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グラショー博士(1979年ノーベル物理学賞)一般公開講演会

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日曜はグラショー博士の一般講演会を聞きに東大の本郷キャンパスに行ってきた。講演会の概要は次のとおりだ。


グラショー博士(1979年ノーベル物理学賞)講演会

日時;2016年8月28日(日)14:00~16:00
場所:東京大学(本郷キャンパス)情報学環・福武ホール ラーニングシアター

講演者 シェルドン・グラショー ボストン大学教授、ハーバード大学名誉教授
(講演者紹介 相原 博昭 東京大学副学長)

講演題目
 「Does science progress through blind chance or by intelligent design?」
  和訳:「科学の進歩をもたらすのは、全くの偶然か、あるいは知的な計画か?」

講演概要
科学と技術における飛躍的進歩とは、ひとつは、あらかじめ立てられた計画に基づいて研究を進めたときに起きます。もうひとつは、セレンディピティ(=偶然に巡り会えた素晴らしいもの)によるもので、全く予期しない発見によって起きます。本講演ではこのふたつが互いに絡み合った様々な歴史的発見をひもとき、基礎研究に予算を割くことの重要性について論じます。


楽しみにしていたこの日がやってきた。ノーベル賞受賞者の講演を聞くのは初めてである。

講演が始まる1時間前には現地に到着。東大の赤門に来たのは小学生のとき以来だ。観光気分で写真を撮った。人通りが絶えないのでこの写真が撮れるまで15分ほどかかった。



会場は赤門を入って左に行ってすぐのところ。地下2階のホールで行われた。






科学系の講演会でご一緒しているYoshYさんとたけのやさんが、今回もいらっしゃっているので3人並んで着席。演壇のすぐ前の席で、ひとつ前には関係者席が設けられていた。ほどなく会場は満員になった。

開始時間になりグラショー博士と東大副学長をはじめ主催関係者が入ってこられた。なんとグラショー先生は僕の斜め前の席に。。。後ろ姿で顔を合わせていないのに僕はドキドキである。

主催者がグラショー博士のご経歴(ウィキペディアの記事)を紹介している間、博士は英語に同時通訳された音声を聞かれていた。

博士の講演が始まる。1932年生まれだから84歳になられていらっしゃるのだがお元気そうで、にこやかにお話を始められた。前回来日されたのは10年以上前のことだという。1988年のスーパーカミオカンデの発表の際にも来日されているそうだ。

まずILC(国際リニアコライダー計画)へ期待を寄せていることをお話しになった。

そして今回の公演のテーマ「科学の進歩をもたらすのは、全くの偶然か、あるいは知的な計画か?」を紹介されたうえで、「セレンディピティといっても、キリスト教の神とは関係ありませんよ。」と補足された。

博士はスライドを用意されていて、会場前面のスクリーンに大写しされている。絵や図版はなく文字ばかり。スライドに従ってよどみなくお話しをされるので、僕はメモを取るのと日本語訳の音声を聞くので精いっぱい。最後まで博士の表情を見ている余裕はほとんどなかった。

まず述べられた結論は「科学が進歩するためには、全くの偶然(セレンディピティ)と知的な計画の両方が必要である。」ということ。それを科学の長い歴史の中で見つけてみましょうということなのだ。

哲学者のカントは「計画なしに科学は生まれない。」という考え方をしている。その反面、偶然のいたずらによって発見を成し遂げた科学者もたくさんいるわけだ。

計画的に(カント的に)進められているCERNの加速器では、ここ最近は新しい粒子が見つかる兆候がない。だからILCのような新しい加速器が必要になる。ILCはいろいろなヒッグス粒子を発見する可能性があるからだ。(セレンディピティ的)

セレンディピティ的な発見として次の例をあげられた。

1781 ハーシェルによる天王星の発見
1800 赤外線の発見
1820 エルステッドによる電流が磁場を形成することの発見
1831 ファラデーによる電磁誘導の法則の発見
1895 X線の発見
1896 ベクレルによる放射線の発見
1928 ペニシリンの発見
1932 アンダーソンによる陽電子の発見
1947 ホフマンによるLSDの発明
1974 J/Psi粒子の発見
1984 C60フラーレンの発見
2004 グラフェンの発見


電磁波のセレンディピティ

電磁波の現象としてはカント的(K)とセレンディピティ的(S)な発見がある。

1704 (K) ニュートン(光学) -> 音階
1800 (S) ハーシェル -> 赤外線
1801 (K) リッター -> 紫外線
1888 (K) ヘルツ -> ラジオ波
1894 (S) レントゲン -> X線
1964 (S) ペンジアスとウィルソン -> 宇宙マイクロ波背景放射

そして極めてセレンディピティ的な発見の例としてベクレルによる放射線の発見をあげられた。それは次の3つの偶然が重なったからである。

- ウラン塩(硫酸カリウムウラニル)の蛍光の研究をしていたこと
- 太陽光を使う実験を計画していたのに曇の日が続いていたこと
- 写真乾板が感光してしまわないようにしっかりと包んで引き出しに入れていたこと


化学の分野のセレンディピティ

1669 ヘミングによるリンの発見
1671 ボイルによる水素の発見
1811 ヨウ素の発見
1828 フリードリヒ・ヴェーラーが無機化合物から初めて有機化合物の尿素を合成
1894 アルゴンの発見 -> 不活性ガスの発見につながる
1940 ネプツニウム(元素番号93)の発見


染料の分野のセレンディピティ

1704 顔料の製造を行っていたハインリッヒ・ディースバッハによって紺青(Prussian blue)が偶然発見された
1856 当時18歳の少年化学者であったウィリアム・パーキンは、マラリアの特効薬であるキニーネを合成しようとアニリンを酸化する反応を試すうち、偶然紫色のアニリン染料を作り出した。
1863 ジョセフ・ウィルブランドが色い染料として、トリニトロトルエン(TNT)を開発した。
1897 合成インディゴの発明(インディゴは青藍を呈する染料)
1928 Monastral blueの発明


(分野不統一)のセレンディピティ

1901 X線の発見
1903 放射線の発見
1980 CP対称性の破れの発見
2007 磁気抵抗の発見
2011 ダーク・エネルギーの発見
2011 準結晶の発見(化学)

このように博士は数多くの例を示された。そして次に発見(アイデア)が実用化されるまでにかかった年数を例示された。

- 巨大磁気抵抗効果がギガバイトHDDになるまで3年かかった。
- 光電変換の発見からCCDが作られるまで6年かかった。
- トランジスタは7年かかった。
- 放射線は11年かかった。
- 核エネルギーは19年かかった。
- 一般相対論からGPSまでは78年かかった。
- 太陽光発電は119年かかった。


甘味料のセレンディピティ

1879 サッカリン
1937 Cyclamate
1965 Aspartame
1967 Acesulfane (Coke Zero)
1976 Sucralose
1988 Tagatose

薬品、薬剤のセレンディピティ

26の例があげられていた。(書き取る時間がなかった。)


家庭にあるセレンディピティ

ポストイット、スーパーゲル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ワセリン、消しゴム、コーニングウェア、サランラップ、サンドイッチ、ポテトチップ等


理論物理のセレンディピティ

マクスウェルによる電磁波の予言 -> 光
シュレディンガーはハイゼンベルクの行列理論が同等であることに驚嘆(量子力学)
ディラックによる反物質の予言
ゲルマンによるクォークの予言(彼はクォーク理論は数学だけで成り立つことだと思っていた。)
弦理論 -> 量子重力
グラショー博士 電弱理論

結論として言いたいこととしてセレンディピティ的発見から、実用的なものが生まれる。

数論 -> Secure Banking
一般相対論 -> Global Positioning System
ファラデー -> 電磁気の利用
量子力学 -> Global GNPの3分の1(さまざまな製品や技術として実用化されている。)

このように解説のパートは目くるめく間に終わり、質疑応答のパートにうつった。


質疑応答

質疑応答の時間も博士は終始にこやかで、ゆっくりとお答えになっていた。


質問者1: セレンディピティ的発見には(研究や実験への)情熱が必要だと思うのですがいかがでしょうか?

博士の回答: 心構えとしては「楽しむ」ことが重要です。発見は料理や芸術、音楽などあらゆるところに見られます。


質問者2:今日は非常にたくさんの科学者が発見した例を紹介されましたが、とても詳しく知っていらっしゃることから科学者の伝記をたくさん読まれたのだと想像しています。科学者にとって他の科学者の伝記を読むことは研究に役立つとお考えでしょうか?

博士の回答:伝記には研究や発見のことだけでなく、科学者の生い立ちや性格も書かれています。私自身はニュートンに例えられるのは勘弁願いたいですね。ニュートンの性格はよくありませんでしたから。(笑)子供の頃、私は6歳の頃から眼鏡をかけ、太っていました。野球は苦手でした。高校に入ってからSFクラブを作り、同級生のワインバーグ博士と楽しんでいました。化学も好きでしたし、顕微鏡でいろいろなものを見るのも好きでした。物理学に興味をもったきっかけは湯川博士の講演を1948年、高校生のときニューヨークで聞いたことです。ベクトルやテンソルという当時の私にはわからない言葉にワクワクしました。素粒子物理学の道へ進んだのは湯川先生のおかげです。


質問者3:博士のノーベル賞受賞に結びいたご研究とセレンディピティとの関連についてはいかがでしょうか?

博士の回答:大学院はハーバードで、博士論文の担当は(1965年に朝永博士、ファインマン博士と一緒にノーベル物理学賞を受賞した)シュウィンガー博士でした。与えられたテーマは電弱理論に統一性があるかどうかということでした。コペンハーゲンではポスドクとして研究、その後、カルテクで研究しました。1967年、ワインバーグ博士の自発的対称性の破れを電弱理論に適用し、だいぶわかりやすくなりました。そして物理学賞受賞の理由とされた中性カレントのことは自分にとっては12年も前の論文だったので、すっかり忘れていたものだったのです。


最後に会場全員から大きな拍手が贈られ、講演会は無事終了した。録音と撮影が禁止されていたので取りこぼしがあるが、およそこのような流れだった。

東京滞在の後、博士は中国へ行って同じテーマでお話しをされるそうである。


グラショー博士、科学の長い歴史の中におきた数々のセレンディピティを具体的に教えていただき、ありがとうございました。今後の博士のご活躍とご健康を願っています。


関連ページ:

グラショー博士のノーベル物理学賞記念講演(PDF)
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/1979/glashow-lecture.pdf

グラショー博士のHP(ボストン大学)
http://physics.bu.edu/people/show/47


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Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版がiPhone/iPadアプリとして発売!

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フランス語上級者そしてフランス人)にはとてもうれしいお知らせである。

あの分厚い辞書を持ち歩かなくてすむことになった。いや、3000ページ近くある辞書を持ち歩いていた人はさすがにいないだろう。

だから「あの分厚い辞書を持ち歩けるようになった!」と言うのが正しい。

この辞書はフランス人にとっての広辞苑。しかも発売以来毎年改訂されている。さすが言葉を大事にしているお国柄。

発売以来、長きに渡り分厚い紙の本しか売られていなかった。2880ページの巨大な辞書である。今年5月に発売された書籍版はこの記事で紹介していた。

発売情報: Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3e26912b99683e9158557cccfab8c177


値段の高い書籍版が売れなくなるから電子版は出さない方針なのだろうと思い、そろそろ紙の本を注文しようとしていたところ、ブログの読者の方からコメント欄を通じてこのアプリのことを教えてもらった。バージョン3.0が発売されたのは4日前の8月27日。

定価4100円のところ、9月末までは特価の3800円で購入できる。次のアイコンをクリックすると辞書の詳細や購入画面が開くようにしておいた。iPhone/iPadどちらでも使える。(両方で使うときも1度買えばよい。)

Dictionnaire Le Petit Robert de la langue francaise par Diagonal


Dictionnaire Le Robert(オフィシャルサイト)
http://www.lerobert.com/


それでも高いという方には2015年9月にはiPhone/iPad向けに販売されている「Dictionnaire Le Robert Mobile : 4 en 1」という720円のアプリがよいだろう。見出し語25万語。ただし元になっているのは2015年の書籍版だ。


2017年版アプリの辞書とバージョン3.0の詳細は以下のとおり。この辞書を使う予定の方ならば読めるはずだ。

辞書についての説明

Toute la richesse du Petit Robert à portée de main dans une toute nouvelle version !

La référence de la langue française avec plus de 300 000 mots et sens, 150 000 synonymes et contraires, 35 000 citations, 75 000 étymologies, de nombreux compléments éditoriaux (datations, exemples, contraires, citations, conjugaisons, mots prononcés, etc.).
Son interface conviviale, sa navigation optimisée et son puissant moteur de recherche en font un outil indispensable au quotidien, consultable à tout moment sans connexion internet.

Cette nouvelle version apporte de nombreuses nouveautés, parmi lesquelles :
• une toute nouvelle interface, désormais compatible iPad et iPhone
• plusieurs centaines de nouveaux mots, incluant ceux du millésime 2017
• compatibilité « multitfonctions » sur iPad pour utiliser et lire votre dictionnaire en parallèle d’une autre application
• prononciation des entrées du dictionnaire
• possibilité d’imprimer les articles consultés
• optimisations techniques avec les dernières versions d’iOS

Quelques astuces d’utilisation :
• Recherche : tapez les premiers caractères du mot ou entrez-le comme il se prononce : l’application saura le reconnaître
• Recherche avec le presse-papier : activez-la grâce à l’icône présente à gauche du champ de recherche sur le menu d’accueil
• Navigation : cliquez sur n’importe quel mot présent à l’écran pour en obtenir sa définition
• Taille des caractères : réglez-la à tout moment pour profiter d’un confort optimal de lecture
• Historique : vos articles consultés sont automatiquement mémorisés
• Favoris : ajoutez/supprimez un mot de vos favoris grâce à l’étoile présente à droite du mot affiché
• Impression : sélectionnez-la grâce à l’icône « imprimante » présente à droite du mot affiché
• Prononciation : cliquez sur l’icône « haut-parleur » présente à côté des entrées de chaque article
• Multitâche : activez cette fonctionnalité sur iPad dès iOS 9 sur les iPad compatibles. En utilisant une application (Pages, Mail, Safari…), effectuez un balayage vers la gauche, depuis la partie droite de l’écran, pour accéder à votre dictionnaire Le Petit Robert de la langue française.

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Contactez-nous sur supportiphone@prolexis.com en indiquant vos coordonnées, le type d’appareil utilisé et votre message. Merci d’avance.


バージョン 3.0 の新機能

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Cette nouvelle version apporte de nombreuses nouveautés, parmi lesquelles :
• Une toute nouvelle interface, désormais compatible iPad et iPhone
• Plusieurs centaines de nouveaux mots, incluant ceux du millésime 2017
• Compatibilité « multitâche » sur iPad pour utiliser et lire votre dictionnaire en parallèle d’une autre application
• Prononciations des entrées du dictionnaire
• Possibilité d’imprimer les articles consultés
• Optimisations techniques avec les dernières versions d’iOS

Merci à tous pour votre patience, votre confiance et vos précieux retours qui nous ont permis de vous offrir cette mise à jour.
Si vous rencontrez une difficulté avec cette application ou si vous souhaitez nous faire part d’une remarque, contactez-nous sur supportiphone@prolexis.com en indiquant vos coordonnées, le type d’appareil utilisé et votre message.
Si vous êtes satisfait par cette application, n’hésitez-pas à le faire savoir en déposant un avis pour cette application sur l’App Store, cela nous aide et nous motive !


関連記事:

発売情報: Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3e26912b99683e9158557cccfab8c177

発売情報:カシオ電子辞書 XD-Y7200(2016年フランス語モデル)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c669bb0fc557fcc81017d3323ecbb5e8

小学館ロベール仏和大辞典(iPhone / iPad アプリ)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/02af8bb1e929b8f415f7efc32a92bd56

ロワイヤル仏和中辞典(辞書談義)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aed33d08239da123dcc66c5ec08f0bc7

発売情報: フランス語版「ファインマン物理学」の新版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf630deb00e6c315897d6f47ba3dd5a


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数学する精神―正しさの創造、美しさの発見: 加藤文元

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数学する精神―正しさの創造、美しさの発見:加藤文元」(Kindle版

内容紹介:
数学における「正しさ」とは何だろうか。数学の公式や証明と言えば絶対的に正しいもので、揺るぎない「神の知」だと思っている人も少なくないだろう。しかし数学を創ったのは紛れもなく人間であり、そうである以上、究極的には仮説的で暫定的であることを免れ得ない。ならば、多くの人が信じる「真の正しさ」や「美しさ」とは、数学という営みにおいてどんな意味を持つのか。拡がり続ける豊饒な数学の世界への招待。
2007年9月刊行、264ページ。

著者について:
加藤文元(かとうふみはる)
ホームページ: http://www.math.titech.ac.jp/~bungen/index-j.html
Twitter: @FumiharuKato
1968年生まれ。1997年京都大学大学院理学研究科数学専攻博士課程修了。熊本大学大学院自然科学研究科数学系教授。現在は東京工業大学理学院数学科系教授。専攻は代数幾何学・数論幾何学。著書『ガロア—天才数学者の生涯』『物語 数学の歴史—正しさへの挑戦』『数学する精神—正しさの創造、美しさの発見』(以上、中公新書)『数学の想像力―正しさの深層に何があるのか』(筑摩選書)など。


理数系書籍のレビュー記事は本書で316冊目。

加藤先生の著書は数年前から読みたいと思っていたのだが、ようやく読むことができた。6月には「現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎リーマン -リーマン予想のすべて-」の中の「討議」に参加されている加藤先生のリーマンの業績を読み、ますますその思いを強くしていた。

そして7月下旬と8月始めの2回に分けて行われた朝日カルチャーセンター新宿教室での加藤先生の講座に参加したかったのだが、入院中の家族の容態が急変してしまったため、申し込めなかった。(幸い奇跡的な回復を見せて、8月13日に無事退院することができた。)

せめて著書だけでも読んでおこうと通勤電車で読めるKindle本をということで、本書を選んだのである。加藤先生がお書きになった本の中ではいちばん古いものだと思う。


大学で数学を専攻していたし、「解析概論」も読破して理解している。また数学系の教養書も多数読んでいる。一般向けに書かれた数学書であっても面白い話、興味をそそる話はたくさんあり、今ではたいていの話は知っていて「またこの話か。」と思うことがよくあるものだ。とは言っても面白い話は好きなので、いつも貪欲に数学書を探し回り、新刊本は必ずチェックしている。

だから加藤先生には失礼だが書店で目次だけ読んだとき、あまり面白い本には思えなかった。ゼノンのパラドックスや数学的帰納法、二項展開、組み合わせの数、パスカルの三角形、二項定理など知っていることばかり並んでいたからだ。高校数学やり直し系の本ではないが、僕には易しすぎるのだろう。

しかし(面白さを期待せずに)読んでみると僕の予想は「良い意味で」全く外れてしまった。高校数学で学ぶ事柄だけで、こんなに奥深く、魅力的で不思議な数学の世界を引き出してくれるとは思いもしなかった。数学の教養書を数多く読んできた僕でも知らないことが(特に後半)書かれていた。数学の奥深さや魅力は大学以上の数学でしか味わえないと思っていたから、僕の常識は覆された。

章立ては次とおりだ。これだけではあまり内容が伝わらないから、詳細目次は記事の最後に書いておく。

はじめに

第1部:人間と数学

第1章:計算できる記号
第2章:ウサギとカメ
第3章:ビールのパラドックス
第4章:コンピュータと人間
間奏曲:数学の美しさ
トピックス:ベルンハルト・リーマン

第2部:記号と意味

第5章:組み合せの数
第6章:パスカルの半平面
第7章:ドッペルゲンガー
第8章:倒錯した数


第3章あたりまでは知っていることばかり。僕も同じように考えていたことばかりなので、普通に読み進んだ。初心者向けの本にもかかわらず「硬い」文章だ。先生は実直で誠実な方なのだなと思った。第1部の終わりのほうの「間奏曲:数学の美しさ」、「トピックス:ベルンハルト・リーマン」あたりから面白くなってきた。

第2部から山場が始まる。本書では「三位一体」という言葉であらわされている事柄なのだが、異なる3つの分野に不思議なつながりがあるということを意味している。昨年放送された「NHK数学ミステリー白熱教室」では「数論」、「調和解析」、「幾何学」(、そして「物理学」)の間の不思議なつながり(ラングランズ・プログラム=数学の大統一)が解説されたが、これは大学以上の数学の世界の話だ。

本書ではそのミニチュア版とでもいうべきつながりが「三位一体」として紹介される。



パスカルの三角形


二項展開(係数は組み合わせの数に等しい)


組み合わせの数


この3つの世界に対応関係があることは高校数学でも学ぶので、それほど目新しいことではない。

ところがである。この後、加藤先生は「パスカルの三角形の拡張」を2つの意味で行なってしまうのだ。拡張されたパスカルの三角形を本書では「パスカルの半平面」と呼んでいる。そうして拡張されたパスカルの三角形に対応する形で二項展開や組み合わせの数の世界にも新たな世界があらわれる。。。2つめの意味での拡張であらわれる世界を加藤先生は「ドッペルゲンガー」だとして解説されている。

新たな世界で私たちが見るドッペルゲンガーは思いがけない数や数式たちだ。それらは深く隠れたところまで拡がり、互いつながっている。私たちは生活の中で数を数えたり、量を測ったり、計算したりしているわけだが、私たちには別々のものに見えるそれらの数や数式は海面の上のところどころに突き出た氷山の一角のようなもので、本体は海面の下に深く広がり、つながっているのだと思い知らされる。

ここはとても興味深く、ワクワクすることなのでネタバレしないでおくことにしよう。ぜひ本書を読んで「驚いて」ほしい。


そしてもうひとつ印象に残ったのが「無限回の足し算の不思議」についてだ。「大栗先生の超弦理論入門」で次のような不思議な計算式が紹介されていたことは、多くの方がご存知だろう。これは1749年に大数学者オイラーが発表した式だ。



この式の証明を厳密に行うためには複素関数論で学ぶ解析接続という考え方が必要になる。この記事では高校レベルの厳密さを欠いた証明と、大学レベルの厳密な証明のページを紹介しておこう。

「1+2+3+4+…=-1/12」をわかったつもりになる
(高校数学レベルの解法、このページの「無理やり-1/12を導出する方法」という箇所)
http://nakaken88.com/2014/12/08/080818

なぜゼータ関数の自然数の和は無限大に発散しないのか?
(大学数学レベルの解法)
http://www.geocities.jp/x_seek/Euler.htm

本書には大栗先生の本やこの式、そして解析接続のことが書かれているわけではない。たまたま僕がこの記事に引用しただけである。


本書でとりあげられているのは、オイラーが発見した上の式はなく次の計算式だ。



これもまた不思議な式である。高校数学で学ぶ「等比級数の和の公式」を当てはめることができるのだが、正の値を足し続けて負になるはずがない。

等比級数の和の公式



それに高校では公比 r の絶対値が1より小さいときに和の値は収束すると習った。この計算式の場合、公比 r は 10 である。すると右辺は確かに -1/9 になる。しかしこのような条件での計算に意味があるのだろうか?左辺は正の値だけなのだし。

「いったいどうして?」という謎は解析接続を使って解決することもできるが、本書ではずっと易しい手順で証明が与えられている。これもネタバレになるので、ここに書くのはやめておこう。

左辺の答を無限大とするのも正解だし、-1/12、-1/9とするのももうひとつの正解だ。後者を感覚的に受け入れられないのは、私たちが持っている数や計算の概念が数学の深いところにある本質に達していないことを象徴しているのだと思う。


2つの興味深い例を紹介したが、この2つ目の例も実を言うと1番目の例、つまり「パスカルの半平面」や「拡張版の二項定理」、「拡張版の組み合わせの数」と整合的なつながりを持つ形で成り立っているのだ。「ああ、素晴らしい!」と僕は感動してしまうわけである。


こうして僕が面白いところだけを切り取って紹介すると数学の雑学本のような印象を与えてしまうのだが、実際は具体例を積み上げていきながら、数学の思想の深いところでつながっている数の認識、記号表現などを解説し、「人間と数学の関わりの意味とは?」という深淵なテーマにまで掘り下げている本なのだ。加藤先生は次のようにお書きになっている。

数学における「正しさ」とは何だろうか。数学の公式や証明と言えば絶対的に正しいもので、揺るぎない「神の知」だと思っている人も少なくないだろう。しかし数学を創ったのは紛れもなく人間であり、そうである以上、究極的には仮説的で暫定的であることを免れ得ない。ならば、多くの人が信じる「真の正しさ」や「美しさ」とは、数学という営みにおいてどんな意味を持つのか。拡がり続ける豊饒な数学の世界への招待。


高校数学で学ぶ内容だけで、これほど深い世界を見せてくれる本は僕にとっても初めてである。これが本書の最大の魅力だ。

加藤先生のご専門である代数幾何学に通じる「p進数」のことは最終章で取り上げられているが、この部分は説明が足りないと感じた。

「p進数」については、9月20日に発売される次の本をお読みになるとよいだろう。初等整数論への入門書である。目次は日本評論社HPのこのページに掲載されている。

天に向かって続く数:加藤文元、中井保行




その他、加藤先生がお書きになった本は、以下のリンクからご覧いただだきたい。

加藤先生の著書: Amazonで検索


お知らせ:

今日紹介した本の内容をテーマにした加藤先生の講座が10月から月1回(計6回)行われるそうだ。東京近郊で興味のある方はどうぞ。

朝日カルチャーセンター(新宿教室): 一般会員 ユース学生会員 
【新設】数学・人間・記号
「数学する精神」への招待

講師:東京工業大学教授 加藤文元
講座内容:
数学はとても抽象的な学問で、それだけに非人間的な印象を受けることもあるでしょう。しかし、数学も人間がつくったものであり、それだけに人間の人間たるゆえんがいたるところに見出せる学問です。数学を学ぶことは人間を学ぶことです。また他方、数学の高い抽象性の根幹には、広大な「記号」の沃野があります。記号に意味を吹き込むのは人間ですが、記号の天真爛漫な振る舞いから思いがけない数学が生まれることもあります。数学・人間、そして記号という三者の間の弁証法から様々に豊かな数学が生まれる過程を、拙著『数学する精神』を通して見ていきたいと思います。(講師・記)
                             
<講座スケジュール>
110月11日人間と数学(その1) 「アキレスと亀」を巡って
211月 8日人間と数学(その2) 数学的帰納法の認識論
312月13日人間と数学(その3) パスカルの半平面

日時・期間:第2週 火曜 19:00-20:30 10/11~12/13 3回


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数学する精神―正しさの創造、美しさの発見:加藤文元」(Kindle版



はじめに
- 人間と数学 記号と意味

第1部:人間と数学

第1章:計算できる記号
- 自然の中の数
- 数の二面性
- 「見よ!」
- 解説:ユークリッド幾何学
- 代数学
- 0の発見
- 演算規則
- 二項展開
- 計算できる記号
- 人間と数学
トピックス:数学の記号化と公理的数学

第2章:ウサギとカメ
- ゼノンのパラドックス
- 勝負の判定は?
- 等比級数の和
- 「連続」の難しさ
- 解説:有理数と実数
- 「モデル」としての実数論
- 実数論の「仮説的」側面
- 実数論の二つのポイント
トピックス:非ユークリッド幾何学

第3章:ビールのパラドックス
- 何杯飲めるか
- 積のべきとべきの積
- どこまでできるか
- ビールのパラドックス
- 数学的帰納法
- 常識的な見方
- 「公理系」の中の数学的帰納法
- 集合論の中の数学的帰納法
トピックス:集合論と失楽園

第4章:コンピュータと人間
- 我思う故に我あり
- メタな自分
- 不完全性とコギト
- パスカルの三角形
- 二項展開
- ずらし算
- 二項定理
- パターンの比較
- ちょっと歴史

間奏曲:数学の美しさ
トピックス:ベルンハルト・リーマン

第2部:記号と意味

第5章:組み合せの数
- テストの正解率
- 10個から3個選ぶ
- コンビネーション
- 計算例
- 禅問答
- 三角数と平方数
- コンビネーションの「パターン」
- 三位一体
トピックス:リーマンの三位一体

第6章:パスカルの半平面
- 二項定理の「ホラ」
- 失われた上半分
- パスカルの半平面
- ライプニッツ記号
- 二項定理との整合性
- 等比級数の和ふたたび
- 無限ずらし算
- 負のべきも許した二項定理

第7章:ドッペルゲンガー
- 無理数の発見
- 解説:√2の無理性
- ドッペルゲンガーの怪
- ライプニッツ記号に分数を入れる
- 分数べきの計算
- √2の計算
トピックス:円周率の計算
- 圧倒する影

第8章:倒錯した数
- 倒錯した世界
- 禁則破り
- 10進展開
- 状況証拠
- 仮説的な「距離」の概念
- 10進距離による「近似」
- p進数
- 「猫」の目

エピローグ:数の系譜
あとがき
主要参考文献

寺川奈津美の気象講座 秋の気象と台風(朝日カルチャーセンター)

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寺川奈津美の気象講座(朝日カルチャーセンター): 詳細

講師紹介:
寺川奈津美(てらかわなつみ)
ホームページ(個人):https://sites.google.com/site/natumikann541/
Twitter: @natumikann541
気象予報士、気象キャスター。
1983年、山口県下関市生まれ。慶応義塾大学理工学部応用化学科卒業。第5回矢上祭で行われた理系美人コンテスト『ミス矢上』で初代グランプリを獲得。塾講師を経て、2008年よりNHK鳥取放送局のキャスターを務める。同年、気象予報士資格を取得。
2011年4月より『NHKニュース7』の気象情報を担当。2016年4月よりフジテレビ「直撃LIVEグッディ!」お天気コーナー担当。
【新・お天気キャスター!】寺川奈津美さんがスタジオに初登場!ブログ班が直撃!
http://blog.fujitv.co.jp/goody/E20160404001.html
テラカワのお天気マニア
http://blog.fujitv.co.jp/goody/C4713.html




9月10日の土曜は朝日カルチャーセンター新宿教室で、寺川先生の気象講座を受講してきた。昨年10月以来で2度目である。超人気講座なので申し込みは6月に済ませておいた。

講座の開始は午後1時。そして午前11時から整理券が配られるという。整理券にしても並ぶわけだから、午前10時半に現地着。すでに数名の受講者が来ていて僕の整理券は6番だった。おかげで最前列に着席。僕から見ると寺川先生の右顔が見えることになる。昨年と同じ71番教室は満員御礼。140名ほどの受講者がいることになる。

時間になり寺川先生と朝日カルチャーセンターの担当スタッフが登壇。受講者から自然に拍手がおきた。寺川先生の紹介の後、講座が始まった。

今回は白の半袖のブラウスと黒(または紺色)のスカート姿。普段着なのかテレビで拝見する服装よりラフな感じ。さわやかな印象でカルピスのCMがぴったり似合いそうな清涼感を身に着けている。

ご注意: 寺川先生は写真や図版をスクリーンに映して解説されていた、以下の文章で用語やニュース記事に対してリンクをつけてあるが、これらは講座で紹介されたものではない。講座では写真撮影、録音が禁止されていたので、僕が載せられない写真や解説を補完するためにつけたリンクである。


自己紹介、仕事のこと

PowerPointで作成した資料をスクリーンに映しながらの講義である。最初の20分はご自身のことをお話しされた。寺川先生は昨年の3月までNHKの夜7時のニュースの気象担当をされていて、4月からフジテレビの「直撃LIVEグッディ!」の「テラカワのお天気マニア」という気象予報コーナーで活躍されている。寺川先生が登場するのは月曜~金曜の午後3時45分頃の3分間ほどだ。(気象災害がおきたときは特別に他の時間枠がとられる。)

勤務時間中なので生放送は見れないが、ときどき録画して見ている。お堅いNHKから民放局の自由な雰囲気の番組に移ったことで、本来の自分が出せる環境になったとおっしゃっていた。番組からは「NHKのイメージを捨ててください。」と、まず言われたそうだ。

環境の変化は番組以外のところにもあるという。NHKでは曜日ごとに気象担当が決まっていて、全員が集まって順番にプレゼンをするのだという。そこで先輩(NHKの斉田気象予報士)から厳しいチェックや突っ込みが入る。放送とは違うところでも緊張感があったそうだ。そして、周りにはいつも気象予報士の同僚や先輩がいるから、何かわからないことがでてきてもすぐ聞ける環境だったという。

その点、いまの職場は正反対。フジテレビには天達さんという気象予報士の先輩がいるが、寺川先生のそばにいつもいるわけではない。ふだんはほとんど寺川先生だけが気象の専門家としている状況なのだそうだ。番組スタッフや周囲の人は気象については素人だから、寺川先生は絶対に間違えて伝えてはならない。ここがNHKとずいぶん違うところである。そして仕事は毎日とても忙しく、資料を素早く読み取って解析しないと間に合わない。

視聴者の側にも大きな変化があった。僕に(そして大勢いる寺川先生ファン)とって寺川先生がフジテレビで仕事をされるようになってうれしいのは、先生の可愛らしい顔が画面に大写しになる回数が大幅に増えたことだろう。→ これは講座で話されたこととは関係ない。

気象キャスターになる前、寺川先生は2008年からNHK鳥取放送局でキャスターをしていた。そして将来はディレクターになりたかったそうだ。ところが2010年の暮れに鳥取は大雪の災害に見舞われてしまう。すでに気象予報士の資格はとっていたのに、気象については何も伝えられない自分のことが悔しく、もっと役に立ちたいと思ったという。それが気象キャスターを目指す第一歩だった。

鳥取の国道、大雪で車1000台立ち往生 自衛隊現地へ(朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/kanpa/OSK201012310102.html


今年の台風

ご存知のとおり今年は夏から上陸する台風がとても多く、つい先日も台風10号が東北に甚大な被害をもたらした。

台風発生件数:7月=4個、8月=7個、9月=2個

そのうち8月には4個が上陸した。これは1962年(僕が生まれた年だ。)以来だそうである。台風の年間発生件数は24.5個だそうなので、今日以降も台風はまだまだ発生するということだ。

今年の夏の気象の特徴は、例年太平洋側から日本に張り出してくる太平洋高気圧が南北に2つに割れ、日本列島が気圧の谷に位置していたこと、そしてその配置が停滞していたことにあるという。気圧の谷に沿って台風が進みやく、高い温度の海水によって水分を吸収した台風が日本に多量の降水をもたらした。

太平洋高気圧が2つに割れた理由は、偏西風の蛇行によって説明されるが、なぜ停滞が続いたかの理由はわかっていないそうである。チベット高気圧は大陸にある高気圧で、2つに割れた東側の高気圧とは別である。

台風は赤道近くの上昇気流によって生まれる。海水温の上昇が台風発生の原因だ。インド洋の海水温が高いと、日本では雨雲が発生しやすい。

インド洋熱帯域が高温時の世界の天候の特徴
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/tenkou/sekai5.html

そしてエルニーニョがラニャーニャに変わると、その年は台風が発生しにくい。

エルニーニョ/ラニーニャ現象とは
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html

エルニーニョ/ラニーニャ現象と台風の関係
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/faq8.html

今年は8月になって日本に南の海水温が上がり始めた。その海域には左巻きに渦を巻く「モンスーンジャイア」がある。高い海水温による上昇気流で発生した台風が渦を巻く原因は「MJO:上空の渦移流」あるいは「モンスーンジャイア(Mon- soon Gyre)」と考えられている。


台風の基礎知識

発生地域によって台風(日本の南)、ハリケーン(日付変更線より東)、サイクロン(インド洋)と呼び方が違う。

最大風速17メートル/秒を台風とする。

主にマリアナ近海で発生。このエリアが「台風銀座」である。(ナントカ銀座って昭和っぽい言い方だと僕は思った。)

日本に来る台風が発生するのは赤道付近、熱帯収束帯であり、海水温27℃以上で発達する。

予報円は台風が70パーセントの確率で進む領域のこと。時間経過に従い円が大きくなるので台風の大きさだと勘違いする人が多いから注意してほしい!。暴風域は風速25メートル/秒以上の領域。

台風自体は北に移動する傾向を少し持っているが、台風の移動は偏西風など「台風を押し流す風」によるもの。偏西風が南に下がると台風は日本海側に、下がらないと太平洋側に進む。

台風12号は2つの高気圧の谷間の「がら空き状態のエリア」で停滞してしまった。


過去の台風(2016年の台風10号)

東北、北海道に大きな被害をもたらした。

台風10号 グループホーム襲った濁流で9人死亡(FNNニュース)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00334909.html

講座では話されなかったことだが2009年に山口県を襲った豪雨でも高齢者施設が土砂災害に見舞われた。この災害で僕の中学3年のときの担任の先生が犠牲になっていた。今年も同じようなことがおきてしまったのだなと僕は胸を痛めていた。

雨のピークではなく、災害は雨のピークの数時間後に起きていた。災害が起きた時点では雨は止んでいる。九州北部での豪雨災害のときにも同じことがいえる。寺川先生はこのタイムラグのことを強調されていた。災害がおきるかどうかのポイントは「上流でどれだけ降るか」である。

避難勧告や避難指示を待つのではなく、自ら動くのが大切だと寺川先生は強調していた。

僕の感想: 大震災などは自分も揺れを感じるからヤバイと思って避難の決断がしやすいが、豪雨による災害は決断をするのがほとんど無理だと思った。たいていの人にとって豪雨による災害は人生初の経験となる。これまでの人生で大丈夫だったのだから、今回も大丈夫だろうという固定観念がしみついているからだ。人間の心理は「安心、安全だと思いたい。」になりがちだ。20年に一度くらいの間隔で豪雨による災害が繰り返されているのならば避難の決断もしやすいだろう。それでも雨が止んだ後に避難を決断するというのは、よほど知識がないと無理だ。僕が住んでいる所は神田川から遠く、標高が高いので安全だが、このことを知ったのはよい教訓になった。川の近くに住んでいる友人、知人がいたら伝えておこう。


過去の台風(2011年の台風12号)

2011年9月に紀伊半島を襲った台風である。「深層崩壊」という言葉を聞けば「あれのことか!」と思い出す方が多いだろう。

2011年9月 台風12号豪雨災害(紀伊半島)に関する被災地撮影
http://www.pasco.co.jp/disaster_info/110905/

このとき2000ミリの雨が降ったという。ただ、気象情報で伝えられるこの「~ミリの雨量」という表現には注意が必要だと寺川先生。それは地域によって豪雨に対する「耐性」が違うからだそうだ。比較的豪雨に強い四国・紀伊半島では大丈夫な500ミリの雨であっても、豪雨に弱い北海道などで同じ量の雨が降ると大パニックになるからだ。だから自分の住んでいる地域の特性を考慮に入れて避難計画、決断をしなければならない。

僕の感想:この年に「深層崩壊」の様子を報道やNHKの番組のCGで目の当たりにしたときはショックを受けた。ときどきニュースで見る「土砂崩れ」を予測するのさえ困難なのに、一生に一度起きるかどうかの深層崩壊を予測できる人などいないと思う。ああ、やっぱり避難の決断を下すのは難しいことだ。報道する側にとっても気象の知識と土地利用や地勢、地質学の知識の両方が求められる。それぞれの専門家は他の分野の知識をほとんど持ち合わせていないから、協力して災害予測をするしくみが必要だと思った。


過去の台風(2013年の台風18号)

京都や三重に初の特別警報が出された台風である。

台風第18号による大雨  平成25(2013)年9月15日~9月16日
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2013/20130915/20130915.html

災害がおきた地域は台風が直撃するコースではなかった。特別警報が出たにもかかわらず住民は油断していて、それが被害拡大につながった。

特別警報は警報よりもずっと危険なレベルであり、特別警報がでた時点ですでに被害がでているかもしれない、完全に「アウト」の状況なのです。寺川先生は強調されていた。

夜間に避難すること、そして状況によっては避難中に災害に巻き込まれることもある。そのようなときには「垂直避難」をするのが望ましい。家の2階、3階などに避難するという意味だ。

この台風18号のときは台風と前線が重なって豪雨の地域を拡大した。日本海側からも湿った空気が前線帯に流入していた。上層発散場、竜巻が発生していた。直撃するコースにはずれている地域でも豪雨になったのはそのためである。


2015年9月の関東東北豪雨

「線状降水帯」という言葉で記憶されている豪雨である。茨城県常総市に大被害をもたらした。

関東・東北の記録的豪雨を命名 気象庁
http://www.tenki.jp/forecaster/diary/deskpart/2015/09/18/32131.html


今年の秋の台風

日曜以降、秋雨前線が日本列島にかかることになる。秋雨前線は太平洋側の「夏の空気」と日本海側の「秋の空気」の間にある前線のこと。

【テラカワのお天気マニア】気になる週末のお天気は?
http://blog.fujitv.co.jp/goody/E20160909002.html

今年の秋も台風はやってくる。台風の予測については気象予報士は自分の見解を述べてはならないことになっている。気象庁の発表どおりに伝えなければならない。それ以外の気象については比較的自由に自分の考えを述べることができる。


僕の感想: 台風については気象庁の予報どおり伝えるという原則があるにせよ、どのように伝えるかというのはとても大事なことだと思った。それはもちろん人命を左右することだからだ。正しく伝えること=具体的に細かく伝えることであり、気象予報を聞く側にも伝えられることを正確に理解するための知識が求められると思った。また気象災害は地震災害に比べて被害地域が限定される。自分のところだけは大丈夫と思い込みがちな(僕も含めて)人たちに、注意喚起を促すことの難しさ、限界を痛感した。やはり「自分の身は自分で守る」ということが、まず原則になるのだろう。でも台風や秋雨前線の話だけでなく、変わりやすい秋の天気や秋晴れの話も聞きたかったなとちょっぴり思った。


質疑応答

メモを取り忘れていたのでほとんど忘れてしまったのだが、自分が質問したことだけは覚えているので書いておこう。

僕の質問:台風10号がUターンする前の放送で、模型とドライヤーを使って台風の進路予想を説明されていましたが、あの模型はいつ頃作られたのでしょうか?(放送では、大陸から日本列島に南下する寒冷渦に見立てたアクリル製の輪の中で台風に見立てた円柱形の物体をドライヤーの風で吹き飛ばして、輪に沿って動かしていた。)

寺川先生の回答:うれしそうに「ご覧になっていただけたのですね!」とおっしゃいました。あの説明でわかりましたか?と僕に聞かれたので「あ、はい。わかりました。」と答えたのだが一呼吸おいて返事したものだから「ちょっと間がありましたね。(笑)」と寺川先生。いや、本当に理解できてたのだけど、ドライヤーの風が思うように台風の模型をころがしてくれなかったシーンを思い出してたのから反応するのが遅くなっただけでして。。。そして寺川先生は受講生に向かって「あの模型いくらかかったと思います?」と質問。僕は5千円くらいで作れると思ったわけだけだが、他の方からは2万円とか5万円とかいろいろ。。。実は10万円もかかっていたそうだ。模型は放送の前日に出来上がったのだという。

だからあの模型を使った説明は絶対にうまくやらなければと、寺川先生は躍起になっていたわけかと納得。そう思ってシーンを思い返してみると、確かに何度も「しつこく」実験を繰り返されていた。

【テラカワのお天気マニア】迷走を続ける台風10号を、寺川気象予報士が徹底解説!
http://blog.fujitv.co.jp/goody/E20160826001.html


著書の販売、サイン会&握手会

講座の後は著書の販売、サイン会&握手会が行われた。昨年の講座は著書が発売される直前だったので何もなく解散。だから今回は受講生にとってうれしい催しだ。もちろん長蛇の列で、僕も本にサイン(と握手)をいただいた。本名を書いてもらおうかと思ったが、このブログ記事に写真を載せることを思いついてニックネームの「とねさん」を書いていただくことにした。受講者ひとりずつ丁寧にお話しされているのが印象的だった。




台風について学ぶのはタイミングとしてとてもよかったと思います。災害や避難など重い話題が多かったですが、命を守るために大切なことを学べました。寺川先生ありがとうございました!


寺川先生の著書はこちら。

気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる」(感想記事


内容紹介
人気の気象キャスターが初めて語る
気象予報士の仕事、そしてプライベート

NHK 『ニュース7』の気象キャスター(平日担当)として活躍する寺川奈津美さん。 6回目の受験でようやく合格した気象予報士試験の苦労談から、気象キャスターの仕事の魅力、プライベートまでを赤裸々に語ります。
寺川奈津美さんは慶応大学理工学部卒の、いわゆる“リケジョ"。卒業後、いったんは一般企業に就職しますが、仕事になじめず1年で退社。その後、故郷・山口県下関市に戻り、アルバイトをしながら気象予報士の試験勉強に専念するが…。
これから「気象予報士」を目指す人はもちろん、目標や夢を諦めずに追いかける人たちにエールを贈るエッセイ集です。
「自分には認めてもらえるものが何もない」

ダメダメな自分に終止符を打つべく
気象予報士試験に6度チャレンジ。

『とにかく自分に自信がほしかったのです。
難関といわれる資格を取れば、
「頑張った証」をもらえる気がしました。
ダメダメな自分に終止符を打ちたかった』


会場を後にして

2012年から受講してきた大栗先生の物理学講座のときは同じ講座の常連仲間がいるので講座の後にオフ会をするのだが、今回の講座では知り合いが誰も参加していない。そのまま地元に戻った。

半年ほど前に知り合いからもらったクオカードが財布の中にあるのを見つけたので、コクーンタワーにある書店に立ち寄った。買ったのは幾何学系の2冊だ。どちらも中古本の価格は下がっておらず、新品を買っても同じだからクオカードのメリットが活かせる。このところ2冊読んで3冊買うペースなので「とねの本棚」の積読本は増える一方なのだが、この2冊は本当に読みたい本なので自分に甘くなる。いずれ読んで紹介記事を書くことにしよう。

楽しもう射影平面 目で見る組合せトポロジーと射影幾何学:大田春外
微分幾何学:今野宏



関連記事:

気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bd5b4615a4468919445a010183866934

寺川奈津美の気象講座(朝日カルチャーセンター)- 2015年10月
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/960f1e03a34fd2e3727b65252ea96159

知識ゼロからの異常気象入門:斉田季実治
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0294a67d1755964cb572b65f029624e4


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ラジオ談義

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このところラジオの良さを見直している。毎晩1時間半から2時間のウォーキングをしているのだが、ただ歩いているだけではもったいない。無料のラジオアプリを使って英語やフランス語のニュースを聞きながら歩くことにしてみた。バッテリー内蔵のスマホケースを使っているからバッテリー切れの心配もない。

かなり高いリスニング・スキルを要求されるが、同じニュースが時間を置いて何度も繰り返されるから聞いているうちに意味がつかめるようになる。7割理解できれば良しというところ。

お勧めなのが掲載画像の2つ。どちらもiPhone用、Androidスマホ用が入手できる。


English Radio



English Radio
 

僕が学生の頃に英語放送を聞きたければAMラジオのFEN (Far East Network)しか選択肢がなかった。今ではAFN (American Forces Network)Pacificと名前を変えて放送が続いている。2013年12月からはスマホアプリでも聞けるようになった。

AFN Pacific
 

またNHKが国際放送として多言語で行っているNHK Worldのラジオ版はNHK WORLD RADIO JAPANアプリで聞くことができる。過去の放送分がクリップとして聞けるのがよい。

NHK WORLD RADIO JAPAN
 


Radio France

このアプリはチャンネルがたくさんあり、ユーザーの評価が高い。



Radio France
 


日本のラジオ



定番の2つもインストールしておこう。NHKの語学講座も聞けるし、ラジオアプリなら電波の届かない地下鉄でも通勤ラジオとして使える。



らじる★らじる(NHKネットラジオ)
 




Radiko.jp
 


ポータブルラジオ

昭和のノスタルジックなサウンドが恋しくなったら、ポータブルラジオがいい。雑音がないのが当たり前になっているから、こういう音がかえって新鮮に聞こえるのだ。「電波」を感じたいあなたにお勧めしたい。

また、こういうラジオは防災用品でもある。インターネットがつながりにくい状況での情報収集には欠かせない。

ちなみに僕はこれを使っている。安物だがコンパクトで薄型。カバンに入れて持ち歩いている。

オーム電機 AudioComm AM/FM DSPポケットラジオ(ブラック)(ピンク)(ホワイト



ポータブルラジオ: Amazonで検索
予約録音ラジオ: Amazonで検索
お風呂ラジオ: Amazonで検索
手回し充電ラジオ: Amazonで検索
太陽光充電ラジオ: Amazonで検索


そしてもっとレトロなサウンドをお求めの方には、これしかないだろう。

真空管ラジオ: ヤフオクで検索


関連ページ:

ラジオ番組表: AM FM 
ラジオドラマ: NHK FMのオーディオドラマ
お勧め: 地下鉄のアリス(1978年放送のFMラジオドラマ、脚本は別役実


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部分と全体: W.K. ハイゼンベルク

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部分と全体: W.K. ハイゼンベルク

内容紹介:
本書は量子力学建設期の巨人、W・ハイゼンベルクによる『Der Teil und das Ganze』(1969) の邦訳である。訳はハイゼンベルクのもとで彼と共同研究を行っていた山崎和夫により、序文を湯川秀樹が寄せている。この豪華な顔ぶれが並ぶ本のページをめくってみると、まず内容のおもしろさに引き込まれる。題名からは難解な哲学書を思わせるが、本書はハイゼンベルクの自伝なのである。
圧巻は彼とボーア、アインシュタイン、ゾンマーフェルト、パウリ、ディラック、プランク等巨人たちとの対話である。そこではアインシュタインが「サイコロを振る神」の考え方を受け入れられず執拗に食い下がり同僚にいさめられたり、温厚な人柄で知られるボーアがシュレーディンガーと対決しついにシュレーディンガーが熱で倒れるも、ボーアはベッドの横にイスを持ち込んで議論を続けようとしたりと、そこからは巨人たちの姿を生身の人間として感じることができる。キリスト教の聖書は物語と対話によって神の教えがあらわされているが、本書では物語と対話によって物理学の巨人たちの教えがあらわされている。その言葉には重みがあり本書を開くたびに新たな発見がある。
ハイゼンベルクの着想が、物理学者との対話によって播かれ、育ち、開化する様を克明に伝え、両大戦の狂気や荒廃に満ちたドイツにあって、研究者・教師、人間、一国民として彼がいかに行動してきたかを示す。74年刊の新装版。
1999年11月刊行、403ページ。

著者について:
ヴェルナー・ハイゼンベルク: ウィキペディアの記事
1901年、ドイツのヴェルツブルグに生まれる。ミュンヘン大学でゾンマーフェルトのもと物理学を学び、コペンハーゲンでニールス・ボーア研究所に入り、さらにゲッティンゲン大学でボルンと共同研究を行い、1925年、行列力学として量子力学を創始した。1927年、不確定性原理を発見、同年ライプチヒ大学教授、多体問題の研究から進んで、1928年強磁性の本質を明らかにし、1929年にはパウリと共に場の量子論を発表。相対性量子力学をつくった。1932年、原子核が中性子と陽子からなるという理論を発表。その他、宇宙線理論、超伝導の研究などにも業績を残している。1932年ノーベル物理学賞受賞、1976年没。著書『自然科学的世界像』(1953, 1979)、『量子論の物理的基礎』(1954)、『現代物理学の自然像』(1955)、『原子核の物理』(1957)、『素粒子の統一場理論』(1966)、『現代物理学の思想』(1967)、『科学における伝統』(1977)。

訳者について:
山崎和夫(やまざき かずお)
1927年京都に生まれる。1950年京都大学理学部物理学科卒業。京都大学基礎物理学研究所助手を経て、1957年-1961年、1962年-1968年マックス・プランク物理学研究所に留学し、同研究所所員となり、ハイゼンベルク教授と素粒子の統一場理論の研究を行う。京都大学名誉教授。理学博士。訳書 『オットー・ハーン自伝』(1977)ハイゼンベルク『科学における伝統』(1978)エリザベート・ハイゼンベルク『ハイゼンベルクの追憶』(1984)ほか。


理数系書籍のレビュー記事は本書で317冊目。

量子力学の創始者のひとり、不確定性原理の発見者による自伝だ。本書のドイツ語版が出版されたのは1969年。ハイゼンベルクが68歳のときである。この名著は物理学ファンとしてもっと早いうちに読んだほうがよかったのだが、「美味しいものは後にとっておく」性格なので今さらながら手をつけたわけである。

内容は大きく2つに分けられる。ひとつは物理学者として量子力学にどのように取り組んできたか、もうひとつはドイツでの原爆研究・開発の責任者としての側面だ。後者については先月紹介した「原子爆弾 1938~1950年: ジム・バゴット」で解説されたハイゼンベルクやドイツでの原爆研究・開発のことを読んでいたから、ドイツ側の視点での見え方を知り、比較してみようという試みで読んでみた。

僕は序文を書いた湯川秀樹先生や翻訳をされた山口和夫先生のように、ハイゼンベルク先生のお世話になったことはないので忌憚のない感想を書くことができる。日記がもとになっているのかもしれないが、本書は晩年に書かれた本だ。触れたくないこともあっただろうし、周りの人への配慮から書かなかったこともあったのだと思う。書かれていることはもちろんだが、何が書かれていないか、何をぼかして書いてあるかという点も重要だ。

この記事では次の4つの項目に分けて紹介しよう。

- 物理学への関心、物理学者としての姿
- 戦争や原爆研究・開発のこと
- 戦後のこと
- 「部分と全体」というタイトルについて


物理学への関心、物理学者としての姿

ハイゼンベルクが高校生になる頃には、物理学の世界では原子の中を探求する時代が始まっていた。プランクによって量子仮説が発表され、アインシュタインは相対論だけでなく光量子仮説を発表していた。また後に師となるボーアは1913年に量子条件を提唱し「電子は原子核の周囲を回るときには、特定の軌道しかとることが出来ない」と結論している。

高校生の頃にはハイゼンベルクは才能を開花させていた。教科書にはホックと留め金のついた原子の図が載っていて、分子結合の解説がされていた。これを不自然に思ったハイゼンベルクは同級生と議論を始める。ギリシャ哲学から古典力学まで、論理的な推論を積み重ね、見ることのできない原子の姿を明らかにしようとする。そこには後に不確定性原理の発見へ結びつく着想が芽生えていた。

当時のドイツの青少年は「ヴァンダールング」と呼ばれる長距離ハイキングをしながら文化や科学、芸術などあらゆる分野について議論していたそうだ。ときには2~3日もの間野山を歩くのだ。日本語ではワンデルングで認知されている。ドイツ青少年の野外活動を率先して行おうとする「ワンダーフォーゲル」と言う活動は聞いたことがあると思う。ワンデルングはそれに似ていて野山を歩き回ることだ。

健康的だし健全だと思ったが、なかなか真似できるものではない。真面目な活動だと思う反面、そのような集団活動の中に団結精神や排他性が過度に強調されがちな当時のドイツの危うさを僕は感じた。大人になってからもハイゼンベルクはヴァンダールングをしていてボーアともたびたび議論をしながら野山を歩いていた。

高校を卒業し、ゾンマーフェルトのもとで研究生活が始まる。電子の運動の軌跡は霧箱の実験で確認できていたわけだが、原子の中での電子の軌道というものは存在するのだろうか?一緒に研究していた1歳年上のパウリと議論を闘わせる。量子条件を満たしているとすると電子はひとつの軌道からもうひとつの軌道へと瞬間的にジャンプすることになってしまう。この点をめぐって2人の間で繰り広げられる鋭く、そして建設的な議論はとても生々しい。

ハイゼンベルクは「霧箱における電子軌道の観測」がもたらす存在の問題と「量子力学をめぐる数学」がもたらす存在の問題とを、新しい理論でつなげようとした。これが有名な「ハイゼンベルクの不確定性原理」になった。

そのほか師であるボーアそしてアインシュタイン、ディラック、プランクなど量子力学の創始者たちと繰り広げられる対話・討論が本書の読みどころである。前期量子論から量子力学創成期の貴重な記録だ。他書では「解説」ですまされるところが本書では創始者たちの生々しい会話として再現されている。

25歳のハイゼンベルクが47歳のアインシュタインを説得しようと初めて議論を挑んだのは1926年の春だった。アインシュタインは納得せず翌年10月にブリュッセルで行われる第5回ソルヴェイ会議での歴史的なボーアとの討論(激論、闘論?)に持ち越される。

量子力学を巡るアインシュタインとボーアの戦い、その真の勝者は・・・【山椒読書論(301)】
http://enokidoblog.net/sanshou/2013/11/9927

特にボーアは生涯を通じてハイゼンベルクとの関わりが深かった。量子力学をめぐる対話だけでなく、親しい友人として家族同然の付き合いをしており、レジャーや旅行を通じて親交を深めている。その後、第二次世界大戦が二人の関係を引き裂いたことは「原子爆弾 1938~1950年: ジム・バゴット」に詳しく書かれていて悲痛に思っていたが、本書ではそのことにほとんど触れられていなかった。

「原子の安定性」といえばボーアの量子条件が思い当るが、ボーアとハイゼンベルクの対話の中でボーアが主張していたのは「化学反応の安定性」だった。同じ条件で化学反応は全く同じ結果になる。これは原子が安定していることを意味するのだと僕は気づかされた。

行列力学や不確定性原理を発見したときのことは、比較的詳しく書かれている。しかしノーベル賞受賞のことは書かれていのが物足りなかった。また不確定性原理以外にもハイゼンベルクは強磁性、場の量子論、原子核が中性子と陽子からなるという理論を発表、S行列の理論、宇宙線理論、超伝導の研究など、さまざまな功績をしているのだが、これらについての記述も本書には書かれていない。項目だけなら記述可能だが、詳しく書こうとすると本書のレベルをはるかに超えるし、分量的にも無理があるということなのだろう。


戦争や原爆研究・開発のこと

ドイツは第一次世界大戦での敗戦国である。この戦争はハイゼンベルクの少年期にあたり父親が従軍している。戦後の経済の疲弊が、その後ヒトラー政権を誕生させる温床になっていく。

21歳のハイゼンベルクと38歳のボーアの間で交わされた戦争についての対話が印象的だった。デンマーク人のボーアがドイツの脅威に対して感じているヨーロッパ諸国の感情を説くのに対し、ドイツの立て直しに希望をもつ若き日のハイゼンベルクはボーアの懸念が杞憂であると説明する。一部には過激な人種差別をするグループがあるが、全体的にはそのような過激分子を嫌い、排除されていくだろうという楽観的な考えを述べる。

その後、ヒトラーが勢力を拡大し政権を握るに至ることを彼は予想していなかった。ヒトラーに対しては一貫して反対の考えをもっているハイゼンベルクであるが、当時のドイツでそのような自由が認められるはずはない。国内外のユダヤ系市民の排斥が虐殺にエスカレートしていく中で、多くの同僚が国外へ脱出していった。しかし本書ではナチスによる大量虐殺についての具体的な記述はない。

ドイツ国内に留まるか、それとも脱出するかという判断をハイゼンベルクも迫られることになる。彼は大いに悩んだわけだが結局留まることを決意する。それは戦争が長く続くものではないと予想し、戦後のドイツの未来に貢献したいという思い、そのために若い物理学者を育てたいという思いからだった。

原子核の分裂がすでに発見されていたが、それが連鎖反応できると物理学者たちは考えていなかったため、原子爆弾は不可能だと思われていた。戦後のドイツの発展のために原子力の平和利用を目的として研究を進めていたと書かれている。この点について僕は言い訳がましいと少し思った。

ほどなくハイゼンベルクはドイツの原爆研究・開発の責任者に任命される。当時のドイツでヒトラーの命令を断ることは死を意味する。ヒトラー自身、原爆の研究や開発には時間がかかり、この戦争には間に合わないと思っていたのと、ハイゼンベルクもその点は同じだったので、結局ドイツでは原子炉の実験にすら至らず戦争が終わった。

しかし、問題は1941年10月に行われたハイゼンベルクとボーアの対話である。戦時下にあって敵国であるアメリカに渡るのは異例中の異例のことだ。この再会によってドイツが原爆を開発中であるとボーアが確信し、アメリカの原爆開発が急ピッチで行われることになる。本書でハイゼンベルクは「ボーアは私の言ったことを誤解し、ショックを受けてしまったので、戦後のドイツの発展に貢献しようとする私の希望について耳を貸さなくなってしまった。」と自分のせいではないような書きかたをしている。

しかし「原子爆弾 1938~1950年: ジム・バゴット」では、ボーアも含め周囲の物理学者に対するハイゼンベルクの態度が尊大でドイツの脅威をますます印象づけ、さらにハイゼンベルクは原子炉の設計図らしき紙をボーアに見せたので、ボーアはドイツの原爆開発を確信するようになったと書かれている。周囲にはドイツ本国から送られたスパイが監視していたかもしれず、ハイゼンベルクは自国に不利になる発言をしたり態度を見せることができなかったのかもしれないが、このハイゼンベルクのボーア訪問は明らかに失敗で、アメリカの原爆開発を加速させ、広島・長崎への原爆投下の遠因になったと僕は思う。

アメリカが原爆の製造を終え、広島・長崎への原爆が投下されたことをハイゼンベルクが知ったのは、戦後彼が他のドイツ人物理学者と一緒にイギリスで抑留されていたときである。多くの一般市民が犠牲になったことに触れられていたものの、その悲惨さについての強調はなされておらず、あっさりと書かれていたに過ぎない。

確かにドイツは敗戦国で原爆を落とした当事者ではないから仕方がないことだが、ヒトラー政権の誕生とナチス勢力拡大を許してしまったことに対する責任については書かれていなかった。全体を通じて釈明や言い訳ともとれる記述はあるものの、後悔や懺悔のようなことは本書には一切書かれていない。自虐的歴史観をもたないのが普通なのかもしれないが、ナチスによるユダヤ人大量虐殺の残忍さを思うとき、何らかの言及をしておくべきだと思った。そのあたりの無頓着さが1941年10月のボーア訪問の際に受けた誤解と共通していると思った。

科学者として原爆への責任があったかという点について、ハイゼンベルクは「発見」には責任がなく「発明」には責任があると考えを述べている。つまり核分裂を発見した時点では、それがどのように利用されるかは全く予想ができないから責任はないということだ。そして彼は原子炉の完成間近までしか進んでおらず、それは平和利用を目的とするものだという言い訳を匂わせている。

僕は「発見」については責任を問うべきではないと思うが、原爆の発明、実験、製造、投下の決定、投下の実行についてはそれぞれ重大な責任が伴うと考えている。

あと本書には戦後の原爆、水爆の開発と実験、核の拡散、核による抑止力、核軍縮への取り組みなどについては一切触れられていない。原子力研究、開発の責任者だったにしてはいかがなものかと思った。戦後、核兵器廃絶・科学技術の平和利用を訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」の11名の連名者の中にハイゼンベルクの名前はない。

ちなみに1948年にドイツは東西に分断され、西ドイツでは第二次世界大戦以後原子炉とウラン濃縮の研究が禁止されていた。しかし1955年のパリ協定によって、核兵器を製造しないという約束と引き換えに禁止措置が正式に撤回され原子力発電開発が始まった。

ドイツの原子力発電開発
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-05-03-03


戦後のこと

気になるボーアとの関係だが、戦後は物理学者どうしとしての交流を再開している。戦争によって負った傷跡をお互いがどのように思っていたかは書かれていないので知る由もないが、個人としての反感があったわけではないので、生涯の友として付き合っていけたのだろうと僕は思う。

イギリス抑留の後、ハイゼンベルクはドイツに戻り、国内の物理学者を率いて国の再建に心血を注ぐことになる。量子力学は統一場の理論を目指して進展を続けている。繰り込み理論、量子電磁力学へと研究が進み1954年にはヤン=ミルズ理論が提唱される。

パウリとともにハイゼンベルクは戦後も第一線の研究者として物理学の発展に貢献している。本書を訳された山崎和夫先生がハイゼンベルクに師事しながら研究をしていたのは1957年-1961年、1962年-1968年のことである。

特集:不確定性原理の今
ハイゼンベルク先生と統一理論に挑んだ10年
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0704/heisenberg2.html


「部分と全体」というタイトルについて

「部分と全体」というタイトルの意味だが、訳者あとがきには次のように書かれている。

- ナチズムという誤った部分的秩序の枠内にいる限り、若者の素晴らしい善意も行動も、何一つ人類全体の幸福には結びつかない。

- ハイゼンベルクは部分としての数学をていねいに行うことをゾンマーフェルトから学び、全体を哲学的に考えることをボーアから学んだ。

- 物理学のためには細かいひとつひとつの部分に全力を尽くしながら、常に全体の見通しを持って進まなければならない。

でも僕としてはストレートに次のように解釈したい。いかがだろうか?

- 部分としてのミクロな量子力学の世界が、全体として古典力学に従うマクロな世界をかたち作る。


関連書籍:

原爆の側面からは次の本をお読みになるとよい。

原子爆弾 1938~1950年―いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?:ジム・バゴット」(紹介記事



量子力学の創成期の観点からは次のような本をお勧めする。

量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突:マンジット・クマール
そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命:デイヴィッド・リンドリー
ハイゼンベルクの顕微鏡~不確定性原理は超えられるか:石井茂」(紹介記事
シュレーディンガーと量子革命 天才物理学者の生涯:ジョン・グリビン

   


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部分と全体: W.K. ハイゼンベルク




巻頭写真集
序文(湯川秀樹)
序(ハイゼンベルク)

原子学説との最初の出会い(1919‐1920年)
物理学研究への決定(1920年)
現代物理学における“理解する”という概念(1920‐1922年)
政治と歴史についての教訓(1922‐1924年)
量子力学およびアインシュタインとの対話(1925‐1926年)
新世界への出発(1926‐1927年)
自然科学と宗教の関係についての最初の対話(1927年)
原子物理学と実用主義的な思考方法(1929年)
生物学、物理学および化学の間の関係についての対話(1930‐1932年)
量子力学とカント哲学(1930‐1932年)
言葉についての討論(1933年)
革命と大学生活(1933年)
原子技術の可能性と素粒子についての討論(1935 - 1937年)
政治的破局における個人の行動(1937年 - 1941年)
新しい門出への道(1941 - 1945年)
研究者の責任について(1945 - 1950年)
実証主義、形而上学、宗教(1952年)
政治と科学における論争(1956年)
統一場の理論(1957 - 1958年)
素粒子とプラトン哲学(1961 - 1965年)

訳者あとがき

NHKラジオ第2 まいにちフランス語(応用編)

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ラジオの良さを見直したのがきっかけとなり、このところ僕はゴガクづいてきた。(参考記事:ラジオ談義)先日も「Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版のiPhone/iPadアプリ」を購入したばかりだ。

NHKラジオのフランス語講座、特に木曜と金曜に放送されている「応用編」は20年ほど前に聞いていたのだが、その当時は主に文学作品を扱っていた。僕はスタンダールの「パルムの僧院」の講読をこの番組で放送していたころ集中して聞いていた。

文学作品を読むのはフランス語学習には大切なのだが、ほとんど実用的ではない。会話文のところ以外は単純過去や単純未来という日常生活では使わない時制で書かれているからだ。

どうせ学ぶのならニュース記事とかビジネスフランス語、メールの書き方、パソコンやインターネット関連の文章の読解など普段の生活に密着している実用的なフランス語がよい。アップル社の製品マニュアルだって多言語で公開されている時代なのだから。

アップル社の製品マニュアル(フランス語版)
https://support.apple.com/fr_FR/manuals


先日何年かぶりに書店でテキストを見てみると、ラジオ放送のほうの「応用編」で、フランスのradio France internationale生放送を聞いてみる)というラジオ放送のニュース番組を教材としているのに気が付いた。レベルはちょうどよい。応用編は週2回、各回15分だから忙しい僕でもなんとか続けられそうだ。

講師からのメッセージ:NHKのページを開く
応用編
井上 美穂

最近は、インターネットや衛星放送などで世界中のニュースを見たり聞いたりできるようになりました。しかし、すぐ手に届く所にあるのはわかっていても、敷居が高くてなかなか視聴には至っていない方や、あまりにも番組が多すぎてどれを視聴しようかと迷っていらっしゃる方も多いことと思います。また、フランス語のニュースをすでに視聴されている方でも、難解な部分が多く、解説を必要とされている方もいらっしゃると思います。

そのような方々に役立てていただけるように、今回の番組を準備いたしました。教材として使うのは、RFI(radio France internationale)というラジオ番組です。番組の一部を抜き出してみなさんに聞いていただき、内容理解の確認を行ったり、難しい語彙表現に解説を加えたりします。さらに、聞きとりの力を伸ばすための「コツ」とでも言うべきテクニックを、聞きとり練習で紹介します。この「コツ」を毎回積み重ねることによって、聞きとり力の向上を目指します。そして、ニュースでよく使われる表現法を取り出し、それを用いて作文の練習をします。以上の練習を繰り返すことにより、徐々にフランス語のニュースに慣れていただくことが、この番組のねらいです。

注意: 10月からは「インタビューで広がるフランス語の世界」という新シリーズが始まる。また講師も井上櫻子先生に変わる。


テキストは毎月Kindle版を買い、放送は前の週のぶんだけストリーミングのサービスがあるからスマホで聞けばよい。(パソコンでも聞ける。)



NHKラジオ まいにちフランス語テキスト: Amazonで検索
NHKラジオ まいにちフランス語: ホームページ

CD付きのテキストは高いし、入門編のぶんの音声はいらないから買っても無駄な気がする。とはいっても音声は録音していつでも聞けるようにしておきたい。ストリーミングのサービスでは前々週以前の放送が再生できなくなってしまうのだ。

そしてストリーミングはWebページからの再生なのでバックグラウンドで再生できない。同じスマホやタブレット端末のKindleでテキストを見ながら学習することができないのだ。録音したファイルを再生することでバックグラウンド再生ができるようになる。



少し手間はかかるけど、パソコンで録音してWMA形式とMP3形式の音声ファイルで放送内容を残しておくことにした。1週間に1度の作業だから、ものぐさな僕でもなんとかなる。

以前はNHKのストリーミングから音声ファイルをダウンロードできる方法があったのだが、現在は次のページを読むとわかるように、その方法はできなくなっている。

NHK基礎英語をダウンロード 録音してiPhoneで聞く方法!
http://www.amamoba.com/english/2014-04-kisoeigo.html


したがって僕は次の手順で行うことにしたわけだ。

スマホにオーディオケーブルをつなぎ、パソコンのマイク入力に接続する。

録音は「♪超録 - パソコン長時間録音機 フリーウェア版」を使う。90分までの録音なら無料で使える。



録音レベルを確認しながらスマホのボリュームを調節しておく。デフォルトで保存されるファイル形式はWMAだ。MP3形式で保存しようとすると別途LAME MP3エンコーダが必要になったりして、この記事をお読みになる方の中には難しいと感じる人がいるかもしれないから、もっと簡単な手順を紹介することにしよう。

保存したWMA形式のファイルをRealPlayer Converterを使ってMP3形式に変換するのがいちばん楽だ。RealPlayer ConverterはRealPlayerをインストールすれば使えるようになる。



ファイル形式を変換するときは、このような画面からすることになる。



保存した音声ファイルを聞きたいときは、パソコンで再生すればよいし、スマホに転送して聞きたければ、いろいろ方法があるので次のようなページを参考にすればよいだろう。

iPhoneへの音楽ファイル(mp3/AAC/WMA等)の入れ方/取り込み方
http://www.ipodwave.com/iphone/howto/iphonemusic_addmusicfile.html

MP3スマート: パソコンの音声ファイル(MP3/iTunes)をUSBケーブル接続やSDカードなしでスマートフォン(Android/iPhone)に転送できる便利な無料サービスです。
http://www.mp3smart.com/

パソコン中のmp3をiPhoneに転送する手順
http://www.iphone-data-recovery.jp/tutorials/transfer-mp3-from-pc-to-iphone.html


こういう作業が全く苦手という方は毎月CD付きのテキストを買うか、予約録音機能付きのラジオを買うのがよい。またはオーディオケーブルからICレコーダーに録音するのもよいかもしれない。

予約録音ラジオ: Amazonで検索
ICレコーダー: Amazonで検索


余談:

大学生のときFrançoise Hardyにハマっていた。レコードをカセットテープにダビングして何度も聴いていたのは「Quelqu'un Qui S'en Va」というアルバム。このアルバムの中には好きな曲がいくつもあったが、そのうちのひとつをYouTubeに見つけた。



YouTubeでFrançoise Hardyの動画を: 検索する
AmazonでFrançoise HardyのCDを: 検索1 検索2


関連記事:

発売情報: Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3e26912b99683e9158557cccfab8c177

Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版がiPhone/iPadアプリとして発売!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c639abc6cfe45e1675d0a72181116e86

発売情報:カシオ電子辞書 XD-Y7200(2016年フランス語モデル)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c669bb0fc557fcc81017d3323ecbb5e8

小学館ロベール仏和大辞典(iPhone / iPad アプリ)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/02af8bb1e929b8f415f7efc32a92bd56

ロワイヤル仏和中辞典(辞書談義)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aed33d08239da123dcc66c5ec08f0bc7

発売情報: フランス語版「ファインマン物理学」の新版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf630deb00e6c315897d6f47ba3dd5a


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発売情報: 量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル

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量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル」(Kindle版

内容紹介:
ギリシャ以来、物質の最小の構成単位への人類の探求は、原子核とそれをまわる電子というモデルまでいきつく。しかし、1912年のある日、物理学者のニールス・ボーアは気がつく。なぜ、電子は原子核に墜落しないのか?まったく新しい物理学が誕生した瞬間だった。人類の極小を探る旅は、加速器というものさしを得て進歩する。それは宇宙の始まりを解き明かす旅になった。
アメリカのフェルミ研究所で加速器を使い、極小の世界を追い求めたノーベル賞物理学者が、この新しい物理学の誕生から現在そして未来を綴る。
2016年9月23日刊行、308ページ。

著者について:
レオン・M・レーダーマン(Leon M. Lederman): 著書をAmazonで検索
1922年生まれのアメリカの実験物理学者。ボトムクォークの発見で知られる。1988年にミューニュートリノの発見によるレプトンの二重構造の実証でノーベル物理学賞受賞。イリノイ数学科学アカデミーのグレート・マインズ・プログラム常任研究員、フェルミ国立粒子加速器研究所名誉所長であり、イリノイ工科大学プリツカー科学教授。著書にThe God Particle(邦訳『神がつくった究極の素粒子』高橋健次訳、草思社)などがある。

クリストファー・T・ヒル(Christopher T. Hill): 著書をAmazonで検索
理論物理学者。シカゴ大学物理学科非常勤教授、客員研究員、オックスフォード大学客員研究員を経て、フェルミ国立粒子加速器研究所理論物理学部長。米国物理学協会特別会員。理論物理学と宇宙論についての論文を100編以上執筆している。

訳者について:
青木薫: 訳書をAmazonで検索
1956年、山形県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専門は理論物理学。翻訳家。サイモン・シンの一連の著作『フェルマーの最終定理』『暗号解読』『宇宙創成』(以上、新潮社)をはじめ、ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの』(草思社)、マーシャ・ガッセン『完全なる証明』(文藝春秋)、マンジット・クマール『量子革命』(新潮社)など、数学・物理学系の一般向けの書籍から専門書まで幅広く手がける。数学の普及への貢献により2007年度日本数学会出版賞受賞。


今年の秋はこの本がヒットするだろう。まだ読めていないので発売情報としてのお知らせである。日本語版は数々の科学教養書の翻訳で知られている青木薫さんによるもの。この日本語版は今月23日に発売されたばかりだ。(電子書籍は今月末に発売)

翻訳のもとになった原書は2013年10月に刊行された「Beyond the God Particle(神の粒子を超えて)」、つまりヒッグス粒子の先に何があるのか?というタイトルの本だ。

Beyond the God Particle: Leon M. Lederman, Christopher T. Hill」(Kindle版



原書のタイトルにはない「量子物理学の発見」を補ったのがよいと思った。「数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル」(これも青木薫さんの訳書)でも使われていたが、「量子物理学」は前期量子論から量子力学、素粒子物理学、超弦理論までをカバーする現代物理学をあらわすのにちょうどよい言葉だ。

以前紹介した「ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル」はヒッグス博士がたどった道のり、理論物理学に焦点をあてた本だが、本書のほうは実験物理学の醍醐味と重要性を強調し、この分野の将来を見据えて書かれている。

章立ては次のとおり。僕としては第5章以降が興味深々というところ。

第1章 宇宙の始まりを探る旅
第2章 その時、ニュートン物理学は崩れた
第3章 世界は右巻きか左巻きか
第4章 相対性理論の 合法的な抜け道
第5章 初めに質量あれ
第6章 何もないところになぜ何かが生まれたのか?
第7章 星が生まれた痕跡
第8章 加速器は語る
第9章 ヒッグス粒子を超えて


まだ読んでいないのでこれ以上詳しいことはお伝えできない。差し当たり青木薫さんと大栗博司先生による紹介ページが公開されているので、これを読んでから書店で本書を手にとっていただきたい。

『量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語』量子物理学に今、革命が起ころうとしている
訳者解説 by 青木 薫
http://honz.jp/articles/-/43259

量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語』を読み解く。「量子物理学」はいかに発見され、次にどうなるか?
by 大栗 博司(理論物理学者、カリフォルニア工科大学教授、東京大学カブリIPMU主任研究員)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49714


関連記事:

祝!:ヒッグス粒子発見
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f88350541542f732fec74af583a29e50

速報:2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e

ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/46c46f676c631634b83fb9616161ec4d


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量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル」(Kindle版



第1章 宇宙の始まりを探る旅
2012年に世界の新聞の一面を飾った「ヒッグス粒子」の発見。本書では、その発見にいたるまでの人類の歴史を、ノーベル賞量子物理学者が綴る。それは、この世界の極小の構成単位を探る旅でもあり、同時に宇宙の始まりを探る旅でもあった。

第2章 その時、ニュートン物理学は崩れた
ギリシャ以来、物質の最小の構成単位への人類の探求は、原子核とそれをまわる電子というモデルまでいきつく。しかし、1912年のある日、物理学者のニールス・ボーアは気がつく。なぜ、電子は原子核に墜落しないのか? 全く新しい物理学の誕生。

第3章 世界は右巻きか左巻きか
水の分子を鏡に写しても左右対称で変わらない。しかし、変わってしまう分子もある。例えば、われわれの世界の食べ物は右旋体の糖でできている。さてでは物理法則はどうだろうか? その対称性が破れていることを発見したのがこの本の著者だった。

第4章 相対性理論の 合法的な抜け道
エネルギーは光速の自乗にそのものの質量をかけたものに等しい。E=mc2。アインシュタインは、物質の質量はエネルギーに転換できることを示した。しかし、光に質量はないはずだ。とすれば、光はエネルギーに転換できないのか?

第5章 初めに質量あれ
宇宙が始まった時、すべてのものは無であり、質量はなかった。完全な対称性がなりたつ世界だった。その対称性が崩れ去る引き金をひいたものがいる。それが「ヒッグス粒子」だ。「ヒッグス粒子」が質量を生み出し、宇宙を生み出すことになった。

第6章 何もないところになぜ何かが生まれたのか?
ではどのようにして何もないところからヒッグス粒子が生まれ質量が生まれるのか?
10の マイナス25乗の非常に短い時間では不変と思われたエネルギー保存則がなりたたない瞬間がある。その「量子ゆらぎ」とよばれる時間のことから説明しよう。

第7章 星が生まれた痕跡
宇宙誕生時にできた原子星の内部で、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、鉄などの重い元素がつくられる。しかし、これらの元素があまねく宇宙に行き渡るためには、崩壊による解放が必要だ。その痕跡がいまもふりそそぐ「ニュートリノ」という粒子だ。

第8章 加速器は語る
著者らのフェルミ研究所は、標準理論のその先を探索する新加速器「プロジェクトX」を進めている。それは高エネルギー追求から転換してコストは抑え、膨大な数の粒子を観測して珍しい現象を探す新たなアプローチだ。

第9章 ヒッグス粒子を超えて
量子物理学はまだ道半ばだ。ヒッグス粒子は物質に質量を与えるが、それ自身の質量がどこから来るかはわかっていない。宇宙のほとんどを占める暗黒物質も検出できていない。未知の物理現象を求める実験は続く。

木星の衛星エウロパ、表面で水噴出か 高さ200キロ

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木星の衛星エウロパ、表面で水噴出か 高さ200キロ(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJ9W2FLTJ9WUHBI00C.html?iref=comtop_8_02

というニュースがNASAから発表されたが、僕はエウロパの写真に写っている「筋」のほうが気になってしまい、次のようなツイートをした。この複雑な筋が人工的な構造物だと思っているわけではないが、見れば見るほど興味深い。みなさんはどのようにお感じになるだろうか?

以下、ツイートした順に紹介する。

- エウロパ表面に見える「筋」は何だろう? 川や「流れ」はこのように交差しないから、それ以外のものだと思う。人間の血管のX線写真に似てる。(「流れ」が交差しない理由

エウロパの表面


網膜の血管


- 「筋」は表面の「色の濃い地域どうし」を結んでいるように見える。しかも最短距離(大円)にかなり近いと思う。

- 「筋どうしのつながり方」や「筋の曲がり方」から判断すると細くて薄い筋のほうが濃くて太い筋よりも古い時代に形成されたのだと思う。

- 自転軸はやはり上下方向なのだろうな。 上のほうのまっすぐ伸びた筋と真ん中あたりのごちゃごちゃした筋とは何らかの「意味の違い」を感じる。

エウロパの表面


- 「間欠泉」のある方向に伸びている筋は無いように見える。(7時の方向に噴出しているのが「間欠泉」とみられている。)

エウロパの表面と間欠泉


エウロパの表面は探査機ガリレオによるとこのようになっているそうだ。筋はほとんど「道路地図」に見えるし、細い筋は2重かつ平行に伸びているものが多い。縦横無尽に伸びていることから潮汐力が原因の場合、自転軸がコマの首振り運動のように長い間に回転したことをうかがわせる。そして太い筋は幹線道路のように見える。このような模様が本当に潮汐力による歪みの繰り返しによってできたのだろうか?



エウロパに生命が存在する?カオス地形からわかる、塩類を含む海の存在
http://sciencejournal.livedoor.biz/archives/3692473.html

エウロパ表面の筋模様は海塩かもしれない
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/356_europa

エウロパの表面地形と内部構造・進化 - 東京大学地震研究所(PDF
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003320329

エウロパの自転周期は3.55日。イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つをガリレオ衛星と呼んでいる。イオの公転周期:エウロパの公転周期:ガニメデの公転周期 ≒ 1:2:4 という関係が成り立っているが、これは軌道共鳴という天体力学のメカニズムにより説明されている。またいずれも自転周期は公転と同期している。潮汐力が複雑な地形を作るのも、このような力学的条件の特殊性によるものかもしれない。

次のアニメーションは木星(JUPITER)の3つの衛星、イオ(IO)、エウロパ(EUROPA)、ガニメデ(GANYMEDE)間にはラプラス共鳴が存在することをあらわしている。図の数字はイオの周期を1としたときの、それぞれの周期の割合だ。



なお、ウィキペディアの「エウロパ(衛星)」の項目には次の記載がある。(Googleでエウロパの画像を検索する。)

表面は少なくとも厚さ3km以上の氷で覆われており、所々にひび割れが走っている。イオの次に木星に近く、公転周期がイオの2倍、ガニメデの半分という軌道共鳴の状態にあるため、強い潮汐力の変動に晒されている。その潮汐力で発生する熱によって表面の固い氷層の下は深さ数十から百数十kmにわたって氷が融け、シャーベット状で液体の海になっており、地球の海洋深部にあるような熱水噴出孔も存在すると考えられている。生命が存在する可能性も示唆されている。

内部海の存在は、内部の熱的状態に関する理論的計算によって1970年代には既にそれを予想する説が出されていた。1990年代に行われたガリレオ探査機による調査では、エウロパの表面に氷が一度割れて再び固まったような地形が発見され、海の存在を強く想起させるものとして注目を集めた。

エウロパの表面を覆う氷は、潮汐力によるエウロパ自体の歪みのために裂け目が出来たり塞がったりを繰り返しており、「リネア(Lineae, 線状地形)」や「マキュラ(白斑)」のような独特の地形が多い。一方でクレーターは少なく、古いクレーターは侵食などによって消滅したと考えられている。


最後に今年5月にお亡くなりになった冨田勲さんのホルストの組曲「惑星(1977)」を紹介しておこう。


冨田勲さんのCD: Amazonで検索


取り急ぎ、昼食時間を使って投稿させていただいた。

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9月30日の朝に追記: この問題は解決し、FC2ブログランキングはやっと正常な状態に戻りました。


FC2ブログランキング(48万ブログが登録、現在のページを開く)は全ブログについて4週連続ポイントの消し込み計算ミスをしているため、無意味にポイントが増え続けていた。サイトには先週はじめに連絡したのだが、その後も対応がされていなかった。

掲載画像の総合ランキングを拡大するとわかるように、1位のブログの週間INポイントが100万を超えている。応援クリック数が1週間あたり100万回ということだ。これはあり得ない。

比較のために「人気ブログランキング(123万ブログが登録)」と「にほんブログ村(93万ブログが登録)」の総合ランキングを見ると、1位のブログの週間INポイントはそれぞれ18万、8万5千である。

以下の画像はすべてクリックで拡大する。

人気ブログランキング(総合): 現在のページを開く


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原因はFC2ブログのポイントの消し込み計算ミスで、毎週月曜から火曜になる深夜におきている。そのたびに登録されている全ブログのポイントは大幅に加算されている。同じミスが4週連続しておきた結果、1位のブログの週間INポイントが100万を超えてしまったのだ。

ちなみにFC2の自然科学ランキングだと、「とね日記」のブログの週間INポイントは9月1日には120だったのだが、今日現在では1010ポイントになってしまっている。まったく意味がないポイント増なのでうれしくない。このサイトに登録してから先月まで、100~200のポイントが続いていたのだ。

FC2の自然科学ランキング(9月1日):


FC2の自然科学ランキング(9月28日): 現在のページを開く



計算ミスによるポイント増は獲得ポイントに比例した値で行われているのでランキングの順位は保たれているわけだが、ブログ間のポイントの「差」が拡大するため、順位が固定されるという弊害がでてしまう。その結果、新規登録ユーザーはいくら頑張っても順位が上がらない。

ランキングサイト全体の信用、信頼性を著しく損なっている状況なのでユーザー登録している僕としては、一日も早い解決を望んでいる次第だ。9月30日の朝に追記: この問題は解決し、FC2ブログランキングはやっと正常な状態に戻りました。


補足: 総合ランキング上位のブログに関して、そしてこのようなブログランキングサイトに対して感じること、思うことがいくつもあるが、今回の記事の主旨とは関係ないので書かないことにする。


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発売情報: クラウド量子計算入門: 中山茂

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クラウド量子計算入門―IBMの量子シミュレーションと量子コンピュータ: 中山茂

内容紹介:
IBMから提供される無料の量子計算プラットフォームを体験する!大学での講義を想定した豊富な例題、演習、実験で理解を深める。16の量子実験を通して、量子アルゴリズムを学び、量子シミュレーションで実行する。
2016年10月10日刊行、331ページ。

著者について:
中山茂(なかやましげる)
京都生まれ。京都大学大学院工学研究科博士課程修了後、上智大学、英国Reading大学、京都工芸繊維大学、兵庫教育大学、英国Oxford大学、鹿児島大学を経て、2014年に定年退職。京都大学工学博士。


地元の書店でひとめぼれして購入した本だ。「え、まさか個人で量子コンピュータの実験ができるの?!これはすごい!!」。他にも探していた本があったのだけれど、頭からすっかり抜け落ちてそのままレジへ直行。

思考実験しながら量子コンピュータの原理を学べる本はたくさんでているが、自分で実験できるようになる本は初めてだ。それも本物の量子コンピュータが無料で使えるなんて。。。ついにそういう時代がやってきたのか! 1976年に初めてマイコンを目にしたとき以来の衝撃である。

IBMが量子コンピューティングを誰もが実験できるクラウドサービスとして提供
http://jp.techcrunch.com/2016/05/04/20160503ibm-brings-experimental-quantum-computing-to-the-cloud/

IBM Quantum Experience(入口)
http://www.research.ibm.com/quantum/

IBM Quantum Experience(コミュニティやユーザーガイド)
https://quantumexperience.ng.bluemix.net/qstage


この量子コンピュータはパソコンだけでなく、スマホやタブレット端末でも利用できるそうだ。つまり文字でコーディングするのではなく、指でオブジェクトをドラッグしてプログラムを書くことになる。1980年代はじめに量子コンピュータの可能性を模索していた故ファインマン先生は何とおっしゃるだろうかと思った。(参考記事:「ファインマン計算機科学」)



本書の「はじめに」と「目次」は次のページで公開されている。

クラウド量子計算入門―IBMの量子シミュレーションと量子コンピュータ
http://www.cutt.co.jp/book/978-4-87783-408-1.html

第1章 はじめてのIBMの5量子ビット実験
第2章 パウリゲートの量子実験
第3章 アダマールゲートの量子実験
第4章 位相シフトゲートの量子実験
第5章 制御NOTゲートの量子実験
第6章 トフォリゲートの量子実験
第7章 ドイチ・ジョザ問題の量子実験
第8章 ベルンシュタイン・ヴァジラニ問題の量子実験
第9章 サイモン問題の量子実験
第10章 量子フーリエ変換の量子実験
第11章 位相・固有値・位数推定問題の量子実験
第12章 ショアの素因数分解問題の量子実験
第13章 グローバーの探索問題の量子実験
第14章 量子非局所性の量子実験
第15章 量子通信の量子実験
第16章 量子エラーとスタビライザー測定
第17章 量子誤り訂正の量子実験


雰囲気をお伝えするために見開きで2か所を掲載しておこう。(意図的に画像をぼかしておいた。)

位相シフトゲートの量子実験(クリックで拡大)


量子フーリエ変換の量子実験(クリックで拡大)



著者の中山先生は次の本も2年前にお書きになっている。目次を見ると本書の理論的側面を学べる本だということがわかる。合わせてお読みになるとよいだろう。

量子アルゴリズム:中山茂」(目次




量子コンピュータ関連の本: Amazonで検索


関連記事:

量子コンピュータ入門:宮野健次郎、古澤明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef75709187cf4b35a12f2d9fdf73a320

ファインマン計算機科学:ファインマン, A.ヘイ, R.アレン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4f7f453019fd463ed2bfdeaa7b288d79


関連ページ:

従来のPCの1億倍高速な量子コンピューターはどのような仕組みで動いて物理的限界を突破しているのかがわかるムービー
http://gigazine.net/news/20151210-quantum-computers-explained/

わかりやすい量子コンピュータ
http://matome.naver.jp/odai/2133630808407668301

「ITエンジニアのための量子コンピュータ入門」連載一覧
http://codezine.jp/article/corner/629

量子力学の反常識が創りだす量子コンピューティングの世界
—量子コンピュータの頭脳としての量子アルゴリズム—
http://www.kyoto-su.ac.jp/project/st/st14_03.html

米メリーランド大学、世界初となる「汎用計算可能量子コンピュータ」モジュールを開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1014034.html


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クラウド量子計算入門―IBMの量子シミュレーションと量子コンピュータ: 中山茂



第1章 はじめてのIBMの5量子ビット実験
1.1 IBMの量子シミュレーションと量子コンピュータ実験
1.2 クラウド量子計算に期待されること
1.3 クラウド量子計算への歩み
1.4 はじめてのIBMのクラウド量子計算
1.5 はじめてのIBMの量子シミュレータ
1.6 はじめてのIBMの量子コンピュータ

第2章 パウリゲートの量子実験
2.1 パウリゲートとは
2.2 恒等ゲートとパウリゲートを使った量子シミュレータ実験

第3章 アダマールゲートの量子実験
3.1 アダマール変換とは
3.2 アダマール演算による量子シミュレータ実験

第4章 位相シフトゲートの量子実験
4.1 位相シフト演算とは
4.2 T深度による量子実験

第5章 制御NOTゲートの量子実験
5.1 制御NOTゲートと重ね合わせ状態
5.2 制御NOTゲートによるもつれ状態生成
5.3 制御NOTゲートにおけるパウリ演算子
5.4 制御NOTゲートによる交換ゲート
5.5 制御Uゲートの生成

第6章 トフォリゲートの量子実験
6.1 3量子ビットのもつれ状態
6.2 トフォリゲートの量子実験
6.3 フレッドキンゲートの量子実験

第7章 ドイチ・ジョザ問題の量子実験
7.1 ドイチ問題の量子実験
7.2 ドイチ・ジョザ問題の量子実験

第8章 ベルンシュタイン・ヴァジラニ問題の量子実験
8.1 関数f(x)=x・aの定数aを求めるベルンシュタイン・ヴァジラニ問題
8.2 n=1のベルンシュタイン・ヴァジラニ問題
8.3 n=2のベルンシュタイン・ヴァジラニ問題
8.4 n=3のベルンシュタイン・ヴァジラニ問題

第9章 サイモン問題の量子実験
9.1 サイモン問題とは
9.2 n=2のサイモン問題の量子実験

第10章 量子フーリエ変換の量子実験
10.1 量子フーリエ変換の定義
10.2 量子フーリエ変換に必要な制御Sゲートの作成
10.3 量子フーリエ変換ゲートの実装
10.4 逆量子フーリエ変換ゲート
10.5 量子フーリエ変換によるシフト不変性

第11章 位相・固有値・位数推定問題の量子実験
11.1 位相推定問題の量子実験
11.2 ユニタリ変換の固有値推定アルゴリズムの量子実験
11.3 位数発見アルゴリズムの量子実験

第12章 ショアの素因数分解問題の量子実験
12.1 因数分解とユークリッドの互除法
12.2 ショアの素因数分解アルゴリズム
12.3 ショアの素因数分解のための量子回路

第13章 グローバーの探索問題の量子実験
13.1 グローバーの探索問題とは
13.2 グローバーの振幅増幅手法の量子回路

第14章 量子非局所性の量子実験
14.1 量子非局所性とCHSH不等式
14.2 GHZ状態の量子非局所性実験

第15章 量子通信の量子実験
15.1 量子高密度符号
15.2 量子転送

第16章 量子エラーとスタビライザー測定
16.1 量子エラーとシンドローム診断
16.2 ビットパリティ識別
16.3 符号パリティ識別

第17章 量子誤り訂正の量子実験
17.1 量子誤り訂正のための符号化と複合化
17.2 量子誤り訂正ゲート

量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突:マンジット・クマール

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量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突:マンジット・クマール

内容紹介:
世界の根源には何がある? 量子の謎に挑んだ天才物理学者たちの100年史。20世紀に生まれた量子論は、ニュートン以来の古典的な世界像をどう書き換えたのか。アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルク、ド・ブロイ、シュレーディンガー…… 彼ら「偉大なる頭脳」たちが火花を散らした量子革命100年の流れを、豊富な逸話をまじえ、舌を巻く物語術で描き切る驚異のポピュラー・サイエンス!
2013年3月刊行、527ページ。

著者について:
マンジット・クマール
ロンドン在住のサイエンス・ライター。物理学と哲学の学位を取得し、アートとサイエンスを扱う異色の学際雑誌「Prometheus(プロメテウス)」創刊編集長を務める。

訳者について:
青木薫: 訳書をAmazonで検索
1956年、山形県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専門は理論物理学。翻訳家。サイモン・シンの一連の著作『フェルマーの最終定理』『暗号解読』『宇宙創成』(以上、新潮社)をはじめ、ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの』(草思社)、マーシャ・ガッセン『完全なる証明』(文藝春秋)、マンジット・クマール『量子革命』(新潮社)など、数学・物理学系の一般向けの書籍から専門書まで幅広く手がける。数学の普及への貢献により2007年度日本数学会出版賞受賞。


理数系書籍のレビュー記事は本書で318冊目。

部分と全体」でハイゼンベルクの視点で見た量子力学発展史を読んだ後、全体の流れのおさらいをしておこうと読んだのが本書だ。僕がこの分野の科学教養書を読み漁っていたのは10年ほど前。本章に書かれているほとんどのことは知っていたわけだが、その全貌を通読してみると、古典的世界像から脱却した全く新しい世界像を受け入れるのがどれほど困難だったかがよくわかる。またこれだけ詳しい本だと、知らなかった事がいくつも見つかり「量子力学豆知識」を補充できたのがよかった。


印象に残ったこと

- ハイゼンベルクの「部分と全体」ではわりと控えめに書かれていたドイツにおけるユダヤ人排斥がどのようなものであったかが詳しく書かれていたこと。ヒトラーが実権を握る10年以上前の1920年代初めの時点でかなり進んでいたことがよくわかった。

- 偉人とされる科学者たちも若いころは苦労人である。アインシュタインしかり、ボーアにしてもそうだ。特にボーアは英語をうまく喋れず、苦労したようだ。有名になればなるほど国際的な舞台で講演したり、議論したりする機会が増える。私たちにも共通する悩みを偉人たちも経験していたのだと思うと、彼らがより身近かな存在に思えてくる。

- コンプトン効果や電子のスピンの発見時期が意外と早かったこと。教科書でこれらのことを学ぶのがシュレーディンガー方程式よりも後であることから、それが歴史の順番だと僕は誤解していた。コンプトン効果は1923年、スピンのことが発表されたのは1925年、シュレーディンガー方程式が発表されたのは1926年である。巻末の年表がとても役に立つ。

- コペンハーゲン解釈を支持する科学者の間にも量子力学の解釈をめぐって違いがあり、それを詳しく学べたのがよかった。シュレーディンガーがコペンハーゲン解釈に反対の立場をとり「シュレーディンガーの猫」という思考実験を持ち出したのは有名だが、具体的にどのような見地で反対だったのか詳しく知ることができたのがよかった。

- 量子力学に反対の立場をとっていたアインシュタインがシュレーディンガーやド・ブロイを励ましていたというくだり。少し意外な気がしたが、量子力学の解釈をめぐってアインシュタインがどの部分を受け入れ、どの部分に反対だったかが浮き彫りになり、理解が深まった。

- アインシュタインとボーアの論争がとても詳しく描かれていたこと。ソルヴェイ会議での論争だけでなく、その後アインシュタインがアメリカに移住し、プリンストンで晩年を迎えるまでボーアとアインシュタインがどのような付き合い方をしていたかを知ることができたのがよかった。アインシュタインの死後7年経ってボーアは亡くなるのだが、死の前日までアインシュタインが提示した思考実験のことを考えていたという話に胸が熱くなった。

- アインシュタインが決定論、ボーアやハイゼンベルクが非決定論の立場で対立していたというのが一般的に知られていることだが、アインシュタインが反対していることの本質が「実在論」にあったことをパウリが見抜いていたということが書かれていたのがよかった。

- 古典力学と量子力学をつなぐ「エーレンフェストの定理」で印象に残っているエーレンフェストだが、悲劇の最期を遂げていたのを本書で知って胸を痛めた。ダウン症の息子さんを殺害し、その後みずから命を絶っていたのだ。

- アインシュタインやボーアの死以後のこと、「ベルの不等式(1964)」と「アスペの実験(1982)」によって量子力学の正しさが検証されたことまで書かれているのがよい。これがコペンハーゲン解釈の再考を促しているというのだという記述が訳者あとがきにあった。量子力学の解釈問題は現在でも解決していないわけだが、あらためてその深さと意味を考えるきっかけにしたいと思った。ただし「ベルの不等式」や「アスペの実験」の記述は初めて読む人には難しすぎると思う。図版を含めて解説したほうがよいと思った。


訳者あとがきと量子力学の科学教養書について

青木薫さんによる「訳者あとがき」が実に見事だった。この大著を訳されたのだから細部まで読み込んでいるのはもちろんで、著者が本書にかけた思いを私たちにわかるように「翻訳」してくださっている。僕が稚拙な紹介記事を書くのがためらわれてしまうほど「あとがき」には気付かされることが多かった。

この中で青木さんは「量子力学の技術は身の回りの電気製品を通じて当たり前になり、定着しているのだから、量子力学の不思議さばかりを強調する科学教養書はそろそろ卒業しましょうよ。」のようなことを書いている。確かにそうだなと共感する反面、全面的に賛成はできないなという気もした。なぜなら僕のようにそのような科学教養書をたくさん読んできた者にとって本書のような本はありがたいのだが、初めて読む人にとっては不思議さというインパクトがあったほうがよいと思うからだ。不思議なものはやはりどう解釈しても不思議なのであり、この意味での読者の期待に応えておいたほうがよいと思う。

とはいっても本書は分厚く、初めて読む量子論の本ではない。まず図版や挿絵の多い本で入門してから2冊目、3冊目の本として取り組んだほうがよいのだろう。そもそも図版や挿絵がほとんどない500ページを超える本書を購入する人は量子論や量子力学のあらましや意味を知っている人だと思う。その意味では「不思議さばかりを強調する科学教養書はそろそろ卒業しましょうよ。」という主張は正しいような気がしてくるのだ。

長期間の記憶力に少し問題がある僕としては、本書はいつでも手にとれる場所に置いておき、専門書で量子力学を学びなおすときの参考資料として使わせていただくことにした。

また教科書で量子力学を学んでいる人が、モチベーションを高めるためにお読みになるのもよいだろう。

本書は多くの方が書評を書いているので検索して参考にされるとよい。


翻訳の元になった原書はこちら。2009年に刊行された本だ。

Quantum: Einstein, Bohr and the Great Debate About the Nature of Reality: Manjit Kumar」(Kindle版




関連書籍:

数式を含めた形で量子論の発展史を学びたい方には、次の本をお勧めしたい。ただし、この本には「ベルの不等式」や「アスペの実験」のことまでは書かれていない。

量子論の発展史: 高林武彦



不確定性原理からベルの定理までを解説した科学教養書としては1990年に刊行された次の本がお勧め。

量子と実在―不確定性原理からベルの定理へ:ニック・ハーバート



ベルの定理からアスペの実験、量子暗号、量子テレポーテーションまでということであれば、次の本がお勧め。邦訳書はひどいそうなので、原書でお読みになるとよい。

The New Quantum Age: From Bell's Theorem to Quantum Computation and Teleportation: Andrew Whitaker」(Kindle版




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量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突:マンジット・クマール



第1部:量子

第1章:不本意な革命―プランク
第2章:特許の奴隷―アインシュタイン
第3章:ぼくのちょっとした理論―ボーア
第4章:原子の量子論
第5章:アインシュタイン、ボーアと出会う
第6章:二重性の貴公子―ド・ブロイ

第2部:若者たちの物理学

第7章:スピンの博士たち
第8章:量子の手品師―ハイゼンベルク
第9章:人生後半のエロスの噴出―シュレーディンガー
第10章:不確定性と相補性―コペンハーゲンの仲間たち

第3部:実在をめぐる巨人たちの激突

第11章:ソルヴェイ 一九二七年
第12章:アインシュタイン、相対性理論を忘れる
第13章:EPR論文の衝撃

第4部:神はサイコロを振るか?

第14章:誰がために鐘は鳴る―ベルの定理
第15章:量子というデーモン


用語集
謝辞
訳者あとがき
年表
人名索引

とね日記について

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はじめてこのブログをお読みになる方のための紹介記事です。ブログの自己紹介欄には次のように書きました。

「原子のレベルではテレポーテーションの実験が成功していることに衝撃を受けたのがきっかけで、大学卒業後20年ぶりに趣味で物理学と数学の勉強をはじめました。 」

普通の会社員が市販されている本だけを読んで物理学や数学をどこまで理解できるのか?最先端の理論までたどり着くことができるのか?そのような気持ちで楽しみながら読書を続けている日々を綴ったブログです。


いつか相対性理論や量子力学、超弦理論を理解してみたい。学生時代に物理学を専攻していなくてもそのように思っている人はたくさんいるはずです。かくいう僕も大学時代は数学を専攻していて物理学の知識はほとんどありませんでした。(数学にしても大学3年のときに落ちこぼれていました。)

アイザック・ニュートンが著書『プリンキピア』で万有引力の法則を発表したのは1687年で江戸時代前期のことです。そしてジェームズ・クラーク・マクスウェルが電磁気学の法則(マクスウェル方程式)を完成させたのは1864年の幕末です。理数系を選択していても高校までの物理で計算方法を学べるのはそのあたりまでです。(原子や素粒子のことも高校で学びますが、ほんのさわり程度で計算方法は学べません。)

数学にいたっては数学IIIまで履修したとしても、学べるのは大ざっぱに言って18世紀初頭(江戸時代中期)までに研究された内容にすぎません。

物理学にしても数学にしても、それ以降に見つかったことは大学に入ってからしか学ぶことができないわけです。さまざまな電気製品、交通機関や移動手段が利用可能になり生活スタイルは大きく変わりましたが、ほとんどの人の自然の理解のレベルは江戸時代や明治時代の人と大差ないのです。現代人のほとんどは相対性理論や量子力学というのがあるのを知っているだけで理解しているわけではありません。

これだけ長い年月をかけて数千人(数万人?)の天才たちが苦労して発見し、私たちに残してくれた貴重な知的資産を理解せずに一生を終えてしまうのは実にもったいないとは思いませんでしょうか?

小説を読んだり、音楽を聴いたりすることも人生を豊かにしてくれます。僕もそれらを楽しむのは大好きです。けれどもそれらはしょせん一人の小説家や音楽家の限られた頭の中で創作されたものにすぎません。物理学や数学のように先人の知恵や成果をもとに積み上げられていくものではないからです。


相対性理論や量子力学も理解したいですし、できれば超弦理論も理解したいものです。けれどもそれ以前にどれほどの人が身の回りのことをちゃんと理解できているでしょうか?

- 目の前のガラスのコップはなぜ透明に見えるのでしょうか?
- 物や自分自身は原子でできていると教えられていても、見たことのないそれはなぜあると言えるのでしょうか?
- テレビなど電気製品に使うリモコンはなぜ赤外線を使うのでしょうか?
- スマートホンを使うと充電した電気(電子)はどこかに消えてなくなってしまうのでしょうか?

など、世の中はきちんと学ばないとわからないことだらけです。これらは高校までの授業では学ぶことができません。

空間や時間、原子や電子、光子(そしてそのほかの素粒子)、そしてそれらの間に働く力やエネルギーの振る舞いを学んでいくうちに、これらの疑問は少しずつ解決していくのです。私たちの目にはそれぞれ違って見えるこの世界の出来事も、もとを正せば自然界を構成するこれらの要素の働きによるものです。

いずれ相対性理論やテレポーテーション、超弦理論を理解したいと読書を続けていくうちに僕はこのように身近かな自然現象を理解することの面白さにも気が付きはじめました。


本を1冊読んでは感想記事を書くというようなことを11年続けています。始めてから6年後には感想記事が200冊ぶんに達しました。そこまでの経験は「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」という記事にまとめてあります。200冊ぶんの書名は「最初に読んだ理数系書籍200冊の書名一覧」でご覧いただけます。

それから4年後には感想記事が300冊に達しました。201冊めから300冊めについては「300冊の理数系書籍を読んで得られたこと」という記事にまとめてあります。

超弦理論まで時間を無駄にすることなく学んでみたいという方のためには「超弦理論への最短ルート: 40冊の物理学、数学書籍」や「超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍」という記事にまとめておきました。

このほか高校生や大学1、2年生向けには「高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍」や「大学で学ぶ数学とは(概要編)」がお勧めです。

地道な読書を続けた結果、始めてから1年後には相対性理論と量子力学を、6年後には量子テレポーテーションをかろうじて理解でき、7年後には超弦理論の入門書を読み始めることができました。それぞれ「時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎」、「量子光学と量子情報科学:古澤明」、「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」、「初級講座弦理論 発展編:B.ツヴィーバッハ」という記事にまとめてあります。そして最初の10年間のことは「祝: とね日記はおかげさまで10周年!」でお読みいただけます。

分野別に記事を探したい方は「記事一覧(分野別)」からお入りください。


このようなわけで、ほとんどは本の感想記事なので物理学や数学を学べるわけではありません。けれどもそれらの面白さを高校生レベルの読者に伝えることはできないだろうかという観点から、いくつか記事を書いています。お勧めは次のような記事です。

数学:
- 因数分解って何の役に立つの?
- 高次元空間の隙間の大きさ
- キス数
- "5" で現れる不思議な形 (フェルマー点の話)
- 多次元空間へのお誘い(連載記事)
- 虚数は私たちの世界観を変えてしまった。
- 虚数や複素数に大小がないのはなぜ?

物理学:
- 「理科復活プロジェクト」始動!
- 地球を8000万個に分割してみた - 重心と質点の話
- 半地球の重力場を描いてみた - 重心と質点の話
- ストッキングを使った極小曲面、最小面積曲面の実験
- 鉛筆はどれくらいの時間立っていられるか?


とね日記はこのようなブログです。しかし、これを続けていてもノーベル賞候補になれるわけではありません。研究をしているわけではありませんし、論文も書いていないわけですから。それなら自分で賞を作ってみてはどうだろうかと思って2010年に始めたのが「とね日記賞」です。その年に読んだ本のうち特に素晴らしいと思った本に賞をあげてしまおうというわけです。

ブログの紹介をしながら、リンクでたくさんの入口をつけてみました。10年以上続けていますからブログの中は迷宮のようになっています。ぜひ興味のある入口からお入りください。

読書や勉強から得られる知識や発見はお金では買うことのできない価値のひとつです。


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2016年 ノーベル物理学賞はサウレス先生、ホールデン先生、コスタリッツ先生に決定!

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今年のノーベル物理学賞は物性物理の研究者3人が受賞した。2次元物質(薄膜)のトポロジカル相転移の理論的発見が授賞理由だ。

この分野は学んだことがないので、ニュース記事と授賞理由(英文)を転記するにとどめておこう。サウレス先生、ホールデン先生、コスタリッツ先生、受賞おめでとうございます。




物理学は米研究者3人=物質の新理論で―ノーベル賞

スウェーデン王立科学アカデミーは4日、2016年のノーベル物理学賞を、米大学の研究者3人に授与すると発表した。

授賞理由は「物質のトポロジカル相とトポロジカル相転移の理論的発見」。新世代のエレクトロニクスや超伝導、将来の量子コンピューターに役立つと期待される。

3人はいずれも英国出身のデービッド・サウレス米ワシントン大名誉教授とダンカン・ホールデン米プリンストン大教授、マイケル・コスタリッツ米ブラウン大教授。

サウレス、コスタリッツ両氏は1970年代初め、電気抵抗がゼロになる超伝導は薄膜では起きないとの理論を覆し、低温で起きることを示した。高温になると起きなくなる原因は、物質の「相転移」によると説明した。

ホールデン氏は80年代に、一部の物質で見つかった磁性体の性質を理解するのにトポロジー(位相幾何学)の概念を利用できることを発見した。


授賞理由(英文)

上記の動画の中でも解説されている授賞理由は次の文書で解説されている。素人にもわかるように平易な文章で書かれている。

Strange phenomena in matter’s flatlands
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2016/popular-physicsprize2016.pdf

この文書は量子ホール効果(Quantum Hall Effect)を理解しておくと読みやすくなる。

量子ホール効果
http://www.ltm.kyoto-u.ac.jp/teijigen/qhe.htm

半導体2次元電子系と量子ホール効果(対象:高校生~大学院生)
http://dolphin.phys.s.u-tokyo.ac.jp/research/2des/


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2016年 ノーベル化学賞はソバージュ先生、ストダート先生、フェリンガ先生に決定!

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化学は僕の守備範囲ではないが、今年のノーベル化学賞は物理学、工学っぽい研究なのでとても興味がある。ブログに記録しておこう。

ニュース記事と授賞理由(英文)を転記するにとどめておく。ソバージュ先生、ストダート先生、フェリンガ先生、受賞おめでとうございます。




<ノーベル賞>化学賞は仏米オランダの3氏

◇受賞理由は「分子機械の設計と合成」

スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2016年のノーベル化学賞を欧米の3氏に贈ると発表した。受賞理由は「分子機械の設計と合成」。機械のように動く分子を人工的に効率よく合成することに成功し、コンピューターの超小型化やナノメートル(1ミリの100万分の1)サイズの機械開発への応用につながることが評価された。

受賞するのは、フランス・ストラスブール大のジャンピエール・ソバージュ名誉教授(71)、米ノースウエスタン大のフレーザー・ストダート教授(74)、オランダ・フローニンゲン大のベルナルド・フェリンガ教授(65)。

分子機械は髪の毛の太さの1000分の1ほどの大きさで、有機化合物などで作られる。ソバージュ氏は1980年代、リング状の分子を知恵の輪のように効率よく結合させることに成功した。ストダート氏はリング状の分子に軸を通し、エレベーターのように動く分子などを作った。フェリンガ氏はヘリコプターの回転翼のように思い通りの方向に回せる分子を開発した。

これらはいずれもより複雑な分子機械を作るための基本的な部品となるものだ。同アカデミーは「1830年代に電気のモーターが開発されたのと同じ段階にある」と指摘し、「化学に新たな分野を切り開いた。分子モーターによる機械は、新たな材料やセンサー、エネルギー貯蔵システムなどへの応用が期待される」とたたえた。


授賞理由(英文)

上記の動画の中でも解説されている授賞理由は次の文書で解説されている。素人にもわかるように平易な文章だ。

How molecules became machines
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2016/popular-chemistryprize2016.pdf

Molecular Machines
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2016/advanced-chemistryprize2016.pdf

日本科学未来館:科学コミュニケーターブログ
2016年ノーベル化学賞 現実の世界を分子の世界にも!!
http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20161005post-704.html


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発売情報: 重力(上)(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル

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重力(上) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
重力(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル

内容紹介:
最小限の数学で学べる一般相対性理論の画期的教科書!
本書は「世界天文年2009日本委員会公認」書籍に選ばれました。
アインシュタインの一般相対性理論は、現代物理学に欠かせない基礎である。それは、ブラックホール、曲がった時空、重力波、宇宙論などの豊かな話題を提供し、学ぶものすべてを魅了する。しかしこの学習には、微分幾何学の知識を身に付け,アインシュタイン方程式を導入しなければならない大きな壁があった。
本書は、学部のカリキュラムに一般相対性理論を取り入れ、物理専攻の可能性を持つすべての学生がこの基礎理論を学べるようにした、画期的な教科書である。高名な相対性理論物理学者のジェームス・ハートルは、科目へのアプローチとして「まずは物理を!」をかかげ、複雑な数学は最小限ですませながら物理現象への理論適用を説明し、一般相対性理論を取り組みやすいものしている。学生にとっては、学ぼうとしている重力物理学から始められ、難しい数学でつまずくことがなく理論を身につけられる。
2016年6月刊行、上巻350ページ、下巻343ページ。

著者について:
ジェームズ・B・ハートル
カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授

訳者について:
牧野伸義
1966年生まれ。1994年、広島大学大学院理学研究科博士課程修了。現在、大分工業高等専門学校一般科理系教授。理学博士。


今年の6月に発売されていたのでご存知の方が多いだろう。紹介するのを忘れていたので、今さらながら記事にしておくことにした。

一般相対性理論の中級者向けの教科書である。有名な「重力理論 Gravitation-古典力学から相対性理論まで、時空の幾何学から宇宙の構造へ」は1300ページ近くあるので通読向きではないが、こちらは上下巻合わせて700ページ弱。実質540ページほどなのでぎりぎり読み通せる分量だ。

もともと2008年に刊行され好評を得ていた「重力 アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル」が絶版状態になり、新たに小型化+分冊化したものだ。そのため上下巻合わせたページ数は分冊化前の本よりも増えている。おかげで携帯性がよくなった。


章立てはこのとおり。ブラックホールや重力波を学ぶには恰好の教科書といえる。

上巻

第I部 ニュートン物理学と特殊相対論における空間と時間

第1章 重力物理学
第2章 物理としての幾何学
第3章 ニュートン物理学の空間と時間,重力
第4章 特殊相対性理論の原理
第5章 特殊相対論的力学

第II部 一般相対性理論の曲がった時空

第6章 幾何学としての重力
第7章 曲がった時空の表し方
第8章 測地線
第9章 球対称星外部の幾何学
第10章 一般相対性理論の太陽系実験
第11章 実際の相対論的重力
第12章 重力崩壊とブラックホール
付録A 単位

下巻

第13章 宇宙物理学的ブラックホール
第14章 少しの回転
第15章 回転するブラックホール
第16章 重力波
第17章 観測された宇宙
第18章 宇宙モデル
第19章 どの宇宙、そして、なぜ?

第III部 アインシュタイン方程式

第20章 少しだけ数学
第21章 曲率とアインシュタイン方程式
第22章 曲率の発生源
第23章 重力波放射
第24章 相対論星

付録B
付録C
付録D


翻訳のもとになった原書は2002年に発売された革新的な教科書である。Kindle版は固定レイアウトなのでご注意いただきたい。

Gravity: An Introduction to Einstein's General Relativity: James B. Hartle」(Kindle版



ちなみにシュッツの「A First Course in General Relativity」の初版は1985年、第2版は2009年刊行である。日本語版はこちらで購入できる。


関連講座:

日本物理学会2016年度公開講座 「一般相対性理論と宇宙 -重力波研究の最前線-」
http://www.jps.or.jp/public/koukai/koukai-2016-11-26.php

内容: 1916年にアインシュタインが発表した重力波の理論から今年でちょうど100年。その間の目覚ましい科学技術の進展により、去る2月、アメリカのLIGOグループがアインシュタインですら困難と考えていた重力波の直接検出に成功し、大きな話題となりました。新たな重力波の世紀が幕を開けたいま、第一線で活躍されている研究者による「重力波研究の歴史」「重力波の理論とシミュレーション」「重力波の観測」などのお話で、はるか彼方、宇宙の出来事を奏でる波に思いを馳せてみませんか?

期日: 2016年11月26日(土)13:00~16:45
会場: 東京大学本郷キャンパス 伊藤謝恩ホール(赤門の右隣)
参加費: 無料(要事前申込。)
定員: 350名(申込先着順で定員になり次第締め切らせていただきます。)


関連記事:

重力波の直接観測に成功!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a8439e8e4d81d7873422737d7bd1640d

一般相対性理論に挑戦しよう!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea7ad9292ce01ad4abbbc8c98f3303d0

趣味で相対論(EMANの物理学)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/90aa60383b600ff4e4fd7bea6589deaa

重力理論 Gravitation-古典力学から相対性理論まで、時空の幾何学から宇宙の構造へ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f838b8f6c2554000933187df89e08013

アインシュタイン選集(2): 一般相対性理論および統一場理論
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e


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重力(上) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
重力(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル

 

上巻

第I部 ニュートン物理学と特殊相対論における空間と時間

第1章 重力物理学

第2章 物理としての幾何学
2.1 重力は幾何学だ
2.2 幾何学の実験
2.3 いろいろな幾何学
2.4 幾何学を決める
2.5 座標と線素
2.6 座標と不変性

第3章 ニュートン物理学の空間と時間,重力
3.1 慣性系
3.2 相対性原理
3.3 ニュートン重力
3.4 重力と慣性質量
3.5 ニュートン力学の変分原理

第4章 特殊相対性理論の原理
4.1 速度の加法則とマイケルソン-モーレーの実験
4.2 アインシュタインの革命とその成果
4.3 時空
4.4 時間の遅れと双子のパラドックス
4.5 ローレンツブースト
4.6 単位系

第5章 特殊相対論的力学
5.1 4 元ベクトル
5.2 特殊相対論的運動学
5.3 特殊相対論的力学
5.4 自由粒子の運動の変分原理
5.5 光線
5.6 観測者と観測

第II部 一般相対性理論の曲がった時空

第6章 幾何学としての重力
6.1 重力質量と慣性質量の等価のテスト
6.2 等価原理
6.3 重力場中の時計
6.4 GPS
6.5 時空は曲がっている
6.6 時空のことばで表したニュートン重力

第7章 曲がった時空の表し方
7.1 座標系
7.2 計量
7.3 総和規約
7.4 局所慣性系
7.5 光円錐と世界線
7.6 対角計量のときの長さと面積,体積,4 元次体積
7.7 埋め込み図とワームホール
7.8 曲がった時空中のベクトル
7.9 4 次元時空中の3 次元曲面

第8章 測地線
8.1 測地線方程式
8.2 対称性と保存則による測地線方程式の解法
8.3 ヌル測地線
8.4 局所慣性系と自由落下系

第9章 球対称星外部の幾何学
9.1 シュワルツシルト幾何学
9.2 重力赤方偏移
9.3 粒子軌道-近日点移動
9.4 光線軌道-光の曲がりと時間の遅れ

第10章 一般相対性理論の太陽系実験
10.1 重力赤方偏移
10.2 PPN パラメータ
10.3 PNN パラメータγの測定
10.4 PPN パラメータβの測定-水星の近日点移動

第11章 実際の相対論的重力
11.1 重力レンズ効果
11.2 コンパクト天体の周りの降着円盤
11.3 連星パルサー

第12章 重力崩壊とブラックホール
12.1 シュワルツシルトブラックホール
12.2 ブラックホールへの崩壊
12.3 クルスカル-スゼッケル座標
12.4 非球対称重力崩壊

付録A 単位
A.1 単位の一般論
A.2 本書で使われる単位


下巻

第13章 宇宙物理学的ブラックホール
13.1 X 線連星のブラックホール
13.2 銀河中心のブラックホール
13.3 ブラックホールの量子的蒸発--ホーキング放射

第14章 少しの回転
14.1 慣性系の回転的引きずり
14.2 曲がった時空のジャイロスコープ
14.3 測地的歳差
14.4 ゆっくり回転する球対称物体外部の時空
14.5 ゆっくり回転する物体の時空中のジャイロスコープ
14.6 ジャイロと自由落下系

第15章 回転するブラックホール
15.1 宇宙検閲官
15.2 カーブラックホール
15.3 回転ブラックホールの地平
15.4 赤道面における軌道
15.5 エルゴ球

第16章 重力波
16.1 線形重力波
16.2 重力波の検出
16.3 重力波の偏極
16.4 重力波干渉計
16.5 重力波のエネルギー

第17章 観測された宇宙
17.1 宇宙の構成物
17.2 膨張宇宙
17.3 宇宙の地図

第18章 宇宙モデル
18.1 一様,等方時空
18.2 宇宙論的赤方偏移
18.3 物質と放射,真空
18.4 平坦FRW モデルの進化
18.5 ビッグバンと宇宙の年齢と大きさ
18.6 空間的に曲がったロバートソン--ウォーカー計量
18.7 宇宙の力学

第19章 どの宇宙、そして、なぜ?
19.1 宇宙の探査
19.2 宇宙の説明

第III部 アインシュタイン方程式

第20章 少しだけ数学
20.1 ベクトル
20.2 双対ベクトル
20.3 テンソル
20.4 共変微分
20.5 再び自由落下系

第21章 曲率とアインシュタイン方程式
21.1 潮汐重力
21.2 測地線偏差の式
21.3 リーマン曲率
21.4 真空のアインシュタイン方程式
21.5 線形重力

第22章 曲率の発生源
22.1 密度
22.2 エネルギー運動量の保存
22.3 アインシュタイン方程式
22.4 ニュートン極限

第23章 重力波放射
23.1 発生源のある線形アインシュタイン方程式
23.2 発生源のある波動方程式の解法
23.3 線形重力の一般解
23.4 弱い重力波の発生
23.5 連星からの重力波
23.6 重力波によるエネルギー損失の四重極公式
23.7 連星パルサーで検出された重力波の効果
23.8 強い波源への期待

第24章 相対論星
24.1 パウリ原理の威力
24.2 相対論的静水圧平衡
24.3 星のモデル
24.4 基底状態の物質
24.5 安定性
24.6 中性子星の最大質量の限界

付録B
付録C
付録D

線型代数[改訂版]: 長谷川浩司

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線型代数[改訂版]:長谷川浩司

内容紹介:
高校の学習指導要領改訂に伴い、0章として2×2行列の基本を追加。旧版同様、丁寧に解説。基礎から応用までほぼ網羅した一冊。
本書は雑誌『数学セミナー』に2001年4月号から19回にわたり連載された原稿に加筆したものである。読者としては、おもに大学1、2年生を想定する。内容は東北大学の理系1~2年生向け講義に基いており、1990年代後半に半期で設定された工学部向け講義用のプリントが原形である。
2015年3月刊行、408ページ。

著者について:
長谷川浩司: ホームページ: http://www.math.tohoku.ac.jp/~kojihas/
1963年、静岡県榛原郡生まれ。1987年、名古屋大学大学院理学研究科数学専攻修了。博士(理学)。現在、東北大学大学院理学研究科准教授。


理数系書籍のレビュー記事は本書で319冊目。

これは今年の1月に「線形代数学入門のための教科書談義」という記事で紹介した教科書のうちの1つだ。読んでいないのに勧めるのは無責任だと思い、8月7日あたりから読み始めていた。間に何冊か量子力学系の教養書を挟んでいたのでやっと読了した。

線型代数は大学の授業で指定される教科書や演習書、自分で選ぶ副読本的な教科書でモチベーションや学習効率はずいぶん違ってくることを、あらためて感じることになった1冊だった。理数系学部の学生はおしなべて1、2年生のときに線型代数を学ぶわけだが、その学部(あるいは学科)に適した教科書、将来自分がどこまで学問を続けるかによって最適な本は違ってくる。万人にとってベストな本というのはひとつに決まらないと思うのだ。


大学時代の思い出

僕自身、大学時代は数学専攻で主に教授が自作したプリントと「詳説演習線形代数学」で学んでいた。今この演習書を読み返してみると、章の始めには教科書的な解説が書かれているし、演習問題の選び方が優れていることがわかる。カバーしている範囲も複素線形空間、抽象的な線形空間まで含んでいて十分だ。特にこの教科書は解析幾何学への応用に多くのページを割いているのが特徴だ。当時の僕は物理学に興味を持っていたわけではないから、幾何学への応用例はモチベーションアップに好都合だったと思う。幾何的なイメージを大切にしながら具体と抽象のバランスがとれた演習書である。ただしジョルダン標準形は割愛されているのでご注意いただきたい。


工学部で使われている演習書の例

工学部では複素線形空間や抽象的な線形空間をカバーしていない実線形行列の計算がほとんどの演習書が指定されることがある。3行3列、4行4列の行列式の変形計算ばかりをやらされて「線形代数って何の役に立つの?」と思ってしまうのは無理からぬことだ。

3D CGや3Dゲーム開発、電子工学や制御理論に使われるのはわかるけど、具体的に見て納得しないと気持ちが高まらないのが工学系の気質だから。昨今注目されている機械学習やディープラーニングにも線形代数は大いに役立っている。

けれどもパズルのような計算ばかりやらされる学生は「線形代数って計算が面倒なだけで、つまらないよね。」というイメージをしっかり心に刻んで卒業していくわけである。このトラウマは失恋の痛手のように時が癒してくれるようなものではなく、いつまでも続くたちが悪いものだ。


本書について

さて「線型代数[改訂版]:長谷川浩司」についてだが、物理学科の学生には最適な副読本、自習書だといえる。正直この本の内容の豊富さには驚いてしまった。章立てはこのとおり。

序章:ことはじめ

第1部 入門編:2次行列と平面の1次変換

0章 行列入門
1章 平面ベクトルと2次正方行列
2章 平面の1次変換の合成、行列式
3章 2次正方行列の対角化
4章 2次正方行列の対角化(2)
5章 解析との関連から

第2部 基本編:線型写像・次元・行列式

6章 多成分ベクトルと線型写像
7章 空間の幾何
8章 はき出し法、逆行列、階数
9章 像と核、次元定理
10章 正規直交基底など
11章 n次の行列式
12章 行列式の応用
13章 行列の対角化

第3部 展開編:一般のベクトル空間――さまざまな数学への扉

14章 一般のベクトル空間
15章 内積および正規行列
16章 行列のなす群
17章 ベクトル空間の間の演算
18章 ジョルダン標準形
19章 展望・量子力学入門


とても欲張りな本だということがわかると思う。よいと思った点は次のことだ。

- 大学1年生から読むことができる。
- 行列式の変形や逆行列、行列の標準化などの具体的な計算と意味の解説がとても丁寧。
- 線形代数で学ぶべきほぼすべての内容をカバーしている。
- 各章にはその章で扱った内容が、どのような数学に発展していくのかが具体的に例示されている。
- されにそれらの数学理論が物理学でどのように利用されていくのかが具体的に例示されている。
- 各章末にはさらに学習を深めるために次の段階として読むべき教科書とそのあらましが解説されている。

反面、この本の難点は次のようなことがあげられる。

- 分厚すぎて持ち運びに不便。巻末の50ページほどは問題の解答にあてられているので正味は350ページ。
- 教科書として指定されないことが多い。分量が多すぎてこの本をもとに授業を組み立てるのは困難。教師泣かせの教科書である。
- 大学1、2年のうちは無駄に思えてしまうほど線型代数以外のことが詳し過ぎる。3年生以上になってこの本の真価が理解できる。

難点の原因はこの本がカバーしている範囲が広いこと、記述が丁寧であることによるものだから仕方がないと言える。この本が線形代数の教科書の「ひとつの完成形」であることには違いない。


学生はどのように本書を活用すべきか

授業で線形代数を学んでいる1、2年生のうちはその進度に合わせて本書の第1部と第2部を自習すればよいわけだが、物理学科、数学科、工学部の学生は本書をどのように感じるだろうか?また、本書をどのように読んだらよいのだろうか?

物理学科の学生:

第2部あたりの線形代数から発展する数学の部分を難しく感じると思う。しかしそれらは「物理数学」として学ぶことになる内容なので、理解は不十分でも目を通しておいたほうがよい。

1、2年生のうちは物理学の学習も電磁気学に集中し、量子力学を学び始めるころなので余裕があったら第3部の第18章までを学ぶとよい。第19章は量子力学で学ぶことなので、特に焦って読む必要はない。量子力学を学び終えてから復習がてらにお読みになればよいと思う。

研究者を目指す方は、1、2年のうちに本書を卒業して「線型代数学(新装版):佐武一郎」に挑戦するとよいと思う。

数学科の学生:

第2部あたりの線形代数から発展する数学の部分は、3年生以降に選択科目として履修する内容(常微分方程式、外積代数、群論、関数解析、リー代数などの入門編)が含まれているので、自分の方向性を決めるのに役に立つだろう。第3部についても第19章を除けば同じことが言える。第19章は量子力学に興味がある人だけお読みになればよい。

数学科の学生ならば本書を学んだ上で、さらに抽象度の高い佐竹先生の教科書で学ぶことをお勧めする。名著としての誉がある教科書である。数学者の黒木玄先生もツイッターで「長谷川先生の本と佐武先生の本を両方とも読むとよい。」とおっしゃっている。(参考リンク:「黒木さん発言録: 佐武『線形代数学』と長谷川浩『線形代数』が面白いという話をまとめた」)

線型代数学(新装版):佐武一郎」- 2015



工学部の学生(そして線形代数を学ぶその他の学部の学生):

たまたま授業で指定された教科書や演習書がカバーしている範囲が狭いと学生にとっては不幸である。与えられた教科書や演習書が全てだと思い込むことになりがちだから。本書は目次を確認したり、ざっと眺めるだけでも広い視点から線形代数で学べる内容を俯瞰でき、与えられた教科書だけだと十分でないことがわかるようになる。

線形代数は計算ばかりでつまらないと思うなら、本書の第1部と第2部だけでも読んでいただきたい。計算だけではイメージがわかないことも、その深い意味や役割、幾何的なイメージがつかめるようになるだろう。将来、専門課程に進んだり、仕事についたとき線形代数を学びなおす必要がでてきたときに、トラウマを感じないで取り組むことができるようになると思う。

またこのカテゴリーに入る学生のうち微分方程式や量子力学を学ぶ学生、そして情報工学・通信工学系の学生は「トラウマ防止」、「トラウマ解消」のような消極的な気持ちではなく、本書の第1部と第2部を積極的にお読みになるとよい。今後の勉強にきっと役に立つことだろう。

工学部や線形代数を学ぶその他の学部の学生の中にも、もちろん数学が好きで仕方がないという方もいるわけで、そのような方は本書を全部お読みになるとよいだろう。


まとめ

線型代数を学んだのは大学生のとき以来だったが、演習問題中心で学んでいた僕は本書がとても面白く、これまで学んでいた物理学や数学との結びつきが明確に印象付けられたので、とても有意義な読書となった。


本書は昨年刊行されたばかりだが、今回の改訂版は高校数学の行列の内容を第0章として加えたものだ。改訂前の教科書は「線型代数:長谷川浩司」として2004年に刊行された。改訂前の本(390ページ)の中古価格はとても安いので、高校数学の行列は不要という方は改訂前の本をお買い求めになるとよいだろう。改訂前の本をお買い求めの場合は長谷川先生のHPに掲載されている誤植情報に注意。改訂版についても誤植はほとんどないのがよいところ。


関連記事:

大学で学ぶ数学とは(概要編)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07137c47d16d95ddde8f5c4cb6f37d55

大学で学ぶ数学とは(実用数学編)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/975ad3faa2f6fd558b48c76513466945

『数学ガイダンス2016』数学セミナー増刊:日本評論社
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/20e4c86d6279ba015ba36e0e79953bf5

解析学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22c325e49cfd7c721679dbc2896b86a4

線形代数学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9d2ac30c9f5f620ad703304d710ed90b

ちょっと気になる常微分方程式の本
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/779e59b0996c582373308c0a4facf16f


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線型代数[改訂版]:長谷川浩司



序章:ことはじめ
1. 連立1次方程式
2. 多変数の微積分
3. 1次変換と身近な非可換
4. 次元
5. 常微分方程式
6. シュレディンガー方程式
7. 考える道具として
8. まずは2行2列から

第1部 入門編:2次行列と平面の1次変換

0章 行列入門
0.1 行列とは
0.2 行列の加法とスカラー倍
0.3 行列の積
0.4 行列の積の性質
0.5 可換と非可換
0.6 逆行列
0.7 連立1次方程式と逆行列
0.8 まとめ

1章 平面ベクトルと2次正方行列
1.1 平面ベクトル
1.2 行列とベクトルの演算
1.3 平面の回転
1.4 行列と1次変換
1.5 まとめ
1.6 ことばの準備

2章 平面の1次変換の合成、行列式
2.1 写像の合成と行列の積
2.2 回転の合成
2.3 複素数の行列表示
2.4 逆行列と逆写像
2.5 行列式と1次変換の面積比
2.6 行列式が0のとき

3章 2次正方行列の対角化
3.1 座標系のとりかえ
3.2 直線に関する折り返し
3.3 2次曲線の概形をしらべる問題
3.4 固有ベクトルと対角化
3.5 固有方程式と固有ベクトル
3.6 対角化の例

4章 2次正方行列の対角化(2)
4.1 行列のn乗と線型漸化式
4.2 ジョルダン標準形
4.3 ケーリー――ハミルトンの定理とその応用
4.4 微分方程式とジョルダン標準形

5章 解析との関連から
5.1 2次曲面の概形
5.2 2変数の極値問題との関係
5.3 ベクトル値関数の微分方程式
5.4 行列の指数関数
5.5 回転行列とオイラーの式

第2部 基本編:線型写像・次元・行列式

6章 多成分ベクトルと線型写像
6.1 数ベクトル空間
6.2 行列とその演算
6.3 線型写像とその行列表示
6.4 いろいろな行列
6.5 スカラーの範囲が実数でない場合
6.6 ユークリッド空間、長さと内積
6.7 空間の回転を表す行列

7章 空間の幾何
7.1 直線
7.2 平面
7.3 平行6面体の体積
7.4 向きと行列式
7.5 ベクトル積

8章 はき出し法、逆行列、階数
8.1 行の基本変形、列の基本変形
8.2 行変形で逆行列を求める
8.3 列変形の意味
8.4 長方行列のとき。行列の階数
8.5 一般の連立1次方程式の解のパターン

9章 像と核、次元定理
9.1 像と核、部分ベクトル空間
9.2 次元の定義
9.3 次元の定義がうまくいっていること
9.4 次元定理
9.5 列変形の応用
9.6 はき出し法のバージョンアップ

10章 正規直交基底など
10.1 1次独立性と基底再論
10.2 部分空間の和と共通部分
10.3 正規直交基底
10.4 シュミットの直交化
10.5 直交補空間

11章 n次の行列式
11.1 3元連立1次方程式を強引に解くと
11.2 3次行列式の性質
11.3 n次行列式の定義
11.4 余因子展開と逆行列の公式

12章 行列式の応用
12.1 乗法性とその帰結
12.2 体積と行列式
12.3 向きと行列式
12.4 外積代数と小行列式
12.5 特殊な行列式

13章 行列の対角化
13.1 固有ベクトルと対角化
13.2 三角化とケーリー――ハミルトンの定理
13.3 固有空間への射影
13.4 ジョルダン標準形

第3部 展開編:一般のベクトル空間――さまざまな数学への扉

14章 一般のベクトル空間
14.1 ベクトル空間の定義
14.2 基底と次元、ベクトル空間の同型
14.3 線型写像の行列表示、基底変換の公式
14.4 線型常微分方程式の解空間
15章 内積および正規行列
15.1 内積のある空間
15.2 正規行列とテープリッツの定理
15.3 定理34の証明:同時三角化
15.4 実正規行列の標準形
15.5 実2次形式と2次曲面の概形

16章 行列のなす群
16.1 斉次でない2次式とアフィン変換
16.2 射影変換
16.3 行列のなす群と幾何学
16.4 行列の関数、とくに指数関数
16.5 リー代数入門

17章 ベクトル空間の間の演算
17.1 空間の「和」と「差」:直和と補空間
17.2 もうひとつの差:商空間とその応用
17.3 双対空間
17.4 テンソル積

18章 ジョルダン標準形
18.1 目標の定理
18.2 定数係数線型常微分方程式再論
18.3 単因子と標準形:例
18.4 単因子と標準形:一般のとき

19章 展望・量子力学入門
19.1 量子力学の枠組
19.2 調和振動子
19.3 コヒーレント状態
19.4 固有関数展開とデルタ関数
19.5 一般展開定理

付録
参考書
問題略解
索引

祝: トータル閲覧数1000万ページ達成

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2005年2月に始めたこのブログのトータル閲覧数が1000万ページ(PV: Page View)に達した。たまたま今日は僕の誕生日なので、タイミングよく自分へのうれしいプレゼントになった。

アクセス状況はPCで表示したときだけブログの左枠に表示される。


今年の3月31日に300万アクセス(IP)達成したときには903万ページ(PV)だったので、それから半年で97万ページを増やしていたことになる。

「アクセス」の欄の閲覧 5,121 PV、訪問者 1,729 IPは昨日1日のぶんである。また日別、週別のランキング125位と114位はgooブログ全体(昨日の段階で2,615,283ブログ)の中での順位である。261万ブログあるといっても、更新されていないブログがたくさんあることに注意したい。

これまでのアクセス数とページ閲覧数の日平均は次のように推移していた。

累計0~40万アクセスの期間(2005年~2010年):日平均191アクセス、ページ閲覧数504page
累計40万~50万アクセスの期間(2010年~2011年):日平均800アクセス、ページ閲覧数2013page
累計50万~100万アクセスの期間(2011年~2012年):日平均973アクセス、ページ閲覧数3107page
累計100万~200万アクセスの期間(2012年~2014年):日平均1525アクセス、ページ閲覧数4266page
累計200万~300万アクセスの期間(2014年~2016年):日平均1502アクセス、ページ閲覧数5012page
累計300万~335万アクセスの期間(2016年~昨日):日平均1774アクセス、ページ閲覧数4825page




ブログの知名度を押し上げた「事件」は過去2回あったことが「TopHatenarの分析のページ」でわかる。「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」、「NHKスペシャル「神の数式」の感想」を多くの方に読んでいただいたことだ。それ以来、はてなブックマークサイトでの購読者数、ブックマーク数はほとんど増えていない。

画像クリックで拡大



浅草の「花やしき」の来園者数は年間50万人だというから日平均は1369人、「上野動物園」の来園者数は年間380万人だそうで日平均は1万人くらい。だからこのブログの1日のアクセス数1774人とは、「花やしきより少し多く、上野動物園には遠く及ばない。」というところなのだ。

日本人がノーベル物理学賞をとったり、重力波検出のような大成果があっても世の中の人の関心はせいぜい1~2週間ほどしか続かないことがこの10年の動きを見て感じたことだ。(それは一般の事件のニュースでも同じこと。)

ちなみに10月第1週はノーベル賞の発表期間だったが、物理学と化学は予想外の分野だったこと、(物理学賞、化学賞を)日本人が受賞しなかったこと、僕にとっては守備範囲外の分野でたいした記事を書いていなかったことなどから、今年は特にブログのアクセス数が増えなかった。10月10日あたりにピークがあるが、これはノーベル賞とは関係ない。




アクセス数やページ閲覧数は主に過去記事によって支えられている。たとえば昨日の記事別アクセス数ランキングは次のとおりだ。昔書いた記事も読まれていることがわかる。僕としてはトップページへのアクセスがいちばん多いのが嬉しい。なぜなら「とね日記」というキーワードで検索し、ブログを開いていただいているわけだから。



100万アクセスを達成した2012年頃とくらべて、全体的にページ閲覧数が増えていることや、読んでいただいている記事が変化していることがわかる。

ペットの話題や料理の話題、芸能人ネタなど、より一般的な事柄を記事にすれば、アクセス数は格段にアップする。反対に物理学や数学の記事で、数式を使った専門的な記事であればあるほど、理解できる読者は少なくなりアクセス数は減る。

物理ブログ、科学ブログとしての価値はアクセス数やランキングでは測れないものだと僕は思っている。これからも記事に対する一般の方の関心事と内容の専門性のバランス感覚を大切にしていきたい。


これからも当ブログをよろしくお願いいたします。


参考リンク:

祝: 累計300万アクセス達成!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/797af5593da46c534ba570e51188ad68

300冊の理数系書籍を読んで得られたこと
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8d57c3e2ee6d39fe7a1b083af03a3d41

こよみの計算 > 日にち・曜日(CASIO高精度計算サイト)
http://keisan.casio.jp/has10/Menu.cgi?path=01200000%2e%82%b1%82%e6%82%dd%82%cc%8cv%8eZ%2f02000000%2e%93%fa%82%c9%82%bf%81E%97j%93%fa


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先祖の足跡を辿れ 幕末から昭和を生き抜いた山路家の人々:佐藤昭・ゆり

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先祖の足跡を辿れ 幕末から昭和を生き抜いた山路家の人々:佐藤昭・ゆり

内容紹介:
ルーツへのルートは開けるのか――福山、広島、神戸、横浜、東京、そして、再びの広島、神戸……。思わぬ手がかり、その一方で深まる謎。曾祖父、祖父の歩んだ道はどのようなものだったのか。親族などへの聞き取り調査、丹念な史料探索によって、幕末・明治初期まで遡り、見えてきたものは何か。ミステリー小説より面白い! 近代日本の人々の足音が聞こえてきます。
2016年11月1日刊行。290ページ

著者について:
佐藤 昭(さとう あきら)
昭和20年北海道生まれ。
北海道大学法学部卒。
伊藤忠商事、そして子会社伊藤忠産機(現伊藤忠マシンテクノス)の専務取締役。長い海外勤務を経て退職。

ゆり
昭和23年広島県生まれ。
広島比治山女子短期大学美術科卒。



本書の著者の佐藤さんから初めてご連絡をいただき、やり取りをするようになったのは今年の5月31日のことだった。2010年に投稿した「強い照り返し(青山、外苑前)」という記事に掲載している「白黒の青山練兵場の写真を使わせていただいてもよいか?」という問い合わせのメールをいただいたのがきっかけだった。

撮影されてから70年以上経っているので著作権が消滅しているフリー素材なのでご自由に使っていただいて大丈夫ですよ。という返事をして何度かメールでやり取りをしたところ、佐藤さんと僕の「人生の糸」が2か所で交差していることがわかり、メール交換が続いたのだ。

佐藤さんは伊藤忠商事、そして子会社伊藤忠産機(現伊藤忠マシンテクノス)の専務取締役を経て退職してから9年たっている。僕が現在勤務している外資系IT企業は伊藤忠本社ビルの隣だ。そして僕は現在の会社に転職する前は丸紅系列の会社のソフトウェアエンジニアだった。ご存知のとおり伊藤忠と丸紅は江戸時代に創業者の伊藤忠兵衛が「紅忠(べんちゅう)」という商号を使用して始めた商売に同じルーツをもつ総合商社である。そして近年この2つの会社は部門ごとに合従連衡の動きを見せている。

一度直接会ってお話したいですねという話になった。社会人として佐藤さんは僕より17年先輩なのでお話をうかがうのを楽しみにしていた。新宿三丁目の薩摩料理の店でお会いさせていただいたのが6月10日のこと。そして本書の執筆をしていることを詳しくうかがったのである。日頃の僕の関心ごとは物理や数学だが、幼いころに祖父母から関東大震災や東京大空襲の話、父母からは学童疎開や長崎の原爆の話などを聞いて育ったので、おのずと江戸時代以降の歴史に興味をもつようになっていた。家の近所には明治、大正時代に作られた橋の欄干が残っていたり、釜寺東遺跡大宮遺跡など縄文時代、弥生時代の遺跡もある。(ちょっと遡り過ぎだけど。)

青山練兵場の写真をブログに載せたのも、通勤途中の外苑前で日清、日露戦争当時の風景を思い浮かべながら歩いていたからだ。本書を読むとこの場所が佐藤さんの奥様の祖父、徳松が日露戦争開戦後に満州へ旅立った要の地であることがわかる。奥様と二人で先祖の歴史を調べていくうちにこの事実が明らかになった。


本の帯には「取り寄せたたった一枚の戸籍謄本から思わぬ旅が始まった。」と書かれている。そうなのだ、すべてはそこから始まった。奥様の旧姓は「山路」である。奥様が知っていたのは親族について限られたことだけだった。2014年8月に最初の旅が始まった。先祖の足跡を求める長い旅の始まりである。

奥様は広島のご出身だ。先祖についての貴重な資料が原爆によって焼失している。福山、広島、神戸、横浜、東京、そして再びの広島、神戸…。お二人は何度も足を運び、先祖ゆかりの人々や協力してくれる方々と出会い、図書館や資料館、役所や学校、(そして神社やお寺)を訪ねて資料を丹念に調べ上げる。その過程で同じ祖先をひとつにする各地の山路一族との出会いがあった。

祖父の徳松は鉄道マンだった。16歳で父を亡くした後、数年後に逓信省に入り日本各地で勤務する。物資輸送のための鉄道建設のために日露戦争時には建国前の満州でも勤務していた。早世した徳松の父(曾祖父の竹松)は船乗りで海運業に携わっていたらしい。おぼろげにしかわからなかった先祖のことが、少しずつ解き明かされていく。


幕末から明治の初め、激動の時代の後の開国を経て近代日本は新たな時代を迎えた。そして日清、日露戦争である。国や社会が大きく変わっていく中で、山路の先祖たちはどのように生き抜いてきたのかが、ミステリー小説を読むようなおもしろさで伝わってくる。取材メモをもとにして明らかになったこと、明らかにできなかったことを整理しながら、読者にわかりやすく伝えようとする語り手としての佐藤さんの技量に僕は感服した。本を書くのが初めてだとはとても思えなかった。きっと会社員時代にもたくさん本を読み、文章をお書きになっていたのだと思う。

本書を手に取る方は最初のカラーページに「賤ケ岳合戦図屏風」の写真があることを意外に思うかもしれない。これは天正11年(1583年)、近江国伊香郡(現:滋賀県長浜市)の賤ヶ岳付近で行われた羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)と織田家最古参の重臣柴田勝家との戦いである。

調査を進めるうちになんと山路家の先祖はこの合戦で柴田勝家に仕えて戦った武将であることがわかったのである。そしてその人物は後に加藤清正とも対峙することになる。信長・秀吉時代の武将がどのように奥様までつながるのかは明らかにはできないわけだが、どうしてそのようなことまでわかってしまうのだろうか? 読んでのお楽しみということで、ここでは伏せておくことにしよう。


時空を超えて点と点がつながり、いくつもの線が浮かび上がっていく。そして線と線が交差し、そこが次の調査の出発点となる。読者にとっては赤の他人の先祖の話であるが、ぐいぐい惹きつけられて読み進んでしまうのはこのようなミステリー小説さながらの展開があるからだ。当事者ではない僕が読んでも面白いと思うのだから、佐藤さんご夫妻の感じていたワクワク感は相当なものだと思う。

読み進めるうちに僕は自分の生活ともうひとつ交差しているところがあることに気が付いた。本書の90ページから始まる記述なのだが、奥様の祖父の徳松の妹(名前はフジ)が裏神保町5番地に住んでいた大田二郎に嫁いだというくだりがある。現在の住所だと神保町1丁目の9番と11番だ。交差点の角の喫茶店「さぼうる」のある一角だ。佐藤さんは会社員時代にこの番地にあるこの喫茶店や「揚子江菜館」をよく利用していたそうだ。

僕にとってもこの住所は馴染み深い。「さぼうる」は学生時代によく来ていたし、なんといっても9番地には自然科学学術書専門の「明倫館書店」があるからだ。東京近郊に住む物理学徒、数学徒にとっての「聖地」なのだ。今年ももうすぐ「神田古本まつり」や「神保町ブックフェスティバル」が開催されるから「聖地巡礼」しようと思っている。


佐藤さんはこれまでの調査結果を本として出版された。しかし、これで調査終了ということになるのだろうか?わかっていないことがまだたくさん残っている。

僕は気がついた。本として出版することで多くの人の目にとまることになる。読者の中には山路家の先祖と縁のあった方の子孫がいるかもしれない。また残った謎を解き明かす情報をお持ちになっているかもしれない。

そうなのだ、点と点を結ぶだけでなく本書の出版によって佐藤さんは「網」を投げようとされているのかもしれない。僕はそのように思った。

この紹介記事も、今後の調査のために何かの役に立つかもしれない。インターネットからの検索にひっかかり、謎の解明の糸口になるかもしれないので本書に含まれるキーワードを順不同に書いておこう。

満鉄 南満洲鉄道 大連 広島市段原 福山市沼隈 山路商 広島のロートレック 山路徳松 山路正国 山路将監 孫三郎之光 山路嘉兵衛 山路孫三郎 山路玄蕃允正幽 山路久助 山路久之丞 山路素 山路久治郎 山路源兵衛 山路胆七 山路好雄 山路藤十郎 山路清助 山路壽男 山路遼 山路汎 山路智 山路監 クラーク記念国際高等学校 鞆の浦 千年村草深 鞆の浦道越町 みつきや 土佐屋 大友イク 小方ノブ 山路丈夫 山路鉄子 山下フジ 羽田トラ 山路トラ 羽田清助 羽田アキ 羽田平四郎 澤村船具店 千年小学校 鞆小学校 山路機谷傳 山路機谷先生傳 備後東城町 片山菊次郎 近江佐々木氏 広島宇品港 神戸元町商店街 大阪商船 満鉄会 日本郵船 山路正春 野戦鉄道堤理部 佐渡丸 鹿児島丸 常陸丸 はるぴん丸 近衛後備歩兵第一連隊 神戸元町商店街 鞆津の引札 神戸のコレラ流行 パルモア学院 ユニオン教会 神戸居留地 宣教師ランバス ランバス牧師 長野県長野市 新潟県長岡市 栄光教会 九十九商会 共同運輸 三菱経済研究所 幕末明治海外渡航者総覧


11月1日に全国の書店およびオンライン書店で発売される。現在予約受付中である。ぜひお読みいただきたい。

先祖の足跡を辿れ 幕末から昭和を生き抜いた山路家の人々:佐藤昭・ゆり



たった1枚の戸籍謄本から まえがきに代えて

1 旅が始まった
2 調査・推理・実証
3 再びの旅・出会い
4 ほのかな灯り
5 残された謎

あとがき

詳細目次にはパソコン表示できない漢字があるので、画像として掲載しておく。画像をクリックすると拡大するようにしておいたので参考にしていただきたい。

  


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ウジェーヌ・イヨネスコ 『授業』

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柄本明さんによる 『授業』


先日、たまに行く下北沢の飲み屋さんでイヨネスコの『授業』のことを話題にした。昔、渋谷にあった小劇場 渋谷ジァン・ジァンで観たのは中谷昇さんが教授役を演じていた劇だったと思う。その後も有名な俳優や有名でない劇団も含めて、何度も演じられている有名な不条理喜劇である。

検索したところ柄本明さんだけでなく「9次元からきた男」にも出演されているヨシダ朝さんも演じていたことを知った。

2011年7月12日~7月15日 アトリエ乾電池(下北沢)
作:E・イヨネスコ 演出:柄本明 出演:柄本明ほか
http://www.tokyo-kandenchi.com/kako/kouen/kako_2011jugyo.html

原作:ウジェーヌ・イヨネスコ『授業』
2013.12.13 Fri - 12.15 Sun
上演テキスト・演出:鈴木勝秀  出演:ヨシダ朝 山岸門人 傳田うに
http://l-amusee.com/atsukobarouh/schedule/2013/1213.php


なつかしさのあまり動画を検索してみた。フルバージョンで公開されている日本語の動画はアップロードされていない。全編見れるのはフランス語と英語のみだ。元の戯曲の雰囲気になるべく近いものを選んでみた。


フランス語バージョン:






英語バージョン:






中村伸郎さんの『授業』:

小劇場 渋谷ジァン・ジァンで中村伸郎さんが演じていたときの貴重な音源。1972年の録音である。




書籍:

戯曲(脚本)を読みたいと思ったが、日本語のは絶版でとても買える値段ではない。復刊してほしいものだ。

日本語:
授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ)



フランス語:
La Cantatrice Chauve: Anti-Piece ; Suivi De, La Lecon : Drame Comique



英語:
The Bald Soprano and Other Plays: Bald Soprano/the Lesson/Jack or the Submission/the Chairs」(Kindle版




ところで昨年1月に書いた「ゴドーを待ちながら:サミュエル ベケット」だが、ちょうど芝居をやっているようなのでお知らせしておこう。

Kawai Project
ゴドーを待ちながら
作:サミュエル・ベケット 翻訳・演出:河合祥一郎
2016年10月19日[水] - 10月30日[日]
http://www.komaba-agora.com/play/3508

Kawai Project Vol.3
こまばアゴラ劇場主催公演、CAPI協力
『ゴドーを待ちながら』
http://www.kawaiproject.com/vol3


関連記事:

ゴドーを待ちながら:サミュエル ベケット
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fb9147540f30317b405ab342e42a4c9

Le Petit Prince (星の王子さま)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cff1f935410e1d670ead5bade63f0a0d


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