Quantcast
Channel: とね日記
Viewing all 976 articles
Browse latest View live

量子コンピュータ―超並列計算のからくり: 竹内繁樹

$
0
0
量子コンピュータ―超並列計算のからくり:竹内繁樹」(Kindle版

内容紹介:
「量子ビット」を使うと、なぜ「超並列計算」ができる? 莫大な計算結果の重ね合わせ状態から、答えを1つに確定できるのはなぜ? まったく新しいしくみによって、現在のスーパーコンピュータをはるかに凌ぐ力を発揮する量子コンピュータ。研究の最先端にいる著者が、従来のコンピュータのしくみと対比させながらその基礎と、実現にむけた試みを平易に解説。
2005年2月刊行、272ページ。

著者について:
竹内繁樹
北海道大学電子科学研究所助教授。理学博士。1968年大阪府生まれ。1993年、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。三菱電機先端技術総合研究所(尼崎市)を経て、1999年より現職。1995年より科学技術振興機構さきがけ研究「場と反応」、「光と制御」研究者を兼務。1997年より一年間、スタンフォード大学客員研究員。専門は量子光学、量子情報の実験。1998年に、光子を用いた量子コンピュータのデモ実験に成功している。


理数系書籍のレビュー記事は本書で330冊目。

量子コンピュータ、量子アルゴリズムを学びたい高校生のために」という記事で本書を紹介したので読んで紹介することにした。

2005年に刊行されており、アマゾンのレビューでも好評だ。コンパクトながら必要なことはすべて語られている。章立ては次のとおり。

第1章:量子計算でできること
第2章:「量子」とはなにか
第3章:量子の不思議
第4章:「量子」を使った計算機
第5章:量子アルゴリズム
第6章:実現にむけた挑戦
第7章:量子コンピュータの周辺に広がる世界と量子暗号

なぜ量子コンピュータが必要なのか?これまでのコンピュータとどこが違うのかが第1章で解説される。何のためにこの本を読んでいるのかわかるので、はじめて量子コンピュータを学ぶ人にとってこの章は大切だ。

第2章と第3章は量子力学入門である。量子力学がどのように生まれたか、それまでの古典物理学と何が違うのか、光子と電子に話題を限定すること、そして重ね合わせの原理、確率波、不確定性など量子コンピュータの理解に必要な事がらに絞って解説を行っている。量子力学を学ぶという意味では物足りないが、ページ数の制限があるから仕方がない。

第4章から量子コンピュータの詳しい解説が始まる。いつ頃、誰によって考案されたか、古典コンピュータの論理回路の解説、量子コンピュータの論理回路の解説、量子ビットの考え方、行列とケットベクトルを使った計算方法、量子ビットを3D表示したブロッホ球の見かたなどが詳しく解説される。各量子ゲートの解説はよく書かれていて、とてもわかりやすいと思った。仕上げとして「量子足し算回路」が紹介されている。

第5章では量子アルゴリズムを解説している。冒頭で「量子コンピュータ用のプログラム言語はまだない」ことを述べている。入門者に対するこのような配慮はありがたい。パソコンのイメージをもっている入門者は誤解しがちなところだから。現在の段階の量子コンピュータが論理ゲートの組合せでアルゴリズムを実現していることを知ったうえで読み進めれば誤解を増幅させなくてすむ。また量子コンピュータの原理とアルゴリズムをそれぞれ第4章と第5章に分けているのもよいと思った。たとえば「クラウド量子計算入門: 中山茂」では、この2つが同時進行して解説されている。入門者には原理の解説なのかアルゴリズムの解説なのかがわからなくなることもあるだろう。本書では以下の量子アルゴリズムが解説されている。アルゴリズムの解説については本書のほうが「クラウド量子計算入門: 中山茂」よりもずっとわかりやすかった。

- ドイチュ-ジョサのアルゴリズム
- データベース検索のアルゴリズム
- グローバーのアルゴリズム
- ショアのアルゴリズム
- フーリエ変換

第6章は量子コンピュータのハードウェアの話。2005年の段階とはいえ、僕にとっては初めて知ることばかりなのでとても興味深く読めた。光子を使う方法にも何種類かあるようだし、分子中の核スピンを使う方法、シリコンを使う方法、超伝導量子ビットも考案されている。制御NOTゲートをどのようにして実現できるかという箇所がいちばん有益だった。また何が量子コンピュータの障害になっているのか、どのように解決していくのかということも解説している。量子コンピュータを実用化するにはとにかく固体・集積化を進めるのが大切だ。

第7章は量子暗号についての解説。量子コンピュータの応用でいちばん重要なのがこの分野である。入門者向けの本でありながら、この解説にまるまる1章を充てているのが本書の特徴だ。私たちの将来の生活の安心、安全をどのように守っていくか。その鍵のひとつが量子コンピュータなのだということがよくわかる。


コンパクトな本ながら、伝えたいという意欲に満ち、内容は盛りだくさんである。量子コンピュータ入門用の1冊目として、バランスのとれた良書だ。そして、できれば最新の情報を盛り込む形で続編もしくは第2版が刊行されればよいのになと思った。

本書を読んだ後、2冊目以降は以下のリンクからお探しになるとよいだろう。

量子コンピュータ関連の本: Amazonで検索


関連記事:

量子コンピュータ、量子アルゴリズムを学びたい高校生のために
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b2940b648bda682aa27192eb8261972

発売情報: クラウド量子計算入門: 中山茂
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d360b69100fbe723c5b9410dbf3f5f4d

クラウド量子計算入門: 中山茂:(4) 全体の感想
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ad7dfbad69e1e196848be123e3f4ea3f

量子コンピュータ入門:宮野健次郎、古澤明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef75709187cf4b35a12f2d9fdf73a320

ファインマン計算機科学:ファインマン, A.ヘイ, R.アレン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4f7f453019fd463ed2bfdeaa7b288d79

発売情報:量子プログラミングの基礎: イン・ミンシェン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/27e4d9a10982d4d69c0029fc4c801708



関連動画:

量子論、量子テレポーテーション、量子コンピュータ


量子の制御とコンピュータ(量子コンピュータの原理の概要説明)


量子コンピュータ授業 #1(15回の講義。本書で解説される量子ゲート、量子アルゴリズムのほとんどを学ぶことができる。)


15回の講義内容



ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 


量子コンピュータ―超並列計算のからくり:竹内繁樹」(Kindle版



第1章:量子計算でできること
- コンピュータに解ける問題、解けない問題
- スーパーコンピュータにも解けない因数分解
- 量子の力で超高速計算

第2章:「量子」とはなにか
- 量子計算はなぜ「量子」計算?
- 光は粒?それとも波?
- アインシュタインの光量子
- 結局、光とは?
- 波の性質を持つ粒子

第3章:量子の不思議
- 量子力学は難しい?
- 不確定な関係
- 光と干渉
- 光子・確率波・重ね合わせ状態

第4章:「量子」を使った計算機
- 量子コンピュータの誕生
- 現在のコンピュータのしくみ:ビットと論理回路
- 量子ビットと量子コンピュータ
- 量子ゲートと量子論理回路

第5章:量子アルゴリズム
- アルゴリズムと量子コンピュータ
- ドイチュ・ジョサのアルゴリズム
- データベース検索のアルゴリズム
- ショアのアルゴリズム
- 量子アルゴリズムと今後の展開

第6章:実現にむけた挑戦
- 量子コンピュータを作るには?
- 光の粒で量子計算
- 分子中の核スピンを用いた量子計算
- 固体・集積化への路
- デコヒーレンス
- デコヒーレンスに立ち向かう:量子誤り訂正符号

第7章:量子コンピュータの周辺に広がる世界と量子暗号
- 情報化社会と秘密通信
- 量子暗号と量子鍵配布
- 全知全能?の盗聴者 vs. 量子暗号
- 量子情報科学の今後

エピローグ
参考図書
さくいん

量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫

$
0
0
量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫」(Kindle版

内容紹介:
「粒子であると同時に波である」???
それって、結局どういうこと?

量子論の具体的なイメージが描けず、くじけがちな初学者へ向け、リアルなモデルを使ってていねいに解説する今度こそわかりたいあなたのための量子論入門。
SF作家のアーサー・C・クラークは、「高度に発達した科学は魔術と見分けがつかない」という名言を残したが、どうやら多くの現代人にとって、量子論は、科学と言うより魔術に近いものに見えるらしい。量子論が魔術じみたものとして捉えられるのは、一般に流布している解説が常識を大きく逸脱しているせいでもあろう。
「シュレディンガーの猫」「多世界解釈」「量子もつれ」といった量子論の話題は、しばしばあまりに現実離れした説明がなされ、人々を混乱させる。私に言わせれば、こうした常識を逸脱する説明は、量子論に対する誤解を増やすだけである。量子論は、もっとリアルで実用的な理論であり、常識に沿った範囲で理解することが可能である。本書は、リアルなイメージに基づいて、常識的な立場から量子論を理解しようとする試みである。
(こんな方におすすめ)
・量子論に取り組んでみたが今ひとつピンとこない初学者
・サイエンスファン
2017年4月13日刊行、208ページ。

著者について:
吉田伸夫
1956年、三重県生まれ。東京大学理学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。理学博士。専攻は素粒子論(量子色力学)。科学哲学や科学史をはじめ幅広い分野で研究を行っている。ホームページ「科学と技術の諸相」(http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/)を運営。著書に『明解 量子重力理論入門』『明解 量子宇宙論入門』『完全独習相対性理論』(いずれも講談社)、『宇宙に果てはあるか』『光の場、電子の海』(いずれも新潮社)、『素粒子論はなぜわかりにくいのか』(技術評論社)など多数。(著書を検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で331冊目。


対象読者

光の場、電子の海―量子場理論への道」や「素粒子論はなぜわかりにくいのか」が場の量子論や素粒子物理学の勉強で苦労している人の理解をとても助けてくれる良書だったので、今回は対象読者を量子論の学習者にまで下げてお書きになったのかなと思っていた。

ところが全く違うのである。内容紹介には「量子論の具体的なイメージが描けず、くじけがちな初学者へ向け」と書かれているが、読み始めてすぐわかったのは本書は前期量子論から場の量子論までの発展に貢献した科学者の名前を少なくとも15人くらいあげられる人、量子力学の教科書を1~2冊は読み、場の量子論の概要くらいは知っている人が対象だということ。

吉田先生のような方から見ると僕は「初学者」のようなものかもしれないが、量子力学や場の量子論の教科書はひととおり学んでいるし、完全とは言えないまでも量子論についてのイメージはできあがっている。初学者だと自分を卑下するのは行き過ぎだ。


本書を読んだ理由

このところ僕は量子コンピュータの勉強に凝っていて、量子力学のもたらした成果をあからさまな形で駆使する世界に浸っていた。ベルの不等式の破れは1982年のアスペの実験によって検証されたから、EPR相関はもはやパラドックスではなくなり、安心して量子力学を使う時代になったのだと思っている。

けれどもすべての問題や物理的解釈が解決されたわけではないことも知っている。量子論、量子力学を学び始めた頃を思い起こせば、今でも奇妙さ、不思議さに満ちた理論体系だと思っている。ちょうどよいタイミングで刊行されたこともあり、読みたくなった。

教科書で最初に抱いた疑問は原子の安定性を説明するために紹介されたボーアの量子条件の図。サインカーブのように波打ってはいるものの、太陽系の惑星運動のような古典的な軌道を電子の運動に当てはめているあの図のことだ。

教科書では後にシュレディンガーの方程式を使って水素様原子(すいそようげんし)の電子雲が立体的に描かれるわけなので、ボーアの図は間違っていることになる。また電子の軌道がエネルギーの低い内側の軌道にジャンプすることで、エネルギーの差のぶんが光として放出されることも、古典的な円軌道の図が使われている。教科書、教養書を問わず「絵」で説明する限り、量子力学の直観的説明は矛盾しているものなのだ。それはそれで仕方がないのだと思っていた。

「波なのか粒子なのか?」から始まり瞬間的に軌道をジャンプする電子、二重スリットの実験、電子に軌道があるのかないのか、複素値をもつ波動関数の解釈、観測すると状態が収縮する、不確定性関係、多世界解釈などは

1)疑問をもたずにそういうものだと丸呑みして納得する
2)疑問をもたずに無視する
3)無批判に受け入れ、SFのような幻想に想いを馳せる

のいずれかを受け入れ、勉強を続けるものなのだと理解していた。

量子論のこのような奇妙さ、不思議さはアニメやSFの中だけで引用されるのであればまだマシである。やっかいなのが科学教養書でそれらが強調され過ぎているものが多いことだ。かく言う僕もブログ記事にそのような調子で書いてしまったものがあるので、最近は「ちょっとまずかったな。」と反省しているところ。先日もどなたかがツイッターで「量子論の奇妙さ、不思議さばかりを強調する科学教養書は、そろそろ卒業しましょうよ。」のようなことをおっしゃっていて、まったくそのとおりだと思った。そして量子論の応用-工学系、量子化学、量子情報の教科書、教養書では量子論の奇妙さには深入りしないのが一般的である。


本書の意図と内容

本書で吉田先生がお書きになっているのがまさに「量子論の奇妙さから卒業」するためのアイデア、考え方なのである。ところが読んでみると卒業が容易でないことがすぐ明らかになる。僕にしても「ああ、そういうことか!」と目から鱗を落としてよいものか判断に迷うものばかりなのだ。大学教授ではないけれど、この分野で著名で評判のよい先生であるだけに「トンデモ」だと即断して否定するわけにはいかない。

本書の章立てはこのとおり。

第1章:量子論とはいかなる理論なのか
第2章:波と量子
第3章:相補性の落とし穴
第4章:場の量子論と実在
第5章:誤差・揺らぎ・不確定性
第6章:混乱する解釈
第7章:相関か相互作用か
第8章:量子論の本質

吉田先生が批判を向ける矛先はボーア、ハイゼンベルクにまで遡る。シュレディンガーは波動方程式を提唱したものの、状態の重ね合わせの理論を受け入れられずに物理学から生物学に転身してしまったが、彼の波動方程式は有効な道具として利用され続けている。アインシュタインとボーアの有名な対決はボーアの勝利に終わったが、ボーアの論文には理論的な矛盾や曖昧さが含まれており、正当な議論ではなく「アインシュタイン、シュレディンガー、ファインマンに対して迫力で押し切って勝利したのではないか」とまで吉田先生は酷評されている。

つまり、観測されていない状態の記述を禁止した形で展開され、電子の始状態と終状態の遷移確率だけに注目するハイゼンベルクやボーアの行列力学、不確定性原理に対する物理的解釈の誤り、二重スリット実験に対する誤解と霧箱を使った観測問題に対する解決案、経路積分の効用など独自の視点から鋭い切り込み、提案を行なっているのだ。量子論、量子力学の根幹をなすテーマが大きく揺るがされることになる。これまで学んできたことがぐらぐらと揺さぶられ、容易に受け入れることができないことばかり。かといって僕のような理解度では反論する材料や能力も持ち合わせていない。なるほど、そうかもしれないなぁと思ってしまうわけである。

結局それらの問題を解決するためには場の量子論の理解が不可欠で、時空の各点に不随する内部空間の中に存在する無数の波動をイメージすることで、解釈はよりリアルで直観的なものになるのだという。つまり格子ゲージ理論のこと。(でも「内部空間」ってSU(2)やSU(3)などゲージ理論のことであり数学的なもだと僕は思うわけだけど。)場の量子論より前の量子論、量子力学の段階では、リアルで直観的な理解を得ることができないという主張である。「量子力学は、たとえ現象を説明できても不完全な理論である」というアインシュタインの主張を吉田先生は具体的に解説したとも言える。

ベルの不等式についてはベン図をいくつもお描きになり、独自の方法で解説をしていらっしゃるのが特徴である。そして「量子論でベルの不等式が破られるのは、現実に起きない過程に対して確率を割り当てようとした結果、見かけの上の確率が負になって見える。」とお書きになっている。

数理物理学、特にノイマンの有名な著書「量子力学の数学的基礎」に対する切り込みも容赦なく行われている。シュレディンガー方程式に従って連続的に変化してきた状態が、測定が行なわれるきわめて短い時間の間に、射影演算子を作用させた状態に飛び移るとしたノイマンの主張を否定している。数学だけで物理現象を理解することに限界があることをおっしゃっているのだと僕は理解した。それは粒子描像を意味するハイゼンベルクの運動方程式、波動描像を意味するシュレディンガーの波動方程式、粒子の経路を描き出すファインマンの経路積分の手法など3つの量子力学の定式化が数学的に同等であることが証明されているにもかかわらず、前の2つに対する物理的解釈に無理だと主張していることからもうかがえる。


量子情報理論、量子コンピュータについて

また量子情報理論については本書最後のほうの「量子論はなぜわかりにくいのか」という節で次のようにお書きになっている。

「量子論のわかりにくさを集約したのが、量子情報理論と呼ばれる分野である。これは観測可能な状態についての関係を抜き出して情報理論の観点からまとめたもので、論点を整理するには適した方法論だが、物理的な理解を深めようとしても、何が起きているかイメージできずに混乱するばかりである。厳密性を重んじる専門書では、EPR相関について量子情報理論の観点から説明されることもあるが、量子論を実用的なツールとして応用する人は、全く気にする必要がない。」

また、「量子コンピュータがきわめて高速な理由が多世界解釈を使って説明されるケースがあるが、こうした解釈を信じている物理学者はごく少数である。量子コンピュータが高速なのは、常識的な解釈によれば、素子どうしの量子論的な相互作用が並列的に行われる一種のアナログ計算機だからである。」ともお書きになっている。


影響力のある先生だけに、本書での主張はこれから議論されることになるかもしれない。ひとつひとつ慎重に考えてみたいと思った。

ちなみに吉田先生はホームページをご覧になるとわかるように、超弦理論に対しては批判的、否定的なお考えをもっていらっしゃる方である。


関連記事:

光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02

素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bcbaebb9f2a77b1bd63e3928f6bd6e9f

明解量子重力理論入門:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e0ab2fd9fafe3568c24ed358dd4ea92c

宇宙に「終わり」はあるのか: 吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c9ad8a76d2a1725b731238eeb4699694


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 


量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫」(Kindle版



はじめに

第1章:量子論とはいかなる理論なのか
- 実用ツールとしての量子論
- 量子論は常識に反する理論か
- 幾何学的秩序を生み出す量子効果
- 秩序の根底にある波動

第2章:波と量子
- 原子はなぜ安定に存在できるのか
- 量子仮説の登場
- ボーアの原子模型
- 物質波から波動関数へ
- 波動一元論の破綻
- 波動関数とは何か
- 台風の確率予報と波動関数
- シュレディンガーの洞察を生かす道

第3章:相補性の落とし穴
- ゾンマーフェルトの量子条件
- 行列力学の誕生
- 行列力学の体系化
- 行列力学における方法論の変質
- 交換関係は原理か
- 相補性の落とし穴

第4章:場の量子論と実在
- 光は粒子か波動か
- 場の量子論の需要
- 場を量子化する
- 波の波動関数
- 量子論と実在

第5章:誤差・揺らぎ・不確定性
- ハイゼンベルクの思考実験
- 擾乱のない測定と小澤の不等式
- 不確定性関係の導き方
- 不確定性関係は何を意味するのか
- 経路積分の考え方
- 経路積分法に基づく不確定性の解釈
- 揺らぎの拡がりとしての不確定性

第6章:混乱する解釈
- ノイマンによる観測の理論
- 量子論的な≪歴史≫
- 霧箱における観測の理論
- 二重スリット実験とデコヒーレンス
- デコヒーレンスに基づく≪歴史≫記述
- デコヒーレンスの不完全さと多世界解釈
- 場の量子論における≪歴史≫

第7章:相関か相互作用か
- EPR相関とは何か
- EPR相関の統計的性格
- 光子の偏光
- 偏光におけるEPR相関の観測
- ベルの限界
- ベルの限界の求め方
- ベルの限界はなぜ破られたか

第8章:量子論の本質
- 場の量子論が描く世界
- 要素に還元できない物理現象
- 量子論はなぜわかりにくいのか

おわりに
参考文献

趣味で量子力学2(Kindle版): 広江克彦

$
0
0
趣味で量子力学2(Kindle版): 広江克彦

内容紹介:
お待たせしました! 『趣味で量子力学』の続編です。
今回は電子書籍版のみの販売となっています。

・上級者はこの巻から読み始めることができます。
・前作の謎が次々と明らかになり、真の敵が登場します。
・前作では波として記述していた理論を行列を使って表現し直します。
・あのディラックのブラケット記法の使い方が丁寧に説明されています。
・バンド理論の基礎を理解できるようになります。

「電子は粒ではなく、結晶全体に広がる波として存在しているのだ」
「粒や波のような実体は存在せず状態のみが存在する」
「そういう認識をそろそろ世間一般にも広めていい頃ではないだろうか」

2017年5月1日刊行、182ページ。

著者について:
広江克彦
1972年生まれ。岐阜県出身。静岡大学理学部物理学科卒。同大学院修士課程修了。’00年より、物理学を解説するウェブサイト「EMANの物理学」の運営を開始。その内容が徐々に評価され、現在は農業に片足を置きつつ、執筆に励む。


理数系書籍のレビュー記事は本書で332冊目。

待望の量子力学編の第2弾が刊行された。量子コンピュータ、量子論系の本に没頭していたので紹介するタイミングとしてはちょうどよい。

前作ではシュレディンガーの波動方程式を主軸に置いて展開していたが、今回は行列によるアプローチ。昨今は波動と粒子の二重性による説明からの脱却が話題にされているので、広江さんは果たしてどのようにお書きになっているのだろうか? 前作も参照しながら今回の本を読んでみた。


本書の内容と感想

本書の解説のメインはブラケット記法、行列による量子力学の定式化と計算、量子の遷移確率や摂動論とバンド理論。量子力学の教科書では中級から上級レベルの内容だ。

このあたりのことは僕は次のような教科書で学んでいた。

- 現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ: ブラケット記法
- 現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ: 摂動論
- ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄: 行列による量子力学の定式化
- 量子力学の数学的構造 I:新井朝雄、江沢洋: 行列による量子力学の定式化
- 量子力学の数学的構造 II:新井朝雄、江沢洋: 行列による量子力学の定式化、摂動論
- よくわかる量子力学:前野昌弘: ブラケット記法、行列による量子力学の定式化
- 基礎の固体物理学: 斯波弘行: バンド理論

とはいえ、行列による定式化や摂動論を学んだのは8年前から6年前にかけてのこと。大まかには覚えているが、細かい計算は忘れてしまっている。今回の読書はよい復習になった。

本書の章立ては次のとおり。

第8章 量子力学の体系
第9章 ブラケット記法
第10章 演算子は行列だ
第11章 連続固有値の扱い方
第12章 遷移確率
第13章 摂動論
第14章 周期的境界条件
第15章 周期的ポテンシャル

広江さんの著書の特長は教科書では省略されがちな説明や「なぜ学ぶ必要があるのか?」、学生の心のつぶやき、本来は自分で手を動かして計算すべき数式がそのまま書かれていることだ。それに「教えてやるぞ」という上から目線でなく、読者は自然に引き込まれ、そのまま感情移入してしまうスタイルの文章である。

よくわかる量子力学:前野昌弘」も学生に対して親切な教科書だが、広江さんの本は副読本系だから住み分けができている。

しかしながら、前野先生、広江さんのように手取り足取り書いてしまうと分厚くなってしまうのは明らか。前野先生の教科書はブラケット記法、エルミート演算子や状態ベクトルの解説はされているものの、380ページあるにもかかわらず摂動論や多粒子系の量子力学は含まれていない。

だから前作と同じレベルの丁寧さを保ちつつ、摂動論まで解説した今回の本は他に例がないのではないのではないだろうか。

特に次の2つが素晴らしいと思った。

1) 第11章 連続固有値の扱い方の「11.7 離散と連続の内積」で離散的状態と連続的状態が重なり合っている状態についての内積がどのようになるかを検証していること。そしてそれがブラケット記法として統一的に表記できることを述べていること。

2) 第13章 摂動論の「13.4 自由度の意味」で波動関数の位相が物理的意味に影響しないことを検証していること。

最後の2章はバンドギャップ、バンド理論の入門にあてられている。1次元ではあるが量子力学の固体物理学への応用例だ。前章までの内容を活かせるので、よい例を選んだものだと感心した。そしてこの例を通じて「電子は粒ではなく、結晶全体に広がる波として存在している」ことを導いているのが、後に述べる本書の意義に結びつけられている。

あと「よくわかる量子力学:前野昌弘」との比較をすると、前野先生の教科書は解析力学とのつながりを色濃く出しているのに対し、広江さんの本では前作、今回の本ともにこの分野について記述は見当たらない。もし解析力学と量子力学のつながりを含めていたら、全体の構成が複雑になり読みにくくなっていただろう。ページ数と話の流れを考慮すれば、広江さんは正しい選択をされたのだと思う。

無料で読める「EMANの量子力学」にも本書の内容が含まれているが、書籍化にあたり大幅に加筆されている。本書をお読みになるメリットはじゅうぶんにある。


「量子論はなぜわかりにくいか」との比較、物理的解釈

広江さんが本書のKindle書籍の登録依頼をしたのは4月末、「量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫」が発売されたのは4月13日である。

脱稿前に広江さんが吉田先生の本をお読みになったかどうかは定かでないが、この2冊には次の共通点がある。

1) 量子に波と粒の二重性があるという見方から脱却したい
2) 量子力学の範囲では解決できず、場の量子論まで学んで解決することがある

1)について広江さんはバンド理論の解説から電子のもつ波動性を導いている。また光子については第13章 摂動論の「変動する電場による遷移確率」の最後で波動性にもとづく計算から「光電効果」の現象が説明できることを紹介している。アインシュタインにしても光は粒であると断定したのではなく「光は粒のように振る舞う」と言ったのだ。光の波動性を否定したわけではない。

2)について、吉田先生は著書で量子論、量子力学創成期に提唱された基礎原理に対する疑問や批判をした後に、量子論の奇妙さを取り除くためのアイデアとして場の量子論を使った理解の仕方を提案されている。

これに対し広江さんの著作は前作、今回ともに数式展開をしながら量子力学を学ぶための本だというのが大きな違いだ。基礎原理を否定してしまっては何も始めることができない。常に物理的な意味合いを意識するのが広江さんのスタイルではあるが、シュレディンガーの波動方程式、不確定性原理、状態の重ね合わせについては、通常の教科書どおり素直に受け入れて計算に使用している。ただし波束の収縮、波動関数の実在性、粒子としての電子の軌道や多世界解釈に対しては懐疑的、否定的な見解をお持ちのようだ。解釈論争については前作「趣味で量子力学:広江克彦」の第7章にも書かれている。

前作と本書には「量子場の理論(=場の量子論)を使って理解できることだ」という記述が散見する。これは「量子力学だけでは不十分」と広江さんがお考えになっている箇所だ。アインシュタインが「量子力学は不完全な理論だ」と言ったわけであるが、量子力学のほころびはいくつもありそうだ。

最後に広江さんが提唱していることを、もう一度書いておこう。

「電子は粒ではなく、結晶全体に広がる波として存在しているのだ」
「粒や波のような実体は存在せず状態のみが存在する」
「そういう認識をそろそろ世間一般にも広めていい頃ではないだろうか」


今回の本も、とても深い考察をすることができました。広江さん、ありがとうございました!量子力学編の第3巻も楽しみにしています。


関連記事:

趣味で物理学:広江克彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7faaca22d6b525d82e45a5724fef9811

趣味で相対論:広江克彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/90aa60383b600ff4e4fd7bea6589deaa

趣味で量子力学:広江克彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3023098b9c5204d626808aa57823c16f


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 


趣味で量子力学2(Kindle版): 広江克彦



第8章 量子力学の体系
 8.1 波動関数が粒子の状態を表す
 8.2 期待値
 8.3 エルミート演算子
 8.4 演算子と固有値の関係
 8.5 ハミルトニアン
 8.6 重ね合わせの原理
 8.7 運動量の固有関数
 8.8 連続的な重ね合わせ
 8.9 離散固有値と連続固有値
 8.10 まとめ
第9章 ブラケット記法
 9.1 関数の内積
 9.2 関数はベクトルに似ている
 9.3 完全な関数系
 9.4 規格直交系
 9.5 ブラとケット
 9.6 正規直交基底のイメージ
 9.7 係数の求め方
 9.8 複素フーリエ級数の再調整
 9.9 基底変換
第10章 演算子は行列だ
 10.1 ベクトルの線形変換
 10.2 行列の掛け算
 10.3 エルミート共役
 10.4 固有値と固有ベクトル
 10.5 演算子行列の中身
 10.6 ユニタリ変換
 10.7 時間発展
 10.8 ヒルベルト空間
第11章 連続固有値の扱い方
 11.1 非可算無限個の固有状態
 11.2 離散固有値の復習
 11.3 連続固有値の復習
 11.4 連続固有値のブラケット記法
 11.5 座標表示
 11.6 運動量表示
 11.7 離散と連続の内積
 11.8 運動量で検証
 11.9 離散と連続の共存
第12章 遷移確率
 12.1 遷移の本質
 12.2 状況の変化にともなう遷移
 12.3 測定にともなう遷移
 12.4 交換関係と同時固有値
 12.5 電子の状態遷移
第13章 摂動論
 13.1 目的と問題設定
 13.2 波動関数での計算
 13.3 ベクトル表現での計算
 13.4 自由度の意味
 13.5 摂動論の適用限界
 13.6 縮退がある場合
 13.7 時間変化を含む摂動論
 13.8 変動する電場による遷移確率
第14章 周期的境界条件
 14.1 どんな場面で使われるのか
 14.2 エルミート演算子の条件の再確認
 14.3 複素フーリエ級数の復習
第15章 周期的ポテンシャル
 15.1 前章との違い
 15.2 ブロッホの定理の証明
 15.3 クローニッヒ・ペニーのモデル
 15.4 結晶運動量
 15.5 バンドギャップが生じる理由
 15.6 バンド構造
 15.7 結晶中の電子の状態遷移
あとがき
参考図書
索引

四千万歩の男(四): 井上ひさし

$
0
0
四千万歩の男(四): 井上ひさし」(Kindle版

内容:
日本全図を作るため1801年4月第2次測量隊は伊豆へ。円周率に憑かれた若者を加え、せこいお上の予算に自腹を切る冒険が始まる。阿波の藍栽培の騒動に首を突込み、十返舎一九の片棒坦いで“飯盛歌舞伎”を作り、はては俳諧師殺しの詮索に夜も日もない。忠敬の一歩は、ああ道草喰いの旅とはなった。全5巻。(講談社文庫)
1993年刊行、678ページ。

著者について:
井上ひさし: 公式サイト: http://www.inouehisashi.jp/
1934年-2010年。山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後に放送作家としてスタートする。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『東京セブンローズ』など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍している。’84年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行う。こまつ座は現在、次女の井上麻矢さんが社長を務めている。


第4巻は2週間前に読み終えていたのだが、いろいろ忙しく感想記事を投稿するのが遅くなってしまった。

蝦夷地の測量を終え1800年暮れにようやく江戸に戻った忠敬であったが、年明け早々に妻のお栄は家出をしてしまう。途方に暮れてお栄を探し回る忠敬を描いたところで第3巻が終わっていた。

第4巻では1801年4月に忠敬率いる第2次測量隊が江戸を出発して江ノ島に差しかかるまでの道中が語られている。道のりは短いものの忠敬が巻き込まれる事件はこれまでになく多い。毎度ながら、その一部をかいつまんで紹介することにしよう。

江戸に戻った忠敬が作成した地図は幕府だけでなく全国にその評判が知れ渡った。「ぜひ我が藩の地図も作ってほしい。」、「作成した地図を譲ってはもらえないだろうか。」などの申し出を忠敬はいくつかの藩から受けることになる。しかしお上から命じられた立場上、その仕事に専念しなければならず、申し出は断らざるを得ない。

また、忠敬のもとには測量術、測天術を教えてほしいという依頼もくるようになった。日本全国の測量をするにはどうしても人手が必要である。かといって測量の旅をしながら弟子を教えている時間がとれないのも明らかである。

お栄の捜索がうまくいかないまま、1801年4月に忠敬一行は江戸を発つことになる。功績が認められたとはいえ幕府からの支給は全く足りない。今も昔も役所がケチなのは同じだ。仕方なく忠敬は足りない半分の費用は自腹で用意することになった。それだけ任務遂行にかける忠敬の想いが強かったわけである。

円周率に憑かれた若者との出会い、阿波の藍栽培の騒動に首を突込む話、十返舎一九の片棒を坦いでとある宿場で“飯盛歌舞伎”を作って旅籠の集客を助ける話、はては俳諧師殺しの詮索をしたり、次から次へと物語が繰り広げられる。その忙しい合間をぬって測量と記録作業がしっかり行われる。

飯盛とは飯盛り女のことで各宿場町に常駐していた私娼のことである。宿場女郎のことだ。彼女たちに滑稽な芝居をさせて宿の集客を助けることを忠敬は思いつくのだ。脚本は同宿していた十返舎一九に依頼した。

この作品には十返舎一九や喜多川歌麿を始め、この時代を生きた著名人が何人も登場する。忠敬は道中でこれらの人々と関わりをもつことになるが、もちろんこれは井上ひさしによる創作である。十返舎一九は1802年に出した滑稽本の『東海道中膝栗毛』が大ヒットして一躍流行作家となったわけであるが、この弥次郎兵衛と喜多八、繋げて『弥次喜多』が旅をしながら繰り広げる間抜けな笑い話は忠敬が同宿の十返舎一九に与えたアイデアがもとになったのだと本書には書かれている。(もちろん創作話。)しかし年代的に符合するので、もしかして本当のことかも?と思えてしまうのが井上ひさしのマジックである。

この巻で特に印象に残ったのが江戸時代の年貢制度にまつわる話である。年貢は各藩で徴収されていたわけだが、一部は藩から幕府へ納められていた。百姓が年貢を納める方法は2とおりあり、自分の住む藩に直接収める方法と、決められた地域の米をまとめて船で江戸まで運んで納める方法があった。

年貢米を納めるときは厳いチェックが担当役人によって行われる。この役職には誰もがなりたがった。うまい汁が吸えるからである。米俵に竹筒を差し込んでサンプルチェックをするわけだが、少しでももみ殻がついた米が混ざっていると、その俵は不合格になってしまい、百姓はもう一俵余分に納めなければならないのだ。不合格米は没収され担当役人の懐に入ることになる。中にはあらかじめ竹筒にもみ殻付きの米を仕込んでおく悪い役人もいた。もともとの年貢が高いことに加え、不合理な追加徴収を受ける百姓の生活がよくなるはずはない。「役人はとかく不正を働くものだ。」という井上ひさしらしい皮肉がこめられているわけだが、記録に残っていないだけで江戸時代にもいろいろな種類の不正が行われていたのだろうなと思ってしまう。

忠敬一行が遭遇したのは、このような個人レベルの不正ではなく、年貢米をめぐる大がかりで織的な不正だった。とある街で忠敬は途方にくれて自殺をしようとしている男と同宿する。その男、清兵衛はとある村の納名主だった。貢米船(年貢を納めるために使う船)が到着したら、積荷の米を役所の米蔵に納める役割を担っている人物である。ところがその船が難破してしまい、年貢を納めることができず、村人に会わせる顔顔がないと故郷に戻ることもできずにいたのだ。船に積んだ年貢米をすべて納めなおすなどできるはずがない。ほとほと困ったあげく自殺を考えていたところだった。

ところが船の難破は偽装だったのである。犯罪にかかわっていたのは年貢米をチェックする役人、貢米船を手配する廻船問屋、そして造船や船の修理をする造船業に携わる者たちだった。そのからくりは次のようなものである。

まず廻船問屋は貢米船を難破したことにして、積まれていた年貢米を丸ごと着服してしまう。そして回収した船はしばらく目立たないところに隠しておき、幕府には新しい貢米船の造船のための費用を請求する。次に廻船問屋は造船業者に隠しておいた古い船をリニューアルして新造船としてよみがえらせることを依頼するのだ。

船を最初から建造するのとリニューアルだけするのとでは、かかる費用がまったく違う。その差額が利益になるわけだ。

その結果、年貢米の売却代金と新造船費用からリニューアル費用を差し引いた利益をまるまる着服することになり、このからくりに加わった者たち全員が莫大な利益を得ていたのだ。この不正行為はたびたび行われていた。悪質極まりない組織犯罪である。

この不正行為は沈没したはずの船に乗っていて溺れ死んだとされていた男が、とある場所で目撃されていたことから発覚した。このように大がかりな不正に忠敬はどのように立ち向かうのだろうか。

理解者や協力者も巻き込んで、物語は急ピッチで進む。息を注がせる間もなく展開される筋書き、作者の天才的な発想には驚かせられるばかりだ。


引き続き第5巻に進もう。


四千万歩の男(四): 井上ひさし」(Kindle版

Amazonで: 文庫版一括検索 Kindle版一括検索



伊能忠敬関連の本: Amazonで検索


関連ページ:

【 あの人の人生を知ろう~伊能忠敬編 】
http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/tadataka.html

伊能忠敬e資料館
https://www.inopedia.tokyo/

日本国地図の歴史的変遷?やっぱ伊能忠敬って天才だわ。凄すぎる・・・
https://matome.naver.jp/odai/2136439442534894801

伊能大図彩色図の閲覧
http://www.gsi.go.jp/MAP/KOTIZU/sisak/ino-main.html


関連記事:

吉里吉里人:井上ひさし
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7830d542844bf6f4f6b702e081aa3be7

追悼:井上ひさしさん
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8b68249f7d2070726183c6f9e8fb71dd


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

Square root 11,943,936 using abacus (Double-root method 9)

$
0
0
[Set 11,943,936 on Mr. Square root]Zoom

[Japanese]

We will continue from where we ended in the last article, the article shows actual solutions to calculate Square root using abacus. Today's example is simple - basic Double-root method, root is 4-digits case.. Please check the Theory page for your reference.

Square root methods: Double-root method, Double-root alternative method, half-multiplication table method, half-multiplication table alternative method, multiplication-subtraction method, constant number method, etc.


Abacus steps to solve Square root of 11,943,936
(Answer is 3,456)

"1st group number" is the left most numbers in the 2-digits groups of the given number for square root calculation. Number of groups is the number of digits of the Square root.

11,943,936 -> (11|94|39|36) : 11 is the 1st group number. The root digits is 4.


Step 1: Set 11943936. 1st group is 11.


Step 2: Square number smaller than or equal to 11 is 9=3^2. 3 is the 1st root.


Step 3: Sbtract 3^2 from the 1st group 11. 11-9=02


Step 4: Focus on 29 on HI. Divide 29 by double root 6.


Step 5: Answer is 4. This is 2nd root on G. Place 29-6x4=05 on HI.


Step 6: Add 2x 2nd root 4=8 to double root. Focus o 54 on IJ.


Step 7: Subtract square of 2nd root 4 from 54 on IJ. Place 54-4^2=38 on IJ.


Step 8: Divide 383 on IJK by double root 68.


Step 9: Answer is 5. This is 3rd root on H.


Step 10: Place 383-68x5=043 on IJK.


Step 11: Add 2x 3rd root 5=10 to double root. Place 680+10=690 on ABC.


Step 12: Subtract square of 3rd root 5 from 439 on JKL. Place 439-5^2=414 on JKL.


Step 13: Divide 4143 on JKLM by double root 690.


Step 14: Answer is 6. This is 4th root on I.


Step 15: Place 4143-690x6=0003 on JKLM.


Step 16: Subtract square of 4th root 6 from 36 on MN.


Step 17: Place 36-6^2=00 on MN.


Step 18: Square root of 11943936 is 3456.


Final state: Answer 3456

Abacus state transition. (Click to Zoom)



Next article is also about Double-root method.


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed


Please place your mouse on the buttons and click one by one. These are blog ranking sites.
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

開平と開立(第15回):11,943,936の算盤による開平(倍根法9)

$
0
0
開平はん」に11,943,936を置いたところ拡大

[English]

前回に続き、算盤での開平の手順を解説する。今回も倍根法で、根が4桁の場合だ。理論編も参考にしていただきたい。

開平(平方根):倍根法(2商法)、倍根法別法、半九九法、半九九法別法、乗減法、定数法(折衷法) 、過大数開平、省略開平など


算盤による11,943,936の2乗根の解法(答は3,456)

第1群の数とは平方根を求める数を2桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の2桁のことである。群の数が根の桁数となる。

11,943,936 -> (11|94|39|36) : 11が第1群の数、根の桁数は4


手順1:11943936を置く。第1群は11。


手順2:11以下の平方数は9=3x3。3を初根としてFに立て、倍根2x3=6をAに立てる。


手順3:3の平方を第1群の11から引く。11-9=02となる。


手順4:HIの29に着目し、これを倍根6で割る。


手順5:商4が立ち、これを次根としてGに置く。29-6x4=05をHIに置く。


手順6:次根4の2倍の8を倍根に加える。IJの54に着目する。


手順7:IJの54から次根4の平方を引く。54-4^2=38をIJに置く。


手順8:IJKの383をABの倍根68で割る。


手順9:商5が立ち、これを第3根としてHに置く。


手順10:383-68x5=043をIJKに置く。


手順11:倍根68に第3根の2倍の10を加える。680+10=690をABCに置く。


手順12:JKLの439から第3根5の平方を引く。439-5^2=414をJKLに置く。


手順13:JKLMの4143をABCの倍根690で割る。


手順14:商6が立ち、これを第4根としてIに置く。


手順15:4143-690x6=0003をJKLMに置く。


手順16:MNの36から第4根の平方36を引く。


手順17:36-6^2=00をMNに置く。


手順18:根は3456と求まる。


最終状態: 答 3456

珠の状態推移を表にすると次のようになる。(クリックで拡大)



第16回も引き続き倍根法による開平を行う。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)

$
0
0
左:CASIO fx-201P (1976), 右:fx-202P (1976)拡大

待ちに待ったfx-202P (1976)。ようやく落札することができた。fx-201P (1976)のほうは数年前に入手していたので、これで2つとも揃った。仲良く記念撮影。

何がポイントかというと「日本初のプログラム関数電卓」ということなのだ。これ以前にもプログラム電卓は出てはいたが関数付きではなかった。

201Pは電源を切ると自分で入力したプログラムは消えてしまう。202Pのほうはプログラム保護回路が入っているので消えない。

「世界初」、「日本初」といってもいろいろある。関数電卓、プログラム電卓について年代順にはこのようになる。

世界初の卓上プログラム電卓 CASIO AL-1000 (1967): 価格328,000円。12.3Kg。(詳細
世界初の卓上プログラム関数電卓 HP-9100A (1968):価格5000ドル。(詳細
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 (1972):価格395ドル。(詳細
日本初の卓上関数電卓 CASIO fx-1 (1972):価格32万5千円(詳細
日本初のポータブル関数電卓 CASIO fx-10 (1974):価格24,800円。(詳細
日本初のポータブル・プログラム関数電卓 CASIO PRO-101 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976), CASIO PRO fx-1 (1976)
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-501P (1979), fx-502P (1979):(紹介記事

日本初のポータブル・プログラム関数電卓のところに4機種書いたのは、どれも同じ年に発売されたからだ。順番はこのページの次の写真を参考にした。



CASIO PRO-101 (1976):4万9800円。256ステップ。(詳細1詳細2
CASIO fx-201P (1976):2万9000円。127ステップ。電源を切るとプログラムも消えた。(詳細1詳細2
fx-202P (1976):3万9千円。fx-201Pにプログラム保護回路を内蔵したもの。(詳細

厳密に言えばPRO-101が日本初なのだろうけど、これら4機種は同じ年に発売されたのでどれも日本発と言ってよいだろう。PRO-101は「プロフェッショナル」ではなく「プロトタイプ」なのかもしれないと僕は思っている。

サイズはこれくらい。



同じ年に発売されたfx-19 (1976)はプログラミング機能がない関数電卓だ。以前「70年代の関数電卓:CASIO fx-10 (1974)、fx-15 (1975)、fx-19 (1976)」という記事から動画付きで紹介している。この電卓はその後、近所に住んでいる知人に譲ってしまったのだが、写真を撮るために借りてきた。以下、写真をクリックすると拡大する。

デザインがよく似ていて左がfx-19だ。2の平方根を計算するとどちらも瞬時に表示される。有効桁数に違いがあるのがわかる。


次に2の立方根。どちらも0.5秒くらいで表示されるが有効桁数は8桁。指数・対数、べき乗関数の計算速度、有効桁数は同じだった。計算回路が同じだと思われる。


三角関数とその逆関数には大きな違いが見られた。fx-19では1秒かかり、fx-201Pでは1.5秒もかかる。有効桁数はfx-201Pのほうが1桁多い。写真はsin 35°の計算結果。



せっかくなので簡単なプログラムを作って計算速度を調べてみた。操作マニュアルはネットを探しても見つからないが、幸いなことにこの電卓をお持ちの方が、次のようなページで説明してくださっているから、プログラミングも含めて必要な操作方法は学ぶことができた。

CASIOの古いプログラム関数電卓 fx-201P
http://kyoro205.blog.fc2.com/blog-entry-496.html

fx-201Pでのプログラミング (1)
http://kyoro205.blog.fc2.com/blog-entry-499.html

fx-201Pでのプログラミング (2)
http://kyoro205.blog.fc2.com/blog-entry-500.html

カシオ CASIO fx-201P 修理 奇妙なプログラム言語
http://keikato.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/auto.html

実に奇妙なプログラム方法だ。プログラム言語というより、キーを押す手順をそのまま記録するマクロのようなもの。編集モードではキーステップの挿入や削除もできず、上書きされてしまうので、修正したいときはいったん全部消してから入力しなおすのがいちばん早い。それに7セグメント表示だと、何のキーのことが表示されているのかさっぱりわからない。


とりあえずベンチマークは長方形公式を使ったこの定積分計算をfx-202Pでしてみることにした。



この面積を求めるわけである。



現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。



メモリー割り当てとアルゴリズムはこのようにした。



この電卓の流儀でプログラムするとこのようになる。最大128ステップ組めるのだが、これだけで68ステップ使ってしまった。



実行結果が表示されたところ。(10分割で計算した例)



分割数を変えて実行した結果がこちら。正確な値は0.738642998である。



とにかく遅い。1000分割では58分もかかっている。原因は三角関数の計算に時間がかかっているためだと思われる。

sinとcosの箇所をスキップ(計算省略)して100分割で実行したところ63秒で計算が終わってしまった。計算を省略しないときが348秒だったので、全計算時間の82パーセントが三角関数に使われていることになる。

1回のループでsinとcosの計算はそれぞれ1回ずつ行われている。sinの計算1回あたりにかかる時間は1.43秒だ。fx-19と比べたときマニュアル操作で測った時間とほぼ一致した。

今回のテストはこれでおしまいにするが、プログラム関数電卓は後継機をいくつか持っているので、近いうちに同じ計算をしてその後の技術発展を確認したい。


所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-502P (1979)、fx-602P (1981)

$
0
0
左:CASIO fx-502P (1979), 右:fx-602P (1981)拡大

fx-202P (1976)に続き、後継機種も計算速度を測ってみた。わずか数年の間に電卓は劇的に進化している。

今回紹介するfx-502P (1979)は「世界初の手帳型プログラム関数電卓」だ。そして2年後に発売されたfx-602P (1981)はプログラミング容量を2倍に増やした後継機種。

CASIO fx-502P(51関数、22メモリー、プログラム:256ステップ): 24,800円
CASIO fx-602P(51関数、22メモリー、プログラム:512ステップ): 29,500円

fx-502Pの登場によって数百から数万回の繰り返し計算が必要な定積分をはじめ、解析的には解けない非線型な方程式/微分方程式の数値解の計算、数値シミュレーションが2万円台のパーソナル電卓で行えるようになった。

ちなみに日本初のパーソナルコンピュータ NEC PC-8001 が発売されたのも1979年である。本体価格16万8千円、モニター込みで30万円ほど。当時の大卒初任給は11万円ほどだった。

「世界初」、「日本初」といってもいろいろある。関数電卓、プログラム電卓について年代順にはこのようになる。

世界初の卓上プログラム電卓 CASIO AL-1000 (1967): 価格328,000円。12.3Kg。(詳細
世界初の卓上プログラム関数電卓 HP-9100A (1968):価格5000ドル。(詳細
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 (1972):価格395ドル。(詳細
日本初の卓上関数電卓 CASIO fx-1 (1972):価格32万5千円(詳細
日本初のポータブル関数電卓 CASIO fx-10 (1974):価格24,800円。(詳細
日本初のポータブル・プログラム関数電卓 CASIO PRO-101 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976), CASIO PRO fx-1 (1976)(動画
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-501P (1979), fx-502P (1979):(紹介記事

日本初のポータブル・プログラム関数電卓のところに4機種書いたのは、どれも同じ年に発売されたからだ。順番はこのページの次の写真を参考にした。



CASIO PRO-101 (1976):4万9800円。256ステップ。(詳細1詳細2
CASIO fx-201P (1976):2万9000円。127ステップ。電源を切るとプログラムも消えた。(詳細1詳細2
fx-202P (1976):3万9千円。fx-201Pにプログラム保護回路を内蔵したもの。(詳細
PRO fx-1はPRO-101に磁気カードリーダーがついた機種(詳細)(動画

厳密に言えばPRO-101が日本初なのだろうけど、これら4機種は同じ年に発売されたのでどれも日本発と言ってよいだろう。PRO-101の「PRO」は「プログラム」ということなのだろう。


サイズはこれくらいだ。(カッコ悪いけど)ワイシャツの胸ポケットにぎりぎり収まる。ボタン電池2個で動作する。



プログラミング関数電卓として今のところ最上位機種の fx-5800P (2006) と比べても小さくて薄い。




fx-202P (1976)のときと同様、同じ定積分の問題を同じアルゴリズムで計算させてみる。長方形近似を使ってこの計算を行うわけだ。



この面積を求めるわけである。



現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。





fx-502P (1979)での計算

プログラムのサイズは40ステップ。不必要な演算が一部含まれているが fx-202P でのプログラムと同じにするためなので気にしないでほしい。



計算結果



ループ1回につき1.245秒。fx-202Pよりも計算時間が2.8分の1に短縮されている。

そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると235秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は81.1パーセント。

三角関数1回の計算にかかる時間は0.505秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が2.83分の1に短縮されている。


fx-602P (1981)での計算

プログラムはこのようになる。fx-502Pでメモリ番号の指定が1桁だったのが2桁に変わるだけだ。



計算結果



ループ1回につき0.744秒。fx-202Pよりも計算時間が4.68分の1に短縮されている。(fx-502Pに対して1.67分の1)

そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると210秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は71.8パーセント。

三角関数1回の計算にかかる時間は0.267秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が5.36分の1に短縮されている。(fx-502Pに対して1.89分の1)


ところで fx-602P (1981) はスマホアプリがある。アプリでも計算速度を測ってみた。

fx-602P Androidアプリでの計算




使用した機種はSH-01H
http://www.sharp.co.jp/products/sh01h/

Qualcomm MSM8992ヘキサコア(1.8GHzデュアルコア+1.4GHzクァッドコア)

計算結果はこのとおり。



ループ1回につき0.144秒。fx-602Pの実機に対して計算時間が5.17分の1に短縮されている。

そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると107秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は25.7パーセント。

三角関数1回の計算にかかる時間は0.037秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-602Pの実機よりも計算時間が7.22分の1に短縮されている。


fx-602P iPhoneアプリでの計算




使用した機種はiPhone6
https://support.apple.com/kb/SP705?locale=ja_JP&viewlocale=ja_JP

64ビットアーキテクチャ搭載A8チップ
クロック周波数 1.1GHz

計算結果はこのとおり。



めちゃくちゃ速い!

ループ1回につき0.128ミリ秒。fx-602Pの実機に対して計算時間が5813分の1に短縮されている。

そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000000回の分割で計算すると107秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は16.4パーセント。

三角関数1回の計算にかかる時間は0.01ミリ秒ということになる。三角関数についてだけ言えば実機のfx-602Pよりも計算時間が26074分の1に短縮されている。


パソコンを持ち歩いていないときプログラム関数電卓アプリは何かと重宝だ。特にfx-602Pは覚えやすくできているからお勧めである。

fx-602Pのマニュアル(日本語): PDF
fx-602Pのマニュアル(英語): PDF


今回のテストはこれでおしまい。次回は2006年に発売されたプログラム関数電卓 CASIO fx-71F と fx-5800P で試すことにしよう。

所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。


関連記事:

日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55c4832a2ca95087960c2ec0e532b1e6


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

Cube root using abacus: Theory (Triple-root method)

$
0
0
Square root & Cube root

[Japanese]

This is beginning of articles about how to solve Cube root. Today is the theory of Triple-root method. (Sankon method)

Cube root methods: Triple-root method, constant number method, 3a^2 method, 1/3-division method, 1/3-multiplication table method, 1/3-multiplication table alternative method, Multiplication-Subtraction method, 3-root^2 method, Mixing method, Exceed number method, Omission Method, etc.

"1st group number" is the left most numbers in the 3-digits groups of the given number for cube root calculation. Number of groups is the number of digits of the Cube root.

157,464 -> (157|464): 157 is the 1st group number. The root digits 2.
20,346,417 -> (20|346|417) : 20 is the 1st group number. The root digits is 3.

Cube root of 20,346,417 is 273. We call 1st root=2, 2nd root=7, 3rd root=3.


Case 1) Root is 2-digits

1st root=a, 2nd root=b, then C (Cube) is given by following formula.





Use next formula for the Cube root calculation.








Step 1) Find the 1st root and subtract its cube.

Find the 1st root and subtract its cube from 1st group number.





Step 2) Divide by 3x of the 1st root.

Divide remainder by 3x(1st root). This is why we call the calculation as "Triple-root method".







Step 3) Divide by 1st root and get 2nd root.





Step 4) Subtract square of the 2nd root.





Step 5) Subtract cube of the 2nd root.






Case 2) Root is 3-digits

1st root=a, 2nd root=b, 3rd root=c, then C (Cube) is given by following formula.









Step 1) Use next formula for the Cube root calculation.





Step 2) Divide by 3x of the current root.



Step 3) Divide by a+b and get c as 3rd root.





Step 4) Subtract square and cube of the 3rd root.






Next article shows how to solve Cube Root by Triple-root method using "Mr. Cube Root" abacus.


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed


Please place your mouse on the buttons and click one by one. These are blog ranking sites.
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

開平と開立(第16回): 開立の理論(3根法)

$
0
0
平方根(開平)と立方根(開立)

[English]

今回から実際にどのようにして開立を行うかを解説する。今日は3根法(3倍根法、3商法)の理論編。

開立(立方根):3根法(3倍根法、3商法)、定数法、3a^2法、三除九九、三分九九法、三分九九法別法、乗減法(変商法)、3根^2法、折衷法、過大数開立、省略開立など


第1群の数とは立方根を求める数を3桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の3桁のことである。群の数が根の桁数となる。

157,464 -> (157|464): 157が第1群の数、根の桁数は2
20,346,417 -> (20|346|417) : 20が第1群の数、根の桁数は3

20,346,417の立方根は273であるが、2を初根、7を次根、3を第3根と呼ぶ。


1)根が2桁の場合

初根をa、次根をbとすると、その立方(C)は次の式で与えられる。





開立の計算は次の式によって行う。








手順1)初根立根、立方減

第1群の数と立方九九(三乗九九)によって初根を立て、初根の立方を引く。





手順2)3根除:初根の3倍で割る。







手順3)次根立根:初根で割り、次根を得る。





手順4)平方減:次根の平方を引く。





手順5)立方減:次根の立方を引く。






2)根が3桁の場合

初根をa、次根をb、第3根をcとすると、その立方(C)は次の式で与えられる。









手順1)次の計算を行う。





手順2)3根除:既根の3倍で定位置まで割る。



手順3)3根立根:既根 a+b で割り、cを第3根とする。





手順4)平方減・立方減:第3根の平方と立方を引く。






第17回は「開立はん」を使った3根法による開立の実践編である。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

現行のプログラム関数電卓 CASIO fx-71f (2006)、fx-5800P (2006)

$
0
0
左:CASIO fx-71f (2006), 右:fx-5800P (2006)拡大

fx-202P (1976)、fx-502P (1979)、fx-602P (1981)に続き、今回は現行の機種で計算速度を測ってみた。

CASIO fx-71f(180関数、プログラム:最大680バイト): 4,000円(オープン価格)
CASIO fx-5800P(407関数、プログラム:最大28,500バイト): 6,400円(オープン価格)

後継機がfx-72fとして2014年に発売されているのでfx-71fは最新モデルではないが、性能はほとんど同じなので現行機種とさせていただく。

fx-71fは2006年に同じデザインの関数電卓 fx-991ES、金融電卓 fx-FC200V と一緒に発売された。3兄弟のようなものである。関数電卓とプログラム関数電卓はその後、性能アップとモデルチェンジが行われたが、金融電卓は fx-FC200V が現在でも最新モデルである。ただしアメリカとは異なり日本の簿記や会計士の検定試験では金融電卓の持ち込みが禁止されているので、それほど売れているわけではない。

左からfx991-ES、fx-FC200V、fx-71f(クリックで拡大)



fx-202P (1976)のときと同じ定積分の問題を同じアルゴリズムで計算させてみる。長方形近似を使ってこの計算を行うわけだ。



この面積を求めるわけである。



現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。




fx-71f (2006)での計算

プログラムのサイズは70バイトほどになった。言語はCasio Basicだ不必要な演算が一部含まれているが fx-202P でのプログラムと同じにするためなので気にしないでほしい。

プログラムリストは改行してあるが、電卓上では1行表示でプログラムの終わりまで矢印キーで右にスクロールさせる。プログラムの編集はしづらい。



計算結果



ループ1回につき0.4秒。fx-202Pよりも計算時間が8.56分の1に短縮されている。

そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると71秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は82.6パーセント。

三角関数1回の計算にかかる時間は0.168秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が8.49分の1に短縮されている。


fx-5800P (2006)での計算

プログラムはfx-71fと同じなので省略。ただし複数行表示で縦スクロールが可能なのでfx-71fよりはプログラムの編集を楽に行なえる。

Casio Basicを学んでみたい方はブログ仲間の「やすさん」がお書きになっている「Casio Basic入門 -目次-」を参照されるとよい。電卓に付属しているマニュアルよりもはるかに詳しく解説されている。

計算結果



ループ1回につき0.154秒。fx-202Pよりも計算時間が22.6分の1に短縮されている。

そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると63秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は58.4パーセント。

三角関数1回の計算にかかる時間は0.045秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が31.7分の1に短縮されている。)


まとめ

fx-202Pの計算速度を1とし、各機種の速度改善を率(倍数)であらわすと次のようになった。いちばん下の2つはスマートフォンアプリである。




所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。


関連記事:

日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55c4832a2ca95087960c2ec0e532b1e6

世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-502P (1979)、fx-602P (1981)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fdc21158802ddaef862956805b0195f2


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

Cube root 421,875 using abacus (Triple-root method 1)

$
0
0
[Set 421,875 on Mr. Cube root]Zoom

[Japanese]

We start the actual solutions to calculate Cube root using abacus. The calculation becomes more complicated but interesting.

Today's example is simple - basic Triple-root method, root is 2-digits case and 1st root is greater than or equal to 4.. Please check the Theory page for your reference.

Cube root methods: Triple-root method, constant number method, 3a^2 method, 1/3-division method, 1/3-multiplication table method, 1/3-multiplication table alternative method, Multiplication-Subtraction method, 3-root^2 method, Mixing method, Exceed number method, Omission Method, etc.


Abacus steps to solve Square root of 421,875
(Answer is 75)

"1st group number" is the left most numbers in the 3-digits groups of the given number for cube root calculation. Number of groups is the number of digits of the Cube root.

421,875 -> (421|875) : 421 is the 1st group number. The root digits is 2.


Step 1: Set 421875. First group is 421.


Step 2: Cube number smaller than 421 is 343=7^3. Place 7 on D as 1st root.


Step 3: Place 421-343=078 on GHI. (-a^3)


Step 4: Place Triple root 3x7=21 on AB.


Step 5: Repeat division by 21 until 4th digits next to 1st root. (/3a)


Step 6: 78/21=3 remainder 15. Place 3 on F and 15 on HI.


Step 7: Divide 158 by 21.


Step 8: 158/21=7 remainder 11. Place 7 on G and 011 on HIJ.


Step 9: Divide 117 by 21.


Step 10: 117/21=5 remainder 12 Place 5 on H and 012 on IJK.


Step 11: Divide 37 by current root (1st root) 7. (/a)


Step 12: Ansewer is 5 and place 5 on E as 2nd root.


Step 13: Place 37-1st root x Answer=37-7x5=02 on FG. (-ab)


Step 14: Focus on 25 on GH.


Step 15: Place 25-2nd root^2=25-5^2=00 on GH. (-b^2)


Step 16: Focus on 125 on JKL.


Step 17: Place 125-2nd root^2=125-5^3=000 on JKL. (-b^3)


Step 18: Cube root is 75.


Final state: Answer 75

Abacus state transition. (Click to Zoom)



Next article is also about Cube root calculation (Triple-root method).


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed


Please place your mouse on the buttons and click one by one. These are blog ranking sites.
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

開平と開立(第17回):421,875の算盤による開立(3根法1)

$
0
0
開立はん」に421,875を置いたところ拡大

[English]

今回から算盤での開立の手順を解説する。開平より複雑さが増し、ずっと面白くなる。

今回は3根法で根が2桁、初根が4以上の場合だ。理論編も参考にしていただきたい。

開立(立方根):3根法(3倍根法、3商法)、定数法、3a^2法、三除九九、三分九九法、三分九九法別法、乗減法(変商法)、3根^2法、折衷法、過大数開立、省略開立など


算盤による421,875の3乗根の解法(答は75)

第1群の数とは立方根を求める数を3桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の3桁のことである。群の数が根の桁数となる。

421,875 -> (421|875): 421が第1群の数、根の桁数は2。


手順1:421875を置く。第1群は421。


手順2:421以下の立方数は343=7^3。7を初根としてDに立てる。


手順3:421-343=078をGHIに置く。(-a^3)


手順4:3倍根(3×初根)、3x7=21をABに置く。


手順5:3倍根=21でH以降を初根の次4桁目(定位置)に商が立つまで割る。(÷3a)


手順6:78÷21=3余り15。商3をFに置き、余り15をHIに置く。


手順7:158を21で割る。


手順8:158÷21=7余り11。商7をGに置き、余り011をHIJに置く。


手順9:117を21で割る。


手順10:117÷21=5余り12。商5をHに置き、余り012をIJKに置く。


手順11:37を既根(初根)7で割る。(÷a)


手順12:商5を立て、これを次根とし、Eに置く。


手順13:37-初根x商=37-7x5=02をFGに置く。(-ab)


手順14:GHの25に注目する。


手順15:25-次根^2=25-5^2=00をGHに置く。(-b^2)


手順16:JKLの125に注目する。


手順17:125-次根^3=125-5^3=000をJKLに置く。(-b^3)


手順18:立方根は75と求まる。


最終状態: 答 75

珠の状態推移を表にすると次のようになる。(クリックで拡大)



第18回も開立法(3根法)である。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

とね日記語録: 名言、迷言、明言集

$
0
0

有名人でもないし、何も業績を残したわけでもないのに名言集だなんておこがましいことだ。しかし、ブログを12年もやっていると印象に残る言葉がそれなりに蓄積されてくる。

今日はこれまでの記事の中から、いくつか名言や迷言、明言をピックアップしてみた。


「ふ~ん、そーなんだ~。パソコンとかマウスとか?」
「エクセルとか使えるんだ~。アタマいいんだね。」

居酒屋でたまたま隣に座った男子が話していた言葉。こういう若者にはもっと勉強してもらいたいと思うわけ。記事はこちら


「知り合い以上、友達未満」のマキちゃん、
「知り合い未満」に格下げになる。

飲み屋さんで働いている女の子は「知り合い以上、友達未満」である。このような区別は大切なことで、日ごろから肝に銘じておきたい。20代半ばそして30代の一時期、酒場の女の子に熱を上げていたことへの自戒がこの表現ににじみ出ている。記事はこちら


うあ~、どうしよう。「晒す」、「炎上」、「血祭り」という3つの言葉が頭をよぎる。

とね日記がブレイクしたときの記事。急にアクセスが増えると心配になってしまうものだ。記事はこちら


「あの時代に生まれていたら僕はニュートンになれたのにと過信していた。ああ、恥ずかしい。」

物理学を学び始めていた頃の気付きである。高校物理と実際行われた物理学の違いに衝撃を受けた。記事はこちら


レジで本を渡すときドキドキしたのは久しぶりだった。3万円渡して5千円のお釣りをもらった。

日本語版プリンキピアを買ったときのこと。高価な本を買うときは今でもドキドキする。記事はこちら


こういうのを買える大人たちがうらやましかった。買えるはずもないのに売り切れにならないか心配になった。

自分で買えないほど高価だとなおさら想いは強まるものである。中学生のときマイコントレーニングキットTK-80を初めて見たときのことだ。記事はこちら


「物理学にでてくる数式は方程式か不等式だ。つまり物理で扱う対象は、他の対象との関係においてしか人間は理解することができない。」

当たり前のことだけど、当たり前のことほど本には書いていない。そして、どんなに些細なことでも自分で気づいたときはうれしいものだ。記事はこちら


「なぜ光と重力が同じ速度なの?」

こういう素朴な疑問が好奇心を持続させるのだ。記事はこちら


「ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもなさそうだ。それならば自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!」

とね日記賞を思いついたときは「これだ!」と思った。記事トップの「あいだみつを」さんの言葉に通じるものがある。記事はこちら


「これを使って計算すれば宇宙のあらゆる謎がすべて解けるのだと僕は信じていた。」

小学生のとき関数電卓を初めて見たときの感想。記事はこちら


「電卓のキーを押した瞬間に僕の理数系人生が確定したのだった。」

新宿のデパートで関数電卓を初めて触ったときのこと。記事はこちら


「高校生だった僕はこの小さな黄色い窓の中に宇宙を見ていた。」

初めて関数電卓を手にした高校1年の夏。僕は天文計算に熱中していた。記事はこちら


「僕はこれまでの人生の読書で「天啓にうたれた」ことがない。僕のほうが感受性が鈍いから天啓が素通りしてしまっていたのに違いない。きっとそうだ。」
「この金色の帯と天啓のことが気になり本書を購入したのだ。」

本を買うきっかけは表紙や帯のこともあった。記事はこちら


「いつもトップの点数をとっている学生に聞いても「わからない度」は他の学生と一緒。」
「優等生から劣等生まで横並びの状態だ。」

大学生3年のとき落ちこぼれてしまったときのこと。記事はこちら


「現実の世界、ニューヨークに置かれた量子コンピュータを使って僕はようやく自分で量子テレポーテーションの実験を行なったことになる。小さいながらも今日は記念日だ。」

これはつい先日書いた記事。技術革新が日進月歩で、すごい時代に生きているのだなぁと思うわけだ。記事はこちら


「読書や勉強から得られる知識や発見、高揚感はお金では買うことのできない価値のひとつです。」

とね日記がいちばん主張したいのはこれだと思う。記事はこちら


「飽きっぽい僕としては、三日坊主にならなければと思っているところ。」

僕はもともと飽きっぽい性格だ。これは2005年にブログを始めてから3回目の投稿に書かれている言葉だ。12年もブログが続いてしまうとはよもや思っていなかったし、今だに記事を書いているのはおかしなことである。記事はこちら



とりあえず、これくらいにしておこう。思いついたらまた追記させていただくことにする。


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

2017年度 理系交流会

$
0
0

金曜の夜、仕事を終えて何気にツイッターを見ていたら、このお知らせに気が付いた。

2017年度 理系交流会」(@RikeiPlus)



画像には大学生・大学院生が対象と書いてあるが、紹介文の下のほうには社会人も参加可能と書かれている。面白そうだ。参加してみようかという気持ちがムクムクと湧いてきた。

公私ともに日頃僕の周りにいる人たちは学生も含めて非理数系の人ばかり。大学を卒業してからずっとそうなのだ。たまに行く一般人向けの物理学講座で知り合うのは40歳から70歳くらいまでの人たちばかり。

現代の理系大学生って昔と違うのだろうか?「とね日記」のことはどれくらいの人が知っているだろうか?いろいろな疑問が湧いてくる。また、社会人になっても趣味で物理や数学の勉強をしたり、理系ライフを楽しんでいる人がたくさんいることを伝えておきたいし。

社会人もOKとはいえ、これまで開催したときの写真で大学生からせいぜい30歳くらいまでの集いであることがわかる。ほとんど僕の息子や娘の世代ばかりだ。でもなんだか楽しそう。浮いちゃうだろうなーと思ったが好奇心には勝てなかった。申し込みボタンをクリック。

僕は大学で数学を専攻したものの、社会に出てIT企業に勤めて20年間は理系とは無縁の生活を送ってきた。10年ほど前になって趣味で物理や数学の勉強を始めただけである。参加する学生たちのように理系生活の真っただ中にいるわけではない。


会場は代々木の「国立オリンピック記念 青少年総合センター」だ。この施設にははるか昔に一度だけ来たことがある。大学1年の秋、1983年10月10日。それは故浦口明憲さんが開催した「秋の1日点字講習会」に参加したときのこと。その後、僕は大学4年になるまで当時36歳でデパート勤務の会社員だった浦口さんに視覚障碍者のための福祉活動を通して可愛がっていただいていた。といっても僕はボランティア活動に熱心だったわけではない。数学点字のことも含めて6ビットで情報伝達する点字のしくみに興味があっただけである。(参考記事:「視覚障害者が読める理数系書籍や学習環境について」、「宇宙の形、ガウスの曲面論と内在幾何(第1回)」)

月に一度ほど新宿西口の思い出横丁で浦口さんの点訳サークル設立、パソコン点訳や拡大写本への取り組みにかける熱い想いを聞くのが僕の役目だった。僕の就職活動を機にお会いすることがなくなり、就職して忙殺されるうちに浦口さんのことを忘れていった。ふと思い出して最後にお会いしたのは2005年のこと。浦口さんが癌で2007年にお亡くなりになっていたことを2010年頃にたまたま見つけたホームページで知り、恩返しをすることもできずに疎遠になっていたことついて申し訳ない気持ちになった。浦口さんや僕の点訳ボランティアのことは今日の記事の趣旨から脱線するので、詳しいことは後日別の記事で書くことにしよう。


前回訪れた1983年10月10日も今日のように快晴だった。ただし建物は今のように新しくはなく、1964年の東京オリンピックの選手村で使われた当時の施設が利用されていた時代だ。今回の理系交流会のように民間人への施設貸出も行われていた。

1980年頃の入口


現在の入口(以下の写真はクリックで拡大する)


今回の会場は研修棟だ。この巨大な建物の4階。建物の前は子供向けのイベントで盛り上がっていた。




会場の416号室は300人くらい入れそうな大きな部屋だった。テーブルとイスは部屋の後方に寄せられ、参加者は前半分に置かれた6つのテーブルにそれぞれ6~7人ずつ着席する。もちろん僕はずば抜けて最年長者である。

このような催しに参加する学生は大学のブランドの優劣に関係なく「意識高い系」である。女子学生は1割ほど。その場の空気は理系人たちの集いであることがすぐわかるほど「特殊」だった。ふだん理系人と接しない僕にはとてもよくわかる。大学生の頃に周囲にいた学友たちと同じオーラを発散する若者ばかりだ。

午後1時半から4時過ぎまで催しは続いた。その間、席の交換は1度行われたので全参加者(60名ほど)のうち、最低14人くらいとは言葉を交わすことになる。様子はこのような感じだ。主催者のおひとり横山明日希さん(別名「数学のお兄さん」@asunokibou)が撮影した写真を許可を得た上で載せさせていただくことにする。




また、フリータイムが設けられ、部屋の中ほどのドリンクスペースのまわりで自由に相手を選んで話すこともできた。各人は大学名(あるいは会社名)と氏名が書かれた名札をつけている。

理系といっても物理や数学専攻の人はほんの一部だ。誰にとってもそれは同じことで、自分の専門以外の相手と話すことになる。最初のテーブルでは1分間の自己紹介タイムがあり、その後は「理系の好きなところ」、「理系の課題点やその解決案」などテーマを決めて自分の経験を交えて話すことになる。ひと区切りついたところで、司会の横山さんが全体を仕切り、テーブル毎にどのようなことが話題に上がったかを発表するという段取りで進んだ。

座席交換をした後は、まったく違う人たちと話すことになる。忘れてしまったテーマもあるが「超個人的に理系で好きなこと、楽しいこと」というテーマが強烈だった。自分の変人ぶりをいかんなく自慢するための時間だ。





結局2つのテーブルやフリータイムで、僕は東大農学部の修士で稲の遺伝子の発現の研究をされている男性、7月にネット関連企業を立ち上げる予定の男性、早稲田大学卒業で9月からフランスで金属材料系の研究生活を送る男性、理化学研究所で勤務予定の女性、プログラミングなどソフトウェア技術を学んでいる男性、細胞生物学の修士の女性で食育サポーターをしている女性、薬学部卒で理系+のメンバーの女性、東京電機大学に在籍しているけれども天文・宇宙に関心がある学生、東海大で応用化学を専攻している大学1年の女性、東京農工大の修士の男性、横浜国立大学の修士の男性、僕の後輩にあたる東京理科大の学生2人など、実にさまざまな分野の人たちおよそ20人ほどとお話することができた。中には圧電素子とパチンコ玉を入れた透明なアクリルチューブを振って赤い光を出すおもちゃ(?)を作ってきて見せてくれた東工大の男性もいた。

僕はというと珍しくおとなしくしていることにしていた。もともとおしゃべりで自己主張が強いのだが、自分の子供くらいの年代の若者たちを前にすると、どうしても「昔はこうだったオジサン」になってしまいがちで、そう見られるのが嫌だったからである。それに最近の学生がどんな感じか知りたいのだから、勝手にしゃべってもらっていたほうが都合がよい。量子力学ではないけれど、僕が質問を投げて観測すると、本来の彼らの姿がかき乱されてしまう。

僕が理科大卒だからなかもしれないが、僕の時代の学生より明らかにコミュニケーション能力が高く、服装もおしゃれな学生が多い。またインターネット環境の有無の違いは大きく、現在の理系大学生のほうが他大学、他学部の状況に関する知識が圧倒的に多く、情報収集能力に長けている。昔は自分の大学や学部の情報収集だけで閉じていた。自分が進むべき道をより多くの選択肢から客観的に検討して決められる時代に変わっている。

でも話を始めると物事に対する妙なこだわり感、考え方や取り組みのための発想や思考パターンがよくわかる。「理系学生の気質って昔も今もまったく変わってない。w」というのが今日の結論だ。脳内だけでなく顔つきも含めて、むかし僕の周りにいた学友の中にいたのとそっくりな「同型人間」や「同相人間」がたくさん見つかったのが可笑しかった。


さて、僕のブログのことを知っている学生はいたかどうかということだが、話すことができた20人の中でお二人がご存知だった。2番目のテーブルでたまたま隣に座った農工大修士の方に「ブログ読んでます。昨日ツイッターで僕が参加表明されたのを見てびっくりしてました。」と言われたので、僕のほうが驚いた次第。そしてもう一人は一緒のテーブルには着かなかったのだが、「とね日記いつも読んでいます。」と声をかけてくださった横浜国立大学の修士の方。お二人とも僕のツイッターアカウントをフォローしてくださっていることがわかった。ありがたい。


最後は全員で記念撮影。ピントが合ったちゃんとした写真もあるのだが、プライバシーを保護してツイートされた写真がこちら。理系ならではの「ブラし」のテクニックが使われている。




集いが終わると全員で会場復帰作業。机と椅子をもとのように並べなおして解散となった。


なお、来週の土曜には次のイベントが予定されている。場所は「阿佐ヶ谷ロフトA」ということだ。興味のある方は申し込まれるとよいだろう。

【イベント開催決定!科学エンタイベント】
『サイコラボvol.3』5/27開催!科学×◯◯のコラボレーション。科学で楽しみたい人遊びにおいで!
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/61603


なお理系交流会関連のツイートは「#理系交流会」というハッシュタグで読むことができる。


今日はいつもの土曜のように勉強はできなかったが有意義に過ごすことができた。現在ノイマンの「量子力学の数学的基礎」の100ページ目あたりを読書中である。紹介記事はもう少しお待ちいただきたい。


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

Cube root 42,875 using abacus (Triple-root method 2)

$
0
0
[Set 42,875 on Mr. Cube root]Zoom

[Japanese]

Today's example is also about actual solution of Cube root using abacus. The calculation becomes more complicated than previous example.

Today's example is simple - basic Triple-root method, root is 2-digits case and multiplication-back (wound up multiplying - Kakemodoshi in Japanese) by 9 occurs. Please check the Theory page for your reference.

Cube root methods: Triple-root method, constant number method, 3a^2 method, 1/3-division method, 1/3-multiplication table method, 1/3-multiplication table alternative method, Multiplication-Subtraction method, 3-root^2 method, Mixing method, Exceed number method, Omission Method, etc.


Abacus steps to solve Square root of 42,875
(Answer is 35)

"1st group number" is the left most numbers in the 3-digits groups of the given number for cube root calculation. Number of groups is the number of digits of the Cube root.

42,875 -> (042|875) : 42 is the 1st group number. The root digits is 2.


Step 1: Set 42875. First group is 42.


Step 2: Cube number smaller than 42 is 27=3^3. Place 3 on E as 1st root.


Step 3: Place 42-27=15 on HI. (-a^3)


Step 4: Place Triple root 3x3=9 on B.


Step5: Repeat division by triple root 9 until 4th digits next to 1st root.(÷3a)


Step 6: 15/9=1 remainder 6. Place 1 on G. Place 06 on HI.


Step 7: Focus on 68.


Step 8: Divide 68 by triple root 9.


Step 9: 68/9=7 remainder 5. Place 7 on H and 05 on IJ.


Step 10: Divide 57 by 9.


Step 11: 57/9=6 remainder 3 Place 6 on I.


Step 12: Place remainder 03 on JK.


Step 13: Divide 17 by current root (1st root) 3. (÷a)


Step 14: Ansewer is 5 and place 5 on F as 2nd root.


Step 15: Place 17-1st root x Answer=17-3x5=02 on GH. (-ab)


Step 16: Focus on 26 on HI.


Step 17: Place 26-2nd root^2=26-5^2=01 on HI. (-b^2)


Step 18: 1 on I is part of the remainder of the divisions by triple root from Step 5, multiply-back by triple root 9 as follows.


Step 19: Place 0 on I.


Step 20: Focus on 03 on JK.


Step 21: Add 09 (multiply-back) to 03 on JK. Place 03+09=12 on JK.


Step 22: Focus on 125 on JKL.


Step 23: Focus on 2nd root 5.


Step 24: 125-2nd root^3=125-5^3=0. Place 000 on JKL. (-b^3)


Step 25: Cube root of 42875 is 35.


Final state: Answer 35

Abacus state transition. (Click to Zoom)



Next article is also about Cube root calculation (Triple-root method).


Related articles:

How to solve Cube root of 1729.03 using abacus? (Feynman v.s. Abacus man)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff5d6e7ecaa07230b9cc7af10b23aed


Please place your mouse on the buttons and click one by one. These are blog ranking sites.
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

開平と開立(第18回):42,875の算盤による開立(3根法2)

$
0
0
開立はん」に42,875を置いたところ拡大

[English]

前回に続き今回も算盤での開立の手順を解説する。9による掛け戻しが発生するケースなので、少し複雑になる。

今回は3根法で根が2桁、9による掛け戻しが発生する場合だ。理論編も参考にしていただきたい。

開立(立方根):3根法(3倍根法、3商法)、定数法、3a^2法、三除九九、三分九九法、三分九九法別法、乗減法(変商法)、3根^2法、折衷法、過大数開立、省略開立など


算盤による42,875の3乗根の解法(答は35)

第1群の数とは立方根を求める数を3桁ずつ区切り、いちばん大きい(いちばん左)の3桁のことである。群の数が根の桁数となる。

42,875 -> (042|875): 42が第1群の数、根の桁数は2。


手順1:42875を置く。第1群は42。


手順2:42以下の立方数は27=3^3。3を初根としてEに立てる。


手順3:42-27=15をHIに置く。(-a^3)


手順4:3倍根(3×初根)、3x3=9をBに置く。


手順5:3倍根=9でH以降を初根の次4桁目(定位置)に商が立つまで割る。(÷3a)


手順6:15÷9=1余り6。商1をGに置き、余り06をHIに置く。


手順7:68に注目する。


手順8:68を9で割る。


手順9:68÷9=7余り5。商7をHに置き、余り05をIJに置く。


手順10:57を9で割る。


手順11:57÷9=6余り3。商6をIに置く。


手順12:余り03をJKに置く。


手順13:17を既根(初根)3で割る。(÷a)


手順14:商5を立て、これを次根とし、Fに置く。


手順15:17-初根x商=17-3x5=02をGHに置く。(-ab)


手順16:HIの26に注目する。


手順17:26-次根^2=26-5^2=01をHIに置く。(-b^2)


手順18:Iの1は手順5からの3根で割った余りの一部なので以下の手順に従って3根の9で掛け戻す。


手順19:Iを0にする。


手順20:JKの03に注目する。


手順21:JKの03に掛け戻しの09を足す。03+09=12をJKに置く。


手順22:JKLの125に注目する。


手順23:次根の5に注目する。


手順24:125-次根^3=125-5^3=000をJKLに置く。(-b^3)


手順25:立方根は35と求まる。


最終状態: 答 35


珠の状態推移を表にすると次のようになる。(クリックで拡大)



第19回も開立法(3根法)である。


関連記事:

ファインマン v.s. 算盤の達人: ファインマン先生に立方根計算の雪辱を果たそう
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/89a0b907577f03ef6132cf9664bdcddb


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

片耳イヤホン

$
0
0

今日は最近買って愛用している片耳イヤホンのご紹介。

ほぼ毎晩続けているウォーキングは5年目に入った。2時間くらいかかるので、ワンセグでドラマを見たりラジオで語学講座を聞いたりしながら歩いている。

実をいうと僕は生まれつき左耳の聴力がゼロなのである。ところが不思議なことにCDコンポで音楽を聴くとステレオ放送とモノラル放送の区別ができることにある日気が付いた。あと音がどの方向から聞こえてくるかもある程度わかる。

生まれてからずっと片耳聴力だから、普通に両耳が聞こえる人と違う能力が備わったのだろうと思っている。両耳が聞こえる人が片方だけ耳栓をして聞くのとは違った聞こえ方をしているのだと思えるのだ。

僕が音源の左右を聞き分けている感じというのは、おそらく両耳とも聞こえる人が音が上から聞こえてくるか、下から聞こえてくるか、あるいは前後のどちらか聞こえてくるかを聞き分ける方法と似ているのだと思う。僕の場合は上下左右前後の全部を聞き分けてきたので、能力がより発達せざるをえなかった状況なのだが。


けれどもイヤホンを使って音楽を聴くと、さすがに僕の特殊能力も活かせない。普通の両耳イヤホンだとステレオの音楽の右の音しか聞こえてこないのは仕方がない。

それをはっきり意識したのはウォーキングしながら昨年5月に亡くなられた冨田勲さんのシンセサイザー曲、組曲『惑星』を聴いていたときだ。CDコンポでスピーカーから聴いたときと明らかに違う。

この曲の中ではある特定の音を左右から交互に聞かせたり、右から左に音源を移動させたりする表現が使われている。僕が感じた違和感はそのあたりにあった。

左チャンネルは全く聞こえていないのは仕方がない。でもなんだか悔しいから、もしやと思ってAmazonで検索して見つけたのが片耳イヤホンなのだ。これなら音の移動を聞き分けることは無理としても、黒い線が2本あるステレオ用のプラグであることからお分かりのように左右両方の音をキャッチできる。


ヤザワ ダイナミック密閉型片耳カナルイヤホン(ブラック)YAZAWA 片耳イヤホン ステレオプラグ コード 1m 3m




ハイレゾ音質ではないが、僕には十分満足できるレベル。ウォーキングしながら聴く「Peace of Mind 土曜の朝のサラオレイン」は、より美しく響くようになった(気がする)。ただし「壇蜜の耳蜜」はもともとモノラル放送だから、聞こえ方は以前と変わらない。

放送へのリンクはパソコン用。スマートホンからクリックして開かない場合は「radiko.jp」アプリのタイムフリー再生から検索していただきたい。

 


こういうイヤホンあるんだよ!先日「知り合い以上、友達未満のマキちゃん」に見せたところ、「それ私も欲しい!音楽を聴いていても、他の音に注意していたいときってあるから。」という反応で、さっそく購入したそうだ。マキちゃんはピアノが弾ける人だから音楽好きである。



あ、そうか。両耳聞こえる人にもこのイヤホンは需要があるわけか。ウォーキングしながら周囲の音に気を配りたい人もいるわけだし。ただし、調べてみたところ自転車やバイクに乗るときは両耳だろうが片耳だけだろうが、イヤホンで音楽を聴きながら運転するのは違反、違法だということだそうだ。

自転車の片耳イヤホンやヘッドホンがダメでもこの手がある!運転中に絶対音楽を聴きたい人のためのTips
http://curassy.com/I3e608ff


充電が面倒だから僕は有線のイヤホンを使うことにしたが、Bluetoothのワイヤレスのもある。たとえばこれが良さそうだ。

【North Crown 特製版】QCY QY26 Bluetooth 4.1 ワイヤレス イヤホン 片耳型 ヘッドセット ヘットホン 高音質 超小型 軽量 ハンズフリー通話 落ち防止 Apple iPhone6s iphone7 xperia Androidなど対応 ブラックホワイト



片耳タイプのBluetoothイヤホン: Amazonで検索









ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

Amazonギフト券の盗難被害に遭ってしまった。

$
0
0

Amazonギフト券の盗難被害に遭ってしまった。被害額は2万円ほど。

購入したギフト券ではなく、毎月メールで送られてくるAmazonアソシエイト(アフィリエイト)の収入ぶんのギフト券のことだ。

今月は5月22日にメールを受け取っていたが、多忙だったため今日になって自分のアカウントに登録しようとしたら「別のアカウントに登録済みです」のメッセージが。。。



ギフト券番号を受け取るメールアドレスのパスワードは3カ月に一度変更している。ギフト券番号を他人にあげたり、他人から見えそうな場所、EvernoteやGoogleドライブなどネット上にはあげていない。

盗難としか考えられないので、サポートにその旨を連絡して「どうしたらよいのか?」と質問した。1時間後に返信がきた。まったくこの件を調べようとする気がないのは明らか。再度返信する気力が萎えてしまっているところである。

僕から奪い取ったギフト券番号を不正に登録したアカウントを調べようともしないAmazonの対応には不信感を抱かざるを得ない。

第一、「第三者機関」って何?、消費者センターのこと?それとも警察? そんなとこで調べられるはずがない。

残念ながら今回は泣き寝入りである。クレジットカード、銀行のカード情報の盗難のようなクリティカルな被害ではないのが不幸中の幸いなのか。


来月からギフト券番号の連絡が来たら、すぐ登録することを心がけたい。関連するアカウントのパスワードをすべて変更しておいた。でも、来月は大丈夫なのだろうか?原因がわかっていないだけに心配だ。

ネットで調べたらコンビニで購入するギフト券でも盗難の被害がでているそうだ。同様の被害に遭われた方がいるかもしれないので、あえてブログ記事にさせたいただいた。みなさんも気を付けていただきたい。


盗難の手口であるが、次のような状況が考えられる。Facebookで友達になっている元同僚からのアドバイスも参考にさせていただいた。

1)Amazonの社内、Amazonギフトを送った企業や流通網に犯人がいる可能性

2)Amazonの担当者が誤ってすでに登録済みのギフト券番号を僕に送ってしまった

3)外部から犯人がギフト券の番号を自動生成してアタック

4)僕のメールアドレスを管理している会社内に犯人がいる可能性

5)僕のメールパスワードが漏れていた(これは可能性としてあまり考えられない。)


以下がAmazonのサポートから受け取ったメールである。僕の個人メールアドレスの箇所はxxxxxと変更しておいた。

確認したところ、2017年4月14日 9:20に以下のメールをAmazon.co.jpよりお送りしていることを確認いたしました。

----------------------------------------------------
平素はAmazon.co.jpをご利用いただき、誠にありがとうございます。

Amazon.co.jpでは、お客様の情報の安全確保 とプライバシーの保護に細心の注意を払っております。このたび行った定期モニターの結果、Eメールアドレス、パスワードの一覧をインターネット上で無作為 に掲載しているページが見つかりました。発見された内容は、Amazon.co.jpとは一切関連がございませんが、同じパスワードを複数のサイトにてご 利用されているお客様も多くいらっしゃるかと存じます。お客様のEメールアドレス、パスワードが問題の一覧に掲載され、当サイトでも同じパスワードを使用 している可能性があることをふまえ、お客様以外の第三者による不正アクセスを防ぐ目的から、念のために、お客様のAmazon.co.jpアカウントに一 時的なパスワードを設定させていただきました。

お手数をおかけいたしますが、今後、Amazon.co.jpサイトをご利用いただくため には、パスワードを再設定していただく必要がございます。パスワードを再設定するには、当サイトで任意のページの上部にある「アカウントサービス」をク リックします。「サインイン」ページで「パスワードを忘れた場合」をクリックし、Amazon.co.jpの「パスワードアシスタント」ページに移動しま す。アカウントに関連付けられているEメールアドレスまたは携帯電話番号を入力すると、お客様個人に設定されたリンクを掲載したEメールが送られます。受 信したEメールのリンクをクリックし、パスワード再設定の指示に従ってパスワードを変更してください。

新しいパスワードは、すぐにご利用いただけます。新しいパスワードには、ほかのオンラインサイトやEメールアドレスで使用したことがないパスワードを設定することをお勧めします。

ご不便をおかけいたしますが、お客様のアカウントを保護するために必要な手続きであることをご理解くださいますようお願いいたします。
----------------------------------------------------

上記のメールを確認いただいたため、Amazon.co.jpのアカウントについては、パスワードをご変更いただいたことを確認しております。

しかしながら、もし、メールアドレス「xxxxxxx@nifty.com」(僕のメールアドレス)の受信トレイにアクセスをするためのパスワードについても同じものを使用されている場合は、速やかなご変更をお勧めいたします。

なお、既に他のアカウントに登録されたAmazonギフト券については再送はできかねます。

お客様ご自身では、他人にギフト券番号を知らせた覚えがないという事であれば、不正アクセスの可能性がございますので、第三者機関へご相談をいただきますようお願いいたします。

その他にもご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
アソシエイト・プログラムをご利用いただき、ありがとうございます。

Amazon.co.jp カスタマーサービス アソシエイト・プログラムスタッフ
ご利用ありがとうございました。

-------------------------------------------------------

その後、Amazonのカスタマーサービスには次のメールを送信しておいた。

Amazon.co.jp カスタマーサービス アソシエイト・プログラムスタッフ担当者さま

いつもお世話になっております。

以下の回答をいただきましたが、御社の不親切な対応に驚いております。

私のメールパスワードが漏洩していた可能性も排除できないわけですが、万が一メールパスワード漏洩がおきていたとしても、当該ギフト券番号を登録したアマゾンアカウントが盗難を行った人物のものであることは明らかであり、このアカウントを調べようともしない対応には不信感を抱かざるを得ません。

それ以外の可能性も3つほど考えられますが当該ギフト券番号を登録したアマゾンアカウントが盗難を行った人物のものであることには変わりありません。

また盗難の原因がはっきりしないこともあり、来月以降のギフト券の受領にも不安が残ってしまいます。

今回は泣き寝入りということであきらめることにいたしますが、次回同じようなことがおきた場合、親身な対応をしていただけますようお願い申し上げます。

このメールは御社の回答に対して「感想」として送信さていただきました。

--------------------------------------------
上記の私の返信に対し、翌日午前中にAmazonから返信がきました。お読みいただくとおりです。


Amazon.co.jpアソシエイト・プログラムにお問い合わせいただき、ありがとうございます。

恐れ入りますが、Amazonギフト券の再送等の対応は出来かねますことをご了承ください。

お客様ご自身では、他人にギフト券番号を知らせた覚えがないという事であれば、「xxxxxxx@nifty.com」(僕のメールアドレス)のアカウントへの不正アクセスの可能性がございますので、第三者機関へご相談をいただきますようお願いいたします。

アソシエイト・プログラムをご利用いただき、ありがとうございます。

Amazon.co.jp カスタマーサービス アソシエイト・プログラムスタッフ
ご利用ありがとうございました。
Amazon.co.jp



ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 

江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ

$
0
0
拡大


子供の頃、書店でよく見かけたあの懐かしい表紙の本。下北沢の古書店の100円ワゴンセールにあるのを見つけて思わず手に取った。もちろん「買い」である。江戸川乱歩の「少年探偵団シリーズ」である。

その後、ヤフオクで欲しい本だけ追加購入。全46巻セットやポプラ文庫クラシックとして2008年に復刻された26巻を置くスペースは家にない。

ポプラ社 「少年探偵団」ワールド・クロニクル!| ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/pr/shonentanteidan/

本棚に飾る3冊は、さしあたり掲載写真の3冊だ。復刻された26巻までは児童書向けということらしい。殺人が行われたりせず、死体がでてこないからだ。27巻以降は「グロい」ということなのだろう。27巻以降は「明智小五郎事件簿シリーズ」として集英社から刊行されている。(詳しい解説

僕の3冊は

第1巻: 怪人二十面相
第2巻: 少年探偵団
第27巻: 黄金仮面

その他の本はKindle版で読むことにした。(Amazon不買を宣言したばかりだがKindle書籍だけは別。)

少年探偵シリーズ(ポプラ文庫クラシック): Kindle版 文庫版


書籍をコレクションしたい方のためにリンクをつくっておこう。

26巻セットは古い絵の表紙の文庫版と、新しく表紙を描きなおした文庫版、単行本版がある。

古い絵の表紙の文庫版セット


新しい絵の表紙の文庫版セット



文庫版・少年探偵江戸川乱歩(全26巻セット): ヤフオクで検索

文庫版にこだわらず「少年探偵 江戸川乱歩」を探す: ヤフオクで検索 Amazonで検索


なお、少年探偵団シリーズは著作権が切れている。SOGOさんという方が17冊ぶん入力してくださったものが青空文庫から公開されている。表紙の絵には興味がなく、無料でお読みになりたい方は、こちらを利用されるとよいだろう。

江戸川乱歩・少年探偵団シリーズ、青空文庫用ファイル入力完了しました。
http://e-freetext.net/edogawa_shounen_books.html

青空文庫(江戸川乱歩の作品一覧)
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1779.html#sakuhin_list_1


参考ページ:

少年探偵団
http://roadsite.road.jp/mystery/ranpo/syonen-main.html

江戸川乱歩 少年探偵団全集 巻末広告
http://www.green.dti.ne.jp/ed-fuji/column-shonentantei.html



ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 

  

 
Viewing all 976 articles
Browse latest View live