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アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務

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アインシュタイン回顧録:アルベルト・アインシュタイン

内容紹介:
科学革命とアインシュタインの来日が大正・昭和の文化と思想に与えた衝撃を社会史的に描く感動的ノンフィクション。1では、来日が巻き起こした全国民的熱狂のドラマを再現。全国各地での講演会の様子、学生たちとの熱い交流、子供たちとのふれあい、博士の日本文化観などを生きいきと描く。アインシュタインが福岡で行なった貴重な講演記録を収録。第三回サントリー学芸賞受賞。

2005年2月16日刊行、495ページ。

著者について:
金子 務:公式サイトウィキペディア
1933年埼玉県生まれ。1957年東京大学教養学科(科学史・科学哲学)卒業。読売新聞記者、中央公論社編集者、大阪府立大学教授(総合情報センター所長)、図書館情報大学教授、平成帝京大学教授、放送大学客員教授をへて、大阪府立大学名誉教授、国際日本文化研究センター共同研究員、形の文化会会長、(財)日本科学協会理事。2020年12月16日、死去。


理数系書籍のレビュー記事は本書で476冊目。

本書はもともと1981年に単行本として刊行されていた。そして2005年の世界物理年を契機に文庫化されたものだ。世界物理年とは、その後の物理学に大きな影響を与えたアインシュタインによる5つの論文が発表された1905年を「奇跡の年」とし、その100年後の2005年をマイルストーンとして宣言したものだ。

アインシュタインはその生涯に一度だけ来日し、43日間を日本で過ごしている。博士を招聘したのは日本国政府でも、東京大学でもなく、発足まもない改造社という月間総合雑誌を刊行する出版社だった。博士が日本に滞在したのは1922年11月下旬から12月末まで、いまからちょうど100年前のことだ。10月8日に南仏のマルセイユから博士ご夫妻は日本の定期客船「北野丸」に乗り込み、地中海からスエズ運河を経て、コロンボ、シンガポール、香港、上海を経由して神戸港に着くという40日間の船旅だった。そして香港から上海へ向かっていた11月12日の夜、船上で1921年度ノーベル物理学賞受賞の知らせを受けたのである。博士が43歳のときのことである。

博士は1905年に分子運動論、特殊相対性理論、光量子説の論文を、1915年から1916年にかけて重力の理論である一般相対性理論を発表し、一躍世界的に知られる物理学者になり、1919年の日食観測で星から来る光線が曲がったことが検証できたことで一般相対性理論が正しいことが確認され、その名は科学界のみなならず一般大衆にも知られるようになっていた。このようなわけで、博士が来日したのは日本国民にとって絶好のタイミングだった。日本中が「猫も杓子も相対性理論状態」で、世紀のロックスター、ザ・ビートルズが1966年に来日したときよりも激しい旋風を引き起こし、その後の日本の科学、文化、思想に大きな影響を残したのである。まさに怒涛の43日間であった。(当時の写真を画像検索する。)

来日後の主な日程を箇条書きにすると、次のようになる。43日間息をもつかせぬ過密スケジュールだった。

11月19日  慶応大で一般講演
20日  小石川植物園で開かれた学士院の歓迎会に出席。夜は明治座で日本の芝居を見物
24日  東京・神田青年会館で一般講演
25日  東京帝大で、専門家に向けた学術的な講演(12月1日まで、日曜休み)
12月3日  仙台で一般講演。夜は松島で月見
4日    日光へ
8日    名古屋で一般講演
10日  京都で一般講演
11日    大阪で一般講演
13日  神戸で一般講演
17日  奈良で観光
24日  福岡で一般講演
29日  門司港から離日

新興出版社の改造社は総合月刊誌「改造」を創刊した当初、ごく小さな会社だった。創刊号はもとより第2号、第3号の売れ行きも芳しくなく、社長の山本実彦は社運を賭けた大博打に出る。国内のみならず世界中の著名人に原稿執筆を依頼し、来日講演を依頼することにした。そのひとりがアインシュタインだったわけである。社員をベルリンの博士のもとに出向かせ来日のための交渉を任せた。また国内の著名な理論物理学者、たとえば東京帝国大学の石原純長岡半太郎に協力をあおぎ、アインシュタイン博士へ歓迎の意を伝えたり、特に石原純には雑誌「改造」のアインシュタイン特集号や一般向けの通俗書(科学教養書)の執筆や、来日後の講演、講義の通訳を依頼した。日本各地で行われた理系学生向けの講義や一般向けの講演は、いわば入場料をとる「興行」であり、社長の山本実彦にとっては傾きかけた会社を立て直し、V字回復するためのビジネスチャンスだったのである。

東京で行われた第1回の一般向け公演は入場料5円である。現在の価値で1万円ほどだったが大入り満員だった。第2回の講演は仙台で行われ、入場料3円だったものの不発に終わった。これは仙台で無料の歓迎会が別途行われたため聴衆はそちらに流れてしまったためだと思われる。これ以降、山本は有料の講演会を無料の歓迎会と切り離し、利益の確保を優先する方針に切り替えた。

本書の巻末には福岡で行われた一般向けの講演の内容がすべて収録されているが、これを読む限り聴衆はほとんど理解できなかったものと僕は思った。僕は一般市民向けの物理学講座に何度も参加したことがあるが、アインシュタイン博士の講演に来ていた人々は「とにかく顔だけでもおがみたい」という一心で押し掛けた大衆であり、内容はさっぱりわからんという状態だったと思う。この講演の記録を読んだところ、ビジュアルなイラスト付きで解説する科学雑誌Newtonを読むほうがはるかにわかりやすいと僕は思った。

特殊相対性理論と一般相対性理論は、物理学の諸分野のなかでは比較的一般の人でもわかりやすいものだ。というのも空間や時間の伸び縮みはイラストに描きやすく、重力は日常生活でいちばん身近に感じている力だからである。ところがアインシュタイン博士の講演では、物理学の専門用語がたくさん使われ、説明の正確さを期すあまりにマイケルソン-モーリーの実験や異なる2つの座標系など、一般人にはなじみのない話がさも当たり前のように次々とくりひろげられる。

当時の一般大衆は「相対性理論」という言葉を聞いてもさっぱりわかっていなかった。相対性を「あいたいせい」と読み替え、相対(あいたい)は男女の関係のことであり「性」はご想像のとおりであるから、これは「男女の性的な営み」についての理論だと言い出す人が出る始末である。もっと真面目に理解しようとする人であっても、時空が曲がるアインシュタインの相対性理論はまったく理解するに及ばず、ガリレイの相対性原理のレベルを脱することができない人が大半だった。日ごろ、科学的なことについて反応を示す現代の人のツイートを見る限り、大正時代と現代の一般大衆の科学に対する理解のレベル、反応の仕方はほとんど変わらないと僕は思った。講演に押し掛けた聴衆は、とにかく世界でいちばん有名な「知の巨人」をひと目でも見たい、その声を聞いてみたいという好奇心を満たしたかっただけなのだ。

大学生向けの講義についても同様だ。当時一般相対性理論を理解していた物理学者は日本に数名いたかどうかというようなありさまで。その数学的な基礎とされるリーマン幾何学という微分幾何学、テンソル代数の理解が必要である。リーマン幾何学とは多次元の空間がどのような形に曲がっていたとしても、その空間を記述できる万能な方程式のことだ。(参考記事:「幾何学の基礎をなす仮説について:ベルンハルト・リーマン」)

その基礎の基礎として必要になる線形代数さえも当時の大学生は学んでいない。実際のところ線形代数が理系大学で教え始められたのは1960年代に入ってからのことである。(参考記事:「線形代数学入門のための教科書談義」)一般相対性理論は、現代では理系大学の学部3、4年の選択科目として教えられ、より理解しやすい副読本がたくさんでている。参考までにアインシュタイン博士来日当時に発売されていた通俗書(科学教養書)をこの記事の最後のほうに紹介しておく。また、数式を使って一般相対性理論を理解する流れがどのようになるのかを手っ取り早く知りたい方は「一般相対性理論に挑戦しよう!」という記事をお読みいただきたい。

本書の章立ては次のとおりである。日本滞在中のことだけでなく、その前後の状況、博士が日本文化や日本人に対してどのような印象をもったか、博士の講演、講義や来日そのものを当時の日本人がどのように受け止めたかなどを詳しく知ることができる。本書は怒涛の43日間を追体験できる本なのだ。また日本に向かう船上と日本滞在中に撮られた貴重な写真がたくさん掲載されている。

現代文庫版へのまえがき
第1部:大正時代を揺るがせた43日間 - アインシュタイン・ブーム -
プロローグ:アインシュタイン伝の空白と『訪日日記』
第1章:日本上陸
第2章:ベルリンにおけるアインシュタイン
第3章:日本への旅 - 揺れる決断
第4章:大正時代の世相と「相対性」
第5章:一般講演と学生たちとの交歓
第6章:人間アインシュタイン
第7章:間奏曲 - ラテナウ暗殺とハルデン証言の衝撃
第8章:アインシュタインの日本文化観
第9章:別れの日
補章:全記録・アインシュタイン福岡講演
付記1:アインシュタイン伝における空白の部分
付記2:アインシュタイン訪日日程表

本書でひときわ面白かったのは、アインシュタイン博士が女子高等師範学校(現在のお茶の水女子大学)での歓迎会に招かれたときのエピソードである。本書からその部分を引用してみよう。

「会場を出たら、自動車に行く途中、女子高等師範学校の女学生が押し寄せた。博士は女学生の間に這入つて身動きもならぬ。キヤ~キャ~云ふ声で火事場のやうな騒ぎだ。博士の両方の手は女学生の大群の為めに無理やり握手に忙殺されてゐる。やうやく自動車の中に這入る。窓ガラスをたたいて又キャ~キャ~云ふ。博士は大喜び?「生まれて初めてです、こんな大勢の若い婦人に大騒ぎされたのは」と云はれて窓の両側を見て、「なかなか別嬪(べっぴん)もゐますよ」と云つて笑はれた。自動車は神田のあかるい道を走つた。「いや今日は面白かつた」と云つてあの騒ぎを思ひ出されてゐた。」

博士は貴重な体験をした。生涯で一度きりのことだったと思う。ヒーローに対して日本の若い女性の群衆がとる熱狂的な行動は、昔も今も変わらないということがわかり、僕はニヤリとせずにいられなかった。

第8章「アインシュタインの日本文化観」であるが、博士は日本でさまざまな日本の伝統芸能や伝統文化を体験する。また科学や哲学、宗教観について意見を交換した。そして日本人は自然科学に関してまったく無頓着で、自然がどのようであろうと関心をもっていないという感想を述べた。しかし、僕が思ったのはこれには少々特殊な事情があったと思う。博士の周囲にいてお世話をしていたのは、理系的なことには疎い人たちがほとんどだったからだ。相対性理論どころか「40℃は20℃の2倍である。」と言ってしまうような人たちだったのだと僕は思う。また日本人全体について、自然科学に関する教養のレベルは大正時代も現代も五十歩百歩だと僕は思うのだ。

43日間の異世界体験は、ヨーロッパに限られていた博士の関心を全世界へ広げるきっかけになった。帰国後、ヒトラー率いるナチスドイツがますます台頭し、ユダヤ人の博士にとってドイツは住みにくいどころか命の危険がある国になっていった。博士がアメリカへ亡命するのは訪日から11年経った1933年のことである。そして1955年に亡くなるまで博士はドイツに戻ることはなかった。

本書は絶版である。中古本はこちらからお求めいただきたい。

アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務
アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務
 


「アインシュタイン・ショック」の最初のほうに、著者が苦労してアインシュタイン自身が書いた日記を読んだという記述がある。2019年にその日記がドイツ語から英語を経て日本語訳され、本として刊行された。博士ご本人がどのように感じていらっしゃったかは、次の本で知ることができる。

アインシュタインの旅行日記:アルベルト・アインシュタイン」(Kindle版



アインシュタイン博士が日本に滞在した前後に、一般大衆向けに書かれた本は、現在でも読むことができる。どれくらいわかりにくかったかは、これらの本を読めばわかる。

相對性原理:石原純」(Kindle版
「アインスタインと相對性理論:石原純」(Kindle版
アインシュタイン講演録:石原純」(Kindle版
  


数式が理解できる方には、アインシュタイン博士ご自身が書いた、この2冊をお勧めする。

相対性理論:アルベルト・アインシュタイン」(Kindle版
相対論の意味:アルベルト・アインシュタイン」(Kindle版
 


数式がまったくわからない方には、ニュートンプレス社のこれらの本をお勧めする。

Newtonライト2.0『相対性理論』」(Kindle版)(詳細
Newtonライト3.0 相対性理論」(詳細
ゼロからわかる相対性理論 改訂第2版」(詳細
  


関連ページ:

時は戦前。来日したアインシュタインを感動させた神秘の国ニッポン
https://www.mag2.com/p/news/242620

ア博士来日
http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/mukashino/2013031800011.html

アインシュタインが講演で来訪
https://www.qsr.mlit.go.jp/suishin/story2019/06_15.html

アインシュタインの来日 −日本の物理学へのインパクト
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu/74/10/74_1293/_pdf

[ステンドグラス] アインシュタインと慶應義塾
https://www.keio.ac.jp/ja/contents/stained_glass/2005/248.html

アルベルト・アインシュタインと日本
http://www.yorozubp.com/0502/050228.htm

こんな記事、読めます No.29「アインシュタイン来日」(雑誌『改造』ほか)
https://www.library.pref.kyoto.jp/?pickupkiji=32451

アインシュタインの来日100周年記念
https://japan.diplo.de/ja-ja/aktuelles/-/2516626


関連記事:

神は老獪にして…: アブラハム・パイス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d9258ed7a2d52173116ccd6e61ba0881

アインシュタインここに生きる: アブラハム・パイス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4e64de68cf38281792de9a34fc249ad5

だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f1e91e296d8d83ff2759c2de190be57

アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fa38724ad6881636cdff2903ee14a5b

アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559

アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

アインシュタイン回顧録:アルベルト・アインシュタイン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2481867f87eeb2269e39426b36ea568f

一般相対性理論に挑戦しよう!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea7ad9292ce01ad4abbbc8c98f3303d0


 

 


アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務


現代文庫版へのまえがき

第1部:大正時代を揺るがせた43日間 - アインシュタイン・ブーム -

プロローグ:アインシュタイン伝の空白と『訪日日記』

第1章:日本上陸
- 神戸埠頭のアインシュタイン
- 日本の第一夜・京都
- 東上する「国際」列車で
- 東京駅頭の大歓声

第2章:ベルリンにおけるアインシュタイン
- 曲がる光を予言した天才の出現
- 反相対論会社と反ユダヤ
- アインシュタインの大旅行時代

第3章:日本への旅 - 揺れる決断
- 9月27日付の2通の手紙
- 改造社の大攻勢と学者の招聘
- 円とポンド - 断念と決断
- アインシュタイン招聘の仕上げ

第4章:大正時代の世相と「相対性」
- 大正11年の日本の社会
- 世間の「相対性」評判記
- 相対性理論「映画」と「劇」
- 「学者を迎える態度」への論評

第5章:一般講演と学生たちとの交歓
- 興行としての講演旅行
- 学生たちとの熱い交流

第6章:人間アインシュタイン
- 弱者への労り
- エルザ夫人のこと
- 借着騒動・ユーモア・警句
- 友情の追悼碑文

第7章:間奏曲 - ラテナウ暗殺とハルデン証言の衝撃

第8章:アインシュタインの日本文化観
- ヨーロッパ知識人の東洋 - ハーンとアインシュタイン
- 洋上体験と「日本」観察
- 日本文化の型 - 芸術を手懸りとして
- 音楽 - 一種の抒情的な画
- 茶道 - 生活様式の「詩」
- 建築と絵画 - 相対論的視点
- 日本知識人の文化的弱点

第9章:別れの日

補章:全記録・アインシュタイン福岡講演

付記1:アインシュタイン伝における空白の部分
付記2:アインシュタイン訪日日程表


人名索引


II(第2巻)

第2部:日本の文化と思想への衝撃 - アインシュタイン・エフェクト -

第1章:アインシュタインにとっての訪日体験
第2章:東北の月沈原とアインシュタイン
第3章:二人のアインシュタイン学者
第4章:アインシュタインと社会思想家たち
第5章:大正文化人の反応と感想
第6章:相対性理論のカルチュア・ショック
第7章:科学界への衝撃と影響
第8章:アインシュタインにおける平和と原爆

エピローグ:なぜアインシュタインか
付記1:大正年間における相対性理論関係者
付記2:アインシュタイン年譜


あとがき
人名索引

はてしない物語:ミヒャエル・エンデ

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はてしない物語:ミヒャエル・エンデ

内容紹介:
バスチアンはあかがね色の本を読んでいた――ファンタージエン国は正体不明の〈虚無〉におかされ滅亡寸前。その国を救うには、人間界から子どもを連れてくるほかない。その子はあかがね色の本を読んでいる10歳の少年――ぼくのことだ! 叫んだとたんバスチアンは本の中にすいこまれ、この国の滅亡と再生を体験する。

1982年6月7日刊行、589ページ。

著者について:
ミヒャエル・エンデ: ウィキペディア
1929‐95年。南ドイツ・ガルミッシュ生まれ。小説家。著書は各国で訳出され、幅広い年齢層に支持されている。

ミヒャエル・エンデについて
https://douwakan.com/dowakan/ende_about


7月初めに知り合いになった女性にプレゼントしたのが、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』だった。こういう分厚い本は児童書であってもよく考えてから贈ったほうがよい。昨今は物語や小説などを読まない人が増えているから、ありがた迷惑にならないよう注意したい。

幸いこの方は読書好きだということが話しているうちにわかった。「ハリーポッターシリーズ」は全巻読んだのだという。(映画のほうは観ていないそうなので、本好きだということは間違いない。)ミヒャエル・エンデの本は読んだことがないというので、この本を贈ることにした。「本の中の本」、「本好きにはたまらない本」だということが、読み始めるとすぐわかる。

主人公はバスチアン・バルタザール・ブックスというチビでデブの少年。勉強はできず、スポーツも苦手。いつも友達からからかわれ、笑い者にされている。その雨の日も、彼のことをいじめるグループから逃げ、飛び込んだのがとある古めかしい本屋だった。本屋の店主は子供が大嫌いだった。歓迎されない場所に来てしまったバスチアンは店主に事情を説明する。

この本屋でバスチアンは、1冊の本とめぐり会う。店主が読んでいた赤がね色の表紙の分厚い本、2匹の蛇が互いの尻尾を噛んで楕円形になっている姿が印刷されていた。バスチアンはこの本から発せられる得も知れぬ力に引き寄せられた。たまたま電話がかかってきて店主は応対していたとき、あろうことかバスチアンはこの本を盗み、一目散に店から飛び出したのだ。生まれて初めて盗みを働いたのだった。

その日は平日である。学校へ戻って授業を受けることもできず、家へ帰ることもできない。仕方なくバスチアンは学校の物置きにもぐりこみ居場所を確保した。そして、おそるおそるその本を読み始めたのだ。

読者は本屋でのくだりを読んだところで、あることに気がつくはずだ。バスチアンが盗んだ本は、いま自分が手にしている講談社の単行本と同じだからである。表紙は赤がね色、よく見ると2匹の蛇が描かれている。自分が読んでいる本が、この本の中の物語に登場していることで、読者は自分がバスチアンと同じ読書体験をすることになるのだと気づく。

バスチアンは何の取り柄もない少年というわけではなかった。彼には人には真似することができないある才能があった。それは一人でいるとき、物語をいくつも作り出すという才能である。いじめられることが多いバスチアンにとって、本は厳しい現実から逃れ、別世界に行くことができる心のオアシスだった。

この本は『はてしない物語』である。けして終わることがない物語、永遠に終わらない本なのだ。本好きのバスチアンにとって、それは究極の本、本の王様、「本の中の本」なのだ。そして文字どおりこの本の中にはこの本自身が登場している。

この本はえんじ色の文字と緑色の文字の2色刷りで印刷されている。現実の世界で本を読んでいるバスチアンのことはえんじ色、そしてその本の物語の部分、ファンタージェンという幻想の国で進行する話は緑色の文字で印刷されている。

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読み進むにつれて、バスチアンはこの物語が「自分に向けて」書かれていることに気づくようになる。とんでもないことだ。本というのは不特定多数の人が読むように書かれるのが普通だからである。さらに読み進むとバスチアンは怖くなってきた。本の中の登場人物たちが、自分のことを話題にし、本の中に引き入れようとしていることがわかるからだ。ヤバイ本だとバスチアンは思った。このまま読み進んで大丈夫なのだろうか?読者はバスチアンの気持ちをくみとると同時に、自分もこの物語の登場人物になっていることに気がつく。

「本の中に本が登場する」のであれば、「本の中に登場するその本の中にも、同じ本が登場する」ことになる。それは無限に続く繰り返しだ。無限回の階層を降りていく中、それぞれの世界に登場する本に無限回の物語が展開される。この不思議な無限回の再帰的な繰り返しは、この本の中でどのように書き表されているのだろうか。本書を半分くらいまで読めば、その謎は解決する。ここは理数系読者がいちばん萌える箇所だと思う。

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環: ダグラス・R. ホフスタッター」という本では、無限回の再帰的繰り返しが生み出す不思議な環(リング)について説明している。これは自然現象、生命現象、社会現象に共通して見られる構造なのだ著者は主張している。DNAの複製過程、脳の思考、蟻塚を作る蟻の集団などは、究極的には原子や分子など単純な物質であり、反応したり相互作用したりするのはシンプルな規則に基づいている。多様性のないそれらの物質や規則から、なぜ多様性が生じてくるのか。この無限回の再帰的繰り返しが生み出す不思議な環は、その謎を解き明かすひとつの説なのである。

とはいえ、この分厚くて難解な本は残念ながら非理数系の読者には難し過ぎて歯が立たない。しかしこの『はてしない物語』であれば、そのような読者であっても「不思議な環」を疑似体験することができる。無限回の再帰的繰り返しから出現する多様な世界とは、ファンタージェンという幻想世界であり、バスチアンが取り込まれてしまうもうひとつの舞台なのだ。この不思議な醍醐味を、ぜひ数学が苦手な読者にも体験してほしい。無限を取り込んだ数学の世界の不思議な一面を感じてほしい。それが、今回僕がこの本の紹介記事を書きたいと思った最大の理由である。


装丁の世界】エンデ『はてしない物語』岩波書店


お買い求めになるのであれば、ぜひ2色刷の単行本がお勧め。

はてしない物語:ミヒャエル・エンデ


通勤電車で読むのであれば、上下巻に分かれている文庫版、Kindle版、Audible版がよい。ただし文庫版とKindle版は単色刷りで、表紙は赤がね色ではない。

はてしない物語 上:ミヒャエル・エンデ」(Kindle版)(Audible版
はてしない物語 下:ミヒャエル・エンデ」(Kindle版)(Audible版)
 

日本語版の紹介動画:




なお、原書はドイツ語だが、英語版とフランス語版は、以下のリンクから購入できる。

The Neverending Story: Michael Ende」(Kindle版
L'Histoire Sans Fin: Michael Ende」(Amazon.fr
 

英語版の朗読動画:このプレイリストからすべて聴くことができる


英語版の紹介動画:



フランス語版の紹介動画:




関連記事:

モモ: ミヒャエル・エンデ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3760861392f8a08a2d6224227092cfe4

贈り物にできる本を2冊紹介
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7cb3511763c1d6d8f2b3a46e3f06354b


 

 

2022年 ノーベル物理学賞はアスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士に決定!

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スウェーデンの王立科学アカデミーは4日、2021年のノーベル物理学賞を、複雑な物理系の理解への画期的な貢献に対してエコール・ポリテクニークのアラン・アスペ、カリフォルニア大学バークレー校のジョン・クラウザー、ウィーン大学のアントン・ツァイリンガーら欧米の3人に授与すると発表した。


授賞式は(とね日記賞の発表と同じ)12月10日に開かれる。3氏には合計1000万スウェーデンクローナ(90万2315ドル)の賞金が贈られる。

The Nobel Prize in Physics 2022
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2022/summary/

Announcement of the Nobel Prize in Physics 2022



今年は「量子もつれ(量子エンタングルメント)、ベルの不等式の破れの検証、量子情報科学の開拓」における業績が評価されたことによる授賞である。

量子とは物質を構成する原子や光子などの極微の粒子で、日常の感覚とはかけ離れた不思議な振る舞いをする。3氏の業績で、量子には「もつれ」と呼ばれる特殊な現象が起きることが実証された。

量子もつれは、2つの量子が離れた場所にいても同じ振る舞いをする現象。もつれの性質を制御する技術は、高速大規模計算が可能とされる量子コンピューターや、盗聴が原理的に不可能で安全な次世代通信の実現に欠かせない。3氏は量子技術革命の礎を築いた。

大学の物理学科レベルで理解できる量子力学の基礎理論の検証が受賞したのは珍しいと思う。物理学科の教養課程で教えられるほど基礎的で、その後の量子物理学、量子技術に与えた影響が大きく、今後さらに発展していく可能性があるということを意味している。一見奇妙に思える量子力学の正当性を検証した実験を成功させた功績は人類に大きな恩恵をもたらすものである。


発表では次のようなスライドが映された。

彼(神)はサイコロを振らないと私は確信している。今の時点での量子力学は不完全だ→EPRパラドックス


いや違う。量子力学が真実のすべてだ。


現代版のEPRパラドックスの実験


ベルの不等式:量子力学のすべての実験で、非局所的な隠れた変数の理論は否定される


クラウザー:CHSH不等式の実験(ベルの不等式の数あるバージョンのひとつ)


アスペ:アスペの実験


アスペ:量子力学、量子もつれが正しいことが確認された。(1984年)


シュレディンガー:量子もつれはあり得ないというつもりで「猫の話」を提示したのだけど。。


ツァイリンガー:もつれの交換(エンタングルメントのスワップ)を利用した光子のテレポーテーション実験
注意:日本では古澤明博士の実験が光子のテレポーテーションの世界初の実験だとされている。


2018年、7600キロメートルの距離で量子テレポーテーションの実験が成功


このような量子技術の基礎が検証されたことで、量子暗号や量子コンピュータが実現された



発表のタイミングで公開されたプレスリリースを和訳したものを載せておこう。

プレスリリース(英語):
https://www.nobelprize.org/uploads/2022/10/press-physicsprize2022.pdf
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2022/summary/

日本語訳:

2022年ノーベル物理学賞

アラン・アスペ、エコール・ポリテクニーク、フランス

ジョン・クラウザー、J.F. Clauser & Assoc., Walnut Creek, CA, USA、アメリカ

アントン・ツァイリンガー、ウィーン大学、オーストリア

“光子のもつれの実験、ベルの不等式の破れの確証、量子情報科学の開拓に対して”授賞する。


もつれ状態 - 理論から技術へ

アラン・アスペ、ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーはそれぞれ、2つの粒子が離れていても 1 つのユニットのように振る舞う量子もつれ状態を利用した画期的な実験を行いました。彼らの結果は、量子情報に基づく新しい技術への道を切り開きました。

筆舌に尽くし難い量子力学の効果は、数々の応用例を見つけ始めています。現在、量子コンピューター、量子ネットワーク、安全な量子暗号化通信を含む大きな研究分野として実現しています。

この発展の重要な要因の1つは、量子力学が2つ以上の粒子をいわゆるエンタングル状態(もつれた状態)で存在させる方法です。もつれたペアの粒子の一方の粒子に何が起こるかによって、遠く離れていても、もう一方の粒子に何が起こるかが決まります。

長い間、もつれたペアの粒子に相関関係があるかどうかという疑問がありました。そしてこの疑問を解決するために隠された変数、つまり実験でどの結果が得られるべきかを示す指標となる変数が含まれているだろうと考えられていました。1960年代、ジョン・スチュワート・ベルは彼にちなんで名付けられた数学的不等式を考案しました。これは、隠れた変数がある場合、多数の測定結果間の相関関係が特定の値を超えることは決してないことを示しています。ただし、量子力学は、特定の種類の実験がベルの不等式を破ることを予測しているため、そうでない場合よりも強い相関が得られます。

ジョン・クラウザーはジョン・ベルのアイデアを発展させ、実用的な実験に至りました。彼が測定を行ったとき、ベルの不等式に明らかに違反したことにより、量子力学が支持されました。これは、量子力学を隠れ変数を使用する理論に置き換えることができないことを意味します。

ジョン・クラウザーの実験の後、いくつかの抜け穴が残っていました。 アラン・アスペはセットアップを開発し、重要な抜け穴を塞ぐ方法でそれを使用しました。彼はもつれたペアがソースを離れた後に測定設定を切り替えることに成功し、それらが放出されたときに存在していた設定は結果に影響を与えなくてすむようになりました。

洗練されたツールと一連の長い実験を使用して、アントン・ザイリンガーは量子もつれ状態を使い始めました。とりわけ、彼の研究グループは、量子テレポーテーションと呼ばれる現象を実証しました。これにより、量子状態をある粒子から離れた別の粒子に移動させることが可能になります。

“新しい種類の量子技術が出現していることがますます明らかになっています。もつれ状態に関する受賞者3名の研究は、量子力学の解釈に関する基本的な問題を超えて、非常に重要であることがわかります。”ノーベル物理学委員会の委員長である Anders Irbäck はこのように述べました。


イラスト

以下のイラストは非営利目的である限り無料で使用できます。著作権はスウェーデン王立科学アカデミー、Johan Jamestadに帰属します。

イラスト:エンタングルメント、もつれ(pdf
イラスト:人が見ていないとき色は存在するのか?(pdf
イラスト:けして出会うことがないもつれた2つの粒子(pdf
イラスト:ベルの不等式の実験(pdf


アスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士、物理学賞受賞おめでとうございます。


関連書籍:

講談社ブルーバックスだと、まずこの本がお勧めだ。209−227ページあたりに量子もつれ(からみあい、エンタングルメント)などが解説されている。

ゼロから学ぶ量子力学 普及版:竹内薫」(Kindle版



この分野における日本での第一人者は古澤明教授だ。今年の物理学賞は実験系だから、古澤先生の著書を紹介しておきたい。

「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!:古澤明」(Kindle版)(紹介記事
量子もつれとは何か:古澤明」(Kindle版)(紹介記事
量子テレポーテーション:古澤明」(Kindle版)(紹介記事
  


あと量子もつれ現象を技術的に応用したものとして、量子コンピュータが実現しているのだが、ブルーバックス本では以下の本がお勧めである。

量子コンピュータ、量子アルゴリズムを学びたい高校生のために
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b2940b648bda682aa27192eb8261972

量子コンピュータ―超並列計算のからくり: 竹内繁樹
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3134f481301d0f6e7ed8b80c9fd99260


関連記事:

2021年 ノーベル物理学賞は真鍋博士、ハッセルマン博士、パリージ博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a98679530eb64ee5875d72eb3a84c8bf

2020年 ノーベル物理学賞はペンローズ博士、ゲンツェル博士、ゲーズ博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/379d0faef6100f33e962cbee08b1e4a7

2019年 ノーベル物理学賞はピーブルズ博士、マイヨール博士、ケロー博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/671a733c37916c34a7f886bcbdf2c732

2018年 ノーベル物理学賞はアシュキン博士、ムル博士、ストリックランド博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d7332ad2a827c9f47e2f24175a0378d5

2017年 ノーベル物理学賞はワイス博士、バリッシュ博士、ソーン博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4f6e5823d5cf2358aff0aee5f855e9cf

2016年 ノーベル物理学賞はサウレス先生、ホールデン先生、コスタリッツ先生に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f3f3c637394d58af8ce3039bcd35f972

2015年 ノーベル物理学賞は梶田隆章先生、アーサー・マクドナルド先生に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c8286906a9397277af1f47e7260efe7

2014年ノーベル物理学賞は赤崎勇先生、天野浩先生、中村修二先生に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2172a44a53c933389fcb8dc1acbfd97e

2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e


 

 

アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務

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アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務

内容紹介:
光を曲げた革命児の来日は大正日本に熱狂的な興奮を巻き起こし、その影響は遠く昭和の時代にまで及ぶ。科学界だけでなく文学・思想・宗教各界や知識人たちは、アインシュタイン博士の思想や人格、相対性理論といかに切り結んでいったのか。そして原爆投下の責任をめぐって日本人とアインシュタインはどのようなやりとりをしたのか。日本と人間性豊かな天才物理学者の関係を多彩な資料にもとづき鮮やかに描く。

2005年3月16日刊行、543ページ。

著者について:
金子 務:公式サイトウィキペディア
1933年埼玉県生まれ。1957年東京大学教養学科(科学史・科学哲学)卒業。読売新聞記者、中央公論社編集者、大阪府立大学教授(総合情報センター所長)、図書館情報大学教授、平成帝京大学教授、放送大学客員教授をへて、大阪府立大学名誉教授、国際日本文化研究センター共同研究員、形の文化会会長、(財)日本科学協会理事。2020年12月16日、死去。


理数系書籍のレビュー記事は本書で477冊目。

本書はもともと1981年に単行本として刊行されていた。そして2005年の世界物理年を契機に文庫化されたものだ。世界物理年とは、その後の物理学に大きな影響を与えたアインシュタインによる5つの論文が発表された1905年を「奇跡の年」とし、その100年後の2005年をマイルストーンとして宣言したものだ。

第2巻の章立ては次のとおりである。

第2部:日本の文化と思想への衝撃 - アインシュタイン・エフェクト -

第1章:アインシュタインにとっての訪日体験
第2章:東北の月沈原とアインシュタイン
第3章:二人のアインシュタイン学者
第4章:アインシュタインと社会思想家たち
第5章:大正文化人の反応と感想
第6章:相対性理論のカルチュア・ショック
第7章:科学界への衝撃と影響
第8章:アインシュタインにおける平和と原爆

エピローグ:なぜアインシュタインか
付記1:大正年間における相対性理論関係者
付記2:アインシュタイン年譜

僕が関心を持っていることがらは、第3章までに集中していた。特に第3章が重要だ。アインシュタインの元を訪れた2人の物理学者、桑木彧雄石原純についてである。相対性理論や黎明期の量子力学をどれだけ理解できていたかを知りたかった。

桑木彧雄がアインシュタインの元を訪れたのは、特殊相対性理論発表後まもなくである。もちろん桑木はこの理論が理解できていたことがわかった。また石原純がアインシュタインの元を訪れていたのは、一般相対性理論の構築に集中していた時期だ。この理論で重要な役割を果たすテンソル解析、そして重力と加速度の等価原理を石原が理解していたことが書かれていた。残念ながらヨーロッパでは1914年に第一次世界大戦が勃発したため、石原は理論の完成を見ることなく日本に帰国することになった。石原はドイツ滞在する中で、マックス・プランク、アインシュタインらが基礎をきづいた前期量子論も学学び、帰国後に相対論と量子論について計16篇の論文を書いている。

理論を正しく理解できていたからこそ、石原はその後の人生を相対性理論を一般読者に伝えるための啓蒙書、解説書の執筆をして過ごすことになる。そして石原のそのような人生を決定づけたのが、女流歌人原阿佐緒との不倫騒動である。このスキャンダルにより1921年にこの恋愛事件が新聞報道され、「阿佐緒によって男女の真情を知った」と述べて妻子を捨て、東北帝大教授という地位を捨てることになる。アインシュタイン来日はこの事件から1年3か月後のことで、博士の世話をした石原は当時休職中の身だった。もともと容姿に恵まれ、自らも離婚経験があるアインシュタイン博士は、石原のこのような状況をどのように思っていただろうか?(それについて、本書には書かれていない。)

本書の第4章では「宮沢賢治の四次元幻想」として、宮沢賢治のことが書かれている。賢治も相対性理論には関心を寄せていたはずだが、アインシュタイン来日のタイミングが悪かった。博士が日本に滞在したのは1922年11月17日から12月末までの43日間である。そして賢治の妹のトシが亡くなったのが同年の11月27日だった。最愛の妹の看病に全力をそそぎ、その甲斐もむくわれずにどん底の精神状態にあった賢治が、仙台で行われたアインシュタインの講演に出かけることができたはずがなかった。賢治が四次元幻想を含む「春と修羅」を刊行したのは1924年のことである。

あと、「第8章:アインシュタインにおける平和と原爆」についてである。原爆開発をルーズベルトに進言したことは最大の後悔として博士自身が述べているが、原爆開発と投下のプロセスに博士が一切のかかわりを持っていなかったのは明白である。そして戦後、この反省をもとに「世界政府」設立が必要だと訴え続けた。

しかし、博士の願いはかなえられることなく、東西冷戦、キューバ危機など核兵器お開発競争はとどまることを知らず、今日、キューバ危機以来で最大の危機を人類は迎えている。本書の単行本が出版されたのは1991年だ。

来月にはマンハッタン計画で原爆開発を主導した科学者オッペンハイマーの伝記映画が公開される。広島、長崎に投下された原爆についての責任は、アインシュタインよりもオッペンハイマーのほうがはるかに大きいと思う。原子核物理学(そして化学、バイオテクノロジー)は、人類の行く末に大きな影響をもっている。すでに開発されてしまった核兵器、化学兵器、生物兵器の使用をいかに防ぐかは、科学者を含む私たちすべての人間が真剣に取り組まなければならない課題だ。「言うは易く行うは難し」と手をこまねいていては何も進まない。


本書は絶版である。中古本はこちらからお求めいただきたい。

アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務」(紹介記事
アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務
 


関連ページ:

時は戦前。来日したアインシュタインを感動させた神秘の国ニッポン
https://www.mag2.com/p/news/242620

ア博士来日
http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/mukashino/2013031800011.html

アインシュタインが講演で来訪
https://www.qsr.mlit.go.jp/suishin/story2019/06_15.html

アインシュタインの来日 −日本の物理学へのインパクト
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu/74/10/74_1293/_pdf

[ステンドグラス] アインシュタインと慶應義塾
https://www.keio.ac.jp/ja/contents/stained_glass/2005/248.html

アルベルト・アインシュタインと日本
http://www.yorozubp.com/0502/050228.htm

こんな記事、読めます No.29「アインシュタイン来日」(雑誌『改造』ほか)
https://www.library.pref.kyoto.jp/?pickupkiji=32451

アインシュタインの来日100周年記念
https://japan.diplo.de/ja-ja/aktuelles/-/2516626


関連記事:

アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b43c8abe0ea752c36df0366f441474b7

神は老獪にして…: アブラハム・パイス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d9258ed7a2d52173116ccd6e61ba0881

アインシュタインここに生きる: アブラハム・パイス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4e64de68cf38281792de9a34fc249ad5

だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f1e91e296d8d83ff2759c2de190be57

アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fa38724ad6881636cdff2903ee14a5b

アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559

アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

アインシュタイン回顧録:アルベルト・アインシュタイン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2481867f87eeb2269e39426b36ea568f

一般相対性理論に挑戦しよう!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea7ad9292ce01ad4abbbc8c98f3303d0


 

 


アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務


第2部:日本の文化と思想への衝撃 - アインシュタイン・エフェクト -

第1章:アインシュタインにとっての訪日体験

第2章:東北の月沈原とアインシュタイン
- 東北ルネッサンスの星たち
- アインシュタインを迎えた杜の都

第3章:二人のアインシュタイン学者
- 桑木彧雄 -- 歌わぬ物理学者
- 石原純 -- 恋と歌と研究と

第4章:アインシュタインと社会思想家たち
- レーニンとアインシュタイン
- 国際連盟における新渡戸稲造との交流
- 帝大新人会と種蒔く人
- 賀川豊彦と室伏高信
- 山宣とアインシュタイン -- 知識階級論

第5章:大正文化人の反応と感想

第6章:相対性理論のカルチュア・ショック
- 感覚への異議申立て -- 寺田寅彦と横光利一
- 認識の枠組への衝撃 -- 哲学する群像
- 経済学におけるアプリオリ論争
- 石原純の新短歌運動
- 宮沢賢治の四次元幻想

第7章:科学界への衝撃と影響
- 各国科学界の反応の違い
- 特別講義と反相対論者 -- 科学界のプロ・アンド・コン
- 旅行中の研究と態度
- 若手科学者への影響
- 科学の啓蒙とは何か

第8章:アインシュタインにおける平和と原爆
- 世界政府運動をめぐって
- 原爆責任と「私の弁明」

エピローグ:なぜアインシュタインか
付記1:大正年間における相対性理論関係者
付記2:アインシュタイン年譜


あとがき
人名索引

とね日記賞の発表!(2022): 物理学賞、数学賞、他

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毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、「とね日記賞」を発表している。今年で13回目。

ところが、新型コロナウィルスの世界的な流行により、2020年からノーベル賞の授賞式はオンラインで行われるようになっていた。しかし、今年は3年ぶりに去年とおととしの受賞者を招いてスウェーデンで開催することになった。

けれども、コロナが流行しようがしまいが、ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもないことに変わりはない。どうせもらえないのなら自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!という思いつきで始めたのが「とね日記賞」である。

「とね日記賞」はその年に読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞も設けている。


名著であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても読んでいなければ対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。

メダルも賞金も授賞式もスピーチも晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観だらけのアンフェアな賞だ。

次の賞を発表している。今年は数学書を読んでいないので授賞対象外。

- 物理学賞
 物理学の教科書、専門書から選考。

- 数学賞
 数学の教科書、専門書から選考。

- 教養書賞
 一般向け書籍から分野別に選考。

- ブルーバックス賞
 講談社ブルーバックスの書籍から分野別に選考。

- 文学賞
 ジャンルを問わない小説、文学書から選考。

- アカデミー賞
 今年観た映画の中からよかったものを選考。

- テレビドラマ賞
 テレビドラマの中からよかったものを選考。

- クリスマス賞
 クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。


この1年で読んだのは10冊で、次のような本である。通算469冊~478冊目。今年は本業の仕事が忙しくなったのと生活パターンに大きな変化があったため、以前のように年間30~50冊の本を読むことはできなくなっていた。(参考:「400冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)

469/早すぎた男 南部陽一郎物語 時代は彼に追いついたか:中嶋 彰
470/究極理論への道: 力・時空・物質の起源を求めて:米谷 民明
471/場の量子論(II)-ファインマン・グラフとくりこみを中心にして(量子力学選書):坂本眞人
472/The Elegant Universe: Brian Greene(エレガントな宇宙: ブライアン・グリーン)
473/What Do You Care What Other People Think? (困ります、ファインマンさん)
474/統計力学の形成:稲葉 肇
475/原子核物理学 改訂版:エンリコ・フェルミ
476/アインシュタイン回顧録:アルベルト・アインシュタイン
477/アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務
478/アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務


今年のマイブームは「アインシュタイン来日から100年」である。100年前、大正時代の日本が沸いたアインシュタインブームに思いをはせ、追体験をすることで現代日本と大正日本の日本国民の科学の受け止め方にどのような違いがあったのかを楽しんだ。

それでは2022年の「とね日記賞」を発表しよう。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)


* 物理学賞

今年は2つの本に授賞することにした。

場の量子論: 不変性と自由場を中心にして(量子力学選書):坂本眞人」(Kindle版)(詳細
場の量子論(II)-ファインマン・グラフとくりこみを中心にして(量子力学選書):坂本眞人」(Kindle版)(詳細
 

授賞理由: 場の量子論を学ぶのは一筋縄にはいかない。和書、洋書を問わず「良書」とされる本を片っ端から読んでみたり、自分に合う教科書が巡りあえればその1冊に取り組んでみたりする。内容を理解するだけには特に計算演習が欠かせない。このあたり独学する人にとっては悩ましい。ところが本書は、計算のしかたをごまかすことなく「これでもか」というほど詳しく解説している。初学者には少し敷居が高いが、現時点で最良の教科書であることは間違いない。KIndle版も販売されているのがよいところだ。この教科書を含む「量子力学選書シリーズ」は、どの本もお勧めだ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

場の量子論: 不変性と自由場を中心にして(量子力学選書):坂本眞人
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f68fdd9b2a4e8ba2dfa88d4afcb3b716

場の量子論(II)-ファインマン・グラフとくりこみを中心にして(量子力学選書):坂本眞人
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7afabb5ee7f8ee4483081accf9eeaa6b


統計力学の形成:稲葉 肇


授賞理由: 発売される前から話題になっていた本。統計力学をめぐる物理学史を解説した本だ。2019年に話題になった「力学の誕生―オイラーと「力」概念の革新―: 有賀暢迪」という物理学史の本を連想させる。山本義隆先生の「古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆」をはじめ、古典力学史に関する本はあるものの、統計力学史を解説した本は極めて少ない。本書を読み、古典力学だけでなく統計力学もん「難産」だったことがよく理解できた。最初のうちはさまざまな学説の違いを理解するのが難しく、読むのが大変だったが、読み進めるにつれて理解できるように書かれていた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

統計力学の形成:稲葉 肇
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ce9af937b0ce3c84c103b340f016044f


* 数学賞

該当なし。


* 教養書賞(物理学部門)

アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務
アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務
 

授賞理由: 今年はアインシュタイン博士が来日してちょうど100年目である。来日する途上でノーベル物理学賞の受賞の知らせが届いたこともあり、日本中がアインシュタインブームに沸き立った。その招聘から日本滞在期間中の全記録、日本社会に与えた影響などを、こと細かに紹介したこの2冊は特にお勧めしたい。大正時代の日本人が博士をどのように感じ、歓迎していたかを追体験できる本である。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間:金子務
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b43c8abe0ea752c36df0366f441474b7

アインシュタイン・ショック〈2〉日本の文化と思想への衝撃:金子務
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2ce7d4805cda10c7a1baeba6ac25f0e4


* 教養書賞(数学部門)

該当なし


* ブルーバックス賞

早すぎた男 南部陽一郎物語 時代は彼に追いついたか:中嶋 彰」(Kindle版


授賞理由: 南部先生の業績を解説した教養書、教科書は数多く出版されているが、科学者として、ひとりの人間としての姿を紹介した本は少ない。「未来を知りたければ南部に聞け」と言われたほどの天才が、プリンストン高等研究所で研究を始めた30代、何も成果を出せずとても苦しまれていたことが特に印象的だった。また渥美清の「男はつらいよ」シリーズの大ファンだったことも意外だった。大栗博司先生は、南部先生のお宅を訪問したときこの映画を見せられたという。大阪に出張中の2015年7月5日にお亡くなりになったから、最終作の「おかえり寅さん」のことはご存知なかった。あと5年ほど長生きされ、この最終作もご覧になっていただきたかったと思ったのは僕だけではないと思う。今月14日はKindle版が発売される。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

早すぎた男 南部陽一郎物語 時代は彼に追いついたか:中嶋 彰
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d46b6e726b9f05e5ce52443bc463014d


* 文学賞

はてしない物語:ミヒャエル・エンデ


授賞理由: ファンタジー文学の最高峰だ。これまで何度か読み返している児童文学。今年は知り合いにプレゼントしたことがきっかけで読み直してみた。この本単独で紹介記事を書いたことが無かったので書いてみた。英語版とフランス語版を購入したので、折に触れて少しずつ読んでいる。購入するのであれば、絶対に単行本をお勧めする。理由は紹介記事に書いておいた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

はてしない物語:ミヒャエル・エンデ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e8d66836726275e55ec89374aad99b30


「三体」シリーズ:劉 慈欣



授賞理由: Audibleの朗読で読書した長編SF小説。天体力学の「三体問題」を取り込み、まれにみるスケールで繰り広げられ、人類は他の恒星系に属する宇宙人と対峙するようになったらどのような行動をとるべきなのか真剣に考えさせられた。またこの小説は中国人作家によって書かれたことから、主な登場人物は中国人ばかりである。現実世界では、宇宙開発の領域に中国が大きな進展を見せており、アメリカに次ぐ宇宙開発の巨人となりつつ今、この小説で描かれているような未来は起こり得ると思った。あまりにも長編なため、登場人物が誰なのかわからなくなったり、ストーリーの細かいところを忘れてしまったりして難儀したが、ぜひチャレンジしていただきたい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

「三体」シリーズ:劉 慈欣
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/68e94ccb95807140ef54966369ac568d



* アカデミー賞

映画『21世紀の資本(2019)』


授賞理由: 日本だけでなく世界的に貧富の差、経済格差の二分化は拡大するばかりである。2015年に話題になった「21世紀の資本:トマ・ピケティ」(Kindle版)の内容を1時間45分の映画に仕立てたものだ。映画のセリフのひとつひとつが心に突き刺ささった。「21世紀の資本」では富の集中、増大は雇用とは無関係だと解説している。雇用が創出され貧困者の生活が改善したとしても、それは富や財産を独占している一部の金持ち、大企業の不労所得(金利による利益、証券や土地の売買による利益)のほうがはるかに大きいからだ。今後どのような選択をすべきなのだろうか?「21世紀の資本」は、そのための案を私たちに提示し、この問題に正面から取り組む必要性を説いているのだ。現代の若者には無関心、変化を嫌う現状を容認する人が多いと聞く。しかし、現状維持は不可能であることが「21世紀の資本」が教えてくれることである。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

映画『21世紀の資本(2019)』
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a153690ce7756a662544f87757f97e9


* テレビドラマ賞

この1年、ドラマを見る時間は例年のようにとることができなかった。めぼしいものは第1話だけ見て、次々とドロップアウトしていった。大河ドラマの「鎌倉殿の13人」も源頼朝が亡くなって以降、興味が失せて見なくなった。今年は次のようなドラマが放送されていた。



今年は次の2つのドラマにテレビドラマ賞を授賞することにした。

『silent』


公式ホームページ:
https://www.fujitv.co.jp/silent/

授賞理由: 10月クールのドラマの中ではいちばん話題になっていると思う。高校時代に付き合っていた佐倉想は、彼女の青羽紬へ耳が聞こえなくなったことを隠したまま一方的に別れてしまう。彼女だけでなく同級生たちとも縁を切り、卒業をきっかけに家族以外からは誰からも連絡できないようにしてしまった。数年後、紬は駅のホームで想を見かけ声をかける。しかし想は呼びかけに気づかずそのまま行ってしまった。その頃までに紬には戸川湊斗と恋人関係になっていた湊斗は想や紬の同級生である。その後、再び紬は駅の改札の外で偶然想を見かけ、話しかけようとするのだが、なぜか想は彼女を振り切って逃げようとする。紬は彼を引き留め、ようやく彼が聴覚障碍者になっていることを知りショックを受ける。昔の彼氏がそのようなことになっていることからの同情が恋心に再び火をつけてしまった。これが第1話のストーリーである。せつなく、静かに展開する恋愛感情のもつれにこの2人と関係をもつ登場人物が巻き込まれていく。それぞれの心の動きを、思い込みや誤解が解けていく様子を丁寧に追いながら進むドラマだ。


『未来への10カウント』


公式ホームページ:
https://www.tv-asahi.co.jp/10count/

授賞理由: 久々のキムタク主演ドラマ。大いに楽しんだ。怪我をしたことでボクサーになるという夢をあきらめた中年男を木村拓哉が演じる。居酒屋の店主として地味に、そして人生を投げやりに生きている彼のもとに、元ボクサー仲間の親友から「高校のボクシング部で教えてみないか?」という誘いが来る。最初は断っていたが、だんだん断れない状況に追い込まれていく。まったく初心者ばかりのボクシング部の顧問にさせられた彼の奮闘ぶりが見どころ。同じく満島ひかりが演じる顧問の先生とのやり取りがコミカルで可笑しい。飽きのこないドラマだった。


* クリスマス賞

かがみの孤城For you―特製プレゼントBOX

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授賞理由: 2018年に本屋大賞を史上最多得票数で受賞した作品だ。単行本として刊行されていたもが文庫化され、さらに贈答用として2021年12月に特製プレゼントボックスとして発売された。昨年のクリスマス賞は「クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング」を紹介したから、今年はこちらのプレゼントボックスはいかがだろうか?タイミングよく、この作品はアニメ映画化され、今月23日に公開される。映画デートに誘って、この本をプレゼントしてみるのはいかがだろうか?

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

かがみの孤城: 辻村深月
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/676c42aeb00ed9220d650f3d5be6153c


映画『かがみの孤城』予告編【12月23日(金)全国公開】 YouTubeで再生



* ノーベル物理学賞2022

最後になりますが、本日受賞される先生方、ノーベル賞受賞おめでとうございます!
量子力学万歳!量子テレポーテーション万歳!

記念講演はこの動画で見ることができる。

2022 Nobel Prize lectures in physics: YouTubeで再生


2022年 ノーベル物理学賞はアスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士に決定!!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7202553c9ccff103b30109d5c66c37d4


2022年ノーベル賞授賞式、セレモニーの様子はここからライブ配信されます。

2022 Nobel Prize award ceremony: YouTubeで再生



関連記事:

過去の「とね日記賞」一覧: 開く


 

 

宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ

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宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ」(Kindle版

内容紹介:
ハーバード大学で300年近い歴史がある「ホリス数学・自然哲学教授」にして、「超弦理論」などの研究で理論物理学をリードしてきたカムラン・バッファ氏が、1年生向けの講義で使っているパズル満載の型破りなテキストを書籍化!
ブライアン・グリーン氏、エドワード・ウィッテン氏が驚きつつも絶賛した(文末に記載)類のない一冊の日本語版!
「宇宙はどうなっているのだろう?」この素朴な問いにとりつかれた人類が宇宙の謎を解明してきた結果わかったのは、宇宙はあまりにも人類の直観に反しているということだった。なにしろ空間や時間は歪んでいて、光は波でも粒でもあり、物質の最小単位は「ひも」かもしれないというのだ! このような宇宙をどう理解すればいいのか?
バッファ氏は言う。「理論物理学者の仕事は、宇宙の難解な問題を、単純なパズルに分解して解くことだ」
トランプやコイン、アリやカメらが繰り出す問題に悩むうち、物理学はどう進歩してきたのか、対称性やその破れがなぜ重要なのか、さらにいま注目の概念「双対性」の本質までが見えてくる。バッファ氏の盟友・大栗博司氏が監訳者として随所で注釈をほどこした、楽しみながら物理学の「真髄」に迫れる本!

【たとえば、こんな問題があります】
缶が2つあって、一方には緑のペンキが、もう一方には白のペンキが入っている。缶は同じ大きさで、入っているペンキの量もまったく同じだとしよう。ここで緑のペンキを少量すくって、白の缶に入れる。次にその混ざったペンキの缶から同じ量をすくって、緑の缶に戻す。
そこで問題。白の缶に入っている緑のペンキの濃度と、緑の缶に入っている白のペンキの濃度、どちらのほうが高いか?

【理論物理学の大家たちも絶賛!】
「現代の物理学と数学の中核をなす概念を、パズルを通してひととおり説明するというすばらしい本。私が知る中でももっとも風変わりで魅力的なアプローチで、初学者も専門家も頭の体操に楽しく取り組みながら学べる。世界屈指の物理学者から、最先端の本質的な考え方を楽しみながら効果的に吸収できる」――ブライアン・グリーン
「簡単で愉快なパズルを解きながら、物理学と数学の高度な概念の数々を楽しく巡っていくという独特な本。たくさん楽しんで、たくさん学べるはずだ」――エドワード・ウィッテン

【監訳者の大栗博司氏より】
「本書は、完成した成果ではなく、そこのいたる過程をパズルを解くことで体験できるようになっているのが斬新です」

2020年10月20日刊行、320ページ。

著者、監訳者、訳者について:
カムラン・バッファ: HP: https://www.cumrunvafa.org/
理論物理学者。1960年イラン生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業後、1985年にプリンストン大学でPh.D.を取得。1990年からハーバード大学教授。2018年、同大学ホリス数学・自然哲学教授。専門は素粒子論。

大栗 博司: HP: https://ooguri.caltech.edu/japanese
理論物理学者。1962年岐阜県生まれ。カリフォルニア工科大学カブリ教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構機構長、アスペン物理学センター理事長。専門は素粒子論。『重力とは何か』(幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』ほか著書多数。

水谷 淳: Twitter:@junjmizutani
みずたに・じゅん 翻訳家。主な訳書にチャム、ホワイトソン『僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない』(ダイヤモンド社)、アル=カリーリ、マクファデン『量子力学で生命の謎を解く』(SBクリエイティブ)など。


理数系書籍のレビュー記事は本書で479冊目。

世の中に存在する物理やパズルの本は数えきれないほどある。しかし「物理とパズルの本」はこれ1冊しかない。物理とパズルがなぜ結び付くのか?これが発売開始前に本のタイトルだけ見たとき僕が思ったことだった。すでにでている英語版や英語で行われている講義の動画を見て、その謎は解くことができた。

そして僕の興味が書きたてられたのは、この10年さまざまな著書、朝日カルチャーセンターでの講義を通じてお知り合いにならせていただいた大栗先生が宣伝されていること、著者が先生の共同研究者、ご友人のバッファ先生であることだ。最前線の理論物理学者がお書きになり、推薦していた本だからである。

章立てはこのとおりだ。

序章 現代物理学への招待
第1章 対称性と保存則
第2章 対称性の破れ
第3章 単純で抽象的な数学のパワー
第4章 直観に反する数学
第5章 物理的直観
第6章 直観に反する物理
第7章 双対性
終章 本書をふりかえって

このブログ記事の最後には詳細目次を載せておいたが、実にバラエティに富んだ物理法則が解説されているのがわかるだろう。本書を読んでみてそれらの法則にぴったり対応するパズルがあることに驚かされた。パズルだけ先に解いてみると、それが物理法則、物理現象の理解に結び付くものであるか僕はおそらく気が付かないだろう。解説を読んで「あ、なるほど!」となるわけである。

本書全体に流れている思想は「物理と数学の不思議なつながり」である。単に物理とパズルを結び付けて解説しているわけではない。対称性が物理法則で重要なことはよく理解している人でも、双対性(S双対性、T双対性)が物理だけでなく、数学においても不思議な役割を果たしていることまで解説していることにはきっと驚くと思う。つまり「ラングランズ予想」にまで踏み込んで第7章「双対性」解説している。解けない難問に双対性があり、対応する問題を解くのが易しいことがある。易しい方の問題を解くと、難問のほうも自然に解けてしまうのだ。けれども、なぜ双対性がある問題が存在するのか、なぜ解けるのかはわからないのだという。本書は「楽しくて深い本」である。(僕はこの第7章がいちばん萌えた。)

これまで科学教養書を読んでいない読者には少し難しすぎると思った。そのような方には、この記事の「関連記事:」で紹介した大栗先生の著書などを事前にお読みになるとよい。


余談: 講演や本では「正方形の4頂点を結ぶ最短の高速道路」が次のようになることを対称性の自発的破れの例として紹介している。



これが五角形になると次のようになる。対称性はさらに破れていることがわかる。



そして六角形では対称性の破れは起きない。解説はこの記事をお読みいただきたい。




翻訳のもとにされた英語原書はこちらである。Kindle版はkindleunlimittedの対象だ。

Puzzles to Unravel the Universe: Cumrun Vafa」(Kindle版



関連動画:

この本の発売日前日にオンラインで講演と対談が行われた。

「直観に反する宇宙」カムラン・バッファ氏と大栗博司氏のオンライン講演(2022年10月19日)
YouTube: 再生する


後半の対談の部分は英語音声の動画も公開されている。

Dialogue with Cumrun Vafa in Tokyo
YouTube: 再生する



英語で行われる講演動画は以下のとおり。日本での講演では紹介されなかったパズルも紹介されている。

Cumrun Vafa, "Puzzles to Unravel the Universe"(YouTubeで再生時、自動翻訳による日本語字幕付き)
YouTube: 再生する




Fundamental laws of the cosmos: Puzzles to Unravel the Universe
YouTube: 再生する



関連記事:

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

探究する精神 職業としての基礎科学:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a8ed519784843aad20780a2811f5d2d


超弦理論の双対性については、この本がいちばん詳しい。

エレガントな宇宙:ブライアン・グリーン(英語原書
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/404c24b68f57609900bc3d7a030333d5

ラングランズ予想、双対性について知るには、この本がお勧め。

数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/43ca100e56e15427613b009af55c8f7d


 

 


宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ」(Kindle版


はしがき
監訳者まえがき

序章 現代物理学への招待
- 数学と物理学の違い
- 古代の考え方
- ニュートン力学
- ラグランジュ力学とハミルトン力学
- マクスウェルの電磁気学
- 相対性理論
- 量子力学
- 場の量子論
- 量子重力理論

第1章 対称性と保存則
- 対称性とは何か
- さまざまな対称性
- ネーターの定理
- 超対称性
- 準結晶と対称性
- 弦理論と電荷の保存則
- 対称性の自発的な破れとは
○パズル:1~13

第2章 対称性の破れ
- 対称性が破れていることの重要性
- 地球の運動と対称性の破れ
- さまざまな対称性の破れ
- 対称性の自発的な破れと磁石
- 対称性の破れとヒッグスボソン
- 力の大統一
- 超伝導
- 剛性
- 利き手
○パズル:14~18

第3章 単純で抽象的な数学のパワー
- 法則と制約条件
- 複素数入門
- 代数学の基本定理
- 重力レンズ
○パズル:19~27

第4章 直観に反する数学
- 直観は間違っていることもある
- 無限のパラドックス
- 直観に反する級数
- 直観に反する複素数
○パズル:28~42

第5章 物理的直観
- 直観的な物理とは?
- ガリレオ・ガリレイの論証
- ニュートンの思考実験
- 数学における物理的直観
- 回帰直線
- アルキメデスの「エウレーカ!」
- ピタゴラスの定理
- 特殊相対性理論
- 統計力学
○パズル:43~53

第6章 直観に反する物理
- 浮力についてあらためて考える
- 飛行機はなぜ飛べるのか
- 夜空はなぜ暗いのか?
- マクスウェルと「エーテル」
- 相対性理論と「速度の合成則」
- ある古典的な実験
- 量子力学におけるパラドックス
- 二重スリット実験
- EPRパラドックス
- ブラックホール
- ホログラフィー
○パズル:54~55

第7章 双対性
- 双対性とは何か
- 数学における2つの例
- マクスウェル理論における双対性
- 弦理論における双対性
- T双対性とは何か
- カラビ-ヤウ多様体とミラー対称性
- そのほかの対称性:幾何と力
- ブラックホールにおける双対性
- AdS/CFT対応
- ウィグナーの半円則
○パズル:56~59

終章 本書をふりかえって
- 対称性とその破れ
- ゲージ対称性
- 直観的な数学
- 直観に反する数学
- 直観的な物理と直観に反する物理
- 双対性は宇宙を解く魔法なのか
○パズル:60~63

監訳者まえがきの問題 答え
付録

iPhone SE(第2世代)からiPhone 14 Proに機種変更

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自分のための覚書き。

バッテリーの劣化が気になってきたのでiPhoneを機種変更した。今回は小型のiPhone 14 Proにした。ストレージは256ギガバイト。

本体価格は(円が弱いため)20万円を超えた。おまけに初期費用として1万1000円をクレカで支払うことになった。また本体価格の月々の返済額は4000円を超える。

調べたところ、iPhoneはこれまで次の順番で購入していた。

iPhone 3G: 2008年8月
iPhone 4: 2010年11月
iPhone 5: 2012年11月
iPhone 6: 2014年10月
iPhone X: 2017年11月
iPhone SE2: 2020年8月
iPhone 14 Pro: 2023年1月


今回も最初からダークモードで使うことにする。バッテリー劣化はそれほど防げないことがわかったが、ダークモードの画面に慣れてしまっているからだ。


 

 

なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美

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なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美」(Kindle版

内容紹介:
大学・大学院など高等教育機関における理系分野の女性学生の割合は、OECD諸国で日本が最下位。女子生徒の理科・数学の成績は世界でもトップクラスなのに、なぜ理系を選択しないのか。そこには本人の意志以外の、何かほかの要因が働いているのではないか――緻密なデータ分析から明らかになったのは、「男女平等意識」の低さや「女性は知的でないほうがいい」という社会風土が「見えない壁」となって、女性の理系選択を阻んでいるという現実だった。日本の男女格差の一側面を浮彫りにして一石を投じる、注目の研究報告。

2022年11月30日刊行、234ページ。

著者について:
横山広美(よこやま ひろみ)
プロフィール: https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/yokoyama_hiromi
Twitter: @hyoko_UT
1975年東京生まれ。東京理科大学理工学研究科物理学専攻 連携大学院高エネルギー加速器研究機構・博士(理学)。博士号取得後、専門を物理学から科学技術社会論に変更。現在は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授。東京大学学際情報学府、文化・人間情報学コース大学院兼担。第五回東京理科大学物理学園賞(2022)、科学技術社会論学会柿内賢信研究奨励賞(2015)、科学技術ジャーナリスト賞(2007)を受賞。


理数系書籍のレビュー記事は本書で480冊目。

理系の学生に女性が少ないことを僕が意識したのは、大学に入学した直後だった。1983年に僕が入学したのは東京理科大理学部の応用数学科だったが、女子学生の割合は25パーセントだったことを覚えている。同じ学科の数学科のほうは20パーセントだということもしばらくして知った。数学科と応用数学科の違いは、前者が数学基礎論など現代数学の成り立ちや抽象数学に重点を置いているのに対し、後者は統計学や数理計画法など現実社会の問題を解くための数学理論を学ぶことに重点を置いている。両学科における女子学生の割合はおそらく現在でも同じなのだろうと思っているが、果たして本当だろうか?もし後輩の方がいらっしゃったら、ぜひ教えてほしい。

そして当時の理科大では数学系の学科は、まだマシで物理学科だとほんの数人しか女子学生がいないことをしばらくして知り、とても驚いたことを覚えている。たまたま物理学科の学生と一緒に近所の教会で英会話のレッスンを受けていたからだ。数学系の学科で女子学生が少ないことと、物理学系の学科で女子学生が極端に少ないことの理由や意味合いは、それがなぜなのかわからないのだが、決定的に違う何かがあると僕は感じていた。

当時の僕は、次のように思っていた。数学の才能はどうやら男子のほうが女子よりも優れているに違いない。そして数学を好きな女子は世間一般には少ないのだ。同じ学科にいる女子学生は、きっと世間一般から見れば「例外」なのだろう。女性の数学者、教授は「例外中の例外」なのだろうと思っていた。

けれども物理学科の状況は数学系の学科にくらべても極端に女子学生が少ない。これは性差だけでなく、あきらかにもっと違う力が働いているからに違いない。

理科大にはこの他、化学科と応用化学科があったし、少し離れた場所に薬学部もあった。あと理工学部と工学部もあった。生命科学系の学科は理工学部にあったようだが、当時の僕は生命系の学科があったことに気がついていなかった。当時から薬学部の女子学生の割合は高かったし、数学系よりも化学系の学科のほうが女子学生の割合は高かったことを今でも覚えている。元日本テレビのアナウンサーでタレントの楠田枝里子さんは理科大応用化学科の卒業生である。

理科大生だったとき、僕はアテネフランセというフランス語を学ぶ学校の夜間クラスにも週3回通っていた。そこで知り合うのは青山、慶応、早稲田、上智などのフランス語学科、文科系学部の大学生ばかり。文系学部、学科の中でもフランス語学科は特に女子学生の割合が多い。そしてそれらの総合大学では学校全体でも理科大とくらべて女子学生の割合が多い。(けれども東京大学全体に占める女子学生は2割に過ぎないことが本書に書かれていた。)いずれにせよ女子学生が少ない理科大生だった僕にとって、アテネフランセで受けたカルチャーショックは大きかった。理科大では「貴重な」女子学生が、総合大学では普通の存在になっていたからだ。

1980年代であっても、現代であっても街を歩くと男性と女性の割合は、ほぼ半分であるように見える。なぜ学部や学科の違い、理工系とそれ以外の学部・学科では男性と女性の数に、これほどの違いがでてくるのか。理由はよくわからないけれども日常の環境にすっかり慣れ切ってしまい、知らず知らずのうちに固定観念が植えつけられ、その理由を考えると先入観にとらわれている自分がいることに気がつかされるのである。

その反面、学校であれ職場であれ男女半々のほうが自然でよいのだと僕は思っていた。男性と女性は物事の感じ方、考え方が違う。半々とは言えないものの小中学のときは共学だったのはよかった。高校は男女別学の私立に通ったが同じ敷地内に男子部と女子部があり、部活は男女一緒だった。理科大に入学して理系を選択するのは圧倒的に男子が多いことを実感した。青学や早稲田、慶応のように文科系学部がほとんどの総合大学で男女が自然な割合でいることがうらやましかった。

かなり前に京大理学部1年生が書いていた個人ブログをひんぱんに読んでいたことがある。彼は周囲に女子学生がほとんどいないことを嘆いていた。京大生ほどにもなれば、周囲にある女子大の学生と合コンして楽しい青春時代を過ごせるはずなのに。そのように僕は思っていた。女子学生が少ない理科大もほぼ同じだ。そのような環境でずっと過ごしていると、異性を過度に意識したり、現実以上に美化、理想化してしまう傾向がでてくる。これはもしかすると少子化の一因になっているのではないだろうか。

僕は若いころから「差別」が大嫌いだった。男性と女性の権利は同等であるべきだと高校生の頃から信じていた。昭和初期まで延々と続いていた男尊女卑の文化や社会、家族の在り方を否定するのが、これからの時代を担う若者が目指すべき男女のありようだと信じていた。ところが、理系と文系における性差について、僕はまったく理論武装できていなかった。現実のありようをそのまま受け入れ、それが固定観念になって現在に至っていたのだ。

自分の経験や感じたことばかり書いてしまったが、理系に女子学生が少ないという問題の理由を、一人で考えていても独りよがりに過ぎず、周囲にいる女性に聞いたところで意味がある答はほとんど得られない。「女性は論理的思考よりも暗記科目のほうが得意だ」とか「女性の方が理系科目を好きではないから理系には女子学生が少ない」など、固定観念をさらに強く抱くようになるに過ぎない。

夫婦喧嘩の際、論理を無視して攻撃や言い訳をする奥さんのことを嘆く男性の話をときどき耳にする。男性女性に関わらずそのような人はいると思うので、そのような人の割合を男性、女性それぞれについて調べ、さらに夫婦喧嘩で論理を無視する人と無視しない人に同じ算数や数学のテストを受けてもらうのはどうだろう?もしかすると「女性は数学的が苦手かどうか」ということについての検証ができるのではないだろうか、それともそれは夫婦喧嘩という感情が高ぶる特殊な状況でのことだから、調査してもあまり意味がないのだろうか?

これほど当たり前に思えて、そして本当は当たり前ではないことを、実際にさまざまな角度から調査し、まとめているのが本書なのである。さらにこの問題を解決するための案も提示している。

章立ては以下のとおりだ。

序章 「理系女性問題」とは何か
第1章 理系女性の割合はOECD内で最下位
第2章 「数学・物理学に求められる能力」のイメージとは
第3章 男女差は生まれながらか環境要因か
第4章 学問分野にはジェンダーイメージがあった
第5章 学問分野から連想されるキーワード
第6章 中学生で物理が嫌いになる?
第7章 ジェンダー平等意識と理系進学の関係
第8章 親のバイアスはどう影響するか
第9章 数学・物理学の男性イメージはどう作られる?
第10章 壁を取り払ってくれるのはどんな情報?
終章 残された謎と課題

本書はKindle版で読み、それからAudible版が会員価格だけで聴けるので朗読でも聴いてみた。老眼が進んでいる高齢者にとってAudible版は本当にありがたい。

「なるほど、やはりそうか。」という調査結果が多いのは想定内だった。しかし、個人で考えていたら全くわからない海外における調査結果、日本との比較は意外なこともいくつかあり、はっとさせられた。「日本の理系女性の割合はOECD内で最下位」だとか「15歳の時点で日本の学生の数学の成績はは男女ともに世界トップクラス」、「海外の理系大学、理系学部では、むしろ女子学生のほうが多い」などは予想外だった。そして「女子生徒が物理を嫌いになるのは中学時代」だということを突き止め、対策をするのであれば中学生までの生徒、児童に対して働きかけなければならないと主張している。本書では中学生への働きかけとしてKavli IPMUの「ものしり新聞」が紹介されている。

なぜ中学時代なのか?僕は思った。中学1年から数学ではx、yなど英文字を使った数式を学び始めるからなのだろうか?方程式、因数分解、一次関数、二次関数。このあたりで落ちこぼれてしまう生徒が一定数いることを「数学の教科書が言ったこと、言わなかったこと:南みや子」という本で、長年数学を教えてきた著者がご自身の経験をもとに解説されている。しかし、そこに性差があるかどうかはお書きになっていない。また、数学で落ちこぼれた生徒は理系に進学しないと思われるが、どれくらいの割合で落ちこぼれるのかもこの本には書かれていない。

高校の物理では三角関数やベクトルの理解は必須だ。微積分は使われないがその考え方は使われる。中学の物理でもある程度の数学知識は必要になる。中学で物理が嫌いになる理由のひとつに、数学で落ちこぼれたからというのがあるのではないだろうか。

また、どこまでの学問を理系とみなすかという点について、僕は次のように思った。高校では物理、化学、生物、地学、そして数学IIIは理系とみなされる。大学の学部課程や専門学校では僕の分類はあやふやになる。医学、薬学、看護学は理系だろうか?僕独自の分類では線形代数や微積分を学ぶ必要がある学問を理系とみなしている。学部レベルと研究者では数学の必要性はまた異なってくるのだろう。

さらに情報系は分類が難しい。現場で働くソフトウェアエンジニアの多くが非理系学部卒だからだ。情報系は理系知識、数学知識が必須の領域と、それらの知識がなくても困らない領域に分かれると思う。女性のソフトウェアエンジニアの比率は前者よりも後者のほうが大きい。

本書には書かれていないことだが、近年高校での物理の履修率がとても低くなっていることに危惧を感じている。科学技術立国日本を再生したいのであれば、そして日本の科学のレベルを世界の水準まで引き上げるのであれば、男性女性に関係なく物理を履修することは必要不可欠だ。

このように本書は、日ごろ意識していなかったことを具体的に提示し、調査結果と著者みずからの考察を示してくれているので、固定観念にとらわれた頭に刺激を与えてくれる好書である。当たり前だと思っていたことにメスを入れることで、新たな視点が生まれ、問題解決の糸口が得られる。ぜひお読みになっていただきたい。


余談であるが、著者の横山先生には「グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方」というイベントでお会いし、ご挨拶させていただいたことがある。先生の優しい雰囲気と話し方のおかげで緊張することなくお話することができた。先生が科学に興味を持ったのはこの科学雑誌に出会ったからだということが本書に書かれている。僕も「Newtonファン」だから、先生に対して余計に好感を持った。この雑誌は1980年の創刊以来、男女関係なく日本の小中学生、高校生を科学の世界に引き寄せていることは間違いない。

あと細かいことだが、本書で横山先生は「女子学生」ではなく「女性学生」という言葉をお使いになっている。耳慣れない言葉だが、大学生は大人なのだから女性学生と表現したのだと思った。今では18歳が成人だということを思い出した。そして中学生のほうは「女性」ではなく「女子」という言葉を使っている。細かい配慮が行き届いている。

日本では理系を選択する女性は増えていくのだろうか。僕はあと20~30年は生きることができそうだから、今後も見守っていきたい。





関連動画:

理系女性が少ないワケ・東京大学 横山広美 教授【BEYOND 14】:YouTubeで再生



関連記事:

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ec7f96712045560b6cf3d7b1e851e49e

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その2)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06a11387485b7835d8147229d541497b

Newton(ニュートン)の0号と創刊号の思い出
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0bff55e11fe0fa8fd8f23e431724c678

理系バカと文系バカ: 竹内薫著
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f2c954eee4759584b971f435c82b66c2

理系男性のココが面白い
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/570beb9d2db2dd05647d5006e654fad5

理系クン (文春文庫):高世えり子
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d773113fd49fa599c3bbd9d2f9739b69


 

 


なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美」(Kindle版


序章 「理系女性問題」とは何か
- 自己紹介 -- 理系女性の1サンプルとして
- 科学雑誌『Newton』との出会い
- 「データがないなら、研究してほしい」
- 「社会風土」を研究の中核にする

第1章 理系女性の割合はOECD内で最下位
- 特に女性学生が少ない物理学と数学
- 理系のおける女性学生の割合はOECD諸国で最下位
- 数学の成績は男女ともトップクラス
- 数学・物理系卒業生への企業ニーズは高い
- 世界の大学では女性学生のほうが多いのが普通
- 女性学生が2割弱、あまりに特殊な東京大学の現状
- 「天賦の才能」のイメージが強い学問分野は?

第2章 「数学・物理学に求められる能力」のイメージとは
- 「天賦の才能」とはどんな能力?
- 「論理的思考力」と「計算能力」は男性的?
- 数学・物理学に必要と思われる方法は?
- 単純化できない「理系に求められる能力」

第3章 男女差は生まれながらか環境要因か
- 算数・数学の成績に男女差はあるのか
- 学力の男女差は生まれながらか、環境要因か
- 大学入学前の成績は、必ずしも専攻に影響しない
- 「親のジェンダーステレオタイプ」という要因
- 科学者の多くは環境要因だと考えている
- 「女性が少ないのが、なぜ問題なのですか?」
- 女性であるだけで不利益を被る「無意識のバイアス」
- エクイティ(公平性)と「結果の平等」
- アファーマティブ・アクションは「逆差別」?

第4章 学問分野にはジェンダーイメージがあった
- 「あの学問は女性向き」「この仕事は男性向き」
- 女性は看護学? 男性は機械工学?
- 女性学生が多くても女性専門家が少ないという問題
- バービー人形もリカちゃん人形も算数が苦手だった
- 就職に強いのは看護学・薬学・医学・歯学?
- 薬学が女性に向いていると思われる背景
- 結婚に有利なのは、女性は音楽、男性は医学?
- 「結婚に有利」とはそもそもどういうことか
- ジェンダー平等度が低い人ほど、看護学を女性向きと見なす

第5章 学問分野から連想されるキーワード
- 物理学者と言えば男性、物理学と言えば戦争?
- キーワード分析からジェンダーステレオタイプ解明へ
- 科学6分野のイメージをキーワードで表すと?
- 機械工学は「油まみれ」「溶接」「機械をつくる」
- 最も中性的な生物学のキーワード
- ジェンダー平等度が低い人ほど6分野に男性イメージを持つ

第6章 中学生で物理が嫌いになる?
- 「理数系嫌い」はいつ始まるのか
- 理系大卒女性は中学で物理嫌いに
- 女性のほうが自分の能力を低めに見積もるから?
- だから中学生への働きかけが重要
- 物理学者はジェンダー平等度の高い人が多い?
- 物理好きと幼少時の経験は関係がある?

第7章 ジェンダー平等意識と理系進学の関係
- 性別役割分業と能力に関わるステレオタイプに着目
- ジェンダー平等度が高い生徒ほど理系を希望する?
- 成績、家庭の経済状況も進路を左右する
- ジェンダー平等を進める教育が必要なこれだけの理由

第8章 親のバイアスはどう影響するか
- 女子の進路で親が最も賛成するのは薬学
- 親は娘の希望に基本的に賛成する
- 理系進学に賛成する理由は「就職に困らないから」
- 親のジェンダー平等度が娘の進学に与える影響
- 母親の数学ステレオタイプが弱いと娘が理系に進む?

第9章 数学・物理学の男性イメージはどう作られる?
- 理工系分野に女性が少ない3つの要因
- 「性差別についての社会風土」という4つめの要因
- 女性は知的でないほうが良いと思うほど...
- 男性だけでなく女性もジェンダー平等度が低い日本
- 日本は物理学における女性のロールモデルが足りない
- 学際領域研究ならではの成果
- 知的な女性を応援する社会に
- 「異性意識環境」についての補足

第10章 壁を取り払ってくれるのはどんな情報?
- 壁を取り払うためにどんな情報を提供すべきか
- 就職情報、平等社会情報、数学得意情報?
- 女子に優しい情報は男子にも優しい

終章 残された謎と課題
- 女子生徒の数学・理科嫌いは装われたもの?
- ジェンダー平等パラドクス
- サイエンス・オブ・サイエンスコミュニケーションが必要

おわりに
参考文献

Visual Studio Codeパーフェクトマスター:金城俊哉

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Visual Studio Codeパーフェクトマスター:金城俊哉」(Kindle版
サンプルデータ:ダウンロードページ

内容紹介:
Microsoftが開発しているWindows、Linux、macOS、web用のソースコードエディタVisual Studio Codeの解説書となります。テキストエディタ―でありながら機能を拡張することで各言語に対応したコンパイラーやデバッガーを搭載することができます。しかも自分が使う言語に合わせた拡張が可能で、機能を追加しても軽快に動作します。
本書では操作方法の解説、実用的なアプリの開発についてを紹介し、VSCodeを便利に使うことをテーマにしました。

2023年2月1日刊行、552ページ。

著者について:
金城 俊哉(きんじょう としや)
フリーライター。Web制作からOfficeソフト、ネットワーク、データベース、プログラミング関連書籍の執筆まで幅広く活動中。
金城 俊哉さんの著書: 書籍版 Kindle版

理数系書籍のレビュー記事は本書で481冊目。(物理や数学のプログラミングを学びたいと思っているので、本書は理数系書籍としてカウントした。)

最近ハイスペックのミニPCを買ったことで、プログラミングを楽しんでみたいという欲求がでてきている。物理や数学、天文関連の計算をするプログラミングで遊んでみたい。

とはいえ、僕がプログラマーだったのは1987年から1991年までのたった4年間。その後、IT企業に長年勤めている間に簡単なスクリプトなどはときどき書いていたが、それは本格的なプログラム開発ではない。

数十年のブランクを埋めるのはすでに無理だが、最近の動向をつかんでおきたい。今後プログラミングをするために開発環境に慣れておこう。そのような気持ちで本書を選んだ。

もちろんVSCodeを使って何度かプログラミングをしていたが、網羅的に広く浅く知っておきたい。このような本を読むのには慣れているから、1週間程度で読むことができた。

章立ては次の通り。

Chapter1 Visual Studio Codeの導入
Chapter2 VSCodeの基本操作
Chapter3 HTML/CSS/JavaScriptによるフロントエンド開発
Chapter4 VSCodeでPythonプログラミング
Chapter5 Djangoを用いたWebアプリ開発
Chapter6 VSCodeからGit、GitHubを使う
Chpter7 Jupyter Notebookを用いた機械学習

Webページ、Webアプリの開発、GitやGitHubを使ったソースコード管理、Jupiter Notebookを用いた機械学習をざっくり知ることができるが、じっくり学ぶというわけにはいかない。本書はあくまでVS Codeの使い方を学ぶための本だからだ。

プログラミングは「習うより慣れろ」、手を動かして学ぶことがいちばん大切だということは痛いほど理解している。けれども、プログラミングにどれくらいの時間がかかるかは知り尽くしているし、自由に使える時間がほとんどない生活を強いられている。

そのような生活環境のなかで、ようやく1冊読み終えることができたというのが実情である。何もしないよりは、何かしておこうと思って手を出したのが本書だった。

物理や数学だけでなく、プログラミング系のことも引き続き学んでいくことにした。


関連動画:

本書の流れに沿って学習項目を学べるよう、YouTubeから動画をピックアップしてみた。

VS Codeの使い方講座!日本語化する拡張機能のインストールも紹介!: YouTubeで再生


【プログラミング講座】HTML、CSS,JavaScriptの関係性を解説!エンジニア初心者や入門者にオススメ!:YouTubeで再生


初心者でも簡単!Visual Studio CodeでPythonを動かしてみよう!【Python実践講座0章】:YouTubeで再生


Django超入門 | コースの紹介とDjangoのインストール:YouTubeで再生


Git / GitHub / VSCode初期セットアップ入門!(エンジニア初心者用):YouTubeで再生


VS CodeでJupyter Notebookを動かす方法を解説!:YouTubeで再生


Pythonの便利ライブラリ「Pandas入門講座」合併版:YouTubeで再生


【Pythonプログラミング】scikit-learnで機械学習!〜 入門編・初心者向け 〜:YouTubeで再生


Pythonでできる機械学習画像判定~TensorFlow(keras)で犬猫判定モデルを作ろう!:YouTubeで再生



 

 


Visual Studio Codeパーフェクトマスター:金城俊哉」(Kindle版

サンプルデータ:ダウンロードページ

 0.1 VSCodeを使い倒して快適プログラミング

Chapter 1 Visual Studio Codeの導入
 1.1 新定番のソースコードエディター:Visual Studio Code
 1.2 VSCodeをインストールする
 1.3 VSCodeの日本語化
 1.4 初期設定
 1.5 VSCodeの画面構成
 1.6 コマンドパレット

Chapter 2 VSCodeの基本操作
 2.1 プログラミング環境の構築
 2.2 ワークスペースの構築
 2.3 エディターを快適に使いこなす
 2.4 差分表示
 2.5 デバッグの基本

Chapter 3 HTML/CSS/JavaScriptによるフロントエンド開発
 3.1 HTMLでWebページを構築
 3.2 CSS
 3.3 JavaScript

Chapter 4 VSCodeでPythonプログラミング
 4.1 Pythonプログラミングを快適にするエディター機能の使い方
 4.2 Pythonプログラムの作成

Chapter 5 Djangoを用いたWebアプリ開発
 5.1 VSCodeでDjangoを使うための準備
 5.2 Webアプリのプロトタイプの作成とBootstrapの移植
 5.3 認証用accountsアプリの作成
 5.4 pictureアプリに画像投稿機能を実装する
 5.5 トップページに投稿画像を一覧表示する
 5.6 カテゴリごとに一覧表示する仕組みを作る
 5.7 ユーザーの投稿一覧ページを用意する
 5.8 投稿画像の詳細ページを用意する
 5.9 ログイン中のユーザーのための「マイページ」を用意する

Chapter 6 VSCodeからGit、GitHubを使う
 6.1 Git
 6.2 ブランチの作成
 6.3 GitHubとの連携

Chapter 7 Jupyter Notebookを用いた機械学習
 7.1 Jupyter Notebookの基本操作
 7.2 Pandas、scikit-learnを用いた機械学習
 7.3 TensorFlowを用いた機械学習
 
 Appendix 資料

いちばんやさしいGit&GitHubの教本 第2版 人気講師が教えるバージョン管理&共有入門

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いちばんやさしいGit&GitHubの教本 第2版 人気講師が教えるバージョン管理&共有入門」(Kindle版
サポートページ

内容紹介:
実際のワークフローをイメージしながら実践的なGit/GitHubの使い方が身につく「いちばんやさしい」入門書です。前半は、手元のパソコンでファイルを実際にバージョン管理しながら、Gitの基本的な使い方を解説。後半では、実践的なワークフローに沿ってGitHubを使い、チームメンバーと一緒に開発を進めるための知識が身につきます。

全体を通し、コマンドラインを使った操作が中心であることも大きな特徴です。難しそうに思えるかもしれませんが、未経験者でも理解できるように配慮しているので、心配することはありません。

概念や操作方法を丁寧に解説するのみならず、「なぜそうするのか」といった疑問に答えられるような説明も多く入れています。

改訂版では、新しいGitコマンドやGitHubの機能にも対応したのに加え、知っておくと実務で役に立つ新しい慣習も紹介。初めて学ぶ方にも、すでに使っていて知識を整理・アップデートしたい方にもおすすめです。

■本書はこんな人(企業)におすすめ
・これからGit/GitHubを使いはじめる入門者
・チームでプログラミングやWeb制作に携わる人
(エンジニア、デザイナー、ディレクター、プロデューサーなど)
・コマンドラインでの操作をちゃんと学びたい人
・Webサイトを運営しているWeb担当者

2022年3月17日刊行、240ページ。

著者について:
横田紋奈(よこたあやな)
JFrog Japan株式会社デベロッパーアドボケイト。早稲田大学国際教養学部卒。規模、カルチャー、業種の全く異なる3社にてバックエンドエンジニアを務めた経験をいかし、技術的な広報や啓蒙、レクチャーなどを担当。プライベートではエンジニア向けコミュニティを運営。「Java女子部」運営スタッフ、「日本Javaユーザーグループ」幹事として、イベント開催や登壇を行う。
Twitter:@ihcomega
GitHub:@ihcomega56

宇賀神みずき(うがじんみずき)
立命館大学理工学部卒。システムインテグレーターのバックエンドエンジニアとして、システム開発やプロジェクトへのGit導入を行う。2018年より外資系クラウドベンダーへ転職し、クラウド利用を推進している。プライベートでは、エンジニア向けイベントに参加し開発手法などのテーマで登壇している。
Twitter:@syobochim
GitHub:@syobochim


理数系書籍のレビュー記事は本書で482冊目。(物理や数学のプログラミングを学びたいと思っているので、本書は理数系書籍としてカウントした。)

ひとつ前の「Visual Studio Codeパーフェクトマスター:金城俊哉」という記事で紹介した本に、VSCodeからGit、GitHubを使う方法が解説されていたが、より深く広く知りたいと思って読んだのが今回の本。特にこの本ではチームで協力しながらプログラムやWebサイトを開発する際、バージョン管理をどのように行っていくかが、実際の現場をイメージしたスタイルで解説されているのがよい。Git、GitHubの入門者から、すでに現場でお使いの中級者までが対象読者と思われる。

章立ては以下のとおり。(詳細目次はこの記事のいちばん下を参照)

Chapter 1 Gitの基本を学ぼう
Chapter 2 Gitを使う準備をしよう
Chapter 3 ファイルをバージョン管理してみよう
Chapter 4 GitHubのリポジトリをパソコンに取得しよう
Chapter 5 ブランチを使ってファイルを更新しよう
Chapter 6 複数ブランチを同時に使ってファイルを作業しよう
Chapter 7 コンフリクトに対処しよう
Chapter 8 GitHubをさらに使いこなそう


関連ページ:

【超入門】初心者のためのGitとGitHubの使い方
https://tech-blog.rakus.co.jp/entry/20200529/git

サル先生のGit入門〜バージョン管理を使いこなそう〜
https://backlog.com/ja/git-tutorial/

【Git入門解説】Gitの基本的な使い方をマスターしよう
https://codezine.jp/article/detail/16559

完全初心者向けGitHub超入門!使い方と3つの学習方法を紹介
https://www.sejuku.net/blog/8224


関連動画:

【Git入門講座 合併版】この動画1本でGitとGitHubの基礎をゼロからマスター!【初心者向け】:YouTubeで再生


【Git入門】Git + Github使い方入門講座🐒Gitの仕組みや使い方を完全解説!パーフェクトGit入門!:YouTubeで再生


【わかりやすい!Git操作】初心者向けのGitの基本 〜 30分で入門:YouTubeで再生


【GitHub入門】初心者向け!GitHubでチーム開発するための基本操作を解説!:YouTubeで再生



 

 


いちばんやさしいGit&GitHubの教本 第2版 人気講師が教えるバージョン管理&共有入門」(Kindle版


はじめに
本書の読み方

Chapter 1 Gitの基本を学ぼう
Lesson 01 バージョン管理とその目的を理解しましょう
Lesson 02 Gitの特徴を知りましょう
Lesson 03 変更を記録するコミットについて知りましょう
Lesson 04 リポジトリの役割を理解しましょう
Lesson 05 ローカルリポジトリに対する操作のイメージをつかみましょう
Lesson 06 リモートリポジトリに対する操作のイメージをつかみましょう

Chapter 2 Gitを使う準備をしよう
Lesson 07 パソコンにGitをインストールしましょう
Lesson 08 コマンドを実行するツールを起動しましょう
Lesson 09 CUIでフォルダーやファイルを操作する方法を身に付けましょう
Lesson 10 Visual Studio Codeをインストールしましょう
Lesson 11 ファイルの拡張子を表示しましょう
Lesson 12 Gitの設定をしましょう
Lesson 13 GUIクライアントを知りましょう

Chapter 3 ファイルをバージョン管理してみよう
Lesson 14 ローカルリポジトリでの操作を知りましょう
Lesson 15 ローカルリポジトリを作りましょう
Lesson 16 ステージングエリアに登録しましょう
Lesson 17 ファイルの差分を確認しましょう
Lesson 18 ファイルをコミットしましょう
Lesson 19 ローカルリポジトリでの操作を取り消しましょう
Lesson 20 Gitの管理下にあるファイルを削除しましょう
Lesson 21 Gitで管理しないファイルを設定しましょう
Lesson 22 コミットの履歴を確認しましょう

Chapter 4 GitHubのリポジトリをパソコンに取得しよう
Lesson 23 GitHubを使う準備をしましょう
Lesson 24 GitHubに公開鍵を設定しましょう
Lesson 25 サンプルプロジェクトを自分のアカウントの管理下にコピーしましょう
Lesson 26 イベント案内ページをパソコンに取得しましょう
Lesson 27 Webページの編集作業をするための準備をしましょう

Chapter 5 ブランチを使ってファイルを更新しよう
Lesson 28 ブランチとは何かを理解しましょう
Lesson 29 専用のブランチでイベント会場の情報を更新しましょう
Lesson 30 プルリクエストを作成しましょう
Lesson 31 プルリクエストをレビューしてもらいましょう
Lesson 32 GitHubのレビュー機能を使いこなしましょう
Lesson 33 作成したブランチをmasterブランチにマージしましょう
Lesson 34 リモートリポジトリの内容をローカルリポジトリに取得しましょう
Lesson 35 GitHubフローについて理解しましょう

Chapter 6 複数ブランチを同時に使ってファイルを更新しよう
Lesson 36 複数ブランチを使うためのシナリオを理解しましょう
Lesson 37 専用のブランチでスピーカーの情報を更新しましょう
Lesson 38 さらにブランチを作成し、セッションの情報を更新しましょう
Lesson 39 スピーカー情報更新用ブランチに戻り、作業を再開しましょう

Chapter 7 コンフリクトに対処しよう
Lesson 40 コンフリクトとは何かを理解しましょう
Lesson 41 コンフリクトを発生させてみましょう
Lesson 42 コンフリクトが発生した際の対応を学びましょう

Chapter 8 GitHubをさらに使いこなそう
Lesson 43 オープンソースソフトウェアのリポジトリへアクセスしよう
Lesson 44 オープンソースソフトウェアを探してみましょう
Lesson 45 オープンソースソフトウェアに貢献しましょう

索引
用語集
コマンドリファレンスのダウンロードについて

Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ

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Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ」(Kindle版
サポートページ

内容紹介:
【本書の概要】
Web開発やデータ分析などの分野で、ユーザー数が増えてきているPython。
最近では、Pythonに触れる方も多くなってきています。
本書はそうしたPython初心者の方に向けて、
ヤギ博士とフタバちゃんと一緒に
基本的なプログラムの作成から、面白い人工知能アプリの作成までを体験。
対話形式でプログラミングのしくみを学ぶことができます。

【対象読者】
Pythonについて何も知らないプログラミング超初心者

【本書のポイント】
・対話形式で解説し、イラストを交えながら、基礎知識を解説します。
・初めての方でも安心して学習できるよう基本文法もしっかり解説します。
・平易なサンプルを用意していますので、安心してプログラムを体験できます。
・2022年時点の最新の環境(Windows 11、Python 3.10など)に対応しています。
・エラーでつまづいた場合の対応方法を巻末に掲載しています。

2022年8月4日刊行、200ページ

著者について:
森 巧尚(もり・よしなお)
『マイコンBASICマガジン』(電波新聞社)の時代からゲームを作り続けて現在はコンテンツ制作や執筆活動を行い関西学院大学非常勤講師、
関西学院高等部非常勤講師、成安造形大学非常勤講師、大阪芸術大学非常勤講師、プログラミングスクールコプリ講師などを行っている。
近著に、『Python1年生』『Python2年生 スクレイピングのしくみ』『Python2年生 データ分析のしくみ』『Python3年生 機械学習のしくみ』
『Java1年生』『動かして学ぶ!Vue.js開発入門』『Python自動化簡単レシピ』(いずれも翔泳社)、
『ゲーム作りで楽しく学ぶ Pythonのきほん』『楽しく学ぶ Unity2D超入門講座』『楽しく学ぶ Unity3D超入門講座』(いずれもマイナビ出版)などがある。


理数系書籍のレビュー記事は本書で483冊目。(物理や数学のプログラミングを学びたいと思っているので、本書は理数系書籍としてカウントした。)

数年前に「いちばんやさしい Python入門教室」(Kindle版)を読んでいたが、どうも物足りない。分厚い本を買って読もうかと思ったが、時間がとれそうもない。

広く浅く学んでみようと今回から紹介する「Python 〇年生」シリーズをすべて読破しようと決めた。僕はもともとプログラマーだったから、実用的な大きなプログラムを開発することはできる。あらましさえ知っておけば差し当たりいま感じている欲求は満たせる。シリーズ最初の「1年生」の本は、さらっと読み終えてしまった。目次は以下のとおり。

第1章 Pythonで何ができるの?
第2章 Pythonを触ってみよう
第3章 プログラムの基本を知ろう
第4章 アプリを作ってみよう
第5章 人工知能くんと遊んでみよう

プログラミング経験者にとって大事なのは、各種ライブラリの使い方をマスターすること。これは何のためのプログラムを書くかによって違ってくるので、その都度慣れていくのがよい。本書でそれがどのようなものか、ごくあっさり学んでおけばよいだろう。本書の第5章で、文字認識、文字判定を行う機械学習プログラムを学ぶことができる。


Python1年生 第2版」(Kindle版)(サポートページ


Python2年生 スクレイピングのしくみ/a>」(Kindle版)(サポートページ
Python2年生 データ分析のしくみ」(Kindle版)(サポートページ
Python2年生 デスクトップアプリ開発のしくみ」(Kindle版)(サポートページ
  

Python3年生 機械学習のしくみ」(Kindle版)(サポートページ



 

 


Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ」(Kindle版
サポートページ


第1章 Pythonで何ができるの?
第2章 Pythonを触ってみよう
第3章 プログラムの基本を知ろう
第4章 アプリを作ってみよう
第5章 人工知能くんと遊んでみよう

発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第3版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ

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中級者向けの量子力学の名著、J.J.サクライの教科書の下巻の第3版が6月19日に発売され上巻、下巻ともに第3版が揃うことになった。

現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano
現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano
 


内容

上巻
本書のもとである、J.J.サクライによる Modern Quantum Mechanics は1985年の刊行以来、量子力学の核心に迫る名著として高く評価され世界中で読み継がれてきた。ここでは波動関数もシュレーディンガー方程式も与えられた仮定ではなく、全てが明確に提示された基礎概念から極めて自然に導かれている。
第2版では実験家であり教育者であるジム・ナポリターノ氏が共著者となり、量子力学の基礎に関連する新しい実験データや講義で必要となる一般的事項や問題を追加した。そして相対論的量子力学への拡張を考慮して改訂がなされている。
理論の道筋を説得力をもって示す一方、その帰結である極めて非古典的な実験事実を紹介するのも本書の特徴である。中性子の重力干渉、アハラノフ-ボーム効果、ベルの不等式の検証や最近のニュートリノ振動のデータなどは、初学者にとって新鮮な驚きであろう。本書は量子力学の魅力と普遍性を雄弁に語っている。

下巻
著者J.J.Sakurai(桜井純1933‐1982)は東京で生まれ、高等留学生として渡米して以来アメリカで高等教育を受けた理論物理学者。素粒子物理学の分野で先駆的理論を提出していたが、1982年CERNに出張中に急逝、本書はその遺稿をもとにする。上巻に収めた第3章までは原稿が完成していたが、第2版の下巻では共著者となった実験家のJim Napolitanoが大胆に再編を試みた。初版が非相対論的量子力学の記述にとどまっていたのに対し、第2版では場の理論とのつながりを意識して、第2量子化を用いた多粒子系の扱いや電磁場の量子化、ディラック方程式による水素原子の問題なども含まれ内容は相対論的量子力学まで広がっている。また近年の実験からベリーの位相、カシミール効果、スクィーズド光などのデータも提示され、いまなお魅力を増している量子力学の世界が紹介されている。共著者は本書の初版を教科書としてきた経験から、改訂に当たって内容の選択や章末の問題など随所に教育的配慮をしている。 第3版で追加された重要な項目は、近年多くの分野で用いられている密度汎関数理論であり、その基礎と簡単な応用を説明する。最後の相対論的量子力学については、ボソンとフェルミオンについてクライン-ゴルドン方程式とディラック方程式を説明し、第3版では前者の場の理論も追加した。最後に相対論的場の量子論の必要性が示される。 第3版では、読者の理解を深めるために演習問題が大幅に増やされた。さらに、分かりにくい箇所を中心に日本語訳では多くの訳註を付けて、初学者、自習者の便宜をはかった。

著者略歴
桜井明夫
1967年東京大学理学系大学院博士課程修了。1967~1978年東京大学物性研究所、ベルリン自由大学理論物理学研究所勤務。1979~2007年京都産業大学理学部勤務。専攻:物性理論。現在:京都産業大学名誉教授。理学博士。

上巻目次

第3版序文
追悼
初版序文
日本語初版序文
第1 章基礎概念
 1.1 シュテルン-ゲルラッハの実験
 1.2 ケット, ブラと演算子
 1.3 基底ケットと行列表現
 1.4 測定, 観測可能量および不確定性関係
 1.5 基底の変更
 1.6 位置, 運動量と平行移動
 1.7 位置および運動量空間における波動関数
 問題
第2章量子ダイナミックス
 2.1 時間発展とシュレーディンガー方程式
 2.2 シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示
 2.3 調和振動子
 2.4 シュレーディンガーの波動方程式
 2.5 シュレーディンガーの波動方程式の初等的な解
 2.6 プロパゲーターとファインマンの経路積分
 2.7 ポテンシャルとゲージ変換
 問題
第3 章角運動量の理論
 3.1 回転と角運動量の交換関係
 3.2 スピン1/2の系と有限回転
 3.3 SO(3), SU(2) およびオイラーの回転
 3.4 密度演算子と純粋ならびに混合アンサンブル
 3.5 角運動量の固有値と固有状態
 3.6 軌道角運動量
 3.7 中心力ポテンシャルの場合のシュレーディンガー方程式
 3.8 角運動量の合成
 3.9 角運動量を表すシュウィンガーの振動子モデル
 3.10 スピン相関の測定とベルの不等式
 3.11 テンソル演算子
 問題
付録A 電磁気の単位
付録B シュレーディンガーの波動方程式の基本的解
付録C 電磁場中の電荷のハミルトニアン
付録D 角運動量の合成則(3.358) の証明
付録E クレブシュ-ゴルダン係数の見つけ方
文献

下巻目次

第4章量子力学における対称性
 4.1 対称性,保存則および縮退
 4.2 離散対称性,パリティすなわち空間反転
 4.3 離散対称性としての格子上の平行移動
 4.4 時間反転の離散対称性
 問題

第5章近似法
 5.1 時間に依存しない摂動論 縮退のない場合
 5.2 時間に依存しない摂動論 縮退のある場合
 5.3 水素様原子 微細構造とゼーマン効果
 5.4 変分法
 5.5 時間に依存するポテンシャル 相互作用表示
 5.6 時間依存性が極端なハミルトニアン
 5.7 時間に依存する摂動論
 5.8 古典的放射場との相互作用への応用
 5.9 エネルギーシフトと崩壊幅
 問題

第6章散乱理論
 6.1 時間に依存する摂動としての散乱
 6.2 散乱振幅
 6.3 ボルン近似
 6.4 位相のずれと部分波
 6.5 アイコナール近似
 6.6 低エネルギー散乱と束縛状態
 6.7 共鳴散乱
 6.8 散乱における対称性の考察
 6.9 非弾性電子-原子散乱
問題

第7章同種粒子系
 7.1 置換対称性
 7.2 対称化の要請
 7.3 2電子系
 7.4 ヘリウム原子
 7.5 多粒子状態
 7.6 密度汎関数理論
 7.7 量子場
 7.8 電磁場の量子化
 問題

第8章相対論的量子力学
 8.1 相対論的量子力学への道
 8.2 ディラック方程式
 8.3 ディラック方程式の対称性
 8.4 中心力ポテンシャルがあるときの解
 8.5 相対論的場の量子論
 問題

付録F 複素変数についてのノート
 F.1 複素数と複素関数
 F.2 微分と解析性
 F.3 積分と級数展開
 F.4 コーシーの留数定理

文献
初版改訂版への序
訳者後書き
著者紹介
総索引


演習書は第2版が最新である。

演習 現代の量子力学 第2版」(正誤表



翻訳のもとになった英語版は2020年9月に第3版が刊行された。

Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版



関連記事:

現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/24fd19db8b5e2169820606e076972fed

現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6ce1bc17d265ec766198418965a2c37

発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/798f43e65b60d75143ee875bccc1be69


 

 

量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー

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量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー」(Kindle版
相対性理論から「情報」と「現実」の未来まで

内容紹介:
2022年ノーベル物理学賞受賞!
世界で初めて量子テレポーテーションの実験に成功した著者が量子情報科学の基礎を徹底的に解き明かし、今後の展望を語り尽くす最良の入門書。

ウィーン大学1年生のアリスとボブは、入門クラスの授業で理論物理学者者 A・クォンティンガー教授に出会う。二人は彼の勧めに従い、「量子」の特性を明らかにするための様々な実験に取り組んでいく。

2023年5月23日刊行、400ページ

著者について:
アントン・ツァイリンガー (Anton Zeilinger)
1942年、オーストリア生まれ。量子物理学者、ウィーン大学物理学教授。量子情報研究の先駆者であり、1997年、世界で初めて光子の量子テレポーテーションの実験を成功させたことで知られる。2022年に「量子もつれ状態の光子を用いた実験によるベルの不等式の破れの実証と、量子情報科学における先駆的研究」でアラン・アスペ、ジョン・クラウザーと共同でノーベル物理学賞を受賞。

翻訳者について:
田沢恭子 (たざわ・きょうこ)
翻訳家。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科英文学専攻修士課程修了。主な訳書にプフナー『物語創世』(共訳)、クリスチャン&グリフィス『アルゴリズム思考術』(以上早川書房刊)、ルース『AIが職場にやってきた』、マネー『酵母』など。

監修者について:
大栗博司 (おおぐり・ひろし)
1962年、岐阜県生まれ。理論物理学者。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構機構長、カリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授、ウォルター・バーク理論物理学研究所所長、アスペン物理学センター理事長。著書に『重力とは何か』、『探究する精神』など。


理数系書籍のレビュー記事は本書で484冊目。

僕が理数系書籍の紹介記事を書くようになったのは「量子テレポーテーションの実験が成功した」というニュースを読んだのがきっかけだ。2006年以来続けてきたこのブログの原点ともいうべきテーマである。

そして昨年ようやくこの分野の研究、実績に対してノーベル物理学賞が授与された。10月にオンラインで行われた発表は素人物理学マニアとしても感慨深いイベントだった。(参考記事:「2022年 ノーベル物理学賞はアスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士に決定!」)

そして受賞者のひとり、アントン・ツァイリンガー博士が2010年にお書きになった著書「Dance of the Photons(光子のダンス)」が改訂され、今年、2023年5月25日に改訂版として発売されたばかりである。日本語版の発売日はその2日前の5月23日。つまり日本語版は2010年版をもとにして翻訳を進め、改訂版の原稿段階で翻訳者はツァイリンガー博士から差分情報を入手して本書を完訳したのだと思われる。英語原書を章タイトルレベルで比較(比較に使用したExcelファイル)ところ、英語2023年版では「Afterword, 2023」、日本語版では「エピローグ」という章だけ追加されていること、他の章のタイトルは完全一致していることがわかった。だから原書でお読みになりたい方は当然2023年版を買うべきである。

日本語版は数式が苦手な人でも読めるように、まったく数式を使わず平易な文章だけで書かれている。科学書の読書に慣れていない方は、まず巻末の「用語集」と「監修者解説」から読み、全体の構成を把握してからお読みになるとよいだろう。

小説「マチネの終わりに: 平野 啓一郎」(Kindle版)の導入部を彷彿させるような感じで始まる。といっても共通点はヨーロッパで行われるコンサートということだけなのだが。本書はそれがウィーンで行われたニューイヤーコンサートである。このコンサートが行われたホールから程近い場所で、最先端のテクノロジーを扱う量子テレポーテーションの実験が行われていたのだ。

この実験施設の紹介をしながらツァイリンガー博士は、量子テレポーテーションに不可欠な量子力学の基礎概念や歴史、量子テレポーテーションそのものについての解説をする。このあたりは、よくありがちな科学教養書の書き方だ。

本書を17%ほど読み進めた「量子実験室のアリスとボブ」という章から、独特な記述が始まる。(僕はKindle版で読んだのでページ番号はわからない。)大学1年生のアリスとボブという学生が、量子力学を理解するためにお勧めの本を教えてもらうため物理学の教官のクォンティンガー教授の研究室を訪ずれる。このことをきっかけに、2人は教授から光子を使った量子テレポーテーションの実験についての指南を受けるようになるのだ。

思考実験や試行錯誤を何度も繰り返していくうちに、2人は少しずつ理解を深めていく。教授との対話、2人どうしの対話を通じて読者に追体験してもらいながら理解してもらおうというスタイルで進むわけである。

途中で、大学院生のジョンが加わり2人への指導を始める。ジョンという名前は「ベルの不等式」を考案した実際の物理学者「ジョン・ベル」にちなんでつけられている。さらにアリスとにハマってにハマっての会話に、哲学専攻の学生チャーリーが加わり、アリスとボブが行った実験やその意味についての対話を繰り返すことによりその意味をより深く読者に考えさせる工夫がなされている。

本書に盛り込まれている図版は少なく、実験装置や実験の概念を簡潔に描いたものだけだ。読者は実験のあらましと結果、その解釈を長々と書かれた文章を辛抱強く読んで理解することが求められる。この分野の実験物理学者たちがたどった道のりを疑似的に追体験することになるわけだ。一般向けに数式なしで書かれていても、物事が易しく説明できるようになるわけではない。本書は読み流すだけでは理解できない。数式に慣れている読者にとってもそれは同じで、かえって数式があるほうが理解しやすくなると僕は思った。

後半ではツァイリンガー博士ご自身による解説が始める。僕にとって目新しかったのは、原子を使った量子もつれの生成、3つ以上の多光子の実験(量子もつれのスワッピング)とそれを利用した実用例、量子情報テクノロジーだった。そして新しい版で追加された「エピローグ」には2010年刊行の旧版以降に行われ、成功した国際的な実験、将来予定されている実験について書かれている。読み進めるにつれて気分が高揚していくはずだ。

たとえば本書で紹介されている「すべての大陸から10万人が参加して、世界中の人たちから乱数を集めて行う大規模ベル状態測定のプロジェクト」の結果は、次のサイトで確認することができる。

The BIG Bell Test
http://thebigbelltest.icfo.eu/

さて、将来マクロな物体あるいは生物のテレポーテーションができるようになるかということについてだが、ツァイリンガー博士は否定的な見解をされている。

ただし、フラーレン(C60)やその化合物のように数百個の原子で構成されている大きな分子について非常に高い精度で量子干渉が観測できている。量子干渉を観測すれば量子の重ね合わせを立証することができるので、量子もつれ状態への大事な一歩となる。

しかし今はまだ、そのように複雑な2つの分子の量子もつれ状態を作る方法はわかっていない。さらに手ごわい難題として、一般化したベル状態測定においては、そのような2つの分子を量子」もつれ状態にすることが必要となるが、その方法もわかっていない。しかし、いつか実験でこれが実現できると考えていけない理由はなく、現時点で多くの人が予想しているよりも早く実現する可能性はある。

マクロな物体のテレポーテーションについて、ツァイリンガー博士は否定的で、複雑な2つの分子の量子もつれ状態を作る方法はわかっていないと書いているが、2014年に日本の国立情報学研究所から次の発表がされていることを紹介しておこう。本書では触れられていないことだ。

巨視的物体の新たなテレポート方法の開発に成功
http://www.nii.ac.jp/news/2014/0630

新たな「もつれ状態」を発見-NII、巨視的物体をテレポートさせる方法を開発
http://news.mynavi.jp/news/2014/07/01/043/


日本語版を監修された大栗博司先生は「監修者解説」の中で次のようにお書きになっている。「量子もつれ」の概念は、量子コンピューター、量子通信、量子暗号など、さまざまな技術応用への可能性を秘めている。また、物質科学では、新物質の発見やその性質の理解のために重要になってきている。最近では、超弦理論や量子重力理論など、物理学の基本法則に関する研究においても、量子もつれが本質的な役割を果たしている。この分野の第一人者であるツァイリンガーが、量子もつれの不思議な世界を数式を用いずにわかりやすく解き明かした本書を、多くの人に読んでいただきたい。


本書には誤訳が多いのかどうか

最後に本書の翻訳について述べておくべきだろう。Amazonに投稿されている読者レビューには誤訳について書かれているものがいくつか確認できる。

1)文系の人に翻訳を任せるのであれば、監修者はもう少し責任を持って監修すべきであった
名著が台無し

2)108ページ、作中のキャラであるクォンティンガー教授が量子力学の講義を行っているシーンに以下のセリフが登場する。
「量子物理学は、二つ目のビームスプリッターを通った直後に各光子がこの下向きの光線の中に存在し、右側に出てくる光線には光子が存在しないと確実に予想する」

これは所謂マッハ=ツェンダー干渉計と呼ばれる、量子力学の入門書ではお馴染みの実験装置の解説となっているのだが、正直まったく意味不明な記述になっている。

光線に光子が存在しないなら、その光線は一体なにで構成されているんだ?
装置の右側から光線は出てこない、というなら理解できるが。

3)図19の箇所についての補足説明、助動詞のwillの訳文中での欠落

「量子物理学では、個々の事象が起こることを正確に予測する状況も実際にある。君たちの目の前にその例がある」。彼は黒板の最後の絵(図19)を再び指さす。
量子物理学は、各光子が2つ目のビームスプリッターの真後ろにあるこの下向きのビームに行き着き、右に出てくるはずのビームにはどの光子も行き着かないことを確実に予測している。これは、量子力学が決定的な予測をする唯一のケースである。つまり、ある事象の確率が1か0のどちらかであり、その事象が確実に起こるか絶対に起こらないかのどちらかである場合である。
実は、文章中の“will”をどのように訳すかという問題であるのだが、これは内容の理解が薄い文系の人には難しい。レビューア氏の言われる通り、この“will”=“はず”をつけなければ全くもって変なことになる。まあ、beamをbeam lineとしてあればこんな誤訳は起きなかったであろうが、これが無駄を省く彼の文章。


1)の投稿については、どこが誤訳なのか具体的に示されていないので何とも言えないが2)と3)の指摘については分析することができる。

2)で指摘されている箇所の訳文と英語原文はこのように書かれている。

「量子物理学は、二つ目のビームスプリッターを通った直後に各光子がこの下向きの光線の中に存在し、右側に出てくる光線には光子が存在しないと確実に予想する」

"Quantum physics predicts with certainty that each photon will end up in this downward beam right behind the second beam splitter, and no photon will end up in the beam emerging to the right."

この箇所の実験は「図19」で示されている。上の文でも、この図の説明でも「光線はあるが光子がない」と書かれていることがわかる。つまり誤訳ではなく英語原文がそうなっているのだ。安易に誤訳だと決めつけるのではなく、英語原文を確認すべきだと思った。



Figure 19
At top, a single photon polarized in some direction, say, 45 degrees, meets a polarizing beam splitter (PBS). The two emerging paths are then redirected by mirrors to meet again at some point, where we place another polarizing beam splitter (PBS). Of the two emerging beams, one is empty - there is no photon at all - and in the other beam, we again have a photon polarized at 45 degrees. This is the result of quantum superposition.

図19:本書の訳
上部で特定の方向、たとえば45度に偏光した光子1つが偏光ビームスプリッター(PBS)に入射する。鏡を使い、ここから出てくる2つの経路の方向を転換してある特定の点で再び交わらせ、そこに2つ目のPBSを置く。2つの出射光のうち、一方には光子が存在せず、もう1つの出射光には45度に偏光した光子1つが再び存在する。これは量子重ね合わせの結果である。

図19:僕による改訳
上部では、ある方向、たとえば45度に偏光した単一の光子が偏光ビーム スプリッター (PBS) に入る。次に、その後分けられた2つの経路ははミラーによって向きを変えられ、ある時点で再び合流し、そこには別の偏光ビーム スプリッター (PBS) が配置されている。出現する 2つのビームのうち、1つは空で、光子がまったく存在していない。もう1つのビームには、やはり45度で偏光した光子が存在している。これは量子重ね合わせの結果だ。

3)の投稿については投稿者の引用箇所の文章が少し改変されているので、本書訳を忠実に書くと次のようになる。

「量子物理学が個々の事象の発生について正確な予想をするという状況もある。まさに君たちの目の前にもその例がある。」教授は黒板に描いた最後の図を再び示す[図19]
「量子物理学は、二つ目のビームスプリッターを通った直後に各光子が下向きの光線の中に存在し、右側に出てくる光線には光子が存在しないと確実に予想する。これが成り立つのは、量子力学が明確な予想をした場合、すなわちある事象の起きる確率が1かゼロ、確実に起きるか絶対に起きないかのいずれかしかないという状況においてのみだ。

これに対応する英語原文はつぎのとおり。赤字のwillが訳出されていないことを投稿者は問題視している。

"There are actually situations where quantum physics also makes precise predictions for indiviaual events to happen. You have one example here in front of your eyes." He points again to the last picture on the blackboard (Figure 19).
"Quantum physics predicts with certainty that each photon will end up in this downward beam right behind the second beam splitter, and no photon will end up in the beam emerging to the right. This is the only case where quantum mechanics makes definitive predictions, namely, in those situations where the probability for an event is either one or zero, where the event will happen either with certainty or never.

誤訳だと投稿した方のご意見に従って改訳すると次のようになる。

「量子物理学が個々の事象の発生について正確な予想をするという状況もある。まさに君たちの目の前にもその例がある。」教授は黒板に描いた最後の図を再び示す[図19]
「量子物理学は、二つ目のビームスプリッターを通った直後に各光子が下向きの光線の中に存在するはずで、右側に出てくる光線には光子が存在しないはずだと確実に予想する。これが成り立つのは、量子力学が明確な予想をした場合、すなわちある事象の起きる確率が1かゼロ、確実に起きるか絶対に起きないかのいずれかしかないという状況においてのみだ。

確かにwillを訳出するほうが意味が明快になるが、これを誤訳とするかどうかは人によって意見が分かれそうである。

僕は英語版の日本語版を逐一比較したわけではないので、全体的に誤訳が多いかどうかは判断できないが、誤訳といってもせいぜい上記のレベルであって、理解の妨げになるほどではないと思っている。

ちなみに上記の3)の英文をGoogle翻訳とDeepLで機械翻訳した結果は次のようになる。どちらもwillは「はず」という意味では訳出されていない。

Google翻訳:
「実際に、量子物理学が個々の出来事の発生を正確に予測する状況も存在します。その一例が目の前にあります。」彼は再び黒板の最後の絵を指さしました (図 19)。
「量子物理学は、各光子が 2 番目のビーム スプリッターのすぐ後ろの下向きのビームに到達し、右側に現れるビームには光子が到達しないことを確実に予測します。これは、量子力学が決定的な予測を行う唯一のケースです。 イベントの確率が 1 または 0 のいずれかであり、イベントが確実に起こるか、まったく起こらない状況です。

DeepL:
「量子物理学では、個々の事象が起こることを正確に予測する状況も実際にある。目の前にその例があります」。彼は再び黒板の最後の絵(図19)を指さす。
「量子物理学は、各光子が2つ目のビームスプリッターの真後ろにあるこの下向きのビームに入射し、右に出てくるビームにはどの光子も入射しないことを確実に予測しています。これは量子力学が決定的な予測をする唯一のケースである。つまり、ある事象の確率が1か0のどちらかであり、その事象が確実に起こるか起こらないかのどちらかである場合である。


英語版は2010年版と2013年版が発売されていて、日本語版は2013年版に対応している。2010年版はAudibleで朗読を聴くことができる。

Dance of the Photons (2010): Anton Zeilinger」(Kindle版
From Einstein to Quantum Teleportation
Dance of the Photons (2013): Anton Zeilinger」(Kindle版
Einstein, Entanglement and Quantum Teleportation
 


関連書籍:

この分野における日本での第一人者は古澤明教授(古澤研究室のページ)だ。2022年の物理学賞は実験系だから、古澤先生の著書を紹介しておきたい。

「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!:古澤明」(Kindle版)(紹介記事
量子もつれとは何か:古澤明」(Kindle版)(紹介記事
量子テレポーテーション:古澤明」(Kindle版)(紹介記事
  


あと量子もつれ現象を技術的に応用したものとして、量子コンピュータが実現しているのだが、ブルーバックス本では以下の本がお勧めである。

量子コンピュータ、量子アルゴリズムを学びたい高校生のために
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b2940b648bda682aa27192eb8261972

量子コンピュータ―超並列計算のからくり: 竹内繁樹
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3134f481301d0f6e7ed8b80c9fd99260

IBM Quantum Experienceのご紹介(日本語音声):量子の重ね合わせ、量子もつれを実演している。(必見)


IBM Quantum(ここから個人でも無料で量子コンピュータを試すことができる。)
https://quantum-computing.ibm.com/

以下の本もお勧めである。この分野で2022年にノーベル物理学賞を受賞した3名の物理学者の業績を詳しく知ることができる本だ。

量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突:マンジット・クマール」(文庫版)(紹介記事
量子のからみあう宇宙:アミール・D・アクゼル」(紹介記事
 

テレポーテーション 瞬間移動の夢: デヴィッド・ダーリング」(紹介記事



関連記事:

2022年 ノーベル物理学賞はアスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7202553c9ccff103b30109d5c66c37d4

テレポーテーションは実現している。(リンク集)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cc0bc7e88d02231138f8b6a9f5859c93


大栗先生の著書の紹介記事:

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863

素粒子論のランドスケープ:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5201583450c82ac59cb4d71efe52b3d9

素粒子論のランドスケープ2:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/dda75ff673f068509d46027305389ee2

数学の言葉で世界を見たら: 大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8ffea17402dcf34e5991b154acef39d9


関連動画:

【一般向け講義】『量子エンタングルメントとベルの不等式の破れ:YouTubeで再生


【速報】ノーベル物理学賞2022を解説【ベルの不等式の破れ】:YouTubeで再生


Nobel Prize lecture: Anton Zeilinger, Nobel Prize in Physics 2022:YouTubeで再生



 

 


量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー」(Kindle版
相対性理論から「情報」と「現実」の未来まで


プロローグ -- ドナウ川の地下で

宇宙旅行
光というもの
牧羊犬とアインシュタインの光の粒子
アインシュタインとノーベル賞
対立
不確定性はいかにして確定したか
量子の不確定性―私たちにわからないだけなのか、それとも本当に不確定なのか
テレポーテーションに対する量子的判決
量子もつれが助けてくれる
量子実験室のアリスとボブ
光の偏光―クォンティンガー教授の講義
アリスとボブが双子を発見し…
ジョンによるアインシュタイン、ポドルスキー、ローゼン入門
局所的な隠れた変数に関するジョンの話
アリスとボブの実験がややこしい結果を出す
ジョン・ベルの物語
アリスとボブは物事が自分たちの思っているとおりではないことを知る
光より速く、そして過去にさかのぼる?
アリスとボブと光速の限界
抜け穴
チロルの山にて
量子の宝くじ
二つの光子を使った量子の宝くじ
量子マネー -- もう偽造はできない
量子トラックは運べる量よりもたくさん伝える
原子を使った量子もつれ生成と初期の実験
超高性能生成装置と情報伝達の抜け穴の封鎖
ドナウ川の量子テレポーテーション
多光子のもたらした驚き、そしてその途上での量子テレポーテーション
量子もつれのテレポーテーション
さらなる実験
量子情報テクノロジー
量子テレポーテーションの未来
テネリフェ島上空からの信号
最近の展開と未解決の問題
つなりどういうことなのか?

エピローグ
付録/量子もつれ -- 量子をめぐる万人の謎
用語集
監修者解説

合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版)

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合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版)

[English][French]

内容紹介:
作品完成から30余年を経た今でも、日本のみならず世界20カ国以上で読み継がれる、反戦マンガの決定版。ヒロシマに投下された原子爆弾による自らの被爆体験をもとに、著者・中沢啓治が、原爆の恐ろしさ、命の尊さ、そして平和への強い願いを込めて描いた著者代表作。「週刊少年ジャンプ」で1973年6月から連載が開始された後、「市民」「文化評論」「教育評論」などの雑誌に、約15年にわたって連載され、1987年2月に連載が終了した。

1973年6月から1987年2月刊行、2614ページ
紙の漫画本: Amazonで検索

著者について:
中沢 啓治(なかざわ けいじ):ウィキペディアの記事
1939年〈昭和14年〉3月14日 - 2012年〈平成24年〉12月19日は、日本の漫画家。
代表作に『はだしのゲン』など、広島市への原子爆弾投下による自身の被爆体験を基に、戦争・平和を題材とした作品を数多く発表している。


今日は広島の慰霊の日。78年前の今日、広島に原子爆弾が投下された。それは、最大限の人的被害を与えて日本人の戦意をくじくために、広島市民が通勤や通学で外出している午前8時15分に設定されたアメリカの軍事作戦の1つだった。

アニメ版(英語字幕)英語吹き替え)、『はだしのゲン2、英語字幕』は数年前に見ていたが、漫画のほうもいつか読まなければと思いつつ時が経ってしまった。今年になってかなり年下の友人から勧められたのと、Kindle端末で読めることを知り、全巻読み終えることができたのだ。今年はこの漫画が連載され始めてからちょうど50年である。(ちなみにアニメ版のはだしのゲン1(1983)はだしのゲン2(1986)のフランス語字幕付きも見れるようだ。)

まず気がついたのはアニメ版に描かれているのは漫画の第1巻くらいまでに過ぎないということだ。アニメ版はゲンの少年期に始めのほうだけで原爆投下や惨状の描写も第1巻に含まれているわけだが、漫画の第2巻以降は青年に成長するまでのゲンを描いている。作者の中沢啓二さんは、自分が目撃した地獄絵さながらの光景を伝えるのはもちろん、その後どのように悲惨で無慈悲なことが延々と続いたのかを伝えたかったのだとわかった。

困ったときには助け合うというのが日本人の美徳だと思いたい。そして豪雨や地震など自然災害のときはその精神が発揮されるのかもしれない。しかし、戦時中や戦後はどうだったか?被爆地ヒロシマで何がおきていたか?自分が生きるだけで精いっぱいのとき、人は思いやりを示すことなどできない。親を失ったこどもたちは浮浪児となり、社会から排斥され、少年少女たちは生きていくために盗みを働き、ヤクザに世話になってその手下にされて殺人にまで手を染めてしまう子もいる。作者の中沢さんが見たこと、体験したことすべてがこの作品に込められている。

原爆やヒロシマという言葉で連想するのは「鎮魂」や「慰霊」だ。しかし、この作品にはゲンや当時の広島市民が持っていた「原爆を投下したアメリカへの怒り」や「原爆傷害調査委員会(ABCC)への怒り」が描かれている。原爆傷害調査委員会(ABCC)は原爆投下直後に広島入りし、被爆者に治療はまったく行わず、原爆被害の研究のために被害者をモルモットとして扱った。原爆の恐ろしさ、被害を流布するのはGHQにより8年間も禁止されていた。戦後78年が経ち、中沢さんを始め怒りの感情をもっていた多くの被爆者が亡くなっている。この作品を教育現場から排除してはならない理由がここにあると思う。


G7広島サミット

今年、広島で行われたG7サミットでは各国首脳が広島平和資料館を訪れた。その際に、バイデン大統領に随行者によって通称「フットボール」と呼ばれている「核のボタン」が平和資料館内部に持ち込まれた。

米の核ボタン、平和記念公園にまで持ち込んだのは・・・ 「8分」の核反撃判断に備えるため 広島サミットでバイデン大統領の随行者が携行(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/311698

また、このサミットでは「核による抑止力」が正当なものであることが宣言に盛り込まれた。つまりG7参加国の核兵器所有を正当化し、ロシアや北朝鮮の所有は認めないという矛盾をはらんだ宣言である。「被爆地ヒロシマはサミットに利用された」という思いを僕は強く持った。もし中沢さんがご存命であれば、このサミットをどのように評価しただろうか?


『はだしのゲン』の広島市の平和教育からの排除

今年、広島市の教育委員会が独自に作成している平和教材から『はだしのゲン』を排除する決定をしたことをとても残念に思う。なぜなのかということについて先日NHKがクローズアップ現代で放送していたが、決定に至るプロセスが不透明で、現岸田政権が憲法改正や防衛費倍増へと走るのに影響を持つ複数の保守系団体が広島市教育委員会の最終決定に関与していたことが浮かび上がってくる。これらの団体は主に日本会議のメンバーから構成されている。8月9日までNHKプラスで配信されているので、ぜひご覧いただきたい。

再生する(配信期限: 8月9日(水)午後7時57分まで)


広島市では現場の教師の意見に反する形で『はだしのゲン』はほかの原爆被害者の体験記に差し替えられるそうだ。まったく話にならない。現場の教師は平和教材としてのこの作品をこのようにとらえているからだ。



『はだしのゲン』は中沢少年が体験した原爆投下後の広島の社会、日本の社会でおきたことを描いた作品であるから、個人の被爆体験記では知りようがないことが紹介されている。

教育現場で紹介されるのが『はだしのゲン』のごく一部だとしても、全巻読んでみようとする小学生はいるだろうし、原爆や戦争を実体験から多角的に考察するうえで欠くことができない作品、この漫画以外にはありえない作品だからである。そしてこれまでに全巻が24か国語に翻訳されている。まして「コイを盗む場面は教育上不適切だ」や「ゲンが浪曲を歌っている姿は現代にそぐわない」、「誰から批判されても耐えうる教材を使うべき」などの排除理由は、まったく理解できるものではない。




この問題はTBSの「報道特集でも取り上げられた。

TBS「報道特集」はだしのゲンが伝えてきたもの(再生
8月5日(土)放送分
8月13日(日)12:00 終了予定



関連動画:

「はだしのゲン」 妻が語った作者・中沢啓治さんの伝言 「被爆者が言いたくても言えないこと…その思いがゲン」


はだしのゲン作者・中沢啓治さんが最後の講演会で伝えたこと/ギャラクシー賞2013年8月月間賞受賞


「はだしのゲン」誕生50年の今、なぜ販売数が急増? 紛争地域で関心が高まる特徴も…「ここまで部数が伸びるとは」外国語版の翻訳者が語る“平和への危機感”【テレメンタリー2023】


NHK放送「はだしのゲン誕生」


プロジェクト・ゲン
https://www.youtube.com/@projectgen-youtube/featured


関連書籍:

映画「ひろしま」は広島で被爆した子供たちの体験記を集めた「原爆の子(1951)」をきっかけに、映画化して後世に伝えようという願いから全国に支援を募って制作されたという。

原爆の子―広島の少年少女のうったえ (1951年)


この本は電子書籍としても読めるようになった。

原爆の子―広島の少年少女のうったえ〈上〉 (岩波文庫)」(Kindle版
原爆の子―広島の少年少女のうったえ〈下〉 (岩波文庫) 」(Kindle版
 

映画「ひろしま」は、関川秀雄が原爆体験者の手記「原爆の子」をもとに監督した作品。原爆投下から8年後の広島で製作され、8万人を超える市民が撮影に参加した。実際の映像も使用されており、原子爆弾の恐怖や広島の惨状、市民の苦しみが、原爆症に苦しむ高校生みち子の姿を通して描かれている。「原爆投下直後の広島で何があったか」を被爆者たちが自ら演じて再現し、ベルリン国際映画祭で長編劇映画賞を獲得するなど国際的にも高い評価を受けた。出演したのは岡田英次、月丘夢路、神田隆、山田五十鈴、加藤嘉、利根はる恵ら。


関連記事:

番組告知: 映画「ひろしま(1953)」
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/13384a02216be844ab1681e8a4d1d92a

原子爆弾 1938~1950年: ジム・バゴット
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0d741fd4e77316eaf05aef8daf865cd6

核兵器: 多田将
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fe84c7cd15d1b8ff7ed14de1fa356504

地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相:飯田進
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ac46ac40b155a4ef430bd92074db2a5b

映画『花筐/HANAGATAMI(2017)』大林宣彦監督
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/27b0f30d3c8eace1f73a348a18be447c


関連ページ:

【平和記念式典 知事あいさつ全文】「核抑止論者に問いたい」広島県 湯崎英彦知事
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rcc/645919?display=1

【平和宣言全文】「核抑止論の破綻、世界の指導者は直視を」広島市長
https://www.asahi.com/articles/ASR8621XMR84PTIL00T.html

首相あいさつ【全文】平和記念式典<2023年>
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/342906


 

 

Barefoot Gen Vol. 1 - Vol. 10: Keiji Nakazawa

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Barefoot Gen Vol. 1 - Vol. 10」(Amazon.com) (Amazon.co.uk)

[Japanese][French]

About the Book
Over 30 years after its completion, the definitive edition of anti-war manga is still read not only in Japan but in more than 20 countries around the world. Based on his experience of being exposed to the atomic bomb that was dropped on Hiroshima, the author Keiji Nakazawa's representative work depicts the terror of the atomic bomb, the preciousness of life, and a strong desire for peace. After serialization began in Weekly Shonen Jump in June 1973, it was serialized in magazines such as Shimin, Bunka Hyoron, and Kyoiku Hyoron for about 15 years, ending in February 1987.

June 1973 to February 1987, 10 volumes, 2614 pages

About the Author
Keiji Nakazawa: Wikipedia
was six when the atomic bomb dropped on his city. His first published cartoon work appeared in 1973 and he has since has had over fifty book-length serials published. Now retired from cartooning, Nakazawa lives in Tokyo.


Today is the memorial day in Hiroshima. 78 years ago today, an atomic bomb was dropped on Hiroshima. It was one of the US military operations set at 8:15 a.m. when Hiroshima citizens were out on their way to work or school to inflict maximum casualties and discourage the Japanese.

I watched the anime version (English subtitles version) (English dubbed version) (Barefoot Gen 2, English subtitles) a few years ago, but it's been a while since I thought I should read the manga someday. This year, I was recommended by a much younger friend, and I learned that I could read it on my Kindle device, so I was able to finish reading all the volumes. This year marks the 50th anniversary of the serialization of this manga. We can watch the anime version 1 (1983) and 2 (1986) with French subtitles.

The first thing I noticed was that the anime version only shows up to the first volume of the manga. The anime version is only the beginning of Gen's boyhood, and the atomic bombing and the devastation are included in the first volume, but the manga volume 2 and later depict Gen until he grows up to be a young man. It turns out that the author, Keiji Nakazawa, wanted to convey not only the hellish scenes he witnessed, but also how the tragic and merciless things continued on and on.

I would like to think that it is a virtue of Japanese people to help each other when they are in trouble. And that spirit may be demonstrated during natural disasters such as heavy rains and earthquakes. But what happened during and after the war? What happened in the atomic bombed city of Hiroshima? You can't show compassion when you're just trying to survive. Children who have lost their parents become vagrants and are ostracized from society. Boys and girls steal to survive. Some children are taken care of by the yakuza and become their minions, even committing murder. This manga contains everything that the author, Mr. Nakazawa, has seen and experienced.

The words "atomic bomb" and "Hiroshima" are associated with "requiem" and "memorial." However, this manga depicts Gen and the citizens of Hiroshima at the time, anger to the United States that dropped the atomic bomb and anger to the Atomic Bomb Casualty Commission (ABCC). The Atomic Bomb Casualty Commission (ABCC) entered Hiroshima shortly after the bombing, did not provide any medical treatment to the survivors, and treated the victims as guinea pigs in order to study the damage caused by the atomic bombing. Spreading the horror and damage of the atomic bomb was prohibited by GHQ for eight years. It has been 78 years since the end of the war, and many of the A-bomb survivors, including Mr. Nakazawa, who had feelings of anger, have passed away. I think this is the reason why this work should not be excluded from the scene of education.


G7 Hiroshima Summit

At the G7 Summit held in Hiroshima this year, the leaders of each country visited the Hiroshima Peace Museum. At that time, a “nuclear button” commonly known as “football” was brought into the Peace Museum by an attendant to President Biden.

The US nuclear button was brought to the Peace Memorial Park... Carried by President Biden's attendant at the Hiroshima Summit to prepare for the ``eight-minute'' nuclear counterattack decision (Chugoku Shimbun)
Google Trans (English)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/311698

The summit also included in its declaration the legitimacy of "nuclear deterrence." In other words, it is a contradictory statement that legitimizes the possession of nuclear weapons by the G7 countries and does not recognize the possession of them by Russia or North Korea. I had a strong feeling that ``Hiroshima was used for the summit.'' If Mr. Nakazawa were still alive, how would he have evaluated this summit?


Exclusion of Barefoot Gen from Peace Education in Hiroshima City

I deeply regret the decision this year to remove Barefoot Gen from the Hiroshima City Board of Education's own peace materials. The reason for this was recently broadcast by NHK on Close-up Gendai, but he process leading up to the decision is opaque, and it becomes clear that conservative groups that influence the current Kishida administration's efforts to revise the constitution and double the defense budget were involved in the Hiroshima City Board of Education's final decision. The groups are mainly made up of members of an organization called Nippon Kaigi. It will be broadcast on NHK Plus until August 9th, so be sure to check it out.

Play(Delivery deadline: Until Wednesday, August 9, 7:57 pm)


In Hiroshima City, it is said that Barefoot Gen will be replaced with the memoirs of other A-bomb survivors, contrary to the opinion of the teachers on the ground. It's completely out of the question. This is because teachers in the field perceive this work as a peace teaching material.


Teachers who used "Barefoot Gen" in "Peace Note"
It was an effective teaching material 61%
There were parts that worked, but there were parts that I felt weren't as effective 36%
Teaching materials were not effective 1%
no answer 1%

Barefoot Gen is a work that depicts what happened in the society of Hiroshima and Japan after the atomic bombing that Nakazawa experienced, so it introduces things that cannot be known in a personal account of the atomic bombing.

Even if only a small part of Barefoot Gen is introduced in the classroom, some elementary school students will probably try to read the entire volume, and it is essential for considering the atomic bombing and war from multiple perspectives based on actual experiences. This is because it is a work that cannot be done other than this manga. So far, all volumes have been translated into 24 languages. Furthermore, the reasons for exclusion such as ``The scene of stealing carp is inappropriate for education'', ``The appearance of Gen singing rokyoku (old style Japanese song) is not suitable for modern times'', ``The teaching materials should be able to withstand criticism from anyone'', etc. It's not understandable.




This issue was also taken up in TBS's "News Special".
Broadcast on Saturday, August 5
Scheduled to end at 12:00 on Sunday, August 13

TBS "News Feature" What Barefoot Gen has conveyed(Play



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You've Gotta Read This: Barefoot Gen


Barefoot Gen 1983 Japan (Japan Version) (English subtitles)


Barefoot Gen 2 Movie(English subtitles)


Hadashi no Gen はだしのゲン film 1 1983 vostf (French subtitles)


Hadashi no Gen はだしのゲン film 2 1986 vostf (French subtitles)



Related Pages

[Full text of the Governor's speech at the Peace Memorial Ceremony] "I would like to ask a nuclear deterrence advocate" Hiroshima Governor Hidehiko Yuzaki
Google Trans (English)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rcc/645919?display=1

[Full text of the peace declaration] Mayor of Hiroshima: “World leaders should face the collapse of nuclear deterrence theory”
Google Trans (English)
https://www.asahi.com/articles/ASR8621XMR84PTIL00T.html

Prime Minister's Address [Full text] Peace Memorial Ceremony <2023>
Google Trans (English)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/342906


 

 

Gen d'Hiroshima, Tome 1 - Tome 10: Keiji Nakazawa

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Gen d'Hiroshima, Tome 1 - 10: Keiji Nakazawa

[English][Japanese]

À propos du livre:
Plus de 30 ans après son achèvement, l'édition définitive du manga anti-guerre est toujours lue non seulement au Japon mais dans plus de 20 pays à travers le monde. Basé sur son expérience d'être exposé à la bombe atomique qui a été larguée sur Hiroshima, l'œuvre représentative de l'auteur Keiji Nakazawa dépeint la terreur de la bombe atomique, la préciosité de la vie et un fort désir de paix. Après le début de la sérialisation dans Weekly Shonen Jump en juin 1973, il a été sérialisé dans des magazines tels que Shimin, Bunka Hyoron et Kyoiku Hyoron pendant environ 15 ans, se terminant en février 1987.

juin 1973 à février 1987, 2614 pages

A propos de l'auteur:
Keiji NakazawaWikipedia
1939 mai 14 - 2012 mai 19 décembre est un mangaka japonais.
Sur la base de son expérience d'être bombardé par la bombe atomique larguée sur la ville d'Hiroshima, il a publié de nombreux ouvrages sur le thème de la guerre et de la paix.


Aujourd'hui est le jour du souvenir à Hiroshima. Il y a 78 ans aujourd'hui, une bombe atomique était larguée sur Hiroshima. C'était l'une des opérations militaires américaines qui se déroulait à 8 h 15 lorsque les citoyens d'Hiroshima se rendaient au travail ou à l'école pour infliger un maximum de pertes et décourager les Japonais.

J'ai regardé la version anime (sous-titres anglais) (doublée en anglais) et Gen d'Hiroshima 2, sous-titres anglais il y a quelques années, mais ça fait un moment que je me suis dit que je devrais lire le manga un jour. Cette année, j'ai été recommandé par une amie beaucoup plus jeune, et j'ai appris que je pouvais le lire sur mon appareil Kindle, j'ai donc pu terminer la lecture de tous les volumes. Cette année marque le 50e anniversaire de la sérialisation de ce manga. (Au fait, vous pouvez également regarder les versions animées de Gen d'Hiroshima 1 (1983) et Gen d'Hiroshima 2 (1986) avec sous-titres français.)

La première chose que j'ai remarquée, c'est que la version animée n'apparaît que dans le premier volume du manga. La version anime n'est que le début de l'enfance de Gen, et le bombardement atomique et la dévastation sont inclus dans le premier volume, mais le manga volume 2 et plus tard décrivent Gen jusqu'à ce qu'il devienne un jeune homme. Il s'avère que l'auteur, Keiji Nakazawa, voulait transmettre non seulement les scènes infernales dont il a été témoin, mais aussi comment les choses tragiques et impitoyables se sont poursuivies indéfiniment.

J'aimerais penser que c'est une vertu des Japonais de s'entraider quand ils ont des problèmes. Et cet esprit peut être démontré lors de catastrophes naturelles telles que de fortes pluies et des tremblements de terre. Mais que s'est-il passé pendant et après la guerre ? Que s'est-il passé dans la ville bombardée d'Hiroshima ? Vous ne pouvez pas faire preuve de compassion quand vous essayez juste de survivre. Les enfants qui ont perdu leurs parents deviennent des vagabonds et sont mis à l'écart de la société. Garçons et filles volent pour survivre. Certains enfants sont pris en charge par les yakuza et deviennent leurs sbires, commettant même des meurtres. Cet ouvrage contient tout ce que l'auteur, M. Nakazawa, a vu et vécu.

Les mots "bombe atomique" et "Hiroshima" sont associés à "requiem" et "mémorial". Cependant, ce travail dépeint Gen et les citoyens d'Hiroshima à l'époque, la colère contre les États-Unis qui ont largué la bombe atomique et la colère contre l'Atomic Bomb Casualty Commission (ABCC). L'Atomic Bomb Casualty Commission (ABCC) est entrée à Hiroshima peu après le bombardement, n'a fourni aucun traitement médical aux survivants et a traité les victimes comme des cobayes afin d'étudier les dommages causés par le bombardement atomique. Répandre l'horreur et les dégâts de la bombe atomique a été interdit par le GHQ pendant huit ans. 78 ans se sont écoulés depuis la fin de la guerre et de nombreux survivants de la bombe A, dont M. Nakazawa, qui avait des sentiments de colère, sont décédés. Je pense que c'est la raison pour laquelle ce travail ne doit pas être exclu des milieux éducatifs.


Sommet du G7 à Hiroshima

Lors du sommet du G7 qui s'est tenu à Hiroshima cette année, les dirigeants de chaque pays ont visité le musée de la paix d'Hiroshima. A cette époque, un "bouton nucléaire" communément appelé "football" a été introduit au Musée de la Paix par un assistant du président Biden.

Le bouton nucléaire américain a été amené au Peace Memorial Park... Porté par les assistants du président Biden au sommet d'Hiroshima pour se préparer à la décision de contre-attaque nucléaire de "huit minutes"
Google Trans (French)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/311698

Le sommet a également inscrit dans sa déclaration la légitimité de la « dissuasion nucléaire ». En d'autres termes, il s'agit d'une déclaration contradictoire qui légitime la possession d'armes nucléaires par les pays du G7 et n'en reconnaît pas la possession par la Russie ou la Corée du Nord. J'avais un fort sentiment que ``Hiroshima a été utilisé pour le sommet.'' Si M. Nakazawa était encore en vie, comment aurait-il évalué ce sommet ?


Exclusion des Gens d'Hiroshima de l'éducation pour la paix dans la ville d'Hiroshima

Je regrette profondément la décision prise cette année de retirer Gen d'Hiroshima des documents sur la paix du conseil scolaire de la ville d'Hiroshima. La raison en a été récemment diffusée par NHK sur Close-up Gendai, mais le processus menant à la décision est opaque et il devient clair que les groupes conservateurs qui influencent les efforts de l'administration actuelle de Kishida pour réviser la constitution et doubler le budget de la défense ont été impliqués dans la décision finale du Conseil de l'éducation de la ville d'Hiroshima. Ces groupes sont principalement composés de membres d'une organisation appelée Nippon Kaigi. Il sera diffusé sur NHK Plus jusqu'au 9 août, alors assurez-vous de le vérifier.

Play (Date et heure limite de livraison: Jusqu'au mercredi 9 août, 19h57)


Dans la ville d'Hiroshima, on dit que Gen d'Hiroshima sera remplacé par les mémoires d'autres survivants de la bombe A, contrairement à l'avis des enseignants sur le terrain. C'est complètement hors de question. C'est parce que les enseignants sur le terrain perçoivent ce travail comme un matériel d'enseignement de la paix.


Enseignants qui ont utilisé "Gen d'Hiroshima" dans "Peace Note"
C'était un matériel pédagogique efficace 61%
Il y avait des parties qui fonctionnaient, mais il y avait des parties qui, selon moi, n'étaient pas aussi efficaces 36 %
Le matériel didactique n'était pas efficace 1 %
pas de réponse 1%

Gen d'Hiroshima est une œuvre qui dépeint ce qui s'est passé dans la société d'Hiroshima et du Japon après le bombardement atomique que Nakazawa a subi, elle introduit donc des choses qui ne peuvent pas être connues dans un récit personnel du bombardement atomique.

Même si seule une petite partie de Gen d'Hiroshima est introduite en classe, certains élèves du primaire essaieront probablement de lire l'intégralité du volume, et il est essentiel d'envisager le bombardement atomique et la guerre sous de multiples angles basés sur des expériences réelles. c'est un travail qui ne peut pas être fait, un travail qui ne peut pas être fait autrement que ce manga. Jusqu'à présent, tous les volumes ont été traduits en 24 langues. En outre, les motifs d'exclusion tels que ``La scène du vol de carpes est inappropriée pour l'éducation'', ``L'apparition de Gen chantant rokyoku (style de chanson japonaise à l'ancienne) n'est pas adaptée aux temps modernes'', ``Le matériel pédagogique doit pouvoir résister à la critique de n'importe qui'', etc. Ce n'est pas compréhensible.



Cette question a également été abordée dans le "News Special" du TBS.
Diffusion le samedi 5 août
à 12h00 le dimanche 13 août

TBS "News Feature" Ce que Gen d'Hiroshima a transmis (Play)


Vidéos connexes:

Perpétuer la mémoire d'Hiroshima et Nagasaki


You've Gotta Read This: Barefoot Gen


Hadashi no Gen はだしのゲン film 1 1983 vostf (French subtitles)


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[Texte intégral du discours du Gouverneur lors de la Cérémonie du Mémorial de la Paix] "Je voudrais demander à un défenseur de la dissuasion nucléaire" Gouverneur d'Hiroshima Hidehiko Yuzaki
Google Trans (French)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rcc/645919?display=1

[Texte intégral de la déclaration de paix] Maire d'Hiroshima : « Les dirigeants mondiaux doivent faire face à l'effondrement de la théorie de la dissuasion nucléaire »
Google Trans (French)
https://www.asahi.com/articles/ASR8621XMR84PTIL00T.html

Allocution du Premier ministre [Texte intégral] Cérémonie commémorative de la paix <2023>
Google Trans (French)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/342906


 

 

日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―

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日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―

内容
戦争国家、憲法改正、国民監視、言論統制、グローバリズム(多国籍企業による植民地化)、巨大薬禍、原子力災害、財政破綻という重層の危機の中で、日本人が搾取され奴隷化するリアルを告発する衝撃の社会学書。

アメリカの公共事業としてのウクライナ戦争 / 犬を調教するように国民を調教する / 報道の自由の死滅が示す日本のナチ化 / 株価の動きを見れば戦争の目的が分かる / 「戦争の宣伝のプロ」が動員されている / 戦争のための制度調整の過渡期に入った / 日本のカネと若者をアメリカの軍事産業に捧げるのか / ペンタゴン・キャピタリズムが国民を奪い尽くす / 投資銀行が日本にミサイルを発射する / 売国奴が靖国に参拝したがる理由 / 日本から人権が消える日 / 「抵抗しない人民」を作るための言葉 / コロナ禍という地球規模のホワイトカラー犯罪 / 知られざる宗教とワクチンとの関係 / 上級国民が下級国民を食い物にする新しい資本主義 / スポーツに熱狂する大衆は政治を考えない / 財政の私物化が最悪の円安をもたらした / 「債務者監獄国家」の住人であることを自覚する / 人間を人間たらしめるものが崩壊した / ニホンという滅び行く国に生まれた子どもたち / 昆虫食が語る世界のディストピア化………

2023年4月28日刊行、248ページ

著者略歴
秋嶋亮(あきしまりょう)響堂雪乃より改名。
全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)などがある。

秋嶋亮としての著作: Amazonで検索
響堂雪乃としての著作: Amazonで著作


SNSのTLでこの本を見る機会が増え、先月あたりから読んでみたいと思うようになった。もしかすると過激なトンデモ本、陰謀説に影響された本なのか、それともちゃんとした本なのかを見極めるにはAmazonの内容紹介だけで判断するのは無理だと思ったのだ。結局これは読んでみて正解。トンデモ本でも陰謀説本ではなかった。そして対話形式で書かれているから読みやすい。

物品や電気料金やガソリンの相次ぐ値上げ、消費税は10%どころかますます上がるらしい、社会保険料の増大、防衛費倍増、マイナンバーカードと健康保険証のひもづけ問題、少子高齢化、年金問題、実質賃金減少による貧困化、こどもの貧困化、派遣法の改悪、非正規社員の増加、奨学金問題、自殺率の増加、大学への補助金削減、教育内容や制度の悪化、過度な円安.... 生活は苦しくなり続け、改善する見込みはまったく見えてこない。おまけに政治家や企業は不正のやり放題である。

SNSのTLに流れるこれらのニュースやツイートを毎日見ていると暗澹たる気持ちになり鬱になる人も多いことだろう。ニュースを見ても暗くなる報道ばかりだ。もともと公共の場で政治的な発言をしないのが礼儀とされてきたのが日本社会の常識だったが、下がり続けている投票率を見る限りその傾向はますます強くなっている。

マスコミはこれらの問題のすべて報道していないということにも気がつかされる。報道したとしても、それは何が原因なのか、誰に責任があるかを示さない。本来、マスコミは政治の暴走を監視し、責任追及するのが重要な役割なのだが、ジャーナリズム精神ははるか昔に息絶え、政権の広報媒体と化している。

日本は民主主義国家のはずなのに、今ではまったく独裁国家のように思えてしまう。選挙制度は機能していないのだろうか?

あまりにも問題が多すぎて、全体を考えるともやもやとしてきて、焦点がぼやけてしまうのだ。与党や準与党の長年の政策が悪いとわかっていても、そこに問題の根源、本質があるのだろうか?政権交代すればすむ話なのだろうか?安倍元総理のしたことを批判すればよいのか?岸田総理がしている棄民政策を阻止すればよいのか?

30年、40年かかって積み重なった結果が現在なのだから解決するのが容易ではないことは想像にかたくない。でも希望を捨てるわけにはいかない。

本書は現代の日本が抱える数々の問題の原因の根っこが同じであること、そしてなぜこうなってしまったのかを対談形式で明快に解き明かしてくれる本である。テレビや新聞が報道しないことばかりで、SNS上では個別に知ることができることがらを体系的、整合的に私たちに提示する本なのだ。

本書第1章ではウクライナでの戦争について書かれているし、他の章ではコロナウィルスのワクチンの問題、憲法改正や緊急事態条項についても書かれている。それらがなぜ私たちの生活環境の悪化と関係しているか不思議に思う方がいるかもしれない。しかし、問題の根っこは同じなのだ。本書をお読みになるとよくわかる、

ちょっと危なげなこの本も、書店で平積みされるようになった。いずれ書店から撤去する圧力がかかるかもしれないので、今のうちにお買い求めになるとよいだろう。

章立ては次のとおり。詳細目次はこの記事のいちばん下に掲載した。

第1章:戦争の時代に突入した
第2章:金融が平和を解体する
第3章:カルトの支配は終わらない
第4章:理性が消失した日本の情景
第5章:無知による奴隷化というリアル


本書を読んでみて僕が事実と違うのではと思ったことがひとつだけある。それは「今の野党は与党と談合、迎合しているから期待できない」、「共産党は憲法9条を堅持することを主張するものの、自民党の改憲案に含まれる緊急事態条項に強く反対していない」、「立憲民主党も同様である」という記述だ。また本書にはれいわ新選組に関することは書かれていない。

あれ?共産党は改憲自体に反対しているし、立憲民主党も反対していると思うのだけど。と思ってググると次のページが見つかった。

憲法の根本原理を無視 赤嶺氏 緊急事態条項を批判(共産党)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-05-12/2023051202_03_0.html

62、憲法(2022参院選/各分野の政策)│2022参議院選挙 (共産党)
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/06/202207-bunya62.html

立憲の政策がまるごとわかる政策集(憲法)
https://cdp-japan.jp/visions/policies2022/28

野党4党 “緊急事態条項の創設といった改憲は不要”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230503/k10014056671000.html

れいわ新選組はどうかというと、次のとおりである。

憲法記念日 れいわ新選組山本太郎代表談話「緊急事態条項は絶対に阻止」
https://www.sankei.com/article/20220503-D5R5742BFBIEPLKRVWAOIXHVLE/

憲法についてのまとめ(山本太郎:全国比例・れいわ新選組)
https://reiwa-shinsengumi.com/kenpotaro/


野党が弱体化している事実は否めない。しかしこのまま憲法が緊急事態条項を含む自民党案のように改正されると、国民の基本的人権、表現の自由はなくなり、マイナンバーカードを通じて国民の金融資産、固定資産は実質的に政府の意のままに制限されてしまう。SNSやブログで政権批判をすることもできなくなる。そして国政選挙が行われなくなる。ナチス政権時のドイツと同じ状況になってしまうのだ。
とはいえ、ナチス政権時とは大きく異なる点はある。ドイツ国民は独裁者ヒトラーを熱狂的に支持していたが、今の日本の国民は総理大臣をまったく信用していない。たとえ徴用されても嫌々命令に従うだけだ。これは太平洋戦争時の日本兵の態度と比べても大きく違う。

しかし戦争に巻き込まれるのをどのように阻止したらよいのか。本書を読み、国民ひとりひとりが危機意識をもって考えるべきときだと僕は思う。

ちょうど今は8月で、先日「はだしのゲンの紹介記事」を書いたばかりだ。NHKでは太平洋戦争関連の番組をいくつも放送している。「同じ過ちを繰り返すな」という太平洋戦争で命を落とした方々、ご遺族の方々の声を真摯に聞くべき時期である。「歴史は繰り返す」を現実にしてはならない。


本書には2022年5月に刊行されたピンク色の表紙の姉妹書がある。今回は新しいほうの本から読んで紹介したわけだが、姉妹書のほうも読んで紹介したい。新しい黄色い本と重複があるのか、それとも黄色い本に書かれていないことが書かれているのかを確認する予定だ。ぜひ両方とも電子書籍化してほしいと思う。

日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―
無思考国家 だから二ホンは滅び行く国になった
 


関連動画:

この本を刊行した白馬社(@hakubasha)の広報のまりなさん(@t2PrW6hArJWQR5S)による紹介動画を掲載しておく。

秋嶋亮の新刊『日本人が奴隷にならないために - 絶対に知らなくてはならない言葉と知識 - 』の紹介です。


『日本人が奴隷にならないために - 絶対に知らなくてはならい言葉と知識 - 』からウクライナ戦争の真相についての記述を紹介しています。


SNSに投稿された『日本人が奴隷にならないために - 絶対知らなくてはならない言葉と知識 - 』のレビューの朗読です。



関連記事:

映画『21世紀の資本(2019)』
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a153690ce7756a662544f87757f97e9

合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75d56406860e23915579530c53bdba59

日本国憲法を英語やフランス語で学ぼう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/740faf3b23a33a02fb63557519a4e527

大日本帝国憲法を英語やフランス語で学ぼう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f3145a53640f4e543ce42ad3a8fc49a0

玉音放送を英語やフランス語で学ぼう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/28040da0e207e41001979b66f395838f


 

 

日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―


まえがき

第1章:戦争の時代に突入した
アメリカの公共事業としてのウクライナ戦争
金融軍産複合体 VS プーチン政権という図式
グローバル資本がロシアを侵攻させた
「侵略犯罪」と「自衛戦争」をどう見分けるのか
「戦争になると真っ先に事実が死ぬ」という言葉の通り
犬を調教するように国民を調教する
報道の自由の死滅が示す日本のナチ化
改憲の最大の受益者は外国人投資家である

第2章:金融が平和を解体する
マスコミの詭弁が日本を弾圧国家にした
株価の動きを見れば戦争の目的が分かる
平和とは戦争と戦争の幕間
戦争のための制度調整の過渡期に入った
日本のカネと若者をアメリカの軍事産業に捧げるのか
ペンタゴン・キャピタリズムが国民を奪い尽くす
軍国化議論と安楽死議論がセットの恐怖
「戦争の宣伝のプロ」が動員されている

第3章:カルトの支配は終わらない
投資銀行が日本にミサイルを発射する
日本を破滅させた人物が殺されて英雄になった
ナチスが政権を固めた時代と酷似している
これを「聖職者ファシズム」と言う
売国奴が靖国に参拝したがる理由
選挙で政治が変わるという妄想を捨てられるか
カリスマの容姿と言葉に幻惑され現実が見えない
日本から人権が消える日
「抵抗しない人民」を作るための言葉

第4章:理性が消失した日本の情景
狂気の国の政治家の言葉は空気よりも軽い
コロナ禍という地球規模のホワイトカラー犯罪
知られざる宗教とワクチンとの関係
国家と政治ではなく企業と金融が世界を動かす
企業による企業のための企業の政治
人工知能が人間を採点し人権を調整する時代
上級国民が下級国民を食い物にする新しい資本主義
平凡な人間が収容所の看守のように残酷に振る舞う
スポーツに熱狂する大衆は政治を考えない

第5章:無知による奴隷化というリアル
財政の私物化が最悪の円安をもたらした
「国債を恐れよ!」という絶叫の意味
国債を礼賛するカルトに洗脳されないこと
「債務者監獄国家」の住人であることを自覚する
人間を人間たらしめるものが崩壊した
ニホンという滅び行く国に生まれた子どもたち
「科学に対する戦争」の勃発
文明とは人間を自己家畜化するシステム
現実と虚構の区分が破壊される
昆虫食が語る世界のディストピア化

あとがき
参考文献

無思考国家 だから二ホンは滅び行く国になった

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無思考国家 だから二ホンは滅び行く国になった

内容
今最も注目される社会学作家・秋嶋亮(旧名・響堂雪乃)の『二ホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ』シリーズの総括となる注目作。なぜ二ホンは滅び行く国になったのか? その深層と真相を明らかにする。
監視警察国家への移行が急務である理由/ナチス宣伝省化した記者クラブ/知られざるナチスとワクチンとの関係/国債によって国民が奴隷化する仕組み/政府は言論弾圧を宣言した/貧困問題は外交問題である/ヒトラーユーゲントが靖国神社に参拝した黒歴史/中国式のデジタル監視社会が登場する/コロナ禍の裏で日本の植民地化が進む/超富裕階級が構想する世界/「帝国官僚制」が日本を絞め殺す/国民に思考を放棄させる運動/外資が日本のワクチン政策を決める/公衆衛生の美名の下に成るファシズム/恐怖政治の兆候が現れている/選挙で政治を変えることはできない/人間が家畜化される時代の風景/野党共闘ではなく与野党共闘/多国籍な製薬企業が作る搾取構造/公共放送がフェイクニュースを流す/グローバル資本が立法集団化する悪夢………

2022年5月23日刊行、308ページ

著者略歴
秋嶋亮(あきしまりょう)響堂雪乃より改名。
全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)などがある。

秋嶋亮としての著作: Amazonで検索
響堂雪乃としての著作: Amazonで著作


前回紹介した「日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―」(紹介記事)のほぼ1年前に刊行されたのが今回紹介する本だ。読めば読むほど絶望的になった。

内容は「日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―」とだいぶかぶっていて、結論から言えば黄色い本のほうだけ読んでも著者の主張を把握するには十分だと思う。

黄色い本に比べ、ピンク色の本のほうはコロナワクチンの問題(大量の死者、重症者がでている問題)、東京五輪の問題、福島原発の問題に関して割かれているページ数が多い。

章立ては次のとおり。詳細目次はこの記事のいちばん下に掲載した。

第1章:日本の暗黒化が止まらない
第2章:直視すべき過去と現在と未来
第3章:無知を自覚しないという悪
第4章:洗脳と調教の国家
第5章:破局の時代に突入した


岸田総理はアメリカのキャンプデービッドで行われた日米韓の首脳会談から帰国したばかりだ。今後米国と新型ミサイルを共同開発する約束をしてきてしまった。これだけ重要なことを国会審議を経ず(自民党内でも審議されていない)に決めてしまうことは、そして武器を開発することは、憲法に明確に違反している。岸田政権になってから、憲法違反の数は明らかに増えている。日本はなぜこんなことになっているのか。本書を読んだ後だと、それがよくわかる。

憲法違反だという非難を受けないために、日本政府、自民党は憲法改正にこだわっている。改憲を許してしまうと、日本は民主国家から完全に独裁国家へ変貌してしまう。



「家族は、互いに助け合わなければならない」とは「国はあなたを助けないから、家族で助け合わなければならない」という意味だ。

先日、「NHKスペシャル Z世代と“戦争”」という番組で、若者たちが戦争について意見を述べていた。「戦争はなぜおこるか?」という質問に対して「人によって経験してきたこと、考え方が違い、それを認め合うことができないからおこる」とか「"いじめ"と"いじる"の線引きが人によって違う。そのように個人個人によって価値観や考え方が違うからおこる」などという見当はずれな原因をあげている参加者がいた。こういう番組に参加する人は、一般的な若者の中では「意識高い系」だと思うのだが、それでも「この程度か!」と思ってしまう。

本書が主張しているのは、巨大なグローバル金融資本の複合体が世界に分散して存在し、米国の主幹産業である軍事産業を構成する企業の株式を購入することで儲けを得ようとしていること、米国は10年に一度戦争が起きないと国を支えられなくなっているため、戦争が起きるような挑発をし続けているというものだ。ウクライナでの戦争についても、それは例外ではない。

NHKはもちろん「ロシアがウクライナを侵略したから戦争が始まった」という前提で報道を続けてきているから、本書の主張とは相いれない。もし、僕が(すでに若者ではないが)この番組に参加して、本書の主張のまま(僕も本書に書かれていることには納得している)のことを発言したとしたら、きっとその部分はカットされていたことだろう。NHKは、もはや政府の見解と異なることを報道できなくなっただけでなく、NHKと他の民放テレビ局は日本政府の宣伝媒体となってしまっている。こうなったのは東日本大震災の報道以降のことだ。マスコミから発表される政府、自民党の支持率は、かなり以前から「盛られた数字」になっていることを見ればおわかりだろう。

日本はだいぶ前から民主主義国家ではなくなり独裁国家になっていること、そしてなぜそうなってしまったのかがとてもよく理解できる本である。トンデモ本、陰謀論系の本ではない。日本政府やアメリカ政府はグローバル金融資本の複合体の末端でしかない。日本の政策、法案のほとんどは国会で審議される以前に日米合同委員会組織図)により決定されているため、日本はその決定に従うしかない状況が続いている。1951年のサンフランシスコ平和条約により、日本は名目的に独立国家となったが、実質的には現在も米国による支配が続いている。

追跡!謎の日米合同委員会 別のかたちで継続された「占領政策」 吉田 敏浩著
https://www.tokyo-np.co.jp/article/165197

日本独立(2020):Prime Video


この映画の最後でGHQのトップとして6年間日本で占領政策を行なってきたマッカーサー元帥が、帰国後に米国議会で次のような報告をしたシーンが映されている。

「敗戦後のドイツと日本では事情が全く異なっていた。敗戦後のドイツ国民は文化的、知的に成熟していて(我々アメリカ人のように)45歳の大人として振る舞うことができていたが、敗戦後の日本人はまるで12歳の少年に等しい何事も感情に従って決めてしまう。そのために統治がしやすかった。」

この点については、現在も78年前からまったく変わっていないと僕は思う。


前回紹介した黄色い表紙の本とあわせ、ぜひ両方とも電子書籍化してほしいと思う。

日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―」(紹介記事
無思考国家 だから二ホンは滅び行く国になった
 

この2冊を読んだため、フランスの経済学者トマ・ピケティの「21世紀の資本」(Kindle版)や、国会で政府支出の無駄遣いに厳しく切込み、とくに特別会計について詳細な研究を行い、2002年に刺殺された民主党の国会議員の石井紘基さんが書いた「日本が自滅する日 「官制経済体制」が国民のお金を食い尽くす!」(Kindle版)を読みたくなった。


関連動画:

この本を刊行した白馬社(@hakubasha)の広報のまりなさん(@t2PrW6hArJWQR5S)による紹介動画を掲載しておく。


『無思考国家 -だからニホンは滅び行く国になった-』の内容紹介。緊急事態条項の危険性について。


『無思考国家―だから二ホンは滅び行く国になった』を目次から紹介致します。


『無思考国家 - だからニホンは滅び行く国になった -』秋嶋亮 を紹介させていただきました!! by まりな



関連記事:

日本人が奴隷にならないために―絶対に知らなくてはならない言葉と知識―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8e10af5b338dec79d6310714221a68e7

映画『21世紀の資本(2019)』
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a153690ce7756a662544f87757f97e9

合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75d56406860e23915579530c53bdba59

日本国憲法を英語やフランス語で学ぼう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/740faf3b23a33a02fb63557519a4e527

大日本帝国憲法を英語やフランス語で学ぼう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f3145a53640f4e543ce42ad3a8fc49a0

玉音放送を英語やフランス語で学ぼう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/28040da0e207e41001979b66f395838f


 

 

無思考国家 だから二ホンは滅び行く国になった


まえがき

第1章:日本の暗黒化が止まらない
知性が武装解除されていることに気付いていない
監視警察国家への移行が急務である理由
ナチス宣伝省化した記者クラブ
国民を服従させる「監禁環境」とは
「死を欲望する社会」という意味
現実が抹消され疑似現実に置き換えられる
政党や政治家を聖化してはならない
知られざるナチスとワクチンとの関係

第2章:直視すべき過去と現在と未来
政府は言論弾圧を宣言した
国家は破綻しないが国民は破滅する
これを「忘却による支配」と言う
ヒトラーユーゲントが靖国神社に参拝した黒歴史
貧困問題は外交問題である
国民社会は「支払い/履行共同体」に仕立て上げられた
中国式のデジタル監視社会が登場する
コロナ禍の裏で日本の植民地化が進む

第3章:無知を自覚しないという悪
超富裕階級が構想する世界
「帝国官僚制」が日本を絞め殺す
国民に思考を放棄させる運動
この洗脳はオウムの洗脳を解くより難しい
国債によって国民が奴隷化する仕組み
恐怖政治の兆候が現れている
選挙で政治を変えることはできない
外資が日本のワクチン政策を決める

第4章:洗脳と調教の国家
国民の側に立つ政治家などいない
人間が家畜化される時代の風景
全体主義より知性の崩壊の方が怖い
科学者による科学に対する暴力
命がけでなければ語れないこと
ショック・ドクトリンの教科書通りに進んでいる
公衆衛生の美名の下に成るファシズム
野党共闘ではなく与野党共闘

第5章:破局の時代に突入した
多国籍な製薬企業が作る搾取構造
1億人がテレビに説得されワクチン接種を終えた
公共放送がフェイクニュースを流す
改憲は与党と野党にとって美味しい
憲法を改正すれば人権を抹消できる
グローバル資本が立法集団化する悪夢

参考文献

祝: 累計800万アクセス達成!

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2005年2月に始めたこのブログの累計訪問者数が昨日800万人(IP)に達した。



700万人をクリアしたのが2021年8月13日。東京オリパラが開催されていた頃である。今日まで746日が経過しているので、この期間は1日あたり平均1340人の方にアクセスしていただいたことになる。700万人達成のときに予想していた「700万人に達するのは557日後、つまり2023年2月20日前後になると思われる。」よりだいぶ遅れてしまった。

ページ閲覧数累計のほうも2022年2月8日に2000万PVをクリアしている。(PVはPage Viewの略) 


「アクセス」の欄の閲覧 2,926PV、訪問者 1,444IPは昨日1日のぶんである。また日別、週別のランキング123位と136位はgooブログ全体(およそ300万ブログ)の中での順位である。300万ブログあるといっても、更新されていないブログがたくさんあることに注意したい。

これまでのアクセス数とページ閲覧数の日平均は次のように推移していた。

累計0~40万アクセスの期間(2005年~2010年):日平均191アクセス、ページ閲覧数504page
累計40万~50万アクセスの期間(2010年~2011年):日平均800アクセス、ページ閲覧数2013page
累計50万~100万アクセスの期間(2011年~2012年):日平均973アクセス、ページ閲覧数3107page
累計100万~200万アクセスの期間(2012年~2014年):日平均1525アクセス、ページ閲覧数4266page
累計200万~300万アクセスの期間(2014年~2016年):日平均1502アクセス、ページ閲覧数5012page
累計300万~335万アクセスの期間(2016年~2016年):日平均1774アクセス、ページ閲覧数4825page
累計335万~400万アクセスの期間(2016年~2017年):日平均1781アクセス、ページ閲覧数5341page
累計400万~500万アクセスの期間(2017年~2018年):日平均2504アクセス、ページ閲覧数7032page
累計500万~600万アクセスの期間(2018年~2020年):日平均2276アクセス、ページ閲覧数5596page
累計600万~700万アクセスの期間(2020年~昨日):日平均1797アクセス、ページ閲覧数4079page
累計700万~800万アクセスの期間(2021年~昨日):日平均1340アクセス、ページ閲覧数3043page



訪問者数やページ閲覧数が減ったのは、次のような外的要因の相乗効果によるものと考えている。

- Google検索のアルゴリズム変更により、ブログの表示順位が上位に入りにくくなった。
- 科学系、教育系YouTuberに多くの読者が流れた。
- 生活環境の変化により、週末しか趣味の活動に時間を割けなくなった。
- 国の理科・数学教育方針の悪化、大学への研究費支援の削減により、物理学や数学に興味をもつ人が減ってしまった。


ブログの知名度を押し上げた「事件」は過去2回あったことが「TopHatenarの分析のページ」でわかる。「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」、「NHKスペシャル「神の数式」の感想」を多くの方に読んでいただいたことで知名度が上がった。(昨年TopHatenarのサイトは閉鎖された。この画像は数年前のものである。)

画像クリックで拡大



今のペースを維持できれば次の目標の900万人に達するのは746日後、つまり2025年9月13日前後になると思われる。

日本人がノーベル物理学賞をとったり、重力波検出のような大成果があっても世の中の人の関心はせいぜい1~2週間ほどしか続かないことがこの10年の動きを見て感じたことだ。(それは一般の事件のニュースでも同じこと。)

アクセス数を伸ばすのを第一に考えのではなく、自分が楽しめて読者の方にも参考になる記事を書くというのがブログの目的だ。だから今のペースを維持するというのが自然である。その結果、運よくアクセス数がアップするというのならば嬉しいことだ。


ペットの話題や料理の話題、芸能人ネタなど、より一般的な事柄を記事にすれば、アクセス数は格段にアップする。反対に物理学や数学の記事で、数式を使った専門的な記事であればあるほど、理解できる読者は少なくなりアクセス数は減る。

物理ブログ、科学ブログとしての価値はアクセス数やランキングでは測れないものだと僕は思っている。これからも記事に対する一般の方の関心事と内容の専門性のバランス感覚を大切にしていきたい。


これからも当ブログをよろしくお願いいたします。


参考リンク:

日数計算(日付−日付)(CASIO高精度計算サイト)
https://keisan.casio.jp/exec/system/1177658154

日付計算(日付+日数)
https://keisan.casio.jp/exec/system/1177659237


 

 

ロヴェッリ 一般相対性理論入門: カルロ・ロヴェッリ

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ロヴェッリ 一般相対性理論入門: カルロ・ロヴェッリ」(電子版

内容紹介:
「世の中には,私たちを強く感動させる絶対的な傑作が存在する。モーツァルトのレクイエム,オデッセイ,システィーナ礼拝堂,リア王――これらのすばらしさを理解するには,時として見習い期間が必要になるかもしれない。しかし,これらの作品は純粋な美しさをもち,しかもそれだけではなく,私たちに世界の新しい見方を与えてくれる。アルベルト・アインシュタインの宝石である一般相対性理論は,そのような傑作の一つだ。」(序文より)

『時間は存在しない』(NHK出版)や,『すごい物理学講義』(河出書房新社)などで知られる理論物理学者,カルロ・ロヴェッリ。
ベストセラーを次々と生み出す彼が,ついに一般相対性理論の教科書を執筆。重力相互作用と時空の幾何学的側面を同一のものとして記述する,驚くべき理論の本質に迫る。

計算過程を大胆に省き,アイデアに焦点を当て,全体像を俯瞰しながらわかりやすく解説する。
ロヴェッリ著作の特長である,独自の観点からの考察や陽気な語り口は,本作でも健在。彼のガイドのもと,読者は深遠な一般相対性理論の世界を最短経路で駆け抜け,最後には量子重力の美しい未解決問題を垣間見ることだろう。

一般相対性理論を学びたい人はもちろん,ロヴェッリの語りに魅せられた人や,ひと味違った教科書を読んでみたい方にもおすすめの1冊。

2023年8月1日刊行、192ページ

著者について:
カルロ・ロヴェッリ Carlo Rovelli
ホームページ: http://www.cpt.univ-mrs.fr/~rovelli/
X(旧Twitter): @carlorovelli
理論物理学者。1956年、イタリアのヴェローナ生まれ。ボローニャ大学卒業後、パドヴァ大学大学院で博士号取得。イタリアやアメリカの大学勤務を経て、現在はフランスのエクス=マルセイユ大学の理論物理学研究室で、量子重力理論の研究チームを率いる。「ループ量子重力理論」の提唱者の一人。『すごい物理学講義』(河出書房新社)で「メルク・セローノ文学賞」「ガリレオ文学賞」を受賞。『世の中ががらりと変わって見える物理の本』(同)は世界で100万部超を売り上げ、大反響を呼んだ。『時間は存在しない』はイタリアで18万部発行、35か国で刊行決定の世界的ベストセラー。タイム誌の「ベスト10ノンフィクション(2018年)」にも選ばれている。

ロヴェッリ博士の日本語著書を検索: 書籍版 Kindle版
ロヴェッリ博士の外国語著書を検索: 書籍版 Kindle版

翻訳者について:
真貝寿明(しんかいひさあき): ウィキペディアの記事
1966年東京都生まれ。大阪工業大学情報科学部教授。早稲田大学理工学部物理学科卒業。同大学院博士課程修了。博士(理学)。早稲田大学助手、ワシントン大学(米国セントルイス)博士研究員、ペンシルバニア州立大学客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て現職。
著書に『徹底攻略 微分積分』『徹底攻略 常微分方程式』『徹底攻略 確率統計』(以上、共立出版)、『図解雑学 タイムマシンと時空の科学』(ナツメ社)、『日常の「なぜ」に答える物理学』(森北出版)などがある。

真貝先生の著書: Amazonで検索
真貝先生のHP: http://www.oit.ac.jp/is/~shinkai/


理数系書籍のレビュー記事は本書で485冊目。

本書のことは発売前から気になっていて、書店で立ち読みしてから買うかどうか決めようと思っていた。ところが幸い、出版元の森北出版の担当者から連絡をいただき、ご恵贈いただくことになった。とはいえ公私多忙で、本をいただいてからしばらく放置していた。

一般相対性理論の入門書の中ではとても薄い。たかだか200ページでじゅうぶん解説できるはずがない。これまでに読んだ入門書の中では「ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論:小林晋平」が手ごろだが、それでも288ページある。

本書は通読はしていないものの発売前に英語(Kindle版)を購入していたから大まかな。以下は本書の章立てなのだが、第3部の応用で扱われるテーマは盛りだくさんだ。詳細に解説するにはページ数が十分でないことがこの時点でわかった。

Ⅰ 基礎
 Chapter 1 物理学:重力の場の理論
 Chapter 2 哲学:時空とは何か?
 Chapter 3 数学:曲がった空間
Ⅱ 理論
 Chapter 4 基礎方程式
 Chapter 5 作用
 Chapter 6 対称性と解釈
Ⅲ 応用
 Chapter 7 ニュートン力学の極限
 Chapter 8 重力波
 Chapter 9 宇宙論
 Chapter 10 質量の場
 Chapter 11 ブラックホール
 Chapter 12 量子重力の概略

実際に日本語版を手にしてざっと眺めただけで、初心者、入門者向けの本でないことはすぐわかった。一般相対性理論は発案者のアインシュタインでさえ苦労して学んだリーマン幾何学の理解、習得が欠かせない。その計算方法をじっくり解説した初心者用の本で学んだ後でないと本書は理解できない。数式の導出は省略されているし、各所に「ここは自分で計算して確かめること」と書かれれるからだ。そしてその解答は書かれていない。

しかし翻訳は物理学者の真貝先生が担当されたので安心して読める。他の入門書で学んだ人、あるいは物理学の研究者向けの本としての位置づけであることさえ納得できれば、本書が最短コースで進む良書、好書であることが理解できる。

日本語で刊行されたロヴェッリ博士の本のなかで、本書のような専門書は初めてである。これまで僕が読んだのは「時間は存在しない」と「すごい物理学講義」だけであるが、これらの本にはロヴェッリ博士独特の文学的、詩的、哲学的な記述が多くみられる。しかし今回の本は専門書なので、解説的な文章に終始している。出版社による本書の紹介文には「ロヴェッリ著作の特長である,独自の観点からの考察や陽気な語り口は,本作でも健在」と書かれているが、教科書としての節度を保ち、独自性は抑えられていると僕は感じた。

必ずしもご専門とはいえない一般相対性理論の教科書を、ロヴェッリ博士はなぜ書こうと思ったのだろうか?この点について僕は2015年の重力波の初観測、そして2017年のノーベル物理学賞が重力波やブラックホールの研究者に授賞され、一般相対性理論が再び脚光を浴びたことに博士が啓発されたからだと僕は思っている。

本書を読んでよかったと思ったのは第3部の「応用」に入ってからだった。特に僕にとっての「萌え」は第7章「ニュートン力学の極限」、第8章「重力波」、第12章「量子重力の概略」に集中していた。第11章の「ブラックホール」ついては興味がある分野であるが、「ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン」や「一般相対性理論入門 ブラックホール探査: テイラー、ホイーラー」という大著で面白さをじゅうぶん堪能していたため、本書の解説だけでは物足りないと感じた。

本書が特に貴重なのは第12章「量子重力の概略」が紹介されていることだ。日本語で読める専門書では本書以外には「初級講座 ループ量子重力: R. ガムビーニ 、J. プリン」しか刊行されていないからだ。この章を読むだけでも、本書を買う価値はあると思った。

ぜひ本書を書店で手に取って見ていただきたい。


日本語版の翻訳の元になった原著はイタリア語版だが、本書は英語版でも読むことができる。

General Relativity: The Essentials: Carlo Rovelli」(Kindle Edition):2021年9月刊行
Relatività generale Una semplice introduzione: Carlo Rovelli」:2021年7月刊行
 


関連記事:

時間は存在しない: カルロ・ロヴェッリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55f4ffc2e5f45add46dea97086bb3aed

すごい物理学講義: カルロ・ロヴェッリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/93767d1f796efe646e13b54905a445cf

ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/88bf1600687ece47464c862fefe53103

初級講座 ループ量子重力: R. ガムビーニ 、J. プリン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/50940e09a28985e4f8256de5faebe1d0


一般相対性理論、ブラックホールの入門書の記事:

趣味で相対論(EMANの物理学):感想
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5fe7d774a955f3bb9d8270f6113e453f

ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論:小林晋平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f4401f2ce79451070b7b9c089f304315

発売情報:一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する: 石井俊全
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1699a1c22477c269c68c02091d0ca049

時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e

重力(上) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d45a93d43478a133c6a514c980572632

重力(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ae6e91eec0ecb404b3b77d46ca04b49b

重力理論 Gravitation-古典力学から相対性理論まで、時空の幾何学から宇宙の構造へ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f838b8f6c2554000933187df89e08013

ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/76795b03e7dc89cd08dac67dc25b73ab

一般相対性理論入門 ブラックホール探査: テイラー、ホイーラー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c928268aab686a527be93385b45402c2

一般相対論の世界を探る―重力波と数値相対論:柴田大
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/50d12fda1c0e59132d6f5f2e73d9e302


関連動画:

カルロ・ロヴェッリ - 一般相対性理論とその意味
カルロ・ロヴェッリ教授によるコルシニアナ朗読「一般相対性理論の経験的成功と、空間と時間の性質を理解するためのその哲学的意義」国立アカデミー大学、2018年6月3日
(イタリア語音声から英語、日本語の字幕を生成可能)


カルロ・ロヴェッリ - 量子重力への旅


WSU マスタークラス: カルロ・ロヴェッリによるループ量子重力


Introduction to Loop Quantum Gravity - Lecture 1: The empirical basis of quantum gravity
再生リスト 講義資料PDF



 

 


ロヴェッリ 一般相対性理論入門: カルロ・ロヴェッリ」(電子版


序文

Ⅰ 基礎
 Chapter 1 物理学:重力の場の理論
       特殊相対性理論
       場
 Chapter 2 哲学:時空とは何か?
       相対性とニュートン時空
       アインシュタインのアイデア:ニュートン時空は物理的な場である
       アインシュタインのヒント:加速度は何に対して?
 Chapter 3 数学:曲がった空間
       曲面
       リーマン幾何学
       幾何学
 
Ⅱ 理論
 Chapter 4 基礎方程式
       重力場
       重力の影響
       場の方程式
       場の方程式の源
       真空の方程式
 Chapter 5 作用
 Chapter 6 対称性と解釈
       一般共変性と微分同相不変性
       時間とエネルギー
 
Ⅲ 応用
 Chapter 7 ニュートン力学の極限
       計量のニュートン的極限
       ニュートンの力
       一般相対論的時間の遅れ
 Chapter 8 重力波
       物質への影響
       発生と検出
 Chapter 9 宇宙論
       宇宙の大規模幾何学
       基本的な宇宙モデル
 Chapter 10 質量の場
       シュヴァルツシルト計量
       ケプラー問題
       太陽による光の曲がり
       地平面近傍の軌道
       宇宙論的な力
       カー-ニューマン計量と座標の引きずり
 Chapter 11 ブラックホール
       地平面のところ
       ブラックホールの中
       ホワイトホール
 Chapter 12 量子重力の概略
       量子重力の経験的で理論的な基礎
       分解:空間量子
       時空形状の重ね合わせ
       遷移:ブラックホールからホワイトホールへのトンネルとビッグバウンス
       結論:時空の消滅

より詳しく学ぶために
訳者あとがき
索引
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