林正彦先生(左)と大栗博司先生(右)
(朝日カルチャーセンターのHPから引用)
昨日の土曜日は朝日カルチャーセンター新宿教室で宇宙論、宇宙物理学の講座を聴講してきた。
超弦理論と観測宇宙
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/327658a9-4e9a-909e-3640-5541e5b00c00
講師:
国立天文台台長 林正彦先生
カリフォルニア工科大学 理論物理学研究所長 大栗博司先生
講座内容:
一般相対論と量子力学を統合する統一理論の最有力候補とされている超弦理論。超弦理論は、宇宙の始まりやブラックホールの謎の解明に応用できるのか。それは観測と一致するのか。観測と理論の最新の知見をもとに、究極の宇宙像を語り合います。
タイムテーブル:
13:00-13:50 人類が見た宇宙:国立天文台台長 林正彦先生
13:50-14:40 超弦理論と宇宙:カリフォルニア工科大学理論物理学研究所所長 大栗博司先生
=休憩=
15:00-17:00 超弦理論と観測宇宙 林正彦先生・大栗博司先生
天文学と理論物理学を代表する超一流のお二人による講座だけあって、講座の予約は早い段階で満席となっていた。場所はいつもの71番教室。3年前にこの教室で物理学の講座を受講するようになってから何度足を運んだことだろう。朝日カルチャーセンターの講座を通じて仲間もでき、講座の後はオフ会をするのも恒例行事になっている。今回参加した「朝日カルチャー仲間」は僕を含めて8人だった。
今回の講座は「宇宙全体」を観測と理論の両面から取り上げるという文字通りスケールの大きい話。天文学と物理学という2つの学問領域からビッグなお二人からお話を聞けるという贅沢極まりない機会だ。そして普段はそれほど密な関わりのない(と僕には思われる)両先生の対談を僕は特に楽しみにしていた。
朝日カルチャーセンターのスタッフによる先生方の紹介の後、講義が始まった。
人類が見た宇宙:国立天文台台長 林正彦先生
林先生がご登壇。まず意外に思ったのは先生がとてもお若いことだった。国立天文台長というと僕は初代の古在由秀先生や2代目の小平桂一先生のような年配の方というイメージを持っていたので、はつらつとお話を始めた林先生にちょっとびっくり。なんだか自分と同世代の感じがして不思議な気分。「
日本の天文学者の系図」というページで見ると林先生は1959年生まれだそうなので3歳年上だということを後で知った。国立天文台長に就任されたのが2012年だから53歳で日本の天文学界のトップになられたわけだ。うーむ、お若い。。。きっと昔は「天文少年」だったのだという印象を持った。
林先生がご用意されたスライドは35枚。僕は中学生の頃から天文少年で、高校時代には小平桂一先生がドイツ語から日本語に翻訳された「
現代天文学―新しい宇宙の姿を求めて (1978年):A.ウンゼルト」や荒木俊馬先生がお書きになった「
現代天文學事典 (1971年)」を読み込んでいたのと、昨年は「
宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス」を読んだので天文学史はひととおり知っている。
けれどもスライドをめくっていると、いくつか知らないことや忘れていることがあるのに気が付いた。聴講してよかったわけだ。
講義は1時間しかない。フォーカスするのは太陽系外の話、宇宙全体を人類がどのように認識してきたかという点に集中していた。ケプラーやニュートンそして冥王星探査の話をしている時間はない。1610年にガリレオが望遠鏡を使って天の川が星の集まりであることを発見してから、それが銀河系という円盤型の宇宙であることをハーシェルが1785年に発見するまで、実に175年もかかったことが解説される。
ニュートンは銀河系のことを知らなかったけれど、
先日紹介したラプラスは知っていたのだなという考えが頭をよぎった。日本の天文学は渾天儀に代表されるように古来から中国由来のものがほとんどだったが1750年以降には地動説などの天文学を含め西洋科学が日本に伝えられたから江戸時代の中期や後期には幕府の天文方の人たちも銀河系のことを知っていたのだろうか?
そもそもハーシェルはどのようにして星の見かけの明るさを測ったのだろう?現在のようにCCDがあったわけではないし。と思ってウィキペディアの「
写真史」のページを見ると世界最初の写真は1827年に撮影されたと書いてある。つまりハーシェルは目視で星の明るさを決めていたわけか。
あれこれ妄想しているうちに講義は進んでいた。先生は終始にこやかにお話される。
銀河系の大きさを直径5.5万光年(現在知られている半分)と発表したのはカプタインで1922年のことだそうだ。(えっ、一般相対性理論の発表より後なの??)
その後、球状星団の分布から太陽が銀河系の端のほうにあることがわかり、その視線速度の観測から銀河系内での太陽の運動がリンドブラッドやオールトによって明らかにされる。また銀河系の渦巻き構造は水素が発する21cm波長の観測によって明らかにされた。
また、銀河系以外の渦巻き星雲がパーソンズによって発見されたのが1845年。直径182cmの望遠鏡による観測によってである。しかし当時はこれが銀河系内にあるのか銀河系外にあるのかがわかっておらず、その論争は1920年まで続いていたそうだ。
それに決着がついたのが1923年(関東大震災の年)。アンドロメダ星雲の中にセファイド(変光星の一種)が見つかり、その変光周期からこの星雲が銀河系外にあることが理解された。
その後、いくつもの渦巻き星雲までの距離が測定され、有名なハッブルの法則によって宇宙が膨張していることが発見される。(1929年、世界大恐慌の年)
でもそれは大きな問題を提示した。過去に遡ると宇宙が一点に集中していたことになってしまう。この問題を回避するために「定常宇宙論」つまり、銀河は互いに遠ざかっているが、それによって希薄となった空間で新たに物質が生まれて銀河が誕生することで、宇宙は無限の過去から未来にかけて一定密度を保ったまま存在し続ける、という理論が提唱された。(でもこれは誤り。)
定常宇宙論がくつがえされたのは1965年のマイクロ波宇宙背景放射の発見だ。(あ、僕が3歳の頃なんだな。)それによってガモフが予想したビッグバン宇宙論が自然な帰結であることが理解される。
その後、マイクロ波宇宙背景放射の精密な観測がなされ、宇宙の大規模構造やビッグバンからわずか8億年後に誕生した銀河の存在が明らかにされた。たとえば「すばる望遠鏡」で観測された天体は宇宙の果てまでの94%である。
マイクロ波宇宙背景放射自体はビッグバン後40万年たった宇宙の姿だ。このとき宇宙は現在の1/1100の大きさ、温度3000K、そして10万分の1の揺らぎが存在していた状態。これは宇宙の年齢が138億歳であること、宇宙が過去から現在にいたるまで極めて「平坦」であること、宇宙初期にインフレーションが起こったことを意味している。
宇宙が平坦だというのは3次元空間のこと。ちなみに残りの6つの次元はごちゃごちゃに曲がって「
カラビ・ヤウ空間」として折りたたまれているらしいというのが超弦理論。
あと「インフレーション」、「ビッグバン」という言葉の使い分けだが、アメリカでは「インフレーション」の後の宇宙膨張のことを「ビッグバン」と呼ぶ流儀になっているが、日本ではインフレーションの時期のことも含めてビッグバンとかつては呼んでいた。けれども近年は日本でもアメリカ流に従った言葉の使い分けをするようになった。
まとめ:
- 人類は宇宙を観測して仮説を立て、それを検証することによって誰からも教わることなく宇宙の本当の姿を理解してきた。(「誰からも」って誰のこと?宇宙人?- 僕のつぶやき)
- その結果、人類は太陽系や銀河系の本当の姿を明らかにし、銀河を発見し、さらに膨張宇宙、ビッグバン、宇宙の平坦性などの考えに至った。
- そのような人類は、宇宙膨張にともなって、星や銀河が誕生・進化し、重元素ができ、地球や生命を作る元素ができ、その結果できた生命が地球上で進化した結果である。
講義はこのような流れだった。
ひとつだけ残念に思ったのが「宇宙の平坦性」である。トポロジーの世界で3次元空間を構成する原子ともいうべき空間の断片は8種類あることが「
サーストンの幾何化予想」として提唱された。この予想は2003年にペレルマンが証明した「ポアンカレ予想」を含んでいること、ペレルマンは「サーストンの幾何化予想」も証明したことを「
トポロジカル宇宙(完全版):根上生也著」という記事で8年前に紹介したことがある。8種類の断片になるためには空間が大きな曲率で曲がっていなければならない。だから「サーストンの幾何化予想」は単に数学の世界だけのことで、物理世界では出る幕がないのかなという気がしたからだ。実際の空間が平坦ではなく断片から構成されていたらさぞ面白いだろうと思ったのだ。
サーストンの幾何化予想とポアンカレ予想
http://www7b.biglobe.ne.jp/~ykoba/geometrization.html
超弦理論と宇宙:カリフォルニア工科大学理論物理学研究所所長 大栗博司先生
続いて登壇されたのが大栗先生。おなじみの超弦理論の解説である。先生の講座は何度も受講しているので、聞いたことのある話ばかりかなと思ってスライドを眺めると、量子もつれについてなど目新しいことが含まれていた。先生が用意したスライドは全部で79枚。
今年はアインシュタインが一般相対性理論を発表してから100周年である。この理論の発想の源は1907年、「人生最高のひらめき」と後に語ったところによる重力と加速度の等価原理である。
物体の質量によって引き起こされる空間や時間の伸び縮みを定量的に表したのが一般相対性理論によって導かれた重力場の方程式だ。この方程式を導くにあたって、彼は50年以上も前に発表された「
リーマン幾何学」を必要としていた。
ところがこの幾何学をアインシュタインは理解できていなかったので、当時数学の最重要拠点であったゲッチンゲン大学でその話をする。すると当代最高の数学者のダフィット・ヒルベルトは「私ならその問題を解ける」と宣言した。このようにしてアインシュタインとヒルベルトのデッドヒートが始まったのだ。結局この競争はヒルベルトがアインシュタインより5日前に発表したのだが、彼はこれがアインシュタインの業績だと認めることになる。
この方程式によって予言されたのは次の3つだった。
1) 重力レンズ効果(1911年、1936年):
参考記事
2) 重力波(1916年):
参考記事1 参考記事2
3) 宇宙の膨張(1917年):
参考記事
重力レンズ効果は1919年に英国のエディントンが日食観測によって検証に成功。また1937年にはフランツ・ツビッキーによって巨大星雲による重力レンズ効果は観測可能だと予言され、1933年に予言していた「暗黒物質(ダークマター)」の確認に使えるとされた。現在、重力レンズは天文学で暗黒物質の探索に使われている重要な技術である。
重力波は光の速さで伝わる。間接的には連星パルサーの周期の減少により定量的に観測された。(テイラーとハルスによる功績)
直接的な検証のために現在
LIGO (Caltech & MIT)や
KAGRAなどの重力波望遠鏡が建設中である。
宇宙の膨張については林先生の講義で解説があったとおり、1929年にウィルソン山で行なわれた観測によって確認された。(ハッブルの法則)現在では宇宙の年齢は138.2億年とされている。(有効数字が4桁なのは驚異的である。)
初期宇宙では重力だけでなく量子力学が重要。マイクロ波宇宙背景放射の観測がより精密に行なわれたことにより、初期宇宙からの光の揺らぎ、宇宙は空間方向に平坦であることが確認された。この光の揺らぎはインフレーション時代の量子揺らぎを起源とする説が有力。
重力は時間や空間を曲げること(古典力学的世界)、そして量子力学ではものごとが不確定(量子力学的世界)の2つを組み合わせると時空間が不確定になる。このあたりのことを詳しく知るためには、次の3冊をお読みいただきたい。
- 「
重力とは何か:大栗博司」
- 「
強い力と弱い力:大栗博司」
- 「
大栗先生の超弦理論入門」
ここから超弦理論の解説。
- 超弦理論では物質の基本単位が「点」ではなく「ひも」であり、素粒子の標準模型に含まれる17種類の粒子が1種類の弦(ひも)の振動で現れる。
- 超弦理論では時空は9+1次元とされ、われわれは3+1次元の時空間を経験している。
- 6つの余計な次元は「
カラビ・ヤウ空間」になり直接観測できないと考えられていて、3世代の素粒子やその間に働く力、「
ヒッグス粒子」などの構造は、カラビ・ヤウ空間の幾何から生まれる。超弦理論の課題の一つはカラビ・ヤウ空間の幾何学から素粒子現象について定量的な予言を導くことである。
- カラビ・ヤウ空間の幾何学は複雑すぎて、その上の2点の間の距離を測る公式(計量テンソル)すら具体的にはわかっていない。
その問題を解決するために使われるのがトポロジーである。これを使えばカラビ・ヤウ空間の計量を知らなくても計算できる量があるからだ。(なるほど、トポロジー=位相幾何学だからそれはオイラー数や巻き数などの位相不変量のことか。僕のつぶやき。)
- クォークの種類=|カラビ・ヤウ空間のオイラー数|
(1984年:キャンデラス、ホロビッツ、ストロミンジャー、ウィッテン)
これを一般化したのが
- トポロジカルな弦理論:超弦理論のある種の確率振幅を厳密に計算する数学的方法
(1994年:ベルシャドスキー、チェコッティ、大栗、バファ)
量子重力の検証可能性については、2014年3月にBICEP2実験は宇宙背景マイクロ波輻射のB-モード偏光を観測したと発表。(
参考記事)
この偏光が初期宇宙を起源にしているのなら、原始の重力波を観測したことになるはずだった。そしてこの発表が正しければ次の5つのことが確認されたことになったはず。
- CERNのLHC実験の100京倍のエネルギー現象であること。
- 宇宙の初めの1兆分の1兆分の1兆分の1秒の間の観測を意味すること。
- 初期宇宙のインフレーション理論の検証。
- 量子重力効果の直接観測。
- 観測された偏光の大きさは超弦理論から説明することが難しいほどの強さだったこと。
残念ながら、今回観測された偏光は、銀河系内の星間塵の効果による可能性が高くなった。
現在予定されている観測計画には次のようなものがある。
-
LiteBIRD: 偏光観測衛星
-
KAGRA: 重力波望遠鏡
-
TMT: 30メートル望遠鏡
観測された偏光の大きさは超弦理論から説明することが難しいほどの強さだった。今後の重力波の観測は、"On the Geometry of the String landscape and the Swampland"などで、初期宇宙のインフレーションを引き起こすインフラトン場の変動の大きさに一般的な上限が知られていた。大栗、バファ(2007年)- 初期宇宙の観測による超弦理論検証の機会である。
加速器としての初期宇宙:インフレーション時代が観測できればLHCの100億倍のエネルギー現象が見える。また素粒子の標準模型を超える新粒子の痕跡が宇宙背景マイクロ波輻射の相関として観測される可能性がある。
次に「量子もつれに注目した量子重力理論の展開」にテーマがうつる。
アインシュタインは、量子力学の創設と発展にも重要な貢献をしている。(
参考記事)
- 1905年:光電子効果の理論
- 1909年:光についての、波と粒子の可能性
- 1916年:光子の自然放出・誘導放出・吸収の理論
- 1917年:ボーア・ゾンマーフェルト量子化条件の座標変換不変な表現 ⇒ 量子カオスの萌芽
- 1925年:ボーズ・アインシュタイン凝縮
~~ コペンハーゲン解釈への批判 ~~
- 1935年:量子もつれの現象を指摘
量子もつれ
- 1935年:アインシュタイン-ポドルスキー-ローゼンのパラドックス「奇怪な遠隔作用」
- 1964年:ベルの不等式で検証可能になる(
参考記事)
- 1981年:アスペらの2光子実験で確立(
参考記事)
量子もつれについては受講者の要望により「対談」の時間枠を使って詳しく解説された。(
参考記事)
量子もつれは量子計算や量子暗号の新技術であるとともに、強結合電子系の新物質に本質的に重要である。またこの現象は一般相対論と量子力学の統合においても、最も重要な話題として浮上してきた。
- 一般相対論は時空間の局所的な幾何
- 量子もつれは「奇怪な遠隔作用」
この話題の延長としてあるのがブラックホールの物理学である。
- 近年出されたブラックホールの防火壁問題
大栗先生のブログ記事:
http://planck.exblog.jp/19026474/
量子もつれが時空を形成する仕組みを解明~重力を含む究極の統一理論への新しい視点~
http://www.ipmu.jp/ja/node/2175
最後に大栗先生は物理学と生命科学を次のように比較し、紹介された。(ブラックホールとショウジョウバエの対応が可笑しいと思った。)
重力理論⇔生物学
ブラックホール⇔ショウジョウバエ
情報理論⇔化学
量子もつれ⇔分子
ホログラフィー原理⇔分子生物学
宇宙の始まりの解明⇔がんの撲滅
超弦理論と観測宇宙 林正彦先生・大栗博司先生
10分間の休憩を挟んで両先生の対談が受講生からの質問を含める形で行なわれた。
まず大栗先生の「TMT(30メートル望遠鏡)に期待することは何でしょうか?」という問いを受けて林先生は次のことを解説された。
- すばる望遠鏡は130億年前の宇宙を観測できるわけだが、TMTが目指しているのは宇宙が始まってから3億年前の宇宙、
First Star(宇宙で最初に誕生した星)の観測を目指している。
- 太陽系外の惑星の観測、そしてその惑星に生物がいるかもしれないことを示すバイオマーカー(オゾンや酸素、光合成の有無を示すRed Edgeと呼ばれる赤外線の反射)の観測を期待している。
- 宇宙に生命体がいる確率をあらわす「ドレイク方程式」のPlanetaryパラメータとHabitable Zoneパラメータはともに10%くらいだと近年わかってきたそうだ。わかっていないのはその惑星で原始的生物が知的生物になる確率と文明の存続期間である。
次に大栗先生が受講生からの質問を受けて「ワームホール」の解説をされた。「
インターステラー」という映画を推薦されていた。(「
インターステラー ブルーレイ&DVDセット」)
また受講生から「超弦理論の弦やブレーンはいかにもとってつけたような存在で、問題を解決するためのまやかしのように思えてしまう。」という感想に対して、大栗先生は次のように回答された。
超弦理論は日常の言葉で説明するとそのような印象を持ってしまうかもしれないが、数学的に厳密な理論であること。それを正確に理解するためには、大学、大学院の物理学や数学を学ぶことが必要である。(受講者の多くからため息が漏れた。とはいっても僕はちゃんと理解できるまで頑張って勉強するぞと思ったわけだが。)
同じ文脈で「宇宙の加速膨張」の理由として考えられている暗黒エネルギーについてであるが、これもそれがどのようなものであるかはわかっていないことが解説された。
ニュートン力学や電磁気学にはパラメータ(物理定数)がある。超弦理論にはあらかじめ与えるパラメータがない。超弦理論はパラメータがどうして決まるのかを導き出すことを目指している。
最後に林先生から大栗先生への質問があった。超弦理論での時空次元を計算するときに
1+2+3+....+∞ = -1/12
という計算が使われるのだが、どうにも不思議でならないという話。
大栗先生によるとこれは「繰り込み」を加えることによって答がマイナスになっていること。高校レベルで理解できる(厳密性を犠牲にした)計算方法は「
大栗先生の超弦理論入門」の巻末に掲載されている。同じような式はカシミールエネルギーの計算でも出てくる。
超弦理論の入門書を読んでいたら、1+2+3+4+(Yahoo!知恵袋)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13115734303
同じ宇宙を研究しているとはいえ、専門領域が違うと学ぶ数学はずいぶん違うのだろうと僕は想像していた。
講座の後は、いつもどおり朝日カルチャー仲間でオフ会をして過ごした。
林先生、大栗先生、今回も楽しくてためになる講義をありがとうございました!
お勧め本の紹介:
大栗先生の著書3冊を読んだ後は、次の2冊を読まれるとよいだろう。どちらも「事典」であるが頑張れば通読可能な分量である。網羅的でコスパがとてもよく、刊行されたのが最近であるのがお勧めな理由だ。
「
新・天文学事典 (ブルーバックス)」(2013年刊行)
「
新・物理学事典 (ブルーバックス)」(2009年刊行)
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