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巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る: 本間希樹

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巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る: 本間希樹」(Kindle版

内容紹介:
太陽の100億倍もの質量を持つ巨大ブラックホールは、強力な重力で光さえ飲み込む一方で宇宙でいちばん明るく輝き、光速にちかい速さの「ジェット」を放出しています。200年以上前に予言されながら、まだ誰も見たことのなかったブラックホールの姿が、最先端の天文学によって明らかになりつつあります。
強力な重力で周囲の物質や光を引きつけ飲みこむ一方で、飲みこんだら最後、それらを二度と外に出さない。ブラックホールは、そんな一方通行の弁のような性質を持った、大変不思議な天体です。
SFの世界ではおなじみの天体ですが、こんなものが本当に存在するのでしょうか?
じつは、最近の観測から宇宙にはこのような天体が多数存在することがわかってきています。
ブラックホールを科学的な形で初めて提唱したのは、イギリスのジョン・ミッチェルという科学者で1784年のことでした。さらに、20世紀になると、アインシュタインによる一般相対性理論が、ブラックホールに論理的な裏付けを与えます。そして現在、人類はようやくブラックホールの姿を「見る」ことができる力を手に入れました。
それは、電波干渉計という超高性能の電波望遠鏡です。この望遠鏡の視力は人間でいうと300万にも達します。これは、地球から月面上のテニスボールが見えるくらいの視力に相当します。
本書では、この最高の望遠鏡を使って今まさに観測が進められている、巨大ブラックホール直接撮像の挑戦に迫ります。

2017年4月19日刊行、272ページ。

著者について:
本間希樹(ほんま まれき)
ホームページ: https://www.miz.nao.ac.jp/staffs/MarekiHonma/index.htm
1971年アメリカ合衆国テキサス州生まれ。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程を修了し、博士(理学)の学位を取得。現在、国立天文台水沢VLBI観測所教授。専門は、超高分解能電波観測による銀河系天文学。特に、銀河系の構造研究と、巨大ブラックホールの研究。現在、巨大ブラックホールを事象の地平線スケールまで分解する、EHT(Event Horizon Telescope)プロジェクトに日本側責任者として参加し、銀河の中心部にあるとされる巨大ブラックホールの存在の確認に挑んでいる。


理数系書籍のレビュー記事は本書で404冊目。

昨夜NHK BSプレミアム で放送された『「コズミックフロント☆NEXT」 史上初!ブラックホール直接観測』をみなさんはご覧になっただろうか?再放送は4月17日(水)午後11時45分からあるので、ぜひご覧になってほしい。

本書はこの番組に出演された本間先生がお書きになったもの。一昨日発表された史上初のブラックホールの画像をEHTプロジェクトの日本チームのリーダーとして発表をされた方である。記者会見で本間先生が登壇されたのは、記者会見動画開始から4分30秒後だ。



史上初!ブラックホールを撮影し、その存在を証明
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a3bdd0676cf497a9731a729d3a0da5a4


いま読むなら、この本しかない!ブラックホールブームに乗せられて、予定を変更して本書を読んでみた。先月末からブラックホールを解説した読書が続いているのだが、これはたまたまのことである。これまで読んでいたのは理論物理学者がお書きになった本ばかり。本間先生は電波天文学がご専門の「観測天文学者」である。同じ一般相対性理論を起源としているのに、理論物理学者と観測天文学者の研究内容がまったく違うと思ったのが本書を読んでいちばん思ったことだ。そして両者の研究に現在も共通するのが一般相対性理論アインシュタイン方程式である。

アインシュタイン方程式(重力場の方程式): 解説動画


理論物理学者は事象の地平面やホーキング放射、情報パラドックス、特異点問題など素粒子物理学や量子情報理論、量子重力理論など目に見えないことがらに関心がある。それに対し観測天文学者の関心は、文字通り観測できる対象、事象の地平面の外側にある物質の種類や構造、運動だ。ブラックホールという同じ対象を研究しながら、一部が重なるにせよ本書には知らないことが(特に後半で)多く、大いに刺激を受けた。

章立てはこのようになる。

第1章 ブラックホールとは何か?
第2章 銀河の中心に潜む巨大な穴
第3章 200年前の驚くべき予言
第4章 巨大ブラックホール発見前夜
第5章 新しい目で宇宙を見る――電波天文学の誕生
第6章 ブラックホールの三種の神器
第7章 宇宙は巨大ブラックホールの動物園
第8章 巨大ブラックホールを探せ!
第9章 進む理解と深まる謎
第10 章 いよいよ見える巨大ブラックホール

第1章から第3章までは理論物理学を(教養書であっても)かじったことがある人ならば既知の内容だ。特にブラックホールの提唱者のジョン・ミッチェルとピエール=シモン・ラプラスが想定したブラックホールの違いについて書かれていたのが、僕にとっては初めて得た知識だった。

第4章から天文学固有の解説になる。しかし宇宙膨張の発見など理論物理学の本との共通点も多い。光学望遠鏡による天文学史である。

第5章と第6章で電波天文学、X線天文学(そして赤外線天文学)の時代の解説がされる。中学生のとき「電波でみた宇宙―電波天文学入門 (1972年) (ブルーバックス) 」や「暗黒星雲を探る―赤外線天文学の世界 (1976年) (ブルーバックス) 」を読んでいたことを思い出した。

第7章から第9章が巨大ブラックホールの話。活動銀河中心核やその分類が複雑化していること、ブラックホール周辺の降着円盤やジェットの構造、運動など、初めて知ったことがほとんどだった。第9章「進む理解と深まる謎」で、巨大ブラックホールに関して、何がわかっていないかが提示される。

そして最終章の第10章で(本書執筆時点での)今後の取り組み、すなわちEHTプロジェクトによるブラックホールシャドウの撮影について紹介がされる。その成果が一昨日発表されたわけだ。昨夜放送された『「コズミックフロント☆NEXT」 史上初!ブラックホール直接観測』を見て、世界6か所の電波望遠鏡を使って行われた観測のリハーサルと本番では、アクシデントがおこりプロジェクト・リーダーとメンバーはとてつもないプレッシャーにさらされていたことがわかった。それだけに予想どおりの画像が得られたとき(2018年6月)の感動と達成感は想像できないほど大きいものだったろう。

人類が初めて目にしたブラックホールの姿



もう1冊ブルーバックス本を紹介

なお、ブルーバックスでは次の本もお勧めだ。本間先生が観測天文学者であるのに対し、大須先生は理論天文学者である。降着円盤の構造や運動について本間先生の本では省略されているので、大須先生の本をお勧めになっている。第3章までは理論面、観測面で一般相対性理論やシュヴァルツシルト解、チャンドラセカールの白色矮星から中性子星、クェーサーの発見などブラックホール史が解説される。ブラックホール周囲の降着円盤やジェットに関して詳しく知りたい方は、こちらもお読みになるとよい。本間先生の本と重複するところがあるだろうが、第6章以降は大須先生のご専門の領域の話として新鮮に楽しめると思う。なお大須先生の本のKindle版は固定レイアウトである。刊行されたのは2011年、「連星ブラックホールの合体による重力波が初観測」された2015年より前であることにご注意いただきたい。

ゼロからわかるブラックホール: 大須賀健」―空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム(Kindle版


内容紹介:
アインシュタインの一般相対性理論が予言したおそるべき暗黒天体ブラックホールは、激しい論争の末にその実在が明らかになり、いまもなお人類に多くの難問を突きつけている。超巨大ブラックホールの形成、光り輝くガス円盤、噴出するジェットのすさまじいパワー、ホーキング放射による蒸発などを世界に先駆けシミュレーションで追究する著者が「絶対に誰にでもわかるように」と宣言して書いたブラックホール入門書の決定版!

最新テーマまで驚くほどわかる!
暗黒なのに宇宙一明るい! いずれ地球も吸い込まれる? ジェットの超絶パワーの理由! ホーキング放射とは?

ゼロから最先端まで一気読み!
アインシュタインの一般相対性理論が予言したおそるべき暗黒天体ブラックホールは、激しい論争の末にその実在が明らかになり、いまもなお人類に多くの難問を突きつけている。
超巨大ブラックホールの形成、光り輝くガス円盤、噴出するジェットのすさまじいパワー、ホーキング放射による蒸発などを世界に先駆けシミュレーションで追究する著者が「絶対に誰にでもわかるように」と宣言して書いたブラックホール入門書の決定版!

まずざっくりと……次にくわしく
大須賀流の解説とシミュレーションでブラックホールが頭の中にできあがる!

2011年6月21日刊行、272ページ。

第1章 ニュートン力学のブラックホール
第2章 一般相対論のブラックホール
第3章 大論争! ブラックホールは実在するか?
第4章 超巨大ブラックホールの発見
第5章 超巨大ブラックホールの謎
第6章 ガス円盤1 3種のガス円盤
第7章 ガス円盤2 磁場の役割
第8章 ブラックホール・ジェット
第9章 ホーキング放射とブラックホールの蒸発
第10章 ブラックホールを見る

ブラックホールに関する本: Amazonで検索


関連記事:

史上初!ブラックホールを撮影し、その存在を証明
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a3bdd0676cf497a9731a729d3a0da5a4

ホーキング、ブラックホールを語る:BBCリース講義
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6fb5c3578db1c26382c831983fd44e04

ホーキング、宇宙を語る:スティーヴン・W. ホーキング
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1e3dbc9b3d10d4a9b6518b6b32429e22

ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/76795b03e7dc89cd08dac67dc25b73ab

ブラックホール戦争:レオナルド・サスキンド
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c8ad22de70df7be8e51a066ca8354106

ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論:小林晋平
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ホーキング博士の訃報に接し (Stephen Hawking passed away)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/63860b8ac08b47f1fc9c5cbac3f9ca8f

神は老獪にして…: アブラハム・パイス:アインシュタインの人と学問
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d9258ed7a2d52173116ccd6e61ba0881

映画『インターステラー(2014)』
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/58711fc5335ca00f51a5d22df3f6cc58


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巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る: 本間希樹」(Kindle版


まえがき

第1章 ブラックホールとは何か?
あらゆるものを吸い込む時空の穴。それは、宇宙に存在するもののなかで、最も奇妙で謎に満ちた天体です。ブラックホールは、物理学ではどのように考えられているのか、まずは概要を解説します。
- ブラックホールとは?
- 光も重力も身近な存在
- 重力とニュートン力学
- 脱出速度
- ブラックホールの半径
- とんでもなくコンパクト!
- 恒星の進化とブラックホール
- 白色矮星--燃え尽きた太陽
- 中性子星--ブラックホールの一歩手前の天体
- 歴史にも残る超新星爆発
- 星の最後としてのブラックホール
コラム:脱出速度の導出

第2章 銀河の中心に潜む巨大な穴
本書の主役はただのブラックホールではありません。「巨大」ブラックホールです。太陽の100億倍もの重さを持ち、宇宙で一番明るく輝く常識はずれの天体の、まさに桁違いのスケールを実感してください。
- 銀河の中心に鎮座するブラックホール
- 突出した巨人
- じつは小さい巨大ブラックホール
- 巨大ブラックホールはとんでもなく明るい!?
- ブラックホールは重力エネルギーで輝く
- 驚異のエネルギー解放効率
- 身の回りのエネルギー:燃焼反応の場合
- 原子力発電所の場合
- 核融合--未来のエネルギー源?
- 夢のブラックホール発電所
- 巨大ブラックホールの現在の描像
- 謎だらけの巨大ブラックホール

第3章 200年前の驚くべき予言
巨大ブラックホールが科学の歴史に登場したのは、今から200年以上前の、1748年のことです。銀河という概念さえ持たなかった当時の科学者は、どのようにブラックホールを予言したのでしょうか。
- ブラックホールの提唱者:ジョン・ミッチェル
- 18世紀の天文学事情
- 19世紀はブラックホールの暗黒時代
- 光をめぐる論争
- 光は粒子であり波である
- 相対性理論の誕生
- 光の折れ曲がりの観測
- シュバルツシルト解の発見
- 一般相対性理論のさらなる予言
- 重力波--時空のさざ波
コラム:日常生活にも欠かせない相対性理論

第4章 巨大ブラックホール発見前夜
宇宙がたくさんの銀河の集まりであることを認識するようになった人類は、そのなかでひときわ明るく輝く「活動銀河中心核」の存在に気がつきます。じつは、これが巨大ブラックホールの輝きだったのです。
- 大望遠鏡による星雲観測時代の到来
- スペクトルの観測
- 活動銀河中心核の発見
- 熱く輝く活動銀河中心核
- 銀河の運動速度
- 宇宙ジェットの発見
- 星雲とは何か
- 銀河宇宙の確立
- 宇宙は膨張している!
- 活動銀河中心核とセイファート銀河

第5章 新しい目で宇宙を見る――電波天文学の誕生
それは、今から80年前、ある電波技師の偶然の発見から始まりました。その後、電波天文学は急速な発展を遂げ、巨大ブラックホールの存在を解き明かすための重要な手段となっていきます。
- ジャンスキーによる宇宙電波の発見
- 電波強度の単位ジャンスキー(Jy)
- 電波天文学を興したリーバー
- ピンボケ写真から始まった電波天文学
- 電波干渉計の登場
- 干渉計はとっつきにくい!?
- 干渉計で天体の方向を決める
- アンテナ1台の干渉計
- 現代の干渉計の生みの親
- クェーサーの発見
- 巨大ブラックホール説の登場
コラム:日本が誇る発明品「八木・宇田アンテナ」

第6章 ブラックホールの三種の神器
電波やX線による新たな観測はブラックホールの理解を一気に飛躍させました。見えてきたのは、「黒い穴」のまわりで宇宙一明るく輝く「降着円盤」、そして、光速に匹敵する速度で放出される「宇宙ジェット」の存在です。
- クェーサーのエネルギー源
- エネルギー論を再び
- 巨大ブラックホールの食欲
- 重いブラックホールの方が大食い
- X線とブラックホール
- X線天文学の誕生
- X線天文学黎明期の日本人の活躍
- はくちょう座X-1
- 地球規模の巨大望遠鏡VLBI
- きわめて小さいクェーサーの中心部
- ジェットの超光速運動
- ブラックホール研究の三種の神器
- 降着円盤

第7章 宇宙は巨大ブラックホールの動物園
巨大ブラックホールの観測が進むにつれ、宇宙にはさまざまな性質を持つ巨大ブラックホールがあることがわかってきました。穴に物が落ちるだけの単純な天体が、なぜこのような多様性を示すのでしょうか。
- 活動銀河中心核の分類
- 複雑化する種族
- 宇宙は活動銀河中心核の「動物園」
- 統一モデル
- 活動性の大小を決める降着率
- 他力本願な活動銀河中心核たち
- ブラックホール自身の性質
- 隠れたブラックホールはあるか?

第8章 巨大ブラックホールを探せ!
あらゆる銀河の中心にブラックホールがあるならば、私たちの住む天の川銀河の中心にも、巨大ブラックホールが存在するのでしょうか?世界中の天文学者が銀河の中心部に注目しています。
- 銀河中心の質量決定
- まだまだ弱いブラックホールの証拠
- アンドロメダ銀河のブラックホール
- より良い証拠を求めて
- NGC4258の高速回転円盤
- 銀河系中心のブラックホールいて座Aスター

第9章 進む理解と深まる謎
巨大ブラックホールの研究が進み、その理解が深まっていくとともに、新たな謎も多く生まれました。現在も残された、巨大ブラックホールに関する大きな謎と、その解決の可能性について紹介します。
- 巨大ブラックホールの起源
- 中間質量ブラックホール
- 重力波を放出する連星ブラックホール合体
- 謎に包まれた現在の巨大ブラックホールの姿
- 円盤の粘性のもとは何?
- 非標準円盤
- 消えゆくエネルギー
- ブラックホールジェットの加速の謎
- 見え始めたジェットの加速構造
- ブラックホールそのものに残された謎
コラム:巨大ブラックホール研究でも活躍するスパコン「アテルイ」

第10 章 いよいよ見える巨大ブラックホール
巨大ブラックホールは本当に存在するのでしょうか?その究極の証明は、宇宙に浮かんだ「穴」を写真に撮ることです。そして、人類が、初めて巨大ブラックホールの姿を目にする瞬間がいよいよ近づいています。
- 見えそうなブラックホールはどれ?
- ブラックホールの「影」を狙え!
- 目指せ、視力300万
- EHTプロジェクト
- いて座Aスターのミリ波観測実験
- M87のジェットの根元
- いて座Aスター周囲の磁力線
- ミリ波VLBIに革命をもたらすALMA
- ALMAのVLBI観測を支える先端技術
- 「解けない方程式」を解く
- スパースモデリングで視力アップ
- 目前にせまった巨大ブラックホールの直接撮像

あとがき

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