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マッハと現代物理学: 伏見康治

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ひとつ前の記事で紹介した「マッハ力学―力学の批判的発展史」を翻訳した伏見譲先生は、著名な理論物理学者、伏見康治先生の息子さんである。

本書に対し、伏見康治先生が「マッハと現代物理学」と題して寄稿された文章を紹介しておこう。マッハが20世紀の物理学に与えた影響がわかるはずだ。


マッハと現代物理学
伏見康治

マッハ主義なるものが、レーニンの「唯物論と経験批判論」なる本で、こっぴどくやっつけられたことは、マッハにとってきわめて不幸なことであった。マッハはバークレー流の観念論者にされてしまい、アベナリウスやポアンカレと十把一からげに非難された。恐らくボグダノフとルナチャルスキーがマッハの影響を受けてその哲学を宣伝したのに腹を立てたのだろう。その結果、マッハはソビエト、ロシアでは国禁的なものとなり、さらにそのつながりから、明らかにマッハの影響を受けたと思われるアインシュタインの相対性理論が同じく国禁的なとりあつかいを受けることになる。

日本でも「進歩的」といわれる学者たちは、マッハに触れることを自ら拒んだらしい。9版まで出た原著の「力学」が、日本の青木一郎さんの翻訳ではほとんど読まれなかったし、久しく絶版状態にほおっておかれた。私は文庫本の出版編集者に向かって、マッハの「力学」を採用するように何度も要請したことがあるが、誰もきいてくれなかった。

しかし、武谷三男さんのようなまじめな学者は、マッハが現代物理学、相対論と量子論とに決定的な影響を与えたことをよく知っているので、それを無視することはできなかった。もちろんマッハは批判されなければなかった。しかし、その批判の仕方はレーニンとはちがっている。

この「力学」を読めば明らかなように、マッハは(レーニンもそうだと思うが)筆の勢いでものを書く癖があって、その主張は必ずしも首尾一貫しているわけではない。ちがった場所で明らかに正反対なことを言っている場合がある。それで、あげ足とりをはじめれば、限りがなく、末端的なことでマッハの何が20世紀物理学に積極的な影響を与えたかの点にあろう。

それに、マッハの考えも年令とともにかわっており、いつの時代でも彼のいっていることが意味のあることであったとは言えなかろう。マッハの影響を強く受けたアインシュタインの物理的業績を考えてみると、人間の役割が年令とともに変わるのがよくわかる。---1905年のアナーレン・デア・フィジクにはアインシュタインの三つの論文が出ているが、それは光量子論とブラウン運動論と特殊相対性理論とであって、どれもこれも革命的で、古典物理学の考えを破壊するものであった。することなすことがすべて前向きで、まさにその後の物理学の進むべき道を指し示すものであった。完成した合理的量子力学を受け付けることができず、特にその統計的解釈に対して否定的であった。ブラウン運動論に至っては、その熱輻射論でプランク定数を提案しながら、それが古典的物理学との決定的な別れみちになっていることを自覚していなかったし、従って当然なことになるが、量子論の創設者が量子論ないし量子力学が理解できなかったという悲喜劇になる。---物理学上の論文の成否は短期決戦的に勝負がつくので、その論文の著者と論文との運命が別々になっても人は怪しまない。哲学上の論文となるとそうはいかないように人は思うらしい。

こういう一般的な注意をしたあとで、マッハの何が現代物理学に影響を与えたかをながめてみよう。アメリカで出ているペーパーバックスの英訳に、カール・メンガーが序文を書いているが、それによるとマッハの主張点は次の5点になる:

(1)ニュートンの質量の定義がおかしいとして、作用反作用の法則を基として質量を定義しようとした態度、これは後に、プリッヂマンの操作主義に形式化されていく。

(2)絶対空間のような、観測の手がかりのない要素を物理学から排除しようという態度、これから、反形而上学的実証主義が育っていく。

(3)科学の目的は精神的労力をできるだけ軽減しようとするところにあるという態度、法則という形でものをとらえるほうが、個々の事実を羅列するより楽だ、...等。この思惟経済説はアベナリウスの経験批判論と共通する。

(4)原因結果(因果関係)のつながりで物を考えるのをやめて、関数関係で置き換えていく態度、ニュートンの万有引力論がそのお手本であって、例の「われわれは仮説を作らず」で、万有引力の原因をさぐることをやめ、逆平方の法則を立てるだけで満足した(もしくはそれで辛抱した)。これは1億5千万キロメートルの彼方から直接力がとどくとする遠隔力の考えが、近接力に親しんでいる人間にとっては全く不可思議なものであることを考えると、大した決断なのである。

(5)感覚の要素とその複合、相対的にいって寿命の長い複合が、物とか、自分自身とかいう概念になる。これが、バークレーの哲学ときわめて似かよっていて、観念論的であるときめつけられる原因である。しかしバークレーは、この複合のよって来るところを、物理以外のもの、神学的なものに求めたのに対し、マッハはそういう事実を指摘するという段階にとどまって、いわゆる現象論に終始したのである。

以上の5点、メンガーが指摘したところであるが、大変よくマッハの特徴をえぐり出していると思う。もし付け加えるとすれば、それらすべてを畜って、あらゆる権威に挑戦する旺盛な批判精神があることを言っておかなければなるまい。

このうちどの主張が、20世紀物理学の代表である、相対論と量子論との形成に影響をおよぼしたのか。

特殊相対性理論は、よく知られているように、「同時刻」という概念に疑問を抱いたところに出発点がある。隔たった2地点間の光の信号のやりとりで、時間的前後をきめる操作を、思考実験の上で、やってみて、同時刻概念の不確かなことをつきとめる。これはまさに(1)でいう操作主義である。

全く同じ特質は、量子力学の完成時に現れる。特にいわゆるハイゼンベルク、ボーアの不確実性原理の確定は、実験操作の原理的分析に基づくもので、マッハの操作主義を地で行なったようなものである。それに、ハイゼンベルクが前期量子論の苦心惨憺のあとで、「古典力学量の量子力学的書き換え」を敢えて行なったのは、自然の不条理を、説明するのではなく、素直に受け入れようという態度であって、(1)と(4)との観点がものを言っている。

一般相対論の確定には、明らかに(2)の実証主義の立場および(4)の因果関係を関数でおきかえる立場が強く働いている。この「力学」では、いわゆる「マッハの原理」は、不完全な形で漠然とした強迫観念として述べられているにすぎないが、しかし、その主張は、誰も反駁ができないものであって、一般相対性理論がそれに部分的に答えようとしていることは事実だが、その全体的意義は、将来になって解明されるはずのものである。

これらは、マッハの影響の積極面であるが、消極面ももちろんある。その中でいちばんわかりやすい過ちは、マッハが「原子論」を否定したことであろう。なぜ彼が原子の実在をみとめなかったか。それに正確に答えるのは実にむずかしいが、もちろんどの時代に彼が生きていたかをよく知っておかなければならない。この時代の原子論の勝利というのは、たとえば気体運動論による期待の比熱の計算などにあると言われているが、もし本当に気体分子に真っ正直に古典力学を適用したら、単原子分子と2原子分子との区別が起こるはずがなく、その結論がたまたま当たったのは、量子論の結論を先取りして、非古典的考察をしのびこませていたところにあったのであるから、マッハがもしもその批判精神からそのことに気付いていなかったとはいえない。

それはともかく、ひとりの学者の評価を行なうにあたっては、次のアインシュタインのことばを思い出そう。

「理論物理学者が使う方法について何かを探り出したいのなら、彼のいうことばに惑わされてはならない。彼が何をしたかに注意すればよいのだ。しかし、マッハの場合、彼は批判者なのだからこの文句を少し変える必要があるかもしれない。マッハについてあれこれ言われていることに気をとられる必要はない。マッハ当人が本当に言おうとしていることを理解しなければならない。」

1969年、盛夏


関連記事:

マッハ力学―力学の批判的発展史:伏見譲訳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b283e623ad8c112556fc107f4c422b4b

日本語版「プリンキピア」が背負った不幸
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bff5ce90fca6b8b13d263d0ce6fc134e

古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b5904a574fd4c4e276da496bd2c1821b

古典力学の形成: 山本義隆―続きの話
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b5904a574fd4c4e276da496bd2c1821b

科学の発見: スティーブン・ワインバーグ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/70612f539adade398a14a27e87b70d92


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マッハ力学―力学の批判的発展史:伏見譲訳」(リンク2



著者の序文

初版から第9版への序文

第1章 静力学の原理の発達
- テコの原理
- 斜面の原理
- 力の合成則
- 仮想仕事の原理
- 静力学の発達の回顧
- 静力学の原理の液体への応用
- 静力学の原理の気体への応用

第2章 動力学の原理の発達
- ガリレイの業績
- ホイヘンスの業績
- ニュートンの業績
- 作用反作用の法則の詳論と具体例
- 作用反作用の法則と質量概念の批判
- ニュートンの時間・空間・運動
- ニュートンの力学の包括的批判
- 動力学の発展への回顧
- ヘルツの力学
- 本章の思想に対する種々の意見について

第3章 力学の原理の応用と演繹的発展
- ニュートン的諸法則の適用範囲
- 力学の量と単位
- 運動量保存法則・重心の定理・面積の定理
- 衝突の法則
- ダランベールの原理
- 力学的エネルギー保存の法則
- 最小拘束の原理
- 最小作用の原理
- ハミルトンの原理
- 力学の原理の流体力学への応用

第4章 力学の形式的発展
- 等周問題
- 力学における神学的、アニミズム的、神秘主義的観点について
- 解析力学
- 科学の経済

第5章 力学の他の知識領域への関係
- 力学の物理学への関係
- 力学の生理学への関係
- おわりに

マッハと現代物理学 伏見康治
訳者注
マッハ略年譜その他
付記
年表(秀でた科学者とその力学の基礎に関する重要な論文)
人名索引
事項索引

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能

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Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能


月刊誌のほうのNewtonの特集記事を、このブログで紹介するのは異例のこと。それだけ気に入ったということだ。

人工知能に興味をもち書店に行っても、本の種類のあまりの多さに戸惑ってしまい、結局買わずに帰ってしまう人は多いだろう。僕もそのひとりだけど、そんな人にお勧めなのがこの特集記事である。

8人の専門家の協力を得て、手ごろな28ページにまとめている。小中学生も読む雑誌だからこの分量だと、どこまで掘り下げて専門的なことを含めるかを決めるのが難しいはず。NHKのサイエンスZEROだと放送4~5回ぶんの分量になるだろう。

読んでみたところNewtonの「まとめ力」に感心させられた。特に素晴らしいと思ったのは次のようなこと。

- 28ページという適度な分量におさえてあること。「まとめ力」が素晴らしい。
- 最低限必要な事がら、読者が関心をもっていそうな事がらをカバーしていること。
- ひとつひとつのテーマの流れが自然。興味を掻き立てる順番で各記事がつながっている。
- 人口知能を使うそれぞれの分野で「できること」、「できないこと」の両面を説明し、問題点の原因まで解説していること。
- シンギュラリティがいつ頃になるのか、楽観的、悲観的にならず、いろいろな考え方、予測と根拠を紹介していること。
- 特に関心をもたれているディープラーニング(深層学習)のしくみを小学生でもわかるレベルの計算で具体的に解説していること。
- 人工知能に求められるセキュリティの問題を詳しく、そしてわかりやすく説明していること。
- 最新技術を紹介、説明していること。つまりAlphaGo Zero進化した強化学習や脳の構造を模倣した次世代の汎用人工知能まで取り上げている。
- 人工知能が将来の生活や社会、医療、科学に及ぼす影響を紹介していること。
- イラストが美しいのは毎号のこと。そして記事内容とイラストが完全にマッチしている。


公開されている以上のことをネタバレするわけにはいかないので、このあたりでやめておく。詳細は株式会社ニュートンプレスの以下のページをお読みいただきたい。(見開きで立ち読みができる。)

ゼロからわかる人工知能
人工知能はどこまで“進化”するのか?
http://www.newtonpress.co.jp/newton.html

協力 松尾 豊/大澤昇平/佐藤多加之/村川正宏/乾 健太郎/佐久間 淳/中川裕志/山川 宏
執筆 宮内 諭(編集部),福田伊佐央(編集部)

スマートフォンの音声認識や自動翻訳など,私たちの生活を便利にする人工知能(AI)。はたしてAIはどのようなしくみで動いているのだろうか? 「ディープラーニング」や「シンギュラリティ」といった人工知能の気になる用語をわかりやすく解説!

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能



古典論理回路を含めるべきかどうか

この特集に対して、Newton編集長の高嶋さん(@Takashima_Hidey)は、次のようにツイートされていた。(ツイートの句読点の表記もNewtonと同じだと、後から気がついた。Newtonの読点は「、」ではなく「,」に統一されている。)

「今回のNewtonの人工知能特集では,かなり原理的なところから解説してるけど,個人的にはもっとコンピューターの原理的なところ,論理回路(AND・OR・NOT回路)の解説くらいから始めて,丁寧に丁寧に解説するようなものをつくりたいな。ただ,そうすると,書籍になるかな…。ニーズはあるだろうか。」

僕は最初「論理回路」のことを「量子論理回路」と誤読してしまったわけだが、高嶋さんが言及されたのは古典論理回路のことだ。

人工知能はコンピュータ上で動作しているわけだから、どんなソフトであれ基を正せば2進数のビット演算によって行われる。それを実現するハードウェアが論理回路(AND・OR・NOT回路)だ。論理回路でビット演算、つまり2進数の足し算、引き算することで、あらゆる計算が実現されている。

古典論理回路を紹介するのは、小中学生にはとても大切なことだと思うし、1~2ページ追加すればできると思う。

それに将棋や囲碁のAIや、ディープラーニング、自然言語の翻訳、そして創薬、超弦理論研究などへの応用、さらに人工知能を開発すること自体が、すべて足し算と引き算で実行されるという事実を知ることで、基盤技術がもつパワーや重要性に気がつくきっかけになると思うのだ。「マイコン」を知っている小中学生がほとんどいない現代だからこそ、論理回路の紹介をする意味があると思う。


量子論理回路や量子コンピュータのこと

量子論理回路はまた別の話。古典論理回路との比較となると話が膨らみ過ぎるから、「量子コンピュータ」という切り口で、独立した特集記事になるだろう。もしくは「量子アニーリング」や先ごろ発表された「量子ニューラルネットワーク」も含めて別冊ニュートンとしてまとめるのがよさそうだ。(参考記事:「量子コンピュータの発展史(リンク集)」)

「量子ニューラルネットワーク」を量子コンピュータに含めるかどうかは、今後も議論されることだろうし、3つの異なる手法の量子コンピュータ研究に携わる研究者や組織への配慮も必要になることだろう。最新の情報を提供することと偏りなく紹介することの間にはジレンマが生じる。影響力の大きいNewtonだからこそ、慎重な判断が求められる。

そして、今回の人工知能特集に含められていなかったのが「量子コンピュータを利用した人工知能」だ。今のところ量子アニーリングを前提としているし、紙面の制限があるから今回の特集に含められないのは仕方ないと思う。別冊ニュートンとして人工知能の特集号を組めば、このあたりも含めて解説できるし、今回の月刊誌の特集号の内容も掘り下げることができる。

ここで判断に迷うのが「量子論理回路」の説明をどれくらいの深さで設定するかという問題だ。重要なキーワードは「状態の重ね合わせ」と「量子の絡み合い」だから、ブロッホ球や量子球を使った説明が必要だし、状態遷移にはブラ・ケット・ベクトルを使った数式を書く必要がでてくる。また量子アルゴリズムをどこまで取り上げるかも問題だ。(参考記事:「量子コンピュータ、量子アルゴリズムを学びたい高校生のために」)

先日の「オイラーの公式特集」のときもそうだったが、数式を記事にどの程度含めるか、どのように見せるかは、Newtonにとって、今後も続く課題である。(Newtonは日経サイエンスではないのだし。)今後、量子コンピュータを取り上げるときには顕在化することなので、今のうちから方針を練っておくのがよいと思った。Newtonライトは売れると思うが、「Newtonヘビー」の市場があるかどうかは、僕にはわからない。


人工知能の範囲を超えて、とりとめもなく考えを書いてしまったが、この特集記事はお勧めなので、書店で1月号をぜひ手にとっていただきたい。

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お知らせ:

このようなNewtonがどのように作られるのかがわかるイベントが、今週水曜に開催される。残席があるそうなので、ここに宣伝させていただこう。

■ タイトル
 グラフィック・サイエンス・マガジンの作り方
■ ゲスト
 高嶋 秀行 氏(ニュートン編集人)
■ 開催日時
 2017年11月29日(水) 18:00-20:00
■ 場所
 東京大学 本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター 3階 中教室

詳細、申し込みはこちら:
http://www.scicomsociety.jp/?page_id=25

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関連記事:

Newton(ニュートン)の0号と創刊号の思い出
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0bff55e11fe0fa8fd8f23e431724c678

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35dd84adaee4c749268d0b7d3283e83e

脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす:甘利俊一
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55335818aa47b1227eebc6b73c346960

あたらしい人工知能の教科書: 多田智史、石井一夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/dc3cc14a583c2eb1c35fc8f8af34f5c9

将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9c39fa7ba13e6b9f06728f9d26097191


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将棋ソフト(ぴよ将棋、K-Shogi)

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将棋の思考エンジンの強さは「レーティング」という尺度で測る。7月にインストールして「将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)」という記事で紹介した3つのフリーソフトは、次のようなレーティングだ。

Bonanza 6.0: レーティング2787
GPSFish: レーティング2837
Apery (WCSC26): レーティング3284

将棋フリーソフト レーティング
http://www.uuunuuun.com/

以下のページだとプロ棋士のレーティングは1300~2000である。あくまで目安にすぎないが、インストールした3つの思考エンジンが、いかに強いかおわかりだろう。

プロ棋士のレーティング: 男性棋士 女性棋士

初心者~R400~級位者~R1300~有段者~R2100~高段者~R2600~プロ~R3250~人外


スマホには「将皇」や「金沢将棋2」を入れてときどきCPU相手に対戦しているが、負けてばかりでモチベーションがあがらない。

 


ぴよ将棋

上達するのが実感できると楽しくなるだろう。そこでスマホに入れてみたのが「ぴよ将棋」である。これだと超初心者から有段者まで使えそうだ。

  

レベルは30段階。いちばん難しい「ピヨ帝」は有段者で、アマチュア六段に相当。レーティングだと2430だ。(R2430のこと。) アマチュア二段の金沢将棋2(レベル300)より強いし、プロ棋士の棋力も超えている。。。(参考:将棋ソフトのおおよその棋力表

クリックで拡大


超初心者のくせに最強のソフトを欲しがるなんて生意気だ。でもスマホでプロ棋士を超えるものがでていたことに驚いた。

ホームページと関連ページはこちらである。

ぴよ将棋 - 本格派対局将棋 [iOS版]
https://www.studiok-i.net/ios/piyo_shogi.html

将棋アプリ「ぴよ将棋」が神レベルと俺氏の中で話題に
http://hayashikun-shogi.blog.jp/archives/1327580.html

ぴよ将棋の強さと棋力は?高性能スマホアプリを攻略レビュー!
http://sigpiyo.com/3915.html

【将棋世界のアプリレビュー】第1回 ぴよ将棋 ~名前に似合わず本格派のスマホ対局アプリ
https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=72437

さっそくレベル1の「ひよこ」に自分が先手で挑戦。僕のような超初心者でも71手で勝つことができた。棋譜ファイルはこれだ。(記事の最後にもテキストで載せておく。)これだけ駒を取られたのに勝てたのは、運がよかったからだ。棋譜をご覧いただければ、何度も悪手を指している僕がどれだけ弱いかがわかるだろう。

*#先手 悪手数:7 疑問手数:3 好手数:0
*#後手 悪手数:6 疑問手数:8 好手数:0

後手(CPU)が投了したところ(クリックで拡大)



K-Shogi

ぴよ将棋の開発元がPC用に移植したのが「K-Shogi v3.6.0」である。これもインストールしてみた。インストールといってもzipファイルをダウンロードして解凍するだけである。

K-Shogi (フリーの将棋ソフト) - STUDIO-K Infinity
https://www.studiok-i.net/kshogi.html

将棋フリーソフト レーティング」によるとK-Shogi v3.6.0のレーティングはレベル30で2451となる。(PCの性能によってレーティングは変動する。)


ぴよ将棋で対局して得られた棋譜ファイルをペーストしてみた。右側の「指し手」ウィンドウを見ると、先手も後手も悪手、疑問手を連発していることがわかる。

クリックで拡大



可愛らしい駒だとどうも盛り上がらない。用意されている駒はひよこ文字と筆文字の2種類あるのだが、どちらも一文字駒だ。二文字駒の画像を自分で加工して3種類作ってみた。欲しい方はここからダウンロードするとよい。

クリックで拡大


棋譜解析結果



なおK-Shogiは「将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)」で紹介した「将棋所」や「ShogiGUI」のような将棋GUIソフトには対応していない。

他の将棋の思考エンジンとK-Shogiを対局させたいときは、次のページを参考にするとよい。

K-shogi(ぴよ将棋エンジン)とUSIエンジンの対局法
http://www.uuunuuun.com/single-post/2016/12/06/K-shogi(ぴよ将棋エンジン)とUSIエンジンの対局法


関連記事:

将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9c39fa7ba13e6b9f06728f9d26097191

将棋セット購入
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9f6ae58f79977e31a09fe5247a94bd3b

マグネット将棋を購入(大久保碁盤店)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/92637160014c1f22d52243eb3d23cbaf

購入: 羽生善治の将棋入門 ジュニア版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c8d84e3474ea5d68e4352a76bf3a197e

藤井四段、29連勝! 30年ぶり記録更新
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3a06df510b43cfdaf30d60bf9fe9da23


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# ---- ぴよ将棋 棋譜ファイル ----
棋戦:ぴよ将棋
開始日時:2017年11月28日(火) 02:25:08
終了日時:2017年11月28日(火) 02:35:42
手合割:平手
先手:プレイヤー(R0)
後手:Lv1 ひよこ(R80)
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:20/00:00:20)
*#定跡手
*#推奨定跡: ▲2六歩 ▲7六歩
2 3四歩(33) ( 0:01/00:00:01)
*#定跡手
*#推奨定跡: △8四歩 △3四歩 △4二銀
3 2五歩(26) ( 0:03/00:00:23)
*#定跡手
*#推奨定跡: ▲7六歩 ▲2五歩
4 3三角(22) ( 0:01/00:00:02)
*#定跡手
*#推奨定跡: △3三角
5 7六歩(77) ( 0:11/00:00:34)
*#定跡手
*#推奨定跡: ▲7六歩
*#定跡: ▲4八銀
6 3二銀(31) ( 0:01/00:00:03)
*#定跡手
*#推奨定跡: △2二銀 △2二飛
*#定跡: △3二銀 △4二銀 △4四歩
7 3八銀(39) ( 0:04/00:00:38)
*#指し手[-7]▲3八銀 △4四歩 ▲6八玉 △4二飛 ▲7八玉 △6二玉 ▲7七角 △7二銀 ▲8八玉 △7一玉 ▲9八香 △4五歩 ▲9九玉
*#推奨手[20]▲4八銀 △4四歩 ▲6八玉 △4二飛 ▲7八玉 △7二銀 ▲7七角 △6二玉 ▲8八玉 △7一玉 ▲5八金右 △5二金左 ▲9八香
*#定跡: ▲4八銀 ▲6八玉
8 8八角成(33) ( 0:01/00:00:04)
*#指し手[311]△8八角成 ▲同銀 △3三銀 ▲6八玉 △4二飛 ▲7七銀 △6二玉 ▲3六歩 △7二玉 ▲3七銀 △4四歩 ▲7八玉 △8二玉 ▲5八金右 △7二銀
*#推奨手[62]△4四歩 ▲6八玉 △4二飛 ▲7八玉 △6二玉 ▲7七角 △7二銀 ▲8八玉 △7一玉 ▲7八銀 △5二金左 ▲5八金右 △9四歩 ▲9六歩 △6四歩
9 8八銀(79) ( 0:03/00:00:41)
*#指し手[212]▲8八銀 △3三銀 ▲6八玉 △4二飛 ▲7七銀 △6二玉 ▲7八玉 △7二玉 ▲8八玉 △8二玉 ▲7八金 △7二銀 ▲6六歩 △9四歩 ▲5八金
10 8四歩(83) ( 0:01/00:00:05)
*#指し手[372]△8四歩 ▲4五角打 △5四角打 ▲3四角 △7六角 ▲5六角 △4四歩 ▲7八金 △5四角 ▲7七銀 △6二銀
*#推奨手[326]△3三銀 ▲6八玉 △4二飛 ▲4六歩 △6二玉 ▲7八玉 △7二玉 ▲4七銀 △8二玉 ▲5八金右 △7二銀
11 7八金(69) ( 0:04/00:00:45)
*#指し手[293]▲7八金 △3三銀 ▲7七銀 △7二銀 ▲6八玉 △4二玉 ▲7九玉 △7四歩 ▲3六歩 △7三桂 ▲3七桂
*#推奨手[500]▲4五角打 △5四角打 ▲3四角 △7六角 ▲5六角 △5四角 ▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩打 ▲同角成 △同銀 ▲同飛成 △2二歩打 ▲2四龍
12 9二香(91) ( 0:01/00:00:06)
*#指し手[956] 疑問 △9二香 ▲4五角打 △6二玉 ▲3四角 △7二玉 ▲7七銀 △8五歩 ▲4五角 △6二金 ▲5六角 △5四歩
*#推奨手[372]△3三銀 ▲7七銀 △4二玉 ▲6八玉 △7二銀 ▲7九玉 △7四歩 ▲3六歩 △7三桂 ▲3七桂 △8五歩
13 3六歩(37) ( 0:24/00:01:09)
*#指し手[735]▲3六歩 △3三銀 ▲7七銀 △9四歩 ▲6八玉 △9五歩 ▲4六歩 △3二金 ▲4七銀 △8五歩 ▲5八金
*#推奨手[837]▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩打 ▲2八飛 △9四歩 ▲4五角打 △5四角打 ▲3四角 △7六角 ▲5六角
14 8五歩(84) ( 0:01/00:00:07)
*#指し手[822]△8五歩 ▲7七銀 △3三銀 ▲3七銀 △9四歩 ▲6八玉 △7二銀 ▲4六銀 △9五歩 ▲7九玉 △7四歩 ▲5八金 △7三桂
15 3七桂(29) ( 0:11/00:01:20)
*#指し手[683]▲3七桂 △3三銀 ▲7七銀 △5四角打 ▲2六飛 △9四歩 ▲4六歩 △9五歩 ▲6八玉 △4四歩 ▲4七銀
*#推奨手[796]▲5六角打 △3三銀 ▲3五歩 △同歩 ▲2三角成 △3四角打 ▲2四歩 △2二歩打 ▲3四馬 △同銀 ▲6八玉
16 5二金(41) ( 0:01/00:00:08)
*#指し手[1241] 疑問 △5二金左 ▲2二角打 △4四角打 ▲同角成 △同歩 ▲2二角打 △3三角打 ▲3一角成 △4三金 ▲4六歩 △9四歩
*#推奨手[788]△3三銀 ▲7七銀 △7二銀 ▲4六歩 △3二金 ▲6八玉 △9四歩 ▲2九飛 △9五歩 ▲4七銀 △7四歩
17 1五角打 ( 0:26/00:01:46)
*#指し手[818] 疑問 ▲1五角打 △4二金 ▲2四歩 △同歩 ▲同角 △2三歩打 ▲4六角 △3三桂 ▲3五歩 △8四飛 ▲7七銀
*#推奨手[1214]▲2二角打 △3三角打 ▲3一角成 △4二金 ▲4六歩 △8六歩 ▲7七桂 △8七歩成 ▲同銀 △4一金 ▲5三馬 △6二銀 ▲7五馬
18 6二玉(51) ( 0:01/00:00:09)
*#指し手[804]△6二玉 ▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △3三角打 ▲2一飛成 △8八角成 ▲6一龍 △同玉 ▲8八金 △7九飛打 ▲4八玉 △7六飛成 ▲6六角打 △4四銀打 ▲7七金 △6五龍
19 2四歩(25) ( 0:11/00:01:57)
*#指し手[623]▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △4二角打 ▲2二飛成 △1五角 ▲3二龍 △3三桂 ▲4八金 △2八角打 ▲1六歩 △2六角 ▲3三龍 △1九角成 ▲3一龍 △1二香
20 2四歩(23) ( 0:01/00:00:10)
*#指し手[555]△2四歩 ▲同飛 △4二角打 ▲3四飛 △3三銀 ▲3五飛 △7二玉 ▲2二歩打 △同銀 ▲4二角成 △同金 ▲2五飛 △3二金
21 2四角(15) ( 0:05/00:02:02)
*#指し手[563]▲2四角 △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲4六角 △2三歩打 ▲8七銀 △8四飛 ▲7七桂 △8六歩打 ▲9六銀
22 2三銀(32) ( 0:01/00:00:11)
*#指し手[1041] 疑問 △2三銀 ▲4六角 △2四歩打 ▲同角 △同銀 ▲同飛 △3三桂 ▲2二飛成 △4四角打 ▲5八玉 △4五桂 ▲3三銀打 △同角 ▲同龍
*#推奨手[645]△2三歩打 ▲4六角 △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲8七銀 △8二飛 ▲8六歩打 △5四歩 ▲7七桂 △7二玉
23 4六角(24) ( 0:04/00:02:06)
*#指し手[971]▲4六角 △2四歩打 ▲同角 △同銀 ▲同飛 △3三桂 ▲5八玉 △7二玉 ▲2二飛成 △8六歩 ▲1一龍 △2八角打 ▲1三龍 △1九角成 ▲3三龍 △8七歩成 ▲同銀
24 1二銀(23) ( 0:01/00:00:12)
*#指し手[1910] 疑問 △1二銀 ▲5五角 △3三角打 ▲同角成 △同桂 ▲2二飛成 △3五歩 ▲1一龍 △3六歩 ▲1二龍 △7二玉 ▲3四歩打 △3七歩成 ▲同銀
*#推奨手[1250]△2四歩打 ▲5五角 △4四角打 ▲同角 △同歩 ▲2二角打 △8六歩 ▲同歩 △3三角打 ▲同角成 △同桂 ▲2二角打 △4三金 ▲1一角成 △8六飛
25 2二歩打 ( 0:15/00:02:21)
*#指し手[1817]▲2二歩打 △2六歩打 ▲同飛 △8六歩 ▲2一歩成 △8七歩成 ▲同銀 △4四角打 ▲1一と △2六角 ▲1二と △7二玉 ▲7五桂打 △4四角 ▲8三銀打 △同飛 ▲同桂成
26 3三桂(21) ( 0:01/00:00:13)
*#指し手[2237] 疑問 △3三桂 ▲2一歩成 △3五歩 ▲1一と △3六歩 ▲1二と △3七歩成 ▲同銀 △4五桂 ▲4八銀 △2四歩打 ▲同飛 △5四桂打 ▲2一飛成
*#推奨手[1862]△2六歩打 ▲2一歩成 △同銀 ▲2六飛 △2二歩打 ▲2四飛 △3五歩 ▲同歩 △7二玉 ▲8四桂打 △8三玉 ▲9六歩 △4四角打
27 2五桂(37) ( 0:10/00:02:31)
*#指し手[597] 悪手 ▲2五桂 △同桂 ▲同飛 △3二角打 ▲2九飛 △4四歩 ▲2四桂打 △7六角 ▲1二桂成 △同香 ▲7七銀 △4五歩
*#推奨手[2315]▲2一歩成 △8六歩 ▲同歩 △3五歩 ▲1一と △3六歩 ▲1二と △8六飛 ▲2一飛成 △7六飛 ▲7七銀 △4六飛 ▲同歩 △3七歩成 ▲同銀
28 2五桂(33) ( 0:01/00:00:14)
*#指し手[557]△2五桂 ▲同飛 △3三桂打 ▲2九飛 △2五歩打 ▲5五角 △2四角打 ▲6八玉 △7二玉 ▲1六桂打 △1五角
29 2五飛(28) ( 0:06/00:02:37)
*#指し手[595]▲2五飛 △3三桂打 ▲2九飛 △2五歩打 ▲3七桂打 △8六歩 ▲2五桂 △同桂 ▲同飛 △8七歩成 ▲同銀 △8六歩打 ▲9六銀
30 5一金(61) ( 0:01/00:00:15)
*#指し手[1580] 悪手 △5一金寄 ▲2一歩成 △3三角打 ▲2二飛成 △5四桂打 ▲3三龍 △4六桂 ▲3一龍 △3八桂成 ▲同金 △2九角打 ▲4八金
*#推奨手[611]△3二角打 ▲7七桂 △4四歩 ▲8五桂 △6四桂打 ▲7七銀 △1四角 ▲7五飛 △7四歩 ▲1五飛 △8四歩打
31 7五歩(76) ( 0:23/00:03:00)
*#指し手[777] 悪手 ▲7五歩 △3三桂打 ▲2九飛 △2五歩打 ▲2一歩成 △同銀 ▲2三桂打 △2二銀 ▲1一桂成 △同銀 ▲1三角成 △パス
*#推奨手[1562]▲2一歩成 △4四角打 ▲2二と △5四桂打 ▲3七角 △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲7七桂 △3五歩 ▲5六桂打 △3六歩 ▲1五角 △1四歩 ▲4四桂 △1五歩
32 8六歩(85) ( 0:01/00:00:16)
*#指し手[970]△8六歩 ▲7四歩 △8四飛 ▲8六歩 △1四角打 ▲8五飛 △同飛 ▲同歩 △7六飛打 ▲8七銀 △4六飛 ▲同歩 △7四歩
*#推奨手[706]△3三桂打 ▲2九飛 △2五歩打 ▲5八玉 △7二玉 ▲7七桂 △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲8七銀 △8四飛
33 7七桂(89) ( 0:14/00:03:14)
*#指し手[-76] 悪手 ▲7七桂 △8九角打 ▲6九玉 △8七歩成 ▲同銀 △同飛成 ▲同金 △6七角成 ▲7四桂打 △同歩 ▲6八歩打 △8九馬 ▲8三飛打 △7八銀打 ▲5八玉
*#推奨手[877]▲7四歩 △同歩 ▲2一歩成 △2四歩打 ▲同角 △8七歩成 ▲同銀 △8六歩打 ▲7六銀 △1四角打 ▲5一角成 △同金 ▲2二飛成 △6一玉 ▲1一龍
34 8七歩成(86) ( 0:01/00:00:17)
*#指し手[405]△8七歩成 ▲同銀 △8六歩打 ▲7六銀 △6四桂打 ▲8五銀 △8七角打 ▲6八金 △7六桂 ▲2一歩成 △6八桂成 ▲同玉 △7八金打 ▲5八玉 △7七金
*#推奨手[49]△8九角打 ▲7九金 △6七角成 ▲7四歩 △8七歩成 ▲7三歩成 △同桂 ▲7四桂打 △7二玉 ▲8二桂成 △同銀 ▲8七銀 △7七馬 ▲4八玉 △8六歩打 ▲7八銀
35 8七銀(88) ( 0:04/00:03:18)
*#指し手[502]▲8七銀 △8六歩打 ▲9八銀 △8七角打 ▲同銀 △同歩成 ▲7四桂打 △同歩 ▲8二角成 △同銀 ▲8七金 △7八銀打 ▲2一歩成 △8七銀成 ▲1一と △7五歩 ▲9五角打 △7三角打
36 8七飛成(82) ( 0:01/00:00:18)
*#指し手[1217] 疑問 △8七飛成 ▲同金 △1四角打 ▲2八飛 △7八銀打 ▲8八歩打 △8六歩打 ▲同金 △6七銀成 ▲2一歩成 △6六桂打 ▲1一と
*#推奨手[584]△8六歩打 ▲7六銀 △6四桂打 ▲7四歩 △同歩 ▲2一歩成 △2四歩打 ▲同飛 △1五角打 ▲5八玉 △2四角 ▲同角 △2一銀 ▲8五銀 △8七歩成
37 8七金(78) ( 0:01/00:03:19)
*#指し手[1266]▲8七金 △5四桂打 ▲2四角 △2三歩打 ▲5一角成 △同金 ▲2一歩成 △7八銀打 ▲2二飛打 △5二金 ▲4二金打 △6一角打 ▲1一と △8七銀成 ▲1二と
38 2三歩打 ( 0:01/00:00:19)
*#指し手[2050] 悪手 △2三歩打 ▲9一飛打 △7八角打 ▲9二飛成 △7二銀打 ▲8八金 △6七角成 ▲8二歩打 △8七歩打 ▲同金 △7八馬 ▲8一歩成
*#推奨手[1175]△8六歩打 ▲同金 △8八角打 ▲6九桂打 △2四歩打 ▲同角 △9九角成 ▲2一歩成 △2三香打
39 3一飛打 ( 0:32/00:03:51)
*#指し手[1246] 疑問 ▲3一飛打 △5四桂打 ▲5五角 △4四銀打 ▲同角 △同歩 ▲1一飛成 △1四角打 ▲5五飛 △2八角打 ▲5六飛 △1九角成 ▲1二龍
*#推奨手[1918]▲9一飛打 △5四桂打 ▲9二飛成 △8二歩打 ▲5五角 △2四歩 ▲2七飛 △7八銀打 ▲8一龍 △8七銀成 ▲7四歩 △1五角打 ▲5八玉
40 4二金(52) ( 0:01/00:00:20)
*#指し手[1976] 疑問 △4二金寄 ▲1一飛成 △5四桂打 ▲3七角 △7八銀打 ▲8八金 △6七銀成 ▲6九香打 △5七成銀 ▲6四歩打 △同歩 ▲同香 △6三歩打
*#推奨手[1372]△5四桂打 ▲5五角 △2四歩 ▲2九飛 △7八銀打 ▲8六金 △6七銀成 ▲1一飛成 △6八角打 ▲4八玉 △5七角成 ▲3七玉
41 1一飛成(31) ( 0:08/00:03:59)
*#指し手[2306]▲1一飛成 △5四桂打 ▲3七角 △7八銀打 ▲8八金 △6七銀成 ▲6九香打 △7六角打 ▲4八玉 △2四歩 ▲同飛 △8七歩打
42 2四歩(23) ( 0:01/00:00:21)
*#指し手[2433]△2四歩 ▲同角 △3三桂打 ▲同角成 △同金 ▲1二龍 △2三銀打 ▲1三龍 △2四角打 ▲同飛 △同銀 ▲1一龍
*#推奨手[2267]△5四桂打 ▲3七角 △7八角打 ▲8八金 △6七角成 ▲6八香打 △5七馬 ▲5八歩打 △6八馬 ▲同玉 △6四香打 ▲同角
43 1二龍(11) ( 0:07/00:04:06)
*#指し手[234] 悪手 ▲1二龍 △2五歩 ▲4八玉 △8九飛打 ▲8二歩打 △同銀 ▲7六金 △8八飛成 ▲5八香打 △2六桂打 ▲2一歩成 △6九銀打 ▲1三角成
*#推奨手[2564]▲2四角 △3三桂打 ▲同角成 △同金 ▲1二龍 △2三銀打 ▲2一龍 △3二銀 ▲3一龍
44 2五歩(24) ( 0:01/00:00:22)
*#指し手[500]△2五歩 ▲4八玉 △8九飛打 ▲7六金 △8七角打 ▲6五銀打 △9九飛成 ▲2一歩成 △2六桂打 ▲2七銀 △8八龍 ▲5八香打
45 2四角(46) ( 0:27/00:04:33)
*#指し手[-317] 疑問 ▲2四角 △8九飛打 ▲4八玉 △8七飛成 ▲2一歩成 △3二桂打 ▲1三角成 △7七龍 ▲3一と △8八龍 ▲5八桂打 △1五角打 ▲3九玉
*#推奨手[428]▲4八玉 △7九飛打 ▲6五桂 △7八飛成 ▲5八香打 △8七龍 ▲2一歩成 △2六桂打 ▲5三桂成 △同玉 ▲6五桂打 △6二玉 ▲5三銀打 △7二玉
46 2六角打 ( 0:01/00:00:23)
*#指し手[321] 疑問 △2六角打 ▲3七銀打 △8九飛打 ▲4八玉 △8七飛成 ▲2六銀 △同歩 ▲2一歩成 △3二桂打 ▲1三角成 △7七龍 ▲3一馬 △8八龍 ▲5八香打
*#推奨手[-288]△8九飛打 ▲4八玉 △8七飛成 ▲6五桂 △7八龍 ▲5八桂打 △4四桂打 ▲2一歩成 △3六桂 ▲3七玉 △2六金打
47 3七銀打 ( 0:01/00:04:34)
*#指し手[459]▲3七銀打 △8九飛打 ▲4八玉 △3七角成 ▲同銀 △4五桂打 ▲4六銀 △3七銀打 ▲同銀 △同桂成 ▲同玉 △4九飛成 ▲2一歩成 △2六銀打 ▲4六玉
48 3七角成(26) ( 0:01/00:00:24)
*#指し手[244]△3七角成 ▲同銀 △8九飛打 ▲4八玉 △8七飛成 ▲6五桂 △7八龍 ▲5八桂打 △4五桂打 ▲4六銀 △2八銀打
49 3七銀(38) ( 0:03/00:04:37)
*#指し手[115]▲3七銀 △8九飛打 ▲4八玉 △4五桂打 ▲4六角打 △8七飛成 ▲2一歩成 △5二金打 ▲6五桂 △8八龍 ▲5八桂打 △9九龍
50 8九飛打 ( 0:01/00:00:25)
*#指し手[484]△8九飛打 ▲4八玉 △8七飛成 ▲6五桂 △6七龍 ▲2一歩成 △4五桂打 ▲4六銀 △6五龍 ▲4二角成 △同金 ▲同龍 △5二金打
51 4八王(59) ( 0:13/00:04:50)
*#指し手[363]▲4八玉 △8七飛成 ▲8二歩打 △4五桂打 ▲4六銀 △7八龍 ▲5八桂打 △2八銀打 ▲3九香打 △同銀 ▲同玉 △3七銀打 ▲同銀 △同桂成
52 8七飛成(89) ( 0:01/00:00:26)
*#指し手[530]△8七飛成 ▲2一歩成 △3二桂打 ▲1三角成 △7七龍 ▲3一と △1一歩打
*#推奨手[164]△4五桂打 ▲3九香打 △3七桂成 ▲同香 △8七飛成 ▲2一歩成 △5二金打 ▲6五角打 △8八龍 ▲5八桂打 △2八銀打 ▲9二角成
53 2一歩成(22) ( 0:24/00:05:14)
*#指し手[506]▲2一歩成 △3二桂打 ▲1三角成 △7七龍 ▲3一と △4四桂 ▲3二と △5二金寄 ▲3三と △8八龍 ▲5八香打 △4五桂打 ▲4六馬 △3七桂成 ▲同馬
54 7七龍(87) ( 0:01/00:00:27)
*#指し手[766]△7七龍 ▲4二角成 △同金 ▲同龍 △5二金打 ▲4一龍 △8八龍 ▲5八金打 △6一銀打 ▲7四歩 △9九龍
55 3一角打 ( 0:34/00:05:48)
*#指し手[129] 悪手 ▲3一角打 △8八龍 ▲5八桂打 △4五桂打 ▲4六銀 △2八銀打 ▲3九香打 △同銀 ▲同金 △5七桂成 ▲同銀 △6八銀打 ▲同銀
*#推奨手[1217]▲4二角成 △7八龍 ▲5八香打 △4二金 ▲同龍 △5二金打 ▲8三角打 △6一銀打 ▲3一龍 △7二銀直 ▲9二角成 △6七龍 ▲3四龍
56 6八龍(77) ( 0:01/00:00:28)
*#指し手[-263]△6八龍 ▲5八香打 △4五桂打 ▲2九桂打 △3二金打 ▲1三角引成 △3七桂成 ▲同桂 △2七銀打
57 5八桂打 ( 0:20/00:06:08)
*#指し手[-587]▲5八桂打 △4五桂打 ▲3八香打 △5七桂成 ▲同角 △同龍 ▲同玉 △6五桂打 ▲6六玉 △6四銀打 ▲4六銀 △7七角打 ▲5六玉 △5五銀打 ▲同銀
*#推奨手[-221]▲5八香打 △4五桂打 ▲2九桂打 △3二金打 ▲1三角引成 △3三銀打 ▲4六銀 △2四銀 ▲同馬 △4四歩 ▲4五銀 △同歩
58 6七龍(68) ( 0:01/00:00:29)
*#指し手[1572] 悪手 △6七龍 ▲4二角引成 △同金 ▲同角成 △5六桂打 ▲同歩 △7二玉 ▲5三馬 △6二桂打 ▲5七金打 △6九龍 ▲8四桂打 △8三玉
*#推奨手[-346]△4五桂打 ▲2九香打 △7二玉 ▲4六銀 △3七銀打 ▲同銀 △同桂成 ▲同玉 △4五桂打 ▲2七玉 △2六金打 ▲1八玉
59 4二角成(31) ( 0:15/00:06:23)
*#指し手[1724]▲4二角引成 △同金 ▲同角成 △5六桂打 ▲同歩 △7二玉 ▲5三馬 △6二銀打 ▲5七金打 △同龍 ▲同玉 △4五桂打 ▲4六玉 △4四金打 ▲8四桂打 △8三玉
*#【詰めろ】
60 4二金(51) ( 0:01/00:00:30)
*#指し手[1503]△4二金 ▲同龍 △5二金打 ▲同龍 △同玉 ▲5一金打 △6二玉 ▲6一金打 △7二玉 ▲7一金 △同玉 ▲8三銀打 △5八龍 ▲同金
61 4二龍(12) ( 0:06/00:06:29)
*#指し手[1247]▲4二龍 △5二金打 ▲同龍 △同玉 ▲5一金打 △6二玉 ▲6一金打 △7二玉 ▲7一金 △8三玉 ▲8九香打 △8七歩打 ▲8五金打 △4五桂打 ▲7二銀打 △8二玉
62 6一玉(62) ( 0:01/00:00:31)
*#指し手[29999] 悪手 △6一玉 ▲5一金打
*#推奨手[1910]△5二金打 ▲同龍 △同玉 ▲5一金打 △6二玉 ▲6一金打 △7二玉 ▲7一金 △8三玉 ▲8五金打
63 8三金打 ( 0:30/00:06:59)
*#指し手[4306] 悪手 ▲8三金打 △5六桂打 ▲同歩 △5七金打 ▲同角 △同龍 ▲3八玉 △2七銀打 ▲同玉 △2六歩 ▲3八玉 △2七歩成 ▲同玉 △1五桂打 ▲3八玉 △2七桂成 ▲同玉 △2六歩打 ▲同銀 △4七龍 ▲3七金打
*#推奨手[29999]▲5一金打
*#【詰めろ】
64 5六桂打 ( 0:01/00:00:32)
*#指し手[4701]△5六桂打 ▲同歩 △5七角打 ▲3八玉 △2七銀打 ▲同玉 △1五桂打 ▲同角 △2六銀打 ▲同銀 △同歩 ▲同玉 △2五歩打 ▲同玉 △2四歩打 ▲3四玉 △5二金打 ▲3一龍 △5一銀打 ▲6二歩打 △同玉
*#推奨手[4397]△5九銀打 ▲同金 △5六桂打 ▲同歩 △5七角打 ▲同角 △同龍 ▲3八玉 △2六桂打 ▲同銀 △2七銀打 ▲同玉 △2六歩 ▲同玉 △5二金打 ▲3一龍 △5一銀打 ▲3四龍 △4四角打 ▲3五銀打
65 3九王(48) ( 0:08/00:07:07)
*#指し手[3282] 悪手 ▲3九玉 △4八銀打 ▲同銀 △同桂成 ▲同金 △2七桂打 ▲3八玉 △2九銀打 ▲2七玉 △2六金打 ▲2八玉 △5五角打 ▲4六銀打 △2七銀打 ▲2九玉 △6九龍 ▲3九銀打
*#推奨手[4507]▲3八玉 △4六桂打 ▲同角 △2七銀打 ▲同玉 △2六銀打 ▲同銀 △同歩 ▲同玉 △2五歩打 ▲同玉 △5二金打 ▲3一龍 △5一角打 ▲6二歩打 △同玉 ▲3四玉 △3三歩打
*#【詰めろ】
66 2七桂打 ( 0:01/00:00:33)
*#指し手[4934] 悪手 △2七桂打 ▲2八玉 △5八龍 ▲同金 △3九銀打 ▲2七玉 △4九角打 ▲3八香打 △2六銀打 ▲同銀 △同歩 ▲同玉 △2五歩打 ▲同玉 △1四金打 ▲3四玉 △2四金 ▲同玉 △2三歩打 ▲同玉
*#推奨手[3381]△4八銀打 ▲同銀 △同桂成 ▲同金 △6九龍 ▲4九香打 △2七桂打 ▲3八玉 △3九金打 ▲2七玉 △2六銀打
67 3八王(39) ( 0:05/00:07:12)
*#指し手[5248]▲3八玉 △3九桂成 ▲同玉 △4八銀打 ▲同銀 △同桂成 ▲同金 △6九龍 ▲4九香打 △3八銀打 ▲同玉 △3七銀打 ▲同金
*#【詰めろ】
68 1九桂成(27) ( 0:01/00:00:34)
*#指し手[29999] 悪手 △1九桂成 ▲5二金打
*#推奨手[5462]△4八桂成 ▲同金 △2九銀打 ▲2七玉 △3八角打 ▲同金 △同銀
69 6二香打 ( 0:34/00:07:46)
*#指し手[30000]▲6二香打 △同銀 ▲7二金打
70 6二銀(71) ( 0:01/00:00:35)
*#指し手[29999]△6二銀 ▲7二金打
71 7二金打 ( 0:15/00:08:01)
*#指し手[30000]▲7二金打
*#先手 悪手数:7 疑問手数:3 好手数:0
*#後手 悪手数:6 疑問手数:8 好手数:0
*#棋譜解析 ぴよ将棋 v.3.2.5(iOS) Lv.25 2コア ぴよベンチ:575
72 投了 ( 0:15/00:00:50)
まで71手で先手の勝ち

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)

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11月29日は、このような催しに行ってきた。

科学コミュニケーション研究会
第40回関東支部勉強会
■ タイトル
 グラフィック・サイエンス・マガジンの作り方
■ ゲスト
 高嶋 秀行 氏(ニュートン編集人)
■ 開催日時
 2017年11月29日(水) 18:00-20:00
■ 場所
 東京大学 本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター 3階 中教室

詳細:
http://www.scicomsociety.jp/?page_id=25


1981年の創刊以来お世話になってきた愛読誌だけに、これは聞き逃せない。申し込みして以来、この日がくるのを楽しみにしていた。

この日はたまたま午後4時まで九段下で用事があり、少し時間があったので神保町でぶらぶらしていた。理工系書籍専門の明倫館書店の店先には、いつもは見かけない箱が置かれていた。

「あれっ!Newtonだ。。。」

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なんとまぁ奇遇なこと。よりによってNewtonの話を聞きにいく日にバックナンバーとご対面。保存状態のよい本ばかり1冊100円で売られている。刊行年月と関係なく雑然と積まれているから、読みたい号を探すのにも骨が折れる。しばらく探していると、店員さんが、また1箱運んできた。

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追加の箱の上のほうにあったのがこの2冊。つい先日、最新号を「Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能」という記事で紹介したばかりなのに、人工知能特集は1987年8月にもやっていたわけか。。。ページをめくると、次のような項目で24ページの特集が組まれている。

「エキスパートシステム」、「問題解決のための探索」、「演繹推論」、「意味ネットワーク」、「構文解析、意味処理を使った機械翻訳」、「パターン照合による画像認識」、「LISPやPROLOGなどのプログラム言語」、「人工知能チップ、並列処理コンピュータ」、「心や感情をもつか」、「ニューロンのモデル」

2018年1月号にあった「機械学習」、「ディープラーニング」、「Python」、「自動運転車」、「ディープラーニングによる機械翻訳」、「シンギュラリティ」、「人工知能に対する攻撃」の項目はまだない。

僕が買ったこの2冊は1時間後、すぐ役に立つことになる。この2冊をたまたま選んだのも後になってみると奇遇としか言いようがない。

前置きが長くなったが本題に入ろう。


科学コミュニケーション研究会 第40回関東支部勉強会

会場は東大の本郷キャンパス伊藤国際学術研究センター3階 中教室。この建物は「なみとつぶのサーカスー宇宙の超精密実験の現在」を聴講するため、今月4日に訪れたばかりだ。

この日はNewtonの作り方だけでなく、もうひとつ東大の理系大学院生によるBuzzScienceについてのプレゼンがあった。

物理学の市民向け講座に来る層よりずっと若い大学生、大学院生が多い。あと若い女性の比率も高かった。これはBuzzScienceの関係者が多いためだとわかった。

プログラムは次のとおり。

1)グラフィック・サイエンス・マガジンの作り方 by 高嶋 秀行 氏(ニュートン編集人)
2)BuzzScience:最先端の科学をわかりやすく伝える情報ポータルの紹介
3)質疑応答


グラフィック・サイエンス・マガジンの作り方

Newtonの編集人の高嶋さんが登壇し、自己紹介された。大学院で物性物理を専攻した後、読売新聞で記者をされ、科学部に配属。このページで詳しくお読みいただけるように、その後2001年からニュートンプレス社で編集者・記者として勤務され、現在は編集部長、編集人、つまり編集責任者としてご活躍されている。初代竹内均編集長のもとで数年間勤務されていた方だ。

編集部では企画から決定、チェック、編集まですべてを行なっているそうだ。これほど知名度がある雑誌だが、社員数は人事や経理担当の人も含めてわずか40人だという。

現在月刊Newtonは紙の雑誌、iPadで読めるインターネット版、Kindle版の3種類。科学専門誌だと誤解している人がいるが、中学生以上を対象とした一般向け雑誌であることを高嶋さんは強調されていた。

さて、記事の作り方である。

イラスト作成などを外注していた頃もあったが、現在は記者による原稿の執筆、イラスト作成、DTPなどすべてを社内の編集者が行っている。そのため変更や修正が入ったとき、機敏に対応できるのだ。

まず編集者が記事とともに大まかなイラストを作成し、ページの骨組みイメージを作成する。この「編集者のラフ」をイラストレータに渡し、美しいイラストを作ってもらう。

高嶋さんが例にあげたのは、地球が太陽を公転する様子を軌道の外から見たイラストである。そして地球の周りには月が公転している。このとき読者の視線から見えるのは太陽の手前にある地球、そして地球の手前にある月だ。だから読者は月の裏側を見ていることになる。イラストレーターは、私たちがよく見る月の表側の写真をお手本にしてはならず、裏側の写真をもとにイラストを描くのだ。

毎号「Newton Special」と呼ぶ見開きでメインの特集記事があるのだが、文字を少なくして圧迫感のない紙面になるよう心掛けているそうだ。

次に記事の中見出しを決めながらページ構成を行なう。中見出しはぱっと見るだけで、内容をつかめるように文や用語を工夫する。「つかみ」が大切なのだと僕は思った。

特集記事は長くなることがある。その場合、全体の流れが明確になるように、ページ・イメージを縮小表示した「サムネイル」を作成する。これは紙芝居のようなものだ。

イラストや写真が少ない「読み物系」の記事の場合は、適度に改行を入れたり、中見出しを入れて読みやすくする。

美しい写真を載せるときは、大きく紙面をめいっぱい使う。写真の中の美しい箇所が隠されないように、文字の位置にも気を配っているそうだ。

さて、記事の内容である。読者のニーズを満たすことは雑誌の使命だ。そのために500名の読者モニターから毎月フィードバックをもらうようにしているそうだ。つまり記事ごとに人気投票を行うことになる。よい評価をもらえれば、その記事内容が読者の求めていることだとわかるだけでなく、記事を担当した社員はうれしいし、モチベーションアップにもつながる。

この他、2005年から2015年には毎年「特別モニター会議」というのを行なったそうだ。これは参加したい読者を募って、Newtonに対する希望や不満を生の声として伝えてもらい、とことん議論するという催し。ドラフト段階の記事に対してダメ出しをしてもらうことを何度か繰り返し、よりよい記事に仕上げていくのだ。

会議に参加する読者は「なるべく若い人を」、「その分野に詳しい人、専門家ではなく素人を」という基準で選んでいたそうだ。実をいうと僕は昔、一度だけ応募したことがあり、選んでもらえなかったことがあったのだが、その理由がこの日ようやくわかってスッキリできた。どちらの条件も僕は満たしていない。

僕が明倫館書店でこの日に買った「量子論」の号も、この会議から生まれたもので、「とねさんが買ったこの号は、実は私が担当したものなのですよ。」と高嶋さんはおっしゃっていた。なんという偶然だろう。。。僕はまるで高嶋さんのプレゼンのために買い物したようなものである。

また、最新号の「人工知能特集」であるが、高嶋さんは僕が買ってきた1987年8月号も手にとり、「この時代に人工知能特集が組まれていたのは知らなかった。」とおっしゃっていた。僕にとっては社会人1年目だが、1975年生まれの高嶋さんは12歳だから、お父様からNewtonを初めて買ってもらった頃のことだ。ご存知ないのは無理もない。高嶋さんは小学生のときに見たNewtonの超伝導のイラストが強く印象に残っているそうで、大学院での専攻も超伝導だったそうだ。Newtonのイラストから受けた印象が専攻の決定に(すべての理由ではないとしても)影響したことをお話になっていた。

ともあれ、特別モニター会議から生まれた号は、このほか「相対性理論」、「光とは何か」、「ニュートン力学」、「時空」、「素粒子」、「大宇宙」、「電力とエネルギー」、「生命とは何か」、「太陽系と進化」、「地球と生命」などがあるそうだ。

このように、これまでたくさんの特集号があったわけだが、忘れてならないのが2011年4月26日発売の「大震災特集号」である。予定していた記事を先送りにして、全力投球して作成された。そしてこの号は日本のすべてのジャンルの雑誌から選ばれる「雑誌大賞」で準グランプリをいただいたのである。これはすごいと思った。

さらに同年6月には「福島原発、超巨大地震」を110ページの特集として発売した。原発の是非は社会的に賛否が二分するデリケートな問題である。Newtonは科学的な立場から、原発のしくみや、起きたことを科学的な立場から、ありのままに伝えるという方針で、この号を作成したそうだ。初代編集長の竹内均先生は生前から「中立性」を重視されていたので、これを踏まえてそうしたわけである。

この号は僕も当時買って読んでいた。震災のつらい記憶や原発への恐怖にとらわれていた時期、賛否渦巻くインターネット上の情報で混乱していた時期だったので、自分の考えや気持ちを整理するうえで、とてもありがたかったことを覚えている。


さて、一段落ついたので続きは次回の記事でということにさせていただこう。次回は「魅せるイラストづくり」から始まる。


関連記事:

Newton(ニュートン)の0号と創刊号の思い出
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0bff55e11fe0fa8fd8f23e431724c678

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf3a744f940e92c0277e9e5e576604b

橋本幸士×板倉龍「Newton超ひもナイト」@ 下北沢
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/567088304d1f2dca5349826c561adb3e


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グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その2)

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前回の記事の続きである。


まず、魅せるイラスト作りについてだ。高嶋さんが小学生のときに見た超伝導のイラストが印象に残ったから、大学での専攻決定に影響したことを前回紹介した。「魅せる」とはそういうことである。

そしてNewtonのイラストに求められるものは、それだけではない。まず、パッと見て何についてのイラストであるかがわかること、そして説明のために複数描かれるイラストは読者が見る順番がわかりやすいように配置することが求められる。

そしてイラストにも要素を詰め込み過ぎないのが大切だ。絵としての美しさを兼ね備えていることが大切なのである。読者の心に残るものに仕上げるのだ。

また、描かれる対象の「質感」にもこだわりをもっている。高嶋さんが例にあげたのは、素粒子のイラストだ。厳密にいえば素粒子は「点」なので大きさをもたないが、説明のためには「球体」として描かなければならない。

このとき素粒子と反粒子の濃淡を変えたり、他の素粒子と区別するために表面に光沢をもたせたり、ザラザラに見えるように工夫をしている。また素粒子が運動するスピード感を出すために「ビューン」と伸ばす直線にも、納得がいくまでイラストレーターに注文をつけているそうだ。大切なのは科学的事実を正確にイメージとして読者に伝えることへの「こだわり」である。

会場の笑いをとったのが円周率のイラストだ。空間に描かれた3.141592...で始まる長い曲線は紙面の奥に向かって伸びている。永遠に連なるその数列は球体の北極につながり、糸巻のように球体の上から下にぐるぐると巻き付いていく。表面に見える文字は小さいのと、ごちゃごちゃしていて数字だとやっと判別できるレベル。南極に達した曲線はふたたび奥のほうへ伸びていき、はるか彼方へ消えていく。

どうせ数字だとわからないのだから、手を抜いてそれらしく描けばよいのだと思う。けれどもここにもNewtonのこだわりがあった。描かれた数字はすべて本物の円周率表からとっており、曲線に沿って配置するようにイラストレータにお願いして作成したのである。細部まで手を抜かない徹底ぶりが見事である。

最近はイラストに「遊び心」を加えるのようになったそうだ。たくさんの細胞を描くかわりにテトリス調の図柄で代用したのもその一例だ。

そして特に重要なのが表紙である。最近の例ではオイラーの公式を紹介した号がそれにあたる。敬遠されがちな数式を、いかに美しく印象付けるかがポイントだ。まるで氷の結晶のようにキラキラ輝く素材をイメージさせて、世界一美しいといわれるこの公式を中央に配置した。そしてその両側にも氷の結晶を置いたのはこの絵を描いたイラストレータの機転だそうだ。


次に高嶋さんがお話されたのはNewtonの文章についてである。常に心掛けているのは、次の3つ。

- 正確さ
- わかりやすさ(中学生以上を対象)
- 面白さ(Interestingの意味で)

そのため編集者が書いた記事は、必ず専門家の校閲を受けることを徹底している。その際にときどき起こってしまうのは、専門家による修正により文章が難しくなってしまうことである。その場合は編集者が文章を易しく書き直し、対案として専門家に再度校閲を依頼することになる。

そして記事を書く際に心がけていることの、もうひとつは「文章は書き手のモノではなく、読み手のモノであること」だ。読者を思い描きながら書くということである。

初出のときは専門用語を使わず、どうしても使わなければならないときはカッコ書きで言い換えたり、硬い印象の漢語はなるべく使わないなど、言葉ひとつひとつに注意を払う。

易しく書くことと分かりやすいことは一致しない。易しく書いたとしても、読み手にその文章を「読む動機」を上手に伝えないと、読み手はなぜいまこの文章を読んでいるのかわからなくなってしまうのだ。

記事を書くことを繰り返し、どんなに慣れてきたと思っても、自分の思い込みやクセが紛れ込んでしまう。これを防ぐためには編集部内での記事の回し読みが不可欠になる。他人に読んでもらうことで、個人では解決できない文章のクセや難解さを解消することができる。Newtonではこのような回し読みも必ず行うようにしているそうだ。

文章を視覚的にイメージできるように配置することも大切だ。誌面上で目立つ部分は、特に熟考して文章を書くように気を付けている。たとえば、タイトルやサブタイトル、リード文などがこれにあたる。

科学ブロガーとして、高嶋さんが文章についてお話になった内容は、とても参考になった。特に「易しく書くことと分かりやすいことは一致しない。」という部分。今後のブログ記事に活かしたいと思う。


高嶋さんが次にお話されたのは、他の科学雑誌との差別化についてである。すぐ思いつくのは「日経サイエンス」だ。

科学という共通の土俵に共存しているので、取り上げるテーマは似通ってしまう。けれども対象読者が違うので、Newtonと日経サイエンスが競合するとは考えていないという。日経サイエンスはNewtonより難易度が高く、理系学生、研究者向けの雑誌だからだ。

日経サイエンスはライバルではなく「同志」なのである。科学をわかりやすく社会に伝える使命を帯びた仲間である。全国の書店の科学史に割り当てられる本棚は、Newtonだけでは維持することができない。日経サイエンスをはじめ、多数の科学雑誌、科学書籍があることで、本棚のスペースを確保することができるのだ。この考え方は面白いと思った。


次に高嶋さんが話された内容について、質疑応答の時間が少しだけ設けられた。僕も2つ質問させていただいた。他の方の質問と高嶋さんの回答はすべてをメモしたわけではないので忘れてしまったものがある。覚えていることだけ紹介すると不公平になるから、自分がした質問と回答だけ書いておくことにしよう。

質問1: イラストを担当する美術系の人はふつう自己表現や自由な表現をしたいという気持ちが強いと思うのですが、科学的なイラストには表現についての制限がかかります。イラストレータと記事担当者の間で対立がおきたり、イラストレータに不満が生じたりはしませんでしょうか?

高嶋さんの回答: その点は大丈夫です。喧嘩になったりしたことはありませんよ。(と言って会場の笑いをとっていらっしゃいました。)

質問2: 編集者はそれぞれ得意分野と不得意分野があると思います。得意分野だと詳しく知っているため、一般の人が何が理解できないか逆にわからないこともあると思います。執筆を依頼するときは、そのあたりをどのようにしていますでしょうか?

回答: 後ろのほうの席にいらっしゃったNewton編集者の板倉龍さんがお答えくださいました。板倉さんは自分の得意分野の記事よりも、不得意な分野の記事を書くようにしていらっしゃるそうです。


この後、高嶋さんは次のセッション、つまりBuzzScienceの方から依頼を受けた科学記事に対するダメ出しをされたのだが、ここに書くにはBuzzScienceの説明をしなくてはならない。

これはまた次回の記事で、ということにさせていただこう。


関連記事:

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ec7f96712045560b6cf3d7b1e851e49e

Newton(ニュートン)の0号と創刊号の思い出
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0bff55e11fe0fa8fd8f23e431724c678

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf3a744f940e92c0277e9e5e576604b

橋本幸士×板倉龍「Newton超ひもナイト」@ 下北沢
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BuzzScience 最先端の科学を、楽しく、面白く

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前回の記事の続きである。

Newton編集人の高嶋さんによる「グラフィック・サイエンス・マガジンの作り方」に続き、東京大学大学院生の江口さんが「BuzzScience 最先端科学をすべての人に」というプレゼンを行なった。江口さんはBuzzScienceの代表をつとめている。

会場に理系の大学生がたくさんいたのは、BuzzScienceの関係者やこの活動に関心がある学生がいたからだと僕は気が付いた。(会場に入ったとき、科学雑誌Newtonに関心をもつような層と少し違うぞと僕は感じていたから。)理系学生たちに囲まれるのは5月に「2017年度 理系交流会」に参加して以来のことだ。


BuzzScience 最先端科学をすべての人に

BuzzScienceとは「最先端の科学を、楽しく、面白く」という趣旨で一般公開されている科学情報ポータル・サイトだ。東大大学院理工系修士課程の10人の学生によって運営されている。

BuzzScience
http://buzzscience.net/

サイトをご覧いただくとわかるように、現在24の記事が投稿されている。これらは現在研究中の、つまり最先端の研究を非専門家にもわかるように「言葉で」説明した記事である。各記事は一般人向けて易しく書いた「初級記事」と専門家向けの「上級記事」で構成されている。

国立大学の科学研究費は、もとを正せば国民の税金から支払われているのだから、研究者が日ごろどのような研究を行なっているかを国民に伝え、科学研究費に対する理解を得ることは大切なことだ。たとえば大栗博司先生も、同じお気持ちで科学のアウトリーチ活動の一環として、科学教養書をお書きになったり、市民向けに物理学の講座や講演会を行なっている。


この日のプレゼンの前に、BuzzScienceはNewton編集人の高嶋さんに、彼らが書いた記事のいくつかを査読してもらっていた。高嶋さんのセッションの最後で、記事に対するダメ出しや感想を高嶋さんはお話されていた。初級記事にも専門用語や一般人には理解できない言葉が使われており、易しく言い換えたり、くどいと思われても毎回説明するなど、改善のためのアドバイスもされていた。

例えば「細胞運命を自在に制御する、DNAアプタマーの可能性!」の初級記事に書かれている「分化」や「発生」、「細胞運命」などは一般の人には難しすぎること、「タンパク質」という言葉は一般の人と研究者でのイメージに大きな隔たりがあるので要注意だそうだ。一般の人は「タンパク質」という言葉で、肉などの栄養素をイメージする。

上級記事に対しては「ドメイン」や「二量化」などの用語が理解できないので、説明が必要だとおっしゃっていた。

BuzzScienceはもともとMERIT呼ばれている「東京大学物質科学リーダー養成プログラム」のプロジェクトとして始まったそうだ。

当初運営に携わっていた学生たちは、すでに博士課程に進んでおり活動する余裕がなくなったので、現在修士課程の学生たちで活動を再開したというわけである。代表の江口さんはBuzzScienceの位置づけを、次のように説明された。

図の横軸に「易⇔難」、縦軸に「信頼性十分⇔信頼性不十分」をとり4つの象限にBuzzScience、Newton、プレスリリース、科学ブログの4つを配置した。結果は次のとおりである。

BuzzScience、Newton: 易しい+信頼性十分
プレスリリース: 難しい+信頼性十分
科学ブログ: 易しい+信頼性不十分

僕は科学ブログを書いている手前、「信頼性不十分」と言われて、少しムッとしたのだが、よく考えてみると思い当るふしがある。

何が科学ブログかということを厳密に定義するのは難しいが、一般的にはブログランキング・サイトの科学カテゴリーに登録しているブログのことを言うのだろう。登録数の多い順にあげれば、次の3つがある。(このリンクをクリックすると、この記事に応援クリックすることになるのでご注意。応援クリックしたくない方は、URLをブラウザにカット&ペーストしてページを開いてほしい。)

人気ブログランキング(科学)
http://blog.with2.net/rank4057-0.html

科学ブログ 人気ランキング(にほんブログ村)
https://science.blogmura.com/ranking.html

自然科学ランキング(FC2ブログランキング)
http://blogranking.fc2.com/in.php?id=489688


ご覧になってわかるように、ほとんどのブログの執筆者は研究者ではなく一般人だ。そして内容が怪しいブログ、トンデモ系のブログ、科学と関係ないブログが多いことに気付く。

ランキングは読者による応援クリック、つまり人気投票で決まるのだが、「なぜこのブログが上位なの?」と思えるブログがあるのも事実。これは不正な手段で応援クリック・ポイント(INポイント、OUTポイント)を獲得しているブログがあるためだ。

どのブログが不正クリックブログなのか、個別に明示するのは控えさせていただくが、ブログの内容を見ていただければすぐわかるし、ランキング上位のブログなのに読者からのコメントがほとんどないなどの判断基準で、不正だとすぐわかることが多い。

不正にはいくつかの方法があり、巧妙に行われているため、ランキングサイト側では機械的な手段で判別するのが難しい。そのために一部のランキングサイトでは不正ブログが放置され続け、結果としてランキングサイトの信用を落としている。

僕がみたところ、どのランキングサイトでも科学部門の上位20位のうち4分の1から2分の1のブログは、なんらかの不正を行なっていると思う。

不正クリックはスポーツで言えばドーピング問題だ。スポーツだとお金がからむから不正は厳しくチェックされるが、ブログランキングでは不正を行なってもサイトを利用する一般ユーザーには目立った不利益が生じない。そのため問題はなかなか解決しない。

このようにブログ内容に怪しいものが多いこと、ランキングアップのために不正が行われているという2つの意味で、科学ブログは信頼性が十分ではないことを僕も認めざるを得ない。

もちろん、不正を行わず、良質な記事を真面目に書いているブロガーはたくさんいる。不正を行うブログは不快である、真面目に書いているブロガーの執筆意欲を著しく損なっていると思うのだ。

このような状況を改善するために私たちが行える方法は、次の2つしかない。

- 不正ブログだと思ったら、ランキングサイトのフォームから通報する。
- 良質なブログ、よい記事だと思ったら面倒でも応援クリックをする。

BuzzScienceの紹介とは関係ないが、科学ブログの信頼性が問題にされたので、この際だから書かせていただいた。


プレゼンの最後で、この日の司会を担当された科学コミュニケーション研究会の方が「BuzzScienceの記事の信頼性」について辛口の質問をされた。

大学院で行なっている研究が意味をもつのは、そのアイデアや内容が斬新であることが必要であり、その意味では最新の研究というのは信頼性がないのが普通ではないか?

会場にいた誰もが唸った。これは手厳しい。プレゼンを行なった江口さんもタジタジである。そして「そのご質問に対する回答は、持ち帰ってよく考えてみます。」とおっしゃった。


プレゼンの後、Kavli IPMUの横山広美先生から次のようなお言葉をいただいた。

「BuzzScienceの活動というのは「言葉を使って科学を表現し、伝える」という意味で、これまでにないとてもユニークな試みだ。研究しながら活動するのは大変なことだが、ぜひ頑張って継続していただきたい。」

BuzzScienceの活動を僕も頼もしく思うし、応援させていただきたい。


質疑応答、感想

2つのプレゼンが終わり、高嶋さん、江口さんのお二人が登壇して質疑応答が行われた。よい質問がたくさん飛び出し、そのたびに丁寧にお答えになっていたのが印象に残った。

僕にとっても、この日のプレゼンはとてもためになった。高嶋さんに直接お会いしてご挨拶できたし、Kavli IPMUの横山先生にご挨拶してお話できたのもうれしかった。

また、BuzzScienceのメンバーのおひとりが、とね日記をお読みいただいていたのを知ったこと、ふだんTwitter上でしか交流していなかった方に「とねさんですよね?」と声をかけていただき、直接お話できたこともうれしかった。

会場のレイアウトをもとに戻すのも、残っていた人全員で行なった。僕を含めて残っていた何人かはニュートンプレスの関係者と本郷三丁目駅まで雑談をしながら帰ることになった。

このように楽しい夜を過ごしたのは久しぶりである。

ニュートンプレスのみなさま、BuzzScienceのみなさま、科学コミュニケーション研究会のみなさま、有益で楽しい場を提供いただき、ありがとうございました。


関連記事:

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ec7f96712045560b6cf3d7b1e851e49e

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その2)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06a11387485b7835d8147229d541497b

Newton(ニュートン)の0号と創刊号の思い出
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0bff55e11fe0fa8fd8f23e431724c678

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf3a744f940e92c0277e9e5e576604b

橋本幸士×板倉龍「Newton超ひもナイト」@ 下北沢
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/567088304d1f2dca5349826c561adb3e


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将棋ソフト(技巧2、やねうら王4.79+apery_sdt5、平成将棋合戦ぽんぽこ)

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第5回 将棋電王トーナメント結果(拡大

「自分の棋力を上げないで、パソコンばかり強くしてどうするの?」という声が聞こえてきそうである。でも、気になるのだから仕方がない。

先日の「将棋ソフト(ぴよ将棋、K-Shogi)」で紹介したレーティングのことだ。

将棋フリーソフト レーティング
http://www.uuunuuun.com/



これまでにインストールしたフリー将棋ソフトは次のもの。強いソフトがまだまだあることがわかる。

Bonanza 6.0: レーティング 2787
GPSFish: レーティング 2837
Apery (WCSC26): レーティング 3284
K-Shogi v3.6.0: レーティング 2451

初心者~R400~アマ級位者~R1300~アマ有段者~R2100~アマ高段者~R2600~プロ~R3250~人外

今回は気になるソフトを3つインストールしてみた。どれも上の4つよりランクが上だ。

技巧2: レーティング 3794
やねうら王4.79 + apery_sdt5:レーティング 4124
平成将棋合戦ぽんぽこ:レーティング 4071


「平成将棋合戦ぽんぽこ」は先月行なわれた第5回 将棋電王トーナメントで優勝したソフトだ。

将棋電王トーナメント
http://denou.jp/tournament2017/

トーナメント直後に昨年まで首位を維持していた「Ponanzaの引退」が発表されたのは衝撃で、将棋AIのひとつの時代の節目だと感じた。この本も読んでおきたい。

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質」(Kindle版




最近は「やねうら王4.79+apery_sdt5」のように、将棋エンジンに対して他の将棋ソフトの評価関数を組み合わせて、より強くするのが流行っているようだ。上記のレーティング・リストに記載されているうち「YO」で始まるのがこれに該当する。


技巧2

CPU側に定跡を指定できると知って興味をもった。

技巧2(Windows版 v2.0.2)(最新)
https://github.com/gikou-official/Gikou/releases

トップレベルの実力を誇る将棋AI「技巧」の最新版「技巧2」が無償公開
https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1058481.html

技巧2が公開!ダウンロードと導入方法は?
http://syogikagaku.tokyo/986




やねうら王4.79+apery_sdt5

レーティングでは1位だが、誤差を考慮すると平成将棋合戦ぽんぽこと互角のソフト。これはインストールしておきたい。

やねうら王2017Early KPPTビルド V4.79
https://github.com/yaneurao/YaneuraOu/releases

やねうら王4.79+apery_sdt5
http://www.fgfan7.com/entry/2017/11/12/213029

apery_sdt5_eval_twig_format.zipを使うのがミソ。


平成将棋合戦ぽんぽこ

「平成将棋合戦ぽんぽこ」は先月行なわれた第5回 将棋電王トーナメントで優勝したソフトだ。先月11日に無償公開された。いま現在、ディープラーニングを使って鍛え上げられた最強の将棋エンジンである。

第5回将棋電王トーナメントで「平成将棋合戦ぽんぽこ」が初優勝 「Ponanza」らの強豪を抑えての優勝
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1711/13/news130.html

“電王”獲得の「平成将棋合戦ぽんぽこ」、評価関数ファイルと定跡データベースが公開
https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1092107.html

平成将棋合戦ぽんぽこ
http://syogikagaku.tokyo/2943

平成将棋合戦ぽんぽこ PR文書
http://denou.jp/tournament2017/img/pr/heiseishogigassenponpoko.pdf

3位のPonanzaとの対局


2位のshotgunとの対局



「やねうら王4.79+apery_sdt5」と「平成将棋合戦ぽんぽこ」を何度か対局させてみた。これらのソフトはPCの性能やパラメータの設定で強さが大きく変わるのだが、パラメータDepthで深さ、つまり最大何手先まで読むかを指定できる。10から25の範囲で6回対局させてみたのだが、千日手で引き分けになったのが1回、残りの5回はすべて「平成将棋合戦ぽんぽこ」が勝った。

Depthをこれ以上の値に設定すると、思考時間が1手1時間以上になり、勝敗が決まるまで数日かかると思われる。


関連ニュース:

羽生善治が竜王戦で勝利、史上初「永世七冠」に。“天才”が歩んだ足跡をたどる
http://www.huffingtonpost.jp/2017/12/05/yoshiharu-habu-legend_a_23297098/


関連記事:

将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9c39fa7ba13e6b9f06728f9d26097191

将棋ソフト(ぴよ将棋、K-Shogi)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/549314ea56401d34be4cae5653179d24

将棋セット購入
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9f6ae58f79977e31a09fe5247a94bd3b

マグネット将棋を購入(大久保碁盤店)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/92637160014c1f22d52243eb3d23cbaf

購入: 羽生善治の将棋入門 ジュニア版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c8d84e3474ea5d68e4352a76bf3a197e

藤井四段、29連勝! 30年ぶり記録更新
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3a06df510b43cfdaf30d60bf9fe9da23


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発売情報:物理入門コース 新装版(Kindle版も発売)

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昨日『物理入門コース 新装版』全10巻が発売された。うれしいことにKindle版も同時発売だ!

取り急ぎ、発売情報としてお知らせしておこう。

「物理入門コース 新装版」内容案内PDF
https://www.iwanami.co.jp/news/n22647.html

力学
解析力学
電磁気学 Ⅰ
電磁気学 Ⅱ
量子力学 Ⅰ
量子力学 Ⅱ
熱・統計力学
弾性体と流体
相対性理論
物理のための数学

Amazonで検索する: 単行本 Kindle版


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バイクのバッテリー交換

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バイクのバッテリー交換

今朝、区役所に行くためバイクに乗ろうとしたところ、エンジンがかからない。どうやらバッテリーがあがってしまったようだ。結局バッテリーが劣化していたためとわかった。

前回バッテリー交換したのは2011年9月(記事)、累積走行距離: 32836Kmの頃である。現在の累積走行距離は38891Kmだから6年3ヶ月で6055Km走行している。寿命は5年ほどと言われているから、交換時期なのだろう。

近所の島忠でバッテリーと付属の電解液を買ってきて、バイク屋さんで取り付けてもらった。バッテリー代は税込み11,500円、工賃は1000円だった。



冬場はバッテリーがあがりやすい。ひと月60Kmくらい走ったほうがよいとバイク屋さんがおっしゃっていた。


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とね日記賞の発表!(2017年): 物理学賞、数学賞、他

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毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、「とね日記賞」を発表している。今年で8回目。

ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもなさそうだ。それならば自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!という思いつきだ。

「とね日記賞」はその年に僕が読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞というのも設けている。

そして今年はこれまでのようにノーベル賞に対抗意識を燃やすだけでなく、ノーベル賞に対して上から目線で賞を授与してしまう「とね日記ノーベル賞」を設けることにした。

たとえ名著と言われる本であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても僕が読んでいなければ対象外。今のところ洋書も対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。

メダルも賞金も授賞式もスピーチも晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観だらけのアンフェアな賞だ。

今年は次の賞を発表する。

- 物理学賞
 物理学の教科書、専門書から選考。

- 数学賞
 数学の教科書、専門書から選考。

- 工学賞
 数学の教科書、専門書から選考。

- 教養書賞
 一般向け書籍から分野別に選考。

- ベストカップル賞
 読み合わせると理解がより深まる2冊の本。

- 新人賞
 書籍出版デビューを果たしたアマチュアが書いた本から選考。

- 文学賞
 ジャンルを問わない小説、文学書から選考。

- アカデミー賞
 今年観た映画の中からいちばんよかったものを選考。

- ノーベル賞
 今年のノーベル賞の中から選考。素晴らしいと思った授賞に対して、とね日記から贈る賞。

- テレビドラマ賞
 テレビドラマの中からいちばんよかったものを選考。

- クリスマス賞
 クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。


この1年で読んだ本は26冊で、次のような本である。通算323冊~348冊目。(参考:「300冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)冊数が例年より少ないのは今年1月に始めた「算盤の記事」と「将棋の記事」に時間をとられたからだ。

323/重力(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
324/数学 その形式と機能: ソーンダース・マックレーン
325/図解入門最新金属の基本がわかる事典: 田中和明
326/『数学ガイダンス2017』数学セミナー増刊:日本評論社
327/宇宙に「終わり」はあるのか: 吉田伸夫
328/図解入門よくわかる最新熱処理技術の基本と仕組み[第3版]: 山方三郎
329/クラウド量子計算入門: 中山茂
330/量子コンピュータ―超並列計算のからくり: 竹内繁樹
331/量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫
332/趣味で量子力学2(Kindle版、オンデマンド版): 広江克彦
333/量子力学の数学的基礎: J.v.ノイマン
334/アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆
335/12歳の少年が書いた 量子力学の教科書: 近藤龍一
336/出題者心理から見た入試数学: 芳沢光雄
337/量子力学史(自然選書): 天野清
338/コホモロジー: 安藤哲哉
339/複素解析: 小平邦彦
340/物質のすべては光: フランク・ウィルチェック
341/量子物理学の発見: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル
342/はじめて学ぶリー群: 井ノ口順一
343/素粒子標準模型入門: W.N.コッティンガム、D.A.グリーンウッド
344/An Introduction to the Standard Model of Particle Physics 2nd Edition: W.N.Cottingham, D.A.Greenwood
345/経理のExcel強化書: 平井明夫
346/楽しもう射影平面 目で見る組合せトポロジーと射影幾何学: 大田春外
347/あたらしい人工知能の教科書: 多田智史、石井一夫
348/マッハ力学―力学の批判的発展史:伏見譲訳

それでは2017年の「とね日記賞」を発表しよう。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)


* 物理学賞

今年は次の2つに授賞させていただくことにした。

重力(上) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
重力(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル

 

授賞理由: 最小限の数学で学べる一般相対性理論の画期的教科書である。今年のノーベル物理学賞の授賞理由になった重力波の導出も学べる。最大の特徴は、一般相対性理論の要となる「アインシュタインの重力場方程式」を下巻の最後のほうにもってきたことである。その結果、上巻は特殊相対論と一般相対論が予言する物理現象の記述と計算、幾何学が主になるわけだが、できる限り難しい数学を抑えて物理現象そのものを描き出すことによって、古典力学と解析力学、線形代数と微積分、ベクトル解析をマスターしたばかりの大学2、3年生でも余裕で学習できる難易度に抑えているのだ。取り上げている内容の新しさ、わかりやすさに感銘を受けたので授賞させていただいた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

重力(上) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d45a93d43478a133c6a514c980572632
重力(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ae6e91eec0ecb404b3b77d46ca04b49b

以下は12月8日に配信されたばかりの動画。今年の物理学賞(重力波の初観測)の記念講演で、ワイス博士、バリッシュ博士、ソーン博士の順で講演を聞くことができる。




素粒子標準模型入門: W.N.コッティンガム、D.A.グリーンウッド



授賞理由: 日ごろから、ツイッター上でやり取りをさせていただいている樺沢先生(@adx50150)が2005年に翻訳された素粒子物理学の入門書である。解析をマスターしたばかりの大学2、3年生でも余裕で学習できる難易度に抑えているのだ。読者の水準に充分に配慮しをして、過度に専門的な内容に深入りすることを避けながら、大局的に要点を抑えた的確な構成と記述によって、標準模型の理論構造を明快に提示してある。また模型の正当性を支持する主要な実験結果も、よく整理した形で紹介されている。素粒子論の基礎を習得しようと考える理工系学生のみならず、おそらくこの分野に関心を持つ関連分野の研究者・技術者にとっても有用な、正統的で完成度の高い、優れた素粒子論の入門書である。難解な素粒子物理学は自分には無理かなと二の足を踏んでいたところで本書と出会った。僕にとって次のステップへの突破口になったといえよう。 これが授賞理由である。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

素粒子標準模型入門: W.N.コッティンガム、D.A.グリーンウッド
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/522960c6eb852df961348fee76463852


* 数学賞

今年は次の2つに授賞させていただくことにした。

数学 その形式と機能: ソーンダース・マックレーン



授賞理由: 数多くの名著の著者として著名なマックレーン教授が、現代数学の各部門にわたってその基礎概念を縦横に論じたもの。数学の構造、性格、および各部門の関係を数学と哲学の両面から論じ、数学の起原から現代数学までを概観しながら、それぞれの問題の本質を明らかにした。現代数学全般に精通した原著者のライフワーク。数学という壮大な知の構造物を堪能させていただき、学ぶ意欲をかきたてられたのが授賞理由だ。「数学の定理は「発見」か?それとも「発明」か?」という記事と合わせてお読みいただきたい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

数学 その形式と機能: ソーンダース・マックレーン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cbfc848dce6bf8ffa525a90026d5d4c6


量子力学の数学的基礎: J.v.ノイマン



授賞理由: 今年集中して取り組んだのが「量子力学とは何だろうか?」というテーマである。広江克彦さんの「趣味で量子力学2」や吉田伸夫先生の「量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く」を読み、「粒や波のような実体は存在せず状態のみが存在する」 、「そういう認識をそろそろ世間一般にも広めていい頃ではないだろうか」、「量子論の奇妙さ、不思議さばかりを強調する科学教養書は、そろそろ卒業しましょうよ。」という言葉に触発されたからだ。解釈問題とはいったい何だったのだろうか?本書は量子力学の創成期に、その数学的定式化を行なった天才数学者ノイマンによる名著である。難解なので理解したと胸を張って言うことはできないが、ぜひチャレンジしてほしい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

量子力学の数学的基礎: J.v.ノイマン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/09b65f36119894f5b852bbf38421af45


* 工学賞

クラウド量子計算入門: 中山茂



授賞理由: 本書も今年集中して取り組んだ「量子力学とは何だろうか?」というテーマに沿った本だ。量子力学の奇妙さをそのまま受け入れ、現代の工学技術で量子力学が持つ性質を活用する。素人でも量子コンピュータの実験ができるようになったことを紹介する画期的な本だ。残念ながら執筆当時と今では無料で公開されているIBMの量子コンピュータの仕様が変わってしまったため、本のとおりの出力ができないが、それでも量子コンピュータを学び、自分で試すことから得られる感動は大きい。ブログを始めて12年。現実の世界、ニューヨークに置かれた量子コンピュータを使って僕はようやく自分で量子テレポーテーションの実験を行なったことになる。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

クラウド量子計算入門: 中山茂:(4) 全体の感想
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ad7dfbad69e1e196848be123e3f4ea3f


* 教養書賞(物理学部門)

今年は次の2つに授賞させていただくことにした。

アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆



授賞理由: 本書も今年集中して取り組んだ「量子力学とは何だろうか?」というテーマに沿った本だ。量子論の生みの親のひとりでありながら、量子力学の奇妙さを受け入れず、亡くなるまで量子力学を否定し続けたと一般に理解されているアインシュタインだが、果たして本当にそうだったのだろうか?量子力学の創業者たちを当惑させた「理論」が、21世紀の先端技術を目指す量子情報研究で「何の疑いもせずに」使われている。真理と制度をめぐり“科学とは何か”で揺れる現代科学の転換期を、「物理学の世紀」で消されたマッハにまで遡り、“物理帝国の埋蔵金”を理論物理学の泰斗がスリリングに描く。量子力学に対する定説を再考することで、アインシュタインの知見が現代の量子情報技術を予見していたことを理解できた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fa38724ad6881636cdff2903ee14a5b


量子力学史(自然選書): 天野清



授賞理由: 本書も今年集中して取り組んだ「量子力学とは何だろうか?」というテーマに沿った本だ。量子力学の形成・発展を明晰に叙述しえた先駆的な偉業として、今日なお揺るぎない達成と評価される「幻の名著」。著者の天野清先生は東京大空襲による怪我がもとで38歳という若さで早世されている。量子力学が生まれて間もない時期、まったく新しい当時最先端の物理理論を学部生に過ぎなかった著者がドイツ語や英語で書かれた論文を入手し、研究していたということになるのだ。非凡な才能に驚かされると同時に、若くして命を落とされたという無慈悲な現実に僕は心を揺さぶられた。量子力学の数々の「奇妙さ」は場の量子論による解決に持ち越されるという記述もある。おまけにニュートリノの質量がゼロでない可能性があるという記述さえあるのだ。教養書としてはかなり難しいが、ぜひお読みいただきたい。ネット上には無料のPDFも公開されている。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

量子力学史(自然選書): 天野清
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a742e5490485206851f5c76290d9a058


* 教養書賞(数学部門)

該当なし。(数学の教養書は読んでいないことに、この記事を書き始めて気がついた。。)


* ベストカップル賞

素粒子物理学の標準模型に入門するためによい本の2冊に授賞させていただく。どちらも実験系の物理学者が書いた本だ。理論系の物理学者の著作で入門するのであれば「強い力と弱い力:大栗博司」や「「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム」をお勧めする。

物質のすべては光: フランク・ウィルチェック」(文庫版



授賞理由: 標準模型はいくつかの理論の寄せ集めで成り立っているわけだが、本書はそのうち原子核の中を舞台にした「量子色力学(QCD)」である。著者はクォークの「漸近的自由性」を発見し、2004年度のノーベル物理学賞をはじめとしてさまざまな賞に輝く物理学者だ。イメージしにくい原子核の中の世界を量子力学的な条件、特殊相対論的な条件、クォークがもっている色価とフレーバーという性質、グルーオンがもっている色価という性質を組合せることで矛盾のない形で理解できるようになる。また「量子電磁力学(QED)」との違いを浮き彫りにしながら理解が深まるように工夫されている良書だ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

物質のすべては光: フランク・ウィルチェック
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d592b55383ccecae76959446c0292d7b


量子物理学の発見: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル」(Kindle版



授賞理由: 本書も標準模型を学ぶ上でお勧めしたい本だ。「物質のすべては光: フランク・ウィルチェック」のほうが強い力、量子色力学を基軸とした陽子や中性子などの質量獲得を解説していたのに対し、本書は弱い力、ヒッグス機構による質量獲得の解説が中心。パリティ対称性、カイラル対称性の説明は詳しいし、質量を獲得させるためのヒッグス機構についてはこれまでに見聞きしていた説明のどれとも違う。いちばんわかりやすい説明だと思う。アメリカのフェルミ研究所で加速器を使い、極小の世界を追い求めたノーベル賞物理学者が、この新しい物理学の誕生から現在そして未来を綴る。著者は実験物理学者。ミューニュートリノの発見でレプトンの二重構造を実証し、1988年ノーベル物理学賞。1979年から1989年までフェルミ国立加速器研究所の所長を務め、半世紀にわたり、加速器実験によるアメリカの素粒子物理学を主導してきた。本書では今後行われる加速器実験がどのようなものかについても紹介している。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

量子物理学の発見: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0be01aa80fe038ae361fdd259b3532f2


* 新人賞

12歳の少年が書いた 量子力学の教科書: 近藤龍一



授賞理由: 今年の新人賞は間違いなくこの本である。紹介記事を投稿して以降、Amazonには厳しいレビューがいくつか投稿されているが、これらの方々がお書きになっている酷評もある程度うなづける。よく仕上がった「中間書」ではあるが、初学者が学ぶためのベストな選択とはいえない。初学者は専門家が書いた定番の教科書で学ぶべきだろう。けれども12歳の少年が書いたこと、現在も勉強を続けていることを思えば上出来である。今後の執筆、ご活躍を願って授賞させていただいた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

12歳の少年が書いた 量子力学の教科書: 近藤龍一
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08ee32d90f112a381d650dfe1751bb62


* 文学賞

四千万歩の男: 井上ひさし」(Kindle版



授賞理由: 忠敬は下総佐原村の婿養子先、伊能家の財をふやし50歳で隠居。念願の天文学を学び、1800年56歳から16年、糞もよけない“二歩で一間”の歩みで日本を歩き尽し、実測の日本地図を完成させた。この間の歩数、4千万歩……。定年後なお充実した人生を生きた忠敬の愚直な一歩一歩を描く歴史大作。全5巻。忠敬が残した資料を読み込み完成させた痛快なパロディ小説。大いに楽しませてもらった。この作品がなぜNHKの大河ドラマにならなかったのか?その理由を最終巻「四千万歩の男 忠敬の生き方」で知ったとき、笑わずにはいられなかった。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

「四千万歩の男: 井上ひさし()()()()()」
四千万歩の男 忠敬の生き方


* アカデミー賞

映画『ドリーム(2016)』に授賞することにした。



授賞理由: アメリカの初期の宇宙開発を「計算手」として支えた、黒人女性数学者たちの伝記作品である。原題は「Hidden Figures」、陰で支えた人たちという意味合いだ。もともと天文計算マニアだったこと、現在は計算機マニアの僕のハートをこの映画はジャストミートした。もう一度見たいので、AmazonビデオやDVD, Blu-ray化されるのを楽しみにしているところだ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

映画『ドリーム(2016)』
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/54307adde353ad3fba64f33914f660a1


* ノーベル賞

物理学徒のひとりとして、重力波の初観測への貢献に対して与えられたノーベル物理学賞にとね日記賞を授賞したいところだが、あえて僕は平和賞と文学賞に対して授賞することにした。

北朝鮮の脅威が増す中で、核兵器の使用は今年いっそう現実味を帯びてきた。米朝トップの過激な人格と発言も世界の平和を脅かす大きな要因である。

重大危機に対応が求められるのは当然である。経済制裁や外交努力だけでなく、アメリカの核兵器保持による抑止力も現実的には必要なのかもしれない。とはいっても、それは核兵器廃絶の望みを捨ててよいということではないはずだ。現実的な解決方法を模索しつつ、私たちは核兵器廃絶を希求し続けなければならない。この大原則を無視し、核兵器禁止条約にアメリカと日本が参加しなかったことは、極めて遺憾である。

核保有国からの反発や圧力が予想される中、ノーベル財団がICAN(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons: 核兵器廃絶国際キャンペーン)に平和賞を、カズオ・イシグロ氏に文学賞を授賞したことを、僕は高く評価したい。昨年、コロンビアのサントス大統領に平和賞を授賞したことに加え、平和への思いを「風に吹かれて」で歌ったボブ・ディラン氏に文学賞を授賞したことも、同じくノーベル財団からの「平和を希求せよ。」というメッセージだと僕は理解した。

「ノーベル財団による文学賞の政治利用だ。」という批判が一部にあるが、そもそもノーベル賞はノーベル財団が決めるものである。そしてカズオ・イシグロ氏の小説に流れる思想は世界平和の希求に沿ったものであり、核廃絶運動に平和賞が与えられたことにも氏は賛同している。

核廃絶に平和賞「喜び」 ノーベル文学賞カズオ・イシグロ氏、ストックホルムで会見
http://www.sankei.com/photo/story/news/171206/sty1712060025-n1.html

今年の平和賞と文学賞はダイナマイトの発明者、アルフレッド・ノーベルが平和への願いをこめて創設したノーベル賞の趣旨に沿った授賞だ。ノーベル財団は世界を牛耳る勢力の動機を見抜いている。この2つの授賞は「過去の戦争の記憶を忘却してはならない。カネよりも生命を重んじよ。」と財団が世界に向けて発信した強いメッセージである。(参考記事:「原子爆弾 1938~1950年: ジム・バゴット」)

「ノーベル財団やるじゃん!」ということで、とね日記賞を授賞させていただいた。

2017年ノーベル平和賞の発表


カズオ・イシグロ氏のノーベル賞記念講演はこちら。



* テレビドラマ賞

今年は忙しくて例年とくらべてちゃんと見れたドラマが少なかった。けれどもドラマニアの精神は忘れていない。NHKの「ひよっこ」もよかったし、フジテレビ系列の「嘘の戦争」が特に素晴らしかった。こんなこと現実にはあり得ないと知りつつもテレビ朝日の「ドクターX」はのめり込んで見てしまう。また、BS-TBSでは武田鉄矢さんが黄門様を演じる「水戸黄門」が始まり、この番組が好きだった亡き祖父を偲びながら、じんわりと優しい時間を過ごすことができた。

いくつか印象に残るドラマの中で、今年のテレビドラマ賞を授賞させていただくのは、日本テレビの「東京タラレバ娘」である。



授賞理由: 初回から最終回までゲラゲラ笑い続けた痛快ドラマ。僕が吉高由里子ファンだということも、授賞に影響を与えている。「あの時彼がもう少しセンスが良かったらプロポーズを受けていたのに、バンドマンの彼がもう少し芽が出る可能性があったら。こうしていたら……、ああすれば……、高い理想を掲げて根拠もなく仮定の話を積み上げるうちに、気が付けば33歳・独身になっていた。」と自分の落ち度を他人や周囲のせいにして女子会を繰り返す3人のタラレバ娘たち。世間のアラサー未婚女に衝撃を与えただけでなく、若い女子に将来こうなりたくはないと実感させた。(ここまでウィキペディアからの引用。僕がそう思っているということではありません。)

とりわけ、吉高由里子が演じるタラレバ娘に恐怖のダメ出しをするタラとレバーが可笑しかった。




* クリスマス賞

今年は次の2つに授賞させていただく。

不思議の国のアリス、鏡の国のアリス



授賞理由: 不思議の国のアリス関連本は、これまでのクリスマス賞でも「地下の国のアリス」や「アリスとキャロルのパズルランド 不思議の国の謎解きブック」に授賞させていただいている。今年は角川文庫版の2冊に授賞することにした。でも、不思議の国のアリスとクリスマスは本来関係ないはずだ。僕はなぜクリスマスにアリス関連本をプレゼントしたがるのだろうか?著者のルイス・キャロルが数学者だから理数系ブログにふさわしいということもあるかもしれないが、しばらく考えてみたら、本当の理由は他のところにあった。とてもくだらない理由である。つまり、「クリスマス」→「クリスマス・キャロル」→「ルイス・キャロル」→「不思議の国のアリス」と連想していただけのこと。いやはや何とも。。。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

不思議の国のアリス、鏡の国のアリス
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3201f911d2f060ad956148609139a6a4


そしてクリスマス・プレゼント候補の2つめはこれである。笑って楽しく過ごしてくださいという気配りだ。

もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら
もし文豪たちがカップ焼きそばの 作り方を書いたら 青のりMAX

 

授賞理由: 「もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら」が発売され、紹介したのは今年の6月のこと。そして続編の「青のりMAX」は今月7日に発売されたばかりである。もしも村上春樹がカップ焼きそばの容器にある「作り方」を書いたら――ツイッターで発信され、ネット上で大拡散されたあのネタが、太宰治、三島由紀夫、夏目漱石といった文豪から、星野源、小沢健二らミュージシャンまで、100パターンの文体にパワーアップして書籍化された。読めば爆笑必至の文体模倣100連発。「青のりMAX」のほうは帯に書かれている『博士の愛したソース式』という文がどうも気になる。そしてカズオ・イシグロの『かやくを離さないで』も収録されている。買おうかどうか迷っていると、この本をプレゼントされる家族や友達の笑顔が目に浮かんでくるのだ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

発売情報: もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c8a2bed74acd0d5f3d545c6b359906a7


関連記事:

とね日記賞の発表!(2010年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ddc344204dec2ebd35c47a8699eb1389

とね日記賞の発表!(2011年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/27bc2b5eafa9334dae11d92e90c69b0d

とね日記賞の発表!(2012年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b4ce3d8c7d90d5b95bf6ab826cc7d93f

とね日記賞の発表!(2013年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35a258d08776ca6964cc70764cc1f5a8

とね日記賞の発表!(2014年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/03d734929be66990cd8d25d7131a523a

とね日記賞の発表!(2015年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d1c27e18d9b072311f715394439d0d9d

とね日記賞の発表!(2016年): 物理学賞、数学賞、他
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/dd3542a15d2232513c872bd678372644


最後になりますが、本日ストックホルムでのノーベル賞授賞式に望まれるワイス博士、バリッシュ博士、ソーン博士、カズオ・イシグロ先生、ICANの皆様、おめでとうございます!


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日の名残り: カズオ・イシグロ

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日の名残り: カズオ・イシグロ」(Kindle版

内容紹介:
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
英語版は1989年刊行、日本語版は2001年5月刊行、365ページ。

著者について:
カズオ・イシグロ: ウィキペディア
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、5歳のとき、家族と共に渡英。以降、日本とイギリスの2つの文化を背景にして育つ。ケント大学で英文学を、イースト・アングリア大学大学院で創作を学ぶ。1982年の長篇デビュー作『女たちの遠い夏』は王立文学協会賞を、1986年に発表した『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞。1989年には長篇第三作の『日の名残り』でブッカー賞を受賞。2017年ノーベル文学賞を受賞。
著書を検索: 日本語版 英語版

訳者について:
土屋政雄
英米文学翻訳家。訳書『イギリス人の患者』オンダーチェ。『アンジェラの灰』マコート。『コールドマウンテン』フレイジャー他。
訳書を検索


今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏が35歳のときに出版した小説である。文学賞受賞が決まってから、どれを読もうか迷っていたところ、知り合いが「これがいいんじゃない?」と勧めてくれた。「わたしを離さないで」はテレビドラマで見終えていた。

上の「内容紹介:」で書かれているような作品であるわけだが、「とても優れた作品」だというのが読後の感想である。といはうものの「好きになった」とは言えない。僕の好みではなかったというだけのこと。描写のしかた、話の展開のしかたは素晴らしいのだが、ストーリーが好きでなかったのと主人公スティーブンスに共感できなかったというのが理由である。

品格ある執事であろうと最善を尽くすあまり、自分にとっての自由はプライベートの時間も含めてほとんどない。みずからそうしているのだ。執事としては大先輩の父親が年老いて、職務をじゅうぶんにこなすことができなくなったとき、そして亡くなるときでさえ父を看取らず仕事を優先してしまうことに、融通のきかないスティーブンスに辟易してしまった。愚直を通り越して、まるで愚鈍ではないか。

物語は長年仕えてきたダーリントン卿から「たまには旅行でもしてきたらどうか?」と勧められて、主人から借りた車で旅に出るところから始まる。屋敷の外に出ることなどは滅多になかったから、とまどうことばかりである。旅先で出会う人に、どのように接すればよいかスティーブンスはいちいち考えるわけだが、これまでの執事としての経験と思考パターンで考えてしまう。つまり、一から十まで礼儀正しく、堅苦しい接し方だ。

旅先で回想するのはこれまでしてきた仕事のことばかり。彼にとっては輝かしいキャリアだ。いかに完璧に自分が執事としての役割をこなす努力をしてきたか、そしてうまく物事を運んできたか。伝統を重んじる英国で、彼のように紳士的に振舞うことは美徳であり、尊ばれる。スティーブンスは最高の執事であろうと常に心掛けてきた。

しかし、外の世界にいるのは庶民であり、自由気ままな生活をしている人たちだ。礼儀正しい彼の振る舞いや応答は可笑しくもあり、ギャップを感じながらも自分らしさを保とうとするスティーブンスは滑稽にさえ思えてしまう。感情を表に出さず、ジョークもきわめて婉曲に言うから、周囲の人には伝わらない。人生の大半をそうしてすごした彼には自分を変えようとする意識はなかなか芽生えない。


もちろん著者は、僕を含めて読者がそのように感じるだろうということを想定済みだ。ノーベル賞記念講演で次のようにお話になったことからもわかる。

『「日の名残り」は、晩年を迎えた英国人の執事が、これまで誤った価値観を守って生きてきたこと、人生の最も大切な年月をナチス支持者の主人に仕えてきたこと、倫理的そして政治的に責任を取らなかったことに気づき、人生を無駄にしたという思いに至る物語です。さらに、この主人公は完全な執事になろうとして、人を愛することと、ひとりの好きな女性に愛されることを、自分に禁じてもいました。』

失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞を受賞したのは、「伝統的な英国が好きな人たち」が感動したからなのだろう。僕は「階級社会」が嫌いだから「ハリーポッター」シリーズも好きではない。だから「英国の伝統」にも感動しなかったのだろう。生まれながらに上限が決められた人生は受け入れがたいのだ。


ただし文学作品としての素晴らしさは感じ取ることができた。物語は頭にすっと入ってくるし、他の小説を読んだときのように途中で中断してからしばらくたって再開しても、少し前から読み直す必要もなかった。これは翻訳者の技量によるところが大きいためだと思われるが、もとの英文の優れた文学性がうかがえる。

本のかなり最後のほうまで、スティーブンの回想を交えた話が続く。著者の作品全体を象徴する「記憶と忘却」は、初期に書かれた本書ですでに見ることができる。人生で経験した何を記憶しておくべきか、そして前へ進むために何を忘却すべきか。。。

そして最後の最後で、スティーブンスの気持にようやく変化が訪れる。これまで信じてきた自分の生き方の中に、かすかに芽生えた「変えよう」とする意識だ。それが何であるかはネタバレになるから伏せておくが、僕はここに至ってやっとすがすがしい気持になることができた。全体として好きなタイプの物語ではないが、読後感は爽快である。


カズオ・イシグロ氏の場合、1冊だけ読んで評価をすべきではないと思った。ノーベル賞記念講演や晩餐会スピーチでおっしゃっていたような、世界の分断を修復したいとか、戦争の記憶を子孫にどう伝えていくかとか、文学によって「感情」を伝えたいなどの意識は、作家デビューして間もない頃に書かれた本書では、ほとんど感じ取ることができなかった。

まだまだ読んでみたい作品がありそうだ。いずれまた読書感想文を書くことになるだろう。


日の名残り: カズオ・イシグロ」(Kindle版




The Remains of the Day: Kazuo Ishiguro」(Kindle版





DVD&Blu-ray Amazonビデオ



カズオ・イシグロ氏のノーベル賞記念講演はこちら。(全文)(晩餐会スピーチ全文



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改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平

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改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平」線形代数の基礎

内容紹介:
「あいつとはどうもベクトルが合わないんだよなぁ」などと言ったりします。このようにベクトルという言葉は日常的に使われます。
物理的な現象を数学的に取り扱うため誕生したベクトルという小道具は、非常に汎用性が高いため、自然科学・社会科学的な現象にも広く適用されている概念です。
本書は、ベクトルやより高度な概念である行列や行列式についてわかりやすく解説しています。授業や教科書では教えてもらえない学習者の「なぜ?」を大切にし、ベクトルと行列の意味と意義を深くイメージ豊かに理解させてくれます。
2015年2月刊行、243ページ。

著者について:
大村平(おおむらひとし): ウィキペディアの記事
工学博士。1930年秋田県に生まれる。1953年東京工業大学機械工学科卒業。防衛庁空幕技術部長、航空実験団司令、西部航空方面隊司令官、第18代航空幕僚長を歴任。1987年退官。その後、防衛庁技術研究本部技術顧問、お茶の水女子大学非常勤講師、日本電気株式会社顧問、(社)日本航空宇宙工業会顧問などを歴任。


理数系書籍のレビュー記事は本書で349冊目。

「大学で専攻していたとねさんが、なぜいまさらベクトルと行列なの?」と言われそうである。これにはもちろんわけがある。

このところ家の近所の歯科に通院している。社会人になってからお世話になっているので、もう30年以上になるかもしれない。その間、ずっと同じ先生に治療をしていただいているわけだ。

先日、治療の合間に「趣味で物理や数学を勉強しているのです。」と先生に言ったところ、先生も科学教養書を読んだり、数学を勉強されていることがわかった。そして「でも高校時代は行列を学んでいないんですよね。」とおっしゃった。高校のカリキュラムで行列を教えるようになったのは、先生よりひとつ下の学年からだということだそうだ。ご自身で教科書を買って学んでも、どうもイメージがつかめないとおっしゃっていた。

確かに(旧課程で教えられていた)数学Cの学習参考書を買えば行列を学べるのだが、独学するには少しハードルが高い。そこで思いついたのが本書なのである。

先生はベクトルは意味や意義を理解できたものの、なぜ行列を使う必要があるのかがよくわからないという。行と列に数字を並べたものをなぜひと塊にして扱うのか、そしてそうすることによってどのようなメリットがあるのかがわからないのだという。そして「意味」はともかく「意義」については、教科書や学習参考書で説明されることはほとんどない。

その点、大村平先生の「~のはなし」シリーズは、数学の先生が語りかけるように文章で説明し、「なぜ学ぶのか?」という視点で書かれているから、初学者、独学者にはうってつけなのだ。僕もこれまで「関数のはなし、上下」と「微積分のはなし、上下」を読んで紹介記事を書いている。だから、理系の高校生向けに行列(線形代数)の入門書も紹介記事を書いておいたほうがよさそうだ。

このようなわけで(歯科の)先生に本書を買っていただき、僕のほうも同時購入して読んでみたのである。先生はいま「宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス」をお読みになっているので、読み終えてから本書に取り組まれるそうだ。

章立てはこのとおり。ベクトル、行列、行列式、ベクトルと行列の総がらみの順に進む。

第1章:あさってのベクトル
第2章:ベクトルの演算作法
第3章:ベクトルから行列へ
第4章:一次変換を退治する
第5章:行列から行列式へ
第6章:ベクトルと行列の総がらみ

線形代数は既習だから、さすがにベクトルあたりは知っていることばかりでつまらないだろうなと僕は覚悟して読み始めたのだが、予想に反して面白いのだ。大村先生の語り口や取り上げる例題に「味」があるからだ。行列や行列式のあたりはもちろん面白い。

「ああ、こうやって教えれば生徒に興味を持ってもらえるのだな。」と思った。高校の数学の先生に読んでもらいたい本である。


本書の雰囲気を知っていただくために見開きで2箇所ほど紹介しよう。画像クリックで拡大する。

ベクトルについて解説しているページ


行列式について解説しているページ



今回取り上げた「改訂版」が発売されたのは2015年だ。アマゾンに投稿された読者によるレビューもご確認ください。

改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平」線形代数の基礎




本書は40年以上前から読み継がれている良書である。サイズもコンパクトでページ数も手ごろだ。改訂版の値段が高いと思われる方は以下のリンクから中古の旧版をお求めになるとよいだろう。

旧版から改訂版への変更点は「時代環境の変化などにより生じた不自然な箇所」だけなのだという。端的に言えば「バカチョン」や「ロンパリ」など1970年代にはふつうに使われていた差別用語などを訂正したわけである。あと例題に使われている野球選手の名前がサッカー選手に置き換えられている。学ぶ上では旧版でも全く問題は生じない。

行列とベクトルのはなし: 大村平」(1978年)
行列とベクトルのはなし: 大村平」(1978年)


なお、本書に書かれているのはベクトル、行列、行列式、一次変換あたりまでなので、固有値や固有ベクトル、行列の対角化などは含まれていない。

だから本書を読み終えたらぜひ「高校数学でわかる線形代数―行列の基礎から固有値まで:竹内淳」(Kindle版)をお読みいただきたいのだ。大村先生の本と竹内先生の本は、ともに線形代数の入門書であるが、重複する箇所が少ない。だから両方読むことをお勧めする。

大村先生の本は「高校数学から大学数学への橋渡し」、竹内先生のは「高校数学を終えた人が大学の数学を容易に学ぶため」の本である。また、竹内先生の本では複素数を成分とする行列(複素行列)も解説されていて、行列が量子力学でどのように使われているかを学ぶことができる。

高校数学でわかる線形代数―行列の基礎から固有値まで:竹内淳」(Kindle版



そしてこの2冊を学び終え、大学レベルの線形代数を本格的に学んでみたくなったら、「線形代数学入門のための教科書談義」という記事で紹介した本をお読みになるとよいだろう。


このページを見ると、本書の著者の大村先生は1986年から1987年にかけて航空幕僚長まで務めた方であることがわかる。「~のはなし」シリーズの初版(旧版)が刊行されたのは1970年代だ。航空幕僚長以前に防衛庁空幕技術部長、航空実験団司令、西部航空方面隊司令官などを歴任されているから、忙しいご公務の間にたくさんの本をよくお書きになれたものだなぁと、驚いてしまうのである。

関連記事:

改訂版 関数のはなし〈上〉:大村平
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d36a9ff4f6196b3fead1b9b6ca4dcf1c

改訂版 関数のはなし〈下〉:大村平
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e668159189be4b635f4d38c3bf252938

改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61b91ea9f2a66c66a33c507aa2c2d0c0

改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a42023dc1423f9bdf406723d76f81766

線形代数学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9d2ac30c9f5f620ad703304d710ed90b

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7


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改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平」線形代数の基礎



まえがき

第1章:あさってのベクトル
- 前口上
- 迷える子羊を追って
- 力を合わせて
- 速度と速さ―ベクトルとスカラー
- 成績のベクトル
- 空間のベクトル
- 4次元のベクトル

第2章:ベクトルの演算作法
- ベクトルは運び屋
- マイナス・ゼロ・イチのベクトル
- ベクトルのたし算
- ベクトルのひき算
- 生活費ベクトルの計算
- ベクトルxスカラー
- ベクトルxベクトル
- あさってのかけ算
- もうひとつのベクトルxベクトル
- 基本ベクトルという名の小道具


第3章:ベクトルから行列へ
- あんじょう、ちんじょう、そくじょう
- 行列のぞき見
- 珍案・立体行列
- 基礎的なはなし
- 行列のたし算、ひき算
- 行列xスカラー
- 行列x行列
- かけ算の意味を探る
- まとめて面倒みる

第4章:一次変換を退治する
- 鏡に写るわが姿
- 一次変換ということ
- ダブルの一次変換
- マルコフ過程のはなし
- 社会科学を背負う行列
- 行列のわり算
- 行きの切符と帰りの切符

第5章:行列から行列式へ
- 逆変換で連立方程式を解く
- 行列式の登場
- 行列式でつるかめ算を解く
- つるかめ算もどきを一蹴
- 行列式の性質さまざま
- あざやかな計算
- 行列式をばらせ
- 行列式のかけ算
- 仲良し三角関係
- ホイートストン・ブリッジの謎を解く

第6章:ベクトルと行列の総がらみ
- ベクトル女性教室
- 2つのベクトルが垂直になる条件
- 7点一致の物語り
- 単位ベクトルの独断場
- 一次変換のブラックホール
- 逆行列バンザイ
- 最後に

付録
- 原点を通る直線に対称な移動は一次変換である
- 逆行列であることの証
- 連立方程式が行列で解けるわけ
- 演算法則一覧表

フランス語を教え始めた

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昨日から20代の女性2人にフランス語を教え始めた。2人とも大学時代に第二外国語で学んでいるが、まったく初歩から教えることにした。

授業は1回2時間で週一。土日のうち都合のよい日に笹塚の喫茶店でレッスンをする。


メイン教材

メインで使う教材は迷ったあげくにNHKラジオの「まいにちフランス語(入門編)」を使うことにした。これなら会話、文法、単語、発音、聞き取りをバランスよく学べる。



テキスト: Amazonで検索

生徒のうち1人は土日のどちらかにシフト勤務が入ったりして、授業に来れないことがある。欠席した日のぶんは自習できるようにしておくことが大切だ。NHKの講座を選んだのはそのためだ。それに週1回の授業では全然足りない。音声付きで自習できるようにアプリを使ってもらう。

NHKゴガク


 

10月に開講した講座なのだが、すでに12月分の放送が始まっている。ストリーミングは前の週のぶんだけしか聞けないから、こちらはテキストを見ながら聞き流してもらうことにした。

授業では単語と文法の説明、発音練習をメインにして行う。10月と11月のぶんの放送は、次のアプリを使ってもらうことにした。

語学プレーヤー〈NHK出版〉


 

まいにちフランス語(入門編)2017年: YouTubeで検索


単語の学習

単語はこのアプリを使って覚えてもらうことにした。

nemo フランス語


 


動詞の活用の学習

iPhoneやiPadで動詞の活用を覚えるには、このアプリがいちばんよさそうだ。発音もしてくれる。

ぺらぺらフランス語動詞活用変化




いろいろ試した結果、Androidスマホであれば、このアプリがよさそうである。

Conjugaison française




PCとスマホの両方に対応しているサイトで学ぶとしたら、これが使いよさそうだ。発音もしてくれる。

フラ動 -フランス語の動詞を学ぼう!
http://www.litterature.jp/numerique/verbe.html


文法の学習

初心者のうちは差し当たりNHKのテキストを使って文法を学べばよいと思う。整理した形で学ぶのであれば、このページで学ぶのがよい。スマホ対応サイトだ。

東京外語大学言語モジュールTop > フランス語 > 文法モジュール > 週2回コース 読む・書く
http://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/fr/gmod/courses/c02/

東京外語大学言語モジュールTop > フランス語
http://www.coelang.tufs.ac.jp/mt/fr/


初心者用の文法書ということであれば、この2冊のうちどちらかを買うとよいだろう。

ケータイ「万能」フランス語文法
しっかり学ぶフランス語文法 CD book」(Kindle版):Kindle版にはCDは付属しません。

 


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高校数学でわかる線形代数:竹内淳

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高校数学でわかる線形代数:竹内淳」(Kindle版)行列の基礎から固有値まで

内容紹介:
線形代数が得意になる本

必ずマスターしておきたい基礎数学
連立1次方程式の解法の工夫から始まった行列は、ベクトルや行列式とともに線形代数へと発展しました。線形代数は、微分・積分と並んで、物理学や工学さらには経済学などできわめて重要な実用数学で、理系や経済学の学生の基礎科目になっています。本書は、この線形代数をできるだけ易しく解説するとともにその応用例として、量子力学との関わりを見てみます。

線形代数は主に「行列」や「ベクトル」を扱う数学で、行列はもともと連立1次方程式を解く工夫から始まりました。小学生でも解ける連立1次方程式にもかかわらず、敢えてその解き方を一般化することで、「役に立つ数学」の中のたいへん重要な分野へと発展しました。例えば、量子力学や計量経済学を学ぼうとすれば、線形代数の知識は不可欠です。微分・積分と並んで、理系や経済学の学生なら必ず習得しなくてはならない線形代数を、本書は高校数学程度の知識を前提に、わかりやすく解説します。

2010年11月刊行、232ページ。

著者略歴:
竹内淳:ホームページ: http://www.f.waseda.jp/atacke/
1960年徳島県生まれ。1985年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了。理学博士。富士通研究所研究員、マックス・プランク固体研究所客員研究員などを経て、1997年早稲田大学理工学部助教授、2002年より教授。専門は、半導体物理学。

竹内先生の著書: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で350冊目。

先日「改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平」を紹介したばかりだが、大村先生の本は「高校数学から大学数学への橋渡し」、今回紹介する竹内先生のは「高校数学を終えた人が大学の数学を容易に学ぶため」の本である。

また、竹内先生の本では複素数を成分とする行列(複素行列)も解説されていて、固有値や固有ベクトル、トレース、ランク(階数)、シュミットの直交化法、行列の対角化なども学ぶことができる。さらに、この本では行列が量子力学でどのように使われているかを学ぶことができるのだ。

どちらにも共通して言えるのは、単にわかりやすく学べるということだけでなく「どのように役立つか」がわかり、これはもしかするとすごいことにつながるのかもしれないと「空想を膨らませる」ことができ、読んでいるうちにワクワクしてくるという大きなおまけがついていることなのだ。

勉強に対するモチベーションが上がらないとか、やる気スイッチが入らないとかいう人をよく見かける。でも僕は少し違うと思うのだ。もともとやる気を持っている人なんていない。ちょっとかじってみて面白いとか、スゴイとか思うから興味が生まれ、その先がどうなるのか気になってくるというのが本当のところだろう。やる気スイッチというのは知らず知らずのうちに入ってしまうものなのだ。

大村先生や竹内先生の本を僕がお勧めするのは「読んでいるうちにワクワクしてくる」とか、「へぇ、なるほどなぁ。」と読者を感心、感動させるすべに長けていること、読者の気持ちを汲んでお書きになっているからである。やる気スイッチが自然に入り、次を読んでみたくなるのだ。2~3冊読むうちに「やる気スイッチ」などという言葉は忘れてしまうことだろう。

章立ては次のとおりだ。

第1章 行列は方程式を解くためのツール
第2章 単位行列と逆行列
第3章 行列式の登場
第4章 行列の数値計算
第5章 空間とベクトルの不思議な関係
第6章 固有値問題ってなに?
第7章 複素数を含む行列
第8章 量子力学との関わり

第1章から第3章までは基本中の基本。大学の授業で落ちこぼれてしまった人には大いに助けとなることだろう。計算演習では全く学べない部分を手に取るように教えてくれる。そして竹内先生の本のユニークなところは、数学者の伝記を含めてくださっていることだ。いつ頃、誰が行列や行列式を「発明」したのか、その数学者がどのような人生を送ったのかを知れば、一休みした気分になれるし、無味乾燥に思える計算にも味わいがでてくる。

第4章ではガウスの消去法による逆行列の計算手順を学ぶ。筆算だけでなくExcelを使った方法も解説されているので、行列の計算はコンピュータを使えば面倒ではないことが実感できる。

第5章からが特に重要だ。工学部ではとかく省略されがちな複素ベクトルや複素行列の線形代数が解説される。(ここが面白いのにもったいない。)特に125ページから始まる「ベクトル空間」の概念に注意してほしい。ここから空間が抽象化されていることに気が付いてほしいのだ。

第4章までにでてくる空間は2次元であっても、3次元であっても私たちが視覚的に思い浮かべられる空間に対応している。ところが125ページ目から始まるベクトル空間は「ベクトルの定義を満たす空間」のことであり、「定義を満たすものはすべて空間と考えてしまおう。」ということになっているからだ。その1例として複素ベクトル空間や複素行列が紹介されているのである。

複素数は a+bi であらわされるから、1次元空間(つまり複素数の直線)であっても2次元平面(ガウス平面)の拡がりをもっている。これが2次元複素空間になると、空間をあらわすための拡がりは2倍になるから互いに直交する4本の直線を座標軸とする拡がりになるのだ。すなわち4次元実数空間。つまり、この時点で複素ベクトル空間や複素行列は幾何学的に私たちがイメージできないものになっている。抽象的という言葉は適切ではないが、このように視覚的にイメージできない世界で、ベクトルや空間のもつ性質を解き明かしていこうというのが第5章から始まる内容なのだ。

そのような複素数の世界で、連立方程式はどのような解をもつのか、どのように解いていけばよいのかを第6章の「固有値問題」として学ぶのである。

そして第7章では複素行列の特殊な例として「エルミート行列」と「ユニタリー行列」について学ぶ。この2つの行列は量子力学を成り立たせている数理構造には欠かせない。複素数というこの世のものとは思えない数であらわされる量子力学の基礎方程式が、どのようなしくみで実数であらわされる私たちの世界を成り立たせているかという秘密に直結しているのである。第7章はこの2つの行列を数学として学ぶ。

最後の第8章で、ようやく量子力学の話が紹介される。電子は波でもあり、同時に粒子でもあるという説明は、これまでに読んだ科学教養書で知っていることと思う。けれどもそれをイメージできる人はいないはずだ。また、原子核の周りの電子のエネルギーがとびとびの値しかとらないということも教養書レベルで得られる知識である。第7章までに学んできたベクトルと行列の知識を総動員すると、これら2つの量子的現象が説明できるのである。ベクトルや行列がどのように量子力学で使われるかが理解できれば、あなたはきっと「高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳」も読みたくなるに違いない。

本書の中で初学者がいちばんワクワクするところをあげておこう。それは第8章(188ページ)に書かれている「波動関数の規格化条件」の数式である。



この式は波動関数Φとその共役関数の積を-∞から+∞まで積分せよ。この計算は電子の存在確率を1にするためのもので、これを「規格化=1にすること」と呼んでいる。ここで積分変数の x は「空間の中での位置」をあらわす変数である。

x を-∞から+∞まで積分するというのは、宇宙の果てから反対側の宇宙の果てまで電子の存在確率を足し合わせよと言っているのと同じなのだ。

初学者は「えっ、波動関数って宇宙全体に広がっているの!」、「宇宙全体で足し合わせるの?」と驚いてしまうわけである。何気ない数式がとんでもないことを意味しているのに気が付いたとき、モチベーションは一気に高まるのだ。

また線形代数は量子コンピュータを理解するために必須科目のひとつである。詳細は「量子コンピュータ、量子アルゴリズムを学びたい高校生のために」という記事をお読みいただきたい。

線形代数をさらに深く学んでみたい方は「線形代数学入門のための教科書談義」の記事で紹介している教科書をお読みになるとよいだろう。


本書のサポートページは次のアドレスで公開されている。正誤表のほか、ガウスの消去法で使うExcelシートをダウンロードすることができる。

高校数学でわかる線形代数サポートページ
http://easyscience.webnode.jp/高校数学でわかる線形代数/


ぜひ、本書を読んで線形代数を好きになり、竹内先生の著書の魅力に気付いてほしい。


関連記事:

高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5b7f5f84c50f24d93b23d6e07c9cb73d

改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/71c73f4258b48518957d5995d96f81ad

線形代数学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9d2ac30c9f5f620ad703304d710ed90b

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7


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高校数学でわかる線形代数:竹内淳」(Kindle版)行列の基礎から固有値まで



はじめに

第1章 行列は方程式を解くためのツール
- 「線形」とは、どんな意味だろう?
- 算数の鶴亀算を行列で書くと
- 普通の方程式の解き方: 消去法
- 拡大係数行列を使った方程式の解き方
- 小行列: 行列の中の小さな行列
- 階数
- 階数と解の重要な関係
- 階数と方程式の関係
- 解は1組か? あるいは無数に存在するか?

第2章 単位行列と逆行列
- 単位行列
- 逆行列
- 逆行列と方程式の関係
- 行の基本変形を使った逆行列の求め方
- 行の基本変形は行列のかけ算で表せる
- 行の基本変形を行列のかけ算に置き換える
- 複数の行の基本変形を1つの行列にまとめよう

第3章 行列式の登場
- 行列と同じくらい大事な式?
- 行列式を考案したのは日本人!
- 若き関孝和
- サラス
- 行列式の性質
- 行列式のかけ算の行列式
- 江戸時代の数学書と遺題継承
- 算聖・関孝和
- 正則な行列の逆行列は?
- 余因子行列とは
- 転置行列の行列式は同じ
- 正則であるための条件
- クラメールの公式
- ライプニッツとクラメール
- 自明でない解を持つ条件
- 終結式と行列式
- 2次方程式の終結式
- シルベスター

第4章 行列の数値計算
- クラメールの公式はほとんど使われていない?
- ガウスの消去法
- 表計算ソフトで行列を計算してみよう!
- 行列のかけ算
- ガウスの消去法の計算
- ガウスの消去法を使った逆行列の導出
- 数値計算の世界での一歩

第5章 空間とベクトルの不思議な関係
- ベクトルとスカラー
- 3次元での1次従属とは?
- 別の基底の取り方
- シュミットの直交化法
- 1次独立かどうかを明らかにする行列式
- ベクトル空間
- 方程式と1次従属の関係

第6章 固有値問題ってなに?
- 固有値問題
- 固有値問題の実例
- 行列の対角化
- 異なる固有値に属する固有ベクトルは1次独立である
- 行列の固有値が重解だった場合
- 3次の正方行列が重解を持つ場合
- 対角化が可能であるかどうかの見分け方
- 相似な行列
- 相似な行列のさらにおもしろい性質

第7章 複素数を含む行列
- 複素数とは
- 複素数を座標に表示する方法
- 複素数=複素数のとき複素共役も等号が成り立つ
- 複素数の内積とは
- 共役転置行列
- エルミート行列
- エルミート
- エルミート行列の固有値は必ず実数になる
- エルミート行列の異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する
- エルミート行列はユニタリ行列を使って対角化できる

第8章 量子力学との関わり
- 行列と量子力学
- シュレディンガー方程式
- 物理量の求め方
- ブラケット表示
- シュレディンガー方程式の解の例
- 規格化条件
- 電子のエネルギーを求める
- エルミート演算子
- エルミート演算子の固有値は実数である
- エルミート演算子の固有値の固有関数は直交する
- 演算子の行列表現
- エルミート行列へ

付録
おわりに
参考文献
さくいん

くすりの科学知識 (ニュートン別冊)

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くすりの科学知識 (ニュートン別冊)

内容紹介:
薬とは,一体何なのでしょうか。そもそも「薬が効く」とはどういうことなのでしょうか。体の中には,10万種ともいわれるタンパク質が存在しています。その中の,標的とするタンパク質にぴったりと合い,はたらきを調節する役目をもつ化合物が「薬」です。
これらの薬は,体の中をどのようにめぐり,どのように効果を示すのでしょうか。また,なぜ薬には副作用がつきものなのでしょうか。本書では,薬のしくみについて,基礎からわかりやすく解説していきます。
すぐれた薬は,どのようにつくられているのでしょうか。実は,一つの薬が世に出されるまでには,15~20年という長い年月と,数百億円といわれる莫大な開発費用がかかります。本書では,奥深い創薬の世界にも迫ります。ぜひご一読ください!
2010年11月刊行、232ページ。


理数系書籍のレビュー記事は本書で351冊目。

医学・薬学(そして化学、生物学)は完全に僕の守備範囲外だ。先月、本書が発売されているのを見つけて、Newton別冊にしては珍しいと思って購入した。定価が1500円+税と安かったことも購入の後押しをしていた。

病院や薬とは無縁の生活をしてきたから、薬の知識はほぼ皆無。Newton別冊は一般読者向けだから難しくはないはず。これが物理や数学などの特異分野だったら読むのに2日もかからないだろう。本書は案の定、読み終えるまでのべ1週間くらいかかった。本書はカタカナの薬品名や専門用語がつらかった。

物理や数学に馴染みのない一般読者が、Newton別冊で相対性理論や量子論の本を読むとき、これくらい難儀するのかな?という考えが頭をよぎった。どの分野であっても専門用語を避けることはできないわけだから。

先月末にNewton編集人の高嶋さんによる講演「グラフィック・サイエンス・マガジンの作り方」を聞いたばかりである。文章とイラストがどのように配置され、工夫されているかにも注意して読ませていただいた。

医学・薬学系だと臓器や化学物質、分子構造や遺伝子のイラストが多いから、描くのは大変そうに見える。描く対象にどの色を使うかを決めるのも大変だろうと思った。

本書の詳しい紹介はニュートンプレスのホームページをお読みいただきたい。(gooブログでこのページのURLは禁止用語が含まれているようで保存できない。Googleからの検索結果から本書の紹介ページを開いていただきたい。)

ニュートン別冊 くすりの科学知識
ニュートンプレスのページを検索

章立てはこのとおり。

1 薬の基礎知識
2 創薬の世界
3 画期的な薬
4 薬の事典

いちばんためになったのは、「薬の基礎知識」の章だった。僕は薬がどのようなしくみで効くのかということさえ知らなかったからだ。

意外だったのは、病原や薬の成分の分子レベルの立体構造が薬効に影響をもっていることだ。以前、細胞に入る化学物質と入れない化学物質を鍵と鍵穴の絵で説明している図を見たことがあるが、あくまで概念図として鍵と鍵穴の例を使っているのだと思っていた。

だから分子の立体的な形の違いが薬の働きをもたらすという考えが、僕にとっては目新しい。薬品というものはずいぶん物理的なものなのだなと思うわけである。薬学や化学専攻の人には当たり前のことでも、門外漢には新鮮な驚きである。

カタカナで書かれている化学物質や薬品の名前は、とても覚えきれない。(何度読み返しても覚えられないと思う。)これは仕方ないこととして、解説を理解すれば十分なのだろう。

創薬にとても長い年月がかかることを知っていたが、なぜなのかは想像の域にとどまっていた。本書でこれが具体的に理解できたこと、どの部分に時間とお金がかかるかを理解できたのが有益だった。

読み物として楽しめたのは2「創薬の世界」と3「画期的な薬」の章である。特に興味深かったのはスパコンの「京」を使ったバーチャル心臓による不整脈のシミュレーションだ。薬が心臓に与える影響が、分子レベルのシミュレーションでわかってしまうこと自体が驚きだった。

バーチャル心臓のこともニュースとして知っていたが、よく考えてみると心臓の細胞を作っている分子と薬の分子の形が心筋細胞に与える影響を決めるのだ。心臓の鼓動を力学的に再現する単なる物理シミュレーションではないことに、この研究がもたらす大きな可能性を感じることができた。

4「薬の事典」の章は、いざというときに役立ちそうだが、覚えきれる量ではないから読み流すにとどめた。風邪薬にしても、目薬にしても薬効を見ると同じ薬がさまざまな症状に効くと書かれている。ひとくちに「風邪」といっても種類はたくさんある。

第1章で薬はどのようなしくみで効くかということを知ったが、説明で取り上げられるのは病原と薬効が1対1で対応するケースである。風邪のように実際の病気では複数の症状があらわれることが多い。そもそも人体それ自体が複雑に影響を与える多数の部分で成り立っている。

病原と薬効が1対1で対応するケースなら分かりやすいが、実際に使われる薬を理解するのは相当難しいことなのだろうと思った。


本書では紹介されていなかったが、クライオ電子顕微鏡を創薬に役立てることで、新薬開発に革命がおこるそうだ。これも分子レベルでの解析が創薬の期間短縮をもたらす例である。クライオ電子顕微鏡は、NHKのサイエンスZEROで放送されたばかりだ。

サイエンスZERO「ノーベル賞2017 クライオ電子顕微鏡で新薬誕生!?」
https://hh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20171217-31-25353

NHKオンデマンド(見逃し番組)のリンクはこちら
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017083284SC000/


大いにためになった本書であるが、薬を飲まずに済むならそれに越したことはない。日頃の健康管理と予防が何より大切である。と書きつつタバコを辞められない自分はどうしたものかと思うし、50代半ばになり、これからいろいろ身体に異変がでてくるのだろうなぁと複雑な心境になるわけである。


今年の8月に、次の本が刊行されていたようだ。今日紹介した「くすりの科学知識 (ニュートン別冊)」と読み合わせるのにちょうどよい。来年はこちらを読んでみたいと思った。

体と病気の科学知識 (ニュートン別冊)




関連記事:

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ec7f96712045560b6cf3d7b1e851e49e

グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その2)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06a11387485b7835d8147229d541497b


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くすりの科学知識 (ニュートン別冊)



1 薬の基礎知識

- 薬とは何か?
- 薬はどうやって患部に届くのか?
- 薬が効くしくみ
- 副作用がおきるわけ
- くすりに関する身近な疑問
- 毒と薬の不思議な関係
- 薬の危険な飲み合わせ
- コラム 胃腸薬?どう選ぶ? どんな成分がきく?

2 創薬の世界

- 病気の原因を知る
- “薬のタネ”を探す
- 副作用を減らす
- 新薬開発の流れ
- 抗体医薬品
- オーダーメイド医療
- iPS細胞を用いた創薬研究
- 今後の創薬科学
- 開発中の新薬
- コラム 悪玉コレステロールは体の中で薬を運んでいた!?
- コラム アルツハイマー病治療薬の実現へ大きな一歩
- コラム " バーチャル心臓" で薬の副作用を予測
- コラム がんのウイルス療法の試験的治療が開始

3 画期的な薬

- 感染症の特効薬
- コレステロールを下げる薬
- インタビュー 遠藤 章 博士
- C型肝炎の新薬
- がんを狙い撃ちする薬
- インタビュー 前田 浩 博士
- インタビュー 松村保広 博士

4 薬の事典

- 解熱鎮痛薬
- 片頭痛の薬
- 肩こり・腰痛・筋肉痛の薬
- 風邪の薬
- 強心薬
- 不整脈の薬
- 血圧降下薬
- 胃炎・消化性潰瘍の薬
- 便秘の薬
- 整腸剤・下痢止め
- 潰瘍性大腸炎の薬
- 痔の薬
- 肝臓障害の薬
- 膵臓・胆道
- 甲状腺
- 女性用ホルモン剤
- 骨粗鬆症の薬
- うつ病の薬
- 認知症の薬
- 糖尿病の薬
- 皮膚の薬
- 眼科用薬
- 白内障の薬
- 緑内障の薬
- 点鼻・点耳薬
- 寄生虫・原虫の薬
- 泌尿器の薬
- 免疫抑制剤
- 抗ウイルス薬
- 抗生物質
- 結核の薬
- がんの薬
- 漢方薬

Square root 2,401 using abacus (Half-multiplication table method 3)

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[Set 2,401 on Mr. Square root]Zoom

[Japanese]

We will continue from where we ended in the last article, the actual solutions to calculate Square root using abacus. Today's example is Half-multiplication table method (Hankuku method), root is 2-digits case. We require 9 as root in the middle of calculation. Please check the Theory page for your reference. You can check the Index page of all articles.

Square root methods: Double-root method, Double-root alternative method, half-multiplication table method, half-multiplication table alternative method, multiplication-subtraction method, constant number method, etc.


Abacus steps to solve Square root of 2,401 (Answer is 49)

"1st group number" is the left most numbers in the 2-digits groups of the given number for square root calculation. Number of groups is the number of digits of the Square root.

2,401 -> (24|01) : 24 is the 1st group number. The root digits is 2.


Step 1: Place 2401 on CDEF.


Step 2: The 1st group is 24.


Step 3: Square number ≦ 24 is 16=4^2. Place 4 on B as the 1st root.


Step 4: Subtract 4^2 from the 1st group 24. Place 24-4^2=08 on CD.


Step 5: Focus on 801 on DEF.


Step 6: Divide 801 by 2. Place 4005 on DEFG.


Step 7: Divide 40 on DE by the current root 4.


Step 8: 40/4=9 remainder 4. Place 9 on C as 2nd root.


Step 9: Place remainder 04 on DE.


Step 10: Focus on 405 on EFG.


Step 11: Subtract 2nd root^2/2 from 405 on EFG. Place 000 on EFG.


Step 12: Square root of 2401 is 49.


Final state: Answer 49

Abacus state transition. (Click to Zoom)



Next article is also about Half-multiplication table method, more difficult example.


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed

Index: Square root and Cube root using Abacus
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f62fb31b6a3a0417ec5d33591249451b


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開平と開立(第33回):2,401の算盤による開平(半九九法3)

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開平はん」に2,401を置いたところ拡大

[English]

前回に続き、算盤での開平の手順を解説する。今回も半九九法で、根が2桁になる場合で9を立根するケース。理論編も参考にしていただきたい。全体の目次はこのページを開くと見ることができる。

開平(平方根):倍根法(2商法)、倍根法別法、半九九法、半九九法別法、乗減法、定数法(折衷法) 、過大数開平、省略開平など


算盤による2,401の2乗根の解法(答は49)

第1群の数とは平方根を求める数を2桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の2桁のことである。群の数が根の桁数となる。

2,401 -> (24|01) : 24が第1群の数、根の桁数は2


手順1: 2401をCDEFに置く。


手順2: 第1群は24。


手順3: 24以下の平方数は16=4x4。4を初根としてBに立てる。


手順4: 24-4^2=08をCDに置く。


手順5: DEFの801に注目する。


手順6: 801を二分する。すなわち801/2=400.5をDEFGに置く。


手順7: DEの40を既根4で割る。


手順8: 40/4=9余り4。商9をCに置き、次根とする。


手順9: 余り04をDEに置く。


手順10: EFGの405に注目する。


手順11: EFGの405から次根^2/2を引く。405-9^2/2=000をEFGに置く。


手順12: 平方根は49と求まる。


最終状態: 答 49

珠の状態推移を表にすると次のようになる。(クリックで拡大)



次回も半九九法による開平だが、もう少し難しい例をとりあげる。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb

目次:算盤による平方根、立方根の計算(開平、開立)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bb0449f357398a2c24026f33af7f70ee


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Square root 54,756 using abacus (Half-multiplication table method 4)

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[Set 54,756 on Mr. Square root]Zoom

[Japanese]

We will continue from where we ended in the last article, the actual solutions to calculate Square root using abacus. Today's example is Half-multiplication table method (Hankuku method), root is 3-digits case basics. Please check the Theory page for your reference. You can check the Index page of all articles.

Square root methods: Double-root method, Double-root alternative method, half-multiplication table method, half-multiplication table alternative method, multiplication-subtraction method, constant number method, etc.


Abacus steps to solve Square root of 54,756
(Answer is 234)

"1st group number" is the left most numbers in the 2-digits groups of the given number for square root calculation. Number of groups is the number of digits of the Square root.

54,756 -> (05|47|56) : 5 is the 1st group number. The root digits is 2.


Step 1: Place 54756 on DEFGH


Step 2: The 1st group is 05.


Step 3: Square number ≦ 5 is 4=2^2. Place 2 on B as the 1st root.


Step 4: Subtract 2^2 from the 1st group 5. Place 5-2^2=08 on CD.


Step 5: Focus on 14756 on DEFGH.


Step 6: Divide 14756 by 2. Place 07378 on DEFGH.


Step 7: Divide 7 on E by the current root 2.


Step 8: 7/2=3 remainder 1. Place 3 on C as 2nd root.


Step 9: Place remainder 1 on E.


Step 10: Focus on 137 on EFG.


Step 11: Subtract 2nd root^2/2 from 137 on EFG. Place 092 on EFG.


Step 12: Divide 92 on FG by the current root 23.


Step 13: 92/23=4 remainder 0. Place 4 on D as 3rd root.


Step 14: Place remainder 00 on FG.


Step 15: Focus on 8 on H.


Step 16: Subtract 3rd root^2/2 from 8 on H. Place 0 on H.


Step 17: Square root of 54756 is 234.


Final state: Answer 234

Abacus state transition. (Click to Zoom)


It is interesting to compare with the Double-root method.


Next article is also about Half-multiplication table method, more difficult example.


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed

Index: Square root and Cube root using Abacus
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f62fb31b6a3a0417ec5d33591249451b

Square root 54,756 using abacus (Double-root method 5)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0d0f5f4584c9b6c08376ae3bd3bf4a02


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開平と開立(第34回):54,756の算盤による開平(半九九法4)

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開平はん」に54,756を置いたところ拡大

[English]

前回に続き、算盤での開平の手順を解説する。今回も半九九法で、根が3桁になる場合の基本編。理論編も参考にしていただきたい。全体の目次はこのページを開くと見ることができる。

開平(平方根):倍根法(2商法)、倍根法別法、半九九法、半九九法別法、乗減法、定数法(折衷法) 、過大数開平、省略開平など


算盤による54,756の2乗根の解法(答は234)

第1群の数とは平方根を求める数を2桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の2桁のことである。群の数が根の桁数となる。

54,756 -> (05|47|56) : 5が第1群の数、根の桁数は3


手順1: 54756をDEFGHに置く。


手順2: 第1群は05。


手順3: 5以下の平方数は4=2x2。2を初根としてBに立てる。


手順4: 5-2^2=01をCDに置く。


手順5: DEFGHの14756に注目する。


手順6: 14756を二分する。すなわち14756/2=07378をDEFGHに置く。


手順7: Eの7を既根2で割る。


手順8: 7/2=3余り1。商3をCに置き、次根とする。


手順9: 余り1をEに置く。


手順10: EFGの137に注目する。


手順11: EFGの137から次根^2/2を引く。137-3^2/2=092をEFGに置く。


手順12: FGの92を既根23で割る。92/23=4余り0


手順13: 商4を得てDに置き、第3根とする。


手順14: 余り00をFGに置く。


手順15: Hの8に注目する。


手順16: Hの8から第3根^2/2を引く。8-4^2/2=0をHに置く。


手順17: 平方根は234と求まる。


最終状態: 答 234

珠の状態推移を表にすると次のようになる。(クリックで拡大)


同じ問題の倍根法での解法と比べてみてほしい。

次回も半九九法による開平だが、もう少し難しい例をとりあげる。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb

目次:算盤による平方根、立方根の計算(開平、開立)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bb0449f357398a2c24026f33af7f70ee

開平と開立(第11回):54,756の算盤による開平(倍根法5)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c343dbd80ed9d66c7978e2fae18443da


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ボクが逆さに生きる理由: 中島宏章

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ボクが逆さに生きる理由: 中島宏章」誤解だらけのこうもり

内容紹介:
こうもりの生態、生息地、飛び方から、謎に満ちた進化、免疫、長寿まで最新情報をたのしく解説!

◆日本の夜空はコウモリだらけ
◇人がいない洞窟や森、大き目な雑木林はもちろん、都心部の公園などにも、コウモリは生息しています。夕方、空を見上げて、大きさは小鳥ぐらいなのに、ちょっとヘンな飛び方をしているのは、たいてい、コウモリです。こうもりは、それほど身近にいるのです。

◆わかってきたこと、まだわからないこと
◇飛ぶ能力や超音波(エコーロケーション)については、かなりのことがわかりはじめており、本書でしっかり解説しています。しかし、どのように進化してきたのかは謎のままです。また、生態について、休眠状態(トーパー)など、面白いことが、たくさんわかりはじめています。これも本書でていねいに解説しています。

◆コウモリは人類を救う?!
◇哺乳類を比べると、小さい割に、コウモリはとびぬけて長生きなことがわかります。研究が進めば、長寿の薬ができるかもしれません。また、鳥よりも体が重いのに飛行できる能力も重要です。もし、はばたき飛行機ができれば、滑走路が不要になり、騒音もなくなります。人類の発展に大いに貢献する可能性があるコウモリについて、本書では、研究の最前線を、楽しい文章で解説しました。

2017年10月刊行、248ページ。

著者について:
中島宏章(なかじま ひろあき): ホームページ: http://hirofoto.com/
1976年札幌市生まれ。(株)野生生物総合研究所で野生動物の調査業務を9年経験。2007年、31歳でフリーとなり、調査業を続けながら、憧れだった動物写真家を目指す。2010年、コウモリを主人公にした20枚の組写真作品「BAT TRIP」で第3回 田淵行男賞を受賞。2012年には第37回 木村伊兵衛写真賞のファイナリストにも。著書に『BAT TRIP~ぼくはコウモリ』(北海道新聞社、2011年)、『たくさんのふしぎ~コテングコウモリを紹介しまい』(福音館書店、2012年)などがある。現在、北海道各地でコウモリ写真展・講演会を開催しながら、自身の写真活動や子育て経験を通じ、現代社会の子どもたちの「自然離れ」をなんとかしたいと模索中。北海道すべての市町村でコウモリ写真展・講演会・観察会を開催することを目標とする「あなたの街のコウモリの森」プロジェクトに取り組んでいる。


理数系書籍のレビュー記事は本書で352冊目。

生物学は完全に僕の守備範囲外だ。いや、生物学を専攻していてもコウモリに詳しい人はそうざらにいるものではない。爬虫類マニアのほうがコウモリマニアよりずっと多いことだろう。

本書は大学時代に生物学を専攻し、「身近な科学・学びを遊びに」というブログをお書きになっている「Kidoさん(@science_kido)」からお勧めいただいた。ブログ歴はまだ2か月あまりだが「科学ブログランキング」に登録され、科学全般にわたって精力的に良い記事をお書きになっている。

コウモリはなぜ逆さまで眠るのか?
コウモリとはいったい何者なのか?
コウモリは超音波でどのように周囲を把握するのか?

子供の頃に不思議に思うことがあったとしても、このような機会がなければ本書のような本を読むことはなかっただろう。ふだん見かけることはないし、どちらかというと汚らしいイメージの生き物である。

ところが本書を読むと、コウモリに対するイメージががらっと変わってしまった。こんなに愛らしい生き物だったのか。。。冒頭には著者が撮影したアルバムが数ページ挿入されている。これはネットで公開されている写真だ。

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章立てはこのとおり。これだけ見ても僕はコウモリのことをほとんど知らなかったことがわかる。

第1章:コウモリのこと、どれくらい知っていますか?
第2章:進化の謎を探る
第3章:飛行メカニズムの謎に迫る
第4章:超能力ではない、超音波だよ
第5章:知りたい!長寿の秘密

そもそも解明されていないことが多いのである。大きいものから小さいものまで約1300種もいるそうだし、その数はますます増えつつある。何しろコウモリが哺乳類である。そしてDNA分析によって近年わかったのだが、系統樹上ではどちらかというと「ウマ(馬)」に近いそうなのだ。生物の進化の過程で、どのように誕生したか詳しいこと今も謎なのである。

私たちが羽だと思っている部位も、実はコウモリの手であり指がちゃんと5本ついている。羽の水かきのような部位は「皮膜」で、多少の傷を負っても元通りに回復するのだ。約1300種もいるコウモリには肉食のものもいるし、草食のものもいる。そしてあろうことか「血」を吸う種類のいるのだ。まさに吸血コウモリである。

本書は生物系の本でありながら、物理学ファンにも読み応えのある解説が含まれている。それは、第3章の「飛行メカニズムの謎に迫る」と第4章の「超能力ではない、超音波だよ」の部分。

「飛行機はなぜ飛ぶのか?」という疑問に正しく回答を与えてる物理の本は少ないと著者は書いている。つまり揚力はどのように生じるのかという疑問のことだ。

「飛行機がなぜ飛ぶか」分からないって本当?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140514/264597/

コウモリも飛行機も(そして鳥も)、揚力を得る仕組みということであれば同じである。著者は自分が理解できるまで、疑問をとことん追求しいていく。「ベルヌーイの定理」により、翼の上と下では大気の圧力に違いが生じるから、その圧力差が揚力となる、という説明では納得しない。では、なぜ翼の上下で圧力が異なる状況が生まれるのか?

最終的に著者は揚力のしくみを理解するに至り、さらにコウモリや鳥がなぜ前に向かって飛べるのかも理解する。このあたりの説明は、本書が一般読者向けの本であるだけに、どなたでもわかるように書かれている。

さらに著者は飛行のからくりに関して、コウモリ特有の事がらも解説する。翼(実は手)のどの部分が揚力を得るのに使われ、どの部分が推進力を得るのに使われるかということだ。そして、翼をどのように動かしてエネルギー効率の良い飛び方をしているかということも詳しく解説している。


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第4章の「超能力ではない、超音波だよ」に関しては、本書を紹介してくださったKidoさんが、ご自身のブログに解説記事をお書きになっているので、ぜひお読みいただきたい。

イルカやコウモリが使うエコーロケーションってなに?
https://www.science-kido.com/single-post/2017/12/19/イルカやコウモリが使うエコーロケーションってなに?


先日のサイエンスZERO「7つの地球を大発見!? “トラピスト1”惑星系」を見て、環境の違いによって予想もつかない生物が進化しうる可能性に想いをはせたばかりだが、私たちの地球にでさえとてつもない能力や機能を持つ生物がたくさんいること、解明されていない生物はたくさんいることを、本書を通じて思い知らされた。コウモリはこの意味で実によくできた生き物である。

著者の(行き過ぎといっていいほど)コウモリへの情熱と愛情に満ちた本だ。Kidoさん、面白い本を紹介していただき、ありがとうございました。


ところで、コウモリの発する超音波を聞くための「バットディテクター」という装置があるのだが、本書で紹介されている商品はこちらから購入することができる。

かっちゃんの・電子工房(バットディテクターの製作と販売)
バットディテクターはコウモリの出す声(超音波)を人の耳で聞こえる周波数帯(可聴音)に変換します
http://www.mb-labo.com/

Bat detecting with the Magenta Bat 5



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ボクが逆さに生きる理由: 中島宏章」誤解だらけのこうもり



はじめに

第1章:コウモリのこと、どれくらい知っていますか?
- コウモリってどんな生き物?
- コウモリは何のなかまか?
- 世界中にいろいろなコウモリがいる
- コウモリの衣食住【衣】
- コウモリの衣食住【食】
- コウモリの衣食住【住】

第2章:進化の謎を探る
- コウモリはどのように進化したか?
- コウモリの分類の変遷
- 知りたい!逆さまの理由
- 逆さまになってみた!
- 飛ぶようになった理由

第3章:飛行メカニズムの謎に迫る
- 飛行機がどうして飛べるのか、わかっていない?
- 要は揚力
- 空の飛び方、教えます
- コウモリの飛翔と体のつくり
- 鳥類との比較

第4章:超能力ではない、超音波だよ
- エコーロケーションを使って「音で見る」
- コウモリのエコーロケーション研究の歴史
- エコーロケーションの仕組み

第5章:知りたい!長寿の秘密
- 体のコンディションを自在に調節できる!
- 長生きの秘訣は?
- コウモリの天敵
- コウモリとウィルス

おまけ
おわりに
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