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発売情報: ビジュアル物理(ニュートン別冊)

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ビジュアル物理(ニュートン別冊)

内容紹介:
自然界には不思議が満ちあふれています。たとえばかつて、イギリスの大科学者アイザック・ニュートンは、「あらゆる物体はたがいに引きつけ合う」という万有引力の法則をみつけました。
では、なぜ月は地球に落ちてこないのでしょうか? そもそも、力とはいったい何なのでしょうか? 光や電気、磁気、熱も不思議な存在です。これらはいったい何なのでしょうか?
本書は、自然界のふるまいや本質を追究する「物理」について、高校で学習する「力学」、「波動」、「電磁気学」、「熱力学」、「原子」という5つのテーマをとりあげて紹介したものです。豊富なイラストとともに、物理の世界へいざないます。
2016年4月刊行、160ページ


相対性理論や量子論、超ひも理論などは月刊誌Newtonや別冊ニュートンではよく取り上げられるテーマだが、それに至るまでの物理学、高校物理で扱う分野はほとんど取り上げられていなかった。唯一2009年に刊行された「ニュートン力学と万有引力―物理の基本がみるみる理解できる! 」くらいしか僕は思いつかない。

2年ほど前に「ニュートン別冊で電磁気学や熱力学、統計力学など基礎的な特集もやればいいのに。」のようなことをツイートしたことがあるが、ほぼそれに近い形の本が出ているのを書店で発見。

相対性理論や量子論、超ひも理論を学ぶにしても、その基礎は高校物理にある。まず身近な自然現象のしくみや法則を理解してから、より高度な理論に積み上げていくことで地に足のついた理解が得られるだろう。

高校で物理を学ぶのだからいらないだろうという人もいるだろうが、物理を履修しなかった一般の人でも学べるというのがこの本のよいところ。大人になってから参考書を紐解くのは大変過ぎるという方に特にお勧めだ。

高校時代には試験問題を解くための公式に過ぎなかったものが、本書を読んでいるうちにそれが「物理法則」であることを再発見する。

なぜ自然はそのようになっているのだろう? 私たちには法則として見えているものの背後には何か別の普遍的なからくりが隠されているのだろうか?

このような疑問が頭をもたげてくるようになればしめたもの。あなたはすでにアマチュア物理学者としての一歩を踏み出している。

この別冊は特に貴重な1冊なので、今回紹介させていただいた。

ビジュアル物理(ニュートン別冊)




関連ページ:

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7


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ビジュアル物理(ニュートン別冊)




1 力学―月はなぜ落ちてこないのか?
素朴な疑問
慣性の法則
速度
ガリレイの相対性原理
落体の法則
運動方程式
力のつり合い
作用・反作用の法則
慣性力
万有引力の法則
円運動
ケプラーの3法則
地球と月の重心
力学的エネルギー保存則
仕事の原理
運動量保存則
ニュートン力学以降

2 波動―シャボン玉はなぜカラフルに色づくのか
波であふれた世界
波とは何か
波の重ね合わせ
地震波
水面波
音波
電磁波
屈折と反射
透過
吸収・エネルギーの利用
回折
干渉
散乱
共鳴
定常波
ドップラー効果
電子の波
超弦理論

3 電磁気―モーターはなぜ動く?
電流と電圧
電流の正体
電力
直流と交流
送電と変圧
磁力
電場と磁場
電磁石
電磁誘導
モーター
電磁波
光子

4 熱力学―熱とは何か?
温度の正体
シャルルの法則
ボイルの法則
状態方程式
熱の正体
熱力学第1法則
エネルギー保存法則
熱機関
熱力学第2法則
ヒートポンプ
エントロピー増大の法則
生命とエントロピー

5 原子―その真の姿とは?
万物をつくる原子
電子の発見
原子核の発見
電子軌道の仮説
電子雲
陽子と中性子の発見
同位体
核力
核エネルギー
核反応
素粒子
力の統一

すごい! 磁石: 宝野和博、本丸諒

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すごい! 磁石: 宝野和博、本丸諒

内容紹介:
究極の磁石づくりをめぐる熱き研究ストーリー。世界最強「ネオジム磁石」の最前線。

◎製品の高性能化、産業の発展を支える最強部品「磁石」

家電製品や電子機器がどんどん軽量化され、省エネ化されてきたのは
じつは「磁石」のおかげです。
ハイブリッドカーの駆動用モーター、エアコンなどの家電製品のモーター、
ハードディスクの磁気ヘッド駆動用モーター、医療用MRIなどに高性能磁石(ネオジム磁石)が
使われているのです。

ネオジム磁石は、1982年に佐川眞人氏により発明されました。
現有磁石の中で最も高い磁気エネルギーを持つ世界最強の永久磁石です。
そして、2014年、著者の宝野和博氏らの研究チームは、レアアースの使用量を
抑え、優れた磁気特性を持つ磁石化合物の合成に成功しました。
本書では、最強のネオジム磁石の機能やしくみ、これからの磁石開発の展望などを
トップ研究者である著者が一気に解説します。

・磁石はどのように発展してきたのか
・どこでどのように使われているのか
・ネオジム磁石はどうして強力なのか
・保磁力、エネルギー積とは

ネオジム磁石の発明者
佐川眞人氏
「私がネオジム磁石を発見したときは五里霧中だった。
今は研究が進んで、多くの謎が解けた。この本は、磁石の謎解き物語だ!」

JST CREST「元素戦略」研究総括、理化学研究所 研究顧問
玉尾皓平氏
「ジスプロシウムを使わずに高性能な磁石ができる!
『元素戦略』研究でその実現に挑む磁石研究第一人者が
基礎からその秘密を解き明かしてくれる、待望の書。」

2015年6月刊行、320ページ。

著者について:
宝野和博(ほうの・かずひろ)
1982年、東北大学工学部金属材料工学科卒業。1988年、ペンシルベニア州立大学大学院材料科学専攻博士課程修了。 カーネギーメロン大学博士研究員、東北大学金属材料研究所助手、科学技術庁金属材料技術研究所主任研究官、室長、 独立行政法人物質・材料研究機構材料研究所ディレクターを経て、2004年より物質・材料研究機構フェロー。
同磁性材料ユニット長を併任、元素戦略磁性材料研究拠点解析グループリーダー、筑波大学大学院数理物質科学研究科教授(連係)を併任。

本丸諒(ほんまる・りょう)
横浜市立大学卒。出版社勤務を経てサイエンスライターとして独立。
出版社時代には多数のサイエンス書のベストセラーを輩出する。
難解な概念はひと言でやさしく、複雑に絡み合った内容もシンプルに解き明かす
〈理系と文系をつなぐ〉編集技術には定評がある。
共著書に『意味がわかる微分・積分』(ベレ出版)、『マンガでわかる幾何』(SBクリエイティブ)などがある。


理数系書籍のレビュー記事は本書で300冊目。

山本義隆先生の「磁力と重力の発見 3冊」の次はちょうど300冊目である。どの本にしようか迷ったが、結局同じ「磁石ネタ」でいくことにした。本書は地元の書店で見つけて「これだ!」と思って購入した本。磁石の研究・開発の最前線を紹介したものだ。

どちらも磁石をテーマにしつつ、時代は中世、近代から一気に現代へと移る。量子力学を使った物性物理は少しかじったが、最先端の現状を覗き見るのは初めてだ。こういう工学系の本は理論物理学とは別の世界。新鮮である。

100円均一で手軽に買えるようになった強力な小型磁石。ネオジム磁石というものだそうだが、もちろん100円均一で売るために開発されたわけではない。

こういう小型で高性能の磁石にどういう用途があるか、僕は考えたことがなかった。本書で知り得たのはこのような磁石はハードディスクや電気自動車やハイブリッドカーなどはもちろん、およそモーターを使うあらゆる電子機器、乗り物には必須の部品であることだ。

磁石って現代の生活、産業の発展にすごい貢献をしてきたんだなぁと認識をあらためさせられた。

本書の章立ては次のとおりだ。

はじめに 「すごい磁石」の世界を明らかにする
0時間目 プロローグ
研究室に企業の新入社員が研修にやってきた!
1時間目 磁石開発の歴史を見ておこう
2時間目 磁石のキホンから勉強してみよう!
3時間目 磁石のつくり方とその応用
4時間目 さまざまな磁性をうまく利用して使う
5時間目 究極のネオジム磁石づくりに挑戦する!
6時間目 精緻に見ることで「なぜ?」を解明し、それが研究開発の近道になる!
7時間目 実験室を覗いてみよう!
おわりに ネオジム磁石を超える化合物を発見!

前半は磁石開発の歴史と磁石自体のしくみの説明。磁石というものは基本的には「鉄(磁鉄鉱)」なわけだが、他の元素を加えることによってより強力な磁石を作ることができる。日本は磁石研究をリードしてきたということも初めて知った。これまで「KS鋼」や「MK鋼」という磁石に始まり、希土類磁石、ネオジム磁石へと発展する。どの元素をどのように加えるか、どのような製法をとるかということが研究の要である。このあたりを読むと試行錯誤の連続で、まさに中世の錬金術のようなものなのかと思えてしまう。

その次は「磁石の性能」についての話だ。「磁力」以外に磁石の性能は何によって測るのかということ。磁力はもちろん、保持力、エネルギー積など物理学では学べない物理量が磁石の性能を決める要になる。

そしてネオジム磁石の原子構成、製造方法が解説される。この段階でネオジム磁石がなぜ優秀なのかがわかり始めてくるのだ。「磁化曲線」の読み方が特に重要。

磁石が強力かつ小型であることは大事だが、磁石を使う「製品」という観点から見ると、それ以外の性質をもつ磁石も適性に応じた使われ方をされることが解説される。つまり磁性には強磁性、常磁性、反強磁性、フェリ磁性の4タイプあり、それらの磁性を備えた物質や使われ方が紹介される。

「5時限目」から始まる本書の後半から最終章までがネオジム磁石の具体的な作り方が詳細に解説される。僕のような素人には「そこまで詳しく説明されても。。。」と思えるくらいだ。

より強力な磁石を作るための研究開発では、ミクロ、ナノ、原子レベルの3つのスケールで磁石の中身を観察することが欠かせない。それに利用されるのが4つの装置だ。磁区や磁壁がどのように変化していくかをつぶさに観察して予測を立てて実験を繰り返す。

SEM (Scanning Electron Microscope):走査型電子顕微鏡:ミクロスケールの観察
TEM (Transmission Electron Microscope):透過型電子顕微鏡:ナノスケールの観察
STEM (Scanning Transmission Electron Microscope):透過型走査電子顕微鏡:原子レベルの観察
3DAP:3次元アトムプローブ:原子レベルの観察

参考記事;

目で見る美しい量子力学:外村彰
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1a00adb6963673d7a434b57cc58c0c81


3つのスケールで撮影された磁石の内部の写真がたくさん紹介され、「現代の錬金術」は行き当たりばったりだった中世の錬金術とは全く違っていることがよくわかった。

著者がこの本を書いたのは、今もなお進歩し続けるこの分野に興味を持ってもらい、将来の研究者、技術者を育てたいという願いからである。それだけに僕のような素人には難しすぎる内容が(特に後半)多いが、それは著者の「伝えたい」という強いお気持を反映しているのだと理解した。図版やグラフも多いので僕はとても助かった。

ハードディスクの大容量化、エアコンの小型化、省電力化は磁石技術の進化によってもたらされた。そのためには磁石にどのような改良が行われたかも興味深い解説だった。

より強力で小型の磁石を材料・製造コストの面からいかに安く作れるかが、今後の日本の産業を活性化するうえで鍵のひとつになることは間違いない。


ひとつだけ本書に注文をつけさせていただければ「縦書き」であることだ。元素記号が横向きになっているので、少し読みにくい。けれどもこれは日本実業出版社の「すごい! ~」シリーズが縦書きを採用しているためであり、著者のせいではない。

磁石の世界はかなり面白いので、ぜひご一読いただきたい。


関連ページ:

永久磁石の歴史と磁気科学の発展
http://www.neomag.jp/mag_navi/history/history_top.php


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すごい! 磁石: 宝野和博、本丸諒



はじめに 「すごい磁石」の世界を明らかにする

0時間目 プロローグ
研究室に企業の新入社員が研修にやってきた!

1時間目 磁石開発の歴史を見ておこう
- 磁石開発は日本人研究者の貢献が絶大
- KS鋼の次は、MK鋼だ!
- パワフルな希土類磁石の登場
- ネオジム磁石はこうして生まれた!
- 磁石研究のミッションは?

2時間目 磁石のキホンから勉強してみよう!
- 「磁界」って、そもそも、何だ?
- 磁石を切っても、切っても...
- 保磁力、エネルギー積とは何か?
- 磁区と磁壁の世界を探れ?
- 鉄をロックするのがネオジムの仕事
- なぜ、ネオジム、ボロンが磁石に必要なのか?
- 磁石の理解は、磁化曲線に始まり、磁化曲線に終わる
- 「相分離」で強磁性を包むとよい磁石になる
- 相分離を利用した希土類の「いいとこ取り」戦略

3時間目 磁石のつくり方とその応用
- 焼結磁石のできるまで
- 液体急冷~熱間加工の工程でのつくり方
- 磁石の用途は何か?
- トランスにはなぜ軟磁性材料を使うのか?
- モーターは二重の磁石でできている

4時間目 さまざまな磁性をうまく利用して使う
- 磁性の4タイプ 強磁性、常磁性、反強磁性、フェリ磁性
- HDDは磁石の塊だ!
- 1.5ミリの隙間を滑空するジェット機?
Column: 磁石との関わりは?

5時間目 究極のネオジム磁石づくりに挑戦する!
- ネオジム磁石をつくるには「隠されたレシピ」があった?
- 3ミクロンの壁を乗り越える新しいアプローチ
- 「液体急冷+熱間加工」の2段階アプローチ法
- 保磁力をアトムプローブで分析する
- ついにできた!ジスプロシウムフリーのネオジム磁石
- マイクロ磁気シミュレーションで次に進むべき道を見極める

6時間目 精緻に見ることで「なぜ?」を解明し、それが研究開発の近道になる!
- SEMとTEMの違いと使い分け
- 磁壁移動の様子をTEMで観察する
- FIBで最初の試料づくり

7時間目 実験室を覗いてみよう!
- アトムプローブを見学
- FIB装置を見学する
- タイタン、最強のTEMで原子を見る
- 液体急冷を実習する
- 磁界をかけるプレス機
- 着磁装置で一瞬にして磁石に

おわりに ネオジム磁石を超える化合物を発見!

300冊の理数系書籍を読んで得られたこと

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理数系書籍のレビュー記事が300冊に達したのでまとめておこう。

僕が理数系書籍を読み始めたいきさつや200冊までの読書で得られたこと、感じたことは2012年12月に書いた「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」という記事を読んでいただきたい。また毎年発表するお勧め本は「とね日記賞」というカテゴリーの記事でお読みいただける。

201冊目から100冊を読むのに3年4カ月かかったことになる。(1冊目から200冊目までは6年かかっていた。)2013年3月からは健康維持のためにほとんど毎晩ウォーキングをしているから読書のペースが少し落ちているようだ。仕事するにも趣味を楽しむにも健康が第一だから仕方がない。あと理数系以外の一般書も意識して読むようになった。僕のような会社員が仕事をしながら勉強を続けられるのは、やはり好きだからできることなのだと思う。


201冊目からの100冊の書名一覧はこの記事の最後に掲載しておいた。

200冊までの勉強は、ニュートン力学から解析力学、熱・統計力学、相対性理論、量子力学、量子テレポーテーション、相対論的量子力学、場の量子論という基礎物理学の道筋をたどり、そのために必要になる数学書も読んできた。数学専攻だったので大学時代に物理学はまったく勉強していなかったから知らないことばかり。ワクワク感、高揚感に満たされる読書を経験することができた。

201冊目からの100冊では、超弦理論を目指しつつもより幅広い分野の本を読んだ。めぼしいものをピックアップして何を学び、どう感じたかをカテゴリー別に書いておこう。番号をクリックすると本のレビュー記事が開く。本から得たこと、感じたことをさらに詳しく読めるほか、関連する本のレビュー記事へのリンクも張ってある。さしずめ「膨大なレビュー記事の迷宮」だ。このページで感想の概要をお読みになってからお入りになるとよいだろう。


熱力学・伝熱学

202: 現代の熱力学:白井光雲
203: フェルミ熱力学:エンリコ・フェルミ
205: 図解 熱力学の学び方 (第2版):北山直方
212: 伝熱工学(東京大学機械工学):庄司正弘
215: 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会
216: 演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会
207: 熱学思想の史的展開〈1〉:山本義隆
208: 熱学思想の史的展開〈2〉:山本義隆
209: 熱学思想の史的展開〈3〉:山本義隆
210: 高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
211: 熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂

200冊までの読書の中で熱力学は何冊かの教科書で学んでいたが、何か足りない気がしていた。たとえば屋外に置いた同じ温度の鉄と木を触ると鉄のほうが冷たく感じる。その理由は大学の物理学科で学ぶ熱力学では説明できず、工学部で学べる伝熱学、伝熱工学で説明される内容だ。熱力学の3法則には時間変数tは含まれず、伝熱学の理論には時間変数tが使われるのが大きく違うところ。そのような違いも実際にそれぞれの分野の教科書を読んで気が付くのだ。

小学生のときに熱伝導、熱放射、対流の3つの方法で熱が伝わることを学ぶが、それを数理的に計算できるようになるためには伝熱学を学ぶ必要がある。バイクの空冷エンジンのフィンや、CPUの冷却板の設計も伝熱学の知識が必要だ。物理学科の教科書では学べないこの分野の本を読んで、実際の問題を解決するための熱の理論を学ぶことができた。

また、白井先生や北山先生の本は熱力学の教科書だが、実生活での熱現象の問題をどのようにして解くかということに重点をおいたユニークな本である。「スペースシャトルの表面に張り付ける耐火レンガは何センチの厚さが必要か?」、という問題と解答も書かれているし、冷蔵庫やエアコンのしくみ(熱交換器)や計算、設計方法も解説されている。

物理学科では熱力学と統計力学をペアにして学ぶ。統計力学は分子の集団的な運動のエネルギーや速度を計算し、熱力学の3法則を導くのだが、そもそも原子や分子が発見されていなければ成り立たない。

仮説としての原子や分子を認めたとしても、統計力学を基礎づけるニュートン力学が確立していた1700年代前半には温度計が無く、熱と温度の区別さえできていなかった。歴史的には「熱学」や「熱力学」のほうが統計力学よりも先に発展していた。その発展史を山本先生の3冊の本で学び、次に熱伝導の理論の創始者であるフーリエが1822年に著した「熱の解析的理論」を読んで科学史に名を残した偉大な学者のレベルに圧倒された。

ブラックホールの熱やエントロピーの問題にも興味があるので学んでみたいが、地球上の熱の問題を解けるようになるほうが先決だと思う。


超弦理論の教科書

236: 初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
237: 初級講座弦理論 発展編:B.ツヴィーバッハ

2013年の暮れにやっと超弦理論に入門することができた。この教科書はタイトルに「初級」と書かれていることからわかるように、2013年9月に日本語で刊行されたばかりのいちばんやさしい教科書である。本書を訳した樺沢宇紀先生からコメントをいただいたのがうれしかった。

本書は大学学部生でも学べる範囲に限定したトピックを選んで解説している教科書だ。弦理論や超弦理論の数学がどのようなものか、電磁場やエネルギーの流れはどのように多次元空間に広がっているかを知ることができる。難しいテーマ、特にカラビ-ヤウ空間についての解説は含まれていない。初級本とはいえ僕には難しすぎた。「超弦理論の標準的な教科書」に挑戦したい気持はあるのだが、自分にはまだ無理かな?と踏み出せていないところだ。


超弦理論批判系の本

234: ストリング理論は科学か―現代物理学と数学:ピーター・ウォイト
235: 超ひも理論を疑う:ローレンス M.クラウス

批判本の意見にも目を通しておこうと読んでみたのがこの2冊。特にピーター・ウォイトの本のほうがアンチ度が強い。批判しているポイントは要領を得ていると思う。けれどもその批判が正しいかどうかは今後の実験による検証に委ねられているので、今の段階では判断できないというのが僕の考えだ。僕自身も超弦理論はすごいなと思うところもあるし、疑問を感じている部分もある。でもケプラーのことを思えば、科学を力強く発展させるためにはときに過度な妄想や妄信も必要なんじゃないかな。


大栗先生の科学教養書、超弦理論の科学教養書

206: 強い力と弱い力:大栗博司
229: 大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
270: 数学の言葉で世界を見たら: 大栗博司
271: 超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士

この3年間に大栗先生は3冊の科学教養書をお書きになっている。ご自身の研究、難解極まりない最先端の科学の現状を一般の人にも知ってもらおうという意欲的な試みだ。税金を使って研究を進めている以上、意義のあることに使われているのだということを伝える義務が科学者にはあるというお考えもあるそうだ。第一線で活躍されている超多忙なお立場であるにもかかわらず、このほかにもNHKの科学教養番組「神の数式」や日本科学未来館で今日一般公開したばかりの「9次元からきた男」の監修をされたり、市民向けの講座や講演をなさったり、先生のエネルギーやライフスタイルにはいつもあこがれている。著書を読んで自分自身の学びを深めるとともにブログ記事として紹介することで僕は微力ながら先生の活動のお手伝いをさせていただいている。

橋本幸士先生にも著書の紹介記事を投稿したときにツイッターからご連絡をいただき、とてもうれしかった。


ブライアン・グリーン先生の科学教養書

239: エレガントな宇宙:ブライアン・グリーン
240: 宇宙を織りなすもの(上):ブライアン・グリーン
241: 宇宙を織りなすもの(下):ブライアン・グリーン
242: 隠れていた宇宙(上):ブライアン・グリーン
243: 隠れていた宇宙(下):ブライアン・グリーン

日本語訳された超弦理論の一般向け教養書の中ではいちばん詳しく本格的なシリーズだ。分厚いのでなかなか読めずにいたが、2013年の暮れから集中的に読んでみた。どれも素晴らしい本なのだが、日本とアメリカでは科学教養書のスタイルがずいぶん違うと感じた。グリーン博士の本はまずボリュームが違うし、大人の読者を想定して書かれていると思った。薄い日本語の本と比べて情報量が圧倒的に多いので、話の間の論理的つながりが途切れることがない。(そのぶん冗長に感じる読者もいるだろうが。)そのためにマルチバース(多宇宙)の理論など、にわかには信じられない内容も説得力がでてくるのだ。ページ数の制限から大栗先生の著書では解説されなかった超弦理論の話題がいくつも紹介されている。想像力をかきたてられるシリーズなのだ。


物性物理学

262: 分子運動30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和
263: 物性物理30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和
268: 基礎の固体物理学: 斯波弘行
279: 固体物理の基礎 上・1 固体電子論概論: アシュクロフト、マーミン
280: 固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン
281: 固体物理の基礎 下・1 固体フォノンの諸問題: アシュクロフト、マーミン
282: 固体物理の基礎 下・2 固体の物性各論: アシュクロフト、マーミン
285: ゴム弾性(初版復刻版):久保亮五
288: ゴムはなぜ伸びる?:伊藤眞義

この3年間の読書でいちばん大きなことは物性物理学を本格的に学び始めたことだ。金属の性質をその内部の電子の運動によって説明する話が中心テーマだ。アシュクロフト、マーミンの「固体物理の基礎」は1960年代に原著が刊行されたこの分野を代表する教科書で、この大著を読み通せたのが成果だった。今後はさらに他の教科書にもあたって理解を深めていきたい。

久保先生の「ゴム弾性(初版復刻版)」は統計力学を物性物理に応用した本だ。ゴムがフックの法則に従わない、つまり張力と伸びに比例関係がないことは小学生の頃に気が付いていたが、そのメカニズムが数理的に理解できたのがうれしかった。


原子・電子・原子核の発見

219: だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋
220: 新版 電子と原子核の発見(ちくま学芸文庫):S.ワインバーグ

統計力学にしても物性物理学にしても原子や分子があることが前提だ。原子論は古代ギリシアのデモクリトス以来、2000年以上「仮説」のままだった。最終的に原子や分子の存在を証明できたのは20世紀に入ってから、アインシュタインの分子運動論によってである。電子顕微鏡は発明されていなかったからアインシュタインも原子や分子を見たわけではない。どのようなプロセスを経て人類は原子や分子の存在を確信するようになっていったのか?電子や原子核はどのようにして発見されてきたのか?この2冊によってその歴史を詳しく知ることができ、筋道を立てて物事を追及していく物理学の手法に感動した。特に「だれが原子をみたか」をお読みになることをお勧めしたい。2冊とも読むと電子の発見(1897年)のほうがアインシュタインの原子の存在証明(1905)より昔であることにも気が付く。


量子力学、場の量子論、素粒子標準模型

292: 趣味で量子力学:広江克彦
221: 場の量子論:坂井典佑
230: 新版 演習場の量子論:柏太郎
222: 「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
223: 完全独習量子力学:林光男
232: ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル
247: 素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
274: クォーク 第2版: 南部陽一郎

場の量子論は薄い教科書を選んだことが災いし理解は不十分。量子力学選書のシリーズなど、そこそこボリュームがあり、わかりやすい教科書が刊行されてきたので今後は意欲的に取り組みたい。広江さんの「趣味で量子力学」は期待をはるかに超え充実していた。

この期間にヒッグス粒子の発見ヒッグス博士のノーベル物理学賞受賞、ニュートリノの質量発見で梶田先生のノーベル物理学賞受賞されるなど胸躍る大ニュースがあり、ヒッグス粒子やニュートリノの関連本は以前にも増して興味深く読むことができるようになった。

ブログ読者のみなさんへは「ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル」と「「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム」、「素粒子論はなぜわかりにくいのか」をお勧めしたい。


現代物理学と現代幾何学のつながり

238: 幾何学の基礎をなす仮説について:ベルンハルト・リーマン
244: 理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
245: 理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫
249: 時間とは何か、空間とは何か: S.マジッド、A.コンヌ、R.ペンローズ他
266: 見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス

現代物理学と現代幾何学のつながりという深淵なテーマ。「理論物理学のための幾何学とトポロジー」は専門的過ぎて理解しきれなかったが、今後の学習方針がわかったのがよかった。

一般向けの教養書ながら、とても難しいのがこの分野だ。「見えざる宇宙のかたち」や「時間とは何か、空間とは何か」は、超弦理論と結びつく領域でどのような現代幾何学が研究されているのかがわかる貴重な本である。どちらの本もあまりの奥深さに驚嘆させられる。


宇宙論

254: 宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス
255: 宇宙創成はじめの3分間 (ちくま学芸文庫):S. ワインバーグ
256: ワインバーグの宇宙論(上)ビッグバン宇宙の進化
257: ワインバーグの宇宙論(下): ゆらぎの形成と進化
296: ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明

もともと宇宙論にはあまり関心がなかったが「宇宙が始まる前に何があったか?」や2013年6月から7月にかけて放送された「NHK宇宙白熱教室」でこの分野の素晴らしさ、面白さにも開眼することができた。

その後、超一流の素粒子物理学者が書いた「ワインバーグの宇宙論」という専門書に挑戦する。理解は不十分ながら、老科学者がたったひとりでビッグバンから現代に至る宇宙膨張や温度、組成、揺らぎの変化をコンピュータを使わず超絶技巧を駆使した手計算で解明していくという内容に圧倒させられた。

重力波の直接検出に成功というニュースもつい最近のことである。「ブラックホール・膨張宇宙・重力波」はその直前に刊行された教養書だ。このニュースを理解するのにはまさにうってつけの本である。一般相対性理論は100年前に発表された古い理論だが、現在もなお研究が進行していること、ブラックホールの研究は、今後劇的に進みそうなので大いに楽しみだ。


古典力学・微積分学発展史

290: 古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆
291: 微分積分学の史的展開 ライプニッツから高木貞治まで:高瀬正仁
293: 微分積分学の誕生 デカルト『幾何学』からオイラー『無限解析序説』まで:高瀬正仁

200冊までの読書で『プリンキピア』を著したニュートンの偉業に驚嘆したが、ニュートンでも到達できできなかったこと、ニュートンの限界を知ったのが「古典力学の形成」という本だった。ニュートンは古典力学の創始者であったに過ぎず、その後の微積分学の発展がラグランジュの解析力学に昇華していくことで古典力学はようやく完成したのである。解析力学の方程式を使えば静力学の問題でも動力学の問題でも半自動的に解を求めることができる。ラグランジュによるこの万能な理論が編み出されるまでには、多くの科学者、数学者の貢献が必要で200年の年月がかかっていたのだ。上の3冊を読んでニュートンの限界、その後の古典力学と微積分学の発展史を詳細に知ることができた。


解析力学

233: よくわかる解析力学:前野昌弘

ニュートン力学が一般化、抽象化された先にラグランジュによる解析力学(=古典力学)の完成があった。その後、解析力学はハミルトンによってもうひとつの形式で記述され現在私たちが学んでいる理論になった。そしてマクロな世界を支配している解析力学は自然な形でミクロの世界を支配する量子力学の世界へ私たちを導いていたのだ。

200冊までに読んだ本の感想記事では「古典物理学から前期量子論や量子力学の発見へ至る「橋」が2つあることに感動。」と書いたが、前野先生の本を読むと橋は6つあることがわかり解析力学の普遍性に感動。天体力学のようなマクロの力学から素粒子物理のようなミクロの世界まであらゆるスケールの現象に適用できるすごい理論だ。先生の教科書のわかりやすさにも感動した。

- ハミルトン主関数から(光)量子にかかる橋
- ハミルトン-ヤコビ方程式からシュレーディンガー方程式にかかる橋
- ハミルトニアンを使った時間発展の式からハイゼンベルクの運動方程式にかかる橋
- 最小作用の原理からファインマンの経路積分にかかる橋
- ポアッソン括弧から量子力学における交換関係にかかる橋
- 解析力学の位相空間の面積から量子力学の不確定性関係にかかる橋


磁力・磁性・重力の発見

297: 磁力と重力の発見〈1〉古代・中世:山本義隆
298: 磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス:山本義隆
299: 磁力と重力の発見〈3〉近代の始まり:山本義隆
300: すごい! 磁石: 宝野和博、本丸諒

物性物理学を学ぶ中で磁石に磁力が発生する原因や性質を学ぶことができたが、天然磁石や磁力は近代科学が始まる前にどのように考えられていたのか?このあたりのことには全く無知だったので山本先生の3冊の本で学んだ。

正しい理解に到達するまで、とんでもない誤解や妄想の時代がこれほど長い間続いていたことに唖然とした。そして第3巻ではケプラーの3法則がどのように導かれたか、ケプラーが惑星の公転の原因が磁力だと考えていたことが紹介される。一見とんでもない説だが、本書を読むとそれがいかに意義のある発想だったこと、ニュートンが万有引力を発見するためには、ケプラーだけでなくロバート・フックの協力も必要だったことが詳細に書かれている。昔の研究者の本当の姿や実績は現代の視点から考えるだけではわからないのだということを強く感じた。

また「すごい!磁石」では、現代の磁石の研究開発の最前線を知り、知識欲を満たしたと同時にこの分野の発展への期待感が大いに高まった。


マイコン、CPUの黎明期

225: マイ・コンピュータ入門―コンピュータはあなたにもつくれる:安田寿明
226: マイ・コンピュータをつくる―組み立てのテクニック:安田寿明
227: マイ・コンピュータをつかう―周辺機器と活用の実際:安田寿明
228: マイクロコンピュータの誕生―わが青春の4004:嶋正利

1970年代にマイコンを自作した先駆者、安田寿明先生の「マイコン3部作」は当時中学生だった僕が熱中した本だ。内容をほとんど忘れてしまったので、あらためて読んでみた。マイコンがキットとして販売される以前のことである。安田先生は1972年に試作品として日本に20個だけ出荷されたCPU (Intel 8008)うちの1個を8万5千円でやっと手に入れ、その他の回路はすべて自作してマイコンを組み上げたのだ。個人が所有した(おそらく)日本で初めてのコンピュータである。先生が忙しい本業の合間をぬって趣味として熱中したマイ・コン(My Computer)制作。さぞ楽しかったのだろうなぁと思いながら読ませていただいた。

安田先生がマイコン制作を楽しめたのもCPUが開発されたおかげである。「マイクロコンピュータの誕生」は世界初のCPU Intel 4004の開発者のおひとり、嶋正利先生のCPU開発ストーリーである。この本の紹介記事を投稿して数ヵ月後、嶋先生から直接メールをいただいたときは、びっくりすると同時にとてもうれしかった。


数学の教科書

246: 代数学I 群と環:桂利行
248: 演習 群・環・体入門:新妻弘
253: 代数系入門: 松坂和夫
261: 素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武
265: 現代数学への招待:多様体とは何か:志賀浩二
269: ガロア理論の頂を踏む: 石井俊全
283: トポロジー入門: 松本幸夫
289: 圏論の歩き方(日本評論社)
294: 定本 解析概論:高木貞治
295: なっとくする複素関数:小野寺嘉孝

もっと専門的な教科書を読みたかったのだが、結果として大学2,3年程度の本が多くなってしまった。けれども代数学系、幾何学系、解析学系のバランスはよいと思う。特に「トポロジー入門」をお書きになった松本先生とお会いできたこと、「解析概論」を通読したことが自分にとってのハイライトだったと思う。


数学とは何か?

258: 数学とは何か(原書第2版):R.クーラント、H.ロビンズ、I.スチュアート
259: 無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語
260: 数学とは何か―アティヤ 科学・数学論集
286: 数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル

これも深淵で大好きなテーマ。どの本からも刺激を受けた。一般の方に読んでいただける本ばかりだ。特に「数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル」は「NHK数学ミステリー白熱教室」として放送されたのでお読みになった方も多いことだろう。ラングランズ予想は今後どのように展開していくのだろうか?数学と物理学のつながりはもっと多くの事例が見つかっていくのだろうか? 最先端の数学を自分が理解できるようになるとは思えないが、強く魅了されるテーマである。


ファインマン先生関連本

250: ファインマンさんは超天才: C.サイクス
251: 聞かせてよ、ファインマンさん: R.P.ファインマン

大好きなファインマン先生のことは2年前に「ファインマン先生の自伝本と講演本」という記事で紹介していたのだが、201冊目以降の3年間ではこの2冊しか読んでいなかった。ほとんどの本は読んでしまったから、これからも少しずつ未読の本を読んでいこう。


電子工学、通信技術

264: 電気通信物語―通信ネットワークを変えてきたもの:城水元次郎

幕末の日本にペリー提督が持ち込んだ有線式のモールス電信機の話から2000年あたりのインターネットや携帯電話まで。電気を用いた情報通信について技術や関連設備、国家や企業がどのように展開、競争していったかの歴史を詳細に解説している本だ。とても面白いのでぜひお読みになっていただきたい。


DNA関連

273: 二重螺旋 完全版: ジェームズ・D. ワトソン
275: DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで: ジェームズ・D. ワトソン
276: DNA (下)―ゲノム解読から遺伝病、人類の進化まで: ジェームズ・D. ワトソン

3冊とも生命の設計図の根底にあるのはDNAの中の原子や分子なのだということを再認識させられた本だ。そしてDNA以前の分子生物学やゲノム計画について知ることができた。僕にとっては未知の分野だっただけにとても新鮮だった。

また、小さな細胞の中にあるとても細くて長いDNAの二重らせんが、なぜ絡まずに2つの細胞に分かれることができるのだろうか?この謎はDNA二重らせん構造が発見された1953年からだいぶ経った1995年に数学の理論としてようやく解明された。このことについては昨年書いた「多次元空間へのお誘い」という連載記事の第14回「DNAの複製について」という記事で解説しておいた。


気象関連

284: 知識ゼロからの異常気象入門:斉田季実治
287: 気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる

九州地方では先週から心配な日々が続いているが、近年は特に自然災害や気象災害が目立ってきている。気象予報士の斉田季実治さんも熊本県のご出身だ。皆が関心をもつべきテーマであることからこの2冊を読んだ。

昨年は寺川奈津美さんの朝日カルチャーセンターの講座も受講させていただいた。(参照記事)にこやかにお話しされる講座の中では気象災害をどのように予報、伝達しているかについて真剣な顔でお話しされていたことが強く印象に残っている。その後、寺川さんはNHKニュースでの仕事を離れ、この4月からはフジテレビの「直撃LIVE グッディ!」の気象キャスターとして活躍されている。


原発関連

277: 原子・原子核・原子力―わたしが講義で伝えたかったこと:山本義隆
278: 福島の原発事故をめぐって― いくつか学び考えたこと:山本義隆

これも広く国民全体が関心をもち、国論が二分されているテーマだ。山本先生がどのようにお考えになっているか知りたかったので読んでみた。「原子・原子核・原子力―わたしが講義で伝えたかったこと」は物理を学んだ高校生以上、「福島の原発事故をめぐって」は数式のない文章だけで書かれた本なので一般の人でも読むことができる。

理数系書籍としてはカウントしなかったが、原発関連ではあと「知ろうとすること。(新潮文庫): 早野龍五、糸井重里」という本も読んでいる。


関連記事:

200冊の理数系書籍を読んで得られたこと
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b92c958e54960246be16b564c6b8c8e

超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d37fe65a84df23cca2af7ecebb83cfc6

超弦理論への最短ルート: 40冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d8deb00ae3b5b9e0e9a04f3c3ecfb11e

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7

祝: とね日記はおかげさまで10周年!(2015年2月に投稿した記事)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6227a305e06bc794b4cd9dd2dcc87f8


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201冊目から300冊目までの書名一覧

シリーズ物が連続するように実際に読んだのとは順番を少し変えている。記事本文で取り上げていない本はGoogleから「書名 とね日記」というキーワードで検索すれば、レビュー記事を見つけることができる。

201: 量子力学のイデオロギー増補新版:佐藤文隆
202: 現代の熱力学:白井光雲
203: フェルミ熱力学:エンリコ・フェルミ
204: 明解量子重力理論入門:吉田伸夫
205: 図解 熱力学の学び方 (第2版):北山直方
206: 強い力と弱い力:大栗博司
207: 熱学思想の史的展開〈1〉:山本義隆
208: 熱学思想の史的展開〈2〉:山本義隆
209: 熱学思想の史的展開〈3〉:山本義隆
210: 高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
211: 熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂
212: 伝熱工学(東京大学機械工学):庄司正弘
213: 今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A.ムラー
214: 今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A.ムラー
215: 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会
216: 演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会
217: 世界を変えた17の方程式:イアン・スチュアート
218: 宇宙がわかる17の方程式―現代物理学入門:サンダー バイス
219: だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋
220: 新版 電子と原子核の発見(ちくま学芸文庫):S.ワインバーグ
221: 場の量子論:坂井典佑
222: 「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
223: 完全独習量子力学:林光男
224: 宇宙になぜ我々が存在するのか:村山斉
225: マイ・コンピュータ入門―コンピュータはあなたにもつくれる:安田寿明
226: マイ・コンピュータをつくる―組み立てのテクニック:安田寿明
227: マイ・コンピュータをつかう―周辺機器と活用の実際:安田寿明
228: マイクロコンピュータの誕生―わが青春の4004:嶋正利
229: 大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
230: 新版 演習場の量子論:柏太郎
231: 高校数学でわかる統計学:竹内淳
232: ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル
233: よくわかる解析力学:前野昌弘
234: ストリング理論は科学か―現代物理学と数学:ピーター・ウォイト
235: 超ひも理論を疑う:ローレンス M.クラウス
236: 初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
237: 初級講座弦理論 発展編:B.ツヴィーバッハ
238: 幾何学の基礎をなす仮説について:ベルンハルト・リーマン
239: エレガントな宇宙:ブライアン・グリーン
240: 宇宙を織りなすもの(上):ブライアン・グリーン
241: 宇宙を織りなすもの(下):ブライアン・グリーン
242: 隠れていた宇宙(上):ブライアン・グリーン
243: 隠れていた宇宙(下):ブライアン・グリーン
244: 理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
245: 理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫
246: 代数学I 群と環:桂利行
247: 素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
248: 演習 群・環・体入門:新妻弘
249: 時間とは何か、空間とは何か: S.マジッド、A.コンヌ、R.ペンローズ他
250: ファインマンさんは超天才: C.サイクス
251: 聞かせてよ、ファインマンさん: R.P.ファインマン
252: 数学の教科書が言ったこと、言わなかったこと:南みや子
253: 代数系入門: 松坂和夫
254: 宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス
255: 宇宙創成はじめの3分間 (ちくま学芸文庫):S. ワインバーグ
256: ワインバーグの宇宙論(上)ビッグバン宇宙の進化
257: ワインバーグの宇宙論(下): ゆらぎの形成と進化
258: 数学とは何か(原書第2版):R.クーラント、H.ロビンズ、I.スチュアート
259: 無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語
260: 数学とは何か―アティヤ 科学・数学論集
261: 素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武
262: 分子運動30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和
263: 物性物理30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和
264: 電気通信物語―通信ネットワークを変えてきたもの:城水元次郎
265: 現代数学への招待:多様体とは何か:志賀浩二
266: 見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス
267: スーパーシンメトリー ― 超対称性の世界:ゴードン・ケイン
268: 基礎の固体物理学: 斯波弘行
269: ガロア理論の頂を踏む: 石井俊全
270: 数学の言葉で世界を見たら: 大栗博司
271: 超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士
272: 「知」の欺瞞:アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン
273: 二重螺旋 完全版: ジェームズ・D. ワトソン
274: クォーク 第2版: 南部陽一郎
275: DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで: ジェームズ・D. ワトソン
276: DNA (下)―ゲノム解読から遺伝病、人類の進化まで: ジェームズ・D. ワトソン
277: 原子・原子核・原子力―わたしが講義で伝えたかったこと:山本義隆
278: 福島の原発事故をめぐって― いくつか学び考えたこと:山本義隆
279: 固体物理の基礎 上・1 固体電子論概論: アシュクロフト、マーミン
280: 固体物理の基礎 上・2 固体のバンド理論: アシュクロフト、マーミン
281: 固体物理の基礎 下・1 固体フォノンの諸問題: アシュクロフト、マーミン
282: 固体物理の基礎 下・2 固体の物性各論: アシュクロフト、マーミン
283: トポロジー入門: 松本幸夫
284: 知識ゼロからの異常気象入門:斉田季実治
285: ゴム弾性(初版復刻版):久保亮五
286: 数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル
287: 気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる
288: ゴムはなぜ伸びる?:伊藤眞義
289: 圏論の歩き方(日本評論社)
290: 古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆
291: 微分積分学の史的展開 ライプニッツから高木貞治まで:高瀬正仁
292: 趣味で量子力学:広江克彦
293: 微分積分学の誕生 デカルト『幾何学』からオイラー『無限解析序説』まで:高瀬正仁
294: 定本 解析概論:高木貞治
295: なっとくする複素関数:小野寺嘉孝
296: ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明
297: 磁力と重力の発見〈1〉古代・中世:山本義隆
298: 磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス:山本義隆
299: 磁力と重力の発見〈3〉近代の始まり:山本義隆
300: すごい! 磁石: 宝野和博、本丸諒

マンガでわかる超ひも理論:荒舩良孝著、大栗博司監修

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マンガでわかる超ひも理論:荒舩良孝著、大栗博司監修」(Kindle版

内容紹介:
超ひも理論って“難しい! "“よくわからない! "
とあきらめた人にこそ読んでもらいたい
とっておきの超入門本!!

重力、電磁気力、強い力、弱い力、この4つの力を統一し、宇宙のすべてを記述できる可能性を秘めた理論、それが本書で学ぶ超ひも理論です。ニュートン力学から相対性理論、量子力学をへて、超ひも理論がどのように誕生したのか、そしてその理論で解き明かせる宇宙の謎まで、マンガでわかりやすく解説します。
2015年3月刊行、224ページ。

著者:
荒舩良孝(あらふね よしたか):ホームページ:http://studioarafu.com/
1973年生まれ。科学ライター・保育士。東京理科大学在学中より科学ライターを始める。ニホンオオカミから宇宙論まで、幅広い分野で取材・執筆活動を行っている。おもな著書にサイエンス・アイ新書『宇宙の新常識100』、『宇宙がわかる本』(宝島社)、『5つの謎からわかる宇宙』(平凡社)、『思わず人に話したくなる地球まるごとふしぎ雑学』(永岡書店)、『大人でも答えられない!宇宙のしつもん』(すばる舎)などがある。
荒舩良孝さんの著書: Amazonで検索

イラスト担当:
倉田理音(くらた りね):ホームページ: http://kuratarine.com/
以下ホームページから引用
絵を描くのが好きです。学生時代から少しずつイラストのお仕事をさせていただくようになり、デザイン会社に勤め、現在は主にフリーランスでイラストレーターをしています。(活動情報)イラストのお仕事承っております。サイトのコンタクトフォームよりご相談ください。(コンタクトフォーム

監修者:
大栗博司(おおぐりひろし):ホームページ: http://ooguri.caltech.edu/japanese
カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長、フレッド・カブリ冠教授、数学・物理・天文部門副部門長。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員も務める。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。東京大学助手、プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。専門は素粒子論。2008年アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)、高木レクチャー(日本数学会)、09年フンボルト賞、仁科記念賞、12年サイモンズ研究賞授賞。アスペン物理学センター理事、アメリカ数学会フェロー。著書に『重力とは何か』『強い力と弱い力』(ともに幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス、講談社科学出版賞受賞)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)、『数学の言葉で世界を見たら』(幻冬舎)がある。


理数系書籍のレビュー記事は本書で301冊目。

301冊目はどの本にしようか迷ったが、日本科学未来館もリニューアルオープンし、「9次元からきた男」も一般公開されたので、超弦理論に興味をもった一般の方に役立てていただこうと本書を選んだ。

未来館リニューアル式典(大栗博司のブログ)
http://planck.exblog.jp/25535580/


昨年発売され書店で書棚に収まっているのを見ていたのだが、全ページがマンガなのだろうと手に取って見ることもなかったのだ。ひと月ほど前に平積みされていたので大栗先生が監修されていることにやっと気が付き中身を確認することができた。よい本だとすぐわかったのでその場で購入。


ニュートン力学から超弦理論まですべて尽くされている。見開きで目次の項目のひとつづつに対応して説明してあるので読みやすい。



著者は僕より11歳年下で大学の後輩のようだ。中身もしっかりしていて文章の構成や説明の手際がよい。これなら中学生くらいから読むことができる。(理科好きなお子さんなら小学校高学年から読める。)イラストは倉田理音さんという方が担当され、可愛らしいアキバ系のタッチでいい感じ。

超弦理論のことを本書では「超ひも理論」と呼んでいる。大栗先生は超弦理論と表記してほしかったそうだが、著者と編集者の強い希望で超ひも理論と表記することになったそうだ。

とはいえ第6章では「トポロジカルな弦理論」という表記がとられている。(目次では「トポロジカルな紐理論」と誤記されてしまっているが。。)

章立てはこのとおり。

第1章:相対性理論と量子力学
第2章:素粒子の世界と元祖ひも理論
第3章:素粒子の標準理論の誕生
第4章:標準理論を超えた世界
第5章:超ひも理論登場
第6章:超ひも理論が解き明かす宇宙の謎

第1章だけでニュートン力学、相対性理論、量子力学を必要な事柄に限って手際よく説明しているのがよい。後で紹介するが同じシリーズで相対性理論と量子力学の本がそれぞれ刊行されているので、興味をもった方はそちらをお読みになればよい。

素粒子物理学(特に標準理論)と超弦理論にたくさんページを割いているのがこの本のよいところ。かなり詳しく、深いところまで解説している。

本書がカバーしている範囲を「ニュートン別冊」で揃えようとすると4~5冊くらいになってしまう。そして「NHK神の数式 完全版」の4回の放送よりも詳しく学べ、すっきり頭に入ってくる。それはこのブログ記事の最後に掲載した目次詳細をご覧いただければわかるだろう。それがたった1000円ちょっとの出費で学べるのだ。

特にこのように超入門者向けの本で「トポロジカルな弦理論」、「ホログラフィー原理」「ブラックホールの情報問題」、「5つのタイプのひも理論」、「M理論」、「Dブレーン」など超弦理論の新しいテーマをこれほど詳しく解説しているのは初めてのことだと思う。

素粒子物理学では2008年の小林先生、益川先生のノーベル物理学賞受賞に結びついた「CP対称性の破れ」や2013年のノーベル物理学賞の受賞理由「ヒッグス粒子の理論的予言と検出」、「2015年の梶田先生のノーベル物理学賞の受賞理由「ニュートリノの質量発見」の意味と意義が詳しく学べるのがよい。

読んで納得、見て楽しい本である。


最初の4分の1で解説される相対性理論と量子力学を、もっと知りたくなった方は同じシリーズのこの2冊をお読みになるとよい。ただし相対性理論のほうは特殊相対性理論についてだけ書かれていて、一般相対性理論(重力理論)が含まれていないのでご注意いただきたい。

マンガでわかる相対性理論:新堂進」(Kindle版
マンガでわかる量子力学:福江純」(Kindle版

 


関連ページ:

本書をお読みになってから大栗先生がお書きになった一般向けヒット作の3冊を上から順にお読みになるとよいだろう。より深い理解が得られるはずだ。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863


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マンガでわかる超ひも理論:荒舩良孝著、大栗博司監修」(Kindle版



第1章:相対性理論と量子力学
- 宇宙のすべてを解き明かす理論
- 理論と実験の2本の足で進む
- パズルのような理論
- 日常感覚とは異なる宇宙の姿
- 観測と考察から地動説を支持したガリレオ
- ガリレオの相対性原理
- ニュートンの万有引力の法則
- 月は地球に向かって落ち続けていた
- ニュートンでも解けない重力の謎
- 見つかったニュートン力学の矛盾
- アインシュタインの登場
- 特殊相対性理論が示す宇宙
- 静の宇宙から動の宇宙へ
- 相対性理論が明かす宇宙の成り立ち
- 量子力学のあけぼの
- 太陽系型原子モデルの矛盾
- 量子の考え方で原子は存在できる
- 電子は粒であり、波?
- 物質波は確率の波?
- 神はサイコロがお好き?
- 不確実な部分が含まれている量子の世界

第2章:素粒子の世界と元祖ひも理論
- 原子核から見つかった中性子
- 陽子と中性子をくっつける力を探せ
- 新しい粒子の存在を予言した湯川秀樹
- 素粒子クォークの発見
- この世の中は素粒子からできている
- クォークとレプトンの共通点
- 宇宙に働く4つの力
- 原子核に働いている2つの力
- 重力はとっても小さな力だった
- 閉じ込められて取りだせないクォーク
- 陽子と中間子で起こる不思議な現象
- 元祖ひも理論の登場
- 閉じたひもから重力子?
- ミクロのレベルで重力が説明できる?
- 強い力の力線と量子力学
- クォークに色がついている?
- 太陽の核融合をゆっくりと進める弱い力

第3章:素粒子の標準理論の誕生
- 4つの力の統一という夢
- 統一のベースになった場の量子論
- ボソンのキャッチボールと2重スリット
- 粒子の通る確率を足し合わせたファインマン図
- 4つの力に共通するゲージ理論
- ゲージ理論の証拠となったアハラノフ-ボーム効果の実験
- 物質に質量を与えたヒッグス機構
- 電磁気力と弱い力の統一
- 標準模型の構築
- クォークが6種類あるという予言
- CP対称性とはなにか
- 謎の多い標準模型
- 30年間間違いのなかった理論

第4章:標準理論を超えた世界
- ニュートリノの重さを発見したスーパーカミオカンデ
- ニュートリノの変化が重さを示すカギ
- 陽子崩壊を見つけるためにつくられたカミオカンデ
- 観測できなかった陽子崩壊
- 大統一理論の可能性
- 大統一理論は実証できるか
- 大統一理論には超対称性が必要
- フェルミオンとボソンをつなげる超対称性
- 無限大がいっぱいの場の理論
- 無限大問題を解決したくりこみ理論
- くりこみができない重力
- 粒子の大きさは本当にゼロ?
- 重力を統一する切り札

第5章:超ひも理論登場
- この世界の素は粒子ではなく、ひもだった?
- ひもですべての粒子が表現できる
- 誕生直後の宇宙につながる超ひもの世界
- ばくだいな張力がかかっているひも
- 実はとっても思いひも
- ひもによって解決する無限大問題
- 10次元の世界を示す超ひも理論
- 4次元以外の次元はどこに消えた?
- 6次元以外は小さく折りたたまれている?
- 超ひも理論の5つのタイプ
- ヘテロティック型の超ひも理論
- 5つのタイプの理論を1つにまとめたM理論
- Dブレーンの発見
- Dブレーンは閉じたひもの塊
- M理論とDブレーン

第6章:超ひも理論が解き明かす宇宙の謎
- 私たちはブレーンの中にいる?
- 宇宙はたくさんある?
- 重力が弱いのは、高次元の世界に漏れているから?
- 6次元空間の計算を可能にしたトポロジー
- トポロジカルな弦理論の誕生
- トポロジカルな弦理論の応用
- ブラックホールの理論から宇宙のゆらぎを予測
- ブラックホールの蒸発が引き起こす大問題
- 問題解決のカギは状態の数
- Dブレーンと開いたひもで状態の数が計算できた
- 情報はブラックホールの表面に記録されていた
- ブラックホールの情報問題に隠された勝負
- ビッグバン直後はクォークのスープだった?
- 宇宙の始まりに潜む特異点問題
- 宇宙の始まりを知ることができない?
- たくさんあって絞り切れない超ひも理論から導かれる宇宙
- この宇宙は1つではない?
- インフレーション理論が予言するマルチバース
- 超ひも理論は実在するのか

参考文献
索引

最初に読んだ理数系書籍200冊の書名一覧

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300冊の理数系書籍を読んで得られたこと」では201冊目からの100冊の書名一覧を掲載したが、その前に読んでいた1冊目からの200冊の書名リストを書いていなかったので載しせておこう。「発売情報」や「目次情報」としてだけ紹介した未読の本は含まれていない。2006年から2012年12月にかけて読んだ理数系書籍である。みなさんの理数系読書の参考にしてほしい。

このような読書を始めたいきさつや最初の200冊を読んで得られたこと、個別の感想は「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」という記事に書いておいた。

リストはだいたい読んだ順番に掲載しているが、シリーズ物が連続するように少し順番を入れ替えてある。番号のところにレビュー記事へのリンクをつけようとしたが、gooブログではひとつの記事に文字数制限があるのでつけることができなかった。個別の記事はGoogleから「書名 とね日記」で検索するか「記事一覧(分野別)」から探していただきたい。

最初の頃は、よもや本の紹介ブログになるとは思っていなかったから書評記事の体裁をなしていないことをご理解いただきたい。順に眺めてみると、その時々に関心をもっている分野が移り変わっていくのがわかるので興味深い。一般の方に特にお勧めな本、読んでいただきたい記事についてのみ、番号のところにリンクを張っておいた。


001: タイムマシンの作り方:矢沢サイエンスオフィス
002: タイムマシンを作ろう:ポール・デイヴィス
003: 一般相対性理論:P.A.M.ディラック
004: パラレルワールド:ミチオ・カク
005: ゼロから学ぶ量子力学:竹内薫
006: 道具としての相対性理論:一石賢
007: 虚数の情緒 - 中学生からの全方位独学法
008: 複素関数:松田哲
009: よくわかる物理数学の基本と仕組み:潮秀樹
010: よくわかる物理数学演習:潮秀樹
011: 「ファインマン物理学」を読む 力学と熱力学を中心として:竹内薫
012: 「ファインマン物理学」を読む―電磁気学を中心として:竹内薫
013: 「ファインマン物理学」を読む 量子力学と相対論を中心として:竹内薫
014: ファインマン講義 重力の理論
015: スバラシク実力がつくと評判の電磁気学キャンパス・ゼミ
016: ファインマン物理学(1)力学
017: ファインマン物理学(2)光、熱、波動
018: ファインマン物理学(3)電磁気学
019: ファインマン物理学(4) 電磁波と物性
020: ファインマン物理学(5)量子力学
021: アインシュタインとファインマンの理論を学ぶ本:竹内薫
022: 宇宙のシナリオとアインシュタイン方程式:竹内薫
023: ワープする宇宙:5次元時空の謎を解く:リサ・ランドール
024: 異次元は存在する:リサ・ランドール
025: ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉
026: ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉
027: 困ります、ファインマンさん
028: 科学は不確かだ!
029: ハイゼンベルクの顕微鏡:石井茂
030: 超ひも理論とはなにか:竹内薫
031: 次元の秘密―自然単位系からDブレーンまで:竹内薫
032: コマ大数学科特別集中講座
033: 図解雑学 超ひも理論:広瀬立成
034: 図解入門 よくわかる量子力学の基本としくみ:潮秀樹
035: ループ量子重力入門:竹内薫
036: よくわかる最新時間論の基本と仕組み:竹内薫
037: クォーク - 物質の究極を求めて:ハラルト・フリッチ
038: 図解入門 よくわかる最新 量子論の基本と仕組み:竹内薫
039: 有限群村の冒険 - あなたは数学の妖精を見たことがありますか?
040: 物理数学の直観的方法 第2版:長沼伸一郎
041: ヴィジュアル複素解析:T.ニーダム
042: 趣味で物理学:広江克彦
043: 趣味で相対論:広江克彦
044: 量子力学(1)第2版:朝永振一郎
045: 量子力学(2)第2版:朝永振一郎
046: 角運動量とスピン「量子力学補巻」:朝永振一郎
047: 新版 スピンはめぐる: 朝永振一郎
048: 量子のからみあう宇宙:アミール・D・アクゼル
049: 解析力学:久保謙一
050: 闘う物理学者!:竹内薫
051: トポロジカル宇宙(完全版):根上生也
052: 微分・位相幾何(理工系の基礎数学10):和達三樹
053: マンガで科学入門 アインシュタインの相対性理論
054: 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
055: はじめて学ぶ物理 [熱力学]: 野田学
056: アインシュタイン選集(1)
057: アインシュタイン選集(2)
058: 熱力学を学ぶ人のために: 芦田正巳著
059: 統計力学を学ぶ人のために: 芦田正巳著
060: 統計力学(裳華房): 小田垣孝著
061: 相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~
062: これならわかる理系の電磁気学:高橋真聡著
063: 電磁気学の基礎 I:太田浩一
064: 電磁気学の基礎 II:太田浩一
065: こんなにわかってきた素粒子の世界: 京極一樹
066: だれにでもわかる図解素粒子物理: 京極一樹
067: ねこ耳少女の量子論 - 萌える最新物理学
068: 理系バカと文系バカ: 竹内薫
069: ディラック 量子力学 原書第4版
070: 量子力学を学ぶための解析力学入門:高橋康
071: 量子場を学ぶための場の解析力学入門:高橋康
072: 古典場から量子場への道:高橋康
073: 量子テレポーテーション: 古澤明
074: 現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
075: 現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
076: 熱力学―現代的な視点から:田崎晴明
077: 統計力学〈1〉:田崎晴明
078: 統計力学〈2〉:田崎晴明
079: 統計力学:長岡洋介
080: 非平衡系の統計力学:北原和夫
081: 時間の物理学―その非対称性 (1979年)
082: 流体力学(物理テキストシリーズ):今井功
083: 位相入門 -距離空間と位相空間-: 鈴木晋一
084: 多様体の基礎: 松本幸夫
085: 曲線と曲面の微分幾何(増補版): 小林昭七
086: 要点講義 ベクトル解析と微分形式: 井田大輔
087: トポロジーへの誘い―多様体と次元をめぐって:松本幸夫
088: 群論への30講:志賀浩二
089: 集合への30講:志賀浩二
090: 位相への30講:志賀浩二
091: 幾何学〈1〉多様体入門:坪井俊
092: 幾何学〈3〉微分形式:坪井俊
093: トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎
094: トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎
095: トポロジー万華鏡〈1〉:小竹義朗、瀬山士郎、村上斉
096: トポロジー万華鏡〈2〉:玉野研一、深石博夫、根上生也
097: 理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾
098: 群・環・体入門:新妻弘、木村哲三
099: 群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次
100: はじめてのルベーグ積分:寺澤順
101: ルベーグ積分超入門:森真―
102: ルベグ積分入門(新数学シリーズ23):吉田洋一
103: ヒルベルト空間論:保江邦夫
104: 量子力学:保江邦夫
105: 連続群論:保江邦夫
106: 確率論:保江邦夫
107: 解析力学:保江邦夫
108: 微分幾何学:保江邦夫
109: 変分学:保江邦夫
110: 複素関数論:保江邦夫
111: ルベーグ積分入門:伊藤清三
112: 関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊
113: ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄
114: 量子論:小出昭一郎
115: 量子力学(I):小出昭一郎
116: 量子力学(II):小出昭一郎
117: 量子力学(I): 江沢洋
118: 量子力学(II): 江沢洋
119: 光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
120: 量子力学 I:猪木慶治、川合光
121: 量子力学 II:猪木慶治、川合光
122: 相対論的量子力学:森田正人、森田玲子
123: 相対論的量子力学:西島和彦
124: 悩めるみんなの統計学入門:中西達夫
125: 量子力学―観測と解釈問題:高林武彦著、保江邦夫編
126: 光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学: R.P.ファインマン
127: 量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
128: ファインマン経路積分:L.S.シュルマン
129: 量子波のダイナミクス:森藤正人
130: 幾何学への新しい視点 - 不確定性と非可換時空:大森英樹
131: 力学的な微分幾何 新装版:大森英樹
132: エキゾチックな球面:野口廣
133: トポロジーの世界:野口廣
134: トポロジー―基礎と方法: 野口廣
135: 増補新版 4次元のトポロジー:松本幸夫
136: 数学ガール:結城浩
137: 数学ガール/フェルマーの最終定理:結城浩
138: 数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩
139: 数学ガール/乱択アルゴリズム:結城浩
140: 数学ガール/ガロア理論:結城浩
141: 量子力学の数学的構造 I:新井朝雄、江沢洋
142: 量子力学の数学的構造 II:新井朝雄、江沢洋
143: 量子現象の数理:新井朝雄
144: 今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘
145: 量子力学を見る:外村彰
146: 目で見る美しい量子力学:外村彰
147: ブルバキ―数学者達の秘密結社:モーリス マシャル
148: 連続群論入門 (新数学シリーズ18):山内恭彦、杉浦光夫
149: 群と表現:吉川圭二
150: 線形代数と群の表現 I :平井武
151: 線形代数と群の表現 II:平井武
152: はじめよう位相空間:大田春外
153: 解いてみよう位相空間:大田春外
154: リー群と表現論:小林俊行、大島利雄
155: 世界一やさしい金融工学の本です:田渕直也
156: 増補版 金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式:石村貞夫、石村園子
157: Excelで学ぶデリバティブとブラック・ショールズ:藤崎達哉
158: 確率論:伊藤清
159: 入門確率過程:松原望
160: Excelで学ぶ量子力学―量子の世界を覗き見る確率力学入門:保江邦夫
161: シュレーディンガーのジレンマと夢―確率過程と波動力学:長澤正雄
162: 新・物理入門(増補改訂版):山本義隆
163: 天体の回転について:コペルニクス著、矢島祐利訳
164: 宇宙の神秘 新装版:ヨハネス・ケプラー
165: 「余剰次元」と逆二乗則の破れ:村田次郎
166: 質量はどのように生まれるのか:橋本省二
167: ファインマンさんの流儀:ローレンス M.クラウス著、吉田三知世訳
168: 物理法則はいかにして発見されたか:R.P.ファインマン
169: サクライ上級量子力学〈第1巻〉輻射と粒子:J.J.サクライ
170: サクライ上級量子力学〈第2巻〉共変な摂動論:J.J.サクライ
171: よくわかる電磁気学:前野昌弘
172: よくわかる量子力学:前野昌弘
173: 新版 量子論の基礎:清水明
174: 素粒子論のランドスケープ:大栗博司
175: はじめての〈超ひも理論〉:川合光
176: 重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
177: Dブレーン―超弦理論の高次元物体が描く世界像:橋本幸士
178: 場の量子論〈第1巻〉量子電磁力学:F.マンドル、G.ショー
179: 場の量子論〈第2巻〉素粒子の相互作用:F.マンドル、G.ショー
180: ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
181: ワインバーグ場の量子論(2巻):量子場の理論形式
182: ワインバーグ場の量子論(3巻):非可換ゲージ理論
183: ワインバーグ場の量子論(4巻):量子論の現代的諸相
184: 史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典
185: 改訂版 電子回路の「しくみ」と「基本」 :小峯龍男
186: 改訂版 デジタル回路の「しくみ」と「基本」:小峯龍男
187: 「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!:古澤明
188: 量子もつれとは何か:古澤明
189: 量子光学と量子情報科学:古澤明
190: 新装版 集合とはなにか:竹内外史
191: 量子コンピュータ入門:宮野健次郎、古澤明
192: ファインマン計算機科学:ファインマン, A.ヘイ, R.アレン
193: 通信の数学的理論:クロード・E. シャノン、ワレン・ ウィーバー
194: 情報理論:甘利俊一
195: 時:渡辺慧
196: 改訂版 関数のはなし〈上〉:大村平
197: 改訂版 関数のはなし〈下〉:大村平
198: 改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平
199: 改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平
200: 量子力学は世界を記述できるか:佐藤文隆

このリストを作ってから、この期間に以下の3冊も読んでいたことに気がついた。レビュー記事や紹介記事は個別に書いていないので、それぞれ後日300冊目以降ということで書くことにしよう。

高校数学でわかるマクスウェル方程式
高校数学でわかるシュレディンガー方程式
高校数学でわかるボルツマンの原理


関連記事:

300冊の理数系書籍を読んで得られたこと
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8d57c3e2ee6d39fe7a1b083af03a3d41

200冊の理数系書籍を読んで得られたこと
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1b92c958e54960246be16b564c6b8c8e

超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d37fe65a84df23cca2af7ecebb83cfc6

超弦理論への最短ルート: 40冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d8deb00ae3b5b9e0e9a04f3c3ecfb11e

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7

祝: とね日記はおかげさまで10周年!(2015年2月に投稿した記事)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6227a305e06bc794b4cd9dd2dcc87f8


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超対称性理論とは何か:小林富雄

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超対称性理論とは何か:小林富雄」(Kindle版

内容紹介:
なぜこの宇宙は存在するのか?
ヒッグス粒子発見は始まりにすぎない。現代物理学最大のテーマに迫る!

超対称性とは何か? なぜ必要なのか?
私たちはまだ、宇宙の成り立ちのほんの一部分しか分かっていません。
ヒッグス粒子発見で完成した現代物理学の基本となる「標準理論」にも、まだ未解決な謎は多いのです。その残された大きな謎のひとつ「階層性問題」を解決し、宇宙に偏在する「暗黒物質」の正体をつきとめ、さらに「力の大統一」が達成される──。それが超対称性理論です。
ヒッグス粒子発見により、「なぜ宇宙に物質が存在するのか」という謎を解くカギが得られました。超対称性は素粒子と時空を結びつけ、「なぜこの宇宙が存在するのか」というもっとも根源的な問いに答える究極の理論です。その本質に迫ります。

ヒッグス粒子を発見したCERN・LHCで日本チームを率いた著者だからこそ語れる、臨場感あふれる素粒子物理学の最前線。

「この世で最も理解しがたいことは、宇宙が理解できるということだ」──アインシュタイン
”この宇宙にはまだ多くの謎が残されています。自然界に存在する4つの力のうち、3つまでは標準理論で説明できますが、4つ目の重力を素粒子物理的に理解することには成功していません。それになによりも、標準理論自体に不満足な点が多々あるのです。これらの問題の多くを解決し、重力まで含めたすべての力を統一的に理解する可能性を秘めているのが、「超対称性」とよばれるまったく新しい対称性です。
2016年3月刊行、232ページ。

著者:
小林富雄(こばやし とみお):ホームページ: http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/~tomio/
1950年千葉県生まれ。東京工業大学卒業、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。1993年より東京大学素粒子物理国際研究センター教授。2015年、東京大学を定年退職、同年より高エネルギー加速器研究機構国際連携推進室主任URA。一貫して世界最高のエネルギー加速器を用いた国際共同実験に参加し、グルーオンの発見やヒッグス粒子発見、素粒子の世代数の決定、超対称性粒子探索などに貢献している。1994年から2015年までCERN・LHCにおけるATLAS実験の日本共同代表者を務めた。


理数系書籍のレビュー記事は本書で302冊目。

2012年以来ヒッグス粒子発見ニュートリノの質量検出重力波の直接観測と一般紙やニュースのトップを飾るビッグニュースが続き、さてその次は何だろう?そのとき思い浮かぶのが「超対称性」なのだと思う。それなら前もって知っておいたほうがよさそうだ。

そう思って調べてみると超対称性について解説している日本語の科学教養書がほとんどないことに気づく。昨年紹介した「スーパーシンメトリー ― 超対称性の世界:ゴードン・ケイン」は英語版の評価が低いことに加えて、日本語版の逐語訳がきつすぎ、語彙選択も下手なので読みにくかった。

超対称性理論とは何か:小林富雄」(Kindle版)はブルーバックスとしては新刊で、今年の3月に出たばかり。理数系読書仲間(?)の間で話題になっていたので読んでみた。


本書の前半と科学教養書が抱える問題

読んで大正解だった。とはいえこういう理論物理や素粒子物理の科学教養書が抱える問題のことも思わずにはいられなかった。

超対称性理論のようなテーマに興味を持つのは、たいていこれまでこの手の科学教養書や教科書を読んでいる人がほとんどだ。何度も読んでいて知っている相対性理論や量子力学の話をまた読まされることになる。

反面、物理の本をほとんど読んだことがない初心者にとっては、本書のように駆け足かつ数式入りで解説する特殊相対性理論、量子力学の解説は難しすぎる。さらに数式はでてこないが相対論的量子力学(ディラック方程式)、量子電磁力学(くりこみ理論)、素粒子物理学(場の量子論)や群論の話は専門用語を解説しているとはいえ、ついていくのが大変だ。

つまり、専門家には知っていることが半分以上で内容も物足りなく、素人には導入部分でくじけてしまう本になりがちなのだ。著者にしてみれば本がたくさん売れてほしいから筋道を追って完全な形に仕上げたい。本論に入るまでの物理学発展史をどうしても書いておきたくなる。いきなり本論(今回の本でいえば超対称性)から始めると初心者を篩に落としてしまうからだ。その点、大栗博司先生のように3冊に分けて刊行するのはうまい解決策だと思う。

そのように文句を言いつつも僕の本書に対する評価はとても良い。核をなす部分(超対称性)が素晴らしかった。僕のようにこれまで数多くの本を読んだ者にとっても知らないことが多く、現在進行中の実験や理論と超対称性のかかわりが筋道を追って理解できた。今後、専門書を読む際に大きな助けとなるだろう。

章立ては次のとおりだ。

第1章:素粒子の世界の対称性
第2章:スピンの正体
第3章:ゲージ対称性と標準理論
第4章:超対称性とは何か
第5章:超対称性粒子を探せ

数式で物理学を学んでいない初心者にとって第1章、第2章は難しすぎる。数式はおろか理論物理系の科学教養書も読んだことがない読者は、まず大栗先生の2冊をお読みになったほうがよい。

- 「重力とは何か:大栗博司
- 「強い力と弱い力:大栗博司

そして数式も含めてイメージしたり理解することをお望みであれば、次の4冊を読んでおくとよいだろう。本書との相性がよい本をブルーバックスで揃えてみた。

- 「高校数学でわかる相対性理論:竹内淳」(Kindle版
- 「高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳」(Kindle版
- 「消えた反物質:小林誠
- 「群論入門 対称性をはかる数学:芳沢光雄」(Kindle版


「第3章:ゲージ対称性と標準理論」あたりから、CP対称性やカイラル対称性などのゲージ対称性、そしてそれらの対称性の破れ、くりこみ理論など超対称性理論にも拡張される素粒子物理学の話が詳しく述べられるので、特に注意を払って読んでほしい。


本書の後半、超対称性理論

さて、本書の核心の超対称性理論は第4章から始まる。「第4章:超対称性とは何か」で理論的側面を歴史の順に、「第5章:超対称性粒子を探せ」で検出のために行われている実験が解説される。

超対称性とはボソンとフェルミオンをまとめて1組とし、それらの間の対称性を要請する考え方で標準理論では未解決の問題を解決しようという試みである。超対称性理論によって存在が予想される素粒子の数は倍増する。



標準理論ではU(1)xSU(2)というゲージ対称性で電弱統一理論を、SU(3)でクォークのゲージ理論(量子色力学)を記述している。

大統一理論を議論する場合はU(1)xSU(2)xSU(3)を含む形で拡張した群としてSU(5)やSO(10)を初めとするいくつかの群を考える。



本書によると超対称性理論が登場する前にはSU(2)xSU(3)を含むSU(6)というモデルも提唱されたそうだ。しかしこれは1967年、コールマンとマンデュラが証明した「不可能定理」によって却下されることになった。これは「ポアンカレ対称性(ローレンツ変換に対する不変性)=時空の対称性」と「内部対称性(アイソスピンやストレンジネスなど)=時空とは無関係な対称性」だけが理論に許されると主張する定理だ。

超対称性が4次元時空での対称性として脚光を浴び始めたのは、1974年のヴェスとズミノの論文である。彼らは弦理論の超対称性にヒントを得て、4次元時空での場の量子論で超対称性を持つモデルを書き下すことに成功した。これにより「不可能定理」も破られることになった。コールマンとマンデュラにはボソンとフェルミオンを混ぜるという考察が欠如していたからである。この点を改良してこの定理を一般化した定理をハーグとロプザンスキー、ゾーニウスが導き、ローレンツ不変性を満たす最も一般的な超対称性理論が得られ、それに必要な超代数がどのようなものかが明らかになった。

その超代数とはフェルミオンを場の量子論に導入するためにも使われるグラスマン数(別名ゴースト数、幽霊数)という数を用いた代数だ。グラスマン数は複素数や四元数、八元数...などとも違う「新しい数」だ。通常の4次元時空の4つの座標に加えて2つのグラスマン数の座標(フェルミオン的な座標)を加えた6次元空間で超空間を考えるのである。



1974年にはまたジョージャイとグラショーがSU(5)ゲージ対称性に基づいた大統一理論を提唱した。これにより陽子崩壊が予測された。そして1981年には坂井典佑らによって「超対称SU(5)大統一理論」が提唱された。この理論によると高いエネルギー領域で3つの力の結合定数が1つに交わることになる。(電磁気力、弱い力、強い力の統一)



この超対称性が破れるエネルギースケールと大統一エネルギースケールの間には、標準理論と超対称性以外には何もない「超対称大砂漠」の存在を示唆しているそうだ。TeVのスケールでの標準理論や超対称性の破れの物理学の次に来るのは10^16GeVという大統一の物理学になるかもしれないという。それは重力を含むプランクスケールのすぐ近くである。TeVスケールの物理を詳細に調べることで、大統一やプランクスケールの物理が見えてくるかもしれないのだ。

超対称性は相対論(ローレンツ不変性)を満たす時空を最大限に拡張するものであり、重力を含むすべての力を統一する万物の理論にとって、なくてはならない究極の対称性なのだ。これにより素粒子標準理論に欠けている点、すなわち「階層性問題の解決」、「力の大統一の実現」、「暗黒物質の候補を与える」を補うことが可能になるという。

その後、本書では超重力理論、超対称性と超弦理論のつながり、超弦理論の発展史、超対称性の破れがもたらすもの、超対称標準モデルが予言することがら、R対称性などが解説される。


すべての力が統一されるエネルギーレベルはとてつもなく高いので、実験装置を作るのは不可能と思うかもしれない。しかし最終章「第5章:超対称性粒子を探せ」では、超対称性を検出するための方法と実験装置が紹介される。CERNのLHCでATLAS実験を率いてきた小林先生の強みが活かされる章だ。

暗黒物質について。

- ニュートリノは熱い暗黒物質の候補となる。
- アクシオンは冷たい暗黒物質の候補となる。
- 超対称性粒子(たとえばニュートラリーノ)は暗黒物質の候補となる。

暗黒物質ついては次のような実験が行われている。

- スーパーカミオカンデ
- XEONON100
- LUX
- DAMA
- XMASS
- IceCube

超対称性の質量より低いエネルギーで間接的に超対称性の兆候を探る実験。

- E821実験(米国ブルックヘブン国立研究所)

直接的に超対称性の兆候を探る実験。

- LEP (CERN): 実験はすでに終了。チャージーノ探索が行われたが検出されず。
- LHC (CERN)

とてもここには書ききれないが、これらの実験が超対称性の検出にどのように結びついているかが本書ではそれぞれ紹介されている。


今のところ超対称性粒子はひとつも見つかっていないし、超対称性理論を示す兆候も見つかっていない。また標準理論では19個だったパラメータが超対称性理論では新たに105個ものパラメータを追加することになるという問題が指摘されている。しかし、精度の高い実験が進むことによってより強い制限がかかり、パラメータの数は劇的に少なくなるだろうというのが本書に書かれていることである。

講談社ブルーバックスの中では特に難しい本のうちのひとつだと思う。それだけに、これまでの本では物足りなかった読者、今後注目されることになる最先端物理学の世界を理論と実験の両サイドから概観したい方にうってつけの本である。


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超対称性理論とは何か:小林富雄」(Kindle版



第1章:素粒子の世界の対称性
- この世は素粒子でできている
- 力のもとも素粒子
- フェルミオンとボソン
- 対称性
- 保存則
- 超対称性

第2章:スピンの正体
- 角運動量とは
- 光が粒子で、電子が波?
- 原子の世界の角運動量
- 電子の二価性とスピン
- スピンが住む時空
- 時空の統合と幾何学
- スピンを生み出す時空

第3章:ゲージ対称性と標準理論
- ゲージ対称性と4つの力
- 電磁力とくりこみ
- 原子核に働く強い力と弱い力
- 群論と対称性
- 電弱統一と対称性の破れ
- 質量の起源
- 強い力は3つの色から
- 第3世代とヒッグス粒子
- LHCの登場
- 標準理論が抱える問題

第4章:超対称性とは何か
- 異なるスピンをひとまとめに―超対称性前史
- 超対称性の誕生
- 時空の究極の対称性
- 階層性問題
- 力の大統一
- 万物の理論
- 「超弦理論」革命
- 超対称性の破れ
- 超対称標準モデルの予言
- R対称性
- 超対称性発見への期待

第5章:超対称性粒子を探せ
- 暗黒物質の発見
- 暗黒物質の正体とは?
- 超対称性暗黒物質を検出する
- 超対称性の効果を垣間見る
- 発見されたのは超対称性ヒッグス粒子か?
- 超対称性を作り出す
- 追い詰められた"自然な"超対称性

おわりに
参考図書
解説付録

『数学ガイダンス2016』数学セミナー増刊:日本評論社

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『数学ガイダンス2016』数学セミナー増刊:日本評論社

内容紹介:
大学に入り、初めて大学数学を学ぶ人や、大学で理系に進もうと考えている高校生向けの本です。
2016年3月刊行、170ページ。


理数系書籍のレビュー記事は本書で303冊目。

本書のことは先月の終わりごろツイッターで知ったのだが、地元の書店で昨日1冊だけ残ってるのを見つけて購入した。こういう本はありがたい。3月には発売されていたのに気がつくのが遅くなってしまった。

買うのが遅れたので早く紹介しておいたほうがよいだろう。ゴールデンウィークであるのをよいことに、昨夜はほぼ徹夜して読み切った。2年前に書いた「大学で学ぶ数学とは(概要編)」と同じ方向性の本であり、僕の記事よりずっと具体的かつ詳細に高校生、大学1年生が知りたいことがまとめられている。

新年度が始まり新入生も新年度を迎えた上級生も忙しくなってくる頃だろうし、新しく学び始めた数学に戸惑いを覚えてくる時期かもしれない。大学の数学全体を俯瞰して、自分の立ち位置や方向性を確認するために本書は役立つだろう。

いちばん参考になるのはやはり「1)イントロダクション大学数学」の章だ。大学数学のそれぞれの分野を専門の先生方が「お話」として語ってくださっている。数式を交えて具体的に紹介されるので、各分野をある程度「学ぶ」こともできるのがよい。

この章の冒頭の「数学ランドについて」というページで全体図が示されているから、学年が進むに従って何を学べるのか、それぞれの分野のつながりを知ることができる。

クリックで拡大



理数工学系の他の学問と違い、大学数学は分野の名前を聞いても高校生や新入生にはわかりにくいことがある。「関数論」と「関数解析」、「位相空間」と「位相幾何学」、「微分幾何学」と「ベクトル解析」の違いがよくわからないかもしれないし、「多様体」って何?というような感じだろう。

「1)イントロダクション大学数学」の章は教科書のレベルよりははるかにやさしく、具体的な説明と数式を使った説明で各分野で学ぶ数学のイメージが掴め、どのようなことに役立つかを知ることができる。そして参考図書、代表的な教科書が最後に紹介されている。

さらによいのが各分野で使われる個々の数学概念、専門用語の意味が言葉で説明されていることだ。教科書は厳密性を重視しているから「無駄なこと」が書かれていない。言葉で説明すると冗長になるし曖昧さが残るので、排除されてしまうからだ。(学生に親切な一部の教科書では言葉で説明されているが、このような教科書が授業用として指定されることはほとんどない。)

新入生には書かれていることのすべてが理解できるわけではないと思うが、言葉による説明で「わかった気」になれるのもメリットだ。大きな勘違いや思い込みで時間を浪費することが避けられるからだ。


学生時代に数学専攻だった僕のような人、社会人になってからあらためて学び直している人にとっても本書は大いに役立つ。「プリンストン数学大全」で個別の分野を調べたり散策したりするのも有益だが、このような大著では全体が見渡せない。その点「『数学ガイダンス2016』数学セミナー増刊:日本評論社」は通読することができる。すらすら読める箇所と引っかかってしまう箇所があることに気づくだろう。自分の勉強が足りない分野や項目を見つけ出すことができるのだ。

通読して気づいたことがある。本書数学科の学生を想定して書かれているため物理学に使われる数学、役立っている数学の分野が僕が感じているものより狭いことだ。

物理学で使われる数学は、いわゆる「スミルノフ高等数学教程」がカバーするような「物理数学」と呼ばれているものすべてであり、一般相対性理論(1915)以降の現代物理学についていえば、微分幾何学(リーマン幾何学)、関数解析(ヒルベルト空間)、位相幾何学、多様体、複素幾何学、リー群、群の表現論、作用素代数、統計学、情報理論も含まれている。つまり本書で紹介されている以上に近代・現代数学は現実世界の物理をあらわすのに役立っていると言いたい。それどころか現在では数学と物理学が互いに刺激し合って研究が進んでいるのである。(以下の5つのブログ記事を参照)

- 「ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄
- 「理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
- 「理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫
- 「ゲージ理論とトポロジーの年表
- 「見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス


地元の中型書店では1冊しか残っていなかったし、アマゾンでも一時在庫切れなのでよく売れている本なのだろう。お買い求めになりたい方は、書店で注文するか日本評論社のオンラインショップのページを利用されるとよい。

『数学ガイダンス2016』数学セミナー増刊(日本評論社)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7063.html


関連記事:

大学で学ぶ数学とは(概要編)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07137c47d16d95ddde8f5c4cb6f37d55

大学で学ぶ数学とは(実用数学編)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/975ad3faa2f6fd558b48c76513466945

線形代数学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9d2ac30c9f5f620ad703304d710ed90b

解析学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22c325e49cfd7c721679dbc2896b86a4

ちょっと気になる常微分方程式の本
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/779e59b0996c582373308c0a4facf16f

目次情報: スミルノフ高等数学教程 全12冊
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d26e1bf0916344802c90d785c535149f

東大教授が語る、東大新入生のための数学ブックガイド
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75ba1f671b226a46e2a31a85d4eb8f49


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『数学ガイダンス2016』数学セミナー増刊:日本評論社



師弟対談:数学科を語ろう:飯高茂x神田愛花

折って楽しむ折り紙セミナー番外編:円環面七色地図 前川淳

鼎談:大学数学の学び方:川平友規x小畑久美x竹山美宏


1)イントロダクション大学数学

数学ランドについて/福井敏純
線形代数/市原一裕

大学での微積分
“無限”のワンダーランド/一樂重雄

集合と論理/竹山美宏

位相空間/逆井卓也

曲線と曲面/石川剛郎

群論/雪江明彦

環・体・ガロア理論/角皆 宏

複素関数論への招待/須川敏幸

常微分方程式/柳田英二

偏微分方程式論
数学では何を学ぶのか/眞崎 聡

位相幾何学と多様体論/森田茂之
微分幾何学/小磯憲史

測度論・関数解析/曽布川拓也

確率論/服部哲弥

数理論理学(数学基礎論)/鈴木登志雄

統計学
統計的学習理論の世界/金森敬文


2)新入生のための数学ビギナーズ・ガイド

メモやノートを取りましょう/西野哲朗

レポートの書くためのTeX超入門/阿部紀行

数学書の読み方/竹山美宏

図書館を使おう!
セミナーの準備はここまでしておきたい!/河東泰之

数学記号とギリシャ文字について/間瀬 茂

eラーニングを活用しよう/高橋哲也

数学ソフトウェアのすすめ/濱田龍義

街の書店より
本はどちらでお探しになりますか?/矢寺範子
神保町で数学書なら/布川路子


3)就職ガイダンス

数学履修生のキャリアとそのデザイン/池川隆司

数学科出身の先輩より
数学は社会に出て役に立つか?/佐々木尚史
数学との関わりの変化 /坂本健一

アクチュアリーとはどんな人たちで
大学では何を勉強するべきなのか/山内恒人

アクチュアリーの仕事の魅力
数学を活かすプロフェッショナル/河原崎純一
老後を支える年金制度を数学の力で守りたい/吉田興正

対談
アクチュアリーから見た「数学」と「社会」のつながり方
根岸秋男×浅野紀久男

初出一覧

だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉

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コロボックル物語1 だれも知らない小さな国

内容紹介:
びっくりするほど綺麗なつばきが咲き、美しい泉が湧き出る「ぼくの小山」。ここは、コロボックルと呼ばれる小人の伝説がある山だった。ある日小川を流れる靴の中で、小指ほどしかない小さな人たちがぼくに向かって手を振った。うわあ、この山を守らなきゃ!日本初・本格的ファンタジーの傑作。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。

著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。

村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。


3月に有川浩さんによる新作「だれもが知ってる小さな国(コロボックル物語)」を読んだことがきっかけで、佐藤さとる先生の本も40年ぶりに読みなおしてみることにした。子供のころ僕はたしかにこの本に熱中していた。冒頭の小山や三角平地のことや、そこで出会った女の子のこと、小山に小屋を建てたこと、たくさんのコロボックルとの生活。そして本の最後の「矢印の先っぽのコロボックル小国!いつまでも静かな明るい国でいてくれ」という文章に「そうだそうだ!」とうなずきながら共感したのを覚えている。

しかし、そのほかのことはさっぱり覚えていないのだ。記憶のふがいなさに少々落胆し、子供の頃なぜこの物語に感動できたのかが気になって仕方がなかった。大人になった今はどのように感じるのだろうか?

通勤電車に乗っている短い時間を使って読んだので日数がかかってしまったが、読み進むうちに記憶がよみがえってきた。忘れたと思っても頭のどこかに残っているものなのだ。


佐藤さとる先生がこの物語でデビューしたのは31歳のとき。現代でも作家デビューする人は星の数ほどいるが、児童文学でデビューする人はほとんどいない。このように夢のある物語を30代の男性が書いていたことに今の時代にはない温かみを感じた。

物語は戦前に小学三年の男の子が近所の小山を探検しながら出会う風景やおばあさん、女の子のことから始まる。ふとした偶然で女の子が小川に落とした赤い靴の中に小人が乗っているを目撃してしまう。子供のときに経験した不思議な出来事が、美しい景色と一緒に忘れられない原風景となるのだ。

その後に起きた戦争のことが少ししか書かれていないのが今の僕には印象に残った。著者はこの苦難の時代を生き抜いてきた人なのだから。青年になった少年がどのような体験をしたのかは知るべくもない。小山で見かけた女の子が戦争が激しくなったために小山の近くに引っ越して少年と出会ったことが書かれている。


ふたたび小山を訪れた青年は電気技師になっており、子供の頃のことを思い出す。そしてどうしてもこの小山を所有したいと思うようになるのだ。とはいえ山を買えるほどの貯えはない。山の所有者にお願いして「借りる」ことでスタートをきった。仕事の合間に何度も小山に通い小屋を建ててそこに寝泊まりするようになった。

その小屋で青年は小人たちと再会し、彼らが住む小山を守り続けることを決意する。青年は小人たちから「せいたかさん」と呼ばれるようになった。

電気技師として働く彼は、とある幼稚園に仕事で呼ばれたことがきっかけで、そこで働く若い女の先生と知り合う。遠いむかしに会ったことのあるような気がしたその先生は子供のころ小山で出会った女の子だった。後に「おちび先生」と呼ばれることになるのだが、彼女もむかし小山で経験した不思議な出来事が忘れられずにいた。

「せいたかさん」と「おちび先生」は小山で経験した小人たちの思い出を共有することになる。他の人間には絶対に知られてはならない秘密だ。


続けたいところだが、ネタバレ過ぎるのでやめておこう。その後、このコロボックル国には危機が訪れるのだが青年と小人たちは協力して差し迫る困難に立ち向かうことになる。


物語すべてがよみがえってきて心地よかった。(認知症予防になると思った。)小人たちもそれぞれ個性豊かで生き生きと描かれている。子供の心をつかむ要素に満ちている。

小学生だった僕は家の中や庭に「秘密基地」を作るのが大好きな少年だった。物語の少年が自分だけの世界として見ていた小山や小屋は僕の思い描いていた基地そのものだったのだろう。小山を買って「所有する」ことも子供にはワクワクするような夢なのだ。そして僕は電気技師という職業にもあこがれた。

時を経て女の子と再会し、秘密を共有するような特別な関係になること。初恋とはまた違うやわらかな感情が小人たちと過ごす個人的な時間に広がりと安心感を与えている。いちばん大切な秘密を共有できる相手がいるという安心感だ。

読んだとき子供だったとはいえ、小人がいるなんて信じていなかったし、この本を読んで信じるようになったわけでもない。そのような僕でさえ熱中してしまったのは、このような感情にとらわれてしまったからなのだろう。

大人になって読んでみると、さすがにワクワク感は感じず懐かしさのほうが印象に残った。そして佐藤先生が戦後間もない時期にこのようにあたたか味のある物語をお書きになったことに想いを馳せると、現代の生活では忘れられてしまった大切なもの、それは子供たちに経験してほしい野山のことだったり、安心や信頼というような感情であったり、そういうものがたくさんあることを思い出させてくれるのだ。

その後3世代に渡って読み継がれている本をくださったことに感謝し、次の世代に引き継いで行きたいと思った。


佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。

1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行


コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html


講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人
コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子
コロボックル物語5 小さな国のつづきの話
コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

  

  

青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。

講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索

単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。


新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行

新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人

  

新イラスト版: Amazonで検索


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コロボックル物語1 だれも知らない小さな国



第1章:いずみ
第2章:小さな黒いかげ
第3章:矢じるしの先っぽ
第4章:わるいゆめ
第5章:新しい味方

あとがき(その1~その4)
解説:梨木香歩


以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ













有川版についている帯


高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳

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高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳」(Kindle版

内容紹介:
高校物理の最難関「電磁気」が完全にわかる。見慣れないたくさんの単位と式が、ドッと出てくる電磁気が、誰にでも見通し良く理解できる入門書。さらに、「マクスウェルの方程式」までわかってしまおう!
電気発見の歴史をたどりながら、電流、電圧、電界、磁界、磁束密度、静電容量…、そしてマクスウェルの方程式が見通しよく理解できる。電磁気学を学びたい人、学びはじめた人、しっかり原理を知りたい人の絶好の入門書。高校生から。
2002年9月刊行、224ページ。

著者略歴:
竹内淳:ホームページ: http://www.f.waseda.jp/atacke/
1960年徳島県生まれ。1985年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了。理学博士。富士通研究所研究員、マックス・プランク固体研究所客員研究員などを経て、1997年早稲田大学理工学部助教授、2002年より教授。専門は、半導体物理学。


理数系書籍のレビュー記事は本書で304冊目。

本書は3年以上前に読んだのだが紹介記事を書くのを忘れてしまっていた。「最初に読んだ理数系書籍200冊」でも数え落としていたので、今さらだがレビュー記事を書いておこう。このような本があと2冊ある。いま読んでいる本が分厚く、レビュー記事を投稿できるまで時間がかかるのでちょうどよいかもしれない。

本書は竹内淳先生の「高校数学でわかる~シリーズ」の中では最初に書かれれた本だ。2002年には刊行されていたので僕が理数系本の読書を始めた頃には出回っていたことになる。

本の存在は知っていたが「高校数学でわかる~」というタイトルを見ただけで易しすぎるかな?と誤解してしまって長い間手を出さずにいた。いつだったかたまたま書店で手にとってみて素晴らしさに気づき、慌てて読んだのと思う。

本書は次のような3部構成だ。

第1部:エレキの謎を探る旅
第2部:電磁気学の統合
第3部:旅の終わりに


第1部は電磁気学の発展史をたどる旅である。平賀源内のエレキテルやフランクリン、クーロン、ファラデー、アンペールなどの科学者がどのような実験をし、どのような法則を導いてきたかが紹介される。電気と磁気が見せるさまざまな現象を彼らはどのようにとらえていたのかを読者は追体験しながら学べるのがとてもよい。

高校や大学で使う教科書ではとかく事実や結果の記述だけに終わることが多いので暗記物になりやすい。人物像も含めて学ぶことで、楽しみながら理解や知識を身につけることができる。


第2部では第1部で導いた個別の法則を組み合わせて4本の式から構成される「マクスウェルの法則」をていねいに導出する。高校レベルの微分や積分が使われるが恐れることはない。ひとつひとつ解説されるので、数式のもつ意味と電磁気現象の対応が確実に理解できるようになるはずだ。

マクスウェル方程式は微分形で紹介されることが多いのだが、本書で導出されるのは積分形であることに注意いただきたい。初学者は混乱してしまうことがあるかもしれないが、どちらの形でも本質的には同じことである。



それぞれの式は次のような電磁気現象をあらわしている。




第3部は「旅のおわりに」と題して、議論にもとづく真理の探究、科学の国際会議での議論のあり方、科学の役割などのテーマについて竹内先生のお考えが述べられている。また、マクスウェル方程式によって電磁気学が完成して以降、物理学がどのように発展していったかということについて簡単な解説をして、本書をしめくくっている。


僕のように数式を含めて物理学を学んでみたい方には、うってつけの入門書だと思う。本書の刊行後、同じシリーズで他の分野の本も刊行されているので、本格的な教科書に挑む前に読んでおくとかなり低くハードルを下げることができると思う。

なお、本書は電子書籍でも読むことができるが「固定レイアウト」なのでタブレット端末でお読みになるのがよい。スマートフォンだとかなり読みづらいので注意していただきたい。


「高校数学でわかるシリーズ」の書籍版はこちらから。
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22?_encoding=UTF8&node=70

Kindle版: Amazonで検索


関連記事:

高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aa1e79d97684f88319d9d4e96e6a89a3

高校数学でわかる統計学:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ba393f6500440b20dd06c66dc2b800aa

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7


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高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳」(Kindle版



第1部:エレキの謎を探る旅

1 平賀源内の挑戦
- 謎の器械
- 1000年前の先輩
- エレキテルの中身
- 人間エレキテル
- 海の向こうのライバル
- 文明の最先端

2 クーロンの秘密兵器
- 琥珀の不思議な力
- 磁界のクーロンの法則

3 ファラデーの登場
- かえるの脚と磁石
- 製本職人の知恵
- 研究者と実験助手
- 遠隔作用とは異なる考え方
- 点電荷のまわりのクーロン力
- 電界の強さ
- 電圧とは

4 もう一人の天才、アンペール
- 電流のまわりの磁界
- アンペールの法則の別の表現--ビオ-サバールの法則
- 強い電磁石を作る方法
- 磁力の強さを表現する方法
- アンペールの力
- 電流の単位

5 最後の壁、電磁誘導
- 残された可能性
- Δφ/Δtの意味
- もっと正確な速度、それが微分
- IH
- 電磁気学をまとめあげる

第2部:電磁気学の統合

1 マクスウェルの方程式
- マクスウェルの方程式へのバージョンアップ
- ガウスの法則のありがたみを探る
- 静電容量
- 電極間の物質では何が起こっているのか
- コンピュータのメモリーの中身は?
- 磁気モノポールは存在しない
- マクスウェルの方程式の第2式
- アンペールの法則からマクスウェルの方程式の第4式へ
- マクスウェルによる拡張

2 電子のベール
- 電子の発見
- ローレンツ力

3 無限のバトンリレー
- マクスウェルの予言に迫る
- 電磁波と光の関係
- 電磁波の源となるアンテナ
- 電気から光への変換

4 エレクトロニクスへ
- オームの法則
- オームの法則が成り立たないもの
- RC時定数

第3部:旅の終わりに
- 議論に基づく真理の探究
- 国際会議の日本人
- 自由について
- もう1つの自由
- 科学の役割
- その後

付録
- ビオ-サバールの法則
- コンデンサーの電荷分布

あとがき
参考文献

高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳

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高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳」(Kindle版

内容紹介:
シュレディンガー方程式をなっとくして、ほんとうに理解できる!
最もわかりやすいシュレディンガー方程式の入門書
高校数学レベルの知識さえあれば、量子力学の最も重要な方程式 あのシュレディンガー方程式に到達できる!シュレディンガー方程式を理解しなければ、ほんとうに量子力学を理解したことにはならないのだ。『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の著者による待望の1冊。
2005年3月刊行、208ページ。

著者略歴:
竹内淳:ホームページ: http://www.f.waseda.jp/atacke/
1960年徳島県生まれ。1985年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了。理学博士。富士通研究所研究員、マックス・プランク固体研究所客員研究員などを経て、1997年早稲田大学理工学部助教授、2002年より教授。専門は、半導体物理学。


理数系書籍のレビュー記事は本書で305冊目。

本書は3年以上前に読んだのだが紹介記事を書くのを忘れてしまっていた。「最初に読んだ理数系書籍200冊」でも数え落としていたので、今さらだがレビュー記事を書いておこう。このような本があと2冊ある。いま読んでいる本が分厚く、レビュー記事を投稿できるまで時間がかかるのでちょうどよいかもしれない。

本書は竹内淳先生の「高校数学でわかる~シリーズ」の2冊目。2005年に刊行された。


電子や光子など素粒子の世界、ミクロの世界の物理法則は私たちが日常生活で経験しているマクロの世界の物理法則とは全く違う。それは粒子性と波動性の共存、二重スリットの実験や不確定性原理など常識では理解しにくい摩訶不思議な世界である。このように不思議な性質をもつ粒子のことを「量子」と呼ぶことにしたわけだが、結局あらゆる素粒子は量子だということになる。

人類がこの不思議な世界の存在にようやく気が付いたのは1920年代。プランクやアインシュタイン、ド・ブロイ、ハイゼンベルク、シュレディンガー、ボーア、ボルンらの研究によって徐々に明らかにされていった。この世界を構成する空間や時間、そしてエネルギーは無限に分割して小さくできるわけではなく、分割できるサイズには「プランク定数」と名付けた数であらわされる「小ささの限界」があることがまず発見された。(アインシュタインは量子論の生みの親のひとりであるが、その後この理論のあまりの奇妙さゆえに「神はサイコロを振らない。」と言って、量子論は不完全な理論であるという立場に転じ、1955年に亡くなるまでその信念を変えることはなかった。)

そして次にその不思議な世界を基礎づける方程式が、ハイゼンベルクとシュレディンガーによって別々に発見され、2つの方程式はそれぞれ量子の波動性と粒子性をあらわしていることが明らかになった。

ハイゼンベルクの行列力学の方程式 (1925年:ウィキペディアの記事


シュレーディンガー方程式 (1926年:ウィキペディアの記事


物理学者たちを驚かせたのはそれらの方程式に虚数iがあらわれていたことだ。大きさの概念がない、つまり大小関係をもたない数がなぜ物理の方程式に含まれているのか?(参考記事:「虚数や複素数に大小がないのはなぜ?」、「虚数は私たちの世界観を変えてしまった。」)


不思議な世界だからこそ、量子論や量子力学は魅力にあふれた分野なのだ。SFではない科学として知っておきたい、理解してみたいという欲求が知的好奇心をかきたてる。

とはいえ高校で数学や物理を学んでいない人が読めるのは、数式が書かれていない科学教養書だけである。やさしい本から難しい本までいろいろな本が出版されているが、僕がお勧めできる本を「量子論、量子力学の科学教養書」にまとめておいた。これらの本を読めば、量子の不思議な世界をひととおり「知る」ことができる。

しかし科学教養書で得られることはそこまでだ。なぜ不思議な世界がそのようになっているか?という、より深い理解を求めるためには、数式を使って学ぶしかないのである。大学の物理の教科書を読める人はごく限られているから、たいていの一般読者にはハードルが高すぎる。

でも「大学の教科書は無理だけど、高校の数学ならなんとかなるし、虚数オイラーの公式も知っているよ。」というレベルの人は少なからずいると思うのだ。

高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳」(Kindle版)はそのような読者を想定して書かれた。難しそうに見えるシュレディンガーの方程式も著者の竹内先生の手にかかれば物語を読むような感じで理解できるようになる。虚数やオイラーの公式がなぜシュレディンガーの方程式を導くために必要なのかがわかってくるのだ。

本書は数式を使ってシュレディンガーの方程式や量子力学を学ぶことができる入門書や教科書の中では、現時点でいちばんやさしい本である。

第1部でシュレディンガー方程式を導くのが目標だ。量子論が発見された歴史的背景、初期の量子論の発展史、理論に必要な複素関数や微積分の解説を行った後に、シュレディンガー方程式を導く。そして「ハイゼンベルクの不確定性原理」がシュレディンガー方程式から導けることも確認する。この原理は未来が不確定であることの理由のひとつでもあるのだ。(参考記事:「鉛筆はどれくらいの時間立っていられるか?」)

第2部では量子論によって明らかになった原子の姿が解説される。原子核の周りの電子の分布はとびとびになっていることを高校物理で学ぶが、量子論によってそのからくりが理解できるようになる。

そして第3部ではシュレディンガー方程式の解き方が2つのやり方(数式を使って筆算で解く方法とExcelを使って数値的に解く方法)で解説される。シュレディンガー方程式を使って解析的に解くのは井戸型ポテンシャルにおける「量子トンネル効果」という不思議な現象だ。次に同じ問題をExcelを使って数値的に解く。また量子井戸に外から電場がかかったときに、どのように状況が変化するかも数値的な計算方法と結果が提示されている。

量子トンネル効果



1920年代に誕生した量子論、量子力学は長い間「仮説」のまま研究が進んだ。最終的にその正しさが検証されたのは1982年に行われた「アスペの実験」によってである。この実験のことは「量子コンピュータ入門:宮野健次郎、古澤明」という本に詳しく載っているので、興味のある方はお読みになるとよい。


ミクロの世界の不思議がどのようにしてシュレディンガー方程式から説明されるのか?量子の世界のからくりを数式で理解できたと実感したとき、きっとあなたは物理学をもっと学んでみたいという気持にとらわれていることだろう。


なお、本書は電子書籍でも読むことができるが「固定レイアウト」なのでタブレット端末でお読みになるのがよい。スマートフォンだとかなり読みづらいので注意していただきたい。

正誤表や第3部で取り上げられている数値計算用のExcelファイルは竹内先生による「サポートページ」に掲載されている。


「高校数学でわかるシリーズ」の書籍版はこちらから。
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22?_encoding=UTF8&node=70

Kindle版: Amazonで検索


関連記事:

高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/36427fb8da7783c0a6986b46aac511c8

高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aa1e79d97684f88319d9d4e96e6a89a3

高校数学でわかる統計学:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ba393f6500440b20dd06c66dc2b800aa

高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7


以下は本書を読み終えた後、お読みになるとよい。読みやすくて得るものが多い本、ワクワクできる本をピックアップしておいた。

「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!:古澤明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/13b6c033f1ea5ef2b647e6eb1e374222

量子もつれとは何か:古澤明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/34a3c78d568e5df901611df3cbb96557

量子テレポーテーション:古澤明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3612f0a3b86c8a8a247fe138f473adb3

Excelで学ぶ量子力学―量子の世界を覗き見る確率力学入門:保江邦夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/94e607c5736fcce5effde4723ca5bb8b

目で見る美しい量子力学:外村彰
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1a00adb6963673d7a434b57cc58c0c81

趣味で量子力学:広江克彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3023098b9c5204d626808aa57823c16f

よくわかる量子力学:前野昌弘
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08beb004bf1a5c9e6f6192439045c120


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高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳」(Kindle版



第1部 シュレディンガー方程式への旅

1 量子力学の誕生
- 量子力学で扱う対象は?
- 量子力学の夜明け
- 溶鉱炉の温度をどうやって測るのか?
- プランクの提案
- アインシュタインの登場
- 光は波なのか、それとも粒子なのか?
- 光子の運動量
- hからhバーへ
- 電子も波である
- 光子計数器(フォトンカウンター)による観測
- 電子の二重スリットの実験

2 波を表す式
- マイナスxマイナス
- 波を表すのに便利な虚数
- オイラーの公式
- 波の絶対値の2乗
- 波動関数
- 簡単な微分

3 シュレディンガー方程式
- シュレディンガー方程式を導く
- 時間に依存するシュレディンガー方程式
- 物理量の求め方
- ブラケット表示
- 可換な演算子
- 不確定性関係
- パルスの秘密
- フーリエ変換

4 波動関数とは
- 時間に依存しないシュレディンガー方程式の解の形
- 規格化条件
- 電子のエネルギーを求める
- 波動関数の直交性
- 方程式発見までのシュレディンガー

第2部 原子の姿

1 波としての電子
- 電子の発見者トムソンの原子モデル
- 散乱
- ラザフォード-長岡モデルの矛盾
- 原子のモデルの複雑化
- シュレディンガーのインド哲学

2 量子数とはなにか
- 水素原子
- 土星モデルによる磁気量子数の説明
- シュテルンとゲルラハの実験
- スピンの提案
- スピンの歳差運動
- スピン軌道相互作用
- パウリの排他原理
- フェルミ粒子とボース粒子
- 電子と光子

3 核と核分裂
- 質量と電荷の矛盾
- 原子核の中の力
- 同位原子
- 半減期
- 核分裂の発見
- 原子爆弾の開発

4 エレクトロニクスと量子力学
- 量子力学が実際に役立っている分野
- スピントロニクス
- 量子コンピューティング
- 量子力学の重要性

第3部 シュレディンガー方程式を解く――計算編

1 解析的に解く
- 紙とペンを使った解き方

2 数値的に解く
- コンピュータ(パソコン)を使って解く
- 数値計算の実際

3 外からの影響がある場合
- 外場がかかった場合
- 量子井戸に電場がかかった場合
- 定常状態での摂動論
- シュタルク効果の場合
- 時間に依存する摂動論
- おわりに

付録
- 波動関数の直交性
- 分散とは

あとがき
参考文献
さくいん

豆つぶほどの小さないぬ: 佐藤さとる、村上勉

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コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ

内容紹介:
ぼくはクリノヒコ。身長3センチ2ミリ。コロボックルの中では大きいほうだ。ぼくたちの国で新聞を出す話をしているときに、大ニュース。先祖が飼っていた豆つぶくらいの小さないぬ“マメイヌ”が、今も生きているかもしれないという。創刊号はこのスクープだ!日本が誇る傑作ファンタジー。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。

著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。

村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。


第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」に続き、第2巻も読んでみた。記憶が確かならば幼いころ、この巻がいちばん興奮して読んだのだと思う。

「せいたかさん」と「オチビ先生」はその後めでたく結婚し、小山に建てた小屋で大ぜいのコロボックルと暮らし始めた。せいたかさんは電気技師なので、小屋の電気設備も自分で作ることができる。第1巻で子供だったコロボックルもこの頃には成長し、大人のコロボックルとして「小国」を守るために、それぞれの役割を果たすようになっていた。

第2巻の話は「マメイヌ探し」である。コロボックルはアイヌ民族の伝承として伝えられてきたわけだが、コロボックルたちにも昔から伝えられている伝承があった。それは彼らよりも小さい犬のことで、大昔のコロボックルはその犬を飼いならしていたのだという。マメイヌはコロボックルよりもずっとすばしっこかったそうだ。しかし、いまはもうその生き残りさえ見られなくなっていた。

ところがある日、風に飛ばされたコロボックルの男が、そのマメイヌらしき生き物と遭遇したのだ。もしかしたらマメイヌはいまでも生きていて、どこかに潜んでいるのかもしれない。そのように思ったコロボックルたちは、せいたかさんやママ先生(オチビ先生のこと)に協力をあおいでマメイヌ探しを始めることになる。果たしてマメイヌは見つかるのだろうか?彼らはマメイヌを捕獲するためにカタツムリの殻で作った罠をしかけることにした。

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コロボックルたちは「通信社」を立ち上げ、彼らだけの新聞を発行するのだという。その創刊号にはぜひ「マメイヌ発見!」という記事を載せたいと思っていた。


第2巻の内容は6割ほど覚えていた。子供だった頃の僕をワクワクさせた要素もいくつか見つかった。

まず、せいたかさんがコロボックルたちにプレゼントしたのが使わなくなった郵便ポストである。彼らはこれを改造して「事務所」にしたのだ。1階には新聞を印刷するための部屋もある。各部屋には電気を引き、豆電球の照明を取り付けた。電気はそのままだと容量が大きすぎるので、せいたかさんは「変電所」も彼らに作ってあげる。コロボックルたちの街が小屋の中にいくつもできはじめた。

ミニチュアの部屋に豆電球の電灯をつけることに、僕は喜んだのだろう。模型やプラモデルに興味を持つ年頃だったから。今でもドールハウスとか一部のマニアには人気があるようだし。

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そして次に面白かったのが印刷機である。当時は活版印刷の時代だ。せいたかさんは彼らの新聞を印刷するために「ルビ」用の活字をたくさん用意する。差し当たりひらがなだけの新聞になってしまうが、そのうち漢字の活字の作り方も教えたいと考えていた。

さらにいちばんワクワクしたのが、せいたかさんがコロボックルや近所の少年にプレゼントした「手作りラジオ」である。当時のラジオは真空管式だ。

小学5年生のとき僕の家は建て替えをしたのだが、建築中の3カ月間は隣の区にある親戚の家に間借りをしていたことがある。その家には息子さん(当時は会社員になっていて別の家で暮らしていた)が使っていた部屋があり、真空管ラジオ製作のための入門書が本棚に1冊あった。おそらく彼が大学生の頃に読んだ本なのだろう。それ以外の本はサマセット・モームの「月と六ペンス」やカフカの「変身」など外国の小説がほとんどだったから、本棚全体としては「文系」の香りがしていた。

その中に1冊だけあったラジオ製作の本。僕はわからないながらも「すごいなー。」と飽きることなく眺めていた。僕もいつかラジオを作ってみたいと思っていたことを思い出した。その後、中学生になって一時期、電子工作に熱中したことがあるのだが、1つだけトランジスタラジオを作ったことがある。あと技術家庭科の授業でも1台作ったことを思い出した。こちらはラジオ製作用のキットだったので簡単だった。

そのようなわけで第2巻にでてくる真空管ラジオは、僕にとって特別なものだった。現代では真空管マニアは知り合いにもいるし、それはレトロ趣味、オーディオマニアだったりすることが多いわけだが、この物語の舞台となった時代では最新式の電子部品である。いまこの物語を読むと当時の電子工作マニアの世界が彷彿としてきて、もう一度電子工作やってみようかという気分になるのだ。

懐かしい真空管ラジオのページ
http://www.asahi-net.or.jp/~hp6y-isym/


引き続き第3巻を読むことにしよう。


佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。

1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行


コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html


講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人
コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子
コロボックル物語5 小さな国のつづきの話
コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

  

  

青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。

講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索

単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。


新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行

新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人

  

新イラスト版: Amazonで検索


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コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ



第1章:コロボックル通信社となかまたち
第2章:コロボックル通信社は動きだした
第3章:コロボックル通信社の事務所
第4章:コロボックル通信社が見つけたこと
第5章:コロボックル通信社に春がくる

あとがき(その1~その3)
解説:有川浩


以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ













有川版についている帯

発売情報: Le Petit Robert 仏仏辞典 2017年版

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今日はフランス語上級者に向けた記事。2017年版のLe Petit Robert 仏仏辞典が発売された。収録語数は30万語。

この辞書は毎年改訂され、この時期に発売されるフランス人にとっての「広辞苑」である。今年も新しい版が発売された。送料はかかるがフランスのアマゾンサイトから購入できる。(日本のアマゾンサイトでは品切れ状態)


Dictionnaire Le Robert(オフィシャルサイト)
http://www.lerobert.com/


デスクサイズ(標準サイズ)
Dictionnaire Le Petit Robert 2017
17.8 x 7.1 x 25 cm
2880ページ



大型サイズ
Dictionnaire Le Petit Robert 2017 - Grand format
20.9 x 7 x 29 cm
2880ページ



そして2017年版の「固有名詞辞典」も発売された。こちらはデスクサイズのみ。

デスクサイズ(標準サイズ)
Dictionnaire Le Petit Robert des noms propres 2017
17.2 x 7.1 x 24.7 cm cm
2700ページ



Le Petit Robert仏仏辞典には固有名詞辞典をはじめ、さまざまな種類がある。これらは欧明社からお買い求めなるとよいだろう。

欧明社(フランス語書籍専門)
http://www.omeisha.com/


アプリ版:

このLe Petit Robert仏仏辞典はDixel mobileという名前でスマートフォンアプリ版、iPad版が発売されている。収録語数は12万6千語。これは2014年版のLe Petit Robertが元になっている。iPad版は図版有り。

Dictionnaire Le Robert Mobile: iPad版 Android版

またiPad版については2014年版のLe Petit Robert仏仏辞典がアプリとして購入できる。こちらは高い。: iPad版

注目!
そして2015年9月にはiPhone/iPad向けに「Dictionnaire Le Robert Mobile : 4 en 1」という辞書が720円で発売されている。いま購入するのなら、これがいちばんよいと思う。


関連記事:

発売情報: Le Petit Robert 仏仏辞典 2016年版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8fdf56d04194935a37c69e7a13782781

発売情報:カシオ電子辞書 XD-Y7200(2016年フランス語モデル)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c669bb0fc557fcc81017d3323ecbb5e8

小学館ロベール仏和大辞典(iPhone / iPad アプリ)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/02af8bb1e929b8f415f7efc32a92bd56

ロワイヤル仏和中辞典(辞書談義)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aed33d08239da123dcc66c5ec08f0bc7

無料のオンライン仏和・和仏辞典を発見!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b3cae83cd882dd93d5efb788c1ac1498

ファインマン物理学: 英語版とフランス語版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1dbcd1e1b02616ef1363ced99a912072

発売情報: フランス語版「ファインマン物理学」の新版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf630deb00e6c315897d6f47ba3dd5a


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熱病を発症(天文熱と電子工作熱)

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スティーブン・ワインバーグ博士がお書きになった「科学の発見」や佐藤さとる先生の「コロボックル物語シリーズ」を読み進めているところだが、その中に天文学や自作の真空管ラジオ製作のことが書かれていたので、つい昔を思い出して趣味の「天文熱」と「電子工作熱」の病気を同時発症させてしまった。

本を少し読んでは天文や電子工作のことが気になってホームページを見たりツイートしたりして妄想にふけっている始末。妄想読書は熟読、精読よりも格段にペースが落ちる。このままではいつまでたっても次の本の紹介記事が書けなくなってしまう。はやく治さなければ。。。


天文熱の症状と緩和治療

天体望遠鏡を買って星空や惑星、月などを観測したり、電卓を叩いて天文計算をしたくなるのが主な症状だ。今の生活でそのように趣味を広げる時間的余裕はない。とりあえず、次のような本を読んで症状を緩和することにした。眺めているだけで熱はある程度下げることができるのである。

広告を見たらよけい症状が悪化するのでは?という心配をされる方もいるだろうが、治療は「毒をもって毒を制する」という考え方で行う。

昨日次のような薬を買っておいた。

月刊 星ナビ



星ナビのホームページ
http://www.astroarts.co.jp/hoshinavi/

今月末に火星が地球に中接近するそうで、その特集記事が面白い。あとは天体望遠鏡メーカーの宣伝、読者や専門家の望遠鏡や機材の解説(自慢話?)記事。


月刊 天文ガイド



月刊天文ガイドのホームページ
http://www.seibundo-shinkosha.net/tenmon/

中学から高校にかけてお世話になった懐かしい天文専門誌。電子版でも販売されるようになったので最新号をダウンロードしておいた。こちらのほうが「星ナビ」よりも専門的で、天体望遠鏡の広告も多い。電子版はスマホやタブレット端末からアプリをダウンロードしてから購入する形。


天文年鑑



一年分の天文カレンダーをおさえておこうと思って買ってみた。最後に買ったのは1978年あたりだったか。昔買ったときより2倍くらい厚くなっている。天体撮影に適した最新のデジカメやCCDの性能や特性曲線の資料は僕が中学、高校時代の同書にはなかった項目だ。


関連ページ:

無料で治療をしてくれる専門病院はこちら。

天文リンク(AstroArts)
http://www.astroarts.co.jp/link/ja/

天文リンク集(東洋天文同好会)
http://touyouten.sakura.ne.jp/links.html

天体観測に役立つリンク集(Vixen)
http://www.vixen.co.jp/at/at-link.htm

天文リンク集(HIR-NET)
http://www.hir-net.com/link/astro/

天文リンク集(Star Stars)
http://star-stars.rgr.jp/links.html



電子工作熱の症状と緩和治療

天文熱よりやっかいなのが電子工作熱である。症状が悪化してしまうと僕の場合は「電卓熱」を併発してしまうからだ。一日中、昔の関数電卓やプログラム電卓のことに気を取られ「ヤフオク」の底なし沼から抜け出せなくなってしまう。早めに治療しておくことが何よりだ。

とりあえず、次のような薬で治療を始めた。

学研電子ブロックのひみつ―EX‐150復刻版のすべてがわかる



学研電子ブロックEX-150の詳細
http://otonanokagaku.net/products/kit/ex150/detail.html


学研電子ブロックEX-150入門セットガイドブック付」という商品に含まれていた本。

単品でも販売されていたが絶版状態なので、今では高値で売られている。幸い昔買った本が手元にあったので読んでみた。

電子工作は回路を理解せずに行なってもほとんど意味がない。それじゃ回路の勉強をしてみようと、これまで「電子工学」のカテゴリーで紹介したような本で学んでみた。しかし、これらで学べるのは電子機器のモジュールの一部の回路ばかりなので楽しみや達成感に欠ける。

アナログ回路の設計まではできなくてもいいから、とりあえずしくみは理解してみたい。そのようなニーズに応えてくれるのが本書なのだ。4分の1ほど読んだが不思議なくらいよくわかる。もっと早いうちから読んでおけばよかったと思った。(本書の目次

この本の良いところは、同じテーマ(たとえばアンプ)に対していくつかの回路を紹介していることだ。原理を説明するための初歩的な回路を開設し、次はそれを改良した回路、その次はトランスや電界コンデンサなど大きい部品を使わずに回路の小型化をはかるなど、回路自体が少しずつ変化し、部品点数が増えていく。このように順にたどっていくと、前のページで理解できなかったことが後のページで理解できたりして「ああ、こうやって回路を作り上げていくのだな。」と実感できるようになるのだ。

とりあえず、昨夜学んだ回路のうち印象的だったのが「CR結合回路」というアンプの回路だ。画像はクリックで拡大する。



この回路をブロックで組み立てると次の図のようになるのだ。リード線のブロックを始め、いくつかは不要な配線がでてしまうのと、マス目に従ってブロックを配置しないとならないので、回路図とはずいぶん様子が違って見える。これが電子ブロックの難点なのだが。「学研マイキット」のように自分で配線するタイプの製品でも配線がぐちゃぐちゃになってしまい、「回路の見え方」という意味では電子ブロックのほうがマシだと思う。このタイプの電子回路キットの限界なのだろう。




復刻新装版 学研電子ブロック EX-150



学研電子ブロック関連商品を一括検索: Amazon ヤフオク

電子ブロック本体も2年前に「新装復刻版」が発売されたので買いやすくなったようだ。僕はヤフオクなどで入手した「復刻版」、「電子ブロックmini」を持っているので、近いうちに遊んでみよう。ハンダごてや電子工作キットを買うのはそのあとだ。


関連ページ:

無料で治療をしてくれる専門病院はこちら。

趣味の電子工作リンク
http://www.nahitech.com/nahitafu/eleh.html

電子工作関連サイトへのリンク - 電子工作の実験室
http://www.picfun.com/sitejhw.html

電子工作リンク
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-SanJose/9496/eleclink.html

電子工作リンク
http://bake-san.com/denshi.htm

電子工作リンク
http://hp.hana-neko.com/electro/electro/ellink.htm


この2つの病気は完全に治ることがない。それはおそらく僕が1970年代後半に中学、高校時代を過ごした世代だからなのだろう。その頃は「電子立国日本」という言葉が象徴しているとおり、目に見える形でエレクトロニクス技術が発展し、電子産業を中心に経済が実体を伴って急成長していた時代だ。そして天文学も月探査や惑星探査、X線観測、赤外線観測が実を結び始めた時代である。

もし現在中学生、高校生になるというタイミングで僕が生まれていたとしたら、同じような病気にかかっていただろうか? 今と昔では環境が全く違うわけだから。それから数十年して大人になった僕はどのような病気にかかっているのだろうか? ふとそんなことを思った。


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帽子の好みは変わらない!?(下北沢、タバサ)

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昨夜のウォーキングの途中で帽子を2つ買ったのだが、帰宅してからある発見をすることになった。

本業の仕事のほうが忙しく、平日はほとんど勉強や読書の時間がとれていない。それでも夕食後のウォーキングだけは優先して行なっている。毎晩ほとんど同じルートを歩くので、いつもこの店に差しかかると道路に面して置かれている緑色のストローハットが気になっていた。

タバサ(下北沢)
http://www.shimokitazawa.org/contents/tenpo/hyousi/tabatha.htm

クリックで拡大



帽子をかぶりたいと思い始めたのは、おそらく「東京センチメンタル」という妄想オヤジ系のドラマを見ていたせいだ。

ドラマ24「東京センチメンタル」:テレビ東京
http://www.tv-tokyo.co.jp/tokyo_sentimental/

他の色のもあるので、もしかしたら緑以外を買ったほうがよいかもしれない。なかなか踏ん切りが付かずにいつも前を通過するだけだった。

たまたま昨夜は中にいた店員さんと目が合ったのでアドバイスをもらうことにした。自分の好みはわかっているけれども自信がない。店員さんの目から見て似合っているかどうか教えてもらうためだ。

お気に入りの緑色を含め、似合いそうなのを試してみた。茶色や麦わら帽子色のようなオジサンっぽいのは無難だが、かぶってみると似合わなかった。

「明るい色のほうが似合いますよ。」

という店員さんがすすめてくれたのは白のストローハット。白のは緑の次に似合うと言っていた。

「あ、本当ですね!気に入りました。」

結局、緑と白のストローハットを買って、緑のほうをかぶって店を出た。


ところが家についてから、あることを思い出してハッとした。(ダジャレではありません。)

7年前に「自分の顔写真を公開!」という記事で、幼少期の写真を掲載したのだが、当時僕がかぶっていた帽子が同じ2色なのだ。。。緑色のほうは幼稚園の制服なので自分で選んだ色ではないわけだが、当時から僕はこの2つの帽子に馴染んでいて、かなり気に入っていた。






昨夜買った2色は自分の意志で決めたつもりだ。しかし、幼児のころに刷り込まれた深層心理が働いていたのかもしれないと思うと可笑しい。


関連記事:

いただいた帽子
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cbac425dd70c013c45220c92a898d50b


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高校数学でわかるボルツマンの原理:竹内淳

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高校数学でわかるボルツマンの原理:竹内淳」(Kindle版

内容紹介:
熱力学と統計力学は、重要な物理学の分野です。しかし「ちゃんと理解していない分野」の代表でもあります。定義は簡単だけれど、もうひとつよく解からないエントロピー。統計力学からエントロピーを導いたボルツマンの原理。どことなく違和感を感じていた熱力学と統計力学を、納得して理解できるように解説します。
2008年11月刊行、224ページ。

著者略歴:
竹内淳:ホームページ: http://www.f.waseda.jp/atacke/
1960年徳島県生まれ。1985年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了。理学博士。富士通研究所研究員、マックス・プランク固体研究所客員研究員などを経て、1997年早稲田大学理工学部助教授、2002年より教授。専門は、半導体物理学。


理数系書籍のレビュー記事は本書で306冊目。

本書は3年以上前に読んだのだが紹介記事を書くのを忘れてしまっていた。「最初に読んだ理数系書籍200冊」でも数え落としていたので、今さらだがレビュー記事を書いておこう。


本書は竹内淳先生の「高校数学でわかる~シリーズ」の4冊目。2008年に刊行された。
本書を書店で見つけたときに思ったのは「え、なんで熱力学と統計力学がこんなにコンパクトな本にまとまってしまうの?」ということ。どちらも学ぶことがたくさんある上に、物理学を専攻する学生にとっても苦手意識をもつ人が多い分野だからだ。それがたった200ページあまりの小型本で学ぶことなどできるはずがない。でもこれまでに読んだ竹内先生の本は2冊とも素晴らしかったし、この本はいったいどうなのだろう?

章立てはこのようなものだ。一応熱力学っぽいこと、気体分子運動論、統計力学、ボルツマンの原理は確かに含まれている。

第1章:天を目指す人々
第2章:夢のエンジン
第3章:エントロピーって何だ?
第4章:気体分子運動論――ミクロの世界で何が起こっているのか
第5章:統計力学の世界へ
第6章:ボルツマンの原理――統計力学の中核へ

疑い半分、期待半分で読み始めたのだが、第1章では熱気球の話を導入として気体で成り立つシャルルの法則やボイルの法則が解説されている。アボガドロ数が導入され理想気体の状態方程式など高校で学んだことの復習っぽい内容だ。第1章だけで50ページも割いているので「この後はだいぶ圧縮されてしまうのではないか?」と他人事ながら心配になっていた。

第2章から面白くなってきた。蒸気機関のしくみを説明しながら熱力学の話が始まる。熱量とエネルギーの関係、熱力学第1法則、熱量と比熱、カルノーサイクル、等温過程と断熱過程、可逆過程と不可逆過程など。ここまででページ番号は100ページになっていた。説明は確かにわかりやすい。「でもこんな悠長なペースで進んで大丈夫なの?」という気もしていた。

第3章はエントロピーの話。熱力学第2法則だ。ここは面白い部分である。純粋に熱力学の系の中だけで展開する。その後、ヘルムホルツの自由エネルギー(F)、化学ポテンシャル、ギブズの自由エネルギー(G)とそれらの間の関係式が導かれる。この時点でページ番号は130ページあたり。解説のペースがあがっているが、じゅうぶんわかりやすい。竹内先生さすがだ。。。

第4章からようやく統計力学のための準備が始まる。まずは「気体分子運動論」だ。エネルギー等分配の法則、気体の圧力、気体分子のエネルギーが計算され、ボルツマン定数を導入してから気体分子の平均スピードや比熱を計算する。次にブラウン運動の計算をするために指数や対数の計算のおさらいをする。第4章が終わって155ページになっていた。残すところあと70ページで統計力学が解説しつくせるのだろうか?

第5章が統計力学の本編である。マクスウェル・ボルツマン分布を理解するために必要
な気体分子の状態の数え方をまず学ぶ。図版が多いのでとてもわかりやすい。状態数、つまり「場合の数」って文字だけで説明すると理解しにくいものだから。その後、分配関数が導入され気体のエネルギーを計算する。これと熱力学の内部エネルギーの関係を述べて2つの理論(熱力学と統計力学)のつながりが理解されるようになる。さらにこの章では古典統計力学だけでなく、量子統計力学の入門までされている。つまりフェルミ粒子やボース粒子が従う「フェルミ・ディラック統計」や「ボース・アインシュタイン統計」のことだ。そしてこの統計に従うと「ボース・アインシュタイン凝縮」という量子力学的現象が説明されることが解説されている。

第6章は196ページから始まるのだが、この章で統計力学の中核、「ボルツマンの原理」が解説される。熱力学で定義されるエントロピー「S」と統計力学で定義される場合の数「W」の間に成り立つ関係式だ。



ボルツマンが導いたこの偉大な式は、天下りに紹介されることが多いのだが、本書では果敢にも手順を踏んで導出している。「初めて学ぶ人がこの計算手順を理解したら感動するだろうなぁ。」と思った。

その後、統計学の「中心極限定理」を説明した後、「ミクロカノニカル分布」についての紹介が簡単にされて本書がしめくくられる。一般的な教科書ではこの後「カノニカル分布」と「グランドカノニカル分布」を学ぶのだが、本書ではこの3種類の分布の解説は省略されている。ページ数の制限を考えれば無理のないことだ。

ミクロカノニカル分布: 狭い適用範囲の分布(孤立系)
カノニカル分布: 標準分布(温度一定:等温)
グランドカノニカル分布: 広い適用範囲の分布(等温で粒子のやりとりあり)

このあたりのことを学ぶためには、この記事の最後に紹介する統計力学の教科書をお読みになるとよい。無料で学びたい方には「EMANの熱力学」や「EMANの統計力学」をお勧めする。


また、熱力学や統計力学は多変数の偏微分全微分の数式がたくさん使われる分野だ。数式は一見手ごわそうに見えるが、慣れてしまえば何のことはない。このような数式も図版入りで説明されているので微積分を学んだ高校生なら理解できると思う。


コンパクトな本にもかかわらず、これだけ豊富な内容を含み、読み応えがあり楽しめる本に仕上がっていることに竹内先生の解説力のすごさを思わずにはいられなかった。

本格的な教科書に取り組む前に読んだほうがよい本、授業で学んだのだけどよく理解できなかった人を救済する本である。ぜひお読みになっていただきたい。


なお、本書は電子書籍でも読むことができるが「固定レイアウト」なのでタブレット端末でお読みになるのがよい。スマートフォンだとかなり読みづらいので注意していただきたい。


「高校数学でわかるシリーズ」の書籍版はこちらから。
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22?_encoding=UTF8&node=70

Kindle版: Amazonで検索


関連記事:

高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/36427fb8da7783c0a6986b46aac511c8

高校数学でわかるシュレディンガー方程式:竹内淳
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高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
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高校数学でわかる統計学:竹内淳
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高校生にお勧めする30冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f79ac08392742c60193081800ea718e7


以下は本書を読み終えた後、お読みになるとよい。「高校数学でわかる~」シリーズの次に読めるような易しい本をピックアップしておいた。

はじめて学ぶ物理 [熱力学]: 野田学
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/357c6de68655e6d435fa47909f8b055a

熱力学を学ぶ人のために: 芦田正巳
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22/detail/4274067424

統計力学を学ぶ人のために: 芦田正巳
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ff7a54088c9ea6fd8d6a3b2ab88c9263

フェルミ熱力学:エンリコ・フェルミ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/216e71aa30d5376730170863b5f9070a


次の2冊は実用的な問題を解くことを重視した、ユニークな熱力学の教科書だ。どちらも僕のお気に入り。

現代の熱力学:白井光雲
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75ea63d19b1108d479a1cecb6df618f3

図解 熱力学の学び方 (第2版):北山直方
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f48fd3b842e6330e42fe682dd680e315


中級者以上の方は田崎清明先生の教科書をお読みになるとよい。

熱力学―現代的な視点から(田崎 晴明著)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b4897aa001b274d176c3d676f691ced2

統計力学〈1〉(田崎 晴明著)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/617948cd72bf22f297e999a40f63743b

統計力学〈2〉(田崎 晴明著)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bb7189e7f9437ef342757a9199863e8a


上級者の方は久保亮五先生の名著がよい。僕もいずれこの本にじっくり取り組んでみたいと思う。

大学演習 熱学・統計力学
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22/detail/4785380322


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高校数学でわかるボルツマンの原理:竹内淳」(Kindle版



まえがき

第1章:天を目指す人々
- 気球に魅せられた科学者たち
- 気球を浮かせるものは何か?
- 簡単なシャルルの法則の実験
- 気体をミクロの視点で考える=気体分子運動論
- シャルルの法則を気体分子運動論で理解する
- ボイルの法則の気体分子運動論による理解
- ボイルの法則とシャルルの法則の統合
- アボガドロ
- 1molの気体、1molの液体
- 窒素による酸欠事故
- 熱気球と水素気球の浮力比べ
- 気球競争のその後
- 高空での気圧
- パスカルとPa
- ジェット旅客機の巡航高度
- 現代の気球の活躍

第2章:夢のエンジン
- 熱のやりとりとエンジン
- ワットによる改良
- 熱機関
- 熱量とエネルギーの関係
- 熱力学第1法則
- 気体の膨張による仕事
- 気体の内部エネルギーとは何か
- ゲイリュサック・ジュールの自由膨張の実験
- 熱量と比熱
- 定積比熱と定圧比熱の関係
- カルノー
- 等温過程
- 断熱過程
- 高空での気温と断熱過程の意外な関係
- カルノーサイクル
- カルノーサイクルでした仕事
- 体積Va, Vb, Vc, Vdの間の関係
- カルノーサイクルの効率
- 様々なエンジンの効率
- 地球温暖化との闘い
- 可逆過程と不可逆過程
- カルノーサイクルを逆回転したら?

第3章:エントロピーって何だ?
- エントロピーの登場
- エントロピーは増えたり減ったりする
- エントロピー増大の法則
- 熱力学の第2法則は二十面相
- 熱力学の番外法則
- 自由エネルギー
- 2つの系が接触したときの平衡状態の条件は?
- 総体積が一定の場合
- 化学ポテンシャル
- 大きな系の中に入った小さな系の向かう方向とは
- 自由エネルギー最小の原理
- 宇宙の熱的死

第4章:気体分子運動論――ミクロの世界で何が起こっているのか
- エネルギー等分配の法則
- 気体の圧力
- 気体分子のエネルギー
- ボルツマン定数
- 気体分子の平均スピード
- 気体の比熱
- 固体の比熱
- 気体分子運動論の闘い
- ブラウン運動
- 指数と対数

第5章:統計力学の世界へ
- マクスウェル・ボルツマン分布
- 気体っ分子のエネルギー分布を考える
- 簡単のために数を減らして考えよう
- 最も起こりやすい分布を探す
- ラグランジュの未定乗数法
- 分配関数
- 気体分子のエネルギー分布
- マクスウェル・ボルツマン分布の対象
- マクスウェル・ボルツマン分布に従わない粒子
- フェルミ粒子とボース粒子の奇妙な性質
- フェルミ・ディラック分布の性質
- フェルミ分布をニュートン力学的粒子でたとえると
- ボース・アインシュタイン凝縮

第6章:ボルツマンの原理――統計力学の中核へ
- エベレストの3つの断崖
- 中心極限定理
- ミクロカノニカル分布

付録
- P-V図でのエントロピー
- クラウジウスの不等式

あとがき
参考文献・参考資料
さくいん

科学の発見: スティーブン・ワインバーグ

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科学の発見:スティーブン・ワインバーグ」(Kindle版

内容紹介:
ギリシャの「科学」はポエムにすぎない。物理こそ科学のさきがけであり、科学の中の科学である。化学、生物などは二等の科学だ。数学は科学ではない―。1979年のノーベル物理学賞を受賞した著者が、テキサス大学の教養課程の学部生にむけて行っていた講義のノートをもとに綴られた本書は、欧米で科学者、歴史学者、哲学者をも巻きこんだ大論争の書となった。「美しくあれかし」というイデアから論理を打ち立てたギリシャの時代の哲学がいかに科学ではないか。アリストテレスやプラトンは、今日の基準からすればいかに誤っていたか。容赦なく現代の科学者の目で記述することで、「観察」「実験」「実証」をもとにした「科学」が成立するまでの歴史が姿を現す。
2016年5月刊行、428ページ。

著者について:
スティーヴン・ワインバーグ: ウィキペディアの記事
1933年、アメリカ生まれ。理論物理学者。カリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学などを経て、現在はテキサス大学オースティン校の物理学・天文学教授。量子論の統一理論への第一歩となる、「電磁力」と「弱い力」を統合する「ワインバーグ=サラム理論」を1967年に発表し、79年にノーベル物理学賞を受賞する。専門にとどまらない深い教養を備え、一般向けにも多数の著作を発表する、現代で最も尊敬される科学者のひとり。

訳者について:
赤根洋子
翻訳家。早稲田大学大学院修士課程修了(ドイツ文学)


理数系書籍のレビュー記事は本書で307冊目。

いま注目されている科学教養書である。本書のことは4月のはじめに大栗博司先生がお書きになった「現在の基準で過去を裁くこと」という記事を通じて知った。日本語版が5月中旬に発売されたばかりである。英語版が発売されたのが今年の2月だったことを考えると、大急ぎで翻訳されたことがわかる。

400ページ以上ある英語版を大栗先生は「あまりに面白いので二晩で読んでしまいました。」ということなのだが、僕は日本語版でも読むのに2週間かかった。つまらなかったからではなく、話題になっている本だけに慎重に読んだほうがいいぞ、というわけで熟読したからだ。

本書はテキサス大学で文系の学生を対象にワインバーグ博士が10年に渡っておこなった物理学史、天文学史の講義をまとめたものである。

本書のことはすでに文藝春秋社のホームページに紹介ページやワインバーグ博士との対談に掲載されているし、大栗先生のブログ記事でも紹介されている。また本書の巻末に大栗先生がお書きになった解説の全文は「なぜ、現代の基準で過去を裁くのか」として公開されている。あと日本とアメリカのアマゾンのページに投稿されている読者レビューも読んだ。僕はこれらすべてを読んだ上での紹介や感想を書くことにしよう。

『科学の発見』スティーヴン・ワインバーグ 赤根洋子訳 | 単行本 - 文藝春秋
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163904573

科学は間違いながら進歩した | 特集 - 文藝春秋WEB(ワインバーグ博士との対談)
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/1885

現在の基準で過去を裁くこと: 大栗博司のブログ
http://planck.exblog.jp/23837336/

「科学の方法」の発見 : 大栗博司のブログ
http://planck.exblog.jp/23859098/

科学の発見: 大栗博司のブログ
http://planck.exblog.jp/25589621/


次のような項目に分けて紹介する。

- 読後の印象と感想
- 科学史を学ぶための本として
- 現在の基準で過去を裁くこと、確信犯であることについて
- 化学、生物学、数学について、医学と数学について
- 科学の進歩を妨げるもの、衰退させるものについて
- デカルトやニュートンについて
- 本書に対する読者の反応、評価(日本とアメリカ)


読後の印象と感想

本の帯には「本書は不遜な歴史書だ」と書かれているが、それほど不遜だと僕は思わなかった。老練な紳士が穏やかに批判しているというのが読後の印象だ。

ワインバーグ博士のしたことは裁定であって糾弾ではない。本のキャッチコピーが過激なため、必要以上に論争を引き起こしてしまったのだなと感じた。亡くなった科学者、哲学者を糾弾したところで何の意味もない。彼らを裁定することで、現代そして今後、科学者はどのように進むべきかという道しるべやヒントを得ようとしているのではないか。そのように僕は感じた。


科学史を学ぶための本として

科学史にうとい方、文系の方がお読みになるのには分量も内容もちょうどよい本である。僕はたまたま昨年の末から山本義隆先生がお書きになった科学史の本を4冊、その関連で高瀬正仁先生がお書きになった微積分学の発展史の本を2冊読んでいるわけだが、これらは大学教養課程の数学を理解していないと読めない本なので非理数系の方には無理がある。

山本先生の4冊は本書1冊に比べれば分量も多く、専門的なのでより多くのことを知ることができる。そのためワインバーグ博士による本書よりも、より具体的に過去の事実に肉薄できる。ただし肉薄できるからといって大枠の判断に違いがでてくるわけではない。

そして「磁力と重力の発見」の第1巻と第2巻では古代ギリシャから中世の暗黒時代を経てルネサンスまで、いにしえの哲学者、科学者によるトンデモな理論がこれでもかという感じで繰り返されるので、かなりうんざりさせられる。それほど混迷した時代が長く続いていたということではあるが。。。

その意味でも本書は科学初心者に適度なボリュームと内容であるといえるのだ。僕にとってはこれまであまり学んだことがないアラビアの天文学や数学の解説が有益だった。

ただし本書は古代ギリシャから現代までの科学を解説しているとはいえ、1920年以降の現代物理学の解説が少ないので、20世紀の科学史を学びたいときは他の本を読む必要がある。

巻末のテクニカルノートでは個別の事柄について、本文で解説したことを数式を使って証明している。とはいえ高校数学レベルにおさえてあるので、より多くの方に深く理解してもらおうという配慮がされている。


現在の基準で過去を裁くこと、確信犯であることについて

現代の基準で過去を裁定する手法は歴史学で「ウィッグ史観」というそうだ。

今年は大河ドラマ「真田丸」を見ているので豊臣秀吉の「朝鮮出兵(文禄・慶長の役)」の理由や背景に僕は興味を持っている。しかしその是非は問えないということなのだろう。

また先週はオバマ大統領が広島を訪問したことに関連して放送された「フランケンシュタインの誘惑「原爆誕生 科学者たちの“罪と罰”」」という番組を見たばかりである。原爆を開発したことの是非、広島と長崎に投下したことの是非は日米の国民で隔たりがあるし、勝者の論理が歴史を作っていくということも思わざるを得ない。(第二次大戦の勝敗が逆だったら、現代は全く違う世界になっていたことだろう。)

現代史に近づけば近づくほど、国や立場の違いで歴史認識の判断は分かれることは理解できるが、そうでなくてもヒトラーやポルポトのしてきたことは現代の基準からも裁定可能な史実である。(過去の基準においても、この2人は裁定可能だ。)

一般的に歴史学で「ウィッグ史観」は禁じ手だと思うが、国や国民に大きな不利益をもたらす判断や行動をする場合は(科学史ではない)歴史学であっても現代の基準で裁定可能なものはあると思う。

さて、本書は大栗先生が巻末の解説で「ワインバーグ博士は禁じ手であることを承知したうえでの確信犯である。」とお書きになっているとおりである。

では、なぜ博士はあえて「禁じ手」を用いたのだろうか?そこが本書を読み解く醍醐味なのだと思った。以下は僕の想像にすぎないが、3つのとらえかたができると思う。

まず、歴史学者や科学哲学者に対して。論争をわざわざふっかけたつもりはないそうだが、もともと歴史学者や科学哲学者が書いている本の中に、科学を正しく理解していないもの、間違った理解で書かれた科学史本があったのだろう。非理数系の学者でも読めるような本にすることで、正しい理解に基づいた科学史本を世に出したかったのではなかろうか。科学史は一般の歴史学とは異なる側面があることを強調する狙いがあったのだと思う。(参考記事:「「知」の欺瞞:アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン」

そして2つ目は一般読者に対して。科学史入門として活用してもらいたいという思いがあったのだろう。偽科学や似非科学が横行し、それに振り回される人がいる現代社会で、科学的とは本来どういうものであるかを知るのは大切なことだ。博士はそのようなことまでは言及していないが、科学史を学ぶのはこの点でも有益だと僕は思う。

3つ目は科学者に対して。現代の科学で科学者が採っているいる方法は、近代科学成立以降継承されてきたものだが、現代科学の方法はまだ最終形態に到達していないかもしれないという警告である。超弦理論やマルチバース理論のように実験不可能、観測不可能な状況が生じたとき、科学者はどのようにアプローチしていくべきなのか。それを考えるために「過去の事例に学ぶ」材料を提供したのではなかろうか。


化学、生物学、数学について、医学と数学について

本の紹介文に「物理こそ科学のさきがけであり、科学の中の科学である。化学、生物などは二等の科学だ。数学は科学ではない。」という記述があるが、本書で博士はそんなことは書いていない。この文章書いたのは誰?と思ってしまった。キャッチコピーで煽るにも程がある。博士がそんなことを書いていたら、歴史学者よりも化学者、生物学者、数学者を敵に回してしまったことだろう。

博士が本書で化学や生物学についてお書きになっているのは、次のようなことである。

化学は原子や分子の結合によって説明される。そこには量子力学で説明される量子化学の基礎理論があり、根源的には基礎物理学に基づいている。どちらが一等でどちらが二等だということではない。

生物学については、DNAの二重らせん構造の発見により生命の設計図でさえ原子や分子の結合で説明されることがわかった。しかし、生物学で研究されているほとんどのことは、その根源が原子や分子、素粒子の相互作用に基づくものであったとしても、そのような要素還元主義に基づいて理解することは不可能であると考えている。

天文学にしても、太陽と地球の距離、太陽と惑星の距離が現在観測される値になっていることは、基礎物理学、要素還元主義に基づいて解釈できるものではない。「たまたま」そうなっているに過ぎないからだ。

そのほか物理学にしても「相転移」なども「偶然に左右された結果おこる現象なので、基礎物理学、要素還元主義で説明できるものではない。

このように博士は物理学の素晴らしさを認めたうえで「すべてが物理学で説明可能なわけではない。」とおっしゃっているのだ。

数学が物理学と違うのは当たり前である。理論物理学者でいらっしゃる博士が数学の重要性を熟知しているのはもちろんだ。「数学は科学ではない。」という表現はネガティブなものではなく、「数学と科学は別物であるが、互いを支え影響を及ぼす重要な2つの学問だ。」という意味である。

医学と数学についてひとこと。医者はあまり高度な数学を理解している人が少ないという印象を僕はもっているのだが、古代ギリシャにしても中世ヨーロッパにしても同じようなことが言えるのだと読み取れて少し可笑しかった。それは山本義隆先生の本でもワインバーグ博士の本でも共通していたから。実際のところはどうなのだろう?全体の傾向としての話である。


科学の進歩を妨げるもの、衰退させるものについて

中世キリスト教は科学の進歩を妨げたのだろうか?ローマ帝国で古代ギリシャの科学が衰退してしまったのはなぜだろうか?

前者について、キリスト教が科学にとってはマイナスだったというのが一般的な考え方だが、博士はそのようには考えていない。ケプラーにせよガリレイにせよ、そのような宗教的な環境でも科学は発展したり、革命をおこしていたからだ。

しかし僕は諸手をあげて博士の考えには賛成できなかった。中世キリスト教による弾圧がなければ、科学教育はもっと盛んに行われていたはずであり、より多くの科学者、科学史上の偉人が生まれていたことだろう。この暗黒時代に業績を残せたのは、稀有な例なのだったと僕は思う。

後者については博士は「理由はわからない。」とお書きになっている。ローマ帝国は軍事国家だったから大学や教育、図書館の設立や運営にはほとんど力をかけなかったからだと僕は思うわけだが、本当のところはどうなのだろう?


デカルトやニュートンについて

物理学への貢献度という意味で、デカルトはワインバーグ博士のおっしゃるとおり「ダメダメ」だったと僕は思う。しかし、彼の考案した曲線の理論や法線法は後にライプニッツやそれ以後の微積分学の思想に大きな影響を与え、微積分学の発展が古典力学の発展に大きな役割を果たすことになった。間接的だけれどもデカルトの物理学への貢献度はそこそこあったと僕は思う。

ワインバーグ博士は「ニュートンびいき」だと思った。確かに『プリンキピア』の後世への影響は計り知れない。博士がこの本の記述の中から例示されたことも正しいと思う。しかし、山本義隆先生の本を読むと、ニュートンでさえ独自に発想できたことは一部のことであり、ニュートンの力学を発見するためにはケプラーの惑星3法則、フックのアイデアなどを受け継いでいた。また微積分学はニュートンとライプニッツがそれぞれ独自に発明したというのが現代の定説だが、その後の微積分学と古典力学の発見はライプニッツの手法のほうが役割を果たしていたと僕は思う。ただしだからといって僕はニュートンの『プリンキピア』をけなしているわけではない。どんなに優れた科学者であっても、優れた点と至らない点を持ち合わせているものであり、時代を通じて成果が受け継がれ、発展していったというのが実際におきたことだったのだと思う。

ワインバーグ博士の「ニュートンひいき度」を100とすれば、僕のひいき度は80くらいである。

これらのことは山本義隆先生の「古典力学の形成」や高瀬正仁先生の「微分積分学の史的展開」、「微分積分学の誕生」を読むとよくわかる。


本書に対する読者の反応、評価(日本とアメリカ)

今日現在、日本のアマゾンでは高評価のレビュー記事が2つ投稿されている。アメリカのアマゾンには117件のレビューが投稿されていて、評価は次のようである。



高い評価の人のレビューはおおむね似ているが、低い評価をつけている人の理由には次のようなものがあった。

- 歴史は科学史といえども現代の基準で裁定してはならない、という予想通りの意見。
- 退屈だ。すでに科学史は学んでいるので新しいことが書いていない。
- 科学史本は他にも優れたものがたくさんある。なぜ一流の素粒子物理学者が科学史の本を書く必要があるのかわからない。
- ワインバーグ博士はアンフェアだ。特に古代ギリシャには実験を行う道具もなかったのだし。当時の哲学者を批判するには無理がある。
- 本書よりも「The Swerve: How the World Became Modern」(Kindle版)という本のほうを読むべき。これはピューリッツァー賞を受賞した本で古代から、ルネッサンスに至る文明の存亡を15世紀に生きた一人の人文学者・古文書研究者の生涯を描くことで鮮やかに示した魅力的な文化論、中世ヨーロッパ社会に興味がある人やルネッサンスがどんなきっかけで始まったのかについて書かれている。


翻訳の元になった原書はこちら。(なぜかわからないがKindle版は値段の違う2つがAmazonにあるので、安いほうをリンクさせておいた。)

To Explain the World: The Discovery of Modern Science: Steven Weinberg」(Kindle版




関連記事:

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75ef1fc1216c255471fdbf65cc3a0c49

磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/16b61843d410a867f942f3f8aef13865

磁力と重力の発見〈3〉近代の始まり:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/196ce202408dd250728dad303dac89f3

古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e808487b7e9d668967f703396e32d80a

古典力学の形成: 山本義隆―続きの話
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b5904a574fd4c4e276da496bd2c1821b


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科学の発見:スティーブン・ワインバーグ」(Kindle版



[目次]
はじめに 本書は不遜な歴史書だ
本書は学部の学生に、科学史を教えていた講義ノートから生まれた。
古代ギリシャのプラトンらの主張は今日の科学の眼から見ると何が「科学」
ではないのか? 私は現代の基準で過去を裁くという危険な領域に踏み込む


第一部 古代ギリシャの物理学

第一章 まず美しいことが優先された
世界はかくあれかし、ギリシャの哲人たちは思索した。原子論に似た
アイディアまで生まれたが、しかし、タレスらは、その理論が正しいかの実証
については興味がなかった。彼らは科学者というより「詩人」だったのだ

第二章 なぜ数学だったのか?
ギリシャではまず数学が生まれた。数学は観察・実験を必要としない。
思考上の組み立てのみで発展する。しかし、ここでも美しくあることが
優先され、ピタゴラス学派は「醜い」無理数の発見を秘密にし封印することに

第三章 アリストテレスは愚か者か?
アリストテレスの物理学とは、自然はまず目的があり、その目的のために
物理法則があるというものだった。物が落下するのは、その物質にとって
自然な場所がコスモスの中心だからだと考えた。観察と実証なき物理学

第四章 万物理論からの撤退
ギリシャ人が支配したエジプトでは、以後十七世紀まででも最高の知が
花開いた。万物を包括する理論の追究から撤退し、実用的技術に取り組んだ
ことが、アルキメデスの比重や円の面積などの傑出した成果を生んだのだ

第五章 キリスト教のせいだったのか?
ローマ帝国時代、自然研究は衰退した。学園アカデメイアは閉鎖され、
古代の知識は失われる。それはキリスト教の興隆のせいか? 議論はあるが、
ギボンは「聖職者は理性を不要とし、宗教信条で全て解決した」と述べた


第二部 古代ギリシャの天文学

第六章 実用が天文学を生んだ
古代エジプト人は、シリウスが夜明け直前にその姿を現すときに、
ナイルの氾濫が起きると知っていた。農業のための暦として星の運行の法則を
知ることから天文学が生まれた。完全な暦を作成するための試みが始まる

第七章 太陽、月、地球の計測
アリストテレスは地球が丸いことに気づく。さらにアリスタルコスは観測
から太陽と月、地球の距離と大きさを、完璧な幾何学で推論した。数値
こそ全く間違っていたが、史上初めて自然研究に数学が正しく使われたのだ

第八章 惑星という大問題
天動説の大問題は、それが実際の観測と合わなかったことだ。プトレマイオス
は、単純な幾層もの天球のうえに星が乗っているというアリストテレスの
考えを捨て、観測結果に合わせるために「周転円」という概念を導入


第三部 中世

第九章 アラブ世界がギリシャを継承する
中世初期、西洋が蒙昧に陥った頃、バグダッドを中心にアラブ世界の知性が
古代ギリシャ知識を再発見し、黄金期を迎えた。その影響の大きさは
「アラビア数字」「アルジェブラ(代数)」「アルカリ」などの言葉に今も残る

第十章 暗黒の西洋に差し込み始めた光
復興し始めた西洋。アラビア語から翻訳でアリストテレスの知識がよみがえる。
だがそれらの命題が教会の怒りに触れ、異端宣告される事件が起きた。
後に宣告は撤回されたが、この軋轢は科学史上重要な意味を持った


第四部 科学革命

第十一章 ついに太陽系が解明される
十六~十七世紀の物理学と天文学の革命的変化は、現代の科学者から見ても
歴史の真の転換点だ。コペルニクス、ティコ、ケプラー、ガリレオの計算と
観測で太陽系は正しく記述され、ケプラーの三法則にまとめられた

第十二章 科学には実験が必要だ
天体の法則は自然の観測だけで記述できたが、地上の物理現象の解明には
人工的な実験が必要だ。球の運動を研究するためにガリレオが作った斜面は、
初の実験装置であり、現代物理学の粒子加速器の遠い祖先と言える

第十三章 最も過大評価された偉人たち
アリストテレスを脱却した新しい科学的方法論を打ち立てたとされる偉人、
ベーコンとデカルト。だが現代の目で見るとベーコンの考えには実効性が
なく、哲学より科学で優れた仕事をしたデカルトも間違いが多すぎる

第十四章 革命者ニュートン
ニュートンは過去の自然哲学と現代科学の境界を越えた。その偉大な成功で
物理学は天文学・数学と統合され、ニュートン理論が科学の「標準モデル」に。
世界を説明する喜びが人類を駆り立て、ここに科学革命が成った

第十五章 エピローグ:大いなる統一をめざして
ニュートン以後、さらに基本的な一つの法則が世界を支配していることが
わかってきた。物理学は、量子理論で様々な力をまとめ、化学、生物学も
組み入れた。大いなる統一法則をめざす道のりは今も続いている


解説 大栗博司(理論物理学者)
なぜ、現代の基準で過去を裁くのか

星からおちた小さな人: 佐藤さとる、村上勉

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コロボックル物語3 星からおちた小さな人

内容紹介:
伝説の“コロボックル”―日本の小人―彼らは、現代に生きていた!そして学校を作り、新聞を作り、今、“飛行機”を作ろうとしている。飛行テストで事故に遭い、人間の少年につかまって覚悟を決める「ミツバチ坊や」。彼を救うため、全力で仲間を探すコロボックルたち。胸が熱くなる冒険譚。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。

著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。

村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。


有川浩さんの「だれもが知ってる小さな国」を読んだのがきっかけで、小学生の時に読んだ佐藤さとる先生のコロボックル物語シリーズを第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」から読み直している。今回紹介するのはその3巻目だ。

混雑する通勤電車で押し合いへし合いしながらこのほっこりした物語に没頭するのが楽しくなってきた。僕は地下鉄丸の内線で児童書に没頭する中年男である。


物語の世界にもゆっくりと時間が流れ、コロボックルたちの社会には街や学校ができている。前作で若者や子供だったコロボックルも、立派な大人に成長し、社会の中でそれぞれ大事な役割を果たすようになった。

そんな彼らを支える「せいたかさん」のおかげで、コロボックルたちの世界でも技術革新が進んでいる。身体が3cmしかない彼らは、もともと「風」を利用して空中を移動することができた。しかし、風まかせでは行きたい場所に行くことができない。まず実用化したのはヘリコプターだ。動力は彼らの強靭な脚力である。

けれどもヘリコプターだけで彼らは満足しなかった。こんなに大きな機械だと人間に見つかってしまう危険があるからだ。機械の小型化が次の課題となった。

第3巻は小型化して1人乗りにした飛行機械の試験飛行のシーンから始まる。「ミツバチ坊や」と呼ばれていたコロボックルの少年が試験飛行をする。近くには彼を見守るヘリコプター。




飛行テストはうまくいったかに思えた。だが、運の悪いことに上空を飛んでいた「もず」がヘリコプターをめがけて急降下してきたのだ。この鳥はコロボックルにとって天敵のようなものだ。

とっさに機転をきかせたミツバチ坊やは「もず」に体当たりをする。おかげでヘリコプターと乗員は助かった。しかしミツバチ坊やは負傷し、開発したばかりの飛行機械もダメージを受けて落下してしまう。

ミツバチ坊やは行方不明になった。マメイヌ隊も何度も捜索したが見つからない。たまたま落ちた場所が悪かった。彼は人間の小学生の男の子に捕まえられてしまったのだ。最初ミツバチ坊やは気絶していたから「おチャ公」と呼ばれていたその少年は「ゴム人形」だと勘違いしていたのだ。

その後、おチャ公はゴム人形ではないことに気づき、ミチバチ坊やを鉛筆削りの中に閉じ込めてしまう。逃げ出さないようにテープでしっかり固定してしまった。ミツバチ坊やの運命はおチャ公にかかっている。彼はコロボックルの少年をどうしようというのか?



捜索を続けたことが実って、コロボックルたちもミツバチ坊やの所在を突き止めることができた。しかし、厳重に閉じ込められた状態では手も足も出ない。

はたしてミツバチ坊やを救出することはできるのだろうか?


この巻もいくつかの「昭和の風景」を思い起こさせてくれた。まずミツバチ坊やをつかまえた少年のあだ名の「おチャ公」である。そういえば昔は男の子や動物を「~公」って呼ぶときがあったな。例えば忠犬ハチ公とか。時代劇には「熊公」がときどき登場する。いまではほとんど使われなくなった言い方だ。

でもそもそも「~公」って何だろう?無意識で使っていたから今さらながら不思議に思った。「大久保利通公」のような敬うための言い方ではない。ユニークな語義が載っている辞書として知られる「新明解国語辞典」をひいてみると次のように書いてあった。

公(こう):親しい間柄や軽視すべき人の名前の略称の下につける語。

がらの悪い不良少女のことを「ズベ公」などと呼んでいたこともあった。これは明らかに蔑称。

おチャ公がミツバチ坊やを「拾った」のは、彼が新聞配達をしている中学生を手伝っていたときのことだった。中学生が新聞配達をすることは今はほとんどないし、年齢が離れた子供たちが一緒に遊んだりしていたのも昭和45年くらいまでのことだったと思う。僕も小学校低学年までは近所のお兄さんに遊んでもらっていた。そのような環境で自然に学ぶ上下関係って、けっこう大切なものだと思うのだ。

今はすっかり変わってしまい、遊び場で自分の子供が年上の子供と知り合ったり遊んでいたりしたら、多くの親は心配になってやめさせるだろう。いくつか思い当る事件があるから仕方のないことかもしれないが、そう思うと少しさびしい。

そして子供時代の僕の心を大きく揺さぶったのは、ミツバチ少年に渡されたせいたかさんが作ったトランシーバーだ。これを使って小山にいるせいたかさんやコロボックルにおチャ公の状況を連絡することができる。救出はいつ始めればよいのかを決めるのには欠かせないアイテムだ。



携帯電話がなかった子供のころ、トランシーバーはあこがれのアイテムだった。そういうところに僕はワクワクしてこの物語を読んでいたんだなぁと思い、ついアマゾンでトランシーバーを検索してしまった。


巻末に感想文をお寄せくださったのは作家の重松清さんだった。ガキ大将だった重松さんが、なぜこの物語に熱中したのか?思わずにんまりしてしまう感想文である。


引き続き第4巻を読むことにしよう。


佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。

1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行


コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html


講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」(紹介記事
コロボックル物語3 星からおちた小さな人
コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子
コロボックル物語5 小さな国のつづきの話
コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし

  

  

青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。

講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索

単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。


新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行

新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国
コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ
コロボックル物語3 星からおちた小さな人

  

新イラスト版: Amazonで検索


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コロボックル物語3 星からおちた小さな人



第1章:空とぶ機械
第2章:この世にただひとりとなるべし
第3章:臨時マメイヌ隊員
第4章:あまがえる作戦
第5章:夕焼け雲

あとがき(その1~その4)

解説:重松清


以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ













有川版についている帯

発売情報: 朝倉 数学辞典(朝倉書店)

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朝倉 数学辞典(朝倉書店)

内容:
これまでにはなかった、大学学部学生から大学院生を対象に、調べたい項目を読めば理解できるよう配慮したわかりやすい中項目の数学辞典。高校程度の事柄から専門分野の内容までの数学諸分野から327項目を厳選して五十音順に配列し、各項目は2、3ページ程度の、読み切れる量でページ単位にまとめ、可能な限り平易に解説する。
〔内容〕集合,位相,論理/代数/整数論/代数幾何/微分幾何/位相幾何/解析/特殊関数/複素解析/関数解析/微分方程式/確率論/応用数理/他
2016年6月刊行、752ページ。


本書の広告を見たとき、朝倉書店さんは強気だなと思った。昨年11月に「プリンストン 数学大全(朝倉書店)」を刊行したばかりだというのに。

数学辞典を持っていない人はきっと迷うに違いない。「朝倉 数学辞典(朝倉書店)」は今月15日に発売されるので、公開されている情報をたよりに「プリンストン 数学大全(朝倉書店)」との違いを見てみよう。

- 版型はほぼ同じ(どちらも高さ26-27cm、縦横比もほぼ同じ)

- 値段はほぼ同じ。

- ページ数は今回発売される本が752ページであるのに対しプリンストン数学大全は1200ページ。

- 数学者、物理学者の先生方が最初から日本語で書き起こした辞典。プリンストン数学大全は英語版をもとに日本人の数学者の先生方が翻訳したもの。どちらも用語や概念の意味を調べるだけでなく、通読して学ぶことができる。

- 見出し数は厳選した327項目。中項目主義である。日本語版プリンストン数学大全の見出し項目数は情報として公開されていないが、英語版の見出し項目数は200だそうだ。ページ数のことを考慮すれば今回の辞典のほうが項目ごとの記述は少なめなのだと思う。

- 見出し語を比較する限り、プリンストン数学大全よりも初学者向けの内容もカバーしている辞典のように感じた。また物理学や工学系分野へ応用される項目(物理数学)の割合はプリンストン数学大全より多い。そのため対象読者はプリンストン数学大全より広い印象だ。


ちなみにプリンストン数学大全が発売される以前では、大学学部生、大学院生への僕のお勧めの辞典は2005年に刊行された「岩波 数学入門辞典」だった。これの総ページ数は728ページで高さ23cmと小ぶりである。僕はこの辞典も持っているが、小項目主義をとっているので(数えていないが)見出し項目数は2000項目を超えているはず。1項目あたりの記述が少ないので、意味を知ることはできるが学べるという感じではない。あと読者にとってのメリットは価格が7千円と安いこと。

岩波書店からはこの辞典とは別に、より専門家向けの「岩波数学辞典」という辞典の第4版が2007年に刊行されているが、僕には難しすぎるので使いこなせていない。


以上のことから僕なりに3つの辞典を使い分けるとしたら次のようになる。

岩波 数学入門辞典
用語や概念について、おおまかに知るのにはよい。見出し語数が多いので調べたいことが載っている確率が高い。

プリンストン 数学大全(朝倉書店)
用語や概念について、じっくり腰を据えて学ぶのによい。さらに深く学んでみたくなったらその分野の教科書を買えばよい。歴史上の数学者についての解説があるのが特長。見出しは五十音順ではないが、調べたい項目は目次からたどり着けるので実用上問題はない。

朝倉 数学辞典(朝倉書店)
上の2冊の中間であるが、どちらかというとプリンストン数学大全寄りといったところだろうか。「岩波 数学入門辞典」で調べて物足りなかったら、この辞典を読んでみればよいし、「プリンストン 数学大全(朝倉書店)」に知りたい項目が見つからなかったらこちらを読むとよいのだろう。1つの項目を1ページで説明する方針をとっている。すべての見出し語は各ページの最上部に大きく印刷されているから項目を見つけやすい。


数学辞典をこれからお買いになる方は、きっと迷うことだろう。そしてすでに「プリンストン数学大全」をお持ちの方の中にも本書が気になっている方が多いことだろう。朝倉書店さんには「プリンストン数学大全」との違い、使い分けのアドバイスをしていただきたいと思った。

なお、朝倉書店さんは2011年に「数学辞典(朝倉書店)」を刊行している。これは英語版から翻訳したもので多言語対応。小項目主義をとった6000語という見出し語数の辞典だ。僕はこの辞典のことを知らなかったので、今回の記事では比較できなかった。

数学辞典 (普及版)2011年刊行
http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-11131-6/

今回発売の「朝倉 数学辞典(朝倉書店)」と名前がほとんど同じだ。書店で注文するときはISBNコードを伝えるなど注意していただきたい。

なお近所に大型書店や大きな図書館がなく、実物を確認できない人のために朝倉書店さんはツイッターからサンプルページを公開されている。(ツイート1ツイート2

クリックで拡大
 


本の詳細は朝倉書店のホームページで確認してほしい。

「朝倉 数学辞典」:朝倉書店のホームページ
http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-11125-5/

ご購入はこちらからどうぞ。

朝倉 数学辞典(朝倉書店)



編集部から

多くの読者が "読んで" 理解できる。数学の諸分野を広くカバーする五十音配列の中項目辞典。 ・数学の各分野から327項目を厳選
・調べたい内容を読んで理解できるよう平易に解説
・調べたい内容への到達を助ける詳細な索引
・各項目はページ単位とし,読みやすさに配慮
・高校数学の基礎的な概念から院生レベルの内容までを広くカバー


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朝倉 数学辞典(朝倉書店)



目次

*内容別項目一覧(本文は50音順です)
I 基礎
因数分解

円錐曲線
関数
帰謬法(背理法)
逆,裏,対偶
球面と球体
極座標
近似計算
差分と和分
三角関数
算術平均と幾何平均
指数関数
順列・組合せ
初等幾何

数学的帰納法
正多面体
素数
対数関数
代数方程式(4次以下の解法)
凸関数
判別式
複素数平面
平均と分散
ベクトル
論理記号

II 集合,位相,論理
一様収束
極限
集合と写像
位相空間
位相空間の分離公理
可算無限と非可算無限
カントール集合
距離空間
コンパクト性
選択公理
濃度と順序数
連続写像
圏と関手
順極限と逆極限

位相空間の次元
チューリングマシン
ゲーデルの完全性定理
ゲーデルの不完全性定理
公理的集合論

III 代数
基底と次元
行列
行列式と逆行列
固有値と固有ベクトル
線形空間と線形写像
直交行列とユニタリ行列
連立1次方程式
行列群
終結式
ジョルダン標準形
代数学の基本定理
可換環
環と体
環上の加群
局所環
クリフォード代数

群の表現
形式的べき級数環
四元数環
主イデアル環
多項式環
置換群
ディンキン図形
テンソル積と外積
ネーター環
熱帯幾何
ヒルベルトの零点定理
ブラウアー群
ヤング図形
有限群
有限体
離散付値環
ヴィット環
ガロア理論
グレブナー基底
等質空間
p進数
付値
ホモロジー代数
有限単純群の分類
リー環とリー群
量子群
双1次形式と内積

IV 整数論
ディオファントス方程式
円分体
平方剰余の相互法則
初等整数論
代数的数と代数的整数
フロベニウス写像
分岐理論(素イデアルの)
連分数
数論幾何学
フェルマー予想
リーマン予想
類体論

V 代数幾何
代数曲線
代数多様体
楕円曲線
特異点
有理写像
アーベル多様体
因子と可逆層
極小モデル理論
K3曲面
小平次元
セール双対性
代数曲面の分類
トーリック多様体
リーマン-ロッホの定理

VI 微分幾何
2次曲面
曲線
曲線座標
曲面
線織面
非ユークリッド幾何
ガウス-ボンネの定理
可微分写像
グラスマン多様体
サードの定理
射影幾何
射影空間
ストークスの定理
接触多様体
接続
測地線
多様体
ド・ラーム・コホモロジー
微分形式
ベクトル場とテンソル場
向き付け
モース理論
リーマン多様体
ゲージ理論
シンプレクティック多様体
対称空間
多様体(3次元)
多様体(4次元)
モジュライ空間
葉層構造
アティヤー-シンガーの指数定理
層係数のコホモロジー
フローとベクトル場

VII 位相幾何
オイラー数
基本群
組みひも群
ジョルダンの曲線定理
単体複体
被覆空間
ファイバー束
ファイバー空間
変換群
ホモトピー群
ホモロジーとコホモロジー(位相空間の)
結び目
写像度
特性類
ベクトル束
ポアンカレ双対定理
ループ空間
ポアンカレ予想
有理ホモトピー論

VIII 解析
エプシロン-デルタ論法
級数
実解析的関数
重積分
積分
多重指数
テイラー展開
微分と偏微分
連続関数
陰関数定理と逆写像定理
ガウスの発散定理
グリーンの公式
線積分と面積分
面積
有界変動関数
ラグランジュの未定乗数法
サンプリング定理
測度
多項式近似
フラクタル集合
フーリエ級数(1変数)
フーリエ級数(多変数)
フーリエ変換
変分法
ポアソンの和公式
ラプラス変換
リプシッツ連続
ルベーグ積分
ウェーブレット
z-変換
測度(位相空間上の)
調和関数
凸解析
凸集合
ハウスドルフ測度とハウスドルフ次元
ポテンシャル
振動積分
数列
上限,下限,上極限,下極限

IX 特殊関数
ベッセル関数
ガンマ関数
楕円関数
ルジャンドル関数
エルミート関数
球面調和関数
超幾何関数
ラゲール関数

X 複素解析
1次分数変換
解析接続
コーシーの積分公式
最大値の原理
正則関数(1変数)
留数
等角写像
複素多様体
有理型関数(1変数)
リーマンの写像定理
リーマン面
クライン群
ケーラー多様体
正則関数(多変数)
タイヒミュラー空間
ネヴァンリンナ理論
複素力学系
カラビ-ヤウ多様体
擬凸領域
保型関数
ホッジ分解

XI 関数解析
ベールのカテゴリー定理
ルベーグ空間
ヒルベルト空間
線形位相空間
コンパクト作用素
作用素環
自己共役作用素
スペクトル分解
ソボレフ空間
超関数
D-加群
バナッハ環
バナッハ空間と線形作用素
不動点定理
連続関数環
作用素の半群
フレッシェ微分
補間

XII 微分方程式
常微分方程式
線形常微分方程式
特異積分
1階偏微分方程式
解析力学
積分方程式
双曲型偏微分方程式
熱方程式
波動方程式
ラプラス方程式
コーシー-コワレフスキーの定理
固有関数展開
シュレーディンガー方程式
楕円型方程式
ポアソン方程式
放物型方程式
力学系
アインシュタイン方程式
オイラー方程式
擬微分作用素
KdV方程式
ナヴィエ-ストークス方程式
粘性解
反応拡散方程式
非線形シュレーディンガー方程式
非線形楕円型方程式
非線形波動方程式
ボルツマン方程式
マクスウェル方程式
力学系の安定性と分岐

XIII 確率論
確率と確率モデル
確率過程
確率分布
確率変数
確率変数列の収束
加法過程,レヴィ過程
大数の法則
中心極限定理
ブラウン運動
ポアソンの小数の法則
ランダムウォーク
伊藤の表現定理
エルゴード理論
ガウス過程,定常過程
拡散過程
確率積分
確率微分方程式
条件付き期待値
ディリクレ形式
分枝過程
待ち行列
マリアバン解析
マルコフ過程
マルチンゲール

XIV 応用数理
最小二乗法
補間公式
数値積分
スプライン関数
ニュートン法
線形計画法
グラフ理論
ゲーム理論
高速フーリエ変換
直交多項式
有限要素法
乱数
暗号
エントロピー
符号

XV トピック
ヒルベルトの問題
ミレニアム懸賞問題
4色問題

リーマン--人と業績: D.ラウグヴィッツ

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リーマン--人と業績: D.ラウグヴィッツ」(丸善版)(シュプリンガー版

内容紹介:
リーマン幾何学やリーマン積分など、現代数学の基礎概念にその名を残し、19世紀半ばにして20世紀数学を予見して、その飛躍の礎を与えたドイツの数学者リーマン。本書ではリーマンの数学における代表的な仕事を厳選し、それぞれの分野におけるリーマン以前の数学の到達点とリーマン以降の数学の流れの変化を明らかにすることによって、リーマンの業績の同時代における意義を浮き彫りにした。さらに本書では物理学・哲学についての彼の仕事も紹介。彼の学問の背景となる生い立ち、交遊についても伝記的に興味深い内容を詳述している。
1998年2月刊行、415ページ。

著者について:
D.ラウグヴィッツ: ウィキペディアの記事
1932年生まれ2000年没。ドイツ人の数学者、歴史家。専門は微分幾何学、数学史、関数解析、超準解析。1954年にゲッティンゲン大学でT.カルツァの指導のもと学位(数学)を取得。1963年よりダルムシュタット工科大学数学科教授。1968年に『年報数学展望』をマンハイム文献出版協会から創刊し、20年以上編集長を務める。微分幾何学や超準解析などの教科書数点のほか、オイラー、ガウス、ボルツァーノ、コーシー、リーマン、ワイエルシュトラスに関する著作がある。

訳者について:
山本敦之
1982年3月、東京大学理学部数学科卒業。東京大学大学院理学研究科(科学史・科学基礎論)博士課程修了。吉備国際大学社会福祉学部ボランティア学科助教授。
専門:19世紀ドイツを中心とした科学史、数学史
訳書にG.メーベ編『われわれは「自然」をどう考えてきたか』(共訳、どうぶつ社)、E.A.フェルマン著『オイラー』(シュプリンガー・フェアラーク東京)、『リーマン論文集』(共訳、朝倉書店)


理数系書籍のレビュー記事は本書で308冊目。

本書は昨年の「第56回 神田古本まつり」で買ったものだ。これは素晴らしい!大数学者リーマン(1826-1866)の伝記と研究内容が1冊でわかる!と飛びついたわけだが、読書はとても難儀なものになった。数学史の部分が山本義隆先生の科学史本を超える専門的な内容だったからだ。今年はリーマン没後150年目、生誕190年目であることは、本を買ってからしばらくして知った。

物理学史や天文学史にはすでに馴染んでいるが、数学史は別である。特にコーシー以降の近代数学史は僕にとっては断片的に知っているだけの未知の世界。本書にはリーマンだけでなく、その前後で活躍した数学者たちの業績を交えて解説を進めている。近代数学史を学ぶにはうってつけの本のはずだし、これはまさに僕が学びたいと思っていたことだ。

しかし、本書を読み解くにはこの時代に研究された数学諸分野の理解が前提とされている。取り上げられている数式にしても教科書のように導出されているわけではない。

章立ては次のとおり。

序章:伝記
第1章:複素解析
第2章:実解析
第3章:幾何学・物理学・哲学
第4章:数学解釈における転換点

リーマン面は複素解析で学ぶが、第1章の複素解析の部分を理解するためには「なっとくする複素関数:小野寺嘉孝」レベルの初歩的な内容では足りず、「複素解析:小平邦彦」で解説されているようなリーマン面のもつ詳しいトポロジー的性質を理解している必要がある。(リーマン面の写像定理、ディリクレの原理、リーマン面の構造、アーベル微分、リーマン-ロッホの定理、アーベルの定理など)

また第3章のリーマン幾何、すなわちリーマンのn重延長多様体についての解説を読み解くには少なくとも「幾何学の基礎をなす仮説について:ベルンハルト・リーマン」を読んでリーマン幾何学を知っておく必要がある。

そしてリーマン以前の数学史についてもデカルトからライプニッツ、オイラー、コーシーに至る微積分学史をあらかじめ知っておいたほうがよい。(参考記事:「微分積分学の史的展開 ライプニッツから高木貞治まで:高瀬正仁」、「微分積分学の誕生 デカルト『幾何学』からオイラー『無限解析序説』まで:高瀬正仁」)

このようなわけで本書が対象としているのは数学や物理学を専攻している大学院生以上ということになるだろう。


僕が興味をもったのは、後世に「業績」として伝えられている研究内容ではなく業績には至ることのなかった研究内容についてだった。リーマンの生きた時代は電磁気学が完成する時代、アインシュタインが特殊相対性理論を発表する前の時代である。

多様体についてリーマンの関心は連続多様体にあり、離散多様体ではなかった。物理学にも大いに関心を示したリーマンは物理的な空間の構造についても研究を行なっていた。当時の関心ごとのひとつに電気力学と力学の統一がある。この研究によってアインシュタインは特殊相対論の完成に至ったわけだが、リーマンも同様のテーマで研究を進めていたことが本書を読むとわかる。時代的にはリーマンのほうがアインシュタインよりも昔なのだが、リーマンに足りなかったものは何か、同時代の数学者、物理学者は同じ問題をどのように考えていたか。功績として私たちに残された数学史、物理学史には書かれていないサイドストーリーが本書の価値のひとつだと思った。



リーマンの研究テーマの広さに加えて、同時代の数学者の研究テーマや考え方についても多くの記述があるので何が後世の数学に直接影響を与えたのかを判断するのが僕には難しかった。しかしその影響力がとても大きかったことはよくわかる。現代数学に至るまでの近代数学の雰囲気を味わえたことを本書を読んだ僕の成果としておこう。


後述する詳細目次をご覧になるとおわかりのように、あまりに盛りだくさんでお腹いっぱいという感じで理解しきれない箇所が多く、読後もモヤモヤ感が残ってしまった。もう少し明瞭にリーマンの研究内容や業績を知りたいと思っていたところ、関連するテーマで市民向け講座が朝日カルチャーセンターで開講されることにたまたま気がついた。ツイッターでフォローさせていただいている加藤文元先生の講座である。

【新設】リーマン数学の思想と展開(ユース学生会員用ページはこちら
現代数学はどのようにして作られたのか
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/895b6ce4-6445-a2e2-2353-571f44edf03e

<講師>
東京工業大学教授 加藤 文元先生

<講座内容>
数学は19世紀に大きく変容しました。その過程を経て現在に至っている現代数学は、18世紀までとは比べ物にならないほど高度に抽象的でパワフルな学問になっています。その歴史上の大きな変化の入り口のところにいるのがベルンハルト・リーマン(1826〜1866)です。彼は有名な「リーマン予想」を提出し、数学の様々な分野で大きな足跡を残しただけでなく、数学の基本思想そのものを変えました。リーマンの足跡をたどりながら、できるだけ平易な数学の言葉を用いて、リーマンの思想やその現代への波及効果、さらには現代の数学がどのような学問になっているのかを解きほぐしていきます。 

<スケジュール>
1回目:7月19日リーマンの空間思想
2回目:8月9日 リーマンと現代数学


火曜日の夜に開催されるので、日程が近づき仕事の予定の調整がつくようだったら申し込んでみたいと思っている。


関連記事、関連ページ:

幾何学の基礎をなす仮説について:ベルンハルト・リーマン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22be602fe4cee385a9939c0869c511eb

解析学入門のための教科書談義
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22c325e49cfd7c721679dbc2896b86a4

リーマン 人と業績(足立 隼)
http://researchmap.jp/jomk8mfp4-46767/


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リーマン--人と業績: D.ラウグヴィッツ」(丸善版)(シュプリンガー版



序章

ベルンハルト・リーマンとその時代
- その経歴と人格形成
- 政治経済状況
- 教育と教養
- リーマンの故郷
- 学びの場としてのゲッティンゲンとベルリン
- 正教授時代(1859-1866)

ゲッティンゲンにおける黄金の50年代:ガウス、ディリクレからリーマン、デデキントへ
- リーマンとデデキント:個人的事情
- 数学における変革について
- あるイギリス人による点描

最晩年の活動:イタリアとドイツを往復するリーマン

リーマン以前の解析学の、競合する様々な解釈
- 解析学の歴史的発展におけるリーマン:外観
- 代数解析
- 無限小解析
- 幾何学的な考察:フーリエ
- 極限値解釈:ニュートン
- イプシロン論法の完成に向けて:コーシーとディリクレ

第1章:複素解析

リーマンの時代までの複素解析の生成過程
- 予備知識
- 複素数
- 複素関数とその導関数
- 積分
- 応用
- 多価関数とリーマン面
- 2重周期関数

1851年の学位論文
- この研究の動機についてのリーマン自身の見解:学位論文第20節第1部
- 「学位論文」の内容とその要約
- リーマンによる学位論文の概括とプログラム:第20節第2部と第22節
- 学位論文の前史
- 学位論文の影響

理論形成
- 常微分方程式
- 解析学におけるトポロジーの誕生
- アーベルの定理
- 代数曲線
- 極小曲面
- リーマンの学生たちと関数論における彼らの記述
- 後世の評価
- デデキントと関数論の代数化

ゼータ関数と素数分布
- 予備考察
- あるアプローチ
- 関数等式
- 素数関数を表すリーマンの明示公式
- 零点とリーマン予想
- 遺稿
- 評価

第2章:実解析

実解析の基礎
- 積分概念
- 解析学における「厳密性」
- 例外というものが獲得した新たな地位:実例と反例

リーマン以前の三角級数
- 序論
- オイラーからフーリエまで
- 関数概念の発展
- フーリエからディリクレまで

リーマンの業績
- 積分概念をフーリエ係数に適用すること
- リーマンの「同伴関数」F(x)

リーマン以後の三角級数
- 三角級数から集合論へ
- 三角級数のその後の発展:関数の算術化を越え、関数解析におけるその自立化へ向けて

中間考察:ガウス、リーマン、ゲッティンゲンの雰囲気

第3章:幾何学・物理学・哲学

前置き:1854年の教授資格取得講演の果たした中心的役割

幾何学
- ユークリッドからデカルト、そして[非ユークリッド」幾何学まで
- ガウスの曲面論(1827)
- リーマンのn重延長多様体
- 計量規定
- 曲率
- リーマン以後50年間の幾何学と物理学における成果
- 計算技法の発展
- フェーリックス・クラインの影響
- デデキント「ベルンハルト・リーマンの論文 '幾何学の基礎にある仮説について' に関する解析的研究」

物理学
- 物理への関心
- 場の理論としての物理学
- 物理のための数学的方法
- 物理学者の観点から見たリーマンの電気力学
- 20世紀の物理学におけるリーマン幾何:アインシュタインとワイル

哲学について
- 序
- 1853/1854年の思想的背景について:唯物論論争
- 自然哲学の数学的新原理
- ヘルバルト哲学の役割

第4章:数学解釈における転換点

数学の革命について

数学的無限についての解釈の転換点

方法の転換:計算の代わりに思考する

存在論における転換点:概念を用いた思考としての数学
- 一般的概念とその規定法
- リーマンの数学における、離散的対象に対する連続的対象の優位
- 哲学的伝統の中のリーマンの多様体
- リーマン以前に行われていた、数学的概念を用いた思考

リーマン以後の時代の、数学の存在論と方法論
- デデキントにおける数の優先
- 算術化から公理化へ:ヒルベルト(1897/1899)
- ゲオルク・カントルの役割
- ベルリンの伝統

結論

参考文献
人名索引

重力波は歌う:アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち:ジャンナ ・レヴィン

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重力波は歌う:アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち:ジャンナ ・レヴィン

内容紹介:
2016年2月、アメリカ・ワシントン発の報道が世界を揺るがせた――「重力波の直接観測に初めて成功! 」。
アインシュタイン最後の宿題がやっと解かれたと物理学界は湧き立ち、「ノーベル物理学賞間違いなしの偉業」と、手放しの賞賛がなされた。世界で最も美しい物理理論ともいわれ、一般相対性理論100周年に奇しくもなされたこの偉業の陰には、理論畑・実験畑それぞれの天才の試行錯誤があり、人と人の確執があり、ビッグサイエンスならではの政治的駆け引きがあった。関係者への豊富な直接取材に基づいて、重力波を追い求めた人々が織りなす人間ドラマの全貌を初めて明かす待望の書。
2016年6月刊行、296ページ。

著者について:
ジャンナ・レヴィン(Janna Levin)
コロンビア大学バーナード・カレッジ物理学・天文学教授。
作家としてHow the Universe Got Its Spots, A Madman Dreams of Turing Machinesといった著書をもつ一方で、宇宙物理学者としてブラックホールや時空の余剰次元、重力波にかんする業績がある。2012年にはグッケンハイム・フェローシップを受賞。

訳者について:
田沢恭子(たざわ・きょうこ)
翻訳家。1970年生。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科英文学専攻修士課程修了。訳書にスヒルトハウゼン『ダーウィンの覗き穴』、マンデルブロ『フラクタリスト』、ストーン&カズニック『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 2』(共訳)、マスビェア&ラスムセン『なぜデータ主義は失敗するのか?』、ロバーツ『アリス博士の人体メディカルツアー』、ギーゲレンツァー『賢く決めるリスク思考』ほか多数。

松井信彦(まつい・のぶひこ)
翻訳家。1962年生。慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻前期博士課程(修士課程)修了。訳書にビリングズ『五〇億年の孤独』、ハンド『「偶然」の統計学』、オールダシー=ウィリアムズ『人体の物語』『元素をめぐる美と驚き』(後者は共訳)、ゲイル&ラックス『放射線と冷静に向き合いたいみなさんへ』、キーン『スプーンと元素周期表』、ミーオドヴニク『人類を変えた素晴らしき10の材料』ほか多数。


理数系書籍のレビュー記事は本書で309冊目。

この本が発売されたのは3日前の6月16日。偶然なのだがこの日の未明にLIGOから「重力波の2回目の観測」が発表された。狙ったわけではないので、すごいタイミングで刊行されたことになる。

重力波が初めて観測されたのは昨年9月14日で、その発表は今年の2月11日。2回目の観測が成功したのは昨年の12月26日。初観測のことを発表したときには2回目も観測されていたわけだ。

翻訳の元になった本書の英語版が発売されたのは3月末なのでそのスピード出版には驚かされる。そして2人の翻訳者が分担し、わずか2カ月半で日本語版の出版にこぎつけたことになる。短期間で翻訳されたにもかかわらず、日本語の文章は流れるように自然で素晴らしい。(ただし第15章に同じ文章が重複している箇所があったのが惜しかった。)

地元の紀伊国屋書店では先日紹介した「科学の発見: スティーブン・ワインバーグ」と並べて、それぞれ5冊くらいずつ平積みされているから売れている本であることは間違いない。



今年は半分が過ぎようとしているのに物理や数学の教科書は「解析概論」しか読んでいない。少し反省しつつも「読みたくなる科学教養書がこう次々と出てくるのだからしょうがない。」と開き直って、今回も手を出してしまった。

本書は文系読者でも楽しめる科学ドキュメンタリー系の本だ。原書は「Black Hole Blues - and Other Songs from Outer Space(ブラックホール・ブルース - そして宇宙から聞こえるそのほかの歌)」である。

まず観測された初回と2回目の重力波の音を聞き比べてみてほしい。



小鳥のさえずりにも似たこの音は重力波の波形を音声化したものだ。最後のほうがハイピッチになるのは、2つのブラックホールの回転が合体に近づくにつれて速度を増すからである。合体後は静かになってしまう。

次の動画では著者のジャンナ・レヴィン博士がこの音の解説をしている。(日本語字幕付き




発表が行われたときに公開された波形のグラフは、それが重力波であることを明確に示すものだったから、同時に公開された「音の動画」はオマケのようなものだと僕は思っていた。

本書を読むとそれがオマケ以上であることがよくわかる。初めて観測されたほうのブラックホールは地球から14億光年の彼方にある。そこで巨大な衝突がおこり、太鼓を打ち鳴らすように時空間にとどろく。宇宙は私たちが思っていたよりもはるかに「騒がしい」のだという。本書のいたるところで重力波を「音」にたとえた表現が使われている。

重力波として放出された巨大なエネルギーも地球に届く頃には弱まってしまい、LIGOの4キロメートルの観測装置をごくわずかに伸縮させる。その幅は陽子の幅の1万分の1なのだという。

空間の伸縮はレーザー光線の干渉によって検出する。反射鏡は地面に固定するわけではなく空中で吊るし、完全に静止させる。地面に固定すると地上のあらゆる振動と拾ってしまうからだ。というより鏡は「空間に対して固定する」ことが本質的に重要なのである。

初回の観測のときのブラックホールは14億光年も離れている。交通機関による振動だけでなく、海外でおこる地震波、月や太陽の潮汐など、ありとあらゆるものの微弱な振動がノイズとなり重力波の振動をかき消してしまう。

このようなノイズをどうやって除去するかが成功と失敗を分けるかなめになるのだ。そのために音響工学におけるノイズ除去の技術が最大限活用される。

重力波検出の仕組みは素人でも理解できるほど単純だが、観測装置は精度を高めていく過程で複雑さを増していき、米国内の2か所に設けられた観測装置は同じものではないという。

レーザー光の干渉を利用した重力波の検出のアイデアは50年以上前に生まれ、カルテクとMITに小型の実験装置が作られた。本書はこのようなLIGOプロジェクトの誕生前史から先日の輝かしい発表までを記録したヒューマン・ドキュメンタリーである。初めて知ることばかりなので、どなたにとっても読みごたえのある本なのだ。

本の帯には2人の先生による推薦文がある。大栗先生は「こんなことまで書いていいのか!」とお書きになっている。カルテクの教授でいらっしゃる先生なので、そう思うのは無理ないだろうなと思っていたが、部外者の僕でさえ「これ本当に書いて大丈夫?関係者から文句こないの?」という箇所が多かった。著者も天文学者なので仕事がやりづらくならないのかなと他人事ながら心配してしまう。



「書いて大丈夫なの?」という部分は2つある。ひとつはジョセフ・ウェーバーという物理学者が「ウェーバー・バー(ウェーバー棒)」という装置で重力波を観測したと発表し、それがかなり疑わしくなり、最終的に葬り去られてしまったという「事件」とその後のジョセフ・ウェーバーのこと。

そしてもうひとつはLIGOの組織内で起きてしまった人と人の対立と嫌がらせのような話。総責任者と科学者の間で、考え方やアプローチの仕方の違いでその対立は起きてしまったのだ。感情むき出しの対立である。科学者といえどもしょせん人間なんだよなと思わずにいられなかった。その後、この2人はプロジェクトから去ることになる。

著者は関係者へのインタビューをして本書を書き上げたわけだが、この2つ目の事件については「証言」も人によって食い違い、インタビューに応じる人も「匿名」を条件にすることでようやく聞き出せた話である。

もともと成功する見込みがとてもあるとは思えないプロジェクトだったから、予算を獲得するのは大仕事だ。観測装置をどこに建設する問題には政治的な問題もからんできた。関係者がどのように関わったかが嘘偽りなく書かれているのだ。

LIGOプロジェクトの歴史の暗部をさらけ出しているのが本書のいちばんの特徴である。(特徴といっていいのか特長と書くべきなのか僕には判然としない。ただ事実が明かされていくことを楽しんでいたのは事実である。)

アインシュタインが重力波を予言したのは100年前だが彼は検出されることはないだろうと思っていた。1960年代になっても重力波が存在するのかしないのか科学者の間で意見が分かれていた。ようやくその存在が信じられ始めたのは1970年以降になってからだ。計画初期の段階で理論物理学者キップ・ソーン博士がこの課題をどう考えていたか、実験物理学者のライナー・ワイス博士がどのような取り組みを始めたか、このビッグプロジェクトの前史を記録した貴重な本でもある。


最大の山場は「エピローグ」の章。重力波を観測した2015年9月14日のこと、そして翌年の2月に発表するまで極秘扱いだったわけだが、その間に関係者がどのような思いで過ごしたのか。数々の疑念が振り落とされ「これは重力波だ!」という確信に変わる瞬間。彼らはものすごい喜びに満たされる。この章だけでも本書を読む価値はじゅうぶんにあると思う。

章立ては次のとおり。(詳細の目次は記事の最後に掲載しておいた。)

第1章:ブラックホールの衝突
第2章:雑音のない音楽
第3章:天の恵み
第4章:カルチャーショック
第5章:ジョセフ・ウェーバー
第6章:プロトタイプ
第7章:トロイカ
第8章:山頂へ
第9章:ウェーバーとトリンブル
第10章:LHO
第11章:スカンクワークス
第12章:賭け
第13章:藪の中
第14章:LLO
第15章:フィゲロア通りの小さな洞窟
第16章:どちらが早いか
エピローグ


本書はすでに訳者による解説が公開されている。こちらもお読みになるとよいだろう。

『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』訳者解説
http://honz.jp/articles/-/42928

このように本書はヒューマン・ドキュメンタリーが中心の本なので、科学的な解説という意味では弱い。重力波観測のしくみやコンピュータ・シミュレーション、天文学的な解説をお読みになりたい方は「ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明」のほうをお勧めする。


翻訳の元になった英語版はこちら。2016年3月末に刊行されたばかりだ。

Black Hole Blues and Other Songs from Outer Space: Janna Levin」(Kindle版




関連記事:

重力波の直接観測に成功!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a8439e8e4d81d7873422737d7bd1640d

ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/88bf1600687ece47464c862fefe53103

サイエンスZERO 世紀の観測!重力波?~アインシュタイン最後の宿題~
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/45923abf57b1200837afb79bb35127e3

アインシュタイン選集(2): [A8] 重力波について(1918年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7f70d0291e823674435342acba782017


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重力波は歌う:アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち:ジャンナ ・レヴィン



第1章:ブラックホールの衝突
- 天空の”音”を記録する試み

第2章:雑音のない音楽
- 雑音のない音楽を求めて
- ナチスを逃れ、ベルリンからニューヨークへ
- シェラック盤の背景雑音はどうしたら消せるのか
- 時空の「録音装置」をつくる
- 恋に落ちて始めたピアノが人生を変えた
- MIT 20号棟の思い出
- 一般相対論を教えながら学ぶ
- 「物体間で光線を往復させて重力波を測定する」というアイデア
- 1.5メートルの「プロトタイプ」干渉計
- 結果を出さないリスクに耐える
- 立ち消えるプロジェクト
- ドイツチームに水をあけられて

第3章:天の恵み
- 70年代のボヘミアン
- ジョン・ホイーラーとの出会い
- ホイーラーと核兵器開発
- 核兵器の科学から出たブラックホール
- 相対論的天体物理学の黄金時代
- とらえどころのない”重力波”に狙いを定める
- 重力波とは何か、本当に存在するのか?
- ワイスとソーンの邂逅
- ソヴィエトから来た男

第4章:カルチャーショック
- 倹約を旨として
- いつでも渦の中心にいる男
- ヒューズ=ドレーヴァー実験で名を馳せる
- 「スズメの涙」ほどの予算で干渉計をつくり上げる
- 周囲を振り回す「科学界のモーツァルト」
- 鬼のいぬ間の洗濯
- 好条件か、居心地のよさか
- 人間心理を読み違える

第5章:ジョセフ・ウェーバー
- 「ニアミス」に翻弄され続けた先駆者
- われ、銀河系の中心に「音源」を発見せり
- フリーマン・ダイソンの「重力装置」に勇気づけられる
- 雨後の筍のようにつくられ始め「共鳴棒」
- 否定的な結論の蓄積
- 「偽りの信号」の烙印

第6章:プロトタイプ
- カルテクの<40メートル>に潜入
- <40メートル>は誰のものか?
- 「干渉計」はだれのアイデアだったのか?
- L字形をした「光の通路」

第7章:トロイカ
- 「重力波探し」は終わったテーマではない!
- その道は必ずや巨大プロジェクトに通じる
- 救世主、アイザックソン
- 「ブルーブック」提出される
- 7000万ドルのプロジェクト
- MITとカルテクの合同成る
- ドレーヴァーとワイスの間の「緊張」
- LIGOの誕生--奇妙な「トロイカ」の結成

第8章:山頂へ
- パルサーが発見されるまで
- ブラックホールが実在することの裏付けとなる
- なぜ「暗黒」に注目するのか?
- 成し遂げられた重力波の「間接検出」

第9章:ウェーバーとトリンブル
- ウェーバー、ソーンに自分語りをする
- 「身を引け」と勧めたフリーマン・ダイソン
- ウェーバーと連れ添った女性

第10章:LHO
- 黒魔術の心得
- 世界最大のチャンバー
- 42キログラムの透明な鏡
- 虫の問題
- ビームパイプを完全踏破する
- エゴは棚上げに
- 問題はトロイカによる管理体制にあり!?

第11章:スカンクワークス
- 学務部長を解任された人物
- ボイジャー・ミッションのリーダーの座を譲る
- 問題解決に秀で、問題を起こすことに長けた人物
- ヴォートのLIGO計画書、国立科学財団を動かす
- 議会承認を目指す長い闘い
- Observatoryという名称がよくない?
- 政治的な駆け引き
- カルテクの実験家には寝耳に水の「LIGO始動」
- 権威嫌いの「スカンクワークス方式」
- 消えないナチスの影

第12章:賭け
- 物理学者は賭けがお好き
- 日々高まっていった、「重力波あり」のオッズ
- LIGO建設に見合う「確率」はどれくらいか
- 第1世代のLIGOがカバーする領域では足りない
- 最終的には「自然の恵み」待ち

第13章:藪の中
- LIGOグループに生じた亀裂
- 相反する証言
- 常軌を逸した規則を課せられて
- ドレーヴァー外し
- 個人攻撃の犠牲者か、プロジェクトの障害か?
- 「黙ってろ」--財団担当者を怒鳴りつける

第14章:LLO
- アメリカ南部の観測所
- 干渉計を口説く手管の持ち主
- バス、ワニ、林業会社
- 撃ち込まれた銃弾
- コーナーラボへ「這い出す」
- 第2代統括責任者、バリー・バリッシュ
- 3億ドルの予算を得て、息吹き返したプロジェクト
- キリスト教原理主義者との諍い
- 1000任以上からなる国際コラボレーションへ

第15章:フィゲロア通りの小さな洞窟
- <小さな洞窟>での一夜
- 科学者はクライミングウォールの取ってや丸石のようなもの
- 現場のポスドクたちによる検出時期予想
- 基本法則との直接対話はいかにして行なわれるか
- いかにして雑音の中から音を聴き分けるか
- 休む間もなく回り続けるローテーション

第16章:どちらが早いか
- ヴォートのその後
- ワイス、復権したドレーヴァーを案じる
- 最初の科学運用での検出を目指して

エピローグ
- 2015年9月に飛び込んできた”音”
- 「これは訓練じゃない」
- デイヴィッド・ライツィーからの「極秘情報」
- 背中から下りたサル
- ブラックホールは重力波の歌をうたう

謝辞
LIGO科学コラボレーションおよびVIRGOコラボレーションのメンバー
訳者あとがき
情報源に関する注
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