いつものように最前列を確保した。

開始時刻近くになると8割くらいの席が埋まった。先生の講座は相変わらず根強い人気である。朝日カルチャーセンターの物理学講座のときよりも年齢層は若干低め(5歳くらい低め)のようだ。

NHK文化センターの職員の男性が先生を紹介した後、講座が始まった。

今回は1時間半の講座である。3年前に朝日カルチャーセンターで同じテーマで行われた4時間の講座を受けていたし、先生の著書を読み込んでいたので内容はすでに知っている。であるから僕の興味は次のようなものだった。

- どの部分を先生は省略してお話しになるのか?
- 何か新しい話題を先生はお話になるか?
- 質問コーナーで交わされる内容

先生が用意されたスライドは全部で120枚。3年前に朝日カルチャーセンター新宿教室で行われた4時間の講座では400枚くらいあった。

2012年06月03日
重力をめぐる冒険(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0471486930f344c4daa7aaa5ba2fdcc4

スライド数が減っているとはいえ、僕は今回の講座のために先生はスライドを作り直されていることに気が付いた。もし僕が先生の立場ならば前に使ったスライドから抜き出してそのまま使っていることだろう。短縮版の講座とはいえ先生は常に論理的なつながりを大切にされ、1時間半の講座として完全な形に構成されている。プロの仕事だと僕は思った。


今回の講座は「重力の7不思議」を主軸におきつつ、著書の中のその章以外の部分を取り混ぜながら進める形をとられていた。7不思議とは次のことである。

- 重力は「力」である=第一の不思議
- 重力は「弱い」=第二の不思議
- 重力は離れていても働く=第三の不思議
- 重力はすべてのものに等しく働く=第四の不思議
- 重力は幻想である=第五の不思議
- 重力は「ちょうどいい」=第六の不思議
- 重力の理論は完成していない=第七の不思議

本のほうの章立ては次のようなものだから、この講座を受講された方は第2章から第4章のうちの大半の部分、第5章から第8章については重要な部分をかいつまんで解説されていたことがおわかりになるだろう。

第1章:重力の七不思議
第2章:伸び縮みする時間と空間 - 特殊相対論の世界
第3章:重力はなぜ生じるのか - 一般相対論の世界
第4章:ブラックホールと宙のはじまり - アインシュタイン理論の限界
第5章:猫は生きているのか死んでいるのか - 量子力学の世界
第6章:宇宙玉ねぎの芯に迫る - 超弦理論の登場
第7章:ブラックホールに投げ込まれた本の運命 - 重力のホログラフィー原理
第8章:この世界の最も奥深い真実 - 超弦理論の可能性

今回の講座ではさらに「4つの力」について解説される中で「強い力」と「弱い力」のことも詳しく説明されて、超弦理論が重力子(グラビトン)を含んでいること、ホーキング放射についても解説されていた。それから「詳しいことは次の本をお読みください。」ということで「強い力と弱い力」と「大栗先生の超弦理論入門」を紹介されたわけである。


講義は1時間15分で終わり、残りの15分は質問コーナーにあてられた。重力波の検出のために今後行われる実験のこと、原始重力波の観測(BICEP2)のこと、プランクスケールでの光速不変性などを説明されながら回答された。

僕もどうしても気になっていたことがあったので1つ質問させていただいた。それは先日Kavli IPMUからツイートされたばかりの以下の内容についてだ。

「大栗博司Kavli IPMU主任研究員らの研究グループ、重力の基礎となる時空がさらに根本的な理論の「量子もつれ」から生まれる仕組みを具体的な計算を用いて解明。一般相対性理論と量子力学を統一する究極の統一理論の構築への貢献が期待。http://www.ipmu.jp/ja/node/2175

雑誌名:「Physical Review Letters」近日掲載予定
論文タイトル:Locality of gravitational systems from entanglement of conformal field theories
著者:Jennifer Lin, Matilde Marcolli, Hirosi Ooguri, Bogdan Stoica


僕の質問:
この論文で発表された時空の形成プロセスやホログラフィー原理についても、今回のような市民向け講座や科学教養書で解説されるようになるのでしょうか?(先生がお書きになった著書をすべて読むことが前提で、その続編を僕は期待しているわけである。)

先生のご回答:
論文はまだ発表したばかりで、今後の(実験による)検証が必要です。将来みなさんに説明できるようになるかもしれませんが。

無理を承知の上で質問させていただいたので、がっかりはしなかった。何事にも慎重さは大事である。僕は受講生に対する先生の誠実さを感じた。

この論文のプレプリントは無料公開されているので、もしかしたら理解できるかも?と幻想、妄想を抱いている方はお読みになっていただきたい。

Tomography from Entanglement(2014年12月)
Jennifer Lin, Matilde Marcolli, Hirosi Ooguri, Bogdan Stoica
http://arxiv.org/abs/1412.1879

今回の講座でも先生は受講生のためにお菓子を用意されていた。今回はカルテクブランドのチョコレートだ。もったいないのでまだ食べていない。




大栗先生、今回もわかりやすい講義をありがとうございました。


オフ会:

講座には大学時代の同級生のI君(統計学専攻)と地元つながりの女友達のKさんも来ていた。たけのやさんは他に用事があるそうなので、3人だけでオフ会をして楽しく過ごした。

場所は明治神宮外苑の銀杏並木の入口にある「Royal Garden Cafe」。土曜日の午後なので大賑わいだった。



I君とKさんは大栗先生の「重力とは何か」をすでに読んでいる。Kさんはもっかのところ量子力学にハマっているそうで、その方面の科学教養書を読んでいるそうだ。今回持参した本に大栗先生からサインをいただいて満足そうだった。

また次回の講座でお会いしましょう。


関連記事:

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863


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HP-67, HP-97 for iPad、HP-67 for iPhone

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HP-97 (1976-1984)、HP-67 (1976-1982)拡大

今日は僕にとっては胸が熱くなるアプリのご紹介。高嶺の花だった高級プログラム電卓をあなたのiPad/iPhoneにもどうぞ。

マイコンやパソコンが一部のマニアのおもちゃでしかなかった1970年代後半、個人で行うプログラミングといえばこのような電卓で行う数値計算のことだった。科学計算で使われるほか、会社の経理、財務部門で使われていた高級電卓である。

当時の販売価格はHP-67: 167,000円、HP-97: 22万円である。(日本では横河ヒューレット・パッカード社からYHP-67、YHP-97として販売されていた。)

実機の現在のヤフオクでの相場はどちらも3万~4万円。

これまで何度か実機が欲しい気持が芽生えては消えていた。古い機種なので磁気カードリーダーやプリンタ用紙を送るゴムローラーが硬化しているだろうし、インクやロール紙が買えるかどうかもわからないので購入には至っていなかった。電卓は7セグメントの数字表示だけなのでプログラミングした内容を確認するためにはプリンタが欠かせない。

それがiPadで使えるようになっていたのである。価格も安いので買うしかない。

詳細と使い方は次のページを見てほしい。

ウィキペディア: HP-67/-97

The Museum of HP Calculators: HP-67/97 HP-67/97 Programming

HP-67 Owners Handbook and Programming Guide
https://www.yumpu.com/en/document/view/19323758/hp-67-ownershandbook-slide-rule-museum

HP-97 Owners Handbook and Programming Guide
http://www.greendyk.nl/hp97/index.php

HP-67用プログラム
http://www.vaxman.de/my_machines/hp/67/67.html

HP-67 Calculator Programs
http://namirshammas.com/HP67/main67.htm

HP Calculator Software Library
http://www.hpmuseum.org/software/software.htm

Old HP and TI Calculators
http://www.rskey.org/gene/hpgene/


RPN-97 Pro for iPad



RPN-67 Pro for iPad




どちらもプログラム・ライブラリ、プリンタが画面上で使える。もちろん自分でプログラミングを作成、保存することも可能だ。実機のプログラミングでは最大224ステップまでだったが、このアプリでは最大999ステップに拡張されている

上の画面はどちらもプログラム・ライブラリに用意されていたフィボナッチ数列を計算しているところ。

下はあらかじめ用意されているプログラム・ライブラリの画面である。




iPadをお持ちでない方のためには、iPhone用に次のアプリがでている。(Androidスマホ用はこちら。)

Legendary 67 for iPhone
   


肝心のプリンタだが、iPhone画面上では使えない。そのかわりにAirPrint対応のプリンタが使えるそうだ。


YouTubeにアップされているHP-97、HP-67の動画:自己診断プログラムの実行例

HP-97 Diagnostic Program


HP-67 Diagnostic Program



関連記事:

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, HP-67): Android携帯アプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ad3750a80319805913264169939ea93

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, CASIO fx-602P): iPhoneアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000

プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P): fx-602P Androidアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c31d67db36639471e9bc3209f88b3de

関数電卓ノスタルジア (HP-12C, HP-15C, HP-16C)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/03e84c4fe4608f263779c5f442bf29f9

HP社の科学電卓、Windows用の無料エミュレータ(HP 35s、HP-15C)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d2028e32d4c59d3076af838cf24a4ba4


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HP 50g for iPhone、for iPad

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HP 50g (2006-2015)拡大

前回の記事では1976年に発売された古いプログラム電卓のアプリを紹介したが、その後の科学電卓の機能向上と高速化はみなさんがご存知のとおりである。前回の記事にコメントをいただいた「やすさん」がこの電卓に興味をお持ちであることを知り、記事を書いてみることにした。

今回紹介するのは現時点でiOS用として手に入るものの中で最強の科学電卓アプリだ。2006年に発売開始されたHP 50gである。数式処理システムを備えたこのグラフ電卓は今年の末に製造中止になることが決まっていて、「HP Prime Graphing Calculator」という後継機に道をゆずることになる。(これは後継機とはいえHP 50gとは設計方針が違う電卓だ。グラフ描画性能(参考動画)は格段に進歩している。ちなみにAndroidスマホ用の公式アプリはここから2420円でダウンロード購入できる。詳細はこの電卓の紹介記事をお読みいただきたい。)


発売中の高級電卓であるにもかかわらず、HP 50gはiPhoneとiPadの共通アプリとして1200円で販売されているのだ。2万円近くする実機を購入する前に試してみるのもよいだろう。

画面表示は実機を忠実に再現している。スキンはいくつか用意されているのだが、iPhoneでは左の表示、iPadは実機そのままの表示が使いやすいと思う。

スクリーンショット(左:iPhone、右:iPad)




アプリを操作している様子はこの動画で見ることができる。



Androidスマホをお持ちの方には、この機種とほとんど同じ「HP 49g+」という機種のアプリが「go49g+」として販売されている。

PC用のエミュレータ(無料)は以下のページからダウンロードできる。

HP Calculator Emulators for the PC
http://www.hpcalc.org/hp49/pc/emulators/


HP 50gは最強電卓アプリであるがゆえに、使いこなせるようになるには手間がかかる。プログラミングはRPL (ROM-based Procedural LanguageまたはReverse Polish Lisp:逆ポーランドLisp)というHP社が1984年に発表した言語で行わなければならない。(ウィキペディアのRPLの説明

製品マニュアルは次のページからダウンロードすることができる。

HP 50g Graphing Calculator - Manuals (Googleで検索
http://support.hp.com/us-en/product/HP-50g-Graphing-Calculator/3235173/model/3235174/manuals/

HP 50g graphing calculator user's guide (887ページ): PDF
HP 50g graphing calculator user's manual (184ページ): PDF
HP 50g/49g+/48gII graphing calculator advanced user’s reference manual Edition 2 (693ページ): PDF


パソコンのモニターに美しいグラフが描ける現在、この電卓の粗い白黒の画面で描画されるグラフには何の魅力もない。それでもなお僕がこの電卓(アプリ)をお勧めするのは、電卓に備わっている機能がとても豊富で優れているからだ。

887ページもあるUser's Guideの目次には微分方程式、フーリエ変換、ラプラス変換、コーシー方程式、オイラー方程式、ルジャンドル方程式、ベッセル方程式、チェビシェフ方程式、ラゲール方程式などの項目が並んでいる。この電卓の計算機能がいかに豊富であることがおわかりであろう。


HP 50gの使い方を学びたい方は、製品マニュアルのほか次のような教材を利用していただきたい。

動画:再生リスト



Web上のチュートリアル:

HP-50g Calculator Tutorial
http://resources.thiel.edu/mathproject/CalculatorLessons/Default.htm

HP 50g calculator info
http://www.ele.uri.edu/faculty/vetter/Other-stuff/HP-calculators/HP-50g/

RPL Programming Tutorial - HP 49g+/50g
http://edspi31415.blogspot.jp/2011/10/rpl-programming-tutorial-part-1-hp.html

HP 50g Sample Programs
http://www.hpcalc.org/


日本語で読める情報としては、次のものが公開されている。

HP電卓のまとめ(HP 50g)
http://buin2gou.com/hpcalc/hp50g.html

HP 50gを使ってみて(イイよ!)
http://ito-yu.cocolog-nifty.com/dialy/2010/12/hp-50g-4106.html

HP 50gメモ
http://www.kabipan.com/computer/50g/

はじめてのHP50g
http://ifolk.no-ip.info/comm_sns/index.php?topic=031dentaku

HP50gでラマヌジャンに挑戦
http://ll.jus.or.jp/2009/slide/redcarpet/HP50g.pdf#search='HP+50g'

HP 50g Graphing Calculatorとライブラリー登録方法
http://kirokur.web.fc2.com/hp/200904.html


実機購入:

ここまで読んで実機が欲しくなってしまった方は、次の画像をクリックしていただきたい。

AmazonでHP 50gを検索


商品の説明
HP 50g は単なる計算機ではなく、コンパクトな数式処理・数値解析コンピュータです。 初等数学から難解な工学/科学の問題まで、多様な分野の計算や数式処理に役立ちます。

仕様
- 数式ライブラリの拡充と、2300 以上のビルドイン関数により、学生はもちろん、プロフェッショナルにも理想的
- 入力方式は RPN, Textbook, Algebraic 形式から選択できます
- 512KB の RAM と 2MB のフラッシュ ROM で、トータル 2.5MB ものメモリを搭載
- SDカードスロットを搭載(1GBまで対応)
- USBでWindows PCと接続できます。さらに、赤外線での通信もできます。


関連記事:

HP Prime Graphing Calculator for Android
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/28672920bba216620bd6aa424010ff99

HP-67, HP-97 for iPad、HP-67 for iPhone
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/838a982f2ed2355c7a8fed4c07a7a9e1

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, HP-67): Android携帯アプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ad3750a80319805913264169939ea93

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, CASIO fx-602P): iPhoneアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000

プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P): fx-602P Androidアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c31d67db36639471e9bc3209f88b3de

関数電卓ノスタルジア (HP-12C, HP-15C, HP-16C)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/03e84c4fe4608f263779c5f442bf29f9

世界初のポータブル関数電卓 HP-35 のAndroid, iPhoneアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/13e4fc1e351e97d616fe237ba0663372

HP社の科学電卓、Windows用の無料エミュレータ(HP 35s、HP-15C)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d2028e32d4c59d3076af838cf24a4ba4


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HP Prime Graphing Calculator for Android

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HP Prime Graphing Calculator (2013-20XX)拡大 拡大2


HP Prime Graphing Calculatorは現時点でHP社の科学電卓、グラフ電卓の最上位機種である。2013年に発売された。2万円近くする高級機であるにもかかわらず今年の4月に公式アプリが2420円でAndroidスマホ、タブレット端末用に発売されたのだ。実機の購入を検討されている方は、まずアプリで試してみるのがよいだろう。現時点で最強の科学電卓アプリである。

パソコンのモニターに美しいグラフが描ける現在、この電卓の小さい画面に描きだされるグラフは確かに見劣りがする。それでもなお僕がこの電卓(アプリ)をお勧めするのは、電卓に備わっている機能がとても豊富で優れているからだ。

HP 50gの紹介記事のコメント欄でこのブログの読者の「やすさん」は次のようにお書きになっている。

- PCで一定以上プログラミング経験がある人は、電卓プログラミングなどに見向きもしていないので、実際に使ってみる前に決めつけている可能性があります。

- PCでは真似の出来ない起動時間でプログラムが使えるので、大いに利便性があります。意外に知られていないと思います。この意外性の発見が、十分に楽しい電卓を使った趣味になっています。

特にカシオのプログラム電卓については、次のようお考えを述べていらっしゃっている。

- 私が最近のカシオのプログラム電卓に深く興味を持つ理由は、構造化Basicを搭載していて、繰り返し計算を利用した各種換算プログラムや数値計算以外の実用プログラムが極めて簡単に作れる点にあります。


そうなのだ。僕にっとってプログラミング電卓は高校生から大学生時代にかけて熱中した趣味、今となってはノスタルジーなのだが、高級科学電卓は現代でもじゅうぶん役割を果たしている。僕には「やすさん」のおっしゃっていることがよくわかった。


アプリはAndroidスマートフォンとタブレット端末の両方に対応している。僕は持っていないがタブレット端末だと大画面で使いやすいことだろう。

HP Prime Graphing Calculator公式アプリのスクリーンショット
(Androidスマートフォン:縦レイアウトと横レイアウト)




画面言語は日本語も含め、8ヶ国語から選べる。(ドイツ語、英語、スペイン語、フランス語、オランダ語、ポルトガル語、中国語(簡体)、日本語)

 


この電卓アプリをダウンロード購入される方はアイコンをクリック。(2420円)




実機を操作している様子はこの動画で見ることができる。




PC用のエミュレータ(無料)は以下のページからダウンロードできる。Android端末を持っていなくても大丈夫!プログラムはテキスト・エディタで入力して電卓エミュレータにコピペすればよい。

Windows用(動作確認済み)
http://www.hpcalc.org/details.php?id=7468

Windows7での実行例。アプリ同様、縦画面と横画面で表示できる。表示言語の選択も可。


HP Prime Calculator Portal
http://www.hp-prime.de/en/category/6-downloads

HP-related Programs for the PC
http://www.hpcalc.org/prime/pc/

Mac用もあるようだ。動画でインストール方法が解説されている。
http://www.hp-prime.de/en/category/13-emulator



製品の公式ホームページ

http://www8.hp.com/us/en/campaigns/prime-graphing-calculator/overview.html?jumpid=va_a5cqf1p9xi

マニュアル

製品マニュアルは次のページからダウンロードすることができる。分厚いユーザーガイドが日本語で読めるのはありがたい。

http://www8.hp.com/us/en/campaigns/prime-graphing-calculator/overview.html?jumpid=va_a5cqf1p9x

- HP Prime グラフ電卓クイックスタートガイド (PDF) - 55ページ
- HP Prime グラフ電卓ユーザーガイド (PDF) - 706ページ

- HP Prime Graphing Calculator - Datasheet (PDF) - 3ページ
- HP Prime Graphing Calculator - User Guide (PDF) - 608ページ
- HP Prime Graphing Calculator - Quick Start Guide Errata Sheet (PDF) - 2ページ
- HP Prime Graphing Calculator - Quick Start Guide (PDF) 67ページ
- HP Prime Graphing Calculator - User Guide Phase 2 (PDF) - 606ページ

- HP Prime Graphing Calculator - User Guide Supplement (PDF) - 304ページ


HP Support Forums (HP Prime Graphing Calculator)
http://h30434.www3.hp.com/t5/Calculators-and-Business-Handheld-Devices/The-ultimate-Emulator-Version-of-Advanced-HP-PRIME-GRAPHING/td-p/5068403


動画で学ぶ

使い方を学びたい方は、製品マニュアルのほか次のような動画教材を利用していただきたい。順番に見るときは「再生リスト」というリンクをクリックしていただきたい。

PCのエミュレータを使ってプログラミングを含め、さまざまな使い方を解説している動画。(24本)
再生リスト



別の方がアップロードした解説動画。(42本)
再生リスト



Web上の情報

個別にチュートリアルのホームページを立ち上げているケースは見つからなかった。そのかわりにフォーラムにとても多くの情報が載せられているので、フォーラムを頼りにしたほうがよいと思う。プログラミングはHP Primeプログラミング言語(HP PPL)で行う。(日本語版ユーザー・ガイドでは550ページから解説されている。)

HP Prime Graphing Calculator Forum(特に「Math Tutorials」というスレッドがお勧め。)
http://www.hpmuseum.org/forum/forum-5-page-40.html

サンプル・プログラムはこちらからダウンロードできる。
http://www.hpcalc.org/

HP Prime Programming Tutorial
http://www.thecalculatorstore.com/Manuals/HP-Prime-Tutorials-and-documents

HP Prime シミュレータを動かしてみたゾ
http://akatuki-724.blogspot.jp/2013/07/hp-prime.html


実機購入

ここまで読んで実機が欲しくなってしまった方は、次の画像をクリックしていただきたい。(事前に日本の代理店(株)ジュライによる「長所と短所」の記事をお読みください。)

AmazonでHP Prime Graphing Calculatorを検索



商品の説明
タッチ対応。 フルカラー。 革新的な機能性。 タッチスクリーンまたはキーパッドでの操作、複数の数学的表現の簡単な統合、迅速な形成的評価、無線接続機能1、および長寿命のリチウムイオン充電式バッテリを備えている、洗練されたフルカラーのマルチタッチ式カリキュレータである、HPプライムグラフカリキュレータは、このタッチ操作全盛の時代において、便利なハンドヘルド式計算処理を提供します。

仕様
- 洗練されたデザイン: 優れた外観と向上した性能を併せ持つ、スリムなつや消しメタリックのボディ
- 強力な計算性能: hp 伝統のPRN、プログラマブル関数、HP Equation Writer、グラフ表示
- リチウムイオンの充電式バッテリ搭載
- PCにワイヤレス接続(別売りのUSBドングルと、USBドングルを接続するPC、PCからのインターネット接続が必要)
- CPU: 400MHz ARM9、ディスプレイ: 320x240 16ビットカラータッチスクリーン(10行x33文字 + メニュー + ヘッダー)

機能
- 高度なグラフ作成機能により、陰関数や陽関数、不等式のグラフ描画も可能であり、特定の点に対するトレース操作や表作成もできます。
- Dynamic Geometry(動的幾何)、Statistics(統計)、Finance(金融)、Spreadsheet(スプレッドシート)の各アプリケーションが内蔵されており、中学校以降の数学教育に最適です。
- 高精度の計算により、最も正確な答えを提供します。
- 線形および非線形の単一方程式や連立方程式を解くことができます。
- 数百もの数学関数やコマンドを利用して、すばやく簡単に問題を解くことができます。
- オプションのRPNモードを利用してキー操作を減らすこともできます。
- 個々のユーザーの好みに合わせたカスタマイズ設定が可能です。
- 多次元の数式処理システム(CAS)が利用できます。


関連記事:

HP 50g for iPhone、for iPad
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/210a9395c06a150769a1d193512ffb3c

HP-67, HP-97 for iPad、HP-67 for iPhone
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/838a982f2ed2355c7a8fed4c07a7a9e1

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, HP-67): Android携帯アプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ad3750a80319805913264169939ea93

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, CASIO fx-602P): iPhoneアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000

プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P): fx-602P Androidアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c31d67db36639471e9bc3209f88b3de

関数電卓ノスタルジア (HP-12C, HP-15C, HP-16C)
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世界初のポータブル関数電卓 HP-35 のAndroid, iPhoneアプリ
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多次元空間へのお誘い(1):はじめに

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左から0次元、1次元、2次元、3次元の物体のつもり

はじめに

昨年のとある晴れた夏の朝、父がベランダで布団を干しているのを目にしました。起きたばかりで少し寝ぼけていた僕は、ぼんやりとその光景を見ていたのですが、しばらくするうちにハッとあることに気が付きました。

みなさんはイヤフォンやスマートフォンの充電ケーブルがこんがらがって、ほどくのに苦労した経験があると思います。僕が思い出したのはそのことなのです。ケーブルはこんがらがるのに、竿に干した布団はこんがらがりません。布団は竿に「ひっかかる」だけです。

 


でも、それはなぜでしょう?

そんな疑問がムクムクと湧いてきました。

それ以来、僕は思い出すたびにこの一見あたりまえで日常的な布団干しとこんがらがったケーブルのことを考えてきたのですが、最近になってようやく納得がいく説明ができるようになりました。

ケーブルや「ひも」はいわば1次元の物体と言ってよいでしょう。ひもは自分自身だけでも絡まりやすいですし、ひもとひもも絡まりやすいですよね。

そしてそれより前に僕は「ひもが絡まってしまうのは3次元空間特有の現象だ。」ということを耳にして不思議に思っていました。

1本であっても2本であっても、ひもは3次元以外の空間では絡むことはないというわけです。それは本当でしょうか?もし本当だとして、それをわかりやすく説明することができるでしょうか?また、ひもが絡むことがわかったとして、それではなぜ「絡みやすい」のでしょう?そのあたりのことも説明します。

ひもが絡まり合う現象を研究する「結び目理論」という分野が数学にはありますが、そのように高度な数学を紹介しようとするわけではありません。結び目理論は僕もまだ勉強したことがありませんし、学ぶにしてもだいぶ先のことになりそうです。

ポケットに入れたイヤホンコードが絡まる理由が科学的に明らかに!!120種の複雑な結び目が形成されていた!!
http://matome.naver.jp/odai/2142323627141472101/2142323732842237903


ということで今日から書く連載記事で、その理由を可能な限りていねいに説明させていただきます。数式は一切使わないようにして、中学生や高校生のみなさんにも理解していただきたいと思います。けれども説明をわかりやすくするために「座標軸」の考え方だけは使わせていただきます。

また、この問題だけでなく私たちの住んでいる3次元の空間以外の多次元空間で、物体はどのように存在し、私たちの3次元空間からどのように見えるのかということについても解説する予定です。

だから連載記事のタイトルは「ひもとひもは~」ではなく「多次元空間へのお誘い」といたしました。

記事の舞台となる多次元空間は数学の言葉で言うと「N次元ユークリッド空間」のことです。相対性理論で使われる曲がった4次元時空ではありませんし、超弦理論で使われるコンパクトに丸められた余剰次元空間でもありません。ユークリッド空間は数学的にいちばんシンプルなものです。連載記事では6次元ユークリッド空間のことくらいまで説明させていただければと思います。

存在するとはとても思えない4次元以上のユークリッド空間を考えることに何の意味があるのか?とご批判される方がいるかもしれません。でも、数学は何次元の空間でも自由に考える学問です。たとえば微分位相幾何学で発見された「エキゾチックな球面」は8次元空間に浮かぶ球体の表面(7次元)の性質を述べた数学的な実体ですし、相対性理論では4次元の時空を、超弦理論では10次元もしくは11次元の空間の性質を研究しています。また多次元幾何学は「情報理論」や通信技術の発展に大いに貢献しました。

多次元の空間で成り立っている法則が、私たちの3次元の空間に影を落とし、何かの発見に役立つとしたら、それはそれで素敵なことではないでしょうか?

「影」は数学の言葉で言えば「写像」のことです。写像は物事の間の対応関係をあらわします、写像の考え方が大切な理由のひとつがここにあります。


ネタばれしない程度に、連載記事の流れを書くと次のようになります。2つの項目がひとつの記事になるかもしれませんし、書き進めていくうちに項目や順番を変更するかもしれません。

- 4次元空間での布団干し
- ひらめいたこと
- 多次元空間で絡み合うモノは?
- 絡まるとはどういうことか?
- ひもが絡まるのは3次元空間だけでおきる
- モノはどのように曲がる?
- 多次元空間にあるモノは低次元空間からどう見える?
- 多次元空間で絡まっているモノは低次元空間からどう見える?
- ひもはなぜ絡みやすいのか?
- 髪の毛の話
- 蕎麦とうどんの話
- DNAの二重螺旋構造の話


イラストを描くのが下手なので、100円ショップで買った物を写真に撮って説明に使います。記事トップの掲載写真のようなものを用意しました。

それではみなさん、しばらくの間、私の話にお付き合いください。

本編は次の記事から始まります。


数学に詳しい方へのお願いとご注意:

この連載記事は次々と「種あかし」をするような感じで書き進める予定です。ですのでコメント欄にはまだ解説していない内容について先走って解説を投稿されないようにお願いします。もちろんすでに公開している内容について、掘り下げてご説明やコメントをいただくことは問題ありませんし、むしろ歓迎します。先走った解説をコメントされた場合、いただいたコメントの公開を承認できないことがありますのでご注意ください。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(2):4次元空間での布団干し
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/81fb8e0a7f148699fcda78486f868903


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多次元空間へのお誘い(2):4次元空間での布団干し

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3次元空間での布団干し

4次元空間での布団干し

まず3次元空間で布団を干している状況を100円ショップのグッズで再現してみました。(掲載写真)

もしかすると背景に女性の体の一部と腕が写っていることに気がつく方がいらっしゃるかもしれませんね。でも気にしないでください。あくまで背景画像ですから。自分ひとりでは撮影しにくい写真は「知り合い以上、友達未満」のRちゃんにお手伝いいただいたのです。撮影場所は「テーブルが白くてなめらか」という基準で選びました。


3次元空間での布団干しでは、ご覧のように線(1次元)の竿に面(2次元)の布団がひっかかっています。

布団に対応する青の布をどのように曲げても赤い竿に絡まりつくことはありません。布の端を竿にくっつければトイレットペーパーのようにぐるぐる巻きの状態にすることはできますが、これは今回の話とは本質的に関係ないので深く追求しないことにします。

次に布団干しが2次元空間でどのようになるか考えてみました。2次元空間とは縦と横だけしかない平面のことです。2次元空間での布団干しは3次元空間での布団干しを垂直に切ってみればわかります。金太郎飴の断面のように、このような形で再現できました。



この状況だと竿は点(0次元)、布団は線(1次元)になります。それぞれ3次元空間のときの竿と布団の次元数から1つだけ次元数が減っていることがわかりますね。

3次元空間では竿は1次元、布団は2次元
2次元空間では竿は0次元、布団は1次元

そして2次元空間の布団干しでは、布団をどのように曲げても竿に絡みつくことがないことも3次元空間のときと同じです。なぜなら布団をあらわす青い線は平面の世界を離れることができないからです。

もし、何らかの異変がおきて平面の世界を離れて布団が竿に絡みついたとしたら、このようになるでしょう。けれども現実にはこのような状況はおきません。(写真では布団の端が平面から浮き上がってしまっていますがご容赦ください。本来は平面にぴったりくっついています。)




さて4次元空間ではどう考えればよいでしょうか?

4次元空間というのは3次元空間の縦、横、高さ、つまりX軸、Y軸、Z軸のどれとも直角になる方向を加えた空間のことです。この4番目の軸の方向は私たちにはけして認識できません。それは平面(2次元)の世界に住んでいる薄っぺらい形をした生物が「高さ方向」を認識できないのと同じことです。彼らは平面の中しか動き回れないですし、見ることができるのも縦と横に広がった平面の世界だけなのですから。

4次元空間に設定する座標軸はX軸、Y軸、Z軸、U軸と呼ぶことにしましょう。(英文字のUを選んだのは後で説明する5次元空間、6次元空間の座標軸で使う英文字を考慮しているからです。)4次元空間は4つの座標軸の方向に無限の先まで広がった空間です。座標軸はそれぞれプラスとマイナスの方向があるので8方向に広がった空間と表現したほうが正確ですね。

少し難しいと感じたとしてもご安心ください。次回の記事で、もっとていねいにご説明いたします。


さて、4次元空間での布団干しの状況は、金太郎飴のように断面で切ってしまったものが3次元での状況になればよいわけです。つまり竿と布団の次元を3次元の場合からそれぞれ1つずつ増やせばよいですよね?

4次元空間では竿は2次元、布団は3次元

100円ショップのグッズであらわせば、この2つが竿(左)と布団(右)です。



奇妙だとは思いませんか?4次元空間ではこの2つのモノが絡まりはしないものの「ひっかかる関係」として存在しているのです。

布団は曲がらなければ竿にひっかかりません。このような立方体の形をした布団がどうすれば曲がるのでしょうか?

人間は4次元空間をイメージできるようには進化していません。視覚にしろ触覚にしろ五感すべてを動因しても4次元空間はイメージできませんし、脳も直観的には4次元空間を認識することができません。

ですから4次元空間で干された布団の様子を図示できるはずがありません。それでも無理して示したのがこの写真なのです。

謎は深まるばかりです。このあたりの理由は、次回以降の記事で説明いたします。


さらに空間を5次元にすると次のようになるでしょう。

5次元空間では竿は3次元、布団は4次元

そのような竿と布団があれば、5次元空間での布団干しができることでしょう。

このように空間の次元数を増やしていけば、次のような表ができあがります。どの次元の空間でも竿と布団はひっかかるだけで絡まないはずです。




ところで3次元空間での布団干しについてですが「布団の次元数だけ1つ減らす」とどうなるでしょうか?

前回の記事で僕がひらめいたのがこのことだったのです。

次元数を減らす前の布団干しはこの写真で示されます。



布団だけ次元数を1つ減らすとこうなるのはおわかりですよね?



竿と布団ではなく「ひもとひも」になってしまいました。

2つのモノが「ひっかかる関係」から「絡まる関係」に変化したことにみなさんはお気づきになったでしょうか?


この続きはまた次回の記事でお話しましょう。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(1):はじめに
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3c2bacd624695dcad7dd2fa9feadd5bd


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多次元空間へのお誘い(3):多次元空間で絡み合うモノは?

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竿に絡まったひも

ひらめいたこと

前回の記事の最後で僕がひらめいたのは、同じことが多次元空間でも言えるのではないかということなのです。もう一度おさらいしておきましょう。

3次元空間での布団干しはこの写真です。



そして布団だけ次元数を1つ減らすと次のようになります。



竿と布団ではなく「ひもとひも」になってしまいました。「ひもとひも」は絡まりあう関係です。この状況だと青いひもをこのように絡ませることができます。




その他の次元の空間でも同じことをしてみましょう。多次元空間での布団干しの竿と布団の次元数の表はこのように求めてありました。



布団の次元数だけ1つ減らすと次のようになります。もはや竿と布団ではなくなってしまったので「赤い物体」、「青い物体」と呼ぶことにしましょう。



これがそれぞれの次元の空間で絡まりあうモノの次元数だと思えるわけです。ひもは自分自身と絡まりますし、2本のひもが絡むのも本質的には同じことです。けれども多次元空間に同じ理屈をいきなり当てはめてしまってよいものでしょうか?

後に説明させていただきますが、このことは他の次元数の空間にもあてはめてよいのです。


多次元空間で絡み合うモノは?

まず2次元空間ですが先ほどの表によると0次元の点と点が絡まることになってしまいます。けれども絡まるためには「曲がる」ことが必要なので「点」では駄目です。ですので、2次元空間にはあてはまりません。(そして1次元空間だと物体も存在できないので、表には「なし」と書いておきました。)

もちろん3次元空間では1次元のひもとひも、もしくはひも自身が絡まります。



4次元空間ではは2次元の面と面、もしくは面が自分自身で絡まります。



5次元空間では3次元の立体と立体、もしくは立体が自分自身で絡まります。



そして6次元空間では4次元の超立体と超立体、もしくは超立体が自分自身で絡まることが示されます。

どうやら「ひもが絡まってしまうのは3次元空間特有の現象だ。」ということも言えそうですね。

面や立体が絡まっている状況を想像できないのは僕もみなさんと同じです。ご安心ください。

いきなり6次元空間まで登場して「さっぱりわからん!」という方もいらっしゃると思いますので、3次元空間の中に多次元空間を表現するひとつの方法をご紹介しましょう。


多次元空間のあらわしかた

それぞれの次元の空間に「座標」を次のように決めておきましょう。各空間は座標軸の方向にそれぞれ広がっています。それぞれの座標軸はどの2つをとっても空間の原点(空間の中心)で直角に交わっています

1次元空間:X軸
2次元空間:X軸、Y軸
3次元空間:X軸、Y軸、Z軸
4次元空間:X軸、Y軸、Z軸、U軸
5次元空間:X軸、Y軸、Z軸、U軸、V軸
6次元空間:X軸、Y軸、Z軸、U軸、V軸、W軸


2次元空間のあらわしかた

まず2次元空間ですが、次のようにあらわします。これは説明しなくても大丈夫ですね。




3次元空間のあらわしかた

次に3次元空間です。このブログ記事では2次元空間の上に(写真には矢印で示していませんが)Z軸が高さの方向に伸びているとするわけです。



このとき2次元空間の上に3次元物体を置くとこのようになります。




4次元空間のあらわしかた

さて4次元空間ですが、3次元空間+1次元空間と考えて次のようにあらわします。(写真には矢印で示していませんが)U軸が高さの方向に伸びていると考えます。



3次元空間をまとめて1枚の平面に入れてしまうわけです。このとき3次元空間の中に存在する3次元物体を4次元空間全体で見るとき、このような写真で示します。先ほどの立方体の写真を撮って印刷したものを面の上におきました。でも、後日説明いたしますが実際にこのような形で見えるわけではありませんのでご注意ください。




ところで3次元空間は2次元空間が高さの方向(Z軸の方向)に無限個重なって作られていると考えることもできます。つまり無限個の2次元空間のパラレルワールド(並行空間)で3次元空間ができているとみなすわけです。

すると4次元空間は3次元空間がU軸の方向に無限個重なって作られていると考えられますね。無限個の3次元空間のパラレルワールドをお見せするのは無理なので、その中から2つの3次元空間をお見せするとこのようになります。



上下それぞれの3次元空間にX軸、Y軸、Z軸があるのがおわかりだと思います。図示していませんが上の方向がU軸です。

3次元空間それぞれに3次元の物体を置いてみるとこうなります。2つの世界はお互いに見ることができません。お互いの存在を知ることはできないのです。




5次元空間のあらわしかた

5次元空間のあらわしかたは、もうおわかりですね?次のように4次元空間の上方向にV軸が伸びていると考えればよいのです。



5次元空間は無限個の4次元空間が積み重なってできているともみなせます。5次元空間の中の2つの4次元空間のパラレルワールドは次のようなものです。




6次元空間のあらわしかた

6次元空間は次のように5次元空間の上方向にV軸が伸びています。



6次元空間は無限個の5次元空間が積み重なってできているとみなせます。6次元空間の中の2つの5次元空間のパラレルワールドは次のようなものです。




5次元空間、6次元空間のあらわしかた(その2)

5次元空間と6次元空間について、この連載記事では次のようなあらわしかたをする場合もあります。5次元空間は3次元+2次元、6次元空間は3次元+3次元と考える方法です。図示すると次のようになります。

5次元空間では写真の中の平面の上の空間にU軸とV軸があると考えます。同じ写真を使って6次元空間では平面の上の空間にU軸、V軸、W軸があると考えるわけです。



まぎらわしいですが、その都度ご説明いたしますので安心してください。


最後になりますが、この連載記事では次のような言葉も使わせていただくことにします。これまでにお見せした各次元空間について写真全体に写っている部分を「全空間」、そして透明プラスチックの平面であらわした空間のことを「居住空間」と呼ぶことにいたしましょう。


さて、次回の記事からようやく「種明かし」が始まります。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(1):はじめに
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3c2bacd624695dcad7dd2fa9feadd5bd

多次元空間へのお誘い(2):4次元空間での布団干し
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/81fb8e0a7f148699fcda78486f868903


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多次元空間へのお誘い(4):絡まるとはどういうことか?

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絡まったイヤフォンケーブル

絡まるとはどういうことか?

前回の記事では3次元から6次元までのそれぞれの空間の中で、どのような物体が絡まるのか紹介いたしました。

そもそも「絡まる」とはどういうことなのでしょうか?

あまりにも日常的な現象なので、あえて考えてみたことがない人がほとんどでしょう。この記事をきっかけにして、ぜひ考えてみてください。


まず、これが絡まっていない状態です。



そして、これが絡まった状態です。



青いひもが絡まるためには、赤いひもに巻きつく方向に曲がるだけでなく、赤いひもが伸びている方向に「ずれて」、自分自身または赤いひもと「交差」しなければならないのです。この写真では自分自身と交差しています。そしてひもが交差することによって、ひもの「ループ(輪)」が生じます。そのループが絡まる相手(自分自身のこともある)の周囲を囲むことになります。

そうするとひもは3次元の空間が許すどの方向(上下、左右、縦横)に移動させても、ループとぶつかってしまうので、ループを切断しない限りひもはそれ以上自由に移動できません。

ただし、まったく自由に移動できなくなるわけではありません。交差しない元の状態に戻すようには動けます。これが「絡まりをほどく」ということです。

つまり「交差してループができて相手(または自分自身)を囲むこと」が「絡まること」の本質なのです。そうなるためには、そのひもが2つの方向に曲がらなければなりません。そして、ひもに限らず2次元以上の物体でも同じことがいえるのです。

横に伸びたひもがあります。



このひもはこのように縦方向に曲げることができます。



そして、3次元空間では上方向に曲げることもできます。




その空間の中で物体が曲がることのできる方向の個数を「曲がりの自由度」と呼ぶことにしましょう。この数が2だとその物体が絡まることができるのです。

3次元空間の次元数の3からひもの次元数の1を引くと2になります。この2は曲がりの自由度をあらわします。

曲がりの自由度=3-1=2


次に布の場合を考えてみましょう。布をこのように置きます。布は2次元の物体です。



この布はこのように1方向にしか曲げられません。曲げられるのは上方向だけですから。やわらかい布だけでなく、下敷きのように硬い物でも同じように曲げることができます。



曲がりの自由度を計算してみましょう。空間の次元数から物体の次元数を引けばよいのでした。

曲がりの自由度=3-2=1

3次元空間の中で、布や下敷きのような物体を曲げられる方向が1つであることが、この計算で示されたわけです。そして曲がりの自由度は2ではありませんから布や下敷きが3次元空間で絡まないことも示されたことになります。


3次元の物体のときは、もうおわかりだと思います。このような物体はどの方向にも曲げることができませんよね。空間は3次元です。



曲がりの自由度=3-3=0

このようにして3次元空間の中では3次元物体を曲げられないことが計算できました。曲がりの自由度も2ではありませんから、この物体は3次元空間では絡むことができません。


これまでのことを表にすると、このようになります。




同じ方法で2次元空間(平面)で2次元の布が絡まないことも計算できますね。曲がりの自由度は空間の次元数2から物体の次元数1を引いて1が求まります。1本のひもだけでなく2本のひもも絡むことはありません。




さて、前回の記事では多次元空間で絡むことができる物体の次元数を紹介しました。その組み合わせとはこのようなものでした。

3次元空間では1次元のひもとひも、もしくはひも自身が絡まります。



4次元空間ではは2次元の面と面、もしくは面が自分自身で絡まります。



5次元空間では3次元の立体と立体、もしくは立体が自分自身で絡まります。



そして6次元空間では4次元の超立体と超立体、もしくは超立体が自分自身で絡まります。


それぞれについて曲がりの自由度を計算すると、この表が出来上がります。




曲がりの自由度はどれも2ですね。多次元空間でこれらの次元の物体が絡むことを計算で示すことができました。

2次元物体や3次元物体がどのようにしたら2方向に曲げることがでくるかについては謎のままだと思いますが、これはまた後日説明させていただきます。


今日の記事をまとめると次の3つになります。

1)絡まるためには物体が「交差してループができて相手(または自分自身)を囲む」ことが必要

2)そのためにはその空間で物体が2方向に曲がることが必要

3)物体が曲がる方向の数(曲がりの自由度)は空間の次元数から物体の次元数を引いて求める


さて、次回の記事では「ひもが絡まるのは3次元空間だけでおきる」こと、そしてどんなに複雑に絡まったひもでも4次元空間では簡単に解けてしまうことを説明いたします。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(1):はじめに
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3c2bacd624695dcad7dd2fa9feadd5bd

多次元空間へのお誘い(2):4次元空間での布団干し
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/81fb8e0a7f148699fcda78486f868903

多次元空間へのお誘い(3):多次元空間で絡み合うモノは?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26b5ed44928e4b4148c3e71c99e401f6


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多次元空間へのお誘い(5):ひもが絡まるのは3次元空間だけ

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絡まってしまったネックレス

ひもが絡まるのは3次元空間だけ

前回の記事までの説明で、空間の中で絡んでしまうのは、空間の次元より2つ小さい次元の物体であることがご理解いただけたと思います。だから3次元空間で絡まるのは1次元のひもだけなのです。

2次元空間、すなわち平面ではひもが絡まないことは簡単にわかりますよね?平面内しか動けないひもは交差できないからです。



でも3次元空間で絡んでいるひもは、4次元空間ではどうなるのでしょう?

実をいうとひもは絡まずに簡単にほどけてしまうのです。というより3次元空間では絡んでいるひもは、その3次元空間を含んでいる4次元空間の中では絡んでいないのです。

今日はそのことをご説明いたしましょう。


第2回の記事で、このような写真をお見せしました。



これは2次元空間で絡んでいる「ひもと点」です。2次元空間でひもは交差することができませんから、絡んでいる状態を無理矢理作ったのだとご理解ください。写真の撮り方が悪くて青いひもの端が面から浮いてしまっていますが、本当は面にぴったりくっついている写真を撮りたかったのです。

2次元空間の縦と横のどの方向に引っ張っても、青いひもは赤い点にさえぎられてしまい、絡みをほどくことはできません。ほどくためには再びひもを上の方向に持ち上げないとなりませんから駄目です。ひもを持ち上げることは禁止されています。


けれども3次元空間にいる私たちの立場から見るとどうでしょうか?ひもを持ち上げれば簡単にはずせますね。このようにするわけです。



上の面と下の面は2次元空間のパラレルワールドです。下の空間から突如として青いひもは消えてしまい、上の空間に移動します。上の空間で青いひもを横にずらして、再び下に移動させれば下の空間で赤い点と青いひもは離れた場所に置かれていることになります。

3次元空間では、もともとひもと点は絡まっていなかったので、上方向すなわちZ軸の方向の移動を使って絡まりをほどくことに成功したのです。


同じ方法を使って3次元空間で絡まっているひもをほどくことができます。どんなに複雑に絡まっていても大丈夫です。

第3回の記事で紹介した4次元空間に浮かぶ3次元空間のパラレルワールドはこのようなものでした。写真には書いてありませんが上方向がU軸が延びている方向です。



3次元空間に絡まった状態のひもを用意します。3次元空間内でほどくことは可能ですが容易ではありません。



そして青いひもを4次元空間内でU軸の方向に持ち上げます。この写真ではわかりませんが、U軸方向では青いひもは赤いひもにぶつからなくてすむので持ち上げることができるのです。このとき下の3次元空間から青いひもは一瞬で消滅します。



それから青いひもを上の3次元空間内でそのまま右にずらし、ふたたびU軸にそって下に移動させれば、もとの3次元空間に戻ります。赤と青の糸はもう絡んではいません。

4次元空間ではもともとひもは絡んでいないから、このようなことができるのです。


4次元空間で絡んでいる2次元物体も5次元空間のV軸方向に移動させれば、ほどくことができます。




5次元空間で絡んでいる3次元物体も6次元空間のW軸方向に移動させれば、ほどくことができます。






「なんだそんなことか。」と拍子抜けしてしまった方がいるかもしれませんね。僕もあまり面白いとは思いませんでした。要するにこういうことです。

「ある次元の空間で絡んでいる物体をほどくためには、そのひとつ上の次元の空間の座標軸の方向に移動すればよい。」

というわけです。また、次のように言ってもよいでしょう。

「ある次元の物体が絡んでいるときは、その物体の曲がりの自由度が3になるような空間の次元の座標軸の方向に移動すればよい。」

1次元のひもが絡んでいるときは1+3=4、つまり4次元空間を利用すればよいわけです。

これが私たちが知りえた多次元空間で成り立つ常識です。


ここでこの記事を終えることができれば、みなさんも「ああ、そういうことだったのか。」と安心して読み終えることができたはずですし僕もそれを望んでいました。しかし、とんでもないことを僕は見つけてしまったのです。


ウィキペディアの「結び目理論」の項目の中で「高次元結び目・絡み目」のところに次のようなことが書かれています。




高次元空間での高次元物体の結び目が研究されていることにも驚きましたが、僕が特に驚いたのは「いずれもm=n+2の場合もm>n+2の場合も研究されている。」の部分です。

ウィキペディアに書かれていることの一部を、私たちの言葉に翻訳すると次のようになります。

「高次元絡み目とはm次元の空間の中にあるn次元の物体の絡みを研究する。mはnより2以上大きい。m=n+2の場合もm>n+2の場合も研究されている。」

私たちが知りえた多次元空間の常識で物体が絡むのは「m=n+2」のときだけでしたよね。2が曲がりの自由度なのですから。m次元空間で絡むのはm-2次元の物体だけのはずです。

ところがここには「曲がりの自由度が2より大きい」ときの絡みの研究が行われていると書かれているわけです。たったひとつの等号が不等号に変わるだけで世界は大きく変わってしまします。

つまり、この記述は絡んでいる物体をほどくために次元数が2つ大きい空間を使ってもできないことがあるのだと言っています。それは曲がりの自由度が3以上でも絡んでしまう物体があるということと同じです。

どのようなときに絡みをほどくことができて、どのようなときにできないか、どこまで次元の高い空間を利用すれば絡みがほどけるのか、そして曲がりの自由度が3以上のときにおきる物体が絡む現象がどのようなものであるかはこの理論を研究しないとわかりません。

ともかく、私たちの常識が成り立たない状況がずっと高次元の空間にあることがわかりました。


なんというか、多次元空間は奥が深いというか、思わぬところに不思議がぽっかり口を開けている感じがします。結び目理論を学んでいない僕には、今のところ手も足も出ません。

中学生、高校生にも理解していただけるように説明すると第1回の記事で書きましたが、ここだけは勘弁してください。

引用箇所の最後には「高次元結び目・絡み目の場合、1次元結び目・絡み目と違った興味深い現象も少なくなく、excitingな研究テーマの一つである。」と書いてあります。興味を持たれた方はいつか結び目理論に挑戦してみてください。

arxiv1304.6053 Introduction to high dimensional knots: Eiji Ogasa
高次元結び目・絡み目の初心者向けの入門記事(2013年の論文):PDFファイル

A survey of applications of surgery to knot and link theory: J Levine, K Orr - Ann. of Math. Stud, 2000
高次元結び目・絡み目の上級者向けの入門記事(2000年の論文):PDFファイル


さて、次回の記事では「モノはどのように曲がる?」について説明します。もちろん多次元空間での話です。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(1):はじめに
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3c2bacd624695dcad7dd2fa9feadd5bd

多次元空間へのお誘い(2):4次元空間での布団干し
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/81fb8e0a7f148699fcda78486f868903

多次元空間へのお誘い(3):多次元空間で絡み合うモノは?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26b5ed44928e4b4148c3e71c99e401f6

多次元空間へのお誘い(4):絡まるとはどういうことか?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4a3a231b3fc99a92eefc88d94f8e4fb8


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発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ

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中級者向けの量子力学の名著、J.J.サクライの教科書の下巻の第2版が6月25日に発売される。アマゾンでは現在予約受付中だ。これで上巻、下巻ともに第2版が揃うことになった。

現代の量子力学(上) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
現代の量子力学(下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ

 


内容

上巻
本書のもとである、J.J.サクライによる Modern Quantum Mechanics は1985年の刊行以来、量子力学の核心に迫る名著として高く評価され世界中で読み継がれてきた。ここでは波動関数もシュレーディンガー方程式も与えられた仮定ではなく、全てが明確に提示された基礎概念から極めて自然に導かれている。
この第2版では実験家であり教育者であるジム・ナポリターノ氏が共著者となり、量子力学の基礎に関連する新しい実験データや講義で必要となる一般的事項や問題を追加した。そして相対論的量子力学への拡張を考慮して改訂がなされている。
理論の道筋を説得力をもって示す一方、その帰結である極めて非古典的な実験事実を紹介するのも本書の特徴である。中性子の重力干渉、アハラノフ-ボーム効果、ベルの不等式の検証や最近のニュートリノ振動のデータなどは、初学者にとって新鮮な驚きであろう。本書は量子力学の魅力と普遍性を雄弁に語っている。

下巻
著者J.J.Sakurai(桜井純1933‐1982)は東京で生まれ、高等留学生として渡米して以来アメリカで高等教育を受けた理論物理学者。素粒子物理学の分野で先駆的理論を提出していたが、1982年CERNに出張中に急逝、本書はその遺稿をもとにする。上巻に収めた第3章までは原稿が完成していたが、この第2版の下巻では共著者となった実験家のJim Napolitanaが大胆に再編を試みた。初版が非相対論的量子力学の記述にとどまっていたのに対し、第2版では場の理論とのつながりを意識して、第2量子化を用いた多粒子系の扱いや電磁場の量子化、ディラック方程式による水素原子の問題なども含まれ内容は相対論的量子力学まで広がっている。また近年の実験からベリーの位相、カシミール効果、スクィーズド光などのデータも提示され、いまなお魅力を増している量子力学の世界が紹介されている。共著者は本書の初版を教科書としてきた経験から、改訂に当たって内容の選択や章末の問題など随所に教育的配慮をしている。

著者略歴
桜井明夫
1967年東京大学理学系大学院博士課程修了。1967~1978年東京大学物性研究所、ベルリン自由大学理論物理学研究所勤務。1979~2007年京都産業大学理学部勤務。専攻:物性理論。現在:京都産業大学名誉教授。理学博士。


現在、詳細な目次情報はネット上で公開されていないので、本が入手できたら詳細に比較して以下に掲載する予定である。以下は現在わかっているレベルの目次情報だ。下巻の第6章と第7章の順番が初版と逆になっていることがわかる。

上巻

第1章 基礎概念(シュテルン‐ゲルラッハの実験、ケット、ブラおよび演算子 ほか)
第2章 量子ダイナミックス(時間的発展とシュレーディンガー方程式、シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示 ほか)
第3章 角運動量の理論(回転と角運動量の交換関係、スピン1/2の系と有限回転 ほか)
付録(電磁気の単位、シュレーディンガーの波動方程式―基本的解の要約、角運動量の合成則―不等式(3.8.38)の証明)

下巻

第4章 量子力学における対称性
第5章 近似法
第6章 散乱理論
第7章 同種の粒子
第8章 相対論的量子力学
付録(電磁気の単位、シュレーディンガーの波動方程式―基本的解の要約)


翻訳の元になった英語版はこちら。Kindle版がでているのがうれしい。

「Modern Quantum Mechanics: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」

Kindle版 ペーパーバック ハードカバー




初版については、このブログでも紹介記事を書いているのでお読みいただきたい。これらの記事には詳細目次も記載しているので参考にしてほしい。

現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/24fd19db8b5e2169820606e076972fed/

現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6ce1bc17d265ec766198418965a2c37/


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多次元空間へのお誘い(6):4次元空間を利用した金庫破り

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2次元空間の金庫

前回の記事の終わりのほうで「その根拠はありますので、次回の記事でご説明いたします。」とお約束しました。今回はそれを説明させていただきます。

5次元空間や6次元空間はともかく、4次元空間では曲がりの自由度が3という条件で1次元物体(ひも)の絡みは生じないでしょうし、4つ目の方向(U軸方向)への移動によって3次元空間内でおきているひもの絡みは解ことができるはずなのです。

その根拠というのは「4次元空間を利用した金庫破り」の話が成り立っているということです。この話は4次元空間の説明でしばしば引用されますよね。ネットで検索するといくつも見つかると思います。

ご存知ない方のために、簡単にご説明いたしましょう。


4次元空間を利用した金庫破り

記事トップの写真は「2次元空間にある金庫」をあらわしたものです。赤いひもに囲まれたお金は、平面の中で生活している「2次元人」からは見えません。お金を取り出すためにはひもを切るしかありませんよね?

ところがこれを3次元空間の私たちから見ると、金庫の中のお金は丸見えです。透視でもなんでもありません。お金は3次元空間の上の方向に「露出」しているのですから。

ですから私たちは2次元人たちに気づかれないように、上から(Z軸方向から)お金をつまんで金庫の中から取り出すことができます。これが「3次元空間を利用した金庫破り」です。

同じ方法が3次元空間にある金庫でも可能です。3次元空間の金庫とはこのようなものです。



縦横、右左、上下のどの方向からも中のお金は見えません。もちろん扉を開けるか破壊するかしないとお金は取り出せません。

ところが4次元空間の上方向(U軸方向)からだと中のお金は丸見えです。X線やCTスキャナのように透視するわけではなく、もともとお金はU軸方向に露出しているのです。これは2次元の金庫のことを思い出せば理解できますよね?

つまり4次元空間のU軸方向から金庫破りが簡単にできるわけです。


3次元空間の金庫のほうが3次元空間で絡まっているひもよりも、物体の移動の自由度という意味で制限が強いですよね。ですから金庫破りの例で4次元方向を利用した物体の移動ができるのならば、3次元空間でからんだひもを4次元方向を利用して移動させ、絡んでいない状態にすることが可能なわけです。

つまり4次元空間ではひもの曲がりの自由度は3で、そのときひもは絡んでいません。また4次元空間で面の曲がりの自由度は2です。そして4次元空間で面は絡むことになります。

前回の記事中に引用したウィキペディアの文面で「高次元では曲がりの自由度が3以上のときでも物体が絡む可能性があること」が述べられていましたが、4次元空間だと面の曲がりがりの自由度は3にはなれません。なぜなら面の自由度を3以上にするためには5次元以上の空間が必要だからです。


これが冒頭で「根拠だ」と申し上げたことなのです。


次回の記事では「モノはどのように曲がる?」と「多次元空間にあるモノは低次元空間からどう見える?」について説明します。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(1):はじめに
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3c2bacd624695dcad7dd2fa9feadd5bd

多次元空間へのお誘い(2):4次元空間での布団干し
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/81fb8e0a7f148699fcda78486f868903

多次元空間へのお誘い(3):多次元空間で絡み合うモノは?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26b5ed44928e4b4148c3e71c99e401f6

多次元空間へのお誘い(4):絡まるとはどういうことか?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4a3a231b3fc99a92eefc88d94f8e4fb8

多次元空間へのお誘い(5):ひもが絡まるのは3次元空間だけ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/98973ad9f27aec4c230c26c128a9f650

多次元空間へのお誘い(7):モノはどのように曲がる?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4004986f7783b52e64c4cb3131c21cb3


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多次元空間へのお誘い(7):モノはどのように曲がる?

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4次元空間にある2枚の曲面

モノはどのように曲がる?そして多次元空間にあるモノは低次元空間からどう見える?

まず、みなさんに質問させていただきます。

次の写真は4次元空間内にある1次元のひもをあらわしたものです。下の居住空間(透明プラスチックの平面)が3次元空間であることに注意してください。ひもは居住空間に突き刺さっています。居住空間は私たちが住んでいる空間という意味です。



このとき3次元の居住空間内では、このひもはどのように見えるでしょうか?1次元のひもとして観測されるでしょうか?それとも0次元の点として観測されるでしょうか?

また記事トップの写真は4次元空間内に2次元の面が2枚浮いている状況をあらわした写真です。面は両方とも下の3次元の居住空間に突き刺さっています。

さて、下の3次元の居住空間ではこれらの面はどのように見えるでしょうか?あいかわらず面として観測されるでしょうか?それとも1次元のひもとして観測されるでしょうか?

この問題が難しく思えるのは4次元空間をあらわすために用いているこのモデルが不完全であるためです。3次元空間内で4次元空間を正確にあらわすモデルは作ることができません。

今回の記事をお読みいただければ、この問題の答とどのように考えればよいのかが、わかるようになるでしょう。


まずこの写真は2次元空間にあるひもをあらわしています。平面内で1次元の物体として見えることは簡単にわかりますね。また全空間は3次元ですから、3次元空間から見ても1次元の物体です。



次は3次元空間にあるひもをあらわしています。2次元空間からは0次元の点として見えることもおわかりだと思います。線と面の交わりは「点」になるからです。



だから、2次元空間から3次元空間にあるひもを観測した場合は、0次元の点として見えるか、1次元の線として見えるかのどちらかです。一般的には前者のケースが多いでしょうから0次元の点として観測されると言ってよいでしょう。「一般的には」とはランダムにひもを3次元空間に置いた場合という意味です。


次に2次元空間に置いた2次元の面を考えてみましょう。この写真だと2次元空間から観測しても、写真全体の3次元空間から見ても2次元の面に見えます。



そして布の右端から少しずつ持ち上げてみましょう。



3次元空間から見ると布は曲面になっていますが、2次元空間から見ると正方形の面の右半分は消滅してしまい、全体として2次元空間と布の面が接触している長方形の部分だけ見えるようになったことがおわかりでしょうか?

そしてさらに布を持ち上げていくとこうなります。



2次元空間にとって、布は1次元の線になってしまいました。さらに持ち上げると布は2次元空間を離れるので、この線も消滅してしまいます。

あ、そうそう。2次元空間から布が点として見えることもあります。最初に布をこのように置けばよいのです。



布の右端の角をつまんで持ち上げていけば、最後は左端の角が点として2次元空間から見えるようになりますよね?

これまでのことをまとめると、3次元空間に置かれた2次元の面は2次元空間からは0次元の点、1次元の線、2次元の面として見えることになります。そして一般的には1次元の線として観測されると言ってよいでしょう。「一般的には」とはランダムに面を3次元空間に置いた場合という意味です。


ところで、私たちはX軸、Y軸、Z軸の方向に伸びている3次元空間に住んでいます。たとえば私たちの「部屋」はこの図の直方体のようなものです。この部屋の「床」はX軸とY軸が伸びている平面ということになります。



私たちの3次元空間はそのまわりに存在する4次元空間に含まれています。4次元空間はX軸、Y軸、Z軸、U軸の方向に伸びている空間です。そして4次元空間にとってその4つの軸は「公平」です。ですのでこの4次元空間には「X軸、Y軸、U軸の方向に伸びている3次元空間」もあるはずです。それはこのような空間のことです。



この空間は私たちにとってパラレルワールド(並行空間)ではありません。名前を付けるとすれば「バーティカルワールド(垂直空間)」という呼び方がふさわしいでしょう。この3次元空間は私たちの3次元空間と直交しているのです。

線と線が直交したり、面と面が直交することは小学校で学びますが、空間と空間が直交するというのは面白いですよね。そしてこの2つの3次元空間はX-Y方向に広がる「床」を共有していることにも気付きます。

つまり2つの部屋の中は別々の空間なので、それぞれの空間にいる生物はお互い相手の存在が見えないわけですが、私たちが床に落書きをすると垂直空間に住んでいる人は床に急に落書きがあらわれるのでびっくりするわけです。また彼が床に落書きをすると、今度は私たちがびっくりすることになります。彼は4次元方向(U軸の方向)を認識しているので、私たちにとって彼は4次元方向の空間にいることになります。


では、なぜ彼の住んでいる3次元空間を「垂直空間」と呼ぶのでしょうか?それは次のように1つ次元数を減らして考えるとわかります。

まず、ふつうの3次元空間を考えます。3次元空間はX-Y-Z軸の方向に伸びています。3次元空間にとってはX軸、Y軸、Z軸はどれも「公平」です。

3次元空間には2次元の空間が含まれています。たとえばX-Y軸の方向に伸びている2次元空間(面)とY-Z軸の方向に伸びている2次元空間(面)がありますよね。これをそれぞれ私たちは「床」と「壁」と呼んでいるわけです。



床と壁は直角に交わっています。2次元の平面と平面が直交している状況です。だから床に対して壁はバーティカルワールド(垂直空間)に相当します。直交する平面(床)と平面(壁)は1本の直線(床と壁が交差している直線)を共有しています。

4次元空間にとって私たちの3次元空間(X-Y-Z空間)と、もうひとつの3次元空間(X-Y-U空間)は(3次元ではありますが)床と壁のようなものです。ですから3次元空間どうしが直交していると考えるわけです。

同様にして5次元空間にはお互いに直交する4次元空間がありますし、6次元空間にはお互いに直交する5次元空間があります。次の組み合わせはその例です。

- 5次元空間(X-Y-Z-U-V空間)では4次元空間(X-Y-Z-U空間)と(X-Y-Z-V空間)が直交している。

- 6次元空間(X-Y-Z-U-V-W空間では5次元空間(X-Y-Z-U-V空間)と(X-Y-Z-U-W空間)が直交している。

直交するのはこれまで直線と平面だけでしたが、このようにして直交の概念を大幅に拡張(一般化)することができました。


さて、垂直空間に住んでいる彼に私たちが行なった「布の引き上げ」の実験をしてもらうことにしましょう。

同じ写真を使いますが、今度は持ち上げる方向は彼にとっての上方向(U軸方向)、つまり私たちから見れば4次元の方向です。まず、垂直空間の彼は布をこのように置きます。



私たちと彼は「床」を共有しているので、私たちから見ても平面(2次元)に布が置かれているように見えます。

そして彼は布の右端から少しずつ持ち上げていきます。



すると私たちにはどう見えるでしょうか?

U軸方向は私たちには見えない世界ですので、布は右から少しずつ消えていくように見えるはずです。布はまったく持ち上がるようには見えません。なぜなら持ち上げる方向はU軸方向であってZ軸方向ではないからです。

布が消えていく様子はもやもやと煙のように消えるのではなく、消えている部分と残っている部分がはっきりわかれて見える感じになります。

正方形の布はだんだんと細長い長方形になり、やがて1本の線になってしまうことがおわかりでしょうか?



そして彼がさらに布を持ち上げると、私たちの世界から布は完全に見えなくなってしまいます。

これが4次元空間に置かれた2次元の物体(面)を3次元空間で私たちが見る状況なのです。一般に4次元空間に置かれた2次元の物体は3次元空間では線として観測されます。

4次元空間に置かれた2次元物体が曲面の場合、私たちは3次元空間に赤いひもがふわふわ漂っているように見えます。不思議な感じですね。

ところで2次元の布が私たちに点として見えることもあります。垂直空間の彼が最初に布をこのように置けばよいのです。彼は正方形の右側の角をつまんでU軸方向に持ち上げていくわけです。



垂直空間の彼にとって、これらの実験は私たちがX-Y-Z空間で行なっているのと全く同じになので、彼は何の不思議も感じないわけです。


次に3次元空間に3次元の物体(立方体)を置いた状況で同じことをしてみましょう。といっても3次元空間で立方体を曲げることができませんから、私たちにはこれ以上どうすることもできません。



そこで3次元の垂直空間にいる彼にお願いして、4次元方向(U軸)方向に持ち上げてもらうことにします。私たちの3次元空間は4次元空間に含まれているので、曲がりの自由度が1つあるのです。これがU軸方向に持ち上げるということになります。

3次元の垂直空間にいる彼とは床だけを共有しているので、彼にとってこの物体は2次元(正方形)に見えます。その端を持って彼が引き上げると立体が現れるので彼は驚きます。けれども彼は気を取り直して持ち上げ続けます。

私たちに見える立方体の変化はどのようなものでしょうか?右のほうから垂直にスライスしたように、どんどん消えていくはずです。4次元方向(U軸方向)は私たちには見えないのですから。

そして立方体は直方体に変化しながらどんどん薄くなっていきます。残っている部分と消えてしまった部分の境ははっきりしていることでしょう。

そして最後に直方体は完全に薄くなり、最初にあった立方体の左側の面だけが「正方形」として残ることになります。彼がU軸方向への引き上げ操作を続けると、しまいに立方体は完全に私たちの空間から消滅します。

私たちにとって立方体は3次元空間に置かれていると同時に全体空間として4次元空間の中に置かれています。最初は私たちの3次元空間に立方体は完全に含まれていましたが、4次元方向へ曲げることは、4次元空間に一般的な配置で立方体を置くことに相当します。つまり4次元空間に一般的な配置で置かれた3次元の物体は2次元物体(面)として3次元空間から観測されることになります。

一般に4次元空間にある物体は、3次元空間には空中を浮遊する曲面のように見えます。これもやはり不思議な感じがしますね。

ところで4次元空間に置かれた立方体が、私たちの3次元空間から1次元物体(直線)に見えることもありえます。それは垂直空間の彼が次のように立方体を置いて、U軸方向への引き上げをする場合です。スライスするように物体は右から消えていきます。最後に残るのは左端の直線だけですよね。



また4次元空間に置かれた立方体が、私たちの3次元空間から0次元物体(点)に見えることもあります。それは垂直空間の彼が次のように立方体を置いて、U軸方向への引き上げをする場合です。スライスするように物体は右から消えていきます。最後に残るのは左端の角の点だけです。





さて、この記事の冒頭でみなさんに質問させていただいた件ですが、もう答はおわかりでしょうか?

4次元空間に次のように置かれた1次元物体(線)が、3次元空間からどのように見えるか?という質問です。



これは次のように考えるとわかります。この写真のように布の一部が線だと考えればよいのです。



上の例で、この布を右端を持って4次元方向(U軸方向)に持ち上げれば、最後に残るのは布の左側の端の1次元の線でした。そして布の上に置いたひもだけに注目すれば、最後に残るのが0次元の点であることがわかります。

ですので、正解は「0次元の点に見える。」です。


また記事トップに掲載した写真の問題はもうおわかりですよね。4次元空間に浮かんだ2枚の2次元物体(面)が3次元空間からどう見えるかという問題です。



正解は「1次元の線に見える。」です。この写真のような状況では、3次元空間にふわふわと青い線と赤い線が1本ずつ浮遊しているように見えることになります。


ここまでのことをまとめると次のようになります。結果としてはシンプルですね。

- 4次元空間に1次元物体を置くと一般的に3次元空間からは0次元の点として観測される。

- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。

- 4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。


ところで私たちはすでに3次元以下の空間で次のことを経験的事実として知っています。

- 線と線はの交わりは点、線と面の交わりは点

- 面と面の交わりは線、線と立体の交わりは線

- 面と立体の交わりは面

- 立体と立体の交わりは立体

赤文字にした箇所を物体、青文字にした箇所を空間と考えれば、次のようになりますよね。

4次元空間では「線と立体の交わりは線」、つまり「1次元物体を3次元空間で見ると1次元物体として観測される。」となり、当たり前のことを言っているわけですが、今回求めた結果と矛盾します。

そして4次元空間では「面と立体の交わりは面」、つまり「2次元物体を3次元空間で見ると2次元物体として観測される。」となり、当たり前のことを言っているわけですが、今回求めた結果と矛盾します。

さらに4次元空間では「立体と立体の交わりは立体」、つまり「3次元物体を3次元空間で見ると3次元物体として観測される。」となり、当たり前のことを言っているわけですが、今回求めた結果と矛盾します。

これはどのように解釈したらよいでしょうか?物体と物体の次元数と交わっている部分の次元数の関係は、物体を取り巻いている空間の次元数とは無関係のはずです。この謎解きはみなさんへの宿題とさせていただきます。

なにせイメージしにくい多次元空間でのことですから、論理的にどうなるのか注意して一歩ずつ考えを進めることが大切です。


次回の記事では、今回解説した結果が正しいことを確認するために、また別の方法で同じ問題を解説します。特に4次元空間内の2次元物体が3次元空間では線として観測されることを確認してみます。テーマは「多次元の球と球面」です。


関連記事:

多次元空間へのお誘い(1):はじめに
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3c2bacd624695dcad7dd2fa9feadd5bd

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多次元空間へのお誘い(3):多次元空間で絡み合うモノは?
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多次元空間へのお誘い(4):絡まるとはどういうことか?
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多次元空間へのお誘い(5):ひもが絡まるのは3次元空間だけ
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多次元空間へのお誘い(6):4次元空間を利用した金庫破り
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/42ac124db2b5299c6755126838e318ed


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多次元空間へのお誘い(8):通用しない一般常識

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3次元空間で交わる立体?

注意:この記事には誤りが含まれています。たとえば「4次元空間では面と面の交わりは点です。」が正しいのです。この記事はそのままにして、後日訂正記事を書きます。


通用しない一般常識

前回の記事の最後で矛盾がでてきてしまいましたので、今日はこれを解決することにしましょう。

前回は4次元空間の中の垂直空間にいる「彼」に手伝ってもらいながら、次の結論を得たのでした。

- 4次元空間に1次元物体を置くと一般的に3次元空間からは0次元の点として観測される。
- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。
- 4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。

その後、3次元空間で経験的事実として知っている次の事がらをあてはめた結果、矛盾がでてきてしまったわけです。これらは私たちの世界の一般常識です。

- 線と線の交わりは点、線と面の交わりは点
- 面と面の交わりは線、線と立体の交わりは線
- 面と立体の交わりは面
- 立体と立体の交わりは立体

どこが矛盾しているかというと、たとえば「立体と立体の交わりは立体」についていえば、3次元のものと3次元のものの交わりのことについて述べているから、立体(3次元)と3次元空間の交わりを考えることにも使えるわけです。すると「3次元空間で観測される立体の次元は3次元です。」という文章ができあがりますよね?つまり、あたりまえのことを言っているだけにすぎません。

でもこれは上の「4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。」とは明らかに矛盾しています。


矛盾を解決する方法をひとことで言ってしまうと、あなたが「立体と立体の交わりは面である。」ということを理解できるかどうかにかかっているのです。

「えっ!それおかしいでしょ!」という声が聞こえてくるようです。なぜなら一般常識と違うわけですから。

理解できていない方が多いと思いますので、ひとつずつ確認していきましょう。全部確認しなくても大丈夫なので、交わる物体が同じ次元の組み合わせのものだけ使って確認させていただくことにします。


3次元空間の一般常識

「線と線の交わりは点」については、きっとこういう状況を思い浮かべたと思います。3次元空間の中で青い線と赤い線が交わっています。そして交わりは「点」です。



「面と面の交わりは線」のときは、こういう状況ですよね?3次元空間の中で青い面と赤い面が交わっています。交わっている部分は「線」です。



そして最後に「立体と立体の交わりは立体」のときはこういう状況を思い浮かべていると思うのです。3次元空間の中で青い立方体と赤い立方体が交わっていて、交わっている部分を黄色で示しています。



でも実をいうとこれは「交わっている」のではなく「重なっている」だけです。おわかりでしょうか?

おわかりにならない方のために、次元をひとつ下げてご説明しましょう。「2次元空間の一般常識」です。2次元空間には点と線と面しか存在できません。


2次元空間の一般常識

「線と線の交わり」について、2次元生物としての「彼」は、次のような状況を思い浮かべます。2次元空間の中で青い線と赤い線が交わっています。そして交わりは「点」です。



「面と面の交わり」については、次の状況を思い浮かべます。2次元空間の中で青い線と赤い線が交わって....いや、重なっています。そして重なっている部分は線ではなく「面」です。2次元空間には「高さ」がとれないので、こういう重なり方しかできません。



おわかりになりましたよね?

まだおわかりにならない方のために、もうひとつ次元を下げてみます。「1次元空間の一般常識」です。1次元空間には点と線しか存在できません。


1次元空間の一般常識

「線と線の交わり」について、1次元生物の「彼」は、次のような状況を思い浮かべます。1次元空間の中で青い線と赤い線が交わって...いや「重なって」います。そして重なっている部分は点ではなく「線」です。




「交わる」と「重なる」の違いがおわかりになりましたでしょうか?

「交わる」ためには、物体の次元よりひとつ大きい次元の空間が必要で、その空間の中で物体と物体が共通部分を持つのです。

「重なる」ためには、物体の次元と同じ次元の空間の中で、物体と物体が共通部分を持つわけです。

ですから、私たちの3次元空間での立体は「交わっている」のではなく「重なっている」だけです。立体と立体が交わるためには4次元空間が必要なのです。

ですから、3次元空間の一般常識は次のように書き換えなければなりません。

- 線と線の交わりは点、線と面の交わりは点
- 面と面の交わりは線、線と立体の重なりは線
- 面と立体の重なりは面
- 立体と立体の重なりは立体

あともうひとつ気がつくことは2次元の一般常識の中の「面と面の重なりが面」になっていることです。3次元空間での常識だと「面と面の交わりは線」ですよね?「重なり」が「交わり」に変わることで「面」が「線」になるのです。次元がひとつ下がります。他の例でも確認していただけるとわかりますが、該当するすべてのケースでこのことはあてはまるのです。

言葉の言い換えだけで結論を出している感じですが、3次元空間で「立体と立体の重なりは立体(3次元)」ならば「立体と立体の交わりは面(2次元)」ということが言えるのです。そして、交わるために4次元空間が必要になります。


4次元空間の一般常識

同様にして「重なり」を「交わり」に置き換えて、2つの物体の共通部分の次元をひとつ下げてすべて書き出すと次のようになります。

- 線と線の交わりは点、線と面の交わりは点
- 面と面の交わりは線、線と立体の交わりは点
- 面と立体の交わりは線
- 立体と立体の交わりは面

これにもうひとつ次の常識を加えれば「4次元空間の一般常識」が得られます。

- 超立体と超立体の重なりは超立体


そして「4次元空間の一般常識」の中の次のものが、前回の記事の結論と一致していることは、次の項目を見ればおわかりですね?

- 線と立体の交わりは点
- 面と立体の交わりは線
- 立体と立体の交わりは面

- 4次元空間に1次元物体を置くと一般的に3次元空間からは0次元の点として観測される。
- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。
- 4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。

これで矛盾が解決しました。めでたし、めでたしです!

矛盾が生じてしまった理由は、一般常識にとらわれて3次元空間で交わることができる物体が2次元までだということを気付かなかった、もしくは忘れていたからです。


一般に次のような結論になります。2つの同じ次元数の物体が交わるとき、その交わりは1つ次元が小さい物体になるわけです。きれいに数字が並びます。

- 1次元物体どうしの交わりは0次元物体
- 2次元物体どうしの交わりは1次元物体
- 3次元物体どうしの交わりは2次元物体
- 4次元物体どうしの交わりは3次元物体
- 5次元物体どうしの交わりは4次元物体
- 6次元物体どうしの交わりは5次元物体
- N次元物体どうしの交わりはN-1次元物体


表にするとわかりやすいですね。次元が違う物体の組み合わせも埋めておきます。

赤い物体の次元数を横にとり、青い物体の次元数を縦に取ります。そして赤と青の物体が交わっている部分の次元数が黒い数字です。赤と青の箇所は物体でも空間でもかまいません。2つが交わるために必要な空間は、赤と青の次元数の大きいほうよりさらに1つ高い次元の空間となります。




このように次元が違う空間は、それぞれ少しずつ違う一般常識をもっています。

私たちの世界の一般常識では立方体と立方体の重なりは3次元になるわけです。これは一般常識が4次元空間の事情を考慮していないからです。

4次元以上の高次元空間では「立体と立体の交わりは面」ということが言えるわけですし、これが3次元以上のすべての次元の空間で成り立っているわけですから「普遍的な事実」として受け入れるべきないのでしょう。

けれども、就職試験や入学試験では、やはり「立体と立体の交わりは立体」、「立体と面の交わりは面」、「立体と線の交わりは線」と回答してください。会社や学校は4次元空間にあるわけではないですから。


「交わり」と「重なり」の使い分けのあいまいさ

日常生活で使われる「交わり」と「重なり」という言葉にはあいまいな部分がありますし、それどころか算数や数学の教科書でも使い方はまちまちなのです。

たとえば「集合」を学ぶときに使われるベン図では重なっている部分を集合の「交わり」と呼んでいます。



また次のように2つの円柱の共通部分の体積を求める問題では「円柱と円柱が交わっている部分の体積を求めよ。」などと表現しています。今回の記事の言い方では「重なっている部分」となるべきですよね。




義務教育では「空間図形」のところで「物体と物体の交わり」のことを学びます。それでは教科書は私たちに間違ったことを教えていたのでしょうか?

いいえ、違います。調べてみると「物体と物体の交わり」のところで教科書では「線と面の組み合わせについてだけ説明しているのです。「立体と平面の交わり」や「立体と直線の交わり」については触れていません。

「そんなはずは。。。」と私たちが思ってしまうとしたら、それは教科書のほかのところで、次のような図を目にしていたからだと思うのです。

たとえば「立体の断面」について学ぶ箇所では、次のような図を目にします。「4次元空間での交わり」は必要ありませんね。



また、「直方体の対角線」について学ぶ箇所では、次のような図を使います。これも「物体の交わり」とは関係ありません。




時がたち、何をどこで学んだか忘れてしまった時点で、立体のことも含めて「交わりの関係」が私たちの一般常識に組み込まれてしまったのではないでしょうか?

人間の記憶などあてにならないものです。


さて、次回の記事では前回の記事で導いたことのうち、以下のことを別の方法を使って確認することにいたします。

- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。

なぜ、しつこくこのことを確認したいかというと、4次元空間で絡まっている面と面が、私たちの3次元空間からどのように見えるかということを知るための前段階になるからです。


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多次元空間へのお誘い(9):空間の次元で全く違う常識

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3次元空間で交わる立体?

空間の次元で全く違う常識

前回の記事の重要な部分に大きな誤りがありましたので、訂正記事を書かせていただきます。ご指摘いただいたhirotaさん、ふくちゃん、ありがとうございました。

間違っている箇所は「多次元空間で交わる2つの物体の共通部分の次元数」の説明と結果です。この連載記事では具体的に布やひもなどを使って直観的な説明を心がけていたので、僕自身が「3次元空間の常識の罠」にからめとられてしまいました。

4次元以上の空間で正しい結果を導くためには直観はたよりになりません。この記事では直観に頼らず「座標」の考え方を使って説明します。その結果、多次元空間ではより直観に反する不思議な状況になっていることがおわかりになると思います。


前回間違ってしまった原因は2つあり、どちらも3次元空間の直観が災いしていました。その2つとは次のことです。

1)物体の「重なり」と「交わり」の定義があいまいだったこと

僕は「重なり」と「交わり」の2つに分類したわけですが、現実はもっとたくさんの方法で物体どうしは交わります。そして、複数ある交わり方の方法のうち、どれがいちばん「一般的」かということを慎重に決めなければいけないのです。

2)3次元空間までで成り立つ幾何学的な常識を、そのまま4次元以上の空間に拡張したこと

空間は次元が違うと幾何学的な常識も異なってきます。前回の記事では物体どうしの交わりで「どのようなものが一般的といえるか」という点で、3次元空間までで成り立つ常識を、そのまま4次元以上の空間での状況にあてはめてしまいました。


このように考え方に誤りがあったため、結果も異なってきます。たまたま結果が一致しているケースもありますが、今回の説明にしたがって確認しなおす必要があります。(幸い連載記事のそれ以前の回に対する矛盾は生じていませんでした。)

前回は次の結果をご紹介しました。

「空間の次元数にかかわらず面と面の交わりは線です。」
「空間の次元数にかかわらず立体と立体の交わりは面です。」

けれども正しい結果は、次のようになります。空間の次元が違うと同じ物体どうしても結果は異なりますので、物体が置かれている空間の次元数を示しておく必要があります。

「4次元空間では面と面の交わりは点です。」
「5次元空間では立体と立体の交わりは線です。」


今回の記事では、たくさんある物体の次元の組み合わせのうち、次の4つのケースを例にとって説明させていただきます。

- 3次元空間で交わる面と面
- 4次元空間で交わる面と面
- 5次元空間で交わる立体と立体
- 6次元空間で交わる面と立体


3次元空間で交わる面と面

3次元ユークリッド空間で平面と平面の位置関係には、次の3つの場合が考えられます。平面は無限の彼方まで広がっているとします。

1)平行な場合。(このとき平面は交わらないので今回の記事では除外します。)
2)一致してしまう場合。(全く同じ平面として重なる場合)
3)ひとつの直線に沿って交わる場合。

このうち3)の「ひとつの直線に沿って交わる場合」が平面と平面の位置関係で、もっとも「一般的」な状況と考えます。無作為に2つの平面を3次元空間に「投げ入れた」場合、3)の状況がいちばんおきやすいからです。

3)のケースでもいろいろな角度で交わるわけですが、2つの平面の共通部分の次元を求めることを目的とするならば、次のような状況を考えれば十分です。



この図で赤で示したx-z平面(部屋でいえば壁になります)と青で示したy-z平面(部屋でいえば床)の共通部分はx軸となります。

このことを座標を使って導いてみましょう。簡単なケースですが4次元以上でも同じ手順を使いますので、きちんと覚えてください。

3次元空間で
赤のx-z平面のことを (x, 0, z) とあらわします。
青のx-z平面のことを (0, y, z) とあらわします。

2つの平面の共通部分は x=0 と y=0 という2つの条件を同時に満たさなければならないことがわかります。

したがって共通部分は (0, 0, z) と表されることになり、これは z軸 そのもので、直線であることがわかります。

おわかりになりましたでしょうか?

同じ方法で、点や線、面、立体などの組み合わせで2つの物体が交わるケースで表にしました。ご自身でこの表を作ってみるとよいでしょう。

緑色で示した3は空間の次元数、赤と青は物体の次元数、黒は共通部分の次元数です。私たちの直観に一致していることがわかりますね。




4次元空間で交わる面と面

4次元ユークリッド空間で平面と平面の位置関係には、次の4つの場合が考えられます。

1)平行な場合。(このとき平面は交わらないので今回の記事では除外します。)
2)一致してしまう場合。(全く同じ平面として重なる場合)
3)ひとつの直線に沿って交わる場合。
4)ひとつの点で交わる場合。

4)は3次元空間まででは経験することができませんから、私たちには理解できない幾何学的な関係です。

このうち4)の「2つの平面がひとつの点で交わる場合」が平面と平面の位置関係で、もっとも「一般的」な状況と考えます。無作為に2つの平面を4次元空間に「投げ入れた」場合、4)の状況がいちばんおきやすいからです。

4)のケースでもいろいろな角度で交わるわけですが、2つの平面の共通部分の次元を求めることを目的とするならば、座標の原点を含んでいるお互いに直交している、「赤に塗ったx-y平面」と「青に塗ったz-u平面」だけを考えれば十分です。

さっそく座標を使って導いてみましょう。4次元空間上の位置は (x, y, z, u) であらわされることに注意してください。

4次元空間で
赤のx-y平面のことを (x, y, 0, 0) とあらわします。
青のz-u平面のことを (0, 0, z, u) とあらわします。

2つの平面の共通部分は x=y=0 と z=u=0 という2つの条件を同時に満たさなければならないことがわかります。

したがって共通部分は (0, 0, 0, 0) と表されることになり、これは4次元空間の座標の原点そのもので、「点」となります。

同じ方法で、点や線、面、立体、4次元物体などの組み合わせで2つの物体が交わるケースを表にしました。

緑色で示した4は空間の次元数、赤と青は物体の次元数、黒は共通部分の次元数です。




5次元空間で交わる立体と立体

5次元ユークリッド空間で立体と立体の位置関係には、次の4つの場合が考えられます。4次元空間のときと異なり「5)ひとつの点で交わる場合」はありません。

1)平行な場合。(このとき立体は交わらないので今回の記事では除外します。)
2)一致してしまう場合。(全く同じ立体として重なる場合)
3)ひとつの平面で交わる場合。
4)ひとつの直線に沿って交わる場合。

4)の「ひとつの直線に沿って交わる場合」が立体と立体の位置関係で、もっとも「一般的」な状況と考えます。無作為に2つの立体を5次元空間に「投げ入れた」場合、4)の状況がいちばんおきやすいからです。

4)のケースでもいろいろな角度で交わるわけですが、2つの立体の共通部分の次元を求めることを目的とするならば、座標の原点を含んでいるお互いに直交している、「赤に塗ったx-y-z立体」と「青に塗ったz-u-v立体」だけを考えれば十分です。

さっそく座標を使って導いてみましょう。5次元空間上の位置は (x, y, z, u, v) であらわされることに注意してください。

5次元空間で
赤のx-y-z立体のことを (x, y, z, 0, 0) とあらわします。
青のz-u-v立体のことを (0, 0, z, u, v) とあらわします。

2つの立体の共通部分は x=y=0 と u=v=0 という2つの条件を同時に満たさなければならないことがわかります。

したがって共通部分は (0, 0, z, 0, 0) と表されることになり、これは5次元空間の座標のz軸であり「直線」となります。

同じ方法で、点から5次元物体の組み合わせで2つの物体が交わるケースを表にしました。

緑色で示した5は空間の次元数、赤と青は物体の次元数、黒は共通部分の次元数です。




6次元空間で交わる面と立体

6次元ユークリッド空間で面と立体の位置関係には、次の4つの場合が考えられます。

1)平行な場合。(このとき立体は交わらないので今回の記事では除外します。)
2)ひとつの平面で交わる場合。
3)ひとつの直線に沿って交わる場合。
4)ひとつの点で交わる場合

4)の「ひとつの点で交わる場合」が面と立体の位置関係で、もっとも「一般的」な状況と考えます。無作為に面と立体を6次元空間に「投げ入れた」場合、4)の状況がいちばんおきやすいからです。

4)のケースでもいろいろな角度で交わるわけですが、2つの立体の共通部分の次元を求めることを目的とするならば、座標の原点を含んでいるお互いに直交している、「赤に塗ったx-y平面」と「青に塗ったu-v-w立体」だけを考えれば十分です。

さっそく座標を使って導いてみましょう。6次元空間上の位置は (x, y, z, u, v, w) であらわされることに注意してください。

6次元空間で
赤のx-y平面のことを (x, y, 0, 0, 0, 0) とあらわします。
青のu-v-w立体のことを (0, 0, 0, u, v, w) とあらわします。

2つの物体の共通部分は x=y=0 と u=v=w=0 という2つの条件を同時に満たさなければならないことがわかります。

したがって共通部分は (0, 0, 0, 0, 0, 0) と表されることになり、これは6次元空間の座標の原点であり「点」となります。

同じ方法で、点から6次元物体の組み合わせで2つの物体が交わるケースを表にしました。

緑色で示した6は空間の次元数、赤と青は物体の次元数、黒は共通部分の次元数です。




ご理解いただけましたでしょうか?このように各次元で空間や物体の一般常識はずいぶん違うことがおわかりだと思います。

これらの表を使えば、多次元空間に存在する多次元の物体が私たちからどのような次元の物体に見えるか、ということがわかります。

たとえば5次元空間で2つの立方体が絡まっている場合、5次元の表の青の3次元と赤の3次元のマスを見て交わりが1次元であることがわかります。それは私たちからその立方体が1次元のひもとして見えることを意味します。

5次元空間で絡むのは立体、4次元空間で絡むのは面、3次元空間で絡むのはひもでしたよね?表をたどっていくと5次元空間での立体は4次元空間では面として観測され、4次元空間での面は3次元空間ではひもとして観測されることがわかります。高次元空間で絡み合っている2つの物体が低い次元で絡み合っているかどうかは、また別の話になりますが。


多次元空間で物体どうしの位置関係がなぜわかるのか?そしてどれが一般的なものがわかるのはなぜか?と不思議に思われる方がいらっしゃるかもしれません。そのような方は、今回の方法をもう一度よく確認してみてください。

たとえば、空間の次元の座標 (○,○,○,○)の入れ物の中にx, y, zなどいくつの文字を入れるか、そして2つの物体の座標を入れたとき空間の次元の座標成分の個数が足りるのか、足りないのか、ちょうどよいのか、2つの物体の座標を入れるときの場合の数を調べてどのどのケースが多いかを調べれば、おわかりになると思います。


また、数式は使わないと約束したので書きませんでしたが、共通部分の次元は次の式で計算することができます。今回の手順を理解できていれば、すぐ導ける式です。

共通部分の次元数 = 赤い物体の次元数 + 青い物体の次元数 - 空間の次元数

計算結果がマイナスになるときは0(ゼロ)を計算結果として採用してください。

今回の結果は前々回までの記事で導いた以下のこととも、幸いなことに整合性がとれています。間違いの影響が他の記事に及ばなかったので、ひと安心ですね。

- 4次元空間に1次元物体を置くと一般的に3次元空間からは0次元の点として観測される。
- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。
- 4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。


「座標」の考え方はデカルトによって発明されました。(ルネ・デカルトにより1637年に発表された『方法序説』において平面上の座標の概念を確立され、幾何学と解析学(微積分学)が結びつけられました。)

座標は誰でも考えつきそうなものだし、なぜこれが大発明なのかと不思議に思う方がいらっしゃるかもしれません。けれども、直観に頼らずに座標を使うことから得られる恩恵が絶大なものであることが、今回の例でおわかりいただけたと思います。


次回の記事では、もうひとつ別の例を使って「4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。」が成り立っていることをご説明いたします。


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