Quantcast
Channel: とね日記
Viewing all 975 articles
Browse latest View live

発売情報:カシオ電子辞書 XD-U7200(2014年フランス語モデル)

$
0
0

今年もカシオ電子辞書 XD-U7200(2014年フランス語モデル)が2月14日に発売される。ここ数年、毎年2月に新しいモデルがリリースされている。

フランス語学習者はもちろん、LHCから発表されるニュース・リリースをフランス語で読んだり、将来この研究所に勤務するようなことになるのだったらコンパクトな電子辞書は持っていたほうがよい。(記事内容を無理やり物理学に関連付けてしまった。)さらに、老眼が始まった方にもお勧めだ。

注意: カシオのホームページ上では2014年のフランス語モデルに和英辞典は搭載されていないということになっていましたが、この記事をお読みになった方がカシオに問い合わせたところ、ホームページ上の記載ミスであることがわかり和英辞典は搭載されているということでした。その後、ホームページも正しく修正されました。(2014年1月20日午後2時7分に追記)


これまで5年間のモデルの詳細は次のリンクで確認できる。

2014年モデル
http://casio.jp/exword/products/XD-U7200/

2013年モデル
http://casio.jp/exword/products/XD-N7200/

2012年モデル
http://casio.jp/exword/products/XD-D7200/

2011年モデル
http://casio.jp/exword/products/XD-B7200/

2010年モデル(「ロワイヤル仏和中辞典 第2版」、カラー液晶画面が搭載された最初のモデル)
http://casio.jp/exword/products/XD-A7200/

最新モデルを買うに越したことはないが、旧モデルでも安いのが見つかればそれはそれでよいと思う。フランス語にかかわる人にとってポイントになる大まかな変更点は次のようなものだ。

2010年->2011年
- フランス語コンテンツ1つ追加(文法中心ゼロから始めるフランス語、ネイティブ発音)
- オックスフォード現代英英辞典が第7版から第8版になった
- ツインカラー液晶搭載
- 新画像検索機能
- 本体メモリー容量が50MBから100MBになった
- ボディカラーがブラック+シルバーからホワイトに変更

2011年->2012年
- フランス語コンテンツ1つ追加(プチ・ロワイヤル仏和辞典 第3版、ネイティブ発音)
- スクロールパッドや縦書きのブックスタイル表示機能を搭載
- ダブルカードスロットになった(追加コンテンツ用)
- ボディカラーがホワイトからシルバー+ブラック+ホワイト(外側)に変更

2012年->2013年
- プチ・ロワイヤル仏和辞典が第4版になった
- プチ・ロワイヤル和仏辞典が第3版になった
- 1981年の発売以来定評のある角川類語新辞典が収録された他、国語系コンテンツの見直しが行われた
- ジーニアス和英辞典 第3版が収録された
- タッチパネル式の操作ができるようになった。
- アイコンタイプのメニューデザインが採用された
- 0.9mm薄くなり、約310g->約290gに軽量化

2013年->2014年
- 0.1mm薄くなり、約290g->約280gに軽量化


どのモデルも紙辞書だと分厚い「ロワイヤル仏和中辞典 第2版」が使えるのはありがたい。また巨大な紙辞書の王様として今だに君臨している「小学館ロベール仏和大辞典」に至っては絶対に持ち運べないし、新品は3万円もするから電子辞書のほうが絶対にお買い得だ。ただし、この辞典はiPhone/iPad用のアプリが物書堂から昨年発売になっている。(参考記事

2012年モデルまでに搭載されていたプチ・ロワイヤル仏和、プチ・ロワイヤル和仏はともに最新の紙辞書の版に2013年のモデルで追いついている。

これら2つの辞書は物書堂から販売されている「プチ・ロワイヤル仏和辞典(第4版)・和仏辞典(第3版)」を購入すればiPhone/iPadで使うこともできる。

「LE PETIT ROBERT仏仏辞典」については搭載されているのがこの5年間ずっと2008年版の辞書だ。フランスのアマゾンサイトAmazon.frでは昨年6月から2014年版が発売されている。(2014年製本版2014年CD-ROM版

版が古い辞書はいずれ「フランス語辞典追加コンテンツ」として購入できるようになるのだと考えれば許容範囲だとも言える。PETIT ROBERT仏仏辞典は2009年版が追加コンテンツとして発売されている。


完全に満足できる品揃え、買い時というのはいつまでたってもおとずれないのかもしれない。けれども今年こそ購入に踏み切ろうという方は、以下の画像をクリックしてお求めいただきたい。

カシオ電子辞書 XD-U7200(2014年フランス語モデル)



カシオ電子辞書 XD-N7200(2013年フランス語モデル)



カシオ電子辞書 XD-D7200(2012年フランス語モデル)
お安いほうのをどうぞ。

 

カシオ電子辞書 XD-B7200(2011年フランス語モデル)



カシオ電子辞書 XD-A7200(2010年フランス語モデル)




関連記事:

ロワイヤル仏和中辞典(辞書談義)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aed33d08239da123dcc66c5ec08f0bc7

無料のオンライン仏和・和仏辞典を発見!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b3cae83cd882dd93d5efb788c1ac1498

ファインマン物理学: 英語版とフランス語版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1dbcd1e1b02616ef1363ced99a912072


応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。

にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ にほんブログ村 外国語ブログ フランス語へ 人気ブログランキングへ 


妻は、くノ一:風野真知雄

$
0
0
妻は、くノ一:風野真知雄

内容
平戸藩の御船手方書物天文係の雙星彦馬は、三度の飯より星が好きという藩きっての変わり者。そんな彦馬のもとに上司の紹介で美しい嫁・織江がやってきた。彦馬は生涯大切にすることを心に誓うが、わずかひと月で新妻は失踪してしまう。じつは織江は、平戸藩の密貿易を怪しんだ幕府が送り込んだくノ一だった。そうとは知らず妻を捜しに江戸へ赴く彦馬だったが…。人気著者が放つ「妻は、くノ一」シリーズ。

著者について
風野真知雄
1951年福島県生まれ。1993年「黒牛と妖怪」で歴史文学賞を受賞。著書に「耳袋秘帖」シリーズ、「大江戸定年組」シリーズなどがある。


年が明けてからハマり出しているのがこの小説。理数系の教科書を読む合間に第4巻を読み進んでいるところだ。

昨年ドラマ化されNHKで放送されていたのを見たのがきっかけだ。江戸時代を舞台にした小説なのだが感性は時を超えて共感できるし、三度の飯より星が好きという主人公の雙星彦馬という設定がうれしい。謎解きに継ぐ謎解きは飽きることなく、次を読みたいという気持ちにさせられる。テレビドラマのほうもずいぶん楽しませてもらったが小説のほうが面白いと思った。

全体として癒しがあり、切なさと謎解きの楽しさにあふれた物語だ。気楽に読める本なので、よろしかったらお読みください。全10巻で続編として「蛇之巻」が全3巻ある。


「妻は、くノ一」シリーズ(とね書店)


「妻は、くノ一」シリーズのセット(中古だと2500円くらいで10巻セットが買える。)
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22/detail/B0049H9JTI

Kindle版だと文庫版の半額以下で購入できる。(「妻は、くノ一」シリーズKindle版

「妻は、くノ一」オフィシャルページ(角川書店):
http://www.kadokawa.co.jp/sp/201009-01/


関連ページ:

NHK「妻は、くノ一」ドラマのホームページ:
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/kunoichi/



NHKオンデマンド:「妻は、くノ一(全8回)


あらすじ

妻は、くノ一(全10巻)
平戸藩の御船手方(おふなてかた)書物天文係の雙星彦馬(ふたぼし ひこま)は三度の飯より星が好きで、先祖伝来の田畑を売ってまで望遠鏡を手に入れた、藩内きっての変わり者だった。そんな彦馬の下に、上司の紹介で美しい妻・織江(おりえ)が嫁いでくる。彼女を一生涯大切にしようと心に誓う彦馬だったが、幸せな生活は織江の失踪によってわずか1か月で終わってしまう。織江は平戸藩の密貿易疑惑を探る幕府の密偵だったのではないかとの情報が寄せられながらも、もう一度織江に会いたいと強く願う彦馬は隠居し、商家の養子となり江戸店を取り仕切っている親友を頼って江戸で暮らし始める。
星好きで変わり者とされていた彦馬だったが、鎖国を解き国を開きたいとの開明的な思想を持つ元平戸藩主の松浦静山(まつら せいざん)にその知識の広さを見込まれ、彦馬もまた静山の考えに同調していく。自身が経験したことや人から聞いた不思議な出来事や怪奇事件について『甲子夜話』という書物を執筆中の静山は、彦馬に謎解きを求めるようになり、広く深い知識を有する彦馬は、織江探しと並行して巷間に起こる謎を解いていく。
一方、織江もまた彦馬のことを忘れられずにいた。彦馬が江戸へ出てきたことを知った織江は、時に手助けをしながら密かに彦馬の暮らしを見守る。やがて平戸藩下屋敷への潜入に成功し、静山の密貿易と野心の証拠を掴んだ織江だったが、提出すれば彦馬の人生をも奪いかねず、妻の立場とくノ一の立場の間で葛藤する。母の後押しもあり、彦馬と生きる道を選び抜け忍となった織江の下へ、次々と刺客が送り込まれる。

妻は、くノ一 蛇之巻(全3巻)
刺客との死闘を終え、渡米した雙星彦馬と妻の織江は、ヒコ・ツインスターとオリエ・ツインスターと名乗り、数々の苦難を乗り越えて3人の息子にも恵まれ、ロサンゼルス郊外で評判の馬車屋を営みながら、幸せに暮らしていた。夫妻が友人の結婚式に出席するため外出し、三男のサミーが留守宅を守っていたある日、オリエを訪ねてきた男がいたという。庭にアメリカにいるはずのないマムシを見つけた瞬間、サミーから聞いた訪ねてきた男の人相と、かつて彦馬と出会う前に潜入していた長州で戦った「いちばん嫌な敵・蛇文」とを結びつけるのはたやすかった。
蛇文がエイブラハム・リンカーン暗殺計画に関わっていることを知らされた彦馬と織江は、知り合いの保安官とピンカートン探偵社の仲間らと計画阻止のために動き出す。


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 


電子書籍が70%オフになる「角川文庫創刊65周年記念!」

$
0
0


角川書店が、角川文庫創刊65周年を記念し、同社の電子書籍を70%割引く「角川文庫創刊65周年記念!角川書店祭り」のセールを「Amazon Kindleストア」と「楽天kobo」で開催している。

セール期間:2014年1月21日1(火)10:00〜2014年1月28日(火)9:59




文庫本だったら「Kindle Paperwhite」がお勧め。スマートフォンのKindleアプリで読むのもいいだろう。


先日紹介した「妻は、くノ一:風野真知雄」などのほか「天地明察:冲方丁」や松本清張森村誠一横溝正史西村京太郎赤川次郎星新一伊坂幸太郎、そしてシェイクスピアの新訳も70%オフの対象に含まれている。これらの本が1冊100円台なのだからとりあえずまとめて買っておきたいものだ。

他にどんな本があるか、こちらでチェックしてみよう。

Amazon Kindleストア(角川文庫)

楽天kobo(角川文庫)

Amazon Kindleだと購入時に割引されていて、楽天koboのほうはクーポンコードによる割引になる。


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 


告知: ランドール博士講演 「宇宙の扉をノックする」

$
0
0

今度の土曜日、ランドール博士の講演がUSTREAMで生中継配信されるそうだ。(通訳と解説付き)刊行されたばかりの「宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版)がテーマである。

これは聞き逃すわけにはいかない。ということで僕のブログからも告知させていただこう。

日時:2014年1月25日(土)午後1:00 中継開始 (午後4時頃終了予定)
会場:小柴ホール(東京大学本郷キャンパス 理学部1号館2階)

講演 「宇宙の扉をノックする」 
※英語での講演ですが村山斉Kavli IPMU機構長による日本語の逐次通訳と解説を行います。

講師:リサ・ランドール(Dr.Lisa Randall)
     ハーバード大学 物理学教授

講演者紹介・通訳と解説
村山斉 (東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長)

主催: 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)(講演会についてのページ

Kavli IPMUでは来る1月25(土)午後1時より、ハーバード大学のリサ・ランドール博士を講師に迎え開催される一般講演会「宇宙の扉をノックする」のインターネット生中継配信(ライブストリーミング)を行うこととなりました。
この配信はUSTREAMを通じて行われ、無料で事前登録も不要のため多くの方々にご自宅から気軽に講演会の内容をお聞きいただける機会となっております。多くの皆様のご視聴をお待ちしています。


当日の中継はこちらから
USTREAMで視聴する≫ http://www.ustream.tv/channel/nvs-live


宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版)についてアメリカで行なわれた講演会(48分)の動画はYouTubeにアップされている。



リサ・ランドール博士

1987年ハーバード大学で素粒子物理学で博士号を取得後、米ローレンスバークレー国立研究所博士研究員、マサチューセッツ工科大学助教授、プリンストン大学教授、マサチューセッツ工科大学教授などを歴任後、2001年から母校であるハーバード大学で教鞭をとる。
2005年に上梓した一般向け科学書『ワープする宇宙(原題:Warped Passages: Unraveling the Mysteries of the Universe’s Hidden Dimensions)』、また2012年に出版された『宇宙の扉をノックする(原題:Knocking on Heaven's Door: How Physics and Scientific Thinking Illuminate the Universe and the Modern World)』がいずれも出版年のニューヨークタイムズ紙注目の書籍100冊となるなど執筆活動を精力的にこなすほか、オペラの脚本を手掛けるなど幅広い 活躍を見せ、2007年には米タイム誌による“最も影響力のある100人(100 Most influential Peopele)”にも選ばれた。
今回は2007年以来、約6年振りの日本での講演となる。


関連書籍:

日本語版:

ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く:リサ・ランドール」(Kindle版
宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版

 

英語版:

Warped Passages: Lisa Randall」(Kindle版
Knocking on Heaven's Door: Lisa Randall」(Kindle版

 


関連記事:

リサ・ランドール博士来日記念講演(2007年7月)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b0000cc2b55ef8dbfef680ae0e4dec5c


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版



第一部 現実のスケーリング
第1章:あなたにとっては小さなものが、私にとってはとても大きい
第2章:秘密の扉を開ける
第3章:物質世界に生きる
第4章:答えを探して

第二部 物質のスケーリング
第5章:マジカル・ミステリー・ツアー
第6章:「見る」ことは信じること
第7章:宇宙の先端

第三部 マシンと測定と確率の問題
第8章:すべてを統べるひとつの環
第9章:環の帰還
第10章:ブラックホールは世界を呑み込むか
第11章:リスキービジネス
第12章:測定と不確定性
第13章:CMS実験とATLAS実験
第14章:粒子を特定する

第四部 モデルと予言と未来の問題
第15章:真実、美しさ、およびその他の科学的誤解
第16章:ヒッグスボソン
第17章:世界の次のトップモデル
第18章:ボトムアップ方式とトップダウン方式

第五部 宇宙のスケーリング
第19章:内から外へ
第20章:あなたにとって大きなものが私にとってこんなに小さい
第21章:ダークサイドからの訪問者

第六部 旅の終わり
第22章:思考は広く、実行は細かく
終章

電子書籍(Kindle)で読める日本語の理数系書籍の検索ページ

$
0
0
拡大
スマートフォンとKindle Whitepaper

科学教養書については日本語でも電子化が進んできたので物理学、天文学、工学、数学を中心に理数系書籍の検索ページを作ってみた。

このページはパソコンからブログを開いたとき、左フレームのブックマークのところにリンクを張ったので、いつでも開くことができる。




各出版社のシリーズで検索

講談社ブルーバックス

幻冬舎新書(科学・テクノロジー)

高校数学でわかる〜

ゼロから学ぶ〜

なっとくする〜

絶対わかる〜

サイエンス・アイ新書

マンガでわかる〜(オフィスsawa)

マンガでわかる〜(トレンド・プロ)


人名で検索

大栗博司 村山斉 竹内淳 竹内薫 都筑卓司 佐藤文隆 佐藤勝彦 水谷淳 湯川秀樹 小島寛之(数学) 瀬山士郎(数学) 青木薫(翻訳者) 

ブライアン・グリーン リサ・ランドール ローレンス・M. クラウス イアン・スチュアート レオナルド サスキンド

ファインマン アインシュタイン ホーキング シュレーディンガー マックスウェル ファラデー フーリエ

スティーブン・ワインバーグ(洋書) ぺスキン(洋書) ポルチンスキー(洋書) マイケル・グリーン(洋書)  

フェルマー


分野別キーワードで検索

科学 科学者 科学実験 ノーベル賞 公式集

化学 元素 周期表 分子

物理 力学 解析力学 電磁気 熱力学 統計力学 相対論 相対性理論 ブラックホール エントロピー タイムマシン 時間論 流体力学 量子 量子力学 不確定性 量子場 物性 超伝導 対称性 素粒子 クォーク ニュートリノ 弦理論 超弦理論 超弦理論(洋書) ヒッグス粒子 質量 シミュレーション 数値計算

天文 天体 宇宙 望遠鏡 JAXA 宇宙飛行士 気象

工学 電気回路 電子回路 電子工作 機械工学 制御 材料力学 伝熱 流体工学

数学 物理数学 線形代数 ベクトル 微積分 微分 積分 微分方程式 三角関数 方程式 素数 複素数 虚数 無限 集合 位相 トポロジー 代数 群論 群、環、体 関数 幾何学 リーマン予想 ポアンカレ予想 確率 統計学 統計解析 多変量解析 因子分析 不完全性 和算 Excel 2013 Mathematica(洋書) Maxima(洋書) gnuplot(洋書)


Kindle端末売り場
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22?node=40&page=1

iPad Air Wi-Fiモデル

iPad mini Retina Wi-Fiモデル


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

動画:リサ・ランドール博士「宇宙の扉をノックする」一般講演会

$
0
0

昨日行なわれたリサ・ランドール博士の講演会の動画が公開されたので紹介しておこう。刊行されたばかりの「宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版)がテーマである。

日時:2014年1月25日(土)午後1:00から
会場:小柴ホール(東京大学本郷キャンパス 理学部1号館2階)

講演 「宇宙の扉をノックする」 
※英語での講演ですが村山斉Kavli IPMU機構長による日本語の逐次通訳と解説を行います。

講師:リサ・ランドール(Dr.Lisa Randall)
     ハーバード大学 物理学教授

講演者紹介・通訳と解説
村山斉 (東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長)

主催: 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)(講演会についてのページ

写真をクリックすると動画再生のページが開く。

Kavli IPMU カブリ数物連携宇宙研究機構一般講演会 「宇宙の扉をノックする」(90分)


カブリ数物連携宇宙研究機構一般講演会「宇宙の扉をノックする」QAコーナー(30分)




宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版)についてアメリカで行なわれた講演会(48分)の動画はYouTubeにアップされている。



リサ・ランドール博士

1987年ハーバード大学で素粒子物理学で博士号を取得後、米ローレンスバークレー国立研究所博士研究員、マサチューセッツ工科大学助教授、プリンストン大学教授、マサチューセッツ工科大学教授などを歴任後、2001年から母校であるハーバード大学で教鞭をとる。
2005年に上梓した一般向け科学書『ワープする宇宙(原題:Warped Passages: Unraveling the Mysteries of the Universe’s Hidden Dimensions)』、また2012年に出版された『宇宙の扉をノックする(原題:Knocking on Heaven's Door: How Physics and Scientific Thinking Illuminate the Universe and the Modern World)』がいずれも出版年のニューヨークタイムズ紙注目の書籍100冊となるなど執筆活動を精力的にこなすほか、オペラの脚本を手掛けるなど幅広い 活躍を見せ、2007年には米タイム誌による“最も影響力のある100人(100 Most influential Peopele)”にも選ばれた。
今回は2007年以来、約6年振りの日本での講演となる。


関連TV番組:

NHK BS1 エル ムンド(2014年1月26日21:00-21:50)「深遠なる宇宙の不思議!」にリサ・ランドール博士が出演された。
http://www.nhk.or.jp/elmundo/menu/140126.html


関連書籍:

日本語版:

ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く:リサ・ランドール」(Kindle版
宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版

 

英語版:

Warped Passages: Lisa Randall」(Kindle版
Knocking on Heaven's Door: Lisa Randall」(Kindle版

 


関連記事:

リサ・ランドール博士来日記念講演(2007年7月)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b0000cc2b55ef8dbfef680ae0e4dec5c


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




宇宙の扉をノックする:リサ・ランドール」(Kindle版



第一部 現実のスケーリング
第1章:あなたにとっては小さなものが、私にとってはとても大きい
第2章:秘密の扉を開ける
第3章:物質世界に生きる
第4章:答えを探して

第二部 物質のスケーリング
第5章:マジカル・ミステリー・ツアー
第6章:「見る」ことは信じること
第7章:宇宙の先端

第三部 マシンと測定と確率の問題
第8章:すべてを統べるひとつの環
第9章:環の帰還
第10章:ブラックホールは世界を呑み込むか
第11章:リスキービジネス
第12章:測定と不確定性
第13章:CMS実験とATLAS実験
第14章:粒子を特定する

第四部 モデルと予言と未来の問題
第15章:真実、美しさ、およびその他の科学的誤解
第16章:ヒッグスボソン
第17章:世界の次のトップモデル
第18章:ボトムアップ方式とトップダウン方式

第五部 宇宙のスケーリング
第19章:内から外へ
第20章:あなたにとって大きなものが私にとってこんなに小さい
第21章:ダークサイドからの訪問者

第六部 旅の終わり
第22章:思考は広く、実行は細かく
終章

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫

$
0
0
理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫

内容
本書は1986年冬期にSussex大学数理物理科学教室で行った講義をもとに、その内容を大幅に進展させたものである。その際の聴衆は大学院生及び素粒子論、物性物理学あるいは一般相対論を専門とする当教室のメンバーであった。講義はインフォーマルな雰囲気の中で行われたが、本書においても出来うる限りこの点を守るように心がけた。定理の証明はそれが教育的であるものに限って与え、極端にテクニカルなものは省略した;省略した場合は定理の内容が確証できるようにいくつかの例を与えることにした。また、図を出来るだけ多く挿入することで、内容に関する具体的なイメージが把握できるように読者の便宜をはかった。

著者について
中原幹夫
1981年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。1983年イギリスロンドン大学数学Diploma課程修了。1981-82年南カリフォルニア大学物理学科研究員。1983-85年カナダアルバータ大学物理学科研究員。1985-86年イギリスサセックス大学数学物理教室研究員。1986-93年静岡大学教養部助教授。1993-99年近畿大学理工学部数学物理学科助教授。現在、近畿大学理工学部数学物理学科教授、理学博士

佐久間一浩
1993年東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修了。1994-96年国立高知工業高等専門学校一般科講師。1997年同助教授。1998年近畿大学理工学部数学物理学科講師。現在、近畿大学理工学部数学物理学科講師、理学博士


理数系書籍のレビュー記事は本書で244冊目。

米アマゾンではこの分野で最近一番人気のある本ということだそうだ。とりあえず頑張って読んでみた。物理学徒の間では「中原トポ」の愛称(?)で知られている。著者の中原先生は近畿大学の物理学の教授。もともと英語で書かれた本なのだが、評判がよかったので中原先生と東京工業大学の数学者でいらっしゃる佐久間先生が和訳し、2000年と2001年に日本語版として第1分冊と第2分冊がそれぞれ刊行された。


「自然という書物は数学という言葉で語られている」という名言をガリレオが残したのは有名な話だ。でもガリレオにとっての数学とはユークリッド幾何学と初等的な代数計算のことである。ガリレオの生きた時代は数学者ガウスはもちろん、ニュートンやライプニッツが生まれる前だから微積分はまだなかった。(ガリレオが亡くなった年にニュートンは生まれている。)

一般の人が数学と聞いて思い浮かべるのは微積分だろう。17世紀以降に発達したこのような数学は解析学と呼ばれ初等的な物理学を学ぶ道具として使われている。物理学科や工学部の学生はまず「物理数学」としてこのような基礎的な数学を学ぶ。微積分、微分方程式、線形代数(ベクトルと行列)、複素関数論、フーリエ変換などだ。そして量子力学を学ぶ頃にはヒルベルト空間論(複素関数によって張られる無限次元のベクトル空間)が必要になる。このあたりで関数解析を学ぶ人もいるだろう。(参考記事:「よくわかる物理数学の基本と仕組み」)

初等的な物理学の段階を終えて、一般相対論や場の量子論(素粒子物理学)、超弦理論を学ぶようになると必要とされる数学は格段に増え、高度なものになる。この段階での数学はもはや「道具」の域を超え、自然法則の裏に隠れている見えない摂理と呼べるほど本質的なものに深化してくる。このように高度な数学理論は物理学徒にとっては「物理数学の第2段階」である。

NHKの「神の数式」で見たように素粒子物理学は「対称性」をキーワードに解明されてきた。そのゲージ理論の数理的な基礎付けをするのは「リー群とその表現論」や「微分幾何学」、「トポロジー(位相幾何学)」である。また一般相対論の曲がった時空は「リーマン幾何学」によってあらわすことができる。そして超弦理論を学ぶためには10次元(余剰次元だけでいえば6次元)の幾何学、つまり「カラビ-ヤウ多様体」や「オービフォールド(軌道体)」などの多次元トポロジーが必要だ。

このように現代物理学は現代数学と密接なかかわりをもっている。

しかし物理学徒の悩みはそこから始まる。何をどの程度学べばよいのだろうか?どのような順番で学んでいけばよいのだろうか?必要なのはわかっているが、数学の教科書は証明ばかりでとっつきにくいし、勉強に当てることのできる時間は限られている。できれば最小限の労力ですませたい。基礎物理学は学ぶ順番がはっきりしていてわかりやすいが、門外漢にとって現代数学の分野は学ぶ順番がわかりにくいものだ。どこまで手を伸ばせばよいのか、どこまで理解したらよいのかわからないから、きりがなくなってしまう。全体を見渡せる本があればいいのにと思う。

そのような要望に答えてくれるのが本書なのだ。膨大な数の数学書の中から現代物理学を学ぶ上で必要になる最低限の現代数学を、物理学科の学生向けに解説した本なのである。数学科の学生向けに書かれた教科書よりも証明はずっと控えめで、意味を伝えることに重点を置いている。

以下が第1分冊と第2分冊の章立てだ。第3章から数学として本編が始まるのだが、各章で扱われるテーマは本格的に学ぼうとすると教科書2〜3冊で学ぶ事柄である。

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
第1章:物理学からの準備
第2章:数学からの準備
第3章:ホモロジー群
第4章:ホモトピー群
第5章:多様体論
第6章:de Rhamコホモロジー群
第7章:Riemann幾何学
第8章:複素多様体

第1分冊で解説される事柄は大きく次の3つに分けられる。しかし、本書は幾何学をメインにした本なので代数学についての記述はあるが解説はほとんどない。リー群論は他の教科書で学んでおく必要がある。

代数学: 群論リー群(連続群)、リー環
幾何学: 集合位相位相幾何学ホモロジー(群)、ホモトピー(群)、ド・ラームコホモロジー(群)
解析学: 微分幾何学(微分形式)、多様体、多様体上の微積分、リーマン幾何学テンソル)、複素多様体

このうち僕が未習だったのは多様体の後半とリーマン幾何学の後半、そして複素多様体だ。他の本ですでに学んでいた内容についてもすべて理解できたわけではない。それは本書で紹介される定理が1960年代から1980年代までに発見されたものも含んでいるからだ。全体的な僕の理解度としては既習の分野については70パーセント、はじめて学んだ分野については60パーセントといったところだった。その程度の理解度であっても大いに知的好奇心をくすぐられた。証明の細かいところは理解できなくても、話の筋道は最後まで追うことができ、定理の内容はちゃんと理解できるように書かれているからだ。

さらに言えば、本書では各分野の関連性が説明されているのが素晴らしい。第7章の「ホッジの定理」で示されるようにトポロジーで使われる位相不変量と多様体上で計算される解析的な量との一致をはじめ、代数学と幾何学、解析学の3つの分野が異なる数学の世界の中で見事なつながりをもっていることがわかってきたのだ。この関連性はもともと数学の世界にあったものなのかと問わずにはいられなかった。数学とは発見することなのだろうか?それとも創造することなのだろうか?そのように考えると私たちの観測する物理現象や物理法則はあくまで自然が見せる表層にすぎず、その本質は複雑で美しい構造を持つ幾何学の世界に存在しているように思えてくるのだ。

第7章のいちばん最後の書かれていたことが特に印象的だったのでツイートでも紹介した。

とね ‏@ktonegaw
3次元以下の位相多様体には、いつでも微分構造が入れられるが、4次元以上では微分構造を持ち得ない位相多様体が現れる。スピン構造をもつ4次元閉多様体の符号数が16の倍数になるというRochlinが1952年に導いた定理があるにもかかわらず、その符号数が8になるものが存在することを示したFreedmanの定理(1982年)の矛盾から微分構造を持ち得なくなるそうだ。

うーむ、すごい。。。高次元空間は不思議に満ちている。

さらに第8章の「複素多様体」には次のようなことが書かれている。

複素構造が許容されるのは2次元の球面だけである。4次元以上の偶数次元の球面は複素構造を許容しないことがK理論を用いて証明される。しかしながら6次元球面が複素構造を許容するか否かは現在未解決で、難問である。

とまあ、学びにきりがないことがわかるのだ。

カラビ-ヤウ多様体」や「オービフォールド(軌道体)」についても第8章の「複素多様体」で紹介されている。カラビ-ヤウ多様体は第1チャーン類がゼロのコンパクトなケーラー多様体として定義される。ケーラー多様体はエルミート多様体のうち、そのケーラー形式Ωが閉形式つまりdΩ=0の複素多様体と解説されている。エルミート多様体というのは複素多様体のうち。。。。長くなるので説明はこれくらいにしておくが、実多様体に対して定義されるリーマン計量を複素多様体に対して一般化(エルミート計量)した理論の先には幾何学・解析学・代数学が混然一体となった複素幾何学の世界が見えてくる。著者はこの世界を現代数学の「理想郷」と表現している。

カラビ-ヤウ多様体は3次元の複素次元をもっている。一般にはm次元の複素多様体は2m次元の実多様体と同型なので、超弦理論の余剰次元としてのカラビ-ヤウ空間(物理空間)はコンパクトに巻き上げられた6次元の実数空間である。


初学者は本書を全部理解しようと思ってはいけない。よほどの秀才でなければ途中でくじけるのが当たり前。まず概要をつかむこと、流れを追うこと、定理や専門用語の意味を理解すること、何がどれくらい難しいのか。初回の読書ならばこの程度のことをおさえておけばよいと思うのだ。それぞれの分野については章ごとに参考図書が紹介されているので、興味にまかせて読んでいけばよいだろう。次のような教科書が紹介されている。今では絶版状態の本が多いのが難点なので、その後刊行された同じようなテーマの教科書を読んでもよいと思う。

第1分冊全体
-「トポロジーと物理 :倉辻比呂志
-「微分・位相幾何:和達三樹
-「曲面の数学―現代数学入門:長野正
-「これからの幾何学:深谷賢治

第1章:物理学からの準備
-「量子力学1量子力学2:猪木慶治, 川合光」
-「量子力学:河原林研
-「量子力学30講:戸田盛和
-「径路積分による多自由度の量子力学:崎田文二, 吉川圭二
-「場の量子論:大貫義郎
-「素粒子物理学:坂井典佑
-「素粒子物理:牧二郎, 林浩一
-「相対性理論:内山龍雄
-「相対性理論:佐藤勝彦
-「一般相対論:佐々木節
-「相対性理論入門講義:風間洋一
-「超流動:山田一雄, 大見哲巨
-「超伝導・超流動:恒藤敏彦

第2章:数学からの準備
-「集合・位相入門:松坂和夫
-「群と位相:横田一郎
-「集合と位相:加藤十吉
-「トポロジー入門:松本幸夫」(リンク2
-「位相への30講:志賀浩二」(レビュー記事

集合論独自の重要性について、さらに集合の上に構造を入れることによって位相空間を構成するプロセスに関して、[加藤]、[松阪]は熟読すると大変参考になる。[横田]にはさまざまな概念に対する実に多くの具体例が書かれていて大いに役立つ。[松本]では基本群の計算についても言及されている。

第3章:ホモロジー群
-「群と位相:横田一郎
-「トポロジー:田村一郎
-「位相幾何学:加藤十吉
-「トポロジー入門:小島定吉
-「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」(レビュー記事

本章の全般の内容に対して、特に本書では証明を省略した部分に関して、[田村]で厳密な証明を読むことができるので大変参考になるはずである。

第4章:ホモトピー群
-「組合せ位相幾何:本間龍雄
-「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」(レビュー記事
-「位相幾何学:服部晶夫
-「曲面と結び目のトポロジー―基本群とホモロジー群:小林一章
-「ホモトピー論:西田吾郎

ホモトピー群の定義に関しては、[本間]がコンパクトにまとまっていて理解しやすい。ホモトピー論のもっと進んだ話題に興味のある読者は、たとえば専門家による[西田]を参照されたい。

第5章:多様体論
-「微分多様体入門:鈴木治夫
-「多様体の基礎:松本幸夫」(レビュー記事
-「多様体:村上信吾
-「多様体論:志賀浩二
-「連続群論入門:山内恭彦, 杉浦光夫」(レビュー記事
-「連続群とその表現:島和久
-「群と物理:佐藤光
-「群と表現:吉川圭二」(レビュー記事

多様体について書かれた教科書は最近かなり多くある。上記5書はそれぞれに特徴があり面白い。なかでも[松本]は、初学者を念頭において大変ていねいな解説がなされている。

第6章:de Rhamコホモロジー群
-「微分多様体入門:鈴木治夫
-「多様体:服部晶夫

de Rhamコホモロジー群の応用の仕方はさまざまである。[鈴木]は絶版で入手しづらいかもしれないが、葉層構造への応用が解説されている。

第7章:Riemann幾何学
-「接続の微分幾何とゲージ理論:小林昭七
-「リーマン幾何学:酒井隆
-「曲線・曲面と接続の幾何:小沢哲也
-「微分形式の幾何学:森田茂之

接続は現代幾何学の重要なキーワードのひとつである。初学者は、まず本書と併せて[小沢]を読んでみるとよい。[森田]には位相幾何学の立場から、[酒井]には微分幾何学への興味深い応用が解説されている。

第8章:複素多様体
-「多様体:村上信吾
-「複素多様体論:小平邦彦
-「複素幾何:小林昭七

多様体上に複素構造が入るとそこで複素解析が行える。するとそこには、幾何学・解析学・代数学が混然一体となった理想郷が見いだせる。上記3書はそれを実際に堪能させてくれる良書である。


このほか本書ではより発展的な内容を学ぶために、次のような本も参考書籍として取り上げられている。洋書と和書が紹介されているが和書のみ一覧にしておこう。

-「微分形式と代数トポロジー:R. ボット, L.W. トゥー
-「微分形式の理論:H.フランダース
-「代数幾何における位相的方法:ヒルツェブルフ」(リンク2
-「接続の理論入門:小林昭七
-「多様体入門:松島与三
-「特性類講義:J.W.ミルナー, J.D.スタシェフ
-「物理学者のためのトポロジーと幾何学:ナッシュ・セン」(リンク2
-「物理学における幾何学的方法:B.F. シュッツ
-「ファイバー束のトポロジー:スチーンロッド」(リンク2



第2分冊は、さらに難しくなる。時間はかかるかもしれないが、がんばって読み進もう。第2分冊の章立ては次のとおりだ。

理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫
第9章:ファイバー束
第10章:ファイバー束上の接続
第11章:特性類
第12章:指数定理
第13章:ゲージ場理論におけるアノマリー
第14章:ボソン的弦理論


日本語版:

残念ながら日本語版は絶版状態で中古本しか手に入らない。復刊リクエストに協力いただける方はこのページからお願いします。

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫

 

英語版:

Geometry, Topology and Physics, Second Edition: Mikio Nakahara




応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫



第1章:物理学からの準備
- 経路積分と量子場の理論
- ゲージ場
- モノポール
- インスタントン
- 凝縮系における秩序
- 一般相対性理論
- Berryの位相
- 弦理論

第2章:数学からの準備
- 写像
- ベクトル空間
- 位相空間
- 同相写像と位相不変量

第3章:ホモロジー群
- Abel群
- 単体と単体的複体
- 単体的複体のホモロジー群
- ホモロジー群の一般的性質

第4章:ホモトピー群
- 基本群
- 基本群の一般的性質
- 基本群の例
- 多面体の基本群
- 高次元ホモトピー群
- 高次元ホモトピー群の一般的性質
- 高次元ホモトピー群の例
- ネマティック液晶における欠陥
- 超流動3Heの織目構造

第5章:多様体論
- 多様体
- 多様体上の微積分
- 流れとLie微分
- 微分形式
- 微分形式の積分
- Lie群とLie環
- 多様体へのLie群の作用

第6章:de Rhamコホモロジー群
- Stokesの定理
- de Rhamコホモロジー群
- ポアンカレの補題
- de Rhamコホモロジー群の構造

第7章:Riemann幾何学
- Riemann多様体と擬Riemann多様体
- 平行移動、接続、共変微分
- 曲率と捩率
- Levi-Civita接続
- ホロノミー
- 等長変換と共形変換
- Killingベクトル場と共形Killingベクトル場
- 正規直交標構
- 微分形式とHoge理論
- 一般相対性理論とPolyakov弦

第8章:複素多様体
- 複素多様体
- 複素多様体上の微積分
- 複素微分形式
- Hermite多様体とHermite微分幾何
- ケーラー多様体とケーラー微分幾何
- 調和形式と∂-コホモロジー群
- 概複素多様体
- 軌道体

記録的な大雪と東京都知事選挙

$
0
0
昨日午後4時頃(降雪量15cmくらい)
拡大

昨年の成人の日に雪が降ったのは記憶に新しいが、今年は記録に残る大雪になった。

ソチオリンピックの開会式が終わるころ、東京でも土曜の明け方から雪が降り始め日曜の明け方にかけて降り続いた。

雪景色はめったに見れないので写真をブログにも残しておこう。

東京の降雪記録:今回は観測史上7位にランクイン

1位 46cm (1883/ 2/ 8)
2位 38cm (1945/ 2/22)
3位 36cm (1936/ 2/23)
4位 33cm (1951/ 2/15)
5位 31cm (1887/ 1/18)
6位 30cm (1969/ 3/12)
7位 27cm (2014/ 2/ 9)
7位 27cm (1925/ 1/30)
9位 25cm (1892/ 2/19)
10位 23cm (1994/ 2/12)
10位 23cm (1968/ 2/16)


以下の写真はすべてクリックで拡大する。

3Fのベランダ


家の前


小学校正門の前の路地


今日は東京都知事選挙。午前中に1時間ほど雪かきをしてから投票へ


投票所は昔通っていた小学校(数年後には近所の小学校に統合されてしまう)


朝礼台も昔のままだ。あれから何人の人がこの台の上に登ったのだろう。


校長室の前の鶴の彫刻はすこしくたびれていた



昔を思い出して当時の写真を引っ張り出した。
後列左から2番目が僕。その前でしゃがんでいるのが妹。記録によればこの年(1969年)あたりに東京では30cmの雪が降ったそうだ。


時代をもう少しさかのぼって幼稚園時代。高度経済成長第二期が始まったころだ。


幼稚園の運動会。僕の前にいる幼馴なじみの女の子とは先月、中学の同窓会で40年ぶりに再会した。



応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 



Kindleセール:講談社が1万点以上を30%ポイント還元(理数系書籍がおすすめ)

$
0
0

先日の角川文庫電子書籍70%オフに続き、今度は講談社が30%のポイント還元セールを実施している。

セール期間:2014年2月7日(金)10:00〜2014年2月21日(金)9:59


一般書籍」(人気順)




京極夏彦」(僕のこだわり)




必ずしも安いとはいえない理数系書籍がこのセールに含まれているのはう特にうれしい。


ブルーバックス




なっとくシリーズ




ゼロから学ぶシリーズ



絶対わかる化学シリーズ



KS化学専門書



応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 


Kindle版発売:「数学ガール:結城浩」シリーズ

$
0
0

結城浩さんの数学ガール(単行本版)やプログラミング系の書籍のKindle版が昨日から発売開始されているのでお知らせしておこう。

注意:今日紹介するKindle本はいわゆる「固定レイアウト」で、iPadやKindle Fire HDXなど、表示サイズを自由に変えられる端末向きの本である。Kindle Paperwhiteには向かない。無料サンプルで必ず使用感をお確かめの上ご購入ください。

結城浩さんのホームページ:
http://www.hyuki.com/


*Kindle版の数学ガール

数学ガールは差し当たり最初の4冊がKindle化。2月27日まで割引キャンペーン中だ。



数学ガール:結城浩」(Kindle版
数学ガール/フェルマーの最終定理:結城浩」(Kindle版
数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩」(Kindle版
数学ガール/乱択アルゴリズム:結城浩」(Kindle版
数学ガール/ガロア理論:結城浩

   





*Kindle版のプログラミング系書籍

そして、Javaをはじめとする結城浩さんのプログラミング系の本もKindle化された。(結城浩さんのKindle本をすべて表示



Java言語プログラミングレッスン 第3版(上)」(Kindle版
Java言語プログラミングレッスン 第3版(下)」(Kindle版
 


増補改訂版Java言語で学ぶデザインパターン入門」(Kindle版
増補改訂版 Java言語で学ぶデザインパターン入門 マルチスレッド編」(Kindle版
 


Java言語で学ぶリファクタリング入門」(Kindle版



関連記事:

数学ガール:結城浩
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bb4f1447d41afcc8b46b85229296dd7a

数学ガール/フェルマーの最終定理:結城浩
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4bf119bf3842421f8916c787c51216ae

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f9b0b9264e35a680ce974fcbf17c62c0

数学ガール/乱択アルゴリズム:結城浩
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/deaece69e304b94be1a8b9ad3c92617f

数学ガール/ガロア理論:結城浩
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a5450818389e0220779e363617332a76

発売情報:Java言語プログラミングレッスン 第3版:結城浩
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d5e873bae06ce4d8c351630c245ab9ff

電子書籍(Kindle)で読める日本語の理数系書籍の検索ページ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/347122df8d808286fd47e6fe9788de2d


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 


バレンタインデー、再び大雪、ソチ・オリンピック2014

$
0
0
拡大

昨日のバレンタインデーは金曜日。終日在宅勤務していたし、仕事が終わる頃には雪も本降りになり「週末飲み」をするために行きつけの店にいくこともできなくなった。それは前日からわかっていたことだ。今年は雪のせいでチョコレートもらうチャンスを逃した人は多いことだろうとなどと不毛な想像をめぐらせていた。

夜になってから友達からの「チョコっとしたものをとねさんに送っておきました。」というメッセージがLINEに入った。


先週末に東京では27cmという記録に残る積雪にみまわれたばかり。今回の予報では10cmくらいだということだった。ソチ・オリンピックを見ながらときどきベランダに様子を見に行っていた。

ところが夜が更けるにつれて雪だけでなく風も強くなり、これはぜったい予想を超えていると確信したのが午後11時くらい。深夜になるとまるで雪嵐。シャリシャリと音をたてて雪が窓を打ちつけているのが聞こえていた。

外はすごいことになっている。午前0時半には東横線の元住吉駅で電車どうしが衝突したというニュースに驚かされる。


昨夜の見所は男子のフィギュアスケートのフリースタイル。午前3時頃までねばって見ていたが睡魔に負けてしまった。目がさめてみると羽生結弦選手の金メダルのニュース。予想はしていたものの、魔物が棲んでいるのがオリンピックで本番では何がおこるかわからない。朝のNHKの再放送を見て、どのようにライバルのパトリック・チャン選手を抑え込むことができたのかがわかった。




大雪は案の定、27cmの積雪を記録していた。今回の雪のほうが停電や電車の遅延など先週よりも影響が大きかったようだ。





ハチ公「おはよう」
雪ハチ「おはよう」
ハチ公「今日はいい天気ですね」
雪ハチ「ええ……」
ハチ公「だんだん雪も解けてきました」
雪ハチ「そろそろお別れのようです」
ハチ公「そうですか」
雪ハチ「また会えるのは10年あとか、20年あとか……」
ハチ公「ええ、待つのは得意ですから」


夕食前にプレゼントが届いた。道路事情が悪いのに24時間で配送。さすがクロネコヤマトの宅急便!

包みを振るとちゃぽちゃぽという音がして何やら液体が入っている。「ん、チョコレートじゃないのかな?」と思いながら開けて出てきたのが上に掲載したウィスキーと薔薇の形をしたチョコレート。

この薔薇の形のチョコはそのまま食べるのではなく、このようにして「飲む」らしい。



オリンピック見ながらほっこりできる。贈り物センスは「金メダル級」だ。


いつもと違うのんびりした週末。オリンピックも2月23日まであるそうだから、しばらくこんな感じで冬を過ごすのだろう。

あいかわらず「妻は、くノ一:風野真知雄」は読んでいて、今は第9巻を読み始めたところ。

理論物理学のための幾何学とトポロジー:中原幹夫」は今の僕には難しすぎてずいぶん時間がかかったけれど、あと第2分冊の最終章を残すのみだ。レビュー記事はあと2〜3日したら投稿することができるだろう。





応援クリックをお願いします!それぞれのランキングサイトに投票が行われます。

にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




関連記事:

バレンタインデー
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/91163928ed175c15ebfba4cb419fd528

理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫

$
0
0
理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫

内容
本書は1986年冬期にSussex大学数理物理科学教室で行った講義をもとに、その内容を大幅に進展させたものである。その際の聴衆は大学院生及び素粒子論、物性物理学あるいは一般相対論を専門とする当教室のメンバーであった。講義はインフォーマルな雰囲気の中で行われたが、本書においても出来うる限りこの点を守るように心がけた。定理の証明はそれが教育的であるものに限って与え、極端にテクニカルなものは省略した;省略した場合は定理の内容が確証できるようにいくつかの例を与えることにした。また、図を出来るだけ多く挿入することで、内容に関する具体的なイメージが把握できるように読者の便宜をはかった。第9章から第12章ではトポロジーと幾何学を統一的に扱い、第13章と第14章は現在盛んに研究されている物理学の分野におけるトポロジーと幾何学の最も魅力ある応用となっている。

著者について
中原幹夫
1981年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。1983年イギリスロンドン大学数学Diploma課程修了。1981-82年南カリフォルニア大学物理学科研究員。1983-85年カナダアルバータ大学物理学科研究員。1985-86年イギリスサセックス大学数学物理教室研究員。1986-93年静岡大学教養部助教授。1993-99年近畿大学理工学部数学物理学科助教授。現在、近畿大学理工学部数学物理学科教授、理学博士

佐久間一浩
1993年東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修了。1994-96年国立高知工業高等専門学校一般科講師。1997年同助教授。1998年近畿大学理工学部数学物理学科講師。現在、近畿大学理工学部数学物理学科講師、理学博士


理数系書籍のレビュー記事は本書で245冊目。

読者の方に言うのも恥ずかしいが、この第2分冊はまったく歯が立たなかった。全体の理解度は3割程度。

これまでにも理解できない本はいくつもあった。そして理解度が3割を下回った時点で読むのをあきらめていた。字面だけ追うのは電話帳を読むのとほとんど変わらない。

けれどもこの本に限っては状況が少し違っていた。苦労することは最初からわかっていたので次のようなことだけ吸収できればよいと思っていたからだ。

- 現代数学における代数学、幾何学、解析学の間の関係をつかむこと。
- 現代数学が物理学のどのような局面でかわっているかをつかむこと。
- 学ぶべき現代数学の分野とそこに成り立っている定理のあらましを知ること。
- どのような順番で学んでいけばよいかを知ること。
- それぞれの分野がどれくらい難しいのかをつかんでおくこと。

このような意味においては目標をほぼ達成することができた。理解がおぼつかないながらも読破した意味はあったと思う。(と無理に自分を納得させている。)


現代トポロジー理論と超弦理論に強いつながりがあることは「大栗先生の超弦理論入門」を読んだりNHKの「神の数式」を見た人ならば理解することができるだろう。またNHKの「素数の魔力に囚われた人々 〜リーマン予想・天才たちの150年の闘い〜」では現代物理学とアラン・コンヌ博士の「非可換幾何学」につながりがあるかもしれないということが述べられていた。

超弦理論の余剰次元空間の候補のひとつ「カラビ-ヤウ空間」は、それそのものが6次元の物理的な空間だから、もろにそれはトポロジー理論が必要とされるというのはわかりやすい。しかし、それ以外の物理の分野が幾何学と結びついていると言われても素人にはちょっと想像がつかないと思う。

リーマン幾何学」は数学としての道具立ては素人には難解過ぎるが、その直観的なイメージはわかりやすい。天体の質量によって周囲の時空が歪められるというのは幾何学そのものだ。一般相対性理論と幾何学との結びつきは素人にもすんなり受け入れることができる。

量子力学になると事態は変わる。その基礎方程式に含まれている波動関数は複素数の値をとる関数であり、「オイラーの公式」を学んだことのある高校生がついてこれるのはここまでだ。その波動関数が存在するのは「ヒルベルト空間」だと説明した時点でお手上げになる。ヒルベルト空間は無限次元の複素数の基底ベクトル(座標軸)によって張られる空間であり、この空間のことを理解するためには、関数が張るベクトル空間(関数空間)をきちんと学んでおく必要があるからだ。だから量子力学はヒルベルト空間論という幾何学と関係があると説明しても素人にはピンと来ないのは仕方がない。

それ以降の物理学、たとえば場の量子論、素粒子の標準理論にしても然り。幾何学どころか本来の物理法則自体を素人が理解するのは無理なので「相互につながりがある。」と説明しても理解してもらえるはずがない。差し当たり物理法則の対称性を意識しつつ、リー群(連続群)やその表現論を学んでいくのが物理学を専攻する学生がとる第一ステップなのだろう。

約6年に渡る勉強で、僕がたどり着けたのもこのあたりだ。多様体や微分幾何の勉強も十分ではない。ゲージ場が接続の微分幾何と結びついていることを理解できるまで、なんと多くのことを学ばなければならないことか。本書を読み終えての感想はまずそういうことだった。

以下が第2分冊の章立てだ。

理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫
第9章:ファイバー束
第10章:ファイバー束上の接続
第11章:特性類
第12章:指数定理
第13章:ゲージ場理論におけるアノマリー
第14章:ボソン的弦理論

以下に各章の概要を述べておくが、理解がほとんど追いついていないので本書からの引用がほとんどであることをおことわりしておく。


第9章でファイバー束、束写像、引き戻し束、ホモトピー公理、ベクトル束、余接束、双対束、ベクトル束の切断、ファイバー計量、積束、Whiteney和束、テンソル積束、主束、同伴束などの定義を学ぶ。図版が多いので少しは助かるが新しい概念ばかりなので、この章は結構つらい。ファイバー束は2つの位相空間の直積に似た位相空間である。物理学、における多くの理論、たとえば一般相対論やゲージ理論などは、ファイバー束の理論により自然に記述される。

第10章でファイバー束上の接続が定義される。第7章で学んだRiemann多様体における接続により異なる接空間のベクトルを比べることが可能になることを学んだわけであるが、これを抽象化するわけである。まず主束上の接続を定義し、その「接続1-形式」という局所表示が物理的にはゲージ・ポテンシャルに対応していることが示される。Yang-Mills場の強さは、接続によって与えられる曲率として定義される主束上の接続は自然に、それに同伴するベクトル束の共変微分を定める第7章で得られた諸結果がここでのアプローチを接束に適用することにより再現される。そしてこの章の最後で接続の理論の物理学へのいくつかの応用(ゲージ場理論とBerry位相)が紹介される。具体的にはU(1)ゲージ理論(古典電磁気学)、Diracの磁気モノポール、Aharonov-Bohm効果、SU(2)ゲージ理論(Yang-Mills理論)、インスタントン、Berry位相などである。個人的にはリーマン幾何学で学んだ接続が、ここまで応用範囲が広いものなのかと驚かされた。第9章で学んだ技巧的とも思える数々の定義の意義がこの章に至って理解できたのだ。

第11章は特性類について学ぶ。ファイバーM、構造群G、底空間Mが与えられると、変換関数の選び方によってM上にはさまざまなファイバー束が構成される。そこで自然におこる問いは、与えられたFとGに対して、M上のファイバーはどのくらいたくさん存在し、それらが自明束M×Fとどの程度異なるかであろう。特性類は底空間のコホモロジー類の部分集合であり、ファイバー束の捩れ具合あるいは非自明さを測るものである。この意味で特性類はファイバー束が自明束になるための障害と考えることもできる。特性類のほとんどはde Rhamコホモロジー類によって与えられる。特性類は、ファイバー束の分類における重要性に加えて、指数定理においても中心的役割を果たす。この章では不変多項式とChern-Weil準同型について学んだ後、Chern類、Chern指標、Todd類、Pontrjagin類、Euler類などの特性類とその性質、HirzebruchのL種数とA種数、Chern-Simons形式、Stiefel-Whitney類などについて学ぶ。

第12章では指数定理について学ぶ。物理学ではしばしば多様体M上の微分作用素を考察する。ラプラシアン作用素、d'Alembert作用素、Dirac作用素などである。これらの作用素は数学的観点からは切断の空間の間の写像とみなされる。これらは微分作用素なので、スペクトルと縮退に関する解析的情報をもたらす。驚くことにこの解析的な量は、多様体M上の適当な特性類の積分により表される位相不変量であり、純粋にMの位相的な情報を与えるのだ。この解析とトポロジーの間の相互作用が指数定理の主な部分である。この章で学ぶ項目は楕円型作用素、Fredholm作用素、楕円型複体、Atiyah-Singerの指数定理、de Rham複体、Dolbeault複体、符号数複体、Hirzebruch符号数定理、スピン複体、捻じれスピン複体、熱核と指数定理、Atiyah-Patodi-Singerの指数定理などである。

Atiyah-Singerの指数定理は、現在の認識では幾何学と理論物理学の接点に位置する基本定理である。そこでAtiyah-Singer指数定理が第10章で論じた接続の理論と関連して、効果的に利用される例について触れておこう。

理論物理学と幾何学の研究における「接続の理論」の変遷や歴史は互いに異なるかもしれないが、その重要性は双方に共通している。接続の有効な研究の方法のひとつに、個々の接続を問題とするのではなく、接続全体の空間(モジュライ空間とよばれる)の構造を解析するものがある。そしてモジュライ空間の構造を利用して多様体の「微分同相不変量」が」定義されることがある。ゲージ理論にもとづくこうした観点からの多様体の研究は、今のところ4次元で著しい成功を収めている。1980年代に始まるDonaldson理論と1990年代半ばに発見されたSeiberg-Witten理論である。

ファイバー束が与えられるとRiemann計量を定めて、接続と曲率が定義されるがその際に考察される顕著な性質は、ファイバー束の大域的な捻じれ具合が個々の接続の取り方にはよらず、接続と曲率の集合から決まるあるコホモロジー類(特性類)を定めることである。このプロセスはChern-Weil理論と呼ばれている。このように接続は、個々を問題とするのではなくそれらを寄せ集めてくると、ファイバー束や多様体の大域的構造を浮かび上がらせるという興味深い特徴をもっている。たとえば、とりわけ良い性質をもつ接続の族を考えると、それが多様体の位相構造や微分構造の繊細な情報と結びつくのである。

第13章ではゲージ場理論におけるアノマリーについて学ぶ。アノマリーとは量子化の過程で生じる異常項のことだ。(NHKの番組では「無限大の問題」として説明されていた。)素粒子物理学におけるモデルを構成する上で、対称性は最も重要な要素のひとつである。対称性は理論の繰り込み可能性やユニタリー性を保証する上で重要な役割を果たす。モデルのラグランジアンは観測されている対称性を満たすように選ばなければならない。しかし、ラグランジアンがもつ対称性は古典的であることに注意してほしい。ラグランジアンの対称性は量子的な対称性、すなわち有効作用の対称性を保証するものではない。ラグランジアンの古典的な対称性が量子化の過程で損なわれる場合、理論はアノマリーをもつという。場の理論にはカイラル・アノマリー、ゲージ・アノマリー、重力アノマリー、超対称性アノマリーなど、さまざまなタイプのアノマリーがある。各形容詞は対象となる対称性を表している。この章ではゲージ理論に現れるアノマリーの微分幾何学的および位相幾何学的な構造が解説されている。項目としては可換アノマリー、非可換アノマリー、Wess-Zuminoの無矛盾条件、BRS作用素、Faddeev-Popovゴースト、モジュライ空間、奇数次元空間におけるパリティ・アノマリーなどである。

第14章ではボソン的弦理論について学ぶ。ここで扱われるのは26次元のEuclid空間における閉じた向き付け可能なボソン的弦理論の1ループ振幅の経路積分による解析だ。弦の作用としては、種数gのRiemann面で定義されたPolyakov作用を採用する。まずRiemann面の微分幾何学が紹介され、次に真空振幅の経路積分表示が示される。そして次に1ループの真空振幅が計算される。学ぶ項目としてはRiemann面上の微分幾何(計量と複素構造、ベクトル、微分形式、テンソル、共変微分、Riemann-Rochの定理)、Polyakov弦の真空振幅、モジュライ空間、タイヒミュラー空間、積分の測度、臨界次元、複素テンソル解析と弦測度、Beltrami微分などである。


第2分冊では参考図書として次のような教科書が紹介されていた。

第2分冊全体
-「ゲージ理論とトポロジー :深谷賢治
-「接続の微分幾何とゲージ理論:小林昭七
-「復刊 微分幾何学とゲージ理論:茂木 勇, 伊藤 光弘

第9章:ファイバー束
-「復刊 微分位相幾何学:足立正久
-「微分・位相幾何:和達三樹

第10章:ファイバー束上の接続
-「微分形式の幾何学 1:森田茂之
-「微分形式の幾何学 2:森田茂之
-「ゲージ場を見る:外村彰
-「目で見る美しい量子力学:外村彰」(レビュー記事

[外村]はAharonov-Bohm効果の実験についての第一人者による紹介である。

第11章:特性類
-「特性類講義:J.W.ミルナー, J.D.スタシェフ
-「特性類と幾何学:森田茂之

[J.W.ミルナー, J.D.スタシェフ]は翻訳であるが、日本語訳には原著にない解答が示されている。

第12章:指数定理
-「指数定理:古田幹雄
-「ディラック作用素の指数定理:吉田朋好

第13章:ゲージ場理論におけるアノマリー
-「経路積分と対称性の量子的破れ:藤川和男

[藤川]はFujikawaの方法の発見者自身による解説である。

第14章:ボソン的弦理論

-「弦の量子論:吉川圭二
-「曲面上の関数論―リーマン‐ロッホの定理へのいざない:樋口、山崎、 田代、渡辺


日本語版:

残念ながら日本語版は絶版状態で中古本しか手に入らない。復刊リクエストに協力いただける方はこのページからお願いします。

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫

 

英語版:

Geometry, Topology and Physics, Second Edition: Mikio Nakahara




関連記事:

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef0b2fcb7c87aabfcd68bbe2a567840e


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫



第9章:ファイバー束
- 接ベクトル束
- ファイバー束
- ベクトル束
- 主束

第10章:ファイバー束上の接続
- 主束上の接続
- ホロノミー
- 曲率
- 同伴ベクトル束上の共変微分
- ゲージ理論
- Berryの位相

第11章:特性類
- 不変多項式とChern-Weil準同型
- Chern類
- Chern指標
- Pontrjagin類とEuler類
- Chern-Simons形式
- Stiefel-Whitney類

第12章:指数定理
- 楕円型作用素とFredholm作用素
- Atiyah-Singerの指数定理
- de Rham複体
- Dolbeault複体
- 符号数複体
- スピン複体
- 熱核と一般化されたζ関数
- Atiyah-Patodi-Singer指数定理

第13章:ゲージ場理論におけるアノマリー
- 序説
- 可換アノマリー
- 非可換アノマリー
- Wess-Zuminoの矛盾条件
- 可換アノマリーと非可換アノマリー
- 奇数次元空間におけるパリティ・アノマリー

第14章:ボソン的弦理論
- Riemann面上の微分幾何
- ボゾン的弦の量子力学
- 1-ループ振幅

参考文献
日本語の参考文献II
訳者あとがき
索引

アンネの日記を読もう

$
0
0

東京や埼玉の公共図書館で「アンネの日記」や関連書籍が相次いで破られていた事件には憤慨しているし、卑怯なやり方に強く反発を感じている。早く捕まってほしい。

犯人の目的は「アンネの日記」関連書籍を読ませないことにあるのだから、その犯行の逆手を取ることにした。本を宣伝してより多くの人に読んでもらえばいいのだ。(僕が宣伝するまでもなく、事件が話題になったことで本の売れ行きはアップしていることだろう。)

政治的にいかなる考え方や思想をもっていたとしても、この本は一度は読んでおくべきだと思う。

犯行を逆手に取るという趣旨に賛同いただける方は、ぜひ読んでいただきたい。


アンネの日記 (文春文庫)


『アンネの日記』が最初に世に出たのは1947年。そして91年に、47年版でカットされていたアンネの人間味あふれる記述(鋭い批判精神や性のめざめ、など)を復活させた「完全版」が出版された。この「増補新訂版」は、98年に新たに発見された5ページ分を加え、翻訳資料をさらに徹底させたもの。まさに「アンネの日記・決定版」といえる。



以下は関連書籍。

アンネ・フランクの記憶 (角川文庫)」(Kindle版


十代のはじめ『アンネの日記』によって言葉が自分を表現することに心ゆさぶられ、作家への道を志した小川洋子が、長年の感慨をこめてアンネの足跡をたどる旅に出た。命がけで物資を運びフランク家の隠れ家生活を気丈に支えたミープさんや無二の親友ジャクリーヌさんら老齢の今も美しく、真の魅力を放つ女性たちと語り、生家→隠れ家→アウシュヴィッツへとたずねていく―。アンネの心の内側にふれ、極限におかれた人間の、葛藤、尊厳、信頼、愛の形を浮き彫りにした感動のノンフィクション。



夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録


本書は、みずからユダヤ人としてアウシュヴィッツに囚われ、奇蹟的に生還した著者の「強制収容所における一心理学者の体験」(原題)である。
「この本は冷静な心理学者の眼でみられた、限界状況における人間の姿の記録である。
そしてそこには、人間の精神の高さと人間の善意への限りない信仰があふれている。
だがまたそれは、まだ生々しい現代史の断面であり、政治や戦争の病誌である。
そしてこの病誌はまた別な形で繰り返されないと誰がいえよう」(「訳者あとがき」より)。


その他の「アンネの日記」関連本をアマゾンで検索する


なおこの記事について(僕を含めて)他の読者が不快に思ったり、政治的・思想的な立場からコメントをいただいた場合、コメントの公開を承認しないことがありますのであらかじめお断りしておきます。


関連ページ:

アンネの日記:ウィキペディアの記事

第2次世界大戦の真実(4):アンネの日記の真相
http://blog.livedoor.jp/ijn9266/archives/3609311.html

アンネ・フランクの唯一の動画とその最後:リンク


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

ゲージ理論とトポロジーの年表

$
0
0
ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」(古書のシュプリンガー版

内容
本書はゲージ理論の数学的な側面、特にその中心であるヤン‐ミルズ方程式について解説。本書では、序論で数学の関連諸分野を歴史的に概観し、ゲージ理論の数学的位置づけを与えている。また、位相幾何学、微分幾何学、代数幾何学、関数解析学などについて、本書と関わる部分については随所でその概観を与えている。主題であるヤン‐ミルズ方程式の解のモジュライ空間の構造とその4次元位相幾何学への応用については、理論の基本的な骨組みを示す部分とそれを詳しく証明する部分とを分離して解説することにより、中心的なアイディアを理解しやすいように構成。

著者について
深谷 賢治 教授(京都大学大学院理学研究科)
1959年に神奈川県に生まれる。中学時代には天文、物理などの科学を好み、高校時代にはすでに数学研究の道に進むことを決めていたという。1981年に東京大学理学部を卒業。1986年に博士号取得。同大理学部助手、同助教授をへて1994年から京都大学理学部数学科教授に。日本学士院会員。
おもな著作に「数学者の視点」(岩波書店、1996年)、「シンプレクティック幾何学」(岩波書店、2008年)など。教科書、概説書などの学術書のみならず、数学者の日々や現代数学の動向を軽妙な語り口で綴るエッセイも評価が高い。
2009年度には「シンプレクティック幾何学の研究」により朝日新聞文化財団朝日賞、2012年には「位相的場の理論の幾何学的実現とその数学的基礎理論の構築」で藤原科学財団藤原賞を受賞。

インタビュー記事:
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/forefront/vol13.htm


次に紹介する本(「アンネの日記」ではない)を読み始めたばかりなので、今日は軽めの記事にした。

「理論物理学のための幾何学とトポロジー:中原幹夫」の第1分冊の第7章や第2分冊の第13章でゲージ理論とトポロジーに関連があることが解説されていたが、「ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」の初めのほうに次のような年表が掲載されているのを見つけた。本書のシュプリンガー版がでたのが1995年なので、当時の最新の理論まで記載されている。

現代物理学に現代幾何学の知識が不可欠であることがよくわかる。学ぶべきことはまだまだたくさんあるのだ。もちろん今の自分に理解できるはずもないレベルのことばかりなので今回のブログ記事はキーワードの整理用である。

1980年代後半以降に記載のあるウィッテン(Witten)は、もちろんNHKの「神の数式」に登場していた1995年に11次元時空のM理論を提唱して第2次超弦理論革命をもたらしたエドワード・ウィッテン博士のことである。

目次によると第4章に「フリードマン-モーガンの爆発公式」というのがある。いったい何が爆発するのだろう??数学の本で「爆発」という言葉を見たの初めてだ。


ゲージ理論とトポロジーの年表

注意:*付きのものは関係論文の出版年に基づいており、発見されてから数年遅く、順番が逆転している場合もある。

1918年*:ワイル(Weyl): ゲージ変換の発見
192?年:カルタン(Cartan): 接続の概念
1931年*:ド・ラーム(De Rham): ド・ラームの定理
1934年*:モース(Morse): モース理論
1935年*:ホッジ(Hodge): 調和積分論
1946年*:チャーン(Chern): チャーン・ヴェイユ理論
1946年*:ヴェイユ(Weil): ド・ラーム理論に基づく特性類の理論
1952年*:ロホリン(Rochlin): ロホリンの定理
195?年*:トム(Thom)、スメイル(Smale)、ミルナー(Milnor): 微分位相幾何学始まる
1958年*:小平: 複素構造の変形理論
1958年*:スペンサー(Spencer): 現代的なモジュライ理論の創始
1963年*:アティヤ(Atiyah): 楕円型作用素の指数定理
1974年:ヤウ(Yau): カラビ(Calabi)予想解ける(非線形偏微分方程式に基づく微分幾何学の最大の成果)
1978年*:アティヤ、ヒッチン、シンガー: ゲージ理論の数学が本格的に始まる
1978年*:アティヤ、ドリンフェルト(Drinfeld)、ヒッチン、マニン(Mannin): S^4上の自己共役接続を決定
1981年:フリードマン(Freedman): 4次元ポアンカレ予想解ける
1982年*:ウーレンベック(Uhlenbeck): ヤン-ミルズ方程式の除去可能特異点定理
1982年*:タウベス: 多くの4次元多様体上でヤン-ミルズ方程式の解が存在することの証明
1982年:ドナルドソン(Donaldson): ゲージ理論の4次元位相幾何学への最初の応用
1985年:ドナルドソン: ドナルドソン多項式
1985年:キャッソン(Casson): キャッソン不変量
1987年*:ジョーンズ(Jones): 結び目の新しい不変量を作用素環を用いて導入
1987年*:ドナルドソン: 4次元h同境定理の反例
1988年*:ウィッテン(Witten): 位相的場の理論
1989年*:ウィッテン: ジョーンズ不変量をチャーン-サイモンズゲージ理論で解釈
1990年*:タウベス: キャッソン不変量をゲージ理論で解釈
1990年:クロンハイマー(Kronheimer): トム予想とゲージ理論の関係
1993年:クロンハイマー、ミュロフカ(Mrowka): ドナルドソン多項式の構造定理
1994年:サイバーグ(Seiberg): モノポール方程式(サイバーグ-ウィッテン方程式)がヤン-ミルズ方程式と等価であると予言
1995年:タウベス: サイバーグ-ウィッテン不変量と量子コホモロジーの一種(グロモフ-ウィッテン不変量)の等価性を証明


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」(古書のシュプリンガー版



序論

- 初めに
- モース理論の過去と現在
- ド・ラームの定理から楕円型作用素の指数定理へ
- 4次元位相幾何学概観

第1章:ベクトル束と接続
- 接続とゲージ変換
- 曲率と特性類
- スピン構造とディラック作用素

第2章:ゲージ理論概説
- ドナルドソン不変量の概観
- 反自己双対接続のモジュライ空間の基本的性質(局所理論)
- モジュライ空間の大域構造I
- モジュライ空間の大域構造II

第3章:モジュライ空間の解析学
- ソボレフ空間
- 局所理論再説
- ウーレンベックの原理
- 横断正則性
- ドナルドソン不変量のまとめ

第4章:フレアーホモロジーと相対ドナルドソン不変量
- 位相的場の理論
- フレアーホモロジー概説
- 相対ドナルドソン多項式
- コンパクトでない多様体の上の楕円型作用素
- ASD接続の減衰評価
- ASD接続のはり合わせ
- 楕円型作用素の指数の和公式
- 可約接続の扱い
- フリードマン-モーガンの爆発公式
- 相対ドナルドソン多項式のまとめ

第5章:エキゾチックK3曲面
- SO(3)不変量
- ホモとピーK3曲面の不変量

付録:サイバーグ-ウィッテン理論瞥見

参考文献
記号索引
事項索引

アラン・コンヌ博士の非可換幾何学とは?

$
0
0
非可換幾何学入門:アラン・コンヌ

内容紹介
1980年代初め,現代数学と数理物理学との接点で誕生した非可換幾何学。本書はこの分野を創始した著者が、コレージュ・ド・フランスでの講義に基づいて書き下ろした入門的な解説である。非可換幾何学および数理物理学との関係が斬新な哲学と視点に立って生きいきと語られている。フランス語版からの翻訳。

訳者について
丸山文綱
1963年生まれ、1987年東京大学理学部数学科卒業、パリ北大学PhD.、専攻:数理物理、微分方程式


次にレビュー記事で紹介しようとしている本は、まだ読んでいる途中なので、今回も軽めの記事(というか丸写し系の記事)を書くことにした。

現代物理学と現代幾何学に深いつながりがある。「東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構」で見られるように、現代では物理学者と数学者が共同して研究を進めているのもそのためだ。このことは先日「ゲージ理論とトポロジーの年表」という記事で紹介した。

けれどもこの年表にはアラン・コンヌ博士の名前がない。2009年にNHKで放送された「素数の魔力に囚われた人々 〜リーマン予想・天才たちの150年の闘い〜」にも出演された現代を代表する数学者の一人だ。この番組の中で博士は「素粒子物理学者たちが目指しているものは、私が研究している非可換幾何学であることに気が付いた。」と述べていたのが強く印象に残っている。

コンヌ博士のホームページ
http://www.alainconnes.org/en/




博士が非可換幾何学を提唱したのは1980年代のことだから、この年表に名前が載っていてもおかしくない。研究の方向性が違うからだろうか?博士の非可換幾何学というのはどういうものなのだろう?

とはいえ「非可換幾何学入門:アラン・コンヌ」は、今の僕が読めるような本ではなく、せいぜい「あらすじ」や「訳者あとがき」で大まかな内容をつかめる程度だ。

ま、それでもよいではないか。本書から「あらすじ」と「訳者あとがき」を丸写しすることにした。これは僕のブログが目指している方向性のひとつであるわけだし、本書を購入するかどうか迷っている方の判断材料にもなると思う。

なお、本書の英語版は以下のページからPDFファイルとしてダウンロードできる。(日本語版はフランス語版から訳されたものだ。詳細は以下の「訳者あとがき」を参照。)

コンヌ博士の著作のダウンロードページ:
http://www.alainconnes.org/en/downloads.php

なお、コンヌ博士は2011年に「Noncommutative Geometry and Global Analysis (Contemporary Mathematics)」 や「Noncommutative Geometry, Arithmetic, and Related Topics: Proceedings of the Twenty-first Meeting of the Japan-u.s. Mathematics Institute」という本を(共著で)お出しになっている。これら2冊の詳細は「近日発売: コンヌ博士の非可換幾何学関連の書籍(英語版)」という記事でお読みいただきたい。


はじめに

代数幾何学によって、幾何学的な空間と可換環論との関係はあきらかになった。この本の目的は実解析学の範疇で可換を越えたところでの幾何学的な空間と関数解析との同じような対応を示すことである。

この理論を支えるのは本質的な三本の柱である。

1)自然に現れて、古典的な解析学の手法を適用することはできないが、非常に自然に非可換代数を対応させることができる数多くの例。たとえば、ペンローズの宇宙の空間、葉層多様体の葉全体の空間、離散群の既約表現全体の空間など。

2)測度論、位相、微分演算、計量などの古典的な解析学の手法の、代数やヒルベルト空間を用いた再定式化。その場合、自然な状況には非可換が対応していて、その中でとくに可換な場合が、この一般論の中では孤立していることもなければ、また閉じていることもないようにできるということ。

3)物理学者が考察する空間の多くが非可換として捉えられるという意味での物理学との関係。まず、ハイゼンベルクによって行列力学という形で発見された量子力学(第1章)は、古典力学の相空間上の関数全体の可換環を非可換なものに置き換えた。その代数は単純な系の場合には行列全体の作る環だが、量子統計力学的な系の場合には非自明なC*環になる。次にベリサールの固体物理学における仕事(第4章)によって、そのエネルギーと運動量の空間は、(その上で定義された関数全体のなす環が非可換なものによって置きかえられるという意味で)非可換なものとなった。最後に(第5章)、ワインバーグ-サラムモデルによる素粒子物理学は時空間を支配する幾何学をあきらかにしたが、その幾何学は非常に微妙なものであって、われわれがそこに(4次元の多様体上の)非可換幾何学を考える余地を残している。それは微分形式の概念や時空間の二重化を考えることによって、標準模型のヒグスボソンに対する概念的な根元を純ゲージボソンとして理解するということに関係する。

各章は独立に読むことができる。第1章は一般的な序論である。第2章では量子空間の、位相、K-理論、微分演算、K-ホモロジーと関係した非可換幾何学の諸結果を概観している。本来の意味での幾何学、いいかえれば量子空間の距離に関連するものは第5章で素粒子物理学との関係で扱う。

第3章は非可換測度論、つまりフォンノイマン環とその上の荷重の理論の概観である。

本文中ではなるべく独断を避け、研究上重要な未解決な部分は具体的な問題の形で提示するように努めた。


訳者あとがき

この本は、数学のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞の受賞者であるアラン・コンヌのフランス語版原著 Geometrie non commutative (1990年)の全訳である。

ことわっておくと、この本には「英訳」Non Commutative Geometry (1994年)がある。フランス語版は一般書として数学に興味のあるすべての人向けといった風情もあり、また非可換幾何学紹介、さらに、やってやるぞ、という雰囲気(翻訳でうまく表現できたであろうか?)があるのに対し、この「英訳」はコンヌ自身の手で細かい内容、章立てが書き換えられて、原著比「3.8倍」の厚さになってしまい、まさに専門家向けの辞書的なものになってしまった。もちろん、新しい結果、とくに標準模型(スタンダードモデル)に関する発展が付け加わっているのでしかたがないのだが、ただでさえ高めの敷居が、さらに高くなってしまった感は否めない。この「英訳」を読まれる方のためにも、この日本語訳が多少の役に立てば幸いである。

この本の出版前後の数理物理関係の進展について簡単に述べておく。1988年、コンヌは、非可換幾何学のゲージ理論が電弱相互作用と関係していることを指摘した。この時点で、いわゆる対称性の自発的破れと非可換幾何学が結び付けられたのである。さらにコンヌとロトは1990年にこのゲージ理論から素粒子物理の標準模型が出てくることを示した。第5章の脚本はある意味でみごとにあたったのである。この手法はヒッグス場に対する解釈が優れているという点で注目されているが、しかし、いまだに数多くある素粒子理論の主流とはなっていないようである。もしかするとそれは、数学的基礎の部分である作用素環がむずかしいということにあるのかもしれない。その意味では理論の流れを追うことのできるこの本は(多少冗長ではあるが)読みやすいかもしれない。

第4章のベリサールの理論であるが、実は現在ではあまり評価されているようには見えない。というのも整数比ではない、分数量子ホール効果に理論を適合させることが、うまくできなかったからである。もっとも最近でも位相的不変量により分数量子ホール効果を説明する試みは続いているようなので、今後評価がどのようになるかはわからない。ごく私的な思い出になるが、訳者がパリに留学したはじめての年には、ベリサールが高等師範でC*論と量子ホール効果の講義をしていて、何回か出席したが、そのときにははっきりいってあまりよくわからなかった。

はじめに述べたような理由も手伝い、日本語題は『非可換幾何学入門』とした。訳語に関しては『岩波数学辞典第三版』を主として、日本語の参考文献にあげたものを参考にさせていただいた。原著のあきらかな間違い(といってもミスプリントのたぐいであるが)は訂正した。それにしても身につまされたのは、数学関係者との会話で、定着した訳があるものも含めて、いかに英米単語をそのまま使っていたかという点であった。新しい訳語になりそうなものも含め、気をつけて訳したつもりであるが、識者のご意見をいただければ幸いである。

数学を便宜上、代数、幾何、解析と分類することが多い。世の中には、これらが分野として切り離されて存在していると思い込んでいる人がいるようであるが、相互に無関係でいられるほど数学は単純なものではない。逆に、代数と解析が共に集うところに自然に幾何が入り込み、それらが組み合わさって美しい理論となることが多い。この本で見られるように作用素環論はもちろん、その源流たる表現論、あるいは多変数関数論、代数解析学などはよい例であろう。さらには解析数論を挙げてもよいかもしれない。日本語文献「作用素環の構造:竹崎正道」の序文に、作用素環理論は「現代の数論」とあるのだが、コンヌも似たような考えでこの本を書いたような気がする。コンヌ本人は「英訳」に素数分布に関する章を付け加えているし(すでにこの本にもζ関数が出てくるが)、その後、リーマン予想に関連した仕事もしている。

---------

そしてウィキペディアの「アラン・コンヌ」という項目には、次のことが書かれている。

1990年代には他の数学者とともに量子ホール効果、超弦理論、ループ量子重力理論、格子ゲージ理論など様々な量子力学的概念に対し非可換幾何の手法が有効であることを示している。また、同じ時期に数論的な構成物に対しても非可換空間の構成が可能であることを示し、有数体 Qのアデール類の空間 A/Qxに対する自然な力学系からリーマンゼータ関数(実際にはより一般に、任意の量指標に関するL関数)の零点のスペクトル実現を得ている。


関連記事:

コンヌ博士の非可換幾何学へはどうたどり着けばいいのだろう?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1655b0e9e6992dcd300fd3ef8910d45d

復刊決定!:非可換幾何学入門:A.コンヌ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c6385a97547f7d914c5a05a8c87d094

コンヌ博士の非可換幾何学関連の書籍(英語版)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e8936e89e809d19daf19ab5f689d9cb6

素数の魔力に囚われた人々 〜リーマン予想・天才たちの150年の闘い
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c855d3c8628459df7371c2c53789c794


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




非可換幾何学入門:アラン・コンヌ


目次

はじめに

第1章:序論
- ハイゼンベルクと微視的な系に付随する量子の非可換環
- 巨視的な系の統計力学的な状態と量子統計力学
- モジュラ理論と因子環の分類
- 幾何学における作用素環論の役割

第2章:非可換幾何学入門
- 量子空間の一つの例:ペンローズタイリングが定義する集合
- 葉層構造と横断的測度を持つ場合の指数定理
- III型因子環、巡回コホモロジーとゴドビヨン-ベイの不変量
- 量子空間の巡回コホモロジーとK-理論
- 量子空間のK-ホモロジーと楕円型作用素の理論
- 付録1:ペンローズ・タイリング
- 付録2:巡回コホモロジーの詳細
- 付録3:量子空間と集合論

第3章:作用素環
- マレーとフォンノイマンの論文
- C*環表現
- 非可換積分の代数的枠組みと荷重の理論
- パワーズ因子環、荒木-ウッズ因子環、クリーガー因子環
- ラドン-ニコディムの定理とIIIλ型因子環
- 非可換エルゴード理論
- アメナブル・フォンノイマン環
- アメナブル因子環の分類
- II1型因子環の部分因子環
- 未解決問題

第4章:量子ホール効果
- ガウス-ボンネの定理
- 量子ホール効果
- 理論的な解釈

第5章:素粒子物理学と非可換幾何学
- ゲージ群、スピノルとディラック作用素
- ディクスミエのトレースと対数的発散
- K-サイクルのコホモロジー次元と対数的発散の必要性
- 巡回コホモロジー理論における正値性とヤン-ミルズの作用
- モデルの議論
- 量子空間、量子群を弁護する

参考文献
出典と謝辞
訳者あとがき
索引

代数学I 群と環:桂利行

$
0
0
代数学I 群と環:桂利行

内容
東京大学理学部数学科3年次前期に学ぶ「代数学1」のシラバスに即したテキスト。代数学への導入部分をわかりやすく解説。基本的な代数系である群と環の理論の初歩を扱う。章末に演習問題を付す。2004年3月刊行。

著者について
桂利行
1972年東京大学理学部数学科卒業。現在、東京大学大学院数理科学研究科教授。理学博士


理数系書籍のレビュー記事は本書で246冊目。

ゲージ理論とトポロジーの年表」や「アラン・コンヌ博士の非可換幾何学とは?」という記事を書いてみて代数学の大切さをつくづく思い知らされた。トポロジーにしろ解析学にしろ代数学の理解は欠かせない。

SU(2)やSU(3)、U(1)など素粒子の標準理論の対称性を理解するために群論からリー群論を学んできたがそれだけでは足りない。

来月から大学では新学年が始まるし、群論を初めて学ぶ大学生もきっと多いことだろう。高校までに学ぶ代数とはイメージがまったく違うので最初はとっつきにくい分野でもある。だから代数系の本をいくつか読んで紹介することにした。

今日取り上げたのは著者による講義をもとにして書かれた本。東大の学部3年前期で学ぶ内容である。後期のぶんも含めて3冊構成のシリーズだ。この3冊を買ってから数年が経っているが、読まなければもったいないし、第2巻と第3巻を特に読んでみたいと思ったので第1巻から読んでみたわけだ。

3冊ともサイズもコンパクトで120ページほど。群論、環論は定義や定理、新しく学ぶ数学用語が非常に多い。分厚い本だと読むのに日数がかかるから用語の意味を忘れてしまいがちだ。整理された薄い本で学ぶというのもひとつの学習スタイルである。それに本書は行間をたっぷりとってあるのでストレスを感じなくてすむ。

群、環、体は英語でそれぞれ「group」、「ring」、「field」である。定義や意味はもちろん理解しているが、英語にしろ日本語にしろ群はともかく環や体はどうしてそういう名前をつけたのか、僕にはさっぱりわからない。(このように書いたところ、いつもコメントをくださるhirotaさんが、いろいろ教えてくださいました。その内容はコメント欄をお読みください。)

第1巻は群論と環論。僕にとっては復習がてらということになる。これまで次のような本を読んでいた。(リー群や表現論は除く)

-「群論への30講:志賀浩二著
-「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三
-「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次

この3冊はどれも入門書だが上から下の順に少しずつ難しくなっている。それぞれの持ち味がある良書だと思う。

これに対し今回読んだ「代数学I 群と環:桂利行」は、ひとことで言うと「優等生向け」の教科書だと思った。コンパクトな120ページほどの分量に、定理や証明など必要な項目が無駄のない記述で明快に解説されている。そのため「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三」のように群の元を具体的に書き出して説明するような超入門者にとって親切な記述にはなっていない。おそらく講義のほうで補うことを前提にしているのだと思った。つまり、僕にとってはこれまでの本で学んだ知識を整理するのにとても役立った。また既に読んでいた3冊には含まれていない定理や証明も多い。

約20日かけて熟読した。わからないところは「群・環・体入門:新妻弘、木村哲三」で同じ項目を読みながら理解するようにして読み進めた。演習問題は半分くらいを自分で解いてみた。「はじめに」には各章を理解していれば解けるはずの基礎的な問題であり、例外的に代数の理論が役立つことをしめすための難しい問題も取り上げてある、と書かれている。しかし僕には本文の記述に対して演習問題のレベルが高すぎると思えた。

第1章では群の理論の解説を行う。初めて群にふれる人を対象としているため、「注意」の項を随所にもうけ、慣れてくれば当然と思えるような事実についても解説している。また、シローの定理のように、とりあえずは事実を知っていて使えればよいであろうと思われる定理については証明が省略されている。

第2章では環の理論を扱う。理論の設定部分は群論と同様に進展するので、そのことを意識しながら学べばより効率的に学べるであろう。また、環の中で重要な位置を占める整域については、とくに詳しく解説している。


代数学I 群と環:桂利行
代数学II 環上の加群:桂利行
代数学III 体とガロア理論:桂利行

  


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




代数学I 群と環:桂利行



はじめに

第1章:群の理論
- 群の定義
- 部分群
- いろいろな群の例
-- 巡回群、対称群、2面体群、クラインの4群、4元数群、自由群
- 剰余類と剰余群
- 準同型写像と準同型定理
- 直積
- 共役類
- 可解群
- シローの定理
章末問題

第2章:環の理論
- 環の定義
- 部分環と直積
- 多項式環
- イデアルと剰余環
- 準同型写像
- 一意分解整域
- 素イデアルと極大イデアル
- 単項イデアル整域
- 商体
- 素体と標数
- 単項イデアル整域上の多項式環

問題の略解
参考文献
記号一覧
索引
人名表

素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫

$
0
0
素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫

内容
ついに、あなたの素粒子に対するイメージが具体的になる!
ヒッグス粒子発見のニュースで興味をもった方にもおすすめ!
素粒子論の「やさしい解説」を何度聞いても、どうにも腑に落ちない…。それもそのはず、多くの人は、素粒子論を理解するためには避けて通れない「場」の考え方について、ほとんど学ぶ機会がないからだ。素朴な“粒子”のイメージから脱却し、現代物理学の物質観に目覚める、今度こそわかりたいあなたのための素粒子入門。 2014年1月刊行。

著者について
吉田伸夫
東京大学理学部物理学専門課程修了。素粒子論(量子色力学)で東京大学から博士号取得。
著書には、『宇宙に果てはあるか』(新潮社)、『明解 量子重力理論入門』(講談社)、『日本人とナノエレクトロニクス』(技術評論社)などがある。


理数系書籍のレビュー記事は本書で247冊目。

次の代数学の本に進む前に、最近気になっていたこの本を読んでみた。一般読者向けに書かれた「場の量子論解説の決定版」がついに出たというのが僕がまず思ったことだ。

これまでに読ませていただいた吉田伸夫先生の本はどれもお勧めである。今回も期待が裏切られることはなかった。発売されてからまだ3ヶ月しか経っていないのに、アマゾンでは8つのレビューが投稿されており、そのうちの7つが高い評価であることからも本書が大好評であることを裏付けている。

NHKの「神の数式」をご覧になったり、ヒッグス粒子の関連本や大栗先生の「強い力と弱い力」をはじめとする素粒子物理学の入門書をお読みになった後で、本書を読むとその有り難味を実感することができるだろう。本書はNHKの番組や入門書では伝えることのできなかった「理論の土台の部分」を補っているのである。

NHKの番組や素粒子物理学の入門書では、放送時間やページ数の制限のために素粒子を「粒」としてみなすという一面しか取り上げていない。また理論の本質的な部分=標準理論の枠組みを支える「場の量子論」の解説がほとんど省略されてしまっている。そして場の量子論を支えているのが「量子力学」である。

量子力学の一般向け入門書はたくさんあるが場の量子論の入門書はほとんどなかった。数式無しには説明できないと思われてきたのがその理由だ。本書は科学教養書として書かれた「場の量子論解説の決定版」である。


NHKの番組を見たり素粒子物理学の入門書を読んだ方、量子力学の入門書を読んだ方には、次のような質問をしてみたい。

質問1) 量子力学では光は波であると同時に粒子(光子)でもあることを学ぶ。それだけでなく電子やその他の素粒子も同じで「粒子的描像」と「波動的描像」が両立している。だとすると素粒子物理学の番組や入門書ではなぜ「粒」としての側面しか取り上げていないのだろうか?量子力学で言っていたことは無視してもよいのだろうか?

質問2) 電子など素粒子は観測をするまではその位置が確定せず「ぼやけた状態」であるとされ、観測してはじめてその位置が1つに決まり粒子として観測されることを量子力学では学ぶ。だとすると加速器で素粒子と素粒子が衝突(相互作用)するということはいったいどういうことなのか?ぼやけた状態のものどうしが衝突するという意味なのだろうか?

質問3) ボルンの確率解釈では波動関数の絶対値の2乗はその位置における素「粒子」の存在確率をあらわすとされるが、量子力学では「波動性を持つ」と言っておきながら、やっぱり「粒子」だと言うこと?と思えてしまう。矛盾している気がするのだが。。。

質問4) 4つの力は「2つの素粒子の間でゲージ粒子をやり取りすることで伝えられる。」と説明され、その比喩として2つのボートに乗った2人がキャッチボールをしている例が使われる。でもそれで説明できるのは斥力(反発力)だけで、引力は説明できないと思う。一般向けの物理学講座では必ずといってよいほど受講生から質問としてあがることだ。

質問5) そもそも電荷とは何だろうか?電子の電荷はマイナス1で、クォークの電荷は1/3を単位とする分数の値であることが説明される。その「電荷」という性質は電子やクォークという「粒」に貼り付いている「何か」なのであろうか?本書を読むとそれは間違った理解であることがわかる。

質問6) 原子核のアルファ崩壊では崩壊する前と後の素粒子の数や種類は保たれる。それは化学反応式で反応の前後で原子の数と種類が保たれることに似ているので理解しやすい。ところがベータ崩壊では素粒子の数と種類は保たれていない。全く異なる素粒子に変化するというのがよくわからない。まるで錬金術のようではないか。素粒子は基本的な粒子なのだから他の素粒子に変化してはならないはずなのに。。。


これらの「もやもや(=疑問、質問)」は本書で解決される事柄のほんの一例である。素粒子を粒子としての側面だけで考えると、不自然なことがいくつも残ってしまうのだ。これらのもやもやを解決するためには素粒子を波として考え(というより本来は波であるものが素粒子に見える)、振動する場を考える(場の理論を採用する)必要がある。

上記のような疑問を解消し、読者をすっきりさせてくれた後、標準理論の解説に突入する。ゲージ対称性 U(1)、SU(2)、SU(3)、摂動法、繰り込み理論。その説明内容もこれまでに刊行された本とは違うアプローチである。それは素粒子の「波動性」を主軸に本書が書かれているからできることなのだ。「へぇ、こんなふうに説明すれば一般の人でも理解できるようになるのか。」と感心させられた。

本文では数式はほとんど使われていないが、空間の「計量(曲がり具合を表すための量)」について説明する箇所で中学レベルの数式が少しだけ使われている。本書末尾の付録では「素粒子の計算にチャレンジ」が設けられているが、ここには高校レベルの微積分と複素関数が使われている。場の量子論の数式のあらましや雰囲気をつかみたい方にとっては参考になるだろう。(数式の苦手な読者は読み飛ばしても構わない。)


以下は著者の吉田先生ご自身による本書の紹介である。

本書の「まえがき」から抜粋

2013年のノーベル物理学賞は、クォークや電子などの素粒子が質量を持つメカニズムを、半世紀以上も前に理論的に解明したヒッグスとアングレールに贈られた。前年に、このメカニズムから予想される粒子(いわゆるヒッグス粒子)の存在が確認され、「素粒子の標準模型」が一応の完成を見たとされるだけに、素粒子論の専門家にとっては、すっきりする授賞だったろう。

しかし、すっきりしないのが、専門家以外の人たちである。ヒッグス粒子の発見以来、素粒子に関する一般向けの解説書がいろいろと出版されたものの、その内容がきちんと理解できる人は、あまり多くないはずだ。こうした解説書を執筆する物理学者は、最先端研究の華やかな部分を中心に紹介しがちだが、素粒子の標準模型は、長い年月にわたる理論的発展の最終段階であり、これを理解するには、前提となるさまざまな知識が必要となるからである。

標準模型を理解するのに必要な知識には、場の量子論・ゲージ対称性とその破れ・摂動法・繰り込みなどがあり、いずれも、物理学専攻の学生を対象として、大学3、4年次から大学院で教えられる内容である。数式を使わずに説明するのはほとんど困難で、多くの解説書は、名称に言及することはあっても、内容にまで踏み込まない。しかし、こうした知識は、素粒子論の全体像を把握する上で不可欠であり、これなしには、そもそも「素粒子とは何か」についての基本的な理解すら得られない。

本書は、できるだけ数式を用いず、具体的なイメージに基づいて場の量子論やゲージ対称性についての解説を行い、一般の人にも「素粒子とは何か」を理解してもらおうという試みである。厳格な物理学者は、数式こそが物理法則を記述する唯一の言語であり、数式を使わない説明は粗雑なアナロジーにすぎないと批判するかもしれない。だが、素粒子論を理解するための第1歩としては、こうした試みも必要ではないだろうか。 吉田伸夫


本書の最後のほうで参考文献として吉田先生は次の本を紹介している。

1) 「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
2) 量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
3) ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
4) 光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫

2)と3)は物理学科3年以上の人が学ぶための教科書なので、僕としては1)と4)をお勧めしたい。これら4冊はすでにレビュー記事を書いているので以下の「関連記事:」で内容をご確認いただきたい。


関連記事:

光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02

明解量子重力理論入門:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e0ab2fd9fafe3568c24ed358dd4ea92c

「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/25297abb5d996b0c1e90b623a475d1aa

量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2b9d934a542cf04be54cbede8b16ecde

番組告知:NHK-BS1「神の数式 完全版」全4回
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d763b4d8161efae445f37e05ab23f1e6

強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

速報:2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e

ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/70cf88639447bd012cc0a70b0ccb2229


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫



まえがき

第1章:素“粒子"という虚構
- 素粒子論のわかりにくさ
- 原子論と場の理論
- 素粒子の実態が語られないわけ

第2章:場と原子
- 場とは何か
- 場の振動とその伝播
- 量子論の登場
- 幾何光学と波動光学
- 古典論から量子論へ
- 最小作用のげんりと量子論
- 波を閉じ込める
- バネの量子論
- 場の量子論と素粒子

第3章:流転する素粒子
- 素粒子の生成と消滅
- フェルミオンとボソン
- 素粒子と質量
- 素粒子と電荷
- 流転する素粒子
- 電磁波の偏向
- 内部空間の対称性

第4章:素粒子の標準模型
- グランドデザインのない世界
- 2次元世界の座標系
- 重力理論と計量の場
- ゲージ変換と対称性
- 外部空間から内部空間へ
- 素粒子の標準模型(ヒッグス場抜き)
- ゲージ対称性SU(3)
- ゲージ対称性SU(2)
- 対称性の破れ

第5章:摂動法と繰り込み
- 摂動法のアイデア
- スイングバイと摂動法
- 場の量子論の摂動法
- 量子電磁気学の摂動法
- 仮想粒子の意味
- 摂動法の困難とその克服
- 有効理論と繰り込み
- 標準模型の限界

第6章:何が究極理論を阻むのか
- 標準模型を拡張する試み
- 革新的理論の必要性
- 量子重力理論の候補
- 超ひも理論とは何か
- 超ひも理論の功罪
- 素粒子論はなぜわかりにくいのか?

おわりに
参考文献

付録:素粒子の計算にチャレンジ

昨夜の発表の感想: 宇宙誕生時の「重力波」観測 米チームが世界初

$
0
0

僕らはなんてすごい時代に生きているのだろう。昨夜は発表を聞きながらツイッターから目が離せない2時間となった。興奮してなかなか寝付くことができなかった。

詳しい解説は大栗博司先生や佐藤勝彦先生など専門の先生方にお任せし、取り急ぎ感想を述べておこう。


今回の発表は1日前に大栗先生のブログで告知と解説が行われていた。

原始の重力波(大栗博司のブログ)
http://planck.exblog.jp/21835733/

この記事によると138億年前の宇宙の始まりに発せられた、宇宙背景マイクロ波輻射(CMB)の偏光の観測をBICEP2という望遠鏡(掲載写真の右側の望遠鏡)を使って行い、その結果が発表されたことになる。

そして誕生から38万年たった「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる頃よりさらに昔の重力波が(間接的に)観測され、誕生時に非常に小さかった宇宙が急激に膨張したとする佐藤勝彦自然科学研究機構長らの「インフレーション理論」の正しさが裏付けられたのだという。私たちが光や電波で観測することのできる宇宙は事実上「宇宙の晴れ上がり」の手前までなので、それより遠くの宇宙、昔の宇宙の様子を詳しい精度で観測することができたのだ。


(出典:KEKによる解説ページ

宇宙の始まりとは?
http://cbr.kek.jp/outreach/how/about.html


大栗先生の記事によると、この観測結果は次のような意味を持っているそうだ。(解説は先生のブログ記事でどうぞ。)

(1) 原始重力波の確認は、インフレーション模型の検証になる。
(2) B−モード偏光の観測により、インフレーションの機構が明らかになる。
(3) 量子重力の効果の初めての観測である。
(4) 誕生38万年以前の宇宙の姿を見ることができる。


このうち僕が特に目を見張ったのは(3) 量子重力の効果の初めての観測だということ。つまり量子的な揺らぎを起源とする原始の重力波を世界で初めて観測したということだ。量子力学と一般相対性理論の深いつながりを観測データが示したわけである。またこれは「重力の量子化の直接の効果を見ている」ことであり、「ホーキング輻射を見ている」ことにもなるそうなのだ。

はるか彼方の宇宙を観測することは昔の宇宙を見ていることと同じである。それは遠くの宇宙から出る光や電磁波は地球に届くまでに途方もない時間がかかるからだ。私たちの目に届いている光は太古の昔にそのあたりの宇宙を出発した光なのである。だから上のらっぱ型をした宇宙の図では下にいくほど「遠い宇宙」=「昔の宇宙」を意味している。

もともとひとつの領域から爆発的に膨張した過去の宇宙は、四方八方の彼方に広がっていった。またその領域にあった莫大なエネルギーは宇宙全体に広がって薄まり、現在ではそのエネルギーは宇宙背景マイクロ波輻射(CMB)とか宇宙背景放射と呼ばれる電磁波として観測される。

そして宇宙の誕生の瞬間について言えば、宇宙は極限まで小さく、そこではミクロの世界の物理法則である量子力学と、マクロの世界で成り立つ一般相対性理論(重力理論)の両方が同じ空間領域と時間領域で成り立っていなければならない。NHKの「神の数式」という番組で解説されていたように、これまでこの2つの理論は共存させることができなかった。今回の観測で2つの理論の共存が示されたことにより、時空の構造を解明する糸口が開けたのだ。それは「超弦理論」や「量子重力理論」など現在私たちの周りにある時空間と物質の構造の解明に直結する研究内容である。


また重力波についても間接的な検証例がまた1つ追加されたという点が重要だ。直接的な検証はまだなされていないのだが、ウィキペディアの「重力波(相対論)」の記述にあるように間接的な検証は1974年に行われている。(ただし「原始重力波」の観測は今回が初めてのことだ。)

「1974年、ジョゼフ・テイラーとラッセル・ハルスは、連星パルサー PSR B1913+16 を発見し、その自転周期とパルスの放射周期を精密に観測することによって、その軌道周期が徐々に短くなっていることを突き止めた。この現象は、重力波によってエネルギーが外に持ち出されたことで起きるとされ、その周期減少率は一般相対論の予言値に誤差の範囲内で一致した。この業績により、2人は「重力研究の新しい可能性を開いた新型連星パルサーの発見」としてノーベル物理学賞(1993年)を受賞している。」


空間と時間をさざ波のように振動させて伝わる重力波の存在はアインシュタインの「一般相対性理論(1916年)」から導かれていた予想だ。

今回観測された重力波の痕跡:重力波の影響と考えられる特徴的なパターンがみられた。



アインシュタインは1918年と1937年に「重力波について」という論文を発表している。僕が6年前に書いたブログ記事で、論文の内容をおおまかにつかむことができる。そして重力波の進む速度は光速に一致することも1918年の論文で計算されている。

アインシュタイン選集(2):
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

[A8] 重力波について(1918年):ブログ記事
1.遅延ポテンシャルによる重力場の近似方程式の解
2.重力場のエネルギー成分
3.平面重力波
4.力学系による重力波の放射
5.力学系に対する重力波の作用
6.レビ・チビタの反論に対する答

[A9] 重力波について(1937年):ブログ記事
1.平面波の問題に対する近似解および重力波の生成
2.円筒型の波に対する厳密解


今回発表された論文や観測データの場所はここだ。

http://bicepkeck.org/

論文の結論としては「長かった B-mode 探しの時代は終わり、B-mode Cosmologyの時代が始まった」ということだそうだ。今後、より精度の高い観測が行われ、今後研究がさらに加速していく宇宙論と物理学上の新たな発見を待つのがとても楽しみだ。


その後、大栗先生はより詳しい解説記事を投稿されたのでお読みください。

原始の重力波 その2(大栗博司のブログ)
http://planck.exblog.jp/21848886/


参考書籍:今回の観測で検証されたインフレーション宇宙論について知りたい方には、次の3冊をお勧めしたい。

インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか:佐藤勝彦
宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス
宇宙,無からの創生―138億年の仮説はほんとうか(Newton別冊)

  


宇宙誕生時の「重力波」観測 米チームが世界初
佐藤氏らの急膨張理論を裏付け
(日本経済新聞:2014/3/18 1:44)

138億年前の宇宙の誕生直後に発生した「重力波」の証拠とされる現象を、世界で初めて観測したと米カリフォルニア工科大などのチームが17日、発表した。生まれたばかりの宇宙の姿を探る重要な手掛かりとなる。

誕生時に非常に小さかった宇宙が急激に膨張したとする佐藤勝彦自然科学研究機構長らの「インフレーション理論」を、観測面から強く裏付ける成果だ。

重力波は、物体が動いたときに重力の影響で発生し、空間や時間の揺れが波のように広がる。アインシュタインが相対性理論で存在を予言したが、直接観測されたことはない。

チームは、宇宙が生まれた38万年後に放たれた光の名残である「宇宙背景放射」と呼ばれる電波を、南極に設置したBICEP2望遠鏡で詳しく観測し分析した。その結果、宇宙初期の急膨張によって出た重力波が、光の振動する方向に影響を与え、方向が特定のパターンを描いていることを初めて発見。間接的に重力波の存在を確認したとしている。

インフレーション理論は1980年代初めに、佐藤氏や米国のアラン・グース博士がそれぞれ提唱。宇宙が火の玉で始まったとするビッグバン理論が説明しきれない部分を解決し、広く受け入れられている。



重力波、誕生間近の宇宙膨張の痕跡 米チームに「ノーベル賞級」との評価
(MSN産経ニュース 2014.3.18 14:51)

138億年前の「重力波」の証拠を観測したと発表した米カリフォルニア工科大や米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのチームは、日本時間18日未明の記者会見で、誕生直後の宇宙の姿を初めて観測した成果だと強調した。海外メディアや英科学誌は速報で成果を伝え「ノーベル賞級」と評価している。

生まれたばかりの宇宙は急激に膨張したと考えられており、その際に発生した重力波の痕跡を今回、初めて見つけたとしている。

チームによると、痕跡から重力波の強さも測定。重力波を発生させた急膨張のエネルギーを計算するのにつながり、宇宙の始まりに起きた現象を、これまでにないほど正確に知ることができるという。

英BBC放送(電子版)は「成果は注意深く検証されなくてはならない」としながらも「一方ですでにノーベル賞の声が上がっている」と付け加えた。英科学誌ネイチャーは、緊急ニュースとして速報した。


用語解説:

重力波 物体が加速しながら運動するときに、周囲に伝わる時間や空間の揺れ。重力波は極めて小さいため、高密度で大きな質量の物体が動かないと観測は難しい。ブラックホールの衝突や中性子星の自転などで観測されると期待されている。アインシュタインが理論的に存在を予言したが検出されておらず、世界中で発見が競われている。日本は、岐阜県飛騨市の地下に一辺が長さ約3キロのL字形の検出器を建設中。


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

僕にとってのあの日 (地下鉄サリン事件)

$
0
0

今日は地下鉄サリン事件からちょうど19年目。事件がおきたのは1995年3月20日(月)の朝のことだ。都内の地下鉄で通勤、通学していたすべての人にとって、この日のことは今でも生々しく記憶に残っていることだろう。


僕が事件のことを知ったのはその日、たまたま人間ドックを受診していたクリニックの待合室のテレビからだった。午前9時に受付をすませ、ガウンに着替えてソファに座って始まるのを待っていたところ目の前のテレビ画面に掲載画像のような映像が映ったのだ。

「えっ、何か事故がおきたの??ガス爆発??」

大変な事態であることはすぐにわかったが、まさかそれが通勤ラッシュで混み合う5本の地下鉄をターゲットにした同時多発テロだということは思いもつかなかった。よくわからないけれどひどいことになったと思っているうちに人間ドックの検査が始まった。


この事件を含め、後に「坂本堤弁護士一家殺害事件」、「松本サリン事件」、「地下鉄サリン事件」は「オウム3大事件」と呼ばれることになる。これ以外にもこの教団はたくさんの事件をおこしており、ウィキペディアの「オウム真理教事件」のカテゴリーには1989年から1995年にかけてこの教団がおこした31の事件が掲載されている。おおまかな流れと犯行にかかわった信者一覧はこのページで確認できる。

オウム真理教はもともと1984年にありふれたヨガのサークルとして始まり、1989年に宗教団体を設立、そして「真理党」という政治団体を作り翌年の衆院選に幹部ら25名を擁立していた。(全員落選)地元の京王線笹塚駅前で教祖の麻原彰晃のお面をかぶった7〜8名の信者が「教祖の歌(?)」を歌いながら選挙活動をしていたのを僕はよく覚えている。妙に明るく、怪しげな宗教団体というのが僕が抱いていた印象だ。その後、殺人を含む多くの事件をおこすのだが、犯行が教団によるものだという決定的な証拠がないまま5年の年月が経ってしまう。教団の本当に恐ろしい部分は社会に対して一切隠されていたのだ。

オウム真理教は宗教活動のかたわら多彩な事業を行っていた。業種は、コンピューター事業、建設、不動産、出版、印刷、食品、家庭教師派遣、土木作業員などの人材派遣など多岐におよび、さながら総合商社の観を呈していた。特に中心となっていたのは「マハーポーシャ」という名前のパソコンショップの売り上げで、公安調査庁によると年間70億円以上の売り上げ(1999年当時)があり、純利益は20億円に迫る勢いだったという。


あれから19年も経っているので地下鉄サリン事件のことを知らない若い人が増えている。当時通勤、通学で地下鉄を利用していたのは高校生以上だろうから今では35歳以上になっている。事件がおきたのはポケベルの全盛期、PHSが少しずつ出回り始めた頃のことだ。ダイヤルアップ接続のインターネットはあったけれども新聞社やテレビ局はニュースのホームページを開設していなかった。NTTの災害伝言ダイヤルもなかったから安否の連絡手段は公衆電話しかなかった。(NTTの災害伝言ダイヤルは阪神・淡路大震災をきっかけに開発され、1998年3月31日から稼動)

死者13人、負傷者約6300人という犠牲者を出した地下鉄サリン事件についてはウィキペディアをお読みいただきたい。この宗教教団があろうことか無差別大量殺人だけでなく国家転覆をしようとしていたことがわかるはずだ。(参考ページ)地下鉄サリン事件の後は都内上空のヘリコプターからのサリン大量散布さえ企てられていたのだ。

地下鉄サリン事件:ウィキペディアの記事
オウム真理教:ウィキペディアの記事


当時僕の勤務しているオフィスは丸ノ内線の赤坂見附駅から徒歩10分のところにあった。フレックスタイム制で午前10時頃出社していたから事件が通常の勤務日だったら、午前8時過ぎにおきたこの事件は2時間後に会社で知ることになっていたはずだ。

しかし、たまたまこの日は人間ドック。受診場所は千代田線の赤坂駅から徒歩12〜3分のところにあるクリニックなので、事件後の混乱に遭遇していたはずなのだ。

ところが僕はそうならなかった。それは僕が間違っていつもの赤坂見附で下車してしまい、千代田線に乗り換えなかったからなのである。いつもより早く起きて頭がぼーっとしていたから、毎日下車している駅でうっかり降りてしまい、次の電車を待たずにそこから徒歩でクリニックまで行ったのが幸いしたのだ。


でも僕はどれくらい危ないところまで接近していたのだろうか?
また、もし僕が予定通り千代田線に乗り換えていたら、どうなっていたのだろうか?


ウィキペディアには事件の日の電車の時刻が掲載してあるので、あの日の朝、僕がたどっていたルートを検証してみた。

当時の僕の通勤経路は丸ノ内線の方南町から中野坂上で乗り換えて赤坂見附に行くというルートだった。この日は赤坂見附では降りずに国会議事堂前駅または霞が関駅まで行って、そこから千代田線に乗り換えてクリニックのある赤坂駅で降りる予定だった。

1995年頃の丸ノ内線は旧車両だった。これは中野坂上に停車中の旧車両。



都内の地下鉄に詳しくない方のために丸ノ内線の路線図を載せておく。当時はまだ西新宿駅は開業していなかった。方南町-中野坂上間は3両編成の支線として運行されている。



予定通りに行けば、次のようなタイムテーブルで僕は人間ドックに向かうはずだった。

方南町 8:09
中野坂上 8:15
赤坂見附 8:30
国会議事堂前 8:40
霞が関 8:41
赤坂 8:45

ウィキペディアを参考にしてその日の朝の丸ノ内線と千代田線の状況を時系列に従って並べると次のようになった。現在の時刻表を使っているので1〜2分の違いがあること、負傷者がでて以降の電車内はパニックだったので記載した時刻は不正確かもしれないことご容赦いただきたい。

丸ノ内線(池袋発荻窪行)
1人が死亡し、358人が重症
池袋 7:47
御茶ノ水 7:58 - サリン散布
霞が関 8:08
国会議事堂前 8:09
中野坂上 8:18 - 重症の負傷者を降ろす。そのまま運行を続けたため負傷者が増え続け被害が拡大した。
荻窪 8:37
荻窪 8:42
新高円寺 8:46 - 運行停止

丸ノ内線(荻窪発池袋行)
約200人が重症
新宿 7:39
四谷 7:46 - サリン散布
国会議事堂前 7:52
霞が関 7:53
池袋 8:30
池袋 8:35
本郷三丁目 8:44 - 駅員がサリンのパックをモップで掃除
国会議事堂前 9:27 - 運行停止

千代田線(我孫子発代々木上原行)
2人が死亡し、231人が重症
新御茶ノ水 8:02 - サリン散布
二重橋 8:06
日比谷 8:08 - 負傷者を降ろす
霞が関 8:10 - 駅員がサリン排除(作業に何分かかったか情報得られず。)
国会議事堂前 8:11以降 - 運行停止

そして被害者がいちばん多かったのが日比谷線だ。僕はこの路線は通常使わない。中目黒行きの日比谷線では6両の車両で2475人の乗客が重症を負っていたのだ。2500人近くの人が死に物狂いで車両から逃げ出す光景をあなたは想像できるだろうか?5つの路線を合わせると負傷者は6300人。これだけの数の患者を一度に受け入れるのはたとえ大きな病院でも1つでは無理だ。救急車も足りない。そのような状況で都内のあちこちの病院に負傷者が搬送された。

日比谷線(中目黒発東武動物公園行)
1人が死亡し、532人が重症

日比谷線(北千住発中目黒行)
8人が死亡し2475人が重症


これらを踏まえるとその朝、僕は次のような状況に遭遇していたことがわかった。もし赤坂見附で下車せず千代田線に乗り換えようとしても電車はすでに運行停止していたからクリニックにはたどりつけていなかった。

方南町 8:09
中野坂上 8:15 - 僕が乗り換えた3分後に行き先と反対方向ホームの丸ノ内線から重症患者が降ろされていた。
赤坂見附 8:30 - 実際はここで僕は下車した。
国会議事堂前 8:40 - サリン散布された電車が通過した30分後と48分後に駅に到着。僕は乗り換えできず立ち往生。駅には負傷者多数。
霞が関 8:41 - サリン散布された電車が通過した30分、33分、49分後に駅に到着。僕は乗り換えできず立ち往生。駅には負傷者多数。
赤坂 8:45

ずいぶんきわどかったのだなとあらためて思う。

上りの丸の内線は新宿発の電車に犯人が乗り込んだので、中野坂上から乗る僕が乗り合わせることはなかったが、その電車が荻窪発の上りだったらと思うとぞっとする。そしてもし僕がせっかちで30分早く家を出ていたらサリン中毒で負傷していた可能性だってあったのだ。


オウム真理教はきわめて特殊な団体だから同じような団体がもし今あったとしても自分はきっと入らないだろうなどと思わないほうがよい。オウム真理教の勧誘方法はとても巧みだった。弁護士や医者、科学者、理数系の大学院生など優秀な人材がたくさん入信し凶悪犯罪を遂行するために優秀な頭脳と技術が利用されていた。

恋人や異性の友達がいなくてさびしい思いをしている理数系大学生ならば、親身になって話をしてくれる清楚な美人やイケメンの誘いを断るのはきっと無理なことだろう。なぜなら最初のうちは彼らは勧誘員だとは名乗らないのだから。そのような「隠れ勧誘員」との出会いは普段生活しているいろいろな場所にあったのだ。きっかけはサークルの仲間かもしれなかったし、友達の紹介、合コン、買い物先や食事場所の店員かもしれなかった。このようにして信者はますます増えていった。

麻原やその幹部、信者は当時バラエティ番組にも普通に出演して教団やヨガの宣伝活動を行っていた。僕は特定のリンクとしてはあえて紹介しないことにする。今もたくさんの写真動画がネット上にアップされている。当時の雰囲気を知りたい方は検索してみるとよいだろう。この人たちが国家転覆を企む狂気の殺人集団だと当時はとても信じられなかったことを納得いただけるはずだ。社会はこの団体に対してあまりにも無防備だった。オウム真理教の信者獲得は密かにロシアを中心に海外まで及び、ロシアでは信者に対する軍事訓練も行われていた。


僕はむしろ今の時代のほうがこのような団体に入信してしまう社会的な素地がそろっているように思う。社会に不満を持っている人、深刻な悩みを抱えている人、目新しい宗教やスピリチュアルな方面に関心を寄せる人口は19年前よりも増えていると日頃僕は感じている。そういう人がすべて入信してしまうわけではないが、潜在的な信者は一定の割合いるであろうことは今も昔も同じだと思う。そしてSNSの普及によって勧誘や布教活動は昔に比べてはるかに容易かつ巧みに行える時代になっている。


地下鉄サリン事件を始めとするオウム真理教関連の事件の記憶は後世に伝えていかなければいけない事件のうちのひとつだ。僕はこの記事をこの教団や事件のことを知らない若い世代の方に読んでもらいたい。今年に入ってからオウム真理教関連の裁判が始まっているし、一昨日はご遺族によってつくられた被害者の会が東京都内で集会を開いたそうだ。(ニュース記事

今でも数多くの被害者が後遺症に苦しんでいることを忘れてはいけない。


人間ドックを終えて僕がオフィスに着いたのは午後2時頃だった。上司や同僚から事件のあらましを聞いて、会議室へテレビを見に行った。しばらくすると社内放送があり、安全な手段で早めに帰宅するよう指示があった。興味本位で僕は丸の内線で帰宅したのだが電車はがらがらで、ひとつの車両に乗客が2〜3名という有様だった。

もちろんその日の夜のテレビ番組はこの事件一色だった。そして翌日は祝日だったので一日中報道番組にを見て過ごすことになった。


ご注意:今日のブログ記事はいささか危ないテーマなので慎重を期して書かせていただいた。(そのためにあえて書かなかったこともある。)僕を含め他の読者に不快な思いをさせる可能性のあるコメント、宗教的な内容が濃いコメントなどをいただいた場合、公開を承認しないことがありますので、あらかじめご了承いただきますようお願いします。トラックバックについても同様とさせていただきます。


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

番組告知:NHK BS1「神の数式」二カ国語版全2回

$
0
0

昨年9月に放送された「神の数式」が二ヶ国語版としてリメイクされ、日曜の昼に2話連続放送されるそうだ。

番組表をよく見ると昨年9月の放送とはタイトルが少し違うのと、放送時間がぞれぞれ6分ほど短くなっている。それでも見逃した方には無料で見れるチャンスであるには違いない。

明後日放送されるのは2話構成の「短縮版」だが、昨年12月に放送された4話構成の「完全版」の二ヶ国語版もいずれ放送されることを期待したい。


番組情報:
人類の思索の歴史。それは、全宇宙の謎を解く唯一無二の“神の数式”を追い求めた歴史でもあった。ニュートン、アインシュタイン以来、科学者たちは「あらゆる自然現象は、最終的には一つの数式で説明できるはずだ」と信じてきたのだ。そして今、ヒッグス粒子の発見によって、人類は“神の数式”の輪郭をつかもうとしている。最速のコンピューターさえも届かない人類の知のフロンティアを大胆に映像化。天才たちの苦闘を描く。

神の数式(二カ国語版)
第1回 「この世は何からできているのか」
2014年3月23日(日)
午後0時00分〜0時52分(NHK BS1)
宇宙はどこから来たのか。この世は何でできているのか。人類の究極の謎を解くとされる「神の数式」。ヒッグス粒子の発見で、その輪郭に迫った天才達の100年の苦闘を描く

神の数式(二カ国語版)
第2回 「宇宙はなぜ生まれたのか」
2014年3月23日(日)
午後1時00分〜1時52分(NHK BS1)
宇宙はなぜ始まったのか。アインシュタインやホーキングら物理学の巨人たちが挑んできた究極の謎。新たに登場した超弦理論は果たしてそれを説き明かす「神の数式」なのか。


なお「完全版」はNHKオンデマンドから視聴することができる。

神の数式 完全版
第1回 「この世は何からできているのか〜美しさの追求 その成功」
第2回 「“重さ”はどこから生まれるのか〜自発的対称性の破れ」
第3回 「宇宙はなぜ始まったのか〜残された“最後の難問”〜」
第4回 「異次元宇宙は存在するか〜超弦理論“革命”〜」

NHKオンデマンド: 第1回 第2回 第3回 第4回


この番組については、これまでに6本の記事を書いているので参考にしていただきたい。

番組告知:NHKスペシャル「神の数式」(2013年 9月21日、22日)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1a809c46b31c32b3b3c84dc0be881ddc

NHKスペシャル「神の数式」の感想
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a2368bbcee58771d16dbcb4613dc077d

解説:NHKスペシャル「神の数式」第1回:この世は何からできているのか
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5f0430e3fed08f6947d5efbe9559fbbd

解説:NHKスペシャル「神の数式」第2回:宇宙はどこから来たのか
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7ddecf5c37c9ef0e467bb5be8f168898

番組告知:NHK-BS1「神の数式 完全版」全4回 (2013年12月24日〜27日)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d763b4d8161efae445f37e05ab23f1e6

番組の感想:NHK-BS1「神の数式 完全版」
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d63e471fcfd568bb2c5646646792e3cb


一般読者向けの参考書籍:

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司 → 素粒子の「標準理論」について知りたい方はこの本をどうぞ。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863

素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bcbaebb9f2a77b1bd63e3928f6bd6e9f


応援クリックをお願いします!
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 


Viewing all 975 articles
Browse latest View live