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ふたたびメゾンブルトンヌ ガレット屋 (渋谷区笹塚)

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今週末のフランス語の授業は土曜の午後5時半から2時間。生徒は2人ともそろった。

授業の後、フランス語の実地研修を兼ねて、笹塚十号坂商店街にあるガレット屋さんに連れて行き、生徒と夕食をとることにした。前回この店で夕食をいただいたのはちょうどひと月前である。


10年前にオープンした店で、David(ダヴィッド)さんと英子さんご夫妻が経営している。

メゾン ブルトンヌ• ガレット屋(フランス語ホームページ
http://maisonbretonne-galette.com/

Facebook: https://www.facebook.com/galette/


2450円のコースを注文した。

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以下、3人で食べたもの、飲んだものを載せておこう。写真を撮るのを忘れてしまったが、このほか白ワインを3人で1本いただいている。


























楽しい夜になった。時間はあっという間に過ぎ、店を出たのは午後11時過ぎである。生徒は2人とも満足そうだった。

このような記事を書くと、いかにもリア充っぽい生活をおくっているように見えるが、実際はそうではない。ふだんの食生活はいたって質素である。


この店は有名で、たびたびテレビで紹介される。

ヒルナンデス! メゾンブルトンヌ.ガレット屋 笹塚


ブルターニュ出身のシェフが焼き上げる絶品ガレット、笹塚「メゾンブルトンヌ ガレット屋」


メゾン ブルトンヌ ガレット屋 笹塚



笹塚にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。


関連記事:

スタンダード佛和辞典・和佛辞典
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fa9b284d2cda36dccf53c6071e057577

フランス語の辞書はどれがいい?
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/04d001a3857a63e9ec104903ccae1a83

発売情報:カシオ電子辞書 XD-Z7200(2018年フランス語モデル)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b49df68133da2c1093cd31091f73263

フランス語を教え始めた
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/da69b2a85fb8e10b225867d3fe2731da


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Cube root 110,592 using abacus (1/3-multiplication table method 3)

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[Set 110,592 on Mr. Cube root]Zoom

[Japanese]

Following the last time, today's example is about actual solution of Cube root using abacus.

Today's example is simple - basic 1/3-multiplication table method, root is 2-digits case and we require root reduction in the steps. You can check the Index page of all articles.

Cube root methods: Triple-root method, constant number method, 3a^2 method, 1/3-division method, 1/3-multiplication table method, 1/3-multiplication table alternative method, Multiplication-Subtraction method, 3-root^2 method, Mixing method, Exceed number method, Omission Method, etc.


Abacus steps to solve Cube root of 110,592
(Answer is 48)

"1st group number" is the left most numbers in the 3-digits groups of the given number for cube root calculation. Number of groups is the number of digits of the Cube root.

110,592 -> (110|592): 110 is the 1st group number. The root digits is 2.


Step 1: Place 110592 on GHIJKL.


Step 2: The 1st group is 110.


Step 3: Cube number ≦ 110 is 64=4^3. Place 4 on C as the 1st root.


Step 4: Subtract 4^3 from the 1st group 110. Place 110-4^3=046 on GHI.


Step 5: Focus on 46592 on HIJKL.


Step 6: Divide 46592 by 3. Place 46592/3=15530.6 on HIJKLM.


Step 7: Focus on 15 on HI.


Step 8: Repeat division by triple root 4 until 4th digits next to 1st root. 15/4=3 remainder 3. Place 3 on E.


Step 9: Place remainder 03 on HI.


Step 10: Divide 35 on IJ by current root 4. 35/4=8 remainder 3


Step 11: Place 8 on F.


Step 12: Place 03 on IJ.


Step 13: Divide 33 on JK by current root 4. 33/4=8 remainder 1


Step 14: Place 8 on G.


Step 15: Place 01 on JK.


Step 16: Divide 38 on EF by current root 4. 38/4=9 remainder 2


Step 17: Place 9 on D as 2nd root. (Temporary root)


Step 18: Place 02 on EF.


Step 19: Cannot subtract 9^2=81 from 28. Temporary root 9 is excessive root.


Step 20: Subtract 1 from excessive root 9. Place 8 on D.


Step 21: Return current root 2 on E. Place 2+4=6 on F.


Step 22: Place 68-2nd root^2=68-8^2=04 on FG.


Step 23: 04 on FG x 1st root 4 + 01 on JK. Place 4x4+1=17 on JK.


Step 24: Subtract 2nd root 8^3/3 from 176 on KLM. 176-8^3/3=0


Step 25: Place 000 on KLM.


Step 26: Cube root of 110592 is 48.


Final state: Answer 48

Abacus state transition. (Click to Zoom)


It is interesting to compare with the Triple-root method.


Next article is also 1/3-multiplication table method.


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed

Index: Square root and Cube root using Abacus
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f62fb31b6a3a0417ec5d33591249451b

Cube root 110,592 using abacus (Triple-root method 3)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ca623f02e6f5fdfef4221a5c43ea1a95


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開平と開立(第41回):110,592の算盤による開立(三分九九法3)

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開立はん」に110,592を置いたところ拡大

[English]

前回に続き、今回も算盤での開立の手順を解説する。三分九九法で根が2桁で、過大根が発生する場合だ。全体の目次はこのページを開くと見ることができる。

開立(立方根):3根法(3倍根法、3商法)、定数法、3a^2法、三除九九、三分九九法、三分九九法別法、乗減法(変商法)、3根^2法、折衷法、過大数開立、省略開立など


算盤による110,592の3乗根の解法(答は48)

第1群の数とは立方根を求める数を3桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の3桁のことである。群の数が根の桁数となる。

110,592 -> (110|592): 110が第1群の数、根の桁数は2。


手順1: 110592をGHIJKLに置く。


手順2: 第1群は110。


手順3: 110以下の立方数は64=4^3。4を初根としてCに立てる。


手順4: 110-64=046をGHIに置く


手順5: HIJKLの46592に注目する。


手順6: 46592を三分する。すなわち46592/3=15530.6をHIJKLMに置く。


手順7: HIの15に注目する。


手順8: 初根の次4根まで既根4で割る。15/4=3余り3。商3をEに置く。


手順9: 余り03をHIに置く。


手順10: IJの35を既根4で割る。35/4=8余り3


手順11: 商8をFに置く。


手順12: 余り03をIJに置く。


手順13: JKの33を既根4で割る。33/4=8余り1


手順14: 商8をGに置く。


手順15: 余り01をJKに置く。


手順16: EFの38を既根4で割る。38/4=9余り2。


手順17: 商9をDに置き次根(仮根)とする。


手順18: 余り02をEFに置く。


手順19: 28から9^2=81は引けないから仮根9は過大根である。


手順20: 過大根9から1を引き8を得てDに置く。


手順21: 2に既根4を還元して2+4=6をFに置く。


手順22: 68-次根^2=68-8^2=04をFGに置く。


手順23: 平方減の余り4に初根4をかけ、JKの01に足す。4x4+1=17をJKに置く。


手順24: KLMの176から次根8^3/3を引く。176-8^3/3=0


手順25: 000をKLMに置く。


手順26: 立方根は48と求まる。


最終状態: 答 48


珠の状態推移を表にすると次のようになる。(クリックで拡大)


同じ問題の3根法での解法と比べてみてほしい。


次回も三分九九法の計算手順を取り上げる。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb

目次:算盤による平方根、立方根の計算(開平、開立)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bb0449f357398a2c24026f33af7f70ee

開平と開立(第19回):110,592の算盤による開立(3根法3)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cdd56f53cb88f61c0bf4e03ab9681e90


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教材紹介、第二種電気工事士試験の勉強(その2)

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電気数学の基礎に役立つ3冊(拡大

前回の記事では、合成抵抗の測定など電気の実験をするために購入したものを紹介した。今回は教材の紹介だ。

第二種電気工事士試験は筆記(120分)と技能(40分)の2回に分けて行われる。筆記試験に合格した人だけが技能試験を受けることができる。両方とも合格すれば一般家庭の電気工事をすることができるようになるのだ。

合格率は筆記試験が6~7割、技能試験が5~6割なので、合わせると3割~4割といったところ。ちゃんと勉強しさえすれば合格するので、国家資格としては易しいほうだ。

第二種電気工事士
http://www.shiken.or.jp/examination/e-construction02.html


教材の紹介

定番なのは毎年改訂されるこの2冊。筆記試験用と技能試験用がそれぞれ1冊。これを使って勉強すれば十分だと思う。

ぜんぶ絵で見て覚える第2種電気工事士筆記試験すいーっと合格(2018年版)
ぜんぶ絵で見て覚える第2種電気工事士 技能試験すい~っと合格(2018年版)~入門講習DVD付

 

その他のテキスト: Amazonで検索


しかし、この大型本を持ち運ぶのは大変だ。それに途中で挫折して無駄本になりかねない。いつでも学びやすく、無駄な出費をおさえるように、次の教材を選んでみた。

まず、このサイトを中心に学んでいく。スマホ対応サイトだからどこででも勉強できるのがよい。

第二種電気工事士(筆記試験対策、技能試験対策)
https://eleking.net/

筆記試験対策入口 技能試験対策入口 電気数学入口

数学が苦手でも電気工事士試験に合格できる!3つのポイント
http://denkikoujishi-shikaku.com/suugaku.html

高校で数学Iしか学んでいない人は、次の3冊を読んでおくとよい。第二種電気工事士試験では三角関数が特に重要。虚数や微積分は差し当たり不要だが、今後のことを考えると学んでおくべき内容だ。

Newtonライト『三角関数のきほん』」(詳細
Newtonライト『虚数のきほん』」(詳細
Newtonライト『微積のきほん』」(詳細
  


上記の試験対策ページが難しいと感じる方は、中学理科からおさらいしておこう。

中学理科 No.8 電流の流れ方
http://www.hello-school.net/harorika008.htm

中学理科 No.9 電流のはたらき
http://www.hello-school.net/harorika009.htm

中学理科・並列回路の合成抵抗を簡単に求める
http://blog.livedoor.jp/veritedesu/archives/1877669.html


高校レベルの電気の勉強はこちらがよい。これを選んだのは旧課程で中古本が安く買えるからだ。現行課程の本が欲しい方は「大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[電磁気編]が面白いほどわかる本」をお求めいただきたい。

大学入試 漆原晃の 物理I・II[電磁気編]が面白いほどわかる本



テスターの使い方

テスターの使い方は、このページで学ぼう。

テスターの使い方(導通チェック、電圧計測、電流計測、抵抗計測)
http://under-construction.hatenablog.com/entry/2016/12/15/010325

テスター(回路計)の使い方/電圧,電流,抵抗,導通
http://hikkirabo.com/tesutanotsukaikata/

テスターの使い方を学んでみようか -- 初歩の初歩
http://55life555.blog.fc2.com/blog-entry-1273.html

テスターの使い方を学んでみようか -- コンデンサ容量とか
http://55life555.blog.fc2.com/blog-entry-1274.html


動画で学ぶ

特に技能試験対策は動画で学ぶとよい。

筆記試験対策動画:

日本エネルギー管理センター事務局(再生リスト)
YouTubeで開く

第2種電気工事士筆記試験対策
YouTubeで開く

技能試験対策動画:

電工試験の虎(再生リスト)
YouTubeで開く

第二種電気工事士 技能試験 候補問題No 電気工事士奪取プロジェクト
YouTubeで開く


その他

電気の計算
http://kikai.click/electrical/

抵抗の計算
http://kikai.click/resistance/

電気関連計算サイト(CASIO)
http://keisan.casio.jp/menu/system/000000000750


数の単位
http://www.ashiya.ne.jp/nano2.htm

SI単位について
http://www.sp.u-tokai.ac.jp/kbutu/tanni.htm

単位 数え方の図解
http://mellow.na.coocan.jp/units.htm


抵抗器のカラーコード1
http://www.jarl.org/Japanese/7_Technical/lib1/teikou.htm

抵抗器のカラーコード2
http://part.freelab.jp/s_regi_list.html

抵抗器のカラーコード計算1
https://www.weerstandcalculator.nl/japanese.php

抵抗器のカラーコード計算2
http://keisan.casio.jp/exec/user/1232501536


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例の画像で遊んでみた。

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ツイッターで最近流行っている画像遊び。面白そうなので理数系ネタで僕もやってみた。

笑いというものは粒のようなツボにはまればたくさんRTや「いいね!」をしてもらえるし、ツイッター上であっても波のように伝わっていく。そしてある閾値を超えれば大ウケして光電効果のように笑いがどっと放出され、RT数は一気に上がる。

笑いは量子的だなと思った。

せっかくたくさん作ったからブログでも紹介しておこう。

まず物理学ネタである。いちばんウケていただいたのがこのツイート。


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調子に乗って続けたのがこちら。


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そしてあと2つが数学ネタだ。もともと最初にツイートしたのは、この『数学原論』ネタである。比較的「いいね!」をたくさんいただけた。


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とりあえず今日はここまで。新作がまたできたら、ここに追記しておく。


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Googleで「プリンキピア」や「Principia」を検索すると...

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今日は近代科学誕生の礎となった名著『自然哲学の数学的諸原理(1687)』の話。

これは17世紀には知識人の間で広く理解されていたユークリッド幾何学を使って、アイザック・ニュートンが力学3法則や万有引力の法則を発表した歴史的著作物である。通称は「プリンキピア(Principia)」で「原理」という意味だ。


ところが、この「プリンキピア」や「Principia」というキーワードでGoogle検索すると、まずいことがおこる。「自然哲学の数学的諸原理」で検索しても同じことだ。

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右上に表示されている写真はラテン語原本ではなく日本語版。実は映っているのは僕が所有している本なのだ。

スマホで検索しても同じである。



表示されている写真は、2014年に投稿したこの記事から取られていることがわかる。

ブログ記事を開く



ちょっとこれはまずいのではないか。「プリンキピア」と日本語で検索したとしてもラテン語の原書の写真が表示されるべきなのだ。たとえば次のような写真。






Googleから「すべて」で「プリンキピア」を検索すると検索順位は「自然哲学の数学的諸原理 - Wikipedia」が1位で、写真が引用されたブログ記事は13位である。なぜ写真が引用されるのかわからない。

同様のことは「ファインマン物理学」という検索ワードでも以前おきていた。(現在は正しい写真が表示されている。)


何が問題かというと、もし僕がいたずらしてブログ記事の画像を差し替えたら、それが表示されてしまうことなのだ。たとえば、直前の記事で使ったこの画像と差し替えたら、さずがにまずいことになるだろう。(もちろん、そんなことをするつもりはない。)




アイザック・ニュートンに申し訳ない気がするし、この書物を検索する方々にも迷惑な話。Googleの検索エンジン担当の方には、早急に解決してほしいものだ。


関連記事:

Kindle版で復刊: 日本語版プリンキピア(自然哲学の数学的原理):アイザック・ニュートン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a5ce0252019a5d9b63c20200f019e199

日本語版「プリンキピア」が背負った不幸
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bff5ce90fca6b8b13d263d0ce6fc134e

例の画像で遊んでみた。
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07ecc1d77b373a76cd5007a02405204a


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最近買った数学書、物理学書

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今は樺沢宇紀先生が和訳された「半導体デバイスの基礎」の上巻を読んでいるところだが、そうこうしているうちに気になる本が次々とでてきたので、つい買ってしまった。

これまでにも何度か言っているが「本は読まなければただの紙」である。数学書や物理学書は「半導体デバイスの基礎」上中下巻の間のタイミングでそれぞれ読んでいくことにする。(積読の言い訳になっていないことは承知している。)

雪江先生の1冊を除き、どれも比較的読みやすい「準教科書」、「副読本」ばかりなので、順番に紹介しよう。


買ってしまった数学書

いま理系人の間で話題になっている本。集合や位相の重要性は大学数学をひととおり学んだ人ならよくわかっていると思うが、高校卒業したての人がその意義を感じるのはほぼ無理である。なぜ学ぶのかわかっていないと、モチベーションがなかなか上がらない。大学に入学したての新入生にお勧めしたい1冊だ。

「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史」(Kindle版


内容:
抽象的でわかりづらいと評判のよくない因果な科目「集合と位相」。そもそもいったいなぜこんなことを学ぶの? 本書を読めば「集合と位相」に刻まれた数学者たちの創意工夫,そして数学の発展の過程がみるみる見えてきます。
2018年3月6日刊行、224ページ。

(こんな方におすすめ)
・「集合と位相」の授業でつらい思いをしている学生の方
・現代数学に興味がある一般の方

(目次)
第1章 フーリエ級数と「任意の関数」
第2章 積分の再定義
第3章 実数直線と点集合
第4章 平面と直線は同じ大きさ?
第5章 やっぱり平面と直線は違う
第6章 ボレルの測度とルベーグの積分
第7章 集合と位相はこうして数学の共通語になった


次はこれ。昨年秋に読んで紹介した「はじめて学ぶリー群: 井ノ口順一」の姉妹本である。これを読み終えてから「リー環の話:佐武一郎」や「復刊 リー環論:松島与三」あたりに進みたい。

はじめて学ぶリー環―線型代数から始めよう


内容:
使えるリー環論のすすめ。本格的にリー群・リー環について学ぶための線型代数の本。
2018年2月1日刊行、280ページ。


そして先日読んだばかりの「天に向かって続く数: 加藤文元、中井保行」で知ったp進数に触発されて買ったのがこちら。雪江明彦先生の「整数論3部作」のうちの1冊目だ。今日紹介する本の中では、いちばん難しい。準教科書ではなく教科書である。

整数論1: 初等整数論からp進数へ


内容:
全3巻の整数論の教科書。
古より人々を魅了し続けてきた整数の世界。現代では、群・環・体の理論や複素関数論などを用いて、いっそう深い結果が示されています。本シリーズでは、初等整数論から現代的な整数論の初歩に至るまで、さまざまな話題を一貫してやさしく解説します。親切な証明、数多くの具体例と練習問題、応用例や先の分野の案内を通じて、整数論の感動を届けます。第1巻では、初等整数論から始め、代数的整数とp進数の基礎までを学ぶ。群・環・体の初歩も丁寧に解説。
2013年8月2日刊行、371ページ。


近いうちに買ってしまうと思われる数学書

4月14日発売予定の数学ガール(難しめのシリーズ)の6冊目。これも買わずにはいられない。僕はKindle版で買うつもり。世界中の数学者が検証に何年もかかったポアンカレ予想の証明を、どのように素人の読者に紹介するのが、とても気になっている。現在予約受付中。

数学ガール/ポアンカレ予想


内容:
数学ガール、ポアンカレ予想に挑む!!
《ポアンカレ予想》は、20世紀の初頭にフランスの数学者アンリ・ポアンカレが提示した位相幾何学の問題であり、2000年にクレイ数学研究所が発表した7つの数学の難問(賞金100万ドルのミレニアム問題)の一つです。百年間、誰も証明できなかったこの問題が、 21世紀の初めにロシアのグリーシャ・ペレルマンによって証明されました。
本書は、ポアンカレ予想をテーマに、トポロジー(位相幾何学)、基本群、非ユークリッド幾何学、微分方程式、多様体、フーリエ展開などの数学的題材を解き明かしていきます。大学受験を迎えた「僕」の苦悩と数学ガールたちとの交流も軽やかに描かれます。
2018年4月14日刊行、416ページ。

『数学ガール/ガロア理論』の刊行から6年。「数学ガール」ファンはもちろん、すべての数学愛好家に捧げる一冊です。

▼内容構成
あなたへ
プロローグ
第1章 ケーニヒスベルクの橋
第2章 メビウスの帯、クラインの壺
第3章 テトラちゃんの近くで
第4章 非ユークリッド幾何学
第5章 多様体に飛び込んで
第6章 見えない形を捕まえる
第7章 微分方程式のぬくもり
第8章 驚異の定理
第9章 ひらめきと腕力
第10章 ポアンカレ予想
エピローグ
あとがき
参考文献と読書案内


買ってしまった物理学書

超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士」に続く「パパに習ってみた」シリーズの第2弾。これも見逃せない。「マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた―天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」を読もうと思っているうちに、新作が刊行されてしまった。僕はKindle版を買ったので、記事トップの掲載写真には写っていない。

「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」(Kindle版


内容:
パパが書いた一本の数式が、宇宙のすべてを支配してる!? 身近な現象から「ヒッグス粒子」「重力波」「暗黒物質」までの最先端理論を、物理学者のパパが娘たちに70分かけてガチ語り! 物理はやっぱりオモロいわ!
2018年3月25日刊行、173ページ。

【予習】 宇宙を支配するパパ
【第0講義】 この宇宙のすべてを記述する数式がある!
【第1講義】 数式は長いけど、たった一つ
【第2講義】 項の一つ一つは、天才物理学者たち
【第3講義】 式を読もう! その1 記号は、素粒子
【第4講義】 式を読もう! その2 項は素粒子の運動
【休憩】 科学者の議論をのぞいてみた
【第5講義】 式を読もう! その3 記号のかけ算は、力
【第6講義】 絶対あるはずの、足りない「暗黒」項
【第7講義】 宇宙の謎リストと未来の数式
【復習】 そもそも、なぜ、たった一つの式?


どれも興味をそそられる本ばかりである。専門書をもう少し読まなければと思っているが、魅力的な準教科書がこう頻繁に刊行されると、手を出さずにいられない状況は今年も続きそうだ。


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神田神保町「春の古本祭り・さくらみちフェスティバル」2018年

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オフィスのレイアウト変更のため今日は午後から梱包作業。午後4時に退社できたので、春の古本まつりに立ち寄った。今日から日曜までである。

神田神保町「春の古本祭り・さくらみちフェスティバル」2018年3月30日~4月1日
http://event-checker.blog.so-net.ne.jp/kanda-jinbocho-furuhon201503

期間中は、古本屋だけでなく新刊書店、飲食店、雑貨店などもワゴンセールを実施。
さらに、神保町交差点の岩波広場には休憩所「さくら茶屋」がオープンして、各日先着1,000名に甘酒が無料で振る舞われます。

◆神田神保町 春の古本まつり2018の開催概要

名称:神保町さくらみちフェスティバル 春の古本まつり
日程:2018年3月30日(金)~4月1日(日)
時間:10:00~18:00
場所:神田神保町古書店街(靖国通り沿い・神田神保町交差点他)


例のごとく、明倫館書店の前の屋外の棚の写真を載せておこう。明日以降いらっしゃる方は参考にしていただきたい。

最初の2枚は、車道側の棚

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次の3枚は明倫館書店の前の棚

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そして買ったのがこれ。かなりお買い得である。この2冊とも1974年に印刷されたものだ。1冊目にはもとの所有者の住所と電話番号、フルネームが書かれていた。東京都府中市にお住まいの方である。

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量子力学―非相対論的理論 (1) (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程)
量子力学―非相対論的理論 (2) (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程)


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ニュートン著『プリンキピア』: eBayで買った?そんなわけないだろ。

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先日「例の画像で遊んでみた。」という記事に含めたこのツイートは、もちろん冗談、ジョークのつもりだった。

でも、もしやと思いアメリカのネットオークションサイト eBay で検索してみたところ一瞬目を疑うことになった。プリンキピア原書の英訳本、それも相当古い年代物が販売、出品されていたのだ。

ラテン語原本ではないが、そうだとしてもすごい。サイトからはいずれ消されてしまうから、ブログ記事に残しておこう。


まず、こちらである。ラテン語初版か第3版の翻訳かはっきりしないが、1760年に刊行された本。日本円でおよそ47万円。3分冊そろっている。

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そして、さらにもうひとつ見つかった。ラテン語第3版(1726年)のAndrew Motteによる英訳本で1729年に刊行された2分冊。即決価格は日本円でおよそ64万円、今のところの価格は40万円である。eBayでのタイトルには「1st EDITION」と書かれているが、これは「ラテン語原書第3版」、あるいは「英語版としての初版」であると思う。

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次の2枚は第1分冊と第2分冊の中表紙。ローマ数字でMDCCXXIXは1729のことで、本が刊行された年をあらわしている。(MDCCXXIXをアラビア数字に変換

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アイザック・ニュートン『プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)』はもともとラテン語で書かれ、初版は1687年、第2版は1713年、第3版は1726年に出版された。日本史で言えば綱吉(5代将軍)から吉宗(8代将軍)の時代に相当する。

第3版からわずか3年後の1729年にはAndrew Motteによって英訳されたおかげでプリンキピアは英語圏全体に広まり、学者でなくても「最高の知性」に触れることができるようになった。上で2番目に紹介した英訳本のことである。

プリンキピア初版本の解説ページ(金沢工業大学所蔵)
http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/168701.html


ラテン語版の初版(クリックで拡大)


ラテン語版の初版(クリックで拡大)


ラテン語版の第3版(クリックで拡大)


ラテン語版と英語版は、はるか昔に著作権と版権がきれているので、オンラインで無料公開されている。

ラテン語版(初版、画像クリックでオンライン版が開く。)


ラテン語版(初版)は次のサイトでも公開されている。
http://www.gutenberg.org/etext/28233

Andrew Motteによる英語版プリンキピア(原書第3版、1846年刊行の英語版、画像クリックでオンライン版が開く。)


英語版はこのページでも読める。


明日も『プリンキピア』にまつわる話を投稿する予定である。この本に関してすごい発見があったのだ。


関連記事:

Kindle版で復刊: 日本語版プリンキピア(自然哲学の数学的原理):アイザック・ニュートン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a5ce0252019a5d9b63c20200f019e199

日本語版「プリンキピア」が背負った不幸
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bff5ce90fca6b8b13d263d0ce6fc134e

例の画像で遊んでみた。
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07ecc1d77b373a76cd5007a02405204a


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英国王立協会、ニュートンが4次元時空の着想を得ていたことを発表

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英国王立協会、ニュートンが4次元時空の着想を得ていたことを発表
BBC: 2018年4月1日

英国王立協会は、万有引力の発見で知られるアイザック・ニュートン卿の291回目の命日にあたる3月31日に記者会見を行い、アインシュタインの4次元時空の着想を、彼より200年以上も前にニュートン卿が得ていた可能性が非常に高いという前代未聞の発表をした。

もしこれが事実であれば、ニュートンが絶対時間、絶対空間をもとに理論を展開していたという300年近く続いた物理学の定説が覆されることになる。さらに1905年にアルバート・アインシュタインが発表した特殊相対性理論に関しても、もとはニュートンの着想であったかもしれないという可能性がでてくる。


記者会見で王立協会がまず提示したのは、ニュートンの著書『プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)』の第3版に見られる2つの図版だ。ラテン語の原本は博物館に所蔵され修復中であるため、会見では1846年刊行の英語版の写し(公開されている閲覧ページ)が配布された。

配布資料1


王立協会によると、これは「ミンコフスキー時空」のアイデアをニュートンがもっていたことを示すという。さらに次の写しが配布され、「ローレンツ変換」の計算も行われていたようだと発表担当者はやや興奮気味に語った。

配布資料2


配布された図版は、それぞれ英語版の次のページに見られるものだという。

配布資料3: 拡大


配布資料4: 拡大



「ミンコフスキー時空」や「ローレンツ変換」は、アインシュタインの特殊相対性理論から導かれるもので、時間と空間が一体となった4次元時空という概念の理解を助けるために、しばしば使われる。次のように図示するのが一般的だ。画像はウィキペディアの「特殊相対性理論」のページから引用させていただいた。

ミンコフスキー時空


ローレンツ変換



しかし根拠として示された図版は、たまたま「ミンコフスキー時空」や「ローレンツ変換」の説明図と似ているだけという可能性が拭いきれない。科学担当の記者が次のように問いただした。

「前後の英文を読むと、最初の図版は「希薄な媒質内を等しい直径をもつ円柱と球体が同じ速度で動くとき、円柱と球体が受ける抵抗を計算する。」という問題を解説するために使用されているものですし、2番目の図版は「双曲線上を動く物体において、双曲線の焦点に向かう求心力の法則を求める。」という問題の解説図のように読み取れます。4次元時空とは関係ないのではないでしょうか?」

この問いただしに対して王立協会の発表担当官は、不快感をにじませながら次のように回答した。

「あなたはどこの記者ですか?たしかにあなたがおっしゃるとおり、図版を引用したページは4次元時空について述べている部分ではありません。しかし、大切なのは図版そのものです。まさにこの図を描いたという行為によって、彼は4次元時空を現在受け入れられている姿と同じ形で着想するに至ったのです。」

「まさに」と「本当に」という言葉を発したとき、担当官の声は少しだけ震えていた。

「それでは、もっと確実な証拠をお見せしましょう。」発表担当官は30分間の休憩を伝え、記者会見場を後にした。


30分後、発表担当官はもうひとり別の発表担当官と一緒に記者会見場に姿をあらわした。新たに登場した担当官は上司らしく、先ほど話した担当官は何も言わずに会見場を見渡している。

二人目の発表担当官が新たに配布したのは、次の資料だった。アイザック・ニュートンがプリンキピア第3版を刊行後にラテン語で書いた著作物の一部である。第3版刊行の5年後に第4版として刊行されるはずだったが、ニュートンの死によって刊行には至らず、試し刷りされたものが一部見つかったのだという。この記者会見で初めて公開されることになった。現在、英語に翻訳中とのこと。

配布資料5: 拡大



「これが今回あらたに見つかったものです。ご覧のとおり、どうみてもミンコフスキー時空ですよね。」担当官は語気を強めて言った。

会見場にどよめきが走った。これはものすごい発見だ。記者のうち何人かが急いで会見場から出て行った。

「発表資料の詳細は本日夕方までにメールで各社にお送りします。本日はありがとうございました。」と発表担当官二人が席を立とうとすると、さきほど質問した記者が次のように発言した。

「あの、先ほど質問させていただいた者ですが、どうもこの資料おかしくありませんか?ラテン語で書かれた部分と図版の濃さが違うように見えるのですが。これは本当にニュートンが書いたオリジナルの文書でしょうか?」

担当官の顔が引きつった。部下のほうは「どうしよう...」という表情で隣で固まっている上司を横目で見ている。上司の担当官はこわばった表情のまま、ゆっくりと次のように答えた。

「あなたは、この資料が偽物だと疑っているわけですね。まがりなりにも王立協会が発表している以上、これはほとんど公文書と同じ扱いを受ける資料ですよ。極東のどこかの国の文書改ざん問題と一緒にしないでいただきたい!」

吐き捨てるようにそう言って、王立協会の発表担当官は記者会見場から退出した。彼らの背中には悔しさがにじんでいるように見えた。

少したってから、会場に残された記者のうちのひとりが叫んだ。

「あ、今日はエイプリルフールじゃないですか!これはきっと王立協会がでっち上げたとっておきのジョークに違いないですね!」


この日に王立協会が発表を行なったのが、そもそも間違いの始まりだったのである。新たに発見された文書の真偽は、その後も明らかにされることはなく、そしてこの事件に対して責任追及が行われることもなく騒動は幕引きとなった。


関連記事:

Kindle版で復刊: 日本語版プリンキピア(自然哲学の数学的原理):アイザック・ニュートン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a5ce0252019a5d9b63c20200f019e199

日本語版「プリンキピア」が背負った不幸
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例の画像で遊んでみた。
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ニュートン著『プリンキピア』: eBayで買った?そんなわけないだろ。
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b78b1019f73b4105359862e954496b66


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豆腐小僧双六道中おやすみ:京極夏彦

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豆腐小僧双六道中おやすみ:京極夏彦」(Kindle版

内容紹介:
妖怪総大将であった父に恥じぬ立派なお化けになるため、達磨先生と修行の旅に出た豆腐小僧。甲州の裏街道を行く人間2人組を理由もなく追いかけるが、道中は思いもよらぬ珍騒動ばかり。突如現れた金の鴉に巨大な蟹、凶悪な邪魅。芝居者狸らによる“妖怪総理化計画”。信玄の隠し金を狙う人間たちの悪だくみ…。ゴタゴタに巻き込まれた豆腐小僧に、驚くべき災難が降りかかる。果たして小僧の運命や如何に!?シリーズ第2弾。
2013年7月刊行、706ページ。(単行本は2011年4月刊行)

著者について:
京極夏彦(きょうごくなつひこ): 公式ホームページ
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。94年、かねてよりアイデアを温めていた妖怪小説『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞。
著書: Amazonで検索


「なぜ、手前は豆腐を持っているんでしょうか?」自己の存在理由、存在意義にうすーく不安を抱く小さな妖怪が数々の異種妖怪に出会って馬鹿にされながらも経験を積んでいく。このシリーズの1作目は豆腐小僧が「世間」を少しずつ知っていく立志篇だ。

本シリーズ1冊目の「豆腐小僧双六道中ふりだし」の感想記事を書いたのが2月9日。700ページある2冊目を読むのに2か月もかかってしまった。電車の中だけを読書時間にあてているのだから仕方がない。


本シリーズの最大の魅力は主人公、豆腐小僧の、救いようもないバカっぷりと、憎めないキャラクター、可愛らしさである。1冊目は通勤電車で必死に笑いをこらえて読み終えた。

2冊目でも笑わせてほしいと期待して読み始めだが、残念ながら「笑える度」は半減している。理由のひとつは豆腐小僧をいじって楽しむパターンが1冊目と似たり寄ったりで、そろそろ飽きてしまったということだ。

そしてもうひとつはあろうことか2冊目が始まってしばらくすると、豆腐小僧はいなくなってしまい、主人公不在のまま物語の終わりのほうまで引きずられてしまうこと。

いずれ登場することはわかっていても、相当長い間待たされる。確かに豆腐小僧がいつもいると、話題がこのキャラに集中して、物語がいっこうに進んでいかないというジレンマがある。豆腐小僧以外にも魅力的な妖怪キャラはいろいろ登場し、その妖怪たちは必ず人間に憑いているわけだから、物語進行に事欠くわけではない。

問題は豆腐小僧抜きで、どれくらい面白い話を繰り広げられるかという著者の創造力と描写力にかかっている。京極夏彦は言わずと知れた妖怪の大家だ。水木しげる先生亡き後、彼の右に出る妖怪作家はいない。

しかし、その博識ぶりがこの2作目では裏目に出てしまったと僕は感じた。新しい人物が登場するたびに、その人間に憑いている妖怪が紹介される。この小説で妖怪とは人間が妄想する「概念」に過ぎないのだから実在するわけではない。しかし、この同じ説明が妖怪が登場するたびに繰り返されるのだから、いささかマンネリというか、くどく思えてしまうのだ。著者の饒舌さが物語の進行を遅らせ、豆腐小僧の再登場を願う読者の気持ちを強くさせる。

ネタバレになって申し訳ないが、豆腐小僧は2冊目の残り4分の1あたりで再登場することになる。再登場した小僧は元通りではなく、少し変わった形の妖怪となって現れる。おバカさは昔のままなので読者は安心できるわけなのだが。

再登場したのだから、思い切り活躍してほしいと願うのが読者の心情だろう。しかし、そういうわけにもいかず、相変わらずストーリーは豆腐小僧以外のキャラクター中心で進んでいく。人間も妖怪もたくさんいるから、かなりごちゃごちゃしている。この物語、いったいどういうふうに締めるのかしらと思いつつ、最後の最後で豆腐小僧が物語の集結に役目を果たすわけであるが。。。これ以上ネタバレしてはまずいので書かないでおくが、この終わり方で納得してすっきりできる読者はいるのだろうか?

映画化された予告動画を見ると、現代の社会に豆腐小僧は現われるようだが、小説のほうは1冊目、2冊目ともに舞台は江戸時代である。2冊目が空振りしたので3冊目はとりあえず読まないことにするが、映画のほうはもしかすると3冊目(こちらは薄い本)から話をとってきたのかもしれない。

このように僕は2冊目を楽しめたわけではないが、1冊目は痛快であることに変わりはなく、とりあえず皆さまには「1冊目だけでも読むと面白いよ!」とお勧めしたい。


この小説は映画化され、2011年4月に公開された。東日本大震災の翌月である。(試写会のときにも震災について言及している。[動画])

それに伴い1冊目の文庫本のカバーはオリジナルのものにかぶせて、次のようなカバーが使われている。中古で買うときはこのカバーがついているかどうかに注意してほしい。




全部で3冊ある。

豆腐小僧双六道中ふりだし:京極夏彦」(Kindle版
豆腐小僧双六道中おやすみ:京極夏彦」(Kindle版
豆腐小僧その他:京極夏彦」(Kindle版

  


映画のDVD&ブルーレイはこちら。本のほうは「豆腐小僧」、映画は「豆富小僧」である。映画は観ていないが、予告編を見る限り小説のほうが数段面白いと思う。

豆富小僧 DVD&ブルーレイ



豆富小僧 予告編


映画『豆富小僧』特報映像



関連記事:

豆腐小僧双六道中ふりだし:京極夏彦
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/70389ac65573ffa188825a4ec3826754

読書の秋は京極夏彦で!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b7c1960c62548c163cb2cb65786620cd

巷説百物語シリーズ:京極夏彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5ba0517a8c1770f915aed78fe8bc90ff


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半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性

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半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性

内容紹介:
本書は半導体デバイスの動作原理と特性を学ぶための実用的・総合的な教科書である。一般の理工系学生を読者として想定し、特別な予備知識を前提とせずに、徹底的に平易なデバイス物理の解説を行う。上巻では原子と半導体結晶に関する初歩的な概念から説き起こして、半導体におけるエネルギーバンド構造とキャリヤ(電流担体)としての電子と正孔、不純物添加によるキャリヤの導入、電流生成機構や光学応答などキャリヤの基本的な挙動、不均一な半導体試料における電気的な効果などを論じ、電子デバイスの動作の理解に不可欠な半導体物性の基礎知識を与える。補遺において量子力学の基礎、Hall測定、キャリヤへの温度の影響、フォノンの性質などについても一通り紹介する。
2012年2月刊行、297ページ。(シュプリンガー版は2008年5月刊行)

著者について:
Betty Lise Anderson, Richard L. Anderson
http://www2.ece.ohio-state.edu/~anderson/

訳者について:
樺沢宇紀(かばさわ うき): 訳書: https://adx50150.wixsite.com/kabasawa-yakusho
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師。

樺沢先生の訳書: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で361冊目。

物理学だけでなく電子工学も僕の関心分野だ。電子回路は小学生の頃から興味を持っていた。物理学への関心が芽生えていなかった1990年代初め「電気・電子の基礎:飯高成男」という中学、高校生向けの本を読んだことを思い出した。この本はいまでも持っている。

また6年前には「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」や「改訂版 電子回路の「しくみ」と「基本」 :小峯龍男」で、トランジスタやダイオードを始めとする電子部品について学んでいる。

けれども、これらはいわゆる電子工作を指向した本なので量子力学はでてこない。電流のキャリヤとしての電子や正孔は古典物理的な粒子として描かれ、後は電磁気学の理論で間に合う範囲だ。半導体に必須な量子力学、特にバンド理論は、その後しばらくして2015年以降に「基礎の固体物理学: 斯波弘行」や「固体物理の基礎:アシュクロフト、マーミン」で詳しく学ぶことになった。

それでトランジスタやダイオードがよく理解できたかというと「?」である。電子工作系の本と固体物理学系の本で理解したことは、すっきりつながらない。要素還元主義の立場から言えば、2つの間にはまだ学ぶべき何かがありそうだ。

そして見つけたのが樺沢先生が訳された「半導体デバイスの基礎 全3巻」である。アマゾンの内容紹介や樺沢先生による紹介文を読む限り、僕でも読めそうだ。3分冊だから1冊あたりの分量も手ごろで取り掛かりやすい。

上中下「全巻の構成」はリンクを開いていただくとわかる。上巻の章立てはこのようなもの。

第1章 半導体内部の電子状態
第2章 均一な半導体のキャリヤとバンド構造
第3章 均一な半導体におけるキャリヤの挙動
第4章 不均一な半導体
補遺1A 量子力学入門
補遺1B 半導体物性に関する補足


第1章はだいたい固体物理の本で学んだ内容。量子力学を復習しながら原子の結晶構造の中、特に伝導帯と価電子帯の間で電子がどのように振る舞うかを学ぶ。その舞台は結晶固体内でのパウリの排他律、共有結合、イオン結合だ。電子の波動関数、ド・ブロイの関係式が使われ半導体結晶内の自由電子の量子的側面と古典的な側面が示される。また電子(粒)と光(波)の相互作用についても解説されている。


第2章では均一な半導体のキャリヤとバンド構造を学ぶ。ひとまず電子を準古典的に扱い、結晶内で電子が受ける力や電子のエネルギー、群速度などがニュートン力学の方程式で記述される。面白いと思ったのは電子の「有効質量」だ。もともと電子は決まった質量があるわけだけれども、Newtonの法則など古典論で馴染みのある式が正しい結果を与えるように「実効的」なパラメータを導入するという方法だ。これによって電子の正確な運動を予言できるようになる。有効質量は結晶をつくる半導体の原子の種類、価電子帯あるいは伝導帯、結晶に対して進む電子の方向によって異なる値をとる。(実験して決める値だ。)

その後、電子や正孔、エネルギーバンド図の見方、不純物半導体、バンド内での電子の密度、電子と正孔についてのFermi-Dirac統計とエネルギー分布の解説と計算が量子力学から得られる式を含んだ形で紹介される。ここまでは室温を前提にした計算だ。そして2章の最後では温度の変化によって状況がどのように変わるかという計算が示される。電子工作系の本では学べない内容だ。


第3章では半導体内部で電気伝導が電子と正孔などのキャリヤによってどのようにおこるかが解説される。その基本的な機構は「ドリフト」と「拡散」だ。ドリフトは半導体に電界がかかると生じ、個々の電子はランダム運動をしながら集団として半導体内を移動する現象だ。そして電子や正孔などキャリヤの移動度を計算する中で「オームの法則」が導かれる。キャリヤの移動度はn型半導体とp型半導体では異なること、不純物の濃度にどのように依存するかを具体的に計算できることが僕の興味をひいた。

キャリヤの移動度を制約する要因は2つあり、1つはキャリヤが不純物状態に入ることでおきる。また2つめは格子(フォノン)散乱だ。温度は結晶格子の音響的な振動によっておきること、つまり音響フォノンによっておきることを、とね日記で初めて言及したのは「熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂」という記事だった。キャリヤの移動、つまり電子のドリフト速度の抑制がキャリヤと音響フォノンの衝突によって計算できることが、僕には目新しかった。フォノンも粒子的に扱えるものなのだなぁと実感したわけだ。

そして半導体内部での光学的な過程も興味深い。キャリアの移動に対して光子も影響を与えるということ。電子の挙動を考えているのだから光子の放出や吸収があることは量子力学を学んでいるから知っているわけだが、光の吸収や放射が半導体内のFermi準位に影響を与える。熱平衡状態にない半導体でキャリヤの密度を決める「擬Fermi準位」が導入される。


第4章では不均一な半導体が解説される。不純物添加の条件が半導体内部の位置に依存しているケースだ。なぜそのような半導体を考えるかというと、意図的に不均一にすることで半導体の性能を変えることができるからだ。たとえばトランジスタには増幅作用とスイッチング作用という2つの機能があるが、半導体の内部を不均一にすることでスイッチング作用にかかる時間を短縮することができる。不均一にする例として「傾斜ドーピング」と「組成勾配」が詳しく解説される。第3章までの解説や計算をふまえ、それがどのように修正され、より実用的な半導体が作れるかを理解するのが、この章を読む醍醐味である。


だいぶ内容を端折って書いたが、これが本書のおおままかな流れだ。状況に応じて古典電磁気学の式、量子力学に基づく式が使い分けられるのが面白い。あるときは高校物理の力学、電磁気学の式をあてはめ、量子力学の式をあてはめるときにも波動性と粒子性のそれぞれの立場で立式をする。量子力学で学んだシュレーディンガー方程式、不確定性原理、群速度、フェルミ準位、量子井戸のポテンシャルなどの計算方法が、実際の半導体にそのまま使えること見ると、量子力学なしにエレクトロニクス技術の発展はなかったことがよくわかる。

また、電子工作系の本では電子と正孔のことだけを考えれば十分だったが、それだけでなく光子や音響フォノン、光学フォノンも半導体内の物理現象を考える上で大切なこともよくわかった。半導体の性能が温度に依存することは知っていたけれども、そのからくりが電子と光子、フォノンの衝突という粒子の相互作用で記述されるのも面白い。

固体物理の本では定性的な理解、グラフと図版、実験結果による理解が主だったが、本書ではかなりのことが解析的な計算で求められる。もちろん求められないケースも多いわけだが、豊富なグラフや図版でわかりやすく解説されている。本書全体を通じて、半導体内部でのキャリヤの移動はかなりリアルなイメージで伝わってくる。

本書では「補遺」も大切だ。量子力学を学んだことがない人は補遺1A「量子力学入門」を先にお読みになるとよいだろう。本書を読む上での前提としては、電子工作系の本のレベルでのトランジスタやダイオードの理解、高校レベルの微積分を使った力学、電磁気学までである。量子力学は本書でカバーされているが、前もって入門的な教科書で学んでおいたほうがよいと思った。


このように物理学専攻の学生とはとても相性のよい半導体入門の教科書である。青と黒の二色刷り。翻訳も読みやすく、訳者による補足説明が脚注に書かれているのが助かった。ぜひご一読されるとよいだろう。

本書を訳された樺沢先生による紹介文、刊行までの経緯は次のページでお読みいただける。

《樺沢の訳書》No.8 半導体デバイスの基礎
https://adx50150.wixsite.com/kabasawa-yakusho/08

樺沢先生、とてもわかりやすく教育的な本を翻訳していただき、ありがとうございました。

4月7日現在、アマゾンでは在庫切れです。ネット書店で在庫があるのは、hontoと紀伊國屋ウェブ、e-hon、HonyaClub、セブンネットだと取り寄せ(もしくは出版社在庫確認)してくれるようです。

半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性
半導体デバイスの基礎 (中) ダイオードと電界効果トランジスタ
半導体デバイスの基礎 (下) バイポーラ・トランジスタと光デバイス

  

シュプリンガー版も含めて: Amazonでまとめて検索


翻訳の元になった原書はこちら。2004年に刊行された。

Fundamentals of Semiconductor Devices




その後、原書のほうは昨年改訂されたばかり。いま買える最新のものは第2版である。

Fundamentals of Semiconductor Devices 2nd Edition




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半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性



第I部 半導体物性

第1章 半導体内部の電子状態
- はじめに
- 歴史的な経緯
- 水素原子模型への応用
- 波動・粒子の二重性
- 波動関数
- 電子の波動関数
- 光の放射と吸収
- 結晶構造および結晶内の面と方向
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第1章の参考文献
- 復習のポイント
- 演習問題

第2章 均一な半導体のキャリヤとバンド構造
- はじめに
- 結晶内の電子に対する準古典力学
- 伝導帯の構造
- 価電子帯の構造
- 真性半導体
- 外因性半導体(不純物半導体)
- 正孔の概念
- バンド内の電子の状態密度
- Fermi-Dirac統計
- 電子と正孔のエネルギー分布
- 縮退半導体
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第2章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題

第3章 均一な半導体におけるキャリヤの挙動
- はじめに
- ドリフト電流
- キャリヤの移動度
- 拡散電流
- キャリヤの生成と再結合
- 半導体における光学的な過程
- 連続の方程式
- 少数キャリヤの寿命
- 少数キャリヤの拡散距離
- 擬Fermi準位
- まとめ
- 付録の- 付録の参考文献リストについて
- 第3章の参考文献
- 復習のポイント
- 演習問題

第4章 不均一な半導体
- 熱平衡状態におけるFermi準位
- 傾斜ドーピング
- 不均一な組成
- 組成勾配と傾斜ドーピングの組合せ
- まとめ
- 付録の- 付録の参考文献リストについて
- 第4章の参考文献
- 復習のポイント
- 演習問題

補遺1A 量子力学入門
- はじめに
- 波動関数
- 波動関数と確率
- Shrodinger方程式
- Shrodinger方程式の電子への適用
- 量子力学に基づく考察
- まとめ
- 復習のポイント
- 練習問題

補遺1B 半導体物性に関する補足
- キャリヤ密度と移動度の測定
- 束縛状態の電子に関するFermi-Dirac統計
- 半導体におけるキャリヤの凍結
- フォノン
- まとめ
- 付録の- 付録の参考文献リストについて
- 補遺1Bの参考文献
- 復習のポイント
- 演習問題

索引

「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた: 橋本幸士

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「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた: 橋本幸士」(Kindle版

内容紹介:
パパが書いた一本の数式が、宇宙のすべてを支配してる!? 身近な現象から「ヒッグス粒子」「重力波」「暗黒物質」までの最先端理論を、物理学者のパパが娘たちに70分かけてガチ語り! 物理はやっぱりオモロいわ!
2018年3月刊行、172ページ。

著者について:
橋本幸士
1973年生まれ、大阪育ち。1995年京都大学理学部卒業、2000年京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。サンタバーバラ理論物理学研究所、東京大学、理化学研究所などを経て、2012年より、大阪大学大学院理学研究科教授。専門は理論物理学、弦理論。


理数系書籍のレビュー記事は本書で362冊目。

前著「超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士」と同様、理論物理学者の父と高校生の娘の間で交わされる会話を中心に進行する物理学小説。今回は娘さんの友達の女子高生が加わり、登場人物は3人になった。

理系オンチな人、硬い本、分厚い本は苦手という人にはうってつけの本だなというのが僕の率直な感想。素粒子の標準模型を題材に、これまで刊行された本ではいちばん易しいのではないだろうか。

同じテーマの本であれば理系オンチな人には、これまで「強い力と弱い力:大栗博司」を勧めてきたが、この本であっても難しいと感じる読者は多い。標準模型だと説明しなければならない素粒子が18種類もあるし、4つの力との関係、場の量子論に含まれるいくつもの理論を含めると、どうしたってややこしいものになってしまう。

本書はそのような難解理論を一般人でもわかるように一歩一歩、ていねいに解説した本。。。。いやいや違う。そのように地道なアプローチをとるのではなく「これは大学院レベルのことだから、わからんのは当たり前や」とあっさり捨てて、標準模型の数式をひとつずつ、女子高生の頭でも何となくイメージできるレベルにとどめて解説しながら進む本なのだ。


理系に馴染みのない人、難しい話を長々と聞くのが苦手な人ほど短い説明を期待しているものだ。「~って、ひとことで言うとどんなものですか?」と早急に答を知りたがる。それが本書のタイトル「宇宙のすべてを支配する数式」=「標準模型の数式」だ。本書に書かれている数式はこれだけで、それ以外の数式は一切でてこない。トップダウンのアプローチをとり、数式をひとつずつ分解して説明することで、読者の「手短に」という期待に応えることに成功している。このページ数で論理の整合性を保ちながらくまなく説明するのは無理だから、キーポイントやキーワードの意味を感覚的に伝えられれば十分だというのが本書の基本スタイル。

本のタイトルを「標準模型入門」とか「素粒子物理入門」にせず、「宇宙のすべてを支配する数式」にしたのは上手いなぁと思う。何しろ「掴み」がいいし、どんな理系オンチ、さらに悪く言えばおバカさんでもこのタイトルの意味くらいは理解できるからだ。まず書店で手に取ってもらうこと、「手に取る」という自発的な行為がとても大切なのだ。


なぜこれが宇宙のすべてを支配する数式なのかという解説が素晴らしい。電子をはじめ素粒子はそれぞれ同じ種類だと区別がつかない。(つまり素粒子には個性がないということ。)宇宙のどこにあっても同じ素粒子は同じ法則に従っている。だから宇宙の1か所で成り立つ素粒子の法則を数式であらわすことができれば、宇宙のどこでも成り立っているはずだ、宇宙のすべてを支配しているという説明。これなら中学生、高校生でも理解できる。

「対称性」や「保存則」、「ネーターの定理」にまで踏み込んで解説していることも素晴らしい。素粒子というミクロの世界の法則から、宇宙という広い世界で成り立つ法則が導かれるのは神秘としか言えないし、読者もそれを感じることができる。

また、複素数やその共役複素数が物質と反物質に対応していること、関数や微分が標準模型の数式に書かれているという説明は、ふだん数学で学んでいる複素数や微積分が、宇宙を支配することに関係しているのだとわかるから、読者の興味は大いに増すのではなかろうか。


真面目に話しているのだけれど、可笑しみがあって真面目っぽく聞こえない橋本先生の飄々とした大阪弁が、本書をとても読みやすく、親しみやすいものにしている。これならどう転んでも「硬い本」にはなりえない。超一流の物理学者なのに、雰囲気や語り口は「近所のどこにでもいそうなお兄さん」である。

このようにやわらかく、ざっくりと書かれた物理学書が世間に受け入れられるようになったのは、とてもよいことだと思う。ひと昔、ふた昔前だと、教養書であっても物理学の本は厳密、正確でなければならず、少しでも曖昧なことが書かれていると、専門家から批判されたり、学者としての資質を問われたりすることがあったからだ。

このページ数で、すべてを説明しつくすのはどうしたって無理なのはわかっているから、専門用語がでてきて難しいところは、「そんなもんや。」とパパが娘に言ってあっさりとすませてしまう。これは大阪弁だから許されるのだと思う。

でも、理解できないところがあっても不思議ともやもやしてこないのはなぜだろう?それは、読者が難しいと思うところはすべて本書に登場する2人の女の子が代弁しているからだ。パパには不思議なところがいっぱいあるけど、なんだかすごい研究をしているのだと娘に一目置かれていることで、謎が自然に「繰り込まれて」しまっているからだと僕は思う。

現在の形の宇宙のすべてを支配する数式が完全ではないことを紹介している点もよい。暗黒物質、超対称性、超弦理論など、複数の可能性があること、研究にはまだまだ終わりがないことが述べられている。

少し難しい解説は、各章に設けられた「さらに深く知りたい方へ」というパートで(数式抜きで)語られている。とは言っても本書は全体的に「超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士」より易しい。


また昨年10月には橋本先生みずから出演するNHKのテレビ番組が放送された。パパ役はもちろん橋本先生で、娘役は女優の松本穂香さんである。

コズミック フロント☆NEXT▽宇宙が真空崩壊!?宇宙の未来をパパに習ってみた
https://hh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20171005-10-08319


今回紹介した「「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた: 橋本幸士」もテレビ番組を作ってほしい。女子高生役がもう一人必要だから誰がいいだろう?僕としては橋本愛さんあたりが似合うのではないかと思っている。


橋本先生には昨年秋、「橋本幸士×板倉龍「Newton超ひもナイト」@ 下北沢」というイベントでお会いし、ご挨拶させていただいた。相変わらずお元気そうだなぁとうれしく思うと同時に、もう半年も経ってしまったのだなぁと、相対論効果はないはずなのに時の流れをますます早く感じている自分が少しだけ寂しく思えた。


物理学書を読み慣れている人なら2~3時間で読める本だ。「超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士」と合わせてこの楽しい本をぜひお読みいただきたい。


関連記事:

超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/05d22e7299a4b30b24efb05cf01176a2

Dブレーン―超弦理論の高次元物体が描く世界像:橋本幸士
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e18ed1e00f1c877cf3e7926a564f01ae

橋本幸士×板倉龍「Newton超ひもナイト」@ 下北沢
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/567088304d1f2dca5349826c561adb3e

強い力と弱い力:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177


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「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた: 橋本幸士」(Kindle版




【予習】 宇宙を支配するパパ
【第0講義】 この宇宙のすべてを記述する数式がある!
【第1講義】 数式は長いけど、たった一つ
【第2講義】 項の一つ一つは、天才物理学者たち
【第3講義】 式を読もう! その1 記号は、素粒子
【第4講義】 式を読もう! その2 項は素粒子の運動
【休憩】 科学者の議論をのぞいてみた
【第5講義】 式を読もう! その3 記号のかけ算は、力
【第6講義】 絶対あるはずの、足りない「暗黒」項
【第7講義】 宇宙の謎リストと未来の数式
【復習】 そもそも、なぜ、たった一つの式?

Amazon『50%OFF以上』 科学・テクノロジーKindle本フェア

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「本は読まなければただの紙」
「電子書籍は読まなければただの電子状態」
「目の毒だ」
「悪魔のささやき」
「優先順位を決めよう」
「買うのと買わないのでは、どちらが後悔するか」
「アリとキリギリス」
「理性が決めるのか、心が決めるのか」
「買っておいても邪魔にはならないしな」
「どうせいつか買うことになるのだから」
「今でしょ!」
「そのうちまたセールあるのかな」
「鉄は熱いうちに打て」
「本はあなたを待っている」
「自己投資に金を惜しむべきではない」...

さまざまな声が頭の中をめぐっている。


4月6日からAmazonで始まった科学・テクノロジーKindle本フェア。なんと50%以上の割引価格で買える。今回のセールは4月19日まで。今日急いでクリックしなくてもよい。検討する時間はまだ十分にある。

しかし理系の人は散財しかねないから閲覧注意だ!覚悟を決めてからクリックしていただきたい。

科学・テクノロジーKindle本フェア: 開く


僕が気になるのは次のような本だ。シリーズ物と単発物に分けて紹介しよう。

シリーズ物

世界標準MIT教科書: 開く
スタンフォード物理学再入門: 開く
大学数学 スポットライト・シリーズ: 開く
図解入門よくわかる最新~の基本としくみ: 開く
スッキリわかる~演習:誤答例・評価基準つき: 開く


単発物

コンピュータの構成と設計 第5版 上・下電子合本版: 開く

Python言語によるビジネスアナリティクス:実務家のための最適化・統計解析・機械学習: 開く
Pythonゲームプログラミング 知っておきたい数学と物理の基本: 開く

言語処理システムをつくる:実践・自然言語処理シリーズ1: 開く

趣味で量子力学2: 開く
ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い: 開く
宇宙のランドスケープ: 開く
世界でもっとも美しい量子物理の物語: 開く

折り紙のすうり:リンケージ・折り紙・多面体の数学: 開く
数学用語英和辞典:Mathematical Terms English-Japanese Dictionary: 開く
数学の道具箱 Mathematica 基本編: 開く

深層学習 Deep Learning: 開く
データ分析とデータサイエンス: 開く
マイクロサービス with Docker on Azure: 開く
アルゴリズムが世界を支配する: 開く

わかる! 電子工作の基本 100: 開く
はじめる!楽しい電子工作 カラー図解を見ながらつくれる!電気のしくみもよくわかる!: 開く
回路シミュレータでストンとわかる! 最新アナログ電子回路のキホンのキホン: 開く
図解入門はじめての人のための テスターがよくわかる本[第2版]: 開く


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シンガーソングライターの優月さん

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29枚目のアルバム「この夢の続き」:Amazonで開く

路上ライブの規制がいまよりずっとゆるかった2008年の春ごろ、秋葉原の歩行者天国のにぎわいの中で聞こえてきた美しい歌声。誰が歌っているのだろうとたどり着いたのが彼女の路上ライブだった。

当時の彼女はデビュー前。秋葉原で初めて聴いた「Good-Day」は優月さんの歌手としての出発点と言える曲のひとつである。

優月「Good-Day」



その後、代々木公園や溝の口での路上ライブや、ライブハウスでのイベントに何度か足を運んだ。それからしばらく自分の趣味のほうに没頭していたからライブに足を運んでいなかったわけだけれども、昨夜たまたま彼女のツイッター(@yuduki_yuduki)でLive.meというサービスを使ったリアルタイム配信をしているのを知って、歌やトークを久しぶりに楽しませていただいた。



アプリを入れると昨夜のライブ配信の録画が見れるようだ。: Live.meで再生


僕が知っているのは活動し始めたばかりの彼女だから、その後の曲は知らない。なんとすでに29枚目のアルバムを出したそうである。癒される歌、明るく元気がでる歌が多いので、ぜひ聴いていただきたい。現在も無料のライブ、有料のライブなどバリエーション豊かな音楽活動をされている。

久しぶりということがあって昨夜は朝方近くまで聴いていた。脳内にアルファ波だけでなくアルファ線も出たようで、今日はいくぶん睡眠不足。クセになる曲が多い。

僕のブログは当時とくらべるとアクセス数が相当増えているから宣伝媒体としてちょうどよい。上の動画も含めて、以下に掲載するのはすべて公式にアップロードされている動画である。


優月「Good-Day」CATV放映映像


優月「Believe」


優月「夢か幻」


優月@錦糸町「おかえり」



そして最後のは比較的新しい動画

優月ワンマンDVDダイジェスト



優月さんの詳細、今後のスケジュール、CD購入は、次のサイトを確認してください。

優月オフィシャルブログ「幸せの種まき日誌」
https://ameblo.jp/yudukiblog

優月オフィシャルサイト
http://www.yuduki.biz/

Twitter: @yuduki_yuduki

優月Web Shop
https://yuduki.stores.jp/

Amazon: 優月ストア

このほか、iTunes Storeでもダウンロード購入できる。(iTunes Storeを開く


CDはたくさんあるので、購入ガイドが作成されている。昨夜のLive.meからスクリーンショットを撮らせていただいた。

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発売情報:素粒子論のランドスケープ2、数学ガール/ポアンカレ予想

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読みたい本の刊行が目白押しである。今回紹介する2冊は、どちらも「ひろしさん」がお書きになった物理学書と数学書だ。そして2冊に共通しているのが「トポロジー(位相幾何学)」である。


素粒子論のランドスケープ2:大栗博司

内容紹介:
2012年出版『素粒子論のランドスケープ』の続編。
その後、50年前に予言されたヒッグス粒子が発見され、100年前に予言された重力波が直接観測されて宇宙に新しい窓が開いた。
超弦理論の研究でも、量子情報理論との深い関係が明らかになりつつあり重力の謎の解明に新しい角度からの挑戦が始まっている。
その間、著者が科学的アウトリーチの一環として雑誌への寄稿や対談・座談会の中から厳選をしてまとめたのが本書である。
素粒子物理学はどこへ向かうのかを探る。
2018年4月18日刊行、339ページ。

著者について:
大栗博司(おおぐりひろし):ホームページ: http://ooguri.caltech.edu/japanese
カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長、フレッド・カブリ冠教授、数学・物理・天文部門副部門長。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員も務める。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。東京大学助手、プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。専門は素粒子論。2008年アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)、高木レクチャー(日本数学会)、09年フンボルト賞、仁科記念賞、12年サイモンズ研究賞授賞。アスペン物理学センター理事、アメリカ数学会フェロー。著書に『重力とは何か』『強い力と弱い力』(ともに幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス、講談社科学出版賞受賞)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)、『マンガでわかる超ひも理論』(監修、サイエンス・アイ新書)がある。


2012年に刊行した「素粒子論のランドスケープ」(紹介記事)の続編。発売開始前なのだが、著者の大栗先生からありがたいことにお送りいただいたので、さっそく読み始めたところだ。大栗先生、ありがとうございました。読後に感想記事を書かせていただきます。

前著以来、素粒子物理学、超弦理論など最先端の物理学で発展、議論されたことがらを科学雑誌や専門誌に先生が寄稿された記事、対談などをまとめた本である。一般の方でも容易に読める記事には星ひとつ、物理学書を読みなれている方に向けた記事には星ふたつがつけられている。(記事につけられた星の数は面白いか、面白くないかという区別ではない。)

まだ読み終えていないのだが、「エドワード・ウィッテン京都賞受賞記念座談会:超弦理論の過去20年を振り返る」という物理学者2人+数学者2人による対談記事は、相当難しくて全部理解できる人はほとんどいないというレベルなのだが、最先端の研究のキーワードが目白押しなので、興奮すること間違いなしだ。目次は次のとおり。

第I部 重力と超弦理論を語る
超弦理論が予言する驚異の宇宙
ブラックホールに落ちるとどうなるか?
重力とは何か
大江健三郎、三浦雅士、原広司との座談会:空間象の変革に向けて
一般相対論と量子力学の統合に向けて
重力理論と量子もつれ
誤り訂正符号とAdS/CFTの関係
エドワード・ウィッテン京都賞受賞記念座談会:超弦理論の過去20年を振り返る

第II部 重力波の観測
アインシュタインの予言が実証されるか
重力波の直接観測で宇宙の新しい窓が開いた
重力波の直接観測3つの意義
三浦雅士との対談:世界の見方を変える

第III部 ヒッグス粒子と対称性の自発的破れ
ヒッグス粒子とみられる新粒子ついに「発見」
ヒッグス粒子と対称性の自発的破れ
追悼 南部陽一郎博士
ヒッグス粒子発見の次に来るもの

第IV部 数学との関係
場の量子論
役に立たない研究の効能
杉山明日香との対談:科学を知れば,もっと豊かになれる

第V部 研究所の運営,異分野との交流
アスペン物理学センター
P.ゴダード、村山斉との鼎談:研究所の役割、数学と物理学の関係
落合陽一、四方幸子との鼎談:アートとサイエンスの可能性

第VI部 朝日新聞WEBRONZA
ついに太陽系脱出ボイジャー 36年の強運
内側から見た米国の大学入試制度
「現在の基準で過去を裁く」ことの是非

お買い求めはこちらからどうぞ。

素粒子論のランドスケープ2:大栗博司




数学ガール/ポアンカレ予想:結城浩

内容紹介:
数学ガール、ポアンカレ予想に挑む!!
《ポアンカレ予想》は、20世紀の初頭にフランスの数学者アンリ・ポアンカレが提示した位相幾何学の問題であり、2000年にクレイ数学研究所が発表した7つの数学の難問(賞金100万ドルのミレニアム問題)の一つです。百年間、誰も証明できなかったこの問題が、 21世紀の初めにロシアのグリーシャ・ペレルマンによって証明されました。
本書は、ポアンカレ予想をテーマに、トポロジー(位相幾何学)、基本群、非ユークリッド幾何学、微分方程式、多様体、フーリエ展開などの数学的題材を解き明かしていきます。大学受験を迎えた「僕」の苦悩と数学ガールたちとの交流も軽やかに描かれます。
『数学ガール/ガロア理論』の刊行から6年。「数学ガール」ファンはもちろん、すべての数学愛好家に捧げる一冊です。
2018年4月14日刊行、416ページ。

著者について:
結城浩: ホームページ: http://www.hyuki.com/
1963年生まれ。プログラミング言語、デザインパターン、暗号、数学などの分野で入門書を執筆。
代表作は『数学ガール』シリーズ。
J.S.バッハの「フーガの技法」が大好きな、プロテスタントのクリスチャン。


昨日、書籍版と電子版が発売されたばかりということもあって、いま理系界でいちばん話題になっている本だ。数学ガールの「難しいほうのシリーズ」の刊行としては久しぶりなので、ある程度レベルの高い数学ファンにとってはうれしい限り。本書刊行のニュースを知ったときは、「あの超難解なポアンカレ予想を、どのように料理したら一般の数学ファンに解説できるのか?」と思ったものである。その証明は一流の数学者が何年もかけて行うほどのレベルだからだ。

目次を見ると「ポアンカレ予想」は第10章だけである。本書の大半はトポロジーや多様体の入門書のようである。ああ、よかった。これなら入門者でも読めるし、楽しそうだ。

▼内容構成
あなたへ
プロローグ
第1章 ケーニヒスベルクの橋
第2章 メビウスの帯、クラインの壺
第3章 テトラちゃんの近くで
第4章 非ユークリッド幾何学
第5章 多様体に飛び込んで
第6章 見えない形を捕まえる
第7章 微分方程式のぬくもり
第8章 驚異の定理
第9章 ひらめきと腕力
第10章 ポアンカレ予想
エピローグ
あとがき
参考文献と読書案内

お買い求めはこちらからどうぞ。

数学ガール/ポアンカレ予想:結城浩」(Kindle版




なお、既刊の「数学ガール」シリーズは、次のリンクで検索できる。より易しめの「秘密のノート」シリーズも含めてKindle版の何冊かは4月19日までAmazon半額キャンペーン対象になっているので、この機会を逃すのはもったいない。

書籍版: Amazonで検索
Kindle版: Amazonで検索


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Fire TV Stick、海外のニュース・ライブ配信

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米英仏によるシリア攻撃のその後も、米朝会談の行方も気になる。Fire TV Stickを買ってから、部屋で海外ニュースのライブ配信をつけっぱなしにするようになった。よく見るYouTubeのチャンネルをまとめて、アクセスしやすいようにしておこう。


フランス語ニュース

FRANCE 24 en Direct - Info et actualites internationales en continu 24h/24


Regardez RT France en direct


Euronews en direct



英語ニュース

FRANCE 24 Live - International Breaking News & Top stories - 24/7 stream


Sky News - Live Sky News


Bloomberg Global News LIVE


Al Jazeera English | Live


CNN International Live Stream


Watch ABC News Live


Fox News Live Stream 24/7 1080pHD



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「半分、青い」と片耳聴覚

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4月から始まった「半分、青い」という朝ドラ。毎回録画で楽しんでいる。

NHK連続テレビ小説「半分、青い」
https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

このドラマでヒロインの女の子は10歳で、左耳の聴力を完全に失うというところに興味を持った。というのも昨年「片耳イヤホン」という記事で書いたように、僕は生まれつき左耳の聴力がゼロだからである。ヒロインにこういう条件設定を与えるのは不自然だから、これは実話なのだろうと思って調べたら、このドラマの脚本を書いている北川悦吏子さんは数年前に片耳を失聴しているという。

興味をもったのは、ドラマのヒロインの女の子や北川さんのように、人生の途中で失聴した場合と僕のように生まれつき失聴している場合の違いである。「半分、青い」というドラマのタイトルは、雨が降っても失聴している側の雨音は聞こえないという意味だ。「あれ?僕には左右どちらも聞こえるんだけど。。」と思ったのがきっかけだ。

片耳聴覚の状態で生まれて育つうちに、僕の聴覚は両耳聴覚の人と違う能力を獲得しているはずだ。そしてこのドラマを見る限り途中から片耳聴覚になった人とも、どうも違うようである。

片耳聴覚の研究をしているお医者さんはいるかもしれないから、とりあえず僕の聞こえ方を生活のシーンに分けて書いておこう。両耳聴覚の人の聞こえ方は僕には想像がつかないが、僕が聴き取れない状況のいくつかは両耳聴覚の人でも同じということがあるかもしれない。


1)雨音の聞こえ方

ドラマのヒロインとは異なり、左側も右側も聞こえる。というか周囲全体で雨音がしているように聞こえる。だから僕の場合、雨の日は「全部、青くない」である。


2)テレビの音声のくる方向

目を開けていても閉じていても、テレビの音声がどのあたりから来るかはわかる。これもドラマのヒロインと違っている。


3)コンサートでの音楽の聞こえ方

クラッシック音楽のコンサートに行ったときに、すごく驚いたのだが、オーケストラのさまざまな楽器の音がそれぞれ分離でき、目を開いていても閉じていても左右のどのあたりから来るのかがよくわかる。ただし、その楽器が自分から見て奥なのか手前なのかはわからない。判別できるのは左右方向だけ。2チャンネルのステレオ音楽よりも、ずっと臨場感がある。


4)2チャンネル・ステレオコンポの聞こえ方

2チャンネル・ステレオだと音源が左右の2つあり、両耳聴覚の人はその真ん中あたりに仮想音源を感じ、左右の音の音量の変化によって仮想音源は左右に動くそうだが、僕の場合は左右それぞれの音源の位置をそれぞれ感じてしまう。真ん中に仮想音源があるとは感じない。また、2チャンネルの音楽と5.1サラウンドの音楽の違いも聴き分けられる。つまり音が前からくるか後ろからくるかも判別できる。さらに言えば音が上からくるか下からくるかも目を閉じていても判別できる。このあたりはドラマのヒロインと全く違う。


5)ステレオイヤホンでの聞こえ方

もちろん右耳からの音しか聞こえない。イヤホンでステレオ音楽を聴くのは無理。だから特殊な「片耳イヤホン」を使っているわけだ。


6)緊急車両のサイレン

屋外にいるときは、どの方向から聞こえてくるかはわかる。車の運転中は窓を閉じていても開けていても、音が聞こえてくる方向はわからない。


7)車の運転時の会話

右ハンドルの日本車を運転するとき、エンジン音が邪魔して助手席の人との会話は少し難しい。聞き返すことが多くなる。左ハンドル車は運転したことがないが、おそらく問題は生じない。


8)室内でする会議

全く問題なし。


9)繁華街で歩きながらする会話

友人と並んで歩くときは、聞こえる右耳が相手の側になるようにして歩く。反対側を歩くと周囲の雑音でかなり聞こえにくい。


10)教室で授業を受けるとき

教室が静かな時は先生の話を聞くのはどの位置からでも聞こえるが、ざわついているときは聞こえないので聞きやすい位置に席をとることにしている。高校までは聞きやすい席になるように、担任の先生に計らってもらっていた。


11)片足立ちでの平衡感覚

両目を開けると片足立ちは2分以上できるが、両目をつぶったままだと左右どちらの足で立っても2秒くらいで倒れてしまう。平衡感覚はほとんどない。


12)幅広階段での平衡感覚

武道館の外階段のように幅の広い階段の真ん中の位置での昇降については、昇るのは全く問題ないが、下りるときには平衡感覚を失うので、たいてい手すりにつかまって下りる。


13)通常階段での平衡感覚

駅の階段のような幅であれば、昇降にまったく問題はない。


14)歩行時の平衡感覚感覚

全く問題ない。ドラマでは聴覚を失いかけているとき、ヒロインは平衡感覚に問題があったようである。


15)走行時の平衡感覚

走ることについても全く問題ない。ドラマでは聴覚を失いかけているとき、ヒロインは平衡感覚に問題があったようである。


16)平均台の上を歩くとき

小中学生のとき、半分くらいまで歩いて落ちていた。でも、これは片耳聴覚による平衡感覚欠如ではなく、運動音痴が原因だと思う。


17)大きな石の上での平衡感覚

河原や海辺にある大きな石の上に登ると、ふわふわしたした感じがして落ちそうになる。


平衡感覚については、両耳聴覚の人でも運動音痴な人がいるわけで、どのあたりまで僕と同じなのか少し気になる。また、音源の分離についても両耳聴覚の人はどれくらいできているのかも僕にはわからない。(個人差はあるだろうけど。)

コメントをくださる方がいるかもしれないので、引用しやすいようにそれぞれ番号をつけておいた。


ドラマのヒロインは途中から失聴したので、泣いてしまうシーンがあったし、親が悲しむ気持ちもよくわかる。でも生まれつきの失聴の場合はその状態を自然に受け入れているわけだから、片耳聴覚であることには何の感情も持たず、ときどき聴こえにくいから不便だなぁと思う程度なのだ。だから僕の場合、片耳聴覚だからそれに負けずに生きていこうとする意識すら生まれない。せいぜい、聞こえるもう片方の耳を大切にしようと思うくらいである。(だからイヤホンで聞くときは音量に注意している。)

このヒロインも成長するにつれ、慣れていくのだろう。そのような点に注意してドラマを引き続き見ていこう。


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素粒子論のランドスケープ2:大栗博司

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素粒子論のランドスケープ2:大栗博司

内容紹介:
2012年出版『素粒子論のランドスケープ』の続編。
その後、50年前に予言されたヒッグス粒子が発見され、100年前に予言された重力波が直接観測されて宇宙に新しい窓が開いた。
超弦理論の研究でも、量子情報理論との深い関係が明らかになりつつあり重力の謎の解明に新しい角度からの挑戦が始まっている。
その間、著者が科学的アウトリーチの一環として雑誌への寄稿や対談・座談会の中から厳選をしてまとめたのが本書である。
素粒子物理学はどこへ向かうのかを探る。
2018年4月18日刊行、339ページ。

著者について:
大栗博司(おおぐりひろし):ホームページ: http://ooguri.caltech.edu/japanese
カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長、フレッド・カブリ冠教授、数学・物理・天文部門副部門長。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員も務める。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。東京大学助手、プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。専門は素粒子論。2008年アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)、高木レクチャー(日本数学会)、09年フンボルト賞、仁科記念賞、12年サイモンズ研究賞授賞。アスペン物理学センター所長、アメリカ数学会フェロー。著書に『重力とは何か』『強い力と弱い力』(ともに幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス、講談社科学出版賞受賞)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)、『数学の言葉で世界を見たら』、『マンガでわかる超ひも理論』(監修、サイエンス・アイ新書)がある。

大栗先生の著書:
書籍版: Amazonで検索
Kindle版: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で363冊目。

2012年に刊行された「素粒子論のランドスケープ」(紹介記事)の続編が今日発売された。著者の大栗先生からありがたいことに本書を出版前にお送りいただいたので、さっそく読ませていただいた。大栗先生、ありがとうございました。

販売状況、アマゾンでの在庫状況を出版社に問い合わせたところ、次のようなご返事をいただいた。(この部分はアマゾンでの販売の問題が解決したら削除する予定。)

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アマゾンの1-2ヶ月以内の表示ですが、皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ないところです。予約分を含めて取次書店様には搬入はしているのですが、アマゾンでの表示改善になっていないのが実情です。数日中には改善することと思います。
honto サイトでは、24時間以内に発送、の表示になっております。

主要書店の店頭には既に並んでおります。

また、前著「素粒子論のランドスケープ」は、出版社として、在庫を切らしたことはないのですが、他の書籍を含めてアマゾンサイトで現状のような表示が、頻繁に起こります。こちらも取次さんへの働きかけを行っておりますので、そう遠くないときに改善されるはずです。
(明確な日にちを申し上げられないのが、大変申し訳ないところです)

実は、前著は、最近第3刷を発行いたしましたので、小社在庫は十分ございます!!
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大栗先生がお書きになった一般市民向けの物理学書籍として最後に刊行された本は、2013年夏に刊行された『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス、講談社科学出版賞受賞)が最後。物理学ファンには5年ぶりで待望の1冊だ。

これまで6年間の雑誌への寄稿や対談・座談会の中から厳選をしてまとめたのが本書である。大栗先生は超ご多忙な研究生活をされながら、一般市民向けの科学アウトリーチ活動も(以前にも増して)精力的になさっていた。

先生のご活動は物理学教養書3部作の執筆と同時進行で行っていた朝日カルチャーセンター新宿教室での講座から、日本各地での市民向けの講座に拡がり、日本科学未来館で公開された3Dドーム映像作品『9次元からきた男』の監修をされ、対談や座談会も仏教者、小説家、建築家、文芸評論家、アーティストなど活動範囲をますます広げている。

先生ご自身がブログでお書きになった紹介記事がこちら。

『素粒子のランドスケープ2』出版
https://planck.exblog.jp/29414928/

本の帯には「ヒッグス粒子が発見され、重力波が観測された後、素粒子物理学はどこに向かうのか。」と書かれている。

そうなのだ。これら2つの偉業はすでに過去のものになりつつある。超弦理論の検証はまだまだ先のようだし、最近話題になり始めた暗黒物質もまだ確証が得られていない。これからしばらくは、物理学ニュースでワクワクする体験は望めないのだろうか?科学ファンの多くがそう思っているかもしれない。

しかし、本書を読むとそれが杞憂だとわかる。この6年だけでも研究は着実に進んでいるのだ。「その後の進展」が気になる科学ファン、物理学ファンの必読書と言ってよい。また座談会や対談の記事からは、大栗先生の誠実で真摯なお人柄が感じとられ、遠い存在と思えていた超一流の理論物理学者でいらっしゃる大栗先生への親近感が湧いてくる。

収録されている記事は25本。全部紹介するのは無理だから印象に残った記事、嬉しかった記事、考察を深めることが記事17本についてだけ感想を書かせていただいた。前著が記事を難易度によって3つに分けていたのに対し、本書は☆ひとつの一般市民向け記事と☆2つの物理学ファン・専門家向けの2つのレベルで難易度を区別している。


第I部 重力と超弦理論を語

超弦理論が予言する驚異の宇宙 ☆

先生の既刊の3冊の科学教養書ですでに紹介されている「トポロジカルな弦理論」、「空間は幻想である」、「重力のホログラフィー原理」、そして科学教養書には書かれていない「ブラックホールの防火壁問題」をより深く掘り下げ、さらにそれらの関係を解説しているのがとてもよかった。

ブラックホールに落ちるとどうなるか? ☆

ブラックホールのホーキング放射や情報問題は1990年代になって超弦理論によって解消されたが、新たな問題が提示された。放射された光や粒子がブラックホールの情報を担っているということは、放射とブラックホールが「からみあっている」ことになる。事象の地平線を超えるときに何もないとすると、遠くに飛び去った放射とブラックホールとが「からみあっている」ことと矛盾してしまうのだ。これはまだ解決していないとても興味ぶかい問題である。2月に逝去されたホーキング博士に、この謎が解明されるまで生きていてほしかった。

大江健三郎、三浦雅士、原広司との座談会:空間象の変革に向けて ☆

大栗先生と小説家、建築家、評論家で行われた座談会だ。とても面白く読めた。大江健三郎さんも大栗先生の物理学3部作を読まれていることに驚いたし、評論家の三浦雅士さんは『重力とは何か』と『大栗先生の超弦理論入門』を書評や評論で取り上げていらっしゃるそうだ。座談会のテーマは「空間とは何か」である。

3人の先生方は、僕が想像していたよりもはるかに深く、そして正確に大栗先生の著書を理解されていた。大江さんは大栗先生の本を「独特の文章」だと表現され、「読み手に自覚させるように語られている。それに乗って読み進むうち新しい理解を経験する」と説明されている。

アリストテレスからニュートン、アインシュタイン、量子力学、超弦理論に至る空間概念の変革、「空間は幻想である」に至るまで大栗先生の解説が続き、話題は「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」にまで及んでいく。一流の文化人の先生方が、最前線の物理学をどのように受け止めていらっしゃるかがわかり、3人の先生方の視点や捉え方の違いを楽しむことができた。

一般相対論と量子力学の統合に向けて ☆☆

日本物理学会誌に寄稿した専門家向けの記事。僕にはとてもありがたかった。場の量子論の紫外発散、くりこみ理論、結合定数、有効理論、階層構造、散乱振幅の摂動展開、双対対応、Dブレーンと局在したゲージ理論、AdS/CFT対応、ブラックホールの情報問題、重力のホログラフィー原理、量子もつれなどについて僕は個別に理解していたが、素粒子物理学発展史のなかでそれらの理論がどの順番でどのように関連することで、提唱されたかよく理解できたからだ。

重力理論と量子もつれ ☆☆

ひとつ前の記事で解説された重力のホログラフィー原理、AdS/CFT、量子もつれがさらに深く掘り下げられ、互いの関係を示すことで創造される2つのブラックホール時空をつなぐワームホールという形で、最先端の時空構造理論が紹介される。「空間は幻想である」というのが僕には以前はピンとこなかったが、「時空間は量子もつれのネットワークのマクロな近似から現れるのかもしれない。」という将来へ向けての展望を知ったとき、「空間は幻想である」の意味が理解できた。

エドワード・ウィッテン京都賞受賞記念座談会:超弦理論の過去20年を振り返る ☆☆

2人の数学者、ウィッテン先生、大栗先生の4人による座談会。極めて高度な内容である。一般人が理解できなくてあたり前。しかし、この記事が本書でいちばん興奮した。初めて目にする専門用語が満載で、当然のように会話が進む。専門家がどのようなレベルで日常の会話をしているのかを知る機会はほとんどない。教科書レベルの知識と最先端の物理学にどれくらいの隔たりがあるのかすら想像できない。理論物理学者どうしだとさらに理解不能な会話が交わされるのだろうなと思った。ウィッテン先生の凄さ、そして先生でも解明できない世界の深遠さを感じることができる。理解できなくても筋書きについていけるのがこの記事のうれしいところ。

多次元のトポロジーの理論がいくつか言及されている。「ん?」と思ったのはウィッテン先生が自分で証明できない部分の厳密な証明を数学者に期待しているという箇所だ。ということはつまり、それまで言及されていた奇妙なトポロジーは物理的な実在だとみなしているのだろうか?そう思ったら背筋がゾクッとした。

話の流れは次のとおりだ。

1. 過去2回のインタビューを振り返って
2. 双対性には懐疑的でした
3. 超弦理論の双対革命を起こす
4. 何かを知ることと、なぜかを知ること
5. 数学者から見た物理学
6. 量子エンタングルメント
7. コバノフ・ホモロジー
8. ラングランズ対応とゲージ理論の双対性
9. 超リーマン面
10. 数学者との連携
11. 学生へのメッセージ

第II部 重力波の観測

重力波の直接観測で宇宙の新しい窓が開いた ☆

2016年2月11日のライブキャストは忘れることができない。あの日の感動がよみがえる記事だ。さらにKAGRAの役割が解説される。マルチメッセンジャー天文学の夜明けだ。この記事で僕は気が付いたことがあった。サイエンスZEROでは重力波のことを「空間のゆがみが波のように伝わる現象」と説明していたが、大栗先生は「重力の変化が波として伝わり、それが時空間のゆらぎとして観測される」と説明している。重力を実在性のある物理的対象としてお考えになっているのだと僕には読み取れた。

太陽の36倍と29倍のブラックホールの合体後の質量が太陽の65倍ではなく62倍になるという話。消えてしまった太陽の3倍の質量は E=mc^2 公式に従い、重力波のエネルギーになったという。これはサイエンスZEROでも説明されていた。興味深かったのは、この質量の足し算がホーキング博士が1971年に数学的に証明した「ブラックホールの地平線の面積は減少しない」という、いわゆる「面積則」を観測として確認したことになるということ。僕にとっては新しい知見である。

三浦雅士との対談:世界の見方を変える ☆

『9次元からきた男』をご覧になった評論家の三浦雅士さんとの対談。本書の対談の中で、僕にはいちばん得るものが多かった記事だ。現代物理学の死先端が、世界の成り立ちの基本を、実体的な考え方から関係的な考え方へ転換しているという三浦さんの捉え方を起点に、哲学、自然科学、社会科学それぞれの流れをお二人が確認しながら理解を深めていく。ご専門とされる領域が離れているにもかかわらず、お二人の対話は見事にかみ合っているのが印象的だった。知的レベルが高い方どうしだと、シナリオなしでも読み物として無駄な部分がまったく生じないのだ。

いちばんためになったのは「2.関係と階層」だった。また「3.超弦理論と次元」では僕が初めて知ることがらが書かれていた。それはこれまでのトポロジーは「点」を使って空間の形を分類するものであること、そして弦を使ってトポロジーを定義すると、これまでトポロジーが異なると思われていたものが、連続的に変化したりすることもある。つまり、空間の分類が、1次元的に広がった弦を使えば異なって見えてくるというのだ。弦を使って空間を観測して理論を作ると、これまでの幾何学の分類、空間の形とはまったく違った分類になることがわかってきたのだ。この考え方に従うと「弦の長さ」というのは点粒子の言葉での表現なので「幻想」になってしまう。点粒子をもとにしていた空間や時間の考え方を、まったく新しいやり方で考え直そうというのである。この新しい幾何学を使って重力と量子力学との統合の困難を解決しようと現在研究が進められている。

あと「12.9次元の世界と幻想としての空間」の中の「8次元と16次元と24次元には特別な格子(セルフデュアル格子)」があるという話が不思議だった。9次元の空間と1次元の時間をもつ世界は8次元(9次元-1次元)の世界と似た性質をもっているのだという。

第III部 ヒッグス粒子と対称性の自発的破れ

追悼 南部陽一郎博士 ☆

第III部でいちばん読み応えがあったのがこの記事だ。理論物理学の大先輩、南部陽一郎先生への追悼文。南部先生の研究や業績と、その意義、先見性を時系列に従って詳しく解説されている。大きな業績は1)対称性の自発的破れ、2)強い力のカラー自由度、3)弦理論の提案 であるが、南部先生のお名前がついていなくても、幅広い領域に興味をもっていた先生のアイデアをもとに発見された理論、影響を受けた物理学者の数は計り知れない。大栗先生にとって南部先生は恩人であり、1989年にシカゴ大学の助教授にしていただいたそうである。この記事を読むと南部先生が世界最高レベルの先見性をもたれてたこと、高潔なお人柄が伝わってくる。大栗先生の南部先生への感謝の気持ちがこもった記事だ。

ヒッグス粒子発見の次に来るもの

素粒子物理学の2012年の最大の話題はヒッグス粒子の発見だった。この発見により標準模型が完成した素粒子物理学は、次に何を目指すのか?それが「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」である。そのような研究に対して投げかけられるのが「いったい何の役に立つのか?」という問いだ。この記事では「すぐには役に立たない研究」の重要性と果たす役割が大きいことを、過去の科学史の例を根拠に解説されている。未来につながる科学のあるべき姿だと僕は思った。科学がもたらす実利を辛抱強く待つ態度が社会や政治に望まれる。

第IV部 数学との関係

場の量子論 ☆☆

創刊50周年を記念して『数学セミナー』に「50年先への宿題」というテーマで寄稿された記事である。場の量子論は数学的にはまだ定式化されていないことを僕は知っていたが、具体的にどういう点で定式化できてないのか理解が不足していた。この記事を読んでようやく納得できた。つまり、1)紫外発散、2)摂動展開の発散、3)ランダウの特異点 である。ただし物理学では「有効理論」が成り立てばよいから、数学的な厳密性を無視してもよいという便利な考え方がある。摂動展開に頼らずにヤン-ミルズ理論を計算するために「格子ゲージ理論」があることも、本書で理解できた。「物質のすべては光: フランク・ウィルチェック」の背景がよくわかって面白かった。

杉山明日香との対談 ☆

大栗先生の対談は女性ファッション誌にまで活動範囲を広げていた。女性にも科学に興味を持ってもらいたいというお気持ちからだろうと思った。そしてテーマはほとんどの女性が苦手意識を持つ数学である。『数学の言葉で世界を見たら』の刊行直後に、理論物理学の博士号とワインのソムリエの資格を持つ杉山明日香さんと行なった対談である。どうしても読みたかったので僕はKindle版で雑誌を買って読んでいた。ここに内容は書かないので読んでのお楽しみということにしておこう。

第V部 研究所の運営,異分野との交流

アスペン物理学センター ☆

アスペン物理学センターは、2013年にNHK「神の数式」で紹介された。大栗先生の「職歴のページ」をご覧になるとわかるように、2016年から先生はこの自然豊かな研究施設の所長をされている。ウォルター・バーク理論物理学研究所の所長もされているから、さぞお忙しいことだろうと思った。山中伸弥先生も同じことだが、業績を積むにつれて本来学んでいない管理者としての業務を担うことになり、ご苦労が多いだろうと想像している。先生はこの研究施設の歴史やご自身とのかかわり、どのようにして自由な研究が行われているかを紹介されている。このような研究施設が日本にもあればよいのにと思った。研究の自由さという意味合いで、いちばん近いのが、きっと「カブリ数物連携宇宙研究機構」なのだろう。

P.ゴダード、村山斉との鼎談:研究所の役割、数学と物理学の関係 ☆

大栗先生と「カブリ数物連携宇宙研究機構」の機構長をされている村山先生とイギリスの「ニュートン研究所」の初代副所長を務めたゴダード先生との鼎談。ゴダード先生によるイギリスの研究施設の話を中心に進行した。日本と異なり、イギリスでは伝統的に理論物理学者は数学科に所属するそうだ。また研究所設立には莫大な資金と十分な広さの土地が必要であり、運営には民間助成金がますます重要になってくる。「長」としての役割を担う科学者がお金の問題に苦労するのはどの国でも同じようだ。しかし、科学に無理解な人材をトップに据えることはできない。効果的で自由に研究できる環境を設計できるのは、業績と研究経験を積んだ科学者にしかできない仕事なのだ。大栗先生やゴダード先生のご尽力が、将来の偉大な発見につながることを願うのみである。

落合陽一、四方幸子との鼎談:アートとサイエンスの可能性 ☆

大栗先生とアート系の落合さん、四方さんの3人で行なわれた鼎談である。ビジュアル・アートは僕の守備範囲からいちばん遠い領域だ。アート系の人と話しても、日本語なのに僕には話をほとんど理解できない。それにもかかわらず、大栗先生はお二人と対等に会話をされている。いったい、これはなんだ?楽しそうに次々と話を展開する3人の先生方が別世界の人たちのように思えた。もし、この場に僕がいたとしたら一言も話すことはできなかっただろう。大栗先生はやっぱりすごい。僕にとってこの記事の難易度は☆☆☆☆☆である。

第VI部 朝日新聞WEBRONZA

内側から見た米国の大学入試制度 ☆

大栗先生が所属するカリフォルニア工科大学の入試制度の説明記事。東京大学の15分の1という少数精鋭の名門大学だ。学生の数と教授の数が3対1というのには驚かされた。およそ6000名の受験者から240名の新入生を選ぶ。試験に加えて、20名の教授が手分けして受験生の成績表、推薦書、エッセイ、課外活動の記録などを精査して選考するのだという。日本の大学と全く違うことに羨望を覚えた。この大学に入学できるだけでも名誉なことだなぁとため息をついた。しかし、入学は学生にとってスタートに過ぎない。将来ノーベル賞を受賞できるのは、他大学に比べてカルテクがダントツで多いとはいえ、入学した学生のうちほんの一握りなのだ。

「現在の基準で過去を裁く」ことの是非

科学の発見: スティーブン・ワインバーグ」の巻末に大栗先生が寄稿した解説文である。ギリシャの「科学」はポエムにすぎない。物理こそ科学のさきがけであり、科学の中の科学である。化学、生物などは二等の科学だ。数学は科学ではないなどの過激な言論、アリストテレスやプラトンは、今日の基準からすればいかに誤っていたかなど、容赦のない裁定に本書は欧米で科学者、歴史学者、哲学者をも巻きこんだ大論争になった。

大栗先生はこの解説で「ワインバーグ博士は禁じ手であることを承知したうえでの確信犯である。」とお書きになっている。僕の考えや感想は「科学の発見」の紹介記事でお読みいただきたい。


このように内容が盛りだくさんで濃い本である。新しい知見を得ることができるし、深く考えさせられることが多い。書かれていることをすべて吸収するには熟読の繰り返しが必要だが、これまでに先生がお書きになった教養書からさらに踏み込んだ世界を見ることができる。

みなさんも、ぜひお読みになっていただきたい。

大栗先生、お忙しい中、本書をまとめてくださり、ありがとうございました。


関連記事:

素粒子論のランドスケープ:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5201583450c82ac59cb4d71efe52b3d9

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https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8ffea17402dcf34e5991b154acef39d9

真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話: 佐々木閑、大栗博司
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素粒子論のランドスケープ2:大栗博司



第I部 重力と超弦理論を語る
超弦理論が予言する驚異の宇宙
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重力とは何か
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エドワード・ウィッテン京都賞受賞記念座談会:超弦理論の過去20年を振り返る

第II部 重力波の観測
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ヒッグス粒子発見の次に来るもの

第IV部 数学との関係
場の量子論
役に立たない研究の効能
杉山明日香との対談:科学を知れば,もっと豊かになれる

第V部 研究所の運営,異分野との交流
アスペン物理学センター
P.ゴダード、村山斉との鼎談:研究所の役割、数学と物理学の関係
落合陽一、四方幸子との鼎談:アートとサイエンスの可能性

第VI部 朝日新聞WEBRONZA
ついに太陽系脱出ボイジャー 36年の強運
内側から見た米国の大学入試制度
「現在の基準で過去を裁く」ことの是非

用語解説
事項索引
初出一覧

「ブルーバックスシリーズ」550点が対象の電子書籍セール!

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Amazon『50%OFF以上』 科学・テクノロジーKindle本フェア」に続き、今度は電子書籍版のブルーバックスでも30パーセントオフのセールが始まった。4月26日までだそうである。

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セール対象外の本も気になる。価格の高い順に表示するとわかるかもしれない。

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