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2回目の重力波観測の発表で公開されたスライド


6月15日(日本時間6月16日午前2時15分)からライブキャストで行われたLIGOによる2回目の重力波観測の結果発表は、リアルタイムで見ていた。

LIGO Does It Again: A Second Robust Binary Black Hole Coalescence Observed
News Release - June 15, 2016
https://www.ligo.caltech.edu/news/ligo20160615

iPadに映した画面を写真に撮っていたので、記録として掲載しておこう。

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関連記事:

重力波の直接観測に成功!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a8439e8e4d81d7873422737d7bd1640d

ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/88bf1600687ece47464c862fefe53103

サイエンスZERO 世紀の観測!重力波?~アインシュタイン最後の宿題~
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/45923abf57b1200837afb79bb35127e3

重力波は歌う:アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち:ジャンナ ・レヴィン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1cb9b432d55f420797c4f00d02246b6e

2回目の重力波観測の発表で公開されたスライド
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/088e0cb4e3661cdb4555015be7b6df22

アインシュタイン選集(2): [A8] 重力波について(1918年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7f70d0291e823674435342acba782017


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思い出の関数電卓(CASIO fx-2200、SHARP EL-586)

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左:CASIO fx-2200 (1978)、右:SHARP EL-586 (1987)

人にはそれぞれ思い入れのある品があるものだ。僕にとっては電卓もそのひとつ。ヤフオクでの古い電卓集めは以前ほどではないが、今でもときどき「あ!これは。。。」と思ったのだけ購入し続けている。

今日紹介するのは実際に使っていたので、とても愛着がある関数電卓2機種。どちらもめったに出品されない掘り出し物である。(とはいってもそれほどプレミアがついているわけではない。)


CASIO fx-2200 (1978)

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関数電卓は高校1年のときに使い始めた。当時この機種は12,000円もしていたから初めて手にした高級品である。いつも持ち歩いていた。ヨドバシカメラの新宿西口本店(現:マルチメディア東館)は1975年にオープンし3年がたっていたが、電卓はまだデパートの文具売り場でガラスのショーケースの中に陳列して売られていた時代だ。

高校入学祝いに何が欲しいかと親に聞かれて「関数電卓!」と答え、お金だけもらって新宿の京王デパートで買ってきたのだった。

サイズはiPhone5とiPhone6の中間くらいで、縦121mm、幅67mm、厚さ11mmという小ぶりで学生服のポケットに入れるのにちょうどよかった。

この電卓で斉田博先生の「天文の計算教室」や渡辺敏夫先生の「数理天文学」そして今年お亡くなりになった長谷川一郎先生の「天文計算入門」を読みながら遊んでいた。

平方根の精度は8桁だったものの、この電卓でのべき乗、三角関数、指数・対数関数の精度は6桁しかなかった。三角関数の値を計算すると1秒くらいかかり、表示は右の桁から左にパラパラと順番に表示される。「ああ、頑張って計算してるなぁ。」と実感できるのがいまとなっては可笑しいところ。

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液晶の背景を黄色にしたのはなぜなのだろう?そういうことも今になってみると不思議だ。その後の電卓の液晶のことを考えると、黄色がいちばん見やすかったのだとも思えない。

不満だったのが10のべき乗の指数表示。9桁しか表示できなかったので指数表示になると有効桁数が6桁になってしまう。さらに仮数がマイナスだと5桁になってしまうのだ。仮数と指数の間には1桁ぶんの空白が入る。(べき乗がマイナスのときは空白の部分が「-」で表示される。)

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けれどもそんな大きな数や小さい数が現実の計算ででてくることはほとんどないので不便ではなかったわけだが。。。ともかく計算の精度や有効桁数を意識し始めたのはこの電卓のおかげである。

高校2年の夏にはテキサスインスツルメンツ社の高級プログラム電卓「TI-59」を感熱プリンタ付きで買ってもらったので、手帳型関数電卓はもっぱら持ち歩き専用になった。

38年ぶりに同じ電卓を手にとってみると、記憶に残っているサイズより小さいことに気が付いた。写真で見るだけと実際に手元にあるのは大違いだ。

すでに僕は電卓収集家になっているから、捨ててしまうこともない。「科学電卓デビュー」の思い出の品なので大切にしよう。


SHARP EL-586 (1987)

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これは僕が社会人になった年に発売され、当時持ち歩いていたのはこの電卓だ。シャープ(株)が元気だったころの製品である。この頃には関数電卓もヨドバシカメラのような家電量販店で現在のようにフックに吊るされて売られていた。

パソコンはすでにMS-DOSのものが発売されていて「このような機種」が買えた時代である。1981年にD.M.リッチーの「プログラミング言語C」の初版を石田晴久先生が和訳して出版してから6年がたち、企業や大学でキャラクターベースのUNIXやC言語が使われ始めていた。

このような超薄型の関数電卓は古今東西この機種と、機能を制限して同時発売されていたSHARP EL-585 (1987)だけである。(キートップを比べるとEL-586との違いがわかると思う。)

CASIO EL-585 (1987)
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「カラフルでおしゃれな関数電卓」という切り口でも初めての機種だった。最近になってようやく関数電卓の中にもデザインセンスのよいものが発売されるようになった。(参考: CASIO fx-JP900Canon F-605G

サイズはiPhone6よりひと回り大きく5インチ画面のスマホと同じくらいの大きさだ。この2つの関数電卓は1987年に「グッドデザイン賞」を受賞している。(参考ページ

とにかく薄い。

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周囲はゴム製で防水タイプ。ソーラーパワーで動作する。メモリーバックアップのためにバッテリーが内蔵されているが交換はできない。

関数の精度は10桁。

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2桁の指数部も小さい数字で独立しているから仮数部の桁数は保たれる。

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ひとつだけ難を言えばキー入力の感触が得られないので、早打ちすることができないところ。その後、超薄型電卓が事務用、科学用も含めて普及しなかったのは、そのような理由からなのかもしれない。


どちらも僕にとっては思い入れの強い電卓だ。捨てた覚えはないのだが、こういう物はいつの間にか無くなっている。思い出の品をネットオークションで手軽に買える時代になってよかったなぁと思うわけである。


関連記事:

神様の計算機 (CASIO fx-2、1972年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/51d92a0f17a3abd1112691590d86c83a

王様の計算機 (CASIO fx-3、1975年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6840ad8d279eff97acd11a3f56b54343

70年代の関数電卓:CASIO fx-10 (1974)、fx-15 (1975)、fx-19 (1976)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e27a518854a8b71b3eb83b6d38ab598c

カシオミニのノスタルジア
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c57178b502b8207746af9df9a9e0dd90

プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c31d67db36639471e9bc3209f88b3de

HP-67, HP-97 for iPad、HP-67 for iPhone
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/838a982f2ed2355c7a8fed4c07a7a9e1

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, CASIO fx-602P): iPhoneアプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000

プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, HP-67): Android携帯アプリ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ad3750a80319805913264169939ea93

HP 50g for iPhone、for iPad
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/210a9395c06a150769a1d193512ffb3c

HP Prime Graphing Calculator for Android
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/28672920bba216620bd6aa424010ff99

HP社の科学電卓、Windows用の無料エミュレータ(HP 35s、HP-15C)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d2028e32d4c59d3076af838cf24a4ba4

算数チャチャチャ(NHKみんなのうた)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5f45451ee92873728f3046ed36cdce71


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現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎リーマン -リーマン予想のすべて-

現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎リーマン -リーマン予想のすべて-」(Kindle版

内容紹介:
19世紀を代表する数学者、ベルンハルト・リーマン。
数学界最大の未解決問題、リーマン予想に代表される彼の業績は、数論、代数幾何学、複素関数論、一般相対性理論と多岐にわたっている。本特集では、リーマンの数学的業績と、心理学や自然哲学など、いわゆる人文学的業績とを検証し、そのポテンシャルに迫る。
2016年2月刊行、230ページ。

著者について:
【討議】
黒川信重+加藤文元+小島寛之
【ガイド】
黒川信重/小島寛之
【概説】
上野健爾/砂田利一/佐藤文隆
【論考】
八杉滿利子+林晋/小山信也/高瀬正仁
深谷賢治/落合啓之/郡司ペギオ幸夫
三宅岳史/森元斎/鈴木俊洋


理数系書籍のレビュー記事は本書で310冊目。

今月「リーマン--人と業績: D.ラウグヴィッツ」を読み終えたが、書かれていることが詳あまりにも細で分量が多く、さらに難解だったので消化不良を起こしてしまった。だからもっと易しい本をということで本書を読んだわけだ。僕のようなレベルにはちょうどよい。多岐に渡るリーマンの業績を整理された形で読むことができる好書だった。

本書の内容は記事の最後に載せた詳細目次をお読みいただきたい。冒頭は数学者3人(黒川信重先生+加藤文元先生+小島寛之先生)による鼎談(ていだん)で、とても参考になった。

本書は「現代思想」という雑誌の別冊なので後半は哲学者の先生方による解説記事である。残念ながら僕の感性はそれらの記事に拒否反応がでてしまった。数行読んだだけで「ああ、どうしてこうも分かりにくいのだろう?」と読むことを放棄してしまう。「「知」の欺瞞:アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン」で酷評されている哲学者たちと似た匂いがする思弁的な文章はどうも苦手だ。リーマン自身も哲学の影響を受け、論文は書いていないものの研究はしていたわけだが、そのあたりを説明した箇所も「なんだかな~。」と思いながら読んだ。

哲学者の先生方には申し訳けないが、僕は数学者と物理学者の先生方が書かれた記事だけを読ませていただくことにした。特に面白くて参考になった記事に対してコメントを書いておく。


討議 リーマンの数学=哲学 数学のパラダイムシフトとリーマン予想の最前線
黒川信重+加藤文元+小島寛之

コメント:リーマンの業績を手っ取り早く知るのにはうってつけだ。元となる史料は「リーマン論文集 (数学史叢書)」なのだと思う。「リーマン--人と業績: D.ラウグヴィッツ」で僕が理解できなかったことは加藤文元先生の解説ではっきりわかった。やはりこの本は研究者や数学者の方が読むレベルの本なのだと思った。


リーマン予想の風景(リーマン没後150年)- 黒川信重(数学者)

コメント:リーマン予想、ゼータ関数研究の第一人者、黒川先生による記事。リーマン以降、現代に至るまでのリーマン予想の研究の流れを知ることができる。その証明は一般の大学生レベルではとうてい太刀打ちできるものではないが、おおよその流れを知ることで、どれほど難しい研究なのか、そしてどのようなことを学んでいかなければならないかがわかるだけでも有益といえよう。記事の最後にの「読書案内」で勧められている23冊の本がすべて黒川先生の著作なのが少し可笑しかった。


リーマン予想まであと10歩- 小島寛之(数学者)

コメント:素数や無限和、無限積、ゼータ関数、解析接続、リーマン予想の意味をやさしく解説した記事だ。複素関数論を学んでから読むとよいが、学んでいなくてもなんとかついていけるレベルで書かれている。解析接続についての解説がとてもわかりやすかった!


リーマンが変えた数学 - 上野健爾(数学者)

コメント:リーマンの業績を分野別に大まかに解説した記事。


ユークリッドからリーマンへ(いかにして宇宙の「形」を記述するか)- 砂田利一(数学者)

コメント:幾何学に焦点を絞ってリーマンの業績を解説した記事。学部生でも読めるレベルで書かれている。


一般相対論最終盤のアインシュタインとヒルベルト、そしてリーマン - 佐藤文隆(物理学者)

コメント:リーマン幾何学の成立過程の解説、そして一般相対論の論文発表をめぐるアインシュタインとヒルベルトの熾烈な競争についての解説。


リーマン教授との対話(1859年11月、ドイツ・ゲッチンゲンにて) - 小山信也(数学者)

コメント:この記事はとても面白かった。小山先生がタイムスリップしてリーマンと対話を行っている設定で書かれた記事。リーマン以降の数学の発展史を小山先生がリーマンに伝え、リーマンがそれに対して感想を述べたりしている。初学者がリーマン予想やゼータ関数の意味を学ぶのにも適した記事だと思う。ただし後半は難しくなるので注意。


多変数代数関数論の夢(リーマンから岡潔へ) - 高瀬正仁(数学者)

コメント:アーベル関数やリーマン面について解説した記事。内容は難しかった。


リーマンのイデー - 深谷賢治(数学者)

コメント:複素解析の発展史を初学者にもわかるレベルで解説した記事。とても面白く読めた。複素解析を学ぶ前にお読みになるとよいだろう。


リーマンの球面 - 落合啓之(数学者)

コメント:リーマン球面について初学者にもわかるレベルで解説した記事。この記事もお勧めである。


次にどんな本を読むべきかだが、黒川先生の著書ということになるのだと思う。しかし、どのような順番で読んだやよいのか見当がつかない。

リーマン予想については、黒川先生のではないが次の本がよいのではないだろうか?ただし本のタイトルの「全ての素数を表す式は可能か」は誇大表現だと思う。リーマン予想が証明されても全ての素数がわかるようになるわけではない。

リーマン予想とはなにか:中村亨」(Kindle版

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翌日追記:ときどき記事に対してアドバイスをいただいているhirotaさんから「n番目の素数を表す式はいくらでもある」ことを教えていただいた。コメント欄に次のようにアドバイスいただいた。hirotaさん、ありがとうございました。

http://phasetr.com/blog/2015/07/03/ツイートメモ-n-番目の素数を-n-で表す式はいくらで/
なんてのもあります。
公式があるのは↓
https://t.co/gSNJIBvp3p


幸いリーマンの論文集は日本語に訳されているし、これを読むのがいちばんよいのはわかっている。しかし、僕がこの本を買うのは時期尚早というものだ。さしあたり僕は小平先生の「複素解析」をみっちり学ぶことが次にすべきことだと思った。

リーマン論文集 (数学史叢書)

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来月リーマンの業績をテーマにした市民向け講座が朝日カルチャーセンターで開講される。ツイッターでフォローさせていただいている加藤文元先生の講座だ。

【新設】リーマン数学の思想と展開(ユース学生会員用ページはこちら
現代数学はどのようにして作られたのか
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/895b6ce4-6445-a2e2-2353-571f44edf03e

<講師>
東京工業大学教授 加藤 文元先生

<講座内容>
数学は19世紀に大きく変容しました。その過程を経て現在に至っている現代数学は、18世紀までとは比べ物にならないほど高度に抽象的でパワフルな学問になっています。その歴史上の大きな変化の入り口のところにいるのがベルンハルト・リーマン(1826〜1866)です。彼は有名な「リーマン予想」を提出し、数学の様々な分野で大きな足跡を残しただけでなく、数学の基本思想そのものを変えました。リーマンの足跡をたどりながら、できるだけ平易な数学の言葉を用いて、リーマンの思想やその現代への波及効果、さらには現代の数学がどのような学問になっているのかを解きほぐしていきます。 

<スケジュール>
1回目:7月19日リーマンの空間思想
2回目:8月9日 リーマンと現代数学


関連記事、関連ページ:

リーマン--人と業績: D.ラウグヴィッツ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/505069a0aa6932910a709a3eeaded988

幾何学の基礎をなす仮説について:ベルンハルト・リーマン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22be602fe4cee385a9939c0869c511eb

解析学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22c325e49cfd7c721679dbc2896b86a4

リーマン 人と業績(足立 隼)
http://researchmap.jp/jomk8mfp4-46767/


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注意: 僕はKindle版で本書を読んだ。Kindle版だと数式が異様に大きく表示されているページがあるので、そういうことが気になるかたは書籍版をお買い求めになるとよい。

現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎リーマン -リーマン予想のすべて-」(Kindle版

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討議 リーマンの数学=哲学 数学のパラダイムシフトとリーマン予想の最前線
黒川信重+加藤文元+小島寛之

リーマン予想の風景(リーマン没後150年)- 黒川信重(数学者)

リーマン予想まであと10歩- 小島寛之(数学者)

リーマンが変えた数学 - 上野健爾(数学者)

ユークリッドからリーマンへ(いかにして宇宙の「形」を記述するか)- 砂田利一(数学者)

一般相対論最終盤のアインシュタインとヒルベルト、そしてリーマン - 佐藤文隆(物理学者)

リーマンとデデキント(集合論の源流)- 八杉滿利子(数学者)+林晋(思想史)

リーマン教授との対話(1859年11月、ドイツ・ゲッチンゲンにて) - 小山信也(数学者)

多変数代数関数論の夢(リーマンから岡潔へ) - 高瀬正仁(数学者)

リーマンのイデー - 深谷賢治(数学者)

リーマンと心理学、そして哲学(多様性概念の思想的背景) - 三宅岳史(哲学者)

リーマンの球面 - 落合啓之(数学者)

原生意識(多様体・外部を糊代とする層) - 郡司ペギオ幸夫(理論生命科学)

数学的直観とは何か(リーマンの幾何学研究がフッサールに与えた影響) - 鈴木俊洋(哲学者)

月と靄(稲垣足穂におけるリーマンと相対性理論、タルホ・コスモロジー) - 森元斎(哲学者)

編集後記

ふしぎな目をした男の子: 佐藤さとる、村上勉


コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子

内容紹介:
日本が誇る小人、コロボックル。彼らは人間と“トモダチ”になる前に、細かく審議をする。つむじ曲がりのじい様ツムジイは、コロボックルの迅速な動きが「見える」不思議な目を持つタケルと“トモダチ”になった。二人の友情と別れ、タケルの成長、汚染された池の救出大作戦。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。

著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。

村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。


有川浩さんの「だれもが知ってる小さな国」を読んだのがきっかけで、小学生の時に読んだ佐藤さとる先生のコロボックル物語シリーズを第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」から読み直している。今回紹介するのはその4巻目だ。


人間に存在を気づかれてはならないというのは昔からのおきてだった。人間の目では見えないほど速く動けるコロボックルたちであるが、第3巻でおチャ公という少年に捕まってしまったミツバチ坊やのようにたまにへまをして見つかってしまうことがある。

しかし時がたちコロボックルの国にも変化がおとずれる。おきても少し緩められた。信用できることを証明する審議をパスした人間にとは「トモダチ」になってもよいという新しいおきてができたのだ。ただしその人間とトモダチになれるのはただ1人のコロボックルだけという条件付きではあった。

第4巻はコロボックルの爺さんの紹介からはじまる。ツムジイと呼ばれているこの爺さんは学者で昔から言い伝えられているコロボックルの歴史をよく知っている。少々気難しいところがあり、つむじ曲がりであることからそのような呼ばれ方をされるようになったのかもしれない。ツムジイには、これから少し先におこる出来事を予測できる不思議な能力をもっていた。

ツムジイは土瓶を利用した家で一人住まい
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若者たちにいろいろなことを教えるツムジイ
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そのようなツムジイの「トモダチ」として選ばれたのはタケルという人間の男の子だった。この子がまだ小さい頃からずっとツムジイはタケルのことを見守っている。タケルは独特な目つきをしている男の子で、ツムジイがいくら早く動いても目でツムジイのことを追うことができた。ふつうの人間はそんなことはできない。タイトルの「ふしぎな目をした男の子」とは、そのように特殊な視力をもつタケルのことを意味している。

物語の舞台はおそらく昭和30年代なのだろう。タケルの住む小さな町も開発の波が押し寄せてきて、次々と住宅が建てられていった。タケルには一緒に遊んでくれるヒロシという中学生のお兄さんがいる。

タケルが住んでいる街の風景
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タケルは小学生になった。ツムジイもそろそろ体がいうことを聞かなくなり隠居する時期がきていた。ツムジイの後任として選ばれたのが「ツムちゃん」という男の子だった。ツムちゃんはツムジイと似て気難しいところがあり、性格は似ているちょっと生意気なコロボックルの少年だった。そして偶然なのだが顔は独特な目つきも含めてタケルにそっくりだったのである。ツムちゃんはツムジイからタケルのことを教わり、トモダチになる準備をしていた

ツムジイとツムちゃん
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タケルとヒロシの住む街の近くには小山があり、そこにはむかし池があったそうだ。開発の波は小山にもおよび、タケルが子供のころに池は用水地として使われ、小学生になったころいは用水地もせき止められ、汚い水がたまっているだけのありさまだった。そして濁った水のたまった用水地さえも埋め立てられようとしていた。

用水地がまだ池だった大昔、コロボックルはその地下に街を作って暮らしていたそうだ。これはツムジイが覚えているコロボックルの伝承のひとつだった。なんとか埋め立てを阻止したい。祖先たちが作り上げた地下の街を確認したい。ツムジイはじめ他のコロボックルたちはそのように考えていた。

タケルのほうも小さなころから遊んでいた小山や用水地の美しい景色が忘れられないでいた。なんとか元通りのきれいな水をたたえた用水地に戻したい。タケルはヒロシに相談し、ある計画をたてるのだ。それがどのような計画か知りたい方は本書を読んでいただきたい。


第4巻はこのような話で始まる。第3巻までとはずいぶん違う雰囲気だ。ゆったりとした昭和の田舎の風景を彷彿とさせられる。自然豊かな土地が宅地造成によって壊されていくのは、都内に住んでいたとはいえ僕もよく覚えている社会の変化だった。また、時の流れの中で本に描かれている人々も成長し、コロボックルの社会のほうでも世代交代がおきる。そして人々とコロボックルたちの付き合い方も、少しずつ密なものへと変わっていく。もちろん「せいたかさん」や彼の家族も物語に登場する。また彼らと出会えてよかったなという喜びも感じられるだろう。

第4巻は僕が小学校2年だった1971年に刊行されたのだが、これまでに読んでいなかったことに気が付いた。てっきり読んでいたと勘違いしていた。あいかわらず僕の記憶はあてにならない。


引き続き第5巻を読むことにしよう。


佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。

1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行


コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html


講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」(紹介記事
コロボックル物語3 星からおちた小さな人」(紹介記事
コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子
コロボックル物語5 小さな国のつづきの話
コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

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青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。

講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索

単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。


新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行

新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人

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新イラスト版: Amazonで検索


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コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子

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第1章:つむじまがりの学者
第2章:タケルとヒロシと用水地
第3章:二つのいいつたえ
第4章:かわいそうな池
第5章:本当のトモダチ

あとがき(その1~その4)

解説:中島京子


以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ

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有川版についている帯

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人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊」(Kindle版

内容紹介:
人類の希望か、あるいは大いなる危機なのか?「人間のように考えるコンピュータ」の実現へ、いま、劇的な進展が訪れようとしている。知能とは何か、人間とは何か。トップクラスの人工知能学者が語る、知的興奮に満ちた一冊。
2015年2月刊行、263ページ。

著者について:
松尾 豊(まつお ゆたか)
東京大学大学院工学系研究科准教授。1997年、東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年、同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より産業技術総合研究所研究員。2005年よりスタンフォード大学客員研究員。2007年より現職。シンガポール国立大学客員准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会からは論文賞(2002年)、創立20周年記念事業賞(2006年)、現場イノベーション賞(2011年)、功労賞(2013年)の各賞を受賞。


理数系書籍のレビュー記事は本書で311冊目。


本書を読んだきっかけ

先日NHK EテレのサイエンスZEROで「人工知能の大革命!?ディープラーニング」(動画)が放送されたように、この数年人工知能関連のニュースをよく見かけるようになった。今日紹介する本の著者はこの番組で解説をされていた松尾豊先生だ。

チェスや将棋だけでなく囲碁でもコンピュータソフトが名人を打ち負かす時代になっている。数学パズルやボードゲームの世界だけですんでいるのなら、人工知能も安心して見ていられる。けれどもそうならないのは火を見るよりも明らかだ。ホーキング博士やビル・ゲイツが警告しているように人工知能は人類の存在を脅かすものになっていくのだろうか?

グーグルが進めている自動車の自動運転システムやソフトバンクのPepperなど、巨大企業がこの分野の研究を推し進めている。中国もこの分野では日本をしのぐ勢いで研究を進めているようだ。経済の面での国際競争力を維持するためには、国をあげて人工知能の研究と実用化を進めなければならないらしい。好むと好まざるとにかかわらず、確実に私たちはその恩恵と影響を受けることになる。

でも、そのように進むことは正しいのだろうか?心理的に受け入れられないこともきっとでてくるだろう。世の中には情報があふれている。人工知能と銘打っていても、単なる制御システムだったり、エキスパートシステムにすぎない製品もある。

人工知能をやみくもに恐れたり否定するのではなく、いま何がおきていて、これからどうなっていくのかを正しい知識を知ったうえで判断したい。それが本書のような人工知能についての入門書を読みたいと思った理由である。


僕にとっての人工知能

実をいうと僕は1980年代後半、大学4年になってからパソコン用日英・英日機械翻訳ソフトウェアを世界で初めて開発、販売したベンチャー企業でアルバイトをしていて、卒業後はそのままその会社(ブラビスインターナショナル株式会社、参考ページ)に就職した。だから就職活動は経験していない。この会社は日英・英日だけでなく日韓・韓日の機械翻訳ソフトも開発してパッケージソフトとして販売していた。Windows 3.1はまだリリースされておらず、NEC PC-9800シリーズにインストールされたMS-DOS上で動作していた。

いずれにしてもこの時代の機械翻訳ソフトは文法の構文解析と用語辞書の品詞や付帯属性だけで翻訳するもので、意味論に基づいた処理は行われていない原始的なものである。時代を先取りしすぎていたためか、残念ながらビジネスとしては成功とまではいかず、その後この会社は解散してしまい、「語彙機能文法(Lexical Functional Grammar)」に基づいて設計、開発をはじめていた第2世代の機械翻訳ソフトは陽の目を見ることがなかった。開発環境はDEC社のVAX-11/780のC言語だった。(Amazonで語彙機能文法の解説書を検索する。第2世代機械翻訳システム開発にかかわるエンジニアがバイブルとして読んでいた語彙機能文法の提唱者Joan BresnanHomepage)によるこの分厚い教科書が、いまではKindle版として発売されていることには隔世の感がある。)

大学での専攻が応用数学だったこともあり人工知能も僕の関心事のひとつで、当時は「LISPで学ぶ認知心理学 全3巻」を読んでいた。当時、僕にはLISPの実行環境がなかったので理解は半分止まりであったが、おぼろげながらどこまで研究が進んでいるのかは理解していた。本書の中の言い方でいえば「第2次AIブーム」の最初の頃になるのだろう。この3冊を読んで僕は「人工知能が実現するのは当分先のことだな。」と安心していた。


ディープラーニングの衝撃

だからAlphaGoのニュースや先日のサイエンスZEROを見たとき、昔とはくらべものにならないくらい発展したのだなと驚かされた。社会人になって最初に取り組んだ仕事が実を結ばなかったこともあり、機械翻訳や人工知能に対しては否定的な固定観念が身についてしまっていたからだろう。本書を読み終えた今でも、自分が生きているうちは人工知能も人類にとっての脅威とまでには成長しないだろうし、自然言語処理も人間の翻訳者の能力を超えることはないのではないだろうと思っている。

そもそも人間の思考や感情のしくみがニューロンを流れる電気信号のレベルで解明されているわけではないし、それはおそらく今後も無理なことだと思う。脳科学と基礎物理学は天と地、いや「宇宙の果てと地」くらい離れている。ディープラーニング(深層学習)が人間の脳のニューラルネットワークを模倣しているとはいえ、構造はまったく異なっているはずだ。しかし、そのようなモデルでさえAlphaGoや画像の認識技術として紹介されたように、人間が教えることなく「特徴検出」をみずから行い、学習していく能力をもっていることが、ディープラーニングが革新的で、注目を浴びている理由なのだ。

時間的制約のあるテレビ番組で紹介されるのは成功例だけである。それだけ見せられると一般視聴者は人工知能は万能だと思ってしがいがちだ。先日のサイエンスZEROで紹介された人物を特定する画像認識にしても、文章を与えてその画像を「想像」させてディスプレイに移す例にしても、似た特徴をもった人がたくさんいたらどうなるか、あらかじめ学習させておく知識を膨大にしたとき正しいイメージを人工知能は想像できるのかなど、疑問点は残ってしまう。知識が膨大になればなるほど、対立する概念や矛盾が生じるのが現実の世界で起きることだからだ。だから、本書のように詳しく解説した本を読む必要がでてくる。


本書の概要

本書の章立ては次のとおりだ。

序章:広がる人工知能――人工知能は人類を滅ぼすか
第1章:人工知能とは何か――専門家と世間の認識のズレ
第2章:「推論」と「探索」の時代――第1次AIブーム
第3章:「知識」を入れると賢くなる――第2次AIブーム
第4章:「機械学習」の静かな広がり――第3次AIブーム(1)
第5章:静寂を破る「ディープラーニング」――第3次AIブーム(2)
第6章:人工知能は人間を超えるか――ディープラーニングの先にあるもの
終章:変わりゆく世界――産業・社会への影響と戦略

序章で現在私たちが直面している人工知能の紹介と人類への今後の影響を大まかに紹介する。次に第1章から第4章までは、段階を追って人工知能がどのように発展してきたかを詳細に解説する。そして第5章が現在ブームとなっているディープラーニングの解説だ。本書はすべて文系の方でも読めるように書かれているのでご心配なく。

そして第6章と終章では未来の予測だ。人工知能は人類を滅ぼしてしまう悪魔なのだろうか?軍事利用されたとき、それはどのような結果を生み出すのだろうか?そこまで遠い未来でなくても、今後産業や社会にどのような影響をおよぼしていくのだろうか?最初から最後まで興味の尽きない話題であふれている。

著者は人工知能研究の第一人者である。ご自身が夢をかけ、精力をつぎ込んできた世界なので、人工知能の可能性を信じているのはもちろんである。ある程度バイアスがかかっているのはしかたがない。だから僕はどこまでが事実でどこからが予想で、どの部分が夢を語っているのかをちゃんと区別しながら読もうと心がけていた。

サイエンスZEROでお話しになる先生の印象は誠実だったし、本書の後半にお書きになっているご自身の大学時代から現在に至るまでの研究生活のことを読んだとき、人工知能研究の冬の時代のことも含めて一貫して真面目に取り組んでいらっしゃったことがわかり、「この人の言うことなら信じられる。」という気持になった。

世代による感覚の違いがもたらすものは?

人工知能がない時代に育ったから僕は恐怖や拒否感を感じるのかもしれない。将来、人工知能が当たり前のように生活の中にある環境に生まれる子供たちは、疑いや拒否感をもつこともなく自然に受け入れるはずだ。私たちとはまったく常識や感性の違う次の世代の若者が、次の時代の社会で判断や取捨選択していくようになる。

このような世代間のギャップは、ずいぶん前から始まっていることは言うまでもない。インターネットやSNS、スマートフォンがない時代に生まれた僕の世代は、そのような技術を素晴らしいと思うし、若い頃はプログラミングやコンピュータ科学、エレクトロニクス技術を学ぶことに熱中していた。

しかしこれから生まれてくる次の世代の若者にとってそれらは空気や水のように身の回りにあるものであり、必要不可欠ではあるものの、研究や勉強のための興味を引き起こす対象ではない。彼らにとっての興味の対象はまさに今生まれつつあるもの、変化しつつあるものなのだと思う。

「変化を受け入れる」というのは人それぞれ自分の人生の長さの中でのことであり、次の世代にとっては「生まれたときからある環境」に過ぎない。将来開発されるとてつもない能力をもつ人工知能を受け入れるかどうか、どのように活用していくかは私たちの世代が判断することではない。私たちとは全く違う感性や習慣、考え方をもつ2世代、3世代後の人たちが判断することだ。その判断が正しいかどうかは、さらに後の子孫が歴史をかえりみて判断するしかないのだと僕は思う。


個人的な感想と期待

9次元からきた男」ブロガー特別試写会の後に開かれた講演会の中で、大栗博司先生は「将来、人間にはとても証明できないほど難しい数学の定理を人工知能が解く時代がくるかもしれない。」とおっしゃっていた。機械的な手順で数学の定理のすべてが証明されるわけではないことは「ゲーデルの不完全性定理」によって証明されてはいるが、証明できてしまう定理もきっとでてくることだろう。そうなると数学者の存在意義はどこに求めればよいのだろうか?フィールズ賞はなくなってしまうのかもしれない。

先日、日立製作所が「社員の幸福感、AIで測定・個別指南する実験を始めた。」というニュースが報道された。人工知能に相談するなんてばかげているし、そんなことをさせられるのは絶対に嫌だと思った。しかしその反面、在りし日の大原麗子さんそっくりのアンドロイドが目の前にいたら僕はなんでも相談して癒されたいと思うのも本心だ。何が正しく、何が間違っているかなどその時々の気分や状況に左右されてしまう。

ガンの早期発見や自動車の自動運転、自然災害の予測、人類に平和をもたらすような研究ならば大歓迎だ。自分にとって、そして社会や国にとって何がプラスで何がマイナスになるのか、しっかり考えながら人工知能の今後を見ていきたいと思う。


しめくくり

このように、本書を読むことで技術的なことだけでなく社会や人類の未来について、自分がどう感じるかも含めて深く考えさせられた。人工知能の入門書としては最適だ。

著者の松尾先生は本書と同じテーマで次のような講演を行っているのでご覧いただきたい。講演80分+質疑20分の構成でAIの歴史から展望までを一般人向けに解説している。

『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』松尾豊東京大学准教授セッション



次に読む本は

本書を読んでディープラーニングそのものについて、もっと詳しく知りたいと思うようになった。深層学習の「層」が深くなることによる抽象化のことを特に知りたい。抽象化すれば何でも人間の思考や感覚に近くなるものなのか僕にはよく理解できていないからだ。

あまり専門的過ぎず、適度に知的好奇心を満たせそうな本では、次の2冊が気になっている。

脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす:甘利俊一」(Kindle版

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著者は3年半前に紹介した「情報理論」という本を書いた甘利俊一先生だ。

そして2冊目はこの本がよさそうだ。

機械学習と深層学習 ―C言語によるシミュレーション―:小高知宏

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関連ページ:

【保存版】人工知能って何?歴史や将来の可能性を10分で理解できるまとめ【2016年度】
http://www.stay-minimal.com/entry/aboutartificialIntelligence



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人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊」(Kindle版

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内容紹介:
いま、将棋やクイズ番組など「人工知能vs人間」の戦いがあちこちで起こっている。2014年の英オックスフォード大学の研究報告では、今後10年から20年ほどで、人工知能を含むITの進化の影響によって、米国の702の職業のうち約半分が失われる可能性があると述べている。

最先端の人工知能技術「ディープラーニング」をめぐっては、グーグルやフェイスブックなどが数百億円規模の激しい投資・人材獲得合戦を展開。一方で、宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士や、実業家のイーロン・マスク、ビル・ゲイツなどが、「人工知能は人類を滅ぼすのではないか」との懸念を相次いで表明した。

そのテクノロジーは、ヒトを超える存在を生み出すのか。人間の仕事を、人類の価値を奪うのか。

▼ トップクラスの研究者が解きほぐす、「人工知能」の過去・現在・未来

ディープラーニングの特徴をひと言で言えば、コンピュータが人間のように「気づき」を得るしくみのこと。これまで「人工知能」と呼ばれていたものは、たとえ同じ計算を10万回やっても、1回目と10万回目のやり方は基本的に同じで、「もっと早く計算できる方法」に自ら気づけない。コンピュータの計算能力は飛躍的に上がったが、それは根本解決ではないのだ。しかし、その状況がディープラーニングによって革命的に変わる。

本書では、人工知能学会で編集委員長・倫理委員長なども歴任、日本トップクラスの研究者の著者が、これまで人工知能研究が経てきた歴史的な試行錯誤を丁寧にたどり、その未来像や起きうる問題までを指摘。情報工学・電子工学や脳科学はもちろん、ウェブや哲学などの知見も盛り込み、「いま人工知能ができること、できないこと、これからできるようになること」をわかりやすく解説する。

なお、本書カバーには、ロボットと人間の共生を描いたアニメーション『イヴの時間』より、ヒロインのアンドロイド「サミィ」のイラストを特別にお借りして掲載している。

はじめに――人工知能の春

序章:広がる人工知能――人工知能は人類を滅ぼすか
- 人間を超え始めた人工知能
- 自動車も変わる、ロボットも変わる
- 超高速処理の破壊力
- 人工知能はSF作家になれるか
- 人工知能への研究投資も世界中で加速
- 職を失う人間
- 人類にとっての危機が到来する
- この本の読み方

第1章:人工知能とは何か――専門家と世間の認識のズレ
- まだできていない人工知能
- 基本テーゼ:人工知能は「できないわけがない」
- 人工知能とは何か――専門家の整理
- 人工知能とロボットの違い
- 人工知能とは何か――世間の見方
- アルバイト・一般社員・課長・マネジャー
- 強いAIと弱いAI

第2章:「推論」と「探索」の時代――第1次AIブーム
- ブームと冬の時代
- 「人工知能」という言葉が誕生
- 探索木で迷路を解く
- ハノイの塔
- ロボットの行動計画
- 相手がいることで組み合わせが膨大に
- チェスや将棋で人間に勝利を飾る
- [秘訣1] よりよい特徴量が発見された
- [秘訣2] モンテカルロ法で評価のしくみを変える
- 現実の問題を解けないジレンマ

第3章:「知識」を入れると賢くなる――第2次AIブーム
- コンピュータと対話する
- 専門家の代わりとなるエキスパートシステム
- エキスパートシステムの課題
- 知識を表現するとは
- 知識を正しく記述するために:オントロジー研究
- ヘビーウェイト・オントロジーとライトウェイト・オントロジー
- ワトソン
- 機械翻訳の難しさ
- フレーム問題
- シンボルグラウンディング問題
- 時代を先取りしすぎた「第五世代コンピュータ」
- そして第2次AIブームが終わった

第4章:「機械学習」の静かな広がり――第3次AIブーム(1)
- データの増加と機械学習
- 「学習する」とは「分けること」
- 教師あり学習、教師なし学習
- 「分け方」にもいろいろある
- ニューラルネットワークで手書き文字を認識する
- 「学習」には時間がかかるが「予測」は一瞬
- 機械学習における難問
- なぜいままで人工知能が実現しなかったのか

第5章:静寂を破る「ディープラーニング」――第3次AIブーム(2)
- ディープラーニングが新時代を切り開く
- 自己符号化器で入力と出力を同じにする
- 日本全国の天気から地域をあぶりだす
- 手書き文字における「情報量」
- 何段もディープに掘り下げる
- グーグルのネコ認識
- 飛躍のカギは「頑健性」
- 頑健性の高め方
- 基本テーゼへの回帰

第6章:人工知能は人間を超えるか――ディープラーニングの先にあるもの
- ディープラーニングからの技術進展
- 人工知能は本能を持たない
- コンピュータは創造性を持てるか
- 知能の社会的意義
- シンギュラリティは本当に起きるのか
- 人工知能が人間を征服するとしたら
- 万人のための人工知能

終章:変わりゆく世界――産業・社会への影響と戦略
- 変わりゆくもの
- 産業への波及効果
- じわじわ広がる人工知能の影響
- 近い将来なくなる職業と残る職業
- 人工知能が生み出す新規事業
- 人工知能と軍事
- 「知識の転移」が産業構造を変える
- 人工知能技術が独占される怖さ
- 日本における人工知能発展の課題
- 人材の厚みこそ逆転の切り札
- 偉大な先人に感謝をこめて

おわりに――まだ見ぬ人工知能に思いを馳せて

死ぬまでに学びたい5つの物理学: 山口栄一

死ぬまでに学びたい5つの物理学: 山口栄一

内容紹介:
万有引力の法則、統計力学、エネルギー量子仮説、相対性理論、量子力学。これらを知らずに死ぬのはもったいない。科学者の思考プロセスを解明する物理学再入門。
母親に捨てられたニュートン、自殺したボルツマン、息子をナチスに殺されたプランク、ユダヤ人としてドイツを追われたアインシュタイン、原爆製造の汚名を着せられたハイゼンベルク…。科学の先端を切り拓いた物理学者たちの発見の陰には、孤独と苦悩の人間ドラマがあった。5つの革命的な知を生み出した天才たちの思考プロセスをたどり、科学はいかにして創られたかを解明する。文系の読者にも面白く学べる全く新しい物理学入門書。
2014年5月刊行、234ページ。縦書きの本。

著者について:
山口栄一(やまぐちええいち):経歴ページ:https://kyouindb.iimc.kyoto-u.ac.jp/j/xZ8rN
1955年、福岡市生まれ。京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授。東京大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、理学博士。米国ノートルダム大学客員研究員、NTT基礎研究所主幹研究員、仏国IMRA Europe招聘研究員、経団連21世紀政策研究所研究主幹、同志社大学大学院教授、英国ケンブリッジ大学クレアホール客員フェローなどを経て、2014年より京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授。

京都大学大学院総合生存学館(思修館)山口栄一研究室
https://www.gsais.kyoto-u.ac.jp/staff/yamaguchi/j/index.html

山口栄一先生の著書: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で312冊目。


本書を読んだきっかけ

本書や著者の山口先生のことは失礼ながら存じ上げなかった。先月このブログをお読みになった方から「ぜひ、この本を読んでみてほしい。」というご依頼をメッセージ欄を通じていただき、読ませていただいた次第だ。

科学本の書評ブログを長年続けているので、このようなお申し出をいただいたり、たまに本をお書きになった先生からご依頼を受けることがある。すべて受けてしまうと自分が読みたい本が全く読めなくなってしまうので、たいてい丁重にお断りするか、余裕がでてきたら読ませていただきますとご返事している。僕は感じたことをそのまま書きたいと思うので、依頼という形でお引き受けするとどうしてもネガティブなことを書きにくくなるからだ。

僕は自分自身の勉強を深め、それを記録するという以外に、これからの時代を担っていく若い方に物理や数学に興味をもってもらいたい、社会人の方にも興味を持ってもらいたいという思いから、このブログを書いているわけだ。本書に関心をもったのは、この本の著者も同じような願いで書かれているのではないか?この本のように数式を含めたスタイルで、どの程度一般読者に受け入れられるものか?という2つのことが気になったからだ。

「死ぬまでに読みたい~」という大げさなタイトルだが、内容はいたって堅実である。ニュートン力学から量子力学に至る基礎物理学の王道をたどりながら、物理学が発展していくことの素晴らしさを読者に気づかせてくれている。

対象読者は高校生ではなく、一般の社会人、特に著者が日ごろお付き合いのある社会人の方、人文系の知識レベルは高い方、物理を学びたかったけれどもこれまで機会を持てなかった方々だと感じた。

山口先生の著書を見ると、JR福知山線での事故や福島原発の放射線についての本をお書きになっていたことがわかる。科学者として社会への責任感を強くお持ちの方だと感じた。先生はまた日本のサイエンス型産業が凋落の一途をたどっていることに危機感を持ち、社会人向けに「科学はいかにして創られたか」という講義をしているそうだ。本書はその講義の中から生まれた本である。文章のスタイルや内容が「大人向け」であるのはそのためだ。


本書の流れ

本書の章立ては次のとおりだ。

序章:強く生きるために物理学を学ぶ
第1章:孤独から生まれた科学学命―万有引力の法則
第2章:哲学から解放された科学―統計力学
第3章:宇宙の設計図を見つけた―エネルギー量子仮説
第4章:失われなかった子供の空想力―相対性理論
第5章:神はサイコロを振る―量子力学
第6章:科学はいかにして創られたか

第1章から第5章では、基礎物理学の中で特に重要な5つの理論を取り上げる。これらは導かれるべくして発見されたのでなく、それまでの常識を打ち壊すことで発見されたブレイクスルーによって獲得できたものばかりだ。それを成し遂げた科学者たちの偉大な業績ばかりである。

それぞれの物理学者の伝記がその生い立ちから紹介されている。輝かしい業績だけでなく、不遇な環境で育ったことや戦争などの厳しい歴史が人生にもたらした不幸な現実にもフォーカスをあてているのが本書の特徴だ。人生経験を積んだ大人の読者が共感できるのはこの部分だと思う。ほとんどの物理学者の伝記を僕は他の本で読んでいたが、物質波を提唱したドゥ・ブロイの人物像は知らなかったので興味深く読ませていただいた。

数式を使って解説しているのは5つの理論に共通しているところだが、実際に読者に詳しく計算させるのは第1章のでケプラーの法則のうち第2法則(面積速度一定)と第4章の特殊相対性理論だけである。(空間の縮みと時間の伸び)そのほかの章は数式を引用しながら解説をするというスタイルだった。先日の「直接観測に成功した重力波」にしても空間が縮んだり元にもどったりという性質をもっていなければおきない現象なので、自分で初めて空間の縮みが計算で確かめられたらさぞ感動するだろうと僕は思うわけである。

第6章で山口先生は独自に「演繹」、「帰納」、「創発」という言葉を用い、第5章までで紹介した物理学の発展を図式化して検証されている。3つの言葉を僕なりに解釈すると次のようになる

「演繹」とは、過去に得られた知識や理論をそのまま自然に発展、応用すること。
「帰納」とは、過去に得られた知識や理論を否定すること。
「創発」とは、それまでのパラダイムを破壊した後、まったく新しい観点から発想すること。

たとえば、第1章の万有引力については次のような図式になる。

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統計力学、エネルギー量子仮説、相対性理論、量子力学について、このような図式が紹介されるわけであるが、統計力学では図式は複雑なものになり、なるほどと納得させられる。

この図式は「イノベーション・ダイヤグラム」というのだそうだ。詳細は以下の記事で解説されている。山口先生は物理学の教授でいらっしゃるだけでなく、イノベーションをもたらすベンチャー企業の経営者でもある。

ブレークスルーのイノベーション理論
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090323/167563/

英国だけにそれができたワケ
産業革命をイノベーション論から捉え直す(1)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080521/152128/


そしてさらに、DNAの二重らせんの発見からiPS細胞までをカバーした分子生物学発展過程を示す複雑な図式が紹介されている。門外漢の僕には少しわかりにくいところが残ったが、科学者の「偉業」というものは、真面目にこつこつと学んでいるだけでは決して得られないのだということがよくわかった。iPS細胞の山中先生がなぜ素晴らしいかはとてもよく理解できた。

なお「演繹」と「帰納」はコンピュータにもできるが、「創発」はどんなに発達してもコンピュータにはできないと山口先生はお書きになっている。ただしこれはディープラーニングのことを含めているかどうかはわからない。(参考記事:「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊」)


感想や補足事項

本当ならばそれぞれの理論で本が1~2冊書けるはずなのに、たったこれだけの本で5つの理論を紹介するのだからぎっしり詰まっている。証明を省略したり、割愛せざるをえない事柄がでてくるのは仕方がないことだ。個別に思ったこと、補足したいことをいくつか書いておこう。

まず第1章の万有引力についてだが、ニュートンは著書『プリンキピア』で「ケプラーの3法則から万有引力を求めること(順問題)」と「万有引力からケプラーの3法則を求めること(逆問題)」を証明しているというようなことが本書には書かれている。しかしながら「古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆」によると、逆問題については解の天下りな記述はあるものの証明できていなかったことが述べられている。この事実には注意しておきたい。

順問題の解法:
http://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/mech/bannyuu/bannyuu.html

逆問題の解法(英語ページ):
http://galileo.phys.virginia.edu/classes/152.mf1i.spring02/KeplersLaws.htm

また本書にはニュートンが惑星の初速度は「神の一撃」であり、その後は運動法則にしたがって惑星は運動を続けるので神の存在は不要なのだと書かれている。しかし、「古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆」によるとそうではないようなのだ。

太陽系全体をみたときに、それぞれの惑星は同一平面上を楕円軌道を描いて調和的に設定していること、すべての運動は摩擦や粘性による減衰があること、彗星は惑星による摂動の影響を受けるし、不規則性は累積していくとニュートンは考えていた。だから太陽系の調和が保たれるためは常に神の監視が必要だと考えていたという。惑星の運動が未来永劫続くためには全能の神の意図が前提とされていた。


第2章の統計力学についていえば、蒸気機関の発明に至るまでの解説が素晴らしかった。そのおかげで熱力学が生まれていった過程が本書には詳しく書かれている。しかしながら蒸気機関や熱力学に至る以前にも本書には説明しきれなかった熱学や伝熱学の非常に長い混沌とした歴史があった。これについては山本義隆先生の「熱学思想の史的展開〈1〉〈2〉〈3〉」をお読みになるとよい。

あと素晴らしいと思ったのが第3章のエネルギー量子仮説である。僕はこれまでいろいろな解説で学んだが、太陽光のスペクトルを例示しながらの解説はとてもわかりやすい。エネルギーが離散値をとることが(多少天下りな部分が残っているとはいえ)じゅうぶん伝わる書き方かされていた。

この本を読めばもっと詳しく知りたくなることだろう。そのような方は次のステップとして高橋先生の「高校数学でわかる~」シリーズをお勧めしたい。

- 高校数学でわかるボルツマンの原理:竹内淳(紹介記事
- 高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳(紹介記事
- 高校数学でわかる相対性理論:竹内淳(購入ページ


このように本書は人生経験を積んだ大人が、あらためて現代物理学の素晴らしさを発見することを手助けしてくれる本なのだ。山口先生の強い想いが色濃く感じられる。先生の講座に参加したり、本書を手に取るような方は、もともと意識が高く、勉強熱心な方なのだと思う。そのような方々の期待に応えてくれる本だと僕は思った。

僕は物理や数学の面白さを若者に伝えることで、日本経済の再発展に結び付けようと試みているのだが、山口先生はそんな悠長なことではなく、いままさに社会に対して影響力をもっている大人たちに刺激を与え続けているのだと感じた。


正誤表

僕が購入したのは初版の第1刷で正誤表が挟まっていた。筑摩書房のこの本の紹介ページには正誤表が公開されていないので、ここに載せておこう。正誤表は横書きであるが、本書は縦書きの本である。

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関連ページ:

山口先生へのインタビュー記事
日本では科学を論じないしきたりがある
ニュートンもアインシュタインも、悟りを求めていた
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140819/371343/?rt=nocnt

死ぬまでに学びたい5つの物理学(読書メーター)
http://bookmeter.com/b/4480016007

死ぬまでに学びたい5つの物理学(ブクログの読者レビュー)
http://booklog.jp/item/1/4480016007


関連記事:

学生や社会人が趣味として物理を学ぶという観点から、次の記事を関連記事としておこう。

科学の発見: スティーブン・ワインバーグ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/70612f539adade398a14a27e87b70d92

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7

200冊の理数系書籍を読んで得られたこと
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b92c958e54960246be16b564c6b8c8e

300冊の理数系書籍を読んで得られたこと
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8d57c3e2ee6d39fe7a1b083af03a3d41


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死ぬまでに学びたい5つの物理学: 山口栄一

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序章:強く生きるために物理学を学ぶ

第1章:孤独から生まれた科学学命―万有引力の法則
- ニュートン―「神の御業たる真理」の発見者
- 天才のインスピレーションを追体験する

第2章:哲学から解放された科学―統計力学
- ホイヘンスからワットへ―産業革命を起こした職人の技能
- ボルツマン―パラダイムの破壊者に訪れた悲劇
- 世界の乱雑ぶりを弾きだす

第3章:宇宙の設計図を見つけた―エネルギー量子仮説
- プランク―物理学を変え、物理学を守った
- 波であり粒である光とは何か

第4章:失われなかった子供の空想力―相対性理論
- アインシュタイン―枠組みを揺さぶるユダヤ的知性
- 中学生の数式で相対性理論を導く

第5章:神はサイコロを振る―量子力学
- ドゥ・ブロイ―誇り高き孤独と自由な精神
- シュレーディンガー―遍歴と越境の生涯
- ハイゼンベルク―科学的名声と原爆製造の汚名

第6章:科学はいかにして創られたか
- 新たな知の創造へのプロセス
- 科学革命家たちの「創発」を検証する
- 創発と回遊―新しいイノベーションの世紀へ

あとがき
参考文献
事項索引
人名索引

発売情報: 実験数学読本: 矢崎成俊

実験数学読本: 矢崎成俊

内容紹介:
ホームセンターでも買える材料を使った数理実験を楽しみながら、背後にある現象にまつわる数学を解きほぐして紹介する。
2016年6月刊行、248ページ。

著者について:
矢崎成俊(やざきしげとし)
明治大学理工学部数学科 教授
ホームページ1:
http://www.isc.meiji.ac.jp/~syazaki/index.html
ホームページ2:
http://www.isc.meiji.ac.jp/~math/labo/yazaki.html

矢崎成俊先生の著書: Amazonで検索


地元の書店で見つけてひと目ぼれして買った本。「ホームセンターでも買える材料を使った数理実験」と書いてあったので、中学や高校の夏休みの自由研究のレベルかと思って手にとったのだが大間違い。

大学2年までで学ぶ微積分や微分方程式、ベクトル解析の数理を学びながら実際に工作することでその数理が潜んでいる現象を確かめることができる本だった。そして紹介されているテーマは比較的高度で興味深いものが盛りだくさん。

数式は図版やグラフで解説されているからわかりやすい。実験の様子も写真で紹介されているから、自分で作らなくてもかなり楽しめるし、ながめているだけでも知的好奇心が自然に沸いてくる本だ。

とてもユニークだし、ありそうでなかった本。「こういう本があったらいいのになぁ。」と思っていた本がついに発売されたので取り急ぎ紹介させていただいた。

章立ては次のとおりだ。理工系の大学1年生以上の方にお勧めしたい。


第0章 実験レシピと数学ワンポイント

第1部 連続関数と微分法についての数理2章

第1章 世界でたった一つの場所――世界地図の数理
第2章 針金の枠に張られる膜の形――石けん膜の数理

第2部 常微分方程式についての数理5章

第3章 ハイジの危険なブランコ――ブランコの数理
第4章 爆発する人口――指数的増殖と頭打ちの数理
第5章 大発生する虫――突発的変化の数理
第6章 最も速く粒子が滑る坂道の形――坂道の数理
第7章 ふぞろいのメトロノームたち――メトロノームの数理

第3部 数値計算と次元解析についての数理2章

第8章 熱湯に氷を入れたら何度になるの?――次元の数理
第9章 美味しいうどんのこね方――計算機演算の数理

第4部 偏微分方程式についての数理3章

第10章 湯は水よりも早く凍る!?――雪氷の数理(参考ページ
第11章 船はなぜ沈まないのか?――浮沈の数理
第12章 数理の力でアメーバを作る――隙間流体の数理


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実験数学読本: 矢崎成俊

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第0章 実験レシピと数学ワンポイント
 1.対数らせんの抽出
 2.増減表の粋な使い方
 3.石けん膜で作る縄張りの形
 4.塩山で作る内心と放物線
 5.塩山で作る縄張りの形(ボロノイ分割)
 6.素朴に円周と直径を測ってπを算出
 7.振り子の周期からπを算出
 8.針を落としてπを算出(ビュッフォンの針)
 9.光の屈折の法則
 10.楕円の描き方と楕円ミラー
 11.放物線の描き方と放物線ミラー
 12.○○が最大の形は何か?
 13.○○が最小の形は何か?
 14.作図可能・三等分可能な整数角度
 15.折り紙でモーレーの定理を解く(角の三等分問題)
 16.似非電子ホタルの同期
 17.熱の移動と過冷却水の凍結
 18.墨流しの実験と渦の表現
 19.デザイン定規で描ける曲線(サイクロイド)
 20.自作! こまと逆さごま(重心)


第1部 連続関数と微分法についての数理2章

第1章 世界でたった一つの場所――世界地図の数理
 1.世界にたった一つの場所
 2.合同変換の不動点
 3.相似変換の不動点
 4.世界地図上の不動点
 5.メルカトル図法
 6.世界地図上の不動点(続)
 7.ニュートン法

第2章 針金の枠に張られる膜の形――石けん膜の数理
 1.1円玉を水に浮かべる
 2.石けん膜の実験
 3.表面張力1
 4.表面張力2
 5.膜の張り方の法則
 6.立方体枠の場合


第2部 常微分方程式についての数理5章

第3章 ハイジの危険なブランコ――ブランコの数理
 1.運動方程式とブランコ運動
 2.単振動とハイジのブランコ
 3.特殊関数とハイジのブランコの周期
 4.ブランコのあり得ない倒立状態
 5.相図
 6.減衰振動と振れが小さくなるブランコ
 7.背中を押してもらって楽しむブランコ
 8.減衰のない強制振動と危険なブランコ
 9.パラメータ励振と自ら漕ぐブランコ

第4章 爆発する人口――指数的増殖と頭打ちの数理
 1.ねずみ算
 2.指数的増殖と頭打ち
 3.時間遅れ

第5章 大発生する虫――突発的変化の数理
 1.害虫の突発的大発生モデル
 2.モデル方程式の解析に向けて
 3.突然の大発生
 4.閾値 k_{*} = 3√3 の導出
 5.カタストロフィー
 6.ジーマンのカタストロフィー機械

第6章 最も速く粒子が滑る坂道の形――坂道の数理
 1.ブラキストクローネ問題
 2.変分問題
 3.最速降下線
 4.関数が複数の場合の変分問題
 5.等周問題
 6.懸垂線(カテナリー)

第7章 ふぞろいのメトロノームたち――メトロノームの数理
 1.メトロノームの仕組み
 2.メトロノーム運動のモデル方程式
 3.同期現象
 4.同期現象のモデル方程式
 5.0 < c = k のとき
 6.0 < c < k のとき

第3部 数値計算と次元解析についての数理2章

第8章 熱湯に氷を入れたら何度になるの?――次元の数理
 1.量と単位
 2.測定の尺度
 3.次元解析の導入
 4.バッキンガムのパイ定理
 5.いろいろな例

第9章 美味しいうどんのこね方――計算機演算の数理
 1.パイこね変換
 2.パイこね変換の数値計算――謎の現象
 3.浮動小数点数
 4.2進表現
 5.IEEE754規格
 6.パイこね変換の数値計算――謎は解けた
 7.予想外の例
 8.パイこね変換の数値計算――リベンジ


第4部 偏微分方程式についての数理3章

第10章 湯は水よりも早く凍る!?――雪氷の数理
 1.温度と熱
 2.熱方程式の導出
 3.ステファン問題
 4.ムペンバ現象(参考ページ
 5.雪の結晶の生涯
 6.平松式人工雪発生装置
 7.原理と特徴
 8.中谷式装置との違い
 9.雪の結晶成長モデル

第11章 船はなぜ沈まないのか?――浮沈の数理
 1.非圧縮性完全流体
 2.発散定理
 3.グリーンの公式
 4.連続方程式
 5.オイラー方程式
 6.アルキメデスの原理

第12章 数理の力でアメーバを作る――隙間流体の数理
 1.ナヴィエ-ストークス方程式
 2.ヘレ・ショウ問題

夜のウォーキング、その後7(累積6000Km)

2013年4月7日から今日までに歩いた累積距離

2013年3月8日に始めた夜のウォーキング。ナイキのランニングアプリで歩いた距離を記録始めたのは300Km歩いた1か月後からだった。今日、累積メーターが6000Kmを超えたので記事として記録しておこう。

累積メータが5000Kmに到達したのは今年の2月1日なので1000Km歩くのに6カ月半かかっている。月あたり154Kmのペース。

最近は脂肪燃焼というより、むしろ健康維持のためという目的に切り替えている。もちろんサボる日もたくさんあるが、継続するのが何より大事だ。


関連記事:

1日人間ドック(2010年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/78d08050074f97baefb45084b0e936e2

ウォーキングと夜桜(2013年3月)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/055b88c503e142d7b9559e5965de5550

夜のウォーキング、三軒茶屋へ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cfd8a6fb66f8d236da95531fd108d8cf

夜のウォーキングのその後
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/65eb0d670f88ee2225670772ad03793e

夜のウォーキング、その後2
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a64b260d065375c77a79c2839dc414be

夜のウォーキング、その後3
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7da6bbf0006e187662cf2cf1822b82fe

夜のウォーキング、その後4(累積3000Km)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6e55742ebae984371eed25cc70de75bb

夜のウォーキング、その後5(累積4000Km)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/31b8bd0070d5d2853a7515efc7ac0e2e

1日人間ドックとウォーキング
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/630184969180751eecfdfcfeb6ff54c0

夜のウォーキング、その後6(累積5000Km)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/20cde6adec555ae73da5ab19156ae257


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小さな国のつづきの話: 佐藤さとる、村上勉


コロボックル物語5 小さな国のつづきの話

内容紹介:
図書館に勤める杉岡正子は、日本に伝わる小人・コロボックルのことを描いた本『だれも知らない小さな国』に出会う。そして、“私が見たのはコロボックルかも”と著者に手紙を書いた。正子とコロボックルの関係は、驚くべき新しい出会いにつながる。心洗われるコロボックルワールド完結篇。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。

著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。

村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。


有川浩さんの「だれもが知ってる小さな国」を読んだのがきっかけで、小学生の時に読んだ佐藤さとる先生のコロボックル物語シリーズを第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」から読み直している。今回紹介するのはその5巻目だ。


第5巻が刊行されたのは1983年。僕が大学に入学した年だった。児童文学に触れる機会はほとんどなかったので、続刊がでていることに気が付いたのはかなり後になってから、30歳くらいになってからだったと思う。

第4巻までの本はすでに人気が定着しており、読者から本やコロボックルに対するファンレターがたくさん寄せられていたそうだ。そのほとんどが女性からのもので、このシリーズの読者は女性のほうが圧倒的に多いことを著者の佐藤さとる先生はお感じになっていた。

社会の雰囲気も70年代とは変わり、徐々にではあるが女性が社会で活躍し始め、テレビ番組やコマーシャルにも女性が登場することが多くなっていった。

そのような時代の変化を佐藤先生も、きっとお感じになっていたのであろう。第5巻では主役をはじめ、登場人物やコロボックルたちはほとんど女の子である。

主役は杉岡正子という若い図書館職員。高校卒業後、すぐに町の図書館に勤め始めた女性だ。そして彼女は高校時代の同級生の「チャムちゃん」という色白の美少女と親友だった。チャムちゃんは、せいたかさんの娘なのだ。高校卒業後、チャムちゃんは大学に進学したため、ほとんど会うことがなくなっていた。

杉岡正子
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チャムちゃんには小学生の弟がいて、この物語では「ムックリくん」という名前で登場する。このムックリくんが正子の勤める図書館に通い始め、ムックリくんはコロボックル物語のことを正子に教え、物語はスタートを切るのだ。

ムックリくん
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この頃までにはコロボックルの社会の掟もだいぶゆるいものになっていた。以前は人間とコロボックルの「トモダチ関係」は1対1に制限されていたが、本当に信頼できる人間に対しては1対多でも構わないということになったのだ。つまり審議の上で選ばれた人間は「みんなのトモダチ」になれるわけである。せいたかさんはもちろん、奥さんのママ先生、そして娘のチャムちゃんや息子のムックリくんは、すでにその資格を得ていた。

そしてコロボックルの存在にうすうす気づいていた図書館職員の正子も、この本の中で「ツクシンボ」と呼ばれているコロボックルの女の子とまず1対1のトモダチになる。その後、話がどのように展開していくかは、本書を読んでのお楽しみにしておこう。

人間とコロボックルの交流が拡がり、めでたしめでたしという感じで進むのかと思いきや以外な展開が起こる。正子のトモダチとして役割を果たしていたツクシンボが、数人の全く違ういで立ちをしたコロボックルと遭遇するのだ。彼らは忍者装束をまとっていて髪は紫色。はるか昔にコロボックル社会から分かれて生きることを選んだ別の種族だったのだ。その種族は「チィサコ族」と呼ばれていた。

チィサコ族
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言い伝えとしてだけ聞いていたもうひとつの種族が実際に存在した。コロボックル国は大騒ぎになる。果たしてコロボックル国とチィサコ族は共存できるのだろうか?彼らとどのように付き合っていけばよいのだろうか?これも本書を読んでのお楽しみとしておこう。


さて、次に読むのは最終巻だ。読み続けてきた物語が終わってしまうのは、ちょっと寂しい気もする。


佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。

1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行


コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html


講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」(紹介記事
コロボックル物語3 星からおちた小さな人」(紹介記事
コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子」(紹介記事
コロボックル物語5 小さな国のつづきの話
コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

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青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。

講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索

単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。


新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行

新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人

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新イラスト版: Amazonで検索


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コロボックル物語5 小さな国のつづきの話

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第1章:小さな神さま
第2章:わたしはコロボックル
第3章:みんなのトモダチ
第4章:めぐりあい
第5章:思いがけないこと

あとがき(その1~その3)

解説:佐藤多佳子


以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ

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有川版についている帯

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トルコ人観光客とクーデター未遂の件

トルコのクーデター未遂事件


フランスのニースで起きた痛ましいテロやトルコのクーデター未遂事件は、SNSやテレビを通じて知り、心を痛めていたのだが、日常生活とは別の「国際ニュース」としてとらえていた。

連休が始まり、いつものようにカフェで勉強して過ごしていたのだが、今日思わぬ形でトルコでの事件を意識することになった。


コーヒーを注文しようとレジで並んでいたところ、僕の2人前に30歳くらいの外国人男性が注文内容を伝えられずに困っているのが見えた。レジ担当の女性が英語でちゃんと対応できるのかなと思い、少しの間様子を見ていたのだが、彼が注文しているのは「さ湯(ぬるま湯)」だった。お湯はメニューになかったよなと思いつつ、僕は「ぬるま湯が欲しいと彼は言ってるんだけど。」と店員に伝えた。そして彼に「そのほかは?コーヒーとか紅茶とかは?」と」聞いたところ「カフェラテをお願いします。」という返事。

後でわかったのだが、店員は彼が言う「Warm water」のことを熱いお湯だと思って「Hot water?」と聞き返したものだから混乱が生じていたようだ。「No, Warm water, please.」と返されて「それ何?」という感じ。確かに彼の英語はアクセントが強くて理解しにくい。

店員が飲み物を用意している間に、彼にいくつか質問してみた。すると彼は観光で来日しているトルコ人だという。僕の背筋に緊張が走った。この場合何と言うべきなのだろう?とりあえず笑顔を真顔に戻して「お国は大変なことになってしまいましたね。」としか言えなかった。

トルコ政府がクーデターを鎮圧 民間人と軍人ら265人が死亡
http://news.livedoor.com/article/detail/11774212/


彼が飲み物を持って戻った席には金髪の女性が落ち込んだ様子で座っていた。奥さんなのか恋人なのかわからないけれど。僕はクーデター未遂のことで落ち込んでいるのかと思ったのだが、彼の説明によれば風邪をひいて体調が悪いとのこと。「さ湯」は彼女が飲むためのものだった。席の回りには転がすタイプのキャリーバッグが4つも置いてある。

すでに京都と大阪、東京の観光を終え今夜のフライトで帰国するそうだ。本当は昨日のフライトを予約していたのだが飛行機は飛ばなかったのだという。国がクーデターで騒然としていたから無理もない。

日本に発つ直前のトルコ情勢のことやクーデターのこと、難民問題のこと、トルコ国内のSNSの状況のことなど僕には聞きたいことがたくさんあったのだが、彼女の体調をおもんばかって彼らが必要としていることだけ話すにとどめた。

彼女はチーズが食べたいと言ったので、すぐ近くのスーパーマーケットに彼を連れていき、普通のプロセスチーズ(6Pチーズです)とパン、バナナを買ってカフェに戻ってきた。

今回のクーデター未遂について彼は「これは大統領が仕組んだことだ。反体制派を煽ってクーデター事件を起こさせ、それを鎮圧することで自身の権力を強化しようとしているのだ。」と僕に説明した。

トルコの国内情勢のことなどほとんど知らないから、彼の言っていることが正しいかどうか僕には全くわからない。彼がおかれている立場も知らないわけだし。でも、ひとりの市民がそのように主張していることだけは、ここに書き記しておきたいと思った。

荷物運びを手伝うために友達が新宿で待っているそうなので、彼女の食事が終わったあと僕は彼らをすぐ近くの駅の改札まで連れて行った。

長時間のフライトで彼女は大変だろうし、帰国してからも落ち着かない日々が続くのだろう。短い時間の出会いであったが、彼らの安全と幸福を願わずにいられなかった。


SNSやテレビ画面から覗いていた過酷な国際情勢がとつぜん目の前にあらわれたようなもので、僕は戦慄を覚えた。いつもの平凡な日常の中で起きた出来事である。


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ご連絡: 1週間ほどインターネットから離れます。


ご連絡:

連休中に家族の病状が急変してしまいました。(おそらく)1週間ほどインターネットから離れて過ごさせていただきます。ご心配をおかけしますが、よろしくお願いします。

コメントをいただいた場合、スマートフォンから公開承認をいたしますが、返信はできないと思いますのでご理解ください。


この投稿は後日削除いたします。

ご連絡: ブログとTwitterは少しずつ再開します。


先日の連休中に家族の病状が急変したため、インターネットから離れておりました。危機的状況はひとまず回避できましたが、重篤な状態が依然続いています。

気持に少しだけ余裕がでてきたのでブログとTwitterは少しずつ再開することにしました。しかしながらこれまで趣味の活動に使っていた時間帯(土日の昼間と平日の夕方)のほとんどすべては病人を見守るために病院で過ごしているので、勉強やブログに使えるパワーは通常の20分の1ほどしかありません。

今の状況は差し当たり1か月は続くと思われます。この件についてはコメントを頂戴しても公開や返信できない場合がありますので、ご理解をお願いいたします。(返信をし始めると細かく説明しなくては話が通じなくなる場合がありますし、具体的な話はネット上には書かないことにしていますので。)


この投稿は後日削除する予定です。


関連記事:

ご連絡: 1週間ほどインターネットから離れます。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e8551f509782c408472ff22d1ae6f3ef


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コロボックルむかしむかし: 佐藤さとる、村上勉


コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

内容紹介:
「コロボックル―日本伝説の小人」の世界でも、人間世界と同じように、むかし話やおとぎ話が語り継がれている。コロボックル版の桃太郎や一寸法師、そして神話など。そこから、コロボックルの魅力や真の姿が明らかとなる。いわば、エピソード・ゼロの物語。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。

著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。

村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。


有川浩さんの「だれもが知ってる小さな国」を読んだのがきっかけで、小学生の時に読んだ佐藤さとる先生のコロボックル物語シリーズを第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」から読み直している。今回紹介するのはその最終巻。


この第6巻はコロボックル国に言い伝えられている昔話を集めた本だ。第1巻の「だれも知らない小さな国」でせいたかさんが彼らと出会うはるか昔から、コロボックルは日本で暮らしていたことが知られていた。それはどれくらい昔のことだったのだろう。

フィクションなのだから真面目に考えても意味はないわけだが、物語のファンになってしまうとそういうディテールが気になってくる。

言い伝えによればなんと「上古の時代」にまでさかのぼることができるそうなのだ。日本史では、大化の改新まで、あるいは大和時代(古墳時代・飛鳥時代)ということになる。

その後、コロボックルたちは人間社会と関わりをずっと持ち続けて現在に至るわけである。本書では歴史の順に従って物語が9話紹介されている。実際にあっただろう話もあれば、桃太郎のパロディのような話もある。

第1話:スクナヒコとオオクルヌシ(上古の時代)
第2話:水あらそいとヒコ(奈良時代)
第3話:アシナガのいましめ(平安時代末期)
第4話:虫づくし(平安時代から室町時代)
第5話:長者さまの姉むすめ(鎌倉時代)
第6話:モモノヒコ=タロウ(室町時代初期)
第7話:虫守りのムシコヒメ(室町時代末、戦国時代)
第8話:ふたりの名人(江戸時代初期)
第9話:藤助の伝記(江戸時代中期、元禄時代)

シリーズを読み終えてしまうのは寂しい気もするが、そんなときは第1巻を読み直してみるのがよいだろう。そして、これから出版されるかもしれない有川版の続編(2冊目)が刊行されることを僕は期待している。

以下、本書に描かれている挿絵を4つだけ紹介しておく。

第1話「スクナヒコとオオクルヌシ」- 上古の時代
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第3話「アシナガのいましめ」- 平安時代末期
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第5話「長者さまの姉むすめ」- 鎌倉時代
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第8話「ふたりの名人」- 江戸時代初期
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佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいなかった。

1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行


コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html


講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」(紹介記事
コロボックル物語3 星からおちた小さな人」(紹介記事
コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子」(紹介記事
コロボックル物語5 小さな国のつづきの話」(紹介記事
コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

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青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。

講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索

単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。


新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行

新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人

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新イラスト版: Amazonで検索


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コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

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まえがき
きっかけの話
第1話:スクナヒコとオオクルヌシ
第2話:水あらそいとヒコ
第3話:アシナガのいましめ
第4話:虫づくし
第5話:長者さまの姉むすめ
第6話:モモノヒコ=タロウ
第7話:虫守りのムシコヒメ
第8話:ふたりの名人
第9話:藤助の伝記

ツムジイのあとがき
コロボックル物語余話
青い鳥文庫版あとがき
復刊文庫版あとがき
解説:上橋菜穂子


以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ

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有川版についている帯

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相対論的量子力学 (量子力学選書): 川村嘉春

相対論的量子力学 (量子力学選書): 川村嘉春

内容紹介:
「相対論的量子力学」とは特殊相対性理論と量子力学が融合された理論で、1928年に提案されたディラック方程式を基礎方程式とする。したがって、特殊相対性理論と量子力学を学んだ方が本書の主な対象であるが、これらに関する基本的な概念と知識を付録に記載したので、大学の下級生でも意欲のある学生ならば、自主学習や自主ゼミを通して読みこなせる構成になっている。
第 I 部では、相対論的量子力学の構造と特徴について学ぶ。具体的には、ディラック方程式を導出し、そのローレンツ変換性、解の性質、非相対論的極限、水素原子のエネルギー準位、負エネルギー解の解釈について考察する。
第 II 部では、相対論的量子力学の検証について学ぶ。具体的には、電子・陽電子などの荷電粒子と光子の絡んださまざまな過程(クーロンポテンシャルによる散乱、コンプトン散乱、電子・電子散乱、電子・陽電子散乱)に関する散乱断面積を導出し、高次の量子補正について考察する。
2012年11月刊行、353ページ。

著者について:
川村嘉春(かわむらよしはる):経歴のページ: http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.jNDFOUkh.html
1961年滋賀県生まれ。1985年名古屋大学理学部物理学科卒業。1990年金沢大学大学院自然科学研究科物質科学専攻修了、学術博士、信州大学理学部物理学科助手。1999年信州大学理学部物理科学科助教授。2006年同教授。専攻は素粒子物理学。

量子力学選書: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で313冊目。

2012年秋から刊行されている「量子力学選書(全8巻)」の第1巻である。このシリーズはよさそうだと思いつつも、手をつけるのがだいぶ遅くなってしまった。

特殊相対論と量子力学の要件を同時に満たすのが相対論的量子力学である。シリーズ第3巻の「場の量子論: 不変性と自由場を中心にして (量子力学選書):坂本眞人」の初めのほうにも相対論的量子力学が解説されているので重複しているわけだが、この第1巻の特徴は「相対論的量子力学にこだわって、できるところまでとことんやってみる。」ということなのだ。学ぶ意義はじゅうぶんあった。

これまで読んできた同じ分野の教科書よりも難易度はかなり高い。それはリー群やその表現論を理解しているのが前提とされているからだ。

カバーしている範囲は「サクライ上級量子力学」にほぼ一致している。しかしより理論的、数理的であるから本書のほうがより上級者向けである。


章立てはこのようなものだ。(詳細目次は記事のいちばん下を参照していただきたい。)

第 I 部 相対論的量子力学の構造
 1.ディラック方程式の導出
 2.ディラック方程式のローレンツ共変性
 3.γ行列に関する基本定理,カイラル表示
 4.ディラック方程式の解
 5.ディラック方程式の非相対論的極限
 6.水素原子
 7.空孔理論
第 II 部 相対論的量子力学の検証
 8.伝搬理論 -非相対論的電子-
 9.伝搬理論 -相対論的電子-
 10.因果律,相対論的共変性
 11.クーロン散乱
 12.コンプトン散乱
 13.電子・電子散乱と電子・陽電子散乱
 14.高次補正 -その1-
 15.高次補正 -その2-

付録
A.国際単位系
B.特殊相対性理論
C.量子力学
D.ポアンカレ群
E.スピノル解析
F.さまざまな時空におけるスピノル
G.正則化
H.表記法,公式集

第I部「相対論的量子力学の構造」ではまずクライン‐ゴルドン方程式、ディラック方程式、パウリ方程式を導く。そしてディラック方程式のローレンツ共変性やγ行列のもつ性質を確認したり、ディラックスピノルやカイラル表示を求めたりする。またディラック方程式の解や非相対論的極限も導出する。ここまでは相対論的量子力学の一般的な教科書とほぼ同じだ。

「相対論的量子力学でとことんやってみる。」が始まるのはその次からだ。水素原子のエネルギー準位や微細構造、ラムシフトなど「現代の量子力学:J.J.サクライ」のような中級レベルの量子力学の教科書で解説されていることを相対論的に書き換えて解説を与えているのだ。より現実の姿に近づいていくわけである。

相対論的水素原子のエネルギー準位(Dirac方程式の解): CASIO高精度計算サイト

第II部「相対論的量子力学の検証」では同様の試みがさらに続く。伝搬理論、そしてクーロン散乱やコンプトン散乱、電子・電子散乱、電子陽電子散乱の計算と解説が行われる。この段階まででファインマン則を用いた計算やくりこみの手法を詳しく学ぶことができる。

全353ページのうち本編が終わるのが234ページで残りの120ページほどはすべて付録にあてられている。この付録がとてもよいのだ。特にためになった(そして難しかった)のが付録DからGである。リー群や表現論の理解を前提としているが、ポアンカレ群やその表現を求めたり、さらにそれを超対称性理論に拡張したり、ミンコフスキー時空でのスピノルをD次元に一般化するなど、相対論的量子力学でそこまでやるかと思えるほど理論を先へ先へと進めているのだ。このようにマニアックな教科書を見たのは初めてだ。

D.ポアンカレ群
 D.1 ポアンカレ変換
 D.2 本義ローレンツ群の表現 -場の分類-
 D.3 ポアンカレ群の表現 -状態の分類-
 D.4 ポアンカレ群の拡張
  D.4.1 共形群
  D.4.2 超ポアンカレ群
E.スピノル解析
 E.1 回転群とスピノル
 E.2 本義ローレンツ群とスピノル
 E.3 相対論的波動方程式
F.さまざまな時空におけるスピノル
 F.1 D 次元ミンコフスキー時空におけるスピノル
 F.2 曲がった時空におけるスピノル
G.正則化
 G.1 パウリ‐ビラース正則化法
 G.2 真空偏極
 G.3 電子の自己エネルギー
 G.4 頂点の補正

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付録Dの難易度を実感していただくために、超ポアンカレ群の解説の最初のページだけお見せしておこう。なお本書の「はじめに」と第1章の「ディラック方程式の導出」のサンプルページ、「正誤表」はサポートページから公開されている。

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このように本書の良さを最大限享受するためにはリー群や表現論の理解が必要だ。5年前に「群と表現:吉川圭二」を紹介したので、近いうちに次の教科書に挑戦してみようと思う。本書の付録の部分との相性は特によさそうである。でもこの本の前に同じ著者の「古典型単純リー群」と「例外型単純リー群」を読んでおいたほうがよいかもしれない。

群と表現:横田一郎

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関連記事:

ディラック 量子力学 原書第4版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/717e864f937963ea7c8328f80ee34894

相対論的量子力学:森田正人、森田玲子
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1002e77ccbe4253f35e97138164f1640

相対論的量子力学:西島和彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7faabe0bcdf04c05bccf0aa129a1fba1

サクライ上級量子力学〈第1巻〉輻射と粒子:J.J.サクライ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f54547be0138322c412050725ce489c2

サクライ上級量子力学〈第2巻〉共変な摂動論:J.J.サクライ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef07c6e9d17863ca8e6c48959925783e

群と表現:吉川圭二
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35c16a71ff26b71d6ffc8c2c4730439f

連続群論入門 (新数学シリーズ18):山内恭彦、杉浦光夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/71f347a51bbd16f3c72bb9116d23f597


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相対論的量子力学 (量子力学選書):川村嘉春

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正誤表(pdfファイル

はじめに (pdfファイル

第 I 部 相対論的量子力学の構造

1.ディラック方程式の導出 (pdfファイル
 1.1 相対論と量子論
  1.1.1 相対論
  1.1.2 量子論
  1.1.3 物理的な要請
 1.2 クライン‐ゴルドン方程式
 1.3 ディラック方程式
 1.4 パウリ方程式の導出

2.ディラック方程式のローレンツ共変性
 2.1 ローレンツ共変性
  2.1.1 γ行列とディラック方程式
  2.1.2 ローレンツ共変性に関する条件式
  2.1.3 ディラックスピノルのローレンツ変換性
 2.2 ローレンツ変換の具体例
  2.2.1 x 軸方向のローレンツブースト
  2.2.2 z 軸の周りの空間回転
  2.2.3 4元確率の流れのローレンツ変換性
 2.3 空間反転

3.γ行列に関する基本定理,カイラル表示
 3.1 γ行列に関する基本定理
  3.1.1 γ行列から構成される行列とその性質
  3.1.2 γ行列に関する基本定理とその証明
 3.2 双一次形式のローレンツ共変量
 3.3 カイラル表示

4.ディラック方程式の解
 4.1 ディラック方程式の再導出
  4.1.1 ローレンツブーストとディラック方程式
  4.1.2 自由粒子解の性質
  4.1.3 スピン状態
 4.2 エネルギーとスピンに関する射影演算子
 4.3 自由粒子解と波束の物理的意味
  4.3.1 正エネルギー解から成る波束
  4.3.2 正エネルギー解と負エネルギー解から成る波束
 4.4 クラインのパラドックス

5.ディラック方程式の非相対論的極限
 5.1 自由粒子に関する谷‐フォルディ‐ボートホイゼン変換
 5.2 電磁場の存在下での谷‐フォルディ‐ボートホイゼン変換
  5.2.1 ベキ級数展開
  5.2.2 第1近似
  5.2.3 第2近似と第3近似
  5.2.4 物理的な意味

6.水素原子
 6.1 水素原子のエネルギー準位
  6.1.1 水素様原子に関するディラック方程式
  6.1.2 動径に関する微分方程式
  6.1.3 エネルギー準位
 6.2 実験値との比較
  6.2.1 微細構造
  6.2.2 超微細構造
  6.2.3 ラムシフト

7.空孔理論
 7.1 ディラックの解釈
 7.2 荷電共役変換
 7.3 空間反転と時間反転
 7.4 CP変換

第 II 部 相対論的量子力学の検証

8.伝搬理論 -非相対論的電子-
 8.1 伝搬関数
  8.1.1 ホイヘンスの原理と伝搬関数
  8.1.2 伝搬関数の解
 8.2 摂動論
  8.2.1 摂動展開
  8.2.2 S行列要素
  8.2.3 S行列のユニタリー性

9.伝搬理論 -相対論的電子-
 9.1 電子・陽電子が絡む過程
 9.2 電子の伝搬関数
  9.2.1 自由な電子に関する伝搬関数
  9.2.2 ファインマンの伝搬関数
 9.3 摂動論

10.因果律,相対論的共変性
 10.1 クライン‐ゴルドン粒子の伝搬
  10.1.1 クライン‐ゴルドン粒子の伝搬関数
  10.1.2 因果律と負エネルギー解
 10.2 非相対論的摂動論と伝搬関数
  10.2.1 非相対論的摂動論とフェルミの黄金律
  10.2.2 中間状態と仮想粒子
  10.2.3 ディラック粒子および光子の伝搬関数
 10.3 多時間理論

11.クーロン散乱
 11.1 ラザフォードの散乱公式
 11.2 クーロンポテンシャルによる電子の散乱
  11.2.1 クーロン散乱のS行列要素
  11.2.2 散乱断面積
  11.2.3 モットの断面積
 11.3 クーロンポテンシャルによる陽電子の散乱
 11.4 γ行列に関するさまざまな公式と定理

12.コンプトン散乱
 12.1 コンプトン散乱
  12.1.1 コンプトン散乱のS行列要素
  12.1.2 コンプトン散乱の微分断面積
  12.1.3 クライン‐仁科の公式
  12.1.4 コンプトン散乱の全断面積
 12.2 電子・陽電子の対消滅

13.電子・電子散乱と電子・陽電子散乱
 13.1 電子・電子散乱
  13.1.1 光子の伝搬関数
  13.1.2 電子・電子散乱のS行列要素
  13.1.3 偏極していない電子に関する散乱断面積
  13.1.4 メラー散乱の公式
 13.2 電子・陽電子散乱
 13.3 電磁場に関する補足
  13.3.1 電磁場の扱い
  13.3.2 ゲージ条件
  13.3.3 マックスウェル方程式の対称性

14.高次補正 -その1-
 14.1 ファインマン則
  14.1.1 散乱過程に関するルール
  14.1.2 散乱断面積の公式とファインマン則
 14.2 電子・陽電子散乱における高次補正
 14.3 真空偏極
  14.3.1 真空偏極の正則化
  14.3.2 真空偏極に関するくりこみ
 14.4 電子の自己エネルギー
 14.5 頂点の補正

15.高次補正 -その2-
 15.1 制動放射
  15.1.1 制動放射と赤外破綻
  15.1.2 赤外発散の相殺
 15.2 ラムシフト
  15.2.1 クーロン相互作用の修正による補正
  15.2.2 ベクトルポテンシャルの寄与による補正
  15.2.3 ラムシフトの理論値
 15.3 今後の展望

付録
A.国際単位系
B.特殊相対性理論
 B.1 ニュートン力学
 B.2 ミンコフスキー時空
 B.3 特殊相対論的力学
 B.4 電磁気学
C.量子力学
 C.1 量子力学の枠組み
 C.2 シュレーディンガー方程式の解
  C.2.1 水素様原子
  C.2.2 調和振動子
 C.3 パウリ方程式
D.ポアンカレ群
 D.1 ポアンカレ変換
 D.2 本義ローレンツ群の表現 -場の分類-
 D.3 ポアンカレ群の表現 -状態の分類-
 D.4 ポアンカレ群の拡張
  D.4.1 共形群
  D.4.2 超ポアンカレ群
E.スピノル解析
 E.1 回転群とスピノル
 E.2 本義ローレンツ群とスピノル
 E.3 相対論的波動方程式
F.さまざまな時空におけるスピノル
 F.1 D 次元ミンコフスキー時空におけるスピノル
 F.2 曲がった時空におけるスピノル
G.正則化
 G.1 パウリ‐ビラース正則化法
 G.2 真空偏極
 G.3 電子の自己エネルギー
 G.4 頂点の補正
H.表記法,公式集

参考文献
索引

ご連絡: 家族の病状のその後


先日の連休中に入院していた家族の病状が急変し、(生命を失うほどの)危機的な状態にまでになってしまっていました。

幸いその後意識が戻り、痛みや苦しみが消え、家族や見舞客の言葉に反応できるようになりました。2週間たった今では病院食を普通に食べ、会話したりスマートフォンを操作できるようにまで回復しています。見舞いに来てくださった友人たちとポーズをとって記念撮影したりもしています。

担当医は「こんなすごい回復例を見たのは初めてだ。奇跡がおきたのでしょう。」とうれしそうにおっしゃっていました。

何が奇跡なのか具体的には書けないのですが、長年に渡る病気によって壊滅的に損傷していた臓器が自然に治り、さらに機能を回復したからなのです。(奇跡は2度おきたことになります。)延命のために予定されていた応急処置的な手術もする必要がなくなりました。

当初は1週間と伝えられていた余命は、1か月になり、現在は「予測不可能」ということだそうです。

現在は8月中旬の退院、自宅での介護生活を目指してリハビリを開始したところです。まず自力で立てるようになること、トイレで自分で用を足せるようになることを目標にしています。

ただし(もう一度奇跡がおこらない限り)完治する病ではありません。これからもいつ何が起きるかわからないので、家族や地域医療の協力と細心の注意が必要です。


とりあえず今回は危機を乗り越えることができました。勉強とブログは以前のペースで再開いたします。


余談: 人工知能に感情を持たせる研究が進んでいますが、この2週間に僕が感じた悲喜こもごもに交錯した感情とその移り変わりは、人工知能にはけして真似できないものだと直感的に理解しました。たとえ真似できたとしても、それを感情だとは認めたくありません。


この記事は後日削除します。


関連記事:

ご連絡: 1週間ほどインターネットから離れます。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e8551f509782c408472ff22d1ae6f3ef

ご連絡: ブログとTwitterは少しずつ再開します。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/694ce3e3448245523edeaab108d11c26


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脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす:甘利俊一

脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす:甘利俊一」(Kindle版

内容紹介:
囲碁や将棋で、人工知能がプロ棋士に勝利を遂げた。2045年、人工知能が人間の能力を超える「シンギュラリティ」は、本当に訪れるのか?数学の理論で脳の仕組みを解き明かせれば、ロボットが心を持つことも可能になるのだろうか?人工知能研究の基礎となった「数理脳科学」の第一人者が語る、不思議で魅惑的な脳の世界。
2016年5月刊行、240ページ。

著者について:
甘利俊一: ウィキペディアの記事
1936年東京生まれ。東京大学工学部卒業、同大大学院数物系研究科博士課程修了。工学博士。東京大学教授、パリ大学客員教授、ルーバン大学特任教授などを経て、2003年より理化学研究所脳科学総合研究センター長。現在は、同センター特別顧問。東京大学名誉教授。神経回路網の数理的研究において数々の業績を上げ、IEEE Neural Networksパイオニア賞(1992年)など受賞も多数。国際神経回路学会創設理事、同学会会長も務める。2012年には、文化功労者に選出される。著書に『情報理論』(筑摩書房)、『バイオコンピュータ』(岩波書店/一九八七年 講談社科学出版賞受賞)など。


理数系書籍のレビュー記事は本書で314冊目。

著者は3年半前に紹介した「情報理論」という本を書いた甘利俊一先生だ。

情報理論の本が素晴らしかったので、この人工知能の本もさぞ読み応えがあるのだろうと期待して読み始めた。最初に読んだ「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊」よりも数理的、具体的に学べるのだろうという期待である。

本書が刊行されたのは今年の6月。ディープラーニングによるアルファ碁(AlphaGo)が囲碁の名人に勝利したことも書かれている。とてもよいタイミングで出版された。

結論から言えば僕の満足度は70パーセント止まりだった。確かに脳の働きをコンピュータ上にモデル化するための数理的手法とその図解は第4章と第5章で解説してある。

しかし数式は理解できても、しょせん多次元行列の漸化式であったり、確率過程を示す式なので、計算結果は人間にとても想像可能なものではない。計算ルールを与えてもそれを何度も繰り返して得られる結果はトレースできない。「ライフゲーム」の単純なルールは理解できても、得られる図柄のパターンが人間に予測できないのと同じようなものだ。

満足度70パーセントというのはそういうことだ。もともと理解できるはずがないことを期待していたからなのだろう。だから理解を期待してはいけない部分を除けば、満足度は90パーセントである。残りの10パーセントは第6章と第7章の記述に少し物足りなさを感じたからだ。校了を急ぎ過ぎたのかなという気がした。(もし僕の勘違いだったらごめんなさい。)

甘利先生は「情報理論」のようなコンピュータ科学の本をお書きになっているが、ご専門は「数理工学(神経回路網理論・情報幾何学)である。「神経情報処理の基礎理論の研究」により、1995年日本学士院賞も受賞されているこの分野を創世記からリードしてこられた先生である。人工知能研究の歴史を、その数理的側面から学ぶという意味では最適任者なのだ。本書で現在に至るまでの人工知能研究のあらましはひととおり知ることができる。

そして本書のよいところは「脳のしくみ」から解説しているところだと思う。数理科学者から見た脳科学は脳科学者の知見とはまた違ったものになると僕は思っている。(脳科学者の書いた本も読んでみるべきだとは思うがまだ手をつけていない。)甘利先生の脳科学の解説を読んで、コンピュータで実現するにはまだまだという印象を持った。

とはいえ人工知能を実現するために脳を模倣する必要はなく、脳とは別の数理モデルで実現すればよいという立場もあるわけで、そのひとつのアプローチが甘利先生が創始された情報幾何学を応用したモデルである。

「情報幾何」に入門するための資料PDF。解説論文と機械学習への応用の紹介
http://language-and-engineering.hatenablog.jp/entry/20140619/InformationGeometryPDFPapers


甘利先生は今年80歳になられる。年をとれば保守的になるのが普通なのだが、甘利先生はまったくそのようなことはないようである。情報幾何学という先生独自のアプローチをとれば、若い研究者にはまだまだ負けないとお書きになっている。頼もしい限りだ。僕は研究者ではないが、先生のように好奇心と学習意欲を持ち続けたいと思った。そのためにはどうすればよいか?それが今後の課題でもある。

第7章「心に迫ろう」では意識、感情、心の世界へ話が進む。人工知能に心を持たせることに僕はいささか否定的な考えをもっているが、かといって倫理感や道徳を学習させない限り人間の幸福に結びつく判断ができる人工知能ができるはずがない。昨日は「原爆の日」だったが、もし1945年の時点で高度な人工知能が軍事的に利用可能だったとしたら、広島と長崎への原爆投下の決断を躊躇なく下していたことだろうし、3発目、4発目の原爆も投下されていたに違いない。


個人的なことであるが、先日の三連休直後に僕の家族が入院先の病院で死の危機に瀕した。幸い奇跡的な形で命をとりとめ現在は回復の途上だ。

苦しみにあえぐ家族を見守っていたときは胸が引き裂かれんばかりだったし、早く楽にしてあげたいという思いと回復してほしいという願いがせめぎ合っていた。言葉をかけるのが精いっぱいで、何もしてあげられない無力感にさいなまれるだけだった。そしてあらゆる楽しみから自分を遠ざけるようになっていった。

担当医からの説明や見舞いにきてくれた方からの言葉、見守っている家族や親族の言葉に僕はさまざまな気持を持った。同じ言葉であっても、そのときの病状や僕自身の心の状態によって好意的に受け止められるときもあれば、悲しみを強くしてしまうこと、反発してしまうこともあった。そして回復期にあってさえも、喜びと諦めが交錯する複雑な感情にとらわれた。道理としては理解できるが、聞きたくない言葉もあった。

そのように複雑な感情の時間的な推移のすべては、これまで家族として当人と過ごしてきた僕の人生があったからである。そして当人がどのような人生をおくってきたかということとも深く結びついている。


驚異的な回復途上にある今は、むしろ病院に見舞いに行くのが楽しみになっているくらいである。

将来このような感情の推移を人工知能が模倣できるようになるのかもしれない。しかし、それを感情だと認めてはいけないのだという思いを強く持った。本書の最終章を読み、この点で甘利先生も同じお考えであることに僕は気持が救われた。


人工知能の入門書の2冊目ということで、本書もお読みになることをお勧めしたい。

次はこの本がよさそうだ。より具体的に学べることを期待している。

機械学習と深層学習 ―C言語によるシミュレーション―:小高知宏

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Amazonで検索: 人工知能 機械学習 深層学習 ディープラーニング


関連記事、関連ページ:

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの: 松尾豊
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35dd84adaee4c749268d0b7d3283e83e

【保存版】人工知能って何?歴史や将来の可能性を10分で理解できるまとめ【2016年度】
http://www.stay-minimal.com/entry/aboutartificialIntelligence


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脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす:甘利俊一」(Kindle版

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内容紹介:
数理で「脳」と「心」がここまでわかった!

囲碁や将棋で、AIが人間に勝利を遂げた。
2045年、人工知能が人間の能力を超える「シンギュラリティ」は、本当に訪れるのか?
数学の理論で脳の仕組みを解き明かせれば、ロボットが心を持つことも可能になるのだろうか?
AI研究の基礎となった「数理脳科学」の第一人者が語る、不思議で魅惑的な脳の世界。

第1章 脳を宇宙誌からみよう
まずは脳がいつどのように誕生したかをみていこう。その起源をたどるには、宇宙のはじまりを知らなくてはならない。生命が脳を持ち、人に「心」が宿ったのはなぜなのだろう。

- ビッグバンと宇宙の法則
- 地球の誕生
- 生命のはじまりと進化
- そして、脳が作られた
- 人類の歩み
- 人はどうして「心」を持ったか
- 脳がもたらす新たな文明

第2章 脳とはなんだろう
私たちの脳には1000 億もの神経細胞が詰まっていて、それが思考を担い、心を司っている。そもそも脳とは、どのような器官なのだろうか。最新研究で明らかになってきた脳のメカニズムを紹介しよう。

- 思考を担う脳の"コンピュータ"の仕組み
- 1000億ものニューロンは何をしているのか?
- シナプスは会話する
- 自己組織化と臨界期のふしぎ
- 大脳皮質は並列のコンピュータである
- 記憶は脳のどこにあるのか
- 記憶の定着と瞬きの理由
- 脳細胞は新生しない?
- 脳が行っている3つの学習システム
- 脳波にはなぜリズムがあるか
- さまざまな脳の測定方法
- 人の脳活動はどうやって測るか
- 脳の情報を読み解く技術
- シミュレーションで脳は理解できるのか

第3章 「理論」で脳はどう考えられてきたのか
現在ブームとなっている人工知能は、脳にヒントを得て1950 年代に提唱された理論モデルから誕生した。「理論」で脳の仕組みを考えるとは、どういうことなのか。その歴史をたどってみよう。

- 脳の理論、その前史
- 第1次ニューロブーム - 万能機械パーセプトロンの勃興
- 「暗黒期」に確立した確率降下学習法
- 第2次ニューロブーム - ニューロコンピュータへの夢
- COLUMN:国際学会の政治とニューロブームの終焉
- 第3次ニューロブーム - ニューラルネットワークの逆襲
- 数学で脳を考えるということ
- 第3の脳科学・シミュレーションの挑戦

第4章 数理で脳を紐解く(1):神経興奮の力学と情報処理のしくみ
数学の理論を使って脳の仕組みを考えるのが「数理脳科学」である。本当にそんなことができるのか、数理の世界を披露したい。神経回路はどのように興奮し、記憶はどうやって蓄えられるのだろうか?

- 神経の興奮をマクロに見る - 統計神経力学とはなにか
- 短期記憶の保持の仕方を考える
- ニューロンは人間社会と同じ?
- 回路集団をさらに結合しよう
- 脳はカオスを利用する
- 神経場の興奮力学
- 海馬は情報の「関連性」を記憶する
- まとめたパターンを想起するには
- 海馬は連想記憶装置である
- まとめたパターンを想起するには
- 海馬は連想記憶装置である
- ホップフィールド」の提案
- 時系列の想起
- COLUMN:30年前に起きたネット炎上事件

第5章 数理で脳を紐解く(2):「神経学習」の理論とは
数理の視点から、脳がどのように学習するのかを考えてみよう。これは、最近注目を集めている人工知能の「ディープラーニング」の基礎になっている理論である。

- ディープラーニングの基礎となった学習法
- 世界発の多層パーセプトロンの確率降下学習
- パーセプトロンは万能なのか
- 万能機械の問題点
- 実際の脳はどう学習しているか
- パーセプトロン余話
- 強化学習の教師信号はドーパミン?
- 「教師なし」の学習とは - 自己組織化学習
- COLUMN:ノーベル賞とニューロブーム
- 脳は自己組織化する
- ニューロンはどうやって"相手"を探すか
- 時間情報を入れたヘブ学習
- スパース表現とはなにか
- COLUMN:論文の掲載の決め手は運次第?

第6章 人工知能の歴史とこれから
技術がさらに発展すれば、人工知能が人間を超える「シンギュラリティ」が本当にやってくるのではと騒がれている。その歴史を振り返り、未来を考えてみたい。

- 人工知能の誕生と第1次ブーム
- 「フレーム問題」をどう克服するか
- 役に立つ人工知能を目指して - 第2次ブーム
- 人々を驚かせたIBMワトソンの能力 - 第3次ブーム
- ディープラーニングの登場
- ディープラーニングの仕組み
- 世界からの参入で進む技術革新
- 「猫細胞」と「ジェニファー・アニストン細胞」
- COLUMN:囲碁・将棋と人工知能
- 2045年問題 - 人工知能は人間を超えるのか

第7章 心に迫ろう
これまでみてきたように、脳の仕組みが次第に明らかになってきている。だが、脳科学の最終的な目標は「心」を知ることである。それが叶えば第1章 脳を宇宙誌からみよう
まずは脳がいつどのように誕生したかをみていこう。その起源をたどるには、宇宙のはじまりを知らなくてはならない。生命が脳を持ち、人に「心」が宿ったのはなぜなのだろう。

- 心の理論 - 何歳で「心」ができる?
- 3つのゲームで自分の心を試してみる
1) 囚人のディレンマ
2) 究極のゲーム
3) 割引ゲーム
- 葛藤する心
- 意識はどこから生まれるか
- 意識の統合情報理論
- 「自由意志」は存在するか
- 先読みと後付け - 我々は脳から自由になれるのか
- 意識、感情、心
- 心を読む - 脳と機械を結ぶ技術 BMI
- 心を操作することも可能になる
- 心を持つロボットは生まれるか

おわりに

今年の夏の読書はこの2冊(原子爆弾、部分と全体)


8月の読書は戦争関連の本を読むのを心がけている。数学書を読み進めていたのだが、いったん中断して日頃ツイッターでお付き合いしていただいている小川さんから紹介いただいた2冊を読むことにした。共通するのは物理学者と原爆の開発。異なった側面から歴史が教えてくれるこの問題を考えてみたい。

両方読み終えると秋になりかねないので、今日は取り急ぎタイトルだけ紹介しておこう。どちらも物理学徒のみなさんに超おススメ。もちろん一般の方にもお読みいただける本だ。


原子爆弾 1938~1950年―いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?:ジム・バゴット

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内容紹介:
広島・長崎、原爆70年――
新資料によって、初めて明らかにされる
“歴史の真実”と“人間ドラマ”。
「後世に残る傑作」(ネイチャー誌)

1938年、ドイツで核分裂発見、
亡命ユダヤ人、独米ソの物理学者やスパイによる
国家の命運を賭けた“原爆開発戦争”が始まる。
そして……。

本書は、原爆の開発競争、広島・長崎への投下、そして戦後世界の核拡散を、焦燥と不安のなかで研究を進める物理学者たちの姿、各国の政治家の思惑と策略という人間ドラマとともに描き、初めて独・英・米・ソ連の核開発の歴史の全体像に迫ったものである。
近年公開された英国MI6やソ連の機密資料、米国ヴェノナ計画で解読されたソ連の暗号文などによって、ようやく明るみに出た、独やソ連の核開発の真相、映画さながらのスパイの暗躍……。21世紀の今日だからこそ書き得た“科学と政治をめぐる20世紀の叙事詩”である。
2015年3月刊行、631ページ。


戦後70年という節目だった昨年に刊行された本。核分裂の発見や研究から水爆実験あたりまでの10年間、戦争に翻弄されながら世界中の物理学者たちがどのように原爆の開発に巻き込まれていったのかがストーリ仕立てで語られる。写真もたくさん掲載され、近年発見された資料も紹介されている。原爆を知るための本としては「原子爆弾の誕生:リチャード・ローズ」とともにお勧めできる本である。

原爆の開発や投下まで政治的、軍事的な経緯は、NHKスペシャルをはじめとするドキュメンタリー番組で広島・長崎やアメリカを中心とした話が紹介されるが、イギリスやヨーロッパ全体、ソ連を含めた全体像を知るには1~2時間という番組枠では全く足りない。このような本を読むのがいちばんよいと思う。

本の帯に書かれているように本書は「後世に残る傑作」である。

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翻訳のもとになった原書はこちら。2009年に刊行された。ちなみに原書のKindle版を購入してみたが、日本語版にたくさん掲載されている写真がまったくない。Kindle版は文字だけの本なのでご注意いただきたい。原書の書籍版について写真の有無は不明。

Atomic: The First War of Physics and the Secret History of the Atom Bomb 1939-49: Jim Baggott」(Kindle版

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内容紹介:
Spanning ten historic years, from the discovery of nuclear fission in 1939 to ‘Joe-1’, the first Soviet atomic bomb test in August 1949, Atomic is the first fully realised popular account of the race between Nazi Germany, Britain, America and the Soviet Union to build atomic weapons.

Rich in personality, action, confrontation and deception, Jim Baggott’s book tells an epic story of science and technology at the very limits of human understanding.


部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話:W.K. ハイゼンベルク

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内容紹介:
本書は量子力学建設期の巨人、W・ハイゼンベルクによる『Der Teil und das Ganze』(1969) の邦訳である。訳はハイゼンベルクのもとで彼と共同研究を行っていた山崎和夫により、序文を湯川秀樹が寄せている。この豪華な顔ぶれが並ぶ本のページをめくってみると、まず内容のおもしろさに引き込まれる。題名からは難解な哲学書を思わせるが、本書はハイゼンベルクの自伝なのである。
圧巻は彼とボーア、アインシュタイン、ゾンマーフェルト、パウリ、ディラック、プランク等巨人たちとの対話である。そこではアインシュタインが「サイコロを振る神」の考え方を受け入れられず執拗に食い下がり同僚にいさめられたり、温厚な人柄で知られるボーアがシュレーディンガーと対決しついにシュレーディンガーが熱で倒れるも、ボーアはベッドの横にイスを持ち込んで議論を続けようとしたりと、そこからは巨人たちの姿を生身の人間として感じることができる。キリスト教の聖書は物語と対話によって神の教えがあらわされているが、本書では物語と対話によって物理学の巨人たちの教えがあらわされている。その言葉には重みがあり本書を開くたびに新たな発見がある。
みすず書房版は1999年刊行、403ページ。


量子力学の不確定性原理の提唱者、ドイツ人物理学者ハイゼンベルク自身による伝記だ。物理学ファンとしては必読書なのだが、僕はまだ手を出していなかった。量子力学史を学ぶという意味、量子力学のもつ意味を考えるための本だ。

ハイゼンベルクもヒトラー政権下に原爆開発に巻き込まれて協力をした中心人物である。上で紹介した「原子爆弾」と本書はその部分で交差している。ハイゼンベルクから見た戦争や原爆はどのようなものであったか?この2冊は読み合わせとしてベストな選択だと思う。


関連記事:

地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相:飯田進
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ac46ac40b155a4ef430bd92074db2a5b



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iPhone6/6s モバイルバッテリー内蔵ケース

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iPhone6を使い始めて1年10か月。バッテリーの減り方が早くなってきたようだし、もうすぐ発売されるiPhone7に機種変更する予定はないので、こういう商品を買ってみた。iPhone6/6sに充電できるバッテリー付きのケースである。


アマゾンのレビューを見ると「壊れやすい」とか「すぐ割れた」、「ボタンが押したままになる」などの低い評価が入力されているので当たり外れがあるのかもしれないが、僕はとりあえず当たりだったようだ。全体としての評価は良いほうだと思う。

このiPhoneケースはモバイルバッテリーを背面に付けただけでなく、ケースをつけたままiPhoneに直接充電することもできる。つまりiPhone本体の充電端子への(充電のたびの)抜き差しがなくなるから端子を傷めなくてすむ。

バッテリー容量は大容量5700mAh、iPhone6だと充電3回分だ。そのぶん厚さと重さが増してしまうが、これは仕方がない。フル充電には7.5時間かかると説明書に書いてある。

iPhone6 厚さ6.9mm, 重さ129g
ケースのみ 厚さ19mm, 重さ156g


iPhoneをつける前。iPhoneの充電端子に接続される端子があるのがわかる。

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裏はこのような感じ。カメラの窓も邪魔していないし、その部分の強度も十分そうだ。

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横からの写真。iPhone本体に対する全体の厚みがわかるだろう。左には他のモバイル機器を充電するためのUSBケーブル差し込み口がある。

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1)充電ケーブルを刺した状態での使用(在宅時の充電)

充電はバッテリーケース下部にあるiPhoneと同じタイプの差し込み口から行う。iPhoneの充電が完了すると、自動的にモバイルバッテリーの充電が開始される。モバイルバッテリーの充電状況は4つの青色LEDで示される。

青色LEDの横に1つだけボタンがある。このボタンでモバイルバッテリーとiPhone本体のバッテリーへの充電を手動で切り替えることができる。


2)充電ケーブルを外した状態での使用(外出中の充電)

外出中は充電ケーブルを外して使うのはもちろんだ。先ほどのボタンを押すとモバイルバッテリーからiPhoneへの充電が行われる。もう一度ボタンを押すと充電を止めることができる。iPhoneがフル充電されると充電は自動的に止まる。

モバイルバッテリーの残量はiPhoneをモバイルバッテリーから充電中の状態にしている間、4つの青色LEDの表示として確認できる。

まとめると次ようになる。使ってみると簡単だとわかるはずだ。

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このケースをつけたままiTunesも使えるし、データ転送も可能だ。スピーカーの位置には穴が開けられているし、イヤフォンも問題なく差し込める。iPhone自体の機能と使い勝手はまったく変わらない。


タイプは手帳型と標準型2つあり、僕は手帳型を購入した。それぞれブラックとホワイトの2色が販売されている。アマゾンのページを開くにはそれぞれ「ブラック」、「ホワイト」というリンクをクリックしていただきたい。


手帳型(レザーカバー付き)

「ハヤブサモバイル iPhone6/6S 4.7 大容量5700mAh レザーカバー付き モバイルバッテリー内蔵ケース」
ブラック ホワイト

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標準型(レザーカバー無し)

「ハヤブサモバイル iPhone6/6S 4.7 大容量5700mAh モバイルバッテリー内蔵ケース」
ブラック ホワイト

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他社製品や他のiPhoneモデル用、一部のAndroidスマホ用も販売されている。僕は手帳型のが欲しかったので、たまたま今回の製品を購入したわけだ。以下から検索してみるとよいだろう。

モバイルバッテリー付きケース: Amazonで検索


関連記事:

ソーラー充電器のテスト
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0e5fbaf30b6a9505887a87d185e52211


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マクスウェル方程式を1本にまとめたのは誰?

相対論的マクスウェル方程式のTシャツ

EMANの物理学」や「趣味で物理学シリーズ」でおなじみの広江克彦さんは、最近物理学グッズの物販にも活動の幅を広げていらっしゃっている。掲載画像のような新商品を発売された。

Eman Physics - 物理学ライフを楽しくします。(物販サイト)
http://emanphysics.saleshop.jp/


マクスウェルの方程式は下のTシャツに書かれている4本の式であらわされ、電磁気学の基礎方程式とみなされている。この方程式からマクスウェルは電磁波の存在を予言し、1888年にヘルツによって電磁波は実証された。(参考ページ: 「電波は誰が発見したの?」)

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このマクスウェルの方程式に電磁ポテンシャルを導入して、相対論的(時空の4次元の形にする)にまとめると、なんとたった1本の式に集約されてしまうのだ。

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トップの掲載画像は新商品のTシャツで、1本にまとめられた方程式がプリントされている。電磁気学の4つの法則が4次元の時空では1つに見えることをあらわしている非常に美しい方程式だ。

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しかし式の導出方法は物理学専攻の学生にとっては特に難しいものではない。EMANの物理学では次のように導出している。

ステップ1)電磁ポテンシャル(EMANの電磁気学)
http://eman-physics.net/electromag/potential.html

ステップ2)ゲージ変換(EMANの電磁気学)
http://eman-physics.net/electromag/gauge.html

ステップ3)相対論的なマクスウェル方程式(EMANの相対性理論)
http://eman-physics.net/relativity/maxwell.html


でも世界で初めてこの式の導出を行ったのは誰なのだろう?そうツイートしたところ、広江さんもご存知でないようだった。

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ええっ、広江さんも知らないの??

アインシュタインが生まれた1879年にマクスウェルは亡くなっているのだから、この式を導いたのはもちろんマクスウェルではない。相対性理論を導いたアインシュタインでもないだろうし、ましてその先の相対論的量子力学を始めたディラックでもなさそうだ。導出手順は比較的やさしいので、論文で発表するほどでもなかったのだろうか?

アインシュタイン選集1」と「アインシュタイン選集2」を調べてみた。特殊相対論を発表したころアインシュタインの電気力学は電磁ポテンシャルやテンソルを使わない形で書かれていたし、テンソル計算が使われている一般相対論の論文に電気力学についてのものは見当たらなかった。

もしこの式の歴史的背景や初めて導いたのが誰なのかご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ教えていただきたい。

----------
その後、広江さんから次のことをツイッターでご連絡いただきました。

ワイルが1918年に、「電磁気、重力の統一の試みにゲージ理論を考案使用」とありますね。 「電磁気学への一般相対論の手法導入への挑戦」とも。 (今は見られなくなっているオヤオヤ文庫さんのサイト情報です)

ベクトルポテンシャルの意義が見直されるのがいつ頃かというのも関係ありそうですね。 ゲージ変換はもっと早めに行われていそうですけど。

参考文献は、湯川秀樹 井上健編集 世界の名著66 現代の科学II(中央公論社)1970 だそうです。

ワイルの「空間・時間・物質(ちくま学芸文庫)」を確認してみたところ、なるほど下巻の最後のほうの「§40 電磁場の幾何学的表現」というセクションに重力場における電磁場の式が導出されていました。しかし、これは一般相対論と電磁場の統一のことです。今知りたいのは特殊相対論と電磁場の統一の式です。

また、たくさんの物理学書を翻訳された樺沢宇紀先生は次のようにツイートされています。

「ダランベルシャン記号(▢)を最初に使ったのは誰か?というのも気になるなあ。クライン=ゴルドンあたりかなあ?(完全なあてずっぽう)教えてもらいたい。」

「4元ポテンシャルの式は不明ですが、A.パイスのアインシュタイン評伝『神は老獪にして・・・』の中に、ミンコフスキーの1908年の論文で「マクスウェル-ローレンツ方程式が初めて現代のテンソル形式で提示され」たという記述あり(p193)。」

「実質的にローレンツ条件下での▢A=-jに相当する式は、ポアンカレの1905年の論文に既に見られますね(式(1))。テンソル形式では書き下してないみたい(?)。
https://en.wikisource.org/?curid=664793#.C2.A7_1._.E2.80.94_Lorentz_transformation

そしてツイッターやFacebookでお世話になっているおがわけんたろうさんは、次のようにおっしゃっています。

「さらに微分形式に翻訳したのは誰なんだろう。ここまでまとまるともう一歩ですよね。」

「この辺の歴史の本あっても良いと言うか・・・調べてまとめると好事家の興味は引きそうなんですが、問題はどの分野がどの時期に現代に通用するように整備されたかとかそういうのも関係しそうで、かなり広範な知識と調査が必要そうですね。誰かそういう仕事やらない・・・よなあw」

「当初の目的と言う論点では、ポアンカレの論文と言うことで良さそうですね。テンソル形式は少し調べてみれば結構さくっと出てきそう。微分形式の場合は、おそらくゲージ理論と微分幾何学の接点、解析力学あたりを突っ込んでいかないと・・・こりゃ深そう。」

太田氏の電磁気学の基礎II489ページのミンコフスキーの1908年の…と言うのは、これと思われる。おそらく共変形式はこれが初出であろうと思いますがどうでしょう。
https://en.m.wikisource.org/wiki/Translation:The_Fundamental_Equations_for_Electromagnetic_Processes_in_Moving_Bodies


もしかすると僕はパンドラの箱を開けてしまったのかもしれませんね。


関連記事:

趣味で相対論:広江克彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7faaca22d6b525d82e45a5724fef9811

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http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/90aa60383b600ff4e4fd7bea6589deaa

趣味で量子力学:広江克彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3023098b9c5204d626808aa57823c16f


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原子爆弾 1938~1950年: ジム・バゴット


原子爆弾 1938~1950年―いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?:ジム・バゴット

内容紹介:
広島・長崎、原爆70年――
新資料によって、初めて明らかにされる
“歴史の真実”と“人間ドラマ”。
「後世に残る傑作」(ネイチャー誌)

1938年、ドイツで核分裂発見、
亡命ユダヤ人、独米ソの物理学者やスパイによる
国家の命運を賭けた“原爆開発戦争”が始まる。
そして……。

本書は、原爆の開発競争、広島・長崎への投下、そして戦後世界の核拡散を、焦燥と不安のなかで研究を進める物理学者たちの姿、各国の政治家の思惑と策略という人間ドラマとともに描き、初めて独・英・米・ソ連の核開発の歴史の全体像に迫ったものである。
近年公開された英国MI6やソ連の機密資料、米国ヴェノナ計画で解読されたソ連の暗号文などによって、ようやく明るみに出た、独やソ連の核開発の真相、映画さながらのスパイの暗躍……。21世紀の今日だからこそ書き得た“科学と政治をめぐる20世紀の叙事詩”である。
2015年3月刊行、631ページ。

著者について:
ジム・バゴット(Jim Baggott)
世界的に活躍するサイエンス・ライター。1957年、英国サウサンプトンに生まれ。マンチェスター大学で化学修士号を1978年に取得し、そのわずか3年後に、オックスフォード大学の博士号を取得。オックスフォード大学、米国スタンフォード大学の特別研究員として研究活動をしたのち、英国のレディング大学の化学講師となる。しかし大学を辞めてビジネスの世界に入り、ビジネスコンサルタント、トレーニングコンサルタント会社を設立。
現在、その学識と精力的な行動力によって、科学・哲学・歴史など広範な分野にわたって執筆活動をしており、次々に著作を発表する一方、科学雑誌の『ニュー・サイエンティスト』をはじめ新聞・雑誌に寄稿しているほか、BBCのラジオ番組にも協力している。著作は高く評価され、英国の王立化学協会「マーロー・メダル」、「グラクソ・サイエンスライターズ・プライズ」など、数々の賞を受賞している。
邦訳書に、『究極のシンメトリー――フラーレン発見物語』(1996年)、『ヒッグス粒子――神の粒子の発見まで』(2013年)など。

翻訳者について:
青柳伸子(あおやぎ・のぶこ)
翻訳家。青山学院大学文学部英米文学科卒業。主な訳書に、ロナン・パランほか『[徹底解明]タックスヘイブン――グローバル経済の見えざる中心のメカニズムと実態』、フリア・アルバレス『蝶たちの時代』(以上作品社)など。


理数系書籍のレビュー記事は本書で315冊目。(物理学者や原子核物理の話が多いので理数系書籍にカウントした。)

戦後70年という節目だった昨年に刊行された本。600ページ以上あるので読み応えがあった。

原爆の開発や投下まで政治的、軍事的な経緯は、NHKスペシャルをはじめとするドキュメンタリー番組で広島・長崎やアメリカを中心とした話が紹介されるが、イギリスやヨーロッパ全体、ソ連を含めた全体像を知るには1~2時間という番組枠では全く足りない。このような本を読むのがいちばんよいと思う。

本の帯に書かれているように本書は「後世に残る傑作」だ。

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分量だけでなく登場人物も多い。連合国とドイツ、イタリアの政治家、軍人、物理学者、スパイなど。「この人は誰だっけ?」とならないようにメモを取りながら読んだ。

物語のようにストーリー仕立てで書かれているからだろう。年代を順にたどりながら、それぞれの国でおきていたことがドラマチックに展開される。集中力が途切れずに読めるのは本書がそのようなスタイルをとっているからだ。

タイトルの「1938年~1950年」は、1938年のクリスマスに発見されたウランの核分裂から1950年のトルーマンによる水爆製造計画の発表までということなのだが、実際は1954年に始まったビキニ環礁での水爆実験や1980年代後半の米ソ冷戦の終結、ソ連邦の崩壊あたりのことまで書かれている。

量子力学の創成期から発展期まで、教科書で目にしていた物理学者の名前がいたるところにでてくる。国家の計略に否応なしに巻き込まれていった側面もあるが、研究や実験が始まると彼らは個別に与えられた作業に熱中してしまうのだ。連合国が原爆開発を急いだのは「ナチスドイツに先を越されたら大変なことになる」という恐怖感である。物理学者といえども原爆開発の是非を考えている余裕はない。原爆がよもや日本の一般市民を焼き殺すことになるとは思ってもいないから開発を止める理由は生まれてこない。

特に印象に残ったことを列挙しておこう。

- 原爆の研究、開発、実験のためロスアラモスに集められた物理学者の中にソ連の物理学者がスパイとして数名送り込まれていたこと。ファインマンの隣の部屋を割り当てられたフックスもスパイのひとりだった。ファインマンの自伝にも書かれていることだが、ファインマンはフックスと親密に付き合っていた。スパイだと見抜けないのは仕方がないこととはいえ、完全なセキュリティ保護は無理なのだという現実を突き付けられた気がした。

- ロスアラモスでのマンハッタン計画を率いていたオッペンハイマーでさえも、共産党とのつながりがあったため、スパイの嫌疑をかけられていたことに愕然とした。そしてオッペンハイマーの性格について知ったこと。彼は超一流の科学者だが、他人を小ばかにするタイプだった。

- ニールス・ボーアのコペンハーゲン脱出の経緯はまるでスパイ映画を見ているようだった。ユダヤ人の母をもつボーアはナチスドイツがデンマークを占領し、ボーアに逮捕状を出したため、イギリス経由でアメリカに渡る。家族と一緒に物置小屋に隠れたり、釣り船やトロール船、汽車を乗り継いで次の経由地を目指す。イギリスへ渡るためボーアが乗ることになったのはモスキート双発爆撃機だった。対空砲火を避けるため2万フィートまで高度を上げる。パイロットからの連絡事項はヘルメットにつけられたイヤフォンを通じて伝えられるのだが、ボーアの頭は大きすぎてヘルメットをつけることができない。酸素供給のスイッチを押すようにという指示を聞き逃したボーアは酸素不足で意識を失ったそうだ。異変を察知したパイロットが北海上空で急降下。爆撃機が着陸するまでにボーアは意識を回復したという。このときのボーアは58歳である。

- 広島・長崎への原爆投下の決定について、先日のNHKスペシャル「決断なき原爆投下~米大統領 71年目の真実~」でトルーマン大統領は決定を明示的に下しておらず、原爆開発の指揮官・陸軍グローブズ将軍が決断したと説明していた。そしてトルーマン大統領の手紙に「民間人が多数犠牲になったことに対する後悔」が書かれていたことや「3発目の原爆投下を防いだこと」を紹介していた。しかし、本書には決定を下したのはあくまでトルーマン大統領であったことが書かれている。そして水爆製造の決断、発表をしたのもトルーマン大統領である。ソ連の脅威があったとはいえ、部分的に切り取ったNHKスペシャルでの描き方には疑問を感じた。

- 水爆の破壊力は広島型原爆の1000倍~3300倍だそうである。広島型原爆の被害半径はおよそ5キロメートル。被害半径はエネルギーの立方根に比例するので、水爆の被害半径は50~75キロメートルということになる。水爆はもちろん原爆であっても絶対に使用してはならないという思いを強く持った。その反面、水爆が抑止力になるということも(悲しい現実として)理解できた。

- アメリカを中心とする連合国だけでなく、ソ連やドイツの原爆、水爆に関する諜報活動、研究、開発、製造、実験の経緯を詳しく知ることができたのがよかった。特にスターリン、フルシチョフ政権下おきていたことは、本書がいちばん詳しいと思う。

- 「キューバ危機」がおきたのは1962年10月のこと。僕はたまたまこの月の17日に生まれた。人類が戦後最大の核戦争の危機にさらされていたまさに真っ只中のタイミングに生まれていたことになる。このときアメリカが配備していた水爆の量を知って唖然とした。総破壊力はTNT爆薬70億トン相当で、広島型原爆の47万個分である。想定される死亡者数は少なく見積もっても1億人を超えるそうだ。この時点で米ソはお互い相手国の数十都市に20分以内に水爆を落とす能力を持っていた。核軍縮が少し進んでいるとはいえ、現在もその状況はほとんど変わっていない。

- 量子力学創成期の物理学者ハイゼンベルクが原爆開発に消極的だったことを知ったこと。ヒトラーのやり方に反感を持っていたハイゼンベルクは原爆開発の責任者としての仕事を進めたが、バレない形で原爆実現が進まないように行動していた。(バレたらもちろん死刑である。)実際、ドイツは原爆完成どころか、原子炉の完成にも至っていなかったことがドイツ降伏の時点で明らかになった。師弟関係にあったボーアとハイゼンベルクが戦争によって引き裂かれ、敵同士になってしまったのは悲痛だ。1941年、ボーアと話すためにコペンハーゲンを訪れたハイゼンベルクだが、周囲に見せた尊大な態度や不明瞭な図面を見せたことでボーアはドイツが原爆を開発していると思い込んでしまったのだ。アメリカが原爆研究・開発を進めるきっかけになった。ドイツ側の原爆研究や科学者そして人間としてのハイゼンベルクの内面を知るために自伝「部分と全体:W.ハイゼンベルク」も読んでみることにした。

- ドイツ敗戦後のドイツ人物理学者の扱いについて。連合国は彼らを一か所に集めて、原爆研究・開発がどの程度進んでいたのか尋問を始める。ドイツ人物理学者にはアメリカが原爆を完成させたこと、広島・長崎に投下したことも知らせていなかった。ドイツ人物理学者たちは自分たちに良い待遇が与えられている理由を「ドイツのほうが原爆の研究・開発が進んでいるからだ。」と勘違いした。科学者としての性(さが)というか、彼らを哀れに思った。

- 核軍縮の難しさをあらためて思った。第二次大戦後、国際機関による核の共同管理を目指した動きがあったのだが、結局それはアメリカの核実験再開によってソ連側の不信を招き、実現することはなく、その後の核開発競争への流れを決定づけてしまった。


学んだことはこの他にもたくさんあるのだが、とても書ききれるものではない。大まかなところは記事のいちばん下に書いておいた「目次」で確認していただきたい。


先日も「核の先制不使用」の議論がニュースで取り上げられたばかりだ。また北朝鮮が潜水艦からのミサイル発射成功のニュースも飛び込んできた。核の脅威はますます増していることを思わずにはいられない。本書を読む意義も増していると言えるだろう。

原爆を知るための本としては「原子爆弾の誕生:リチャード・ローズ」とともにお勧めできる本である。

世界週末時計」は1947年以来、次のように推移している。今年が何分前を指しているのかはご自身で確認していただきたい。

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世界週末時計(タイムライン):現在何分前を指しているかを確認することができる。
http://thebulletin.org/timeline


翻訳のもとになった原書はこちら。2009年に刊行された。ちなみに原書のKindle版を購入してみたが、日本語版にたくさん掲載されている写真がまったくない。Kindle版は文字だけの本なのでご注意いただきたい。原書の書籍版について写真の有無は不明。(追記:書籍版をお持ちの読者の方からコメント欄を通じて連絡をいただきました。書籍版には書籍中央部に16ページに亘って28枚の写真が掲載されているそうです。)

Atomic: The First War of Physics and the Secret History of the Atom Bomb 1939-49: Jim Baggott」(Kindle版

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内容紹介:
Spanning ten historic years, from the discovery of nuclear fission in 1939 to ‘Joe-1’, the first Soviet atomic bomb test in August 1949, Atomic is the first fully realised popular account of the race between Nazi Germany, Britain, America and the Soviet Union to build atomic weapons.

Rich in personality, action, confrontation and deception, Jim Baggott’s book tells an epic story of science and technology at the very limits of human understanding.


関連記事:

地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相:飯田進
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ac46ac40b155a4ef430bd92074db2a5b


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原子爆弾 1938~1950年―いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?:ジム・バゴット

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プロローグ ベルリンからの手紙―発見された核分裂 1938年12月~1939年9月

第1部 物理学者たちの戦い

ウランフェライン―始まったナチスの核開発 1939年9月~1940年7月
足踏みする米の核開発―亡命科学者と政府機関の軋轢 1939年9月~1940年9月
原子爆弾の実現性―英における物理学者の尚早と不安 1939年9月~1940年11月
ボーアとの面談―ハイゼンベルクのファウスト的契約 1940年10月~1941年9月
チューブ・アロイズ―英の核兵器開発計画 1941年3月~12月

第2部 原爆開発競争

兵器としての核物理学―ナチス高官と物理学者の駆け引き 1942年3月~11月
史上初の臨界達成―マンハッタン計画の誕生 1939年9月~1940年9月
ウラヌスとウラン―スターリンの二つの反転攻勢 1942年3月~1943年3月
ЗНОРМОЭ―ソ連の諜報作戦 1943年1月~8月
アメリカへの集結―頭脳科学集団とスパイと1943年1月~11月

第3部 戦争と原爆投下
ボーアの先見性―物理学者たちの研究生活と葛藤 1943年11月~1944年5月
漏洩する機密―ロスアラモスのソ連スパイたち 1944年2月~12月
アルソス・ミッション―ナチスの原子爆弾計画を探れ 1944年1月~12月
ドイツ最後の原子炉―連合軍の爆撃の下で続けられた実験 1945年1月~6月
トリニティ実験―人類初の核実験 1945年4月~7月
広島・長崎―原爆を投下した人々と投下された人々 1945年7月~8月
イプシロン作戦―ナチスの原子力開発の全容解明 1945年4月~1946年1月

第4部 世界に広がる核の恐怖
新たな戦争の始まり―スターリンの焦り 1945年8月~1946年2月
鉄のカーテン―核の国際管理か国家管理か 1945年9月~1946年3月
クロスロード実験―ソ連への「ありふれた恫喝」 1945年11月~1948年1月
アルマザス-16―ソ連の核開発の秘密都市 1946年8月~1948年6月
ジョー-1―ソ連初の原爆実験と核競争の始まり 1948年6月~1950年1月

エピローグ 恐怖の均衡―冷戦と相互確証破壊

訳者あとがき
原子爆弾年表
登場人物の紹介
原注(引用・参照文献)
引用・参照文献一覧
写真提供・所蔵一覧
略号一覧
著者・訳者紹介
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