人類が初めて目にしたブラックホールの姿
日本時間4月10日22時、世界6か所から同時発表のライブ配信で史上初のブラックホール画像が公開された。専門のページで詳しい解説がされているので、記録として手短かにブログ記事として残しておこう。今回は日本語で発表が見れたのがよかった。
記者会見:イベント・ホライズン・テレスコープによる研究成果
本間先生の解説開始: 4分30秒後
ブラックホールの画像公開: 9分28秒後
質疑応答開始: 38分16秒後
ブラックホールが丸い形で観測される様子を説明する動画=国際研究チーム提供
黒い部分がブラックホールではない。ブラックホールの事象の地平面(ブラックホールの表面)は黒い部分の40%の直径ほど。(40%はだいたい1/2.6)、この動画を見ると意味がよくわかる。
How to Understand the Image of a Black Hole
今回撮影されたブラックホール(正確にはブラックホールの影)の質量は太陽の65億倍だという。2015年9月に重力波初検出をもたらしたブラックホール連星の質量は、それぞれ太陽質量の30倍程度であることから、いかに巨大なブラックホールであることがおわかりだろう。またこのブラックホールは5500万光年離れたM87銀河の中心部にあるので、宇宙全体からみるとかなり近い場所にある。(重力波初検出のときのブラックホールは13億光年離れている。)
会見が行われる前にしていたツイート: 連投ツイート
会見中にしていたツイート: 連投ツイート
会見で映された主なスライドを載せておこう。
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テレビ朝日の報道ステーションでも取り上げられた。
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ブラックホールは1915年に発表された、アインシュタインの一般相対性理論によるアインシュタイン方程式(重力場の方程式)から理論的に導かれる。これは質量のある物体が存在すると、その周囲の空間の長さが縮み(結果として空間が曲がる)、時間が遅れることを示す数式だ。しかし、アインシュタイン自身はブラックホールのようなものは現実の宇宙には存在しないとし、否定的な論文も書いたそうだ。空間が曲がることの意味がわからない人は「宇宙の形、ガウスの曲面論と内在幾何(第1回)」から始まる連作記事をお読みいただきたい。
アインシュタイン方程式(重力場の方程式): 解説動画
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意味はこのようなものである。
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この式からカール・シュヴァルツシルトが1916年に導いたのがシュヴァルツシルト解というブラックホールをあらわす最初の解である。(球対称で回転していないブラックホール)
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学んでみたい方は「ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論:小林晋平」や「一般相対性理論に挑戦しよう!」をお読みになるとよい。
その後「ライスナー・ノルドシュトロム解(1916、1918)」、「カー解(1963)」、「カー・ニューマン解(1965)の順に発見されていった。
シュバルツシルト解(電荷を持たず、角運動量も持たない解)
ライスナー・ノルドシュトロム解(電荷を持ち、角運動量を持たない解)
カー解(電荷を持たず、角運動量を持つ解)
カー・ニューマン解(電荷を持ち、角運動量も持つ解)
参考:「ブラックホールの種類」
1965年までに発見されたのは「数式上」であることにご注意いただきたい。この分野のパイオニアのひとりホイーラー博士がブラックホールという名称を考え出したのは1967年のことであり、ブラックホールの存在が白鳥座X-1の観測により間接的に検証されたのが1971年のことだ。2015年になるまでブラックホールの存在は確定的ではなかった。だから1916年から1971年までブラックホールは理論上の存在だったのである。
イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・プロジェクトによる今回の成果は、ブラックホール天文学の幕開けであり、ノーベル物理学賞級であることは間違いない。ただ、国際チームであること、協力者の人数が多いことから、受賞者を選考するのは相当困難だと想像している。
ともあれ、このようなライブ配信を見ると毎回感動させられる。この10年の間にヒッグス粒子の発見、重力波の直接初観測、重力波を中性子星で観測、ブラックホールの直接撮影という人類史に残る発見を目の当たりにできる僕たちは、本当に恵まれているとじみじみ思うのだ。
4月11日午後10時00分~ 午後11時00分にコズミック フロント☆NEXT「史上初!ブラックホール直接観測」が放送される。お見逃しなく!
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内容:強烈な重力を持つ魔の天体・ブラックホール。アインシュタインが予言した謎の天体だ。このブラックホールを直接観測しようという、史上初のプロジェクトが進められている。世界各地の望遠鏡をネットワークで結んで、仮想的に地球サイズの巨大望遠鏡を作ったのだ。しかし、10年に及ぶ準備期間をへて始まった観測では、次々とトラブルが発生。研究者たちに難題が襲いかかった。果たしてその結果は?最新の研究成果を密着報告!
アメリカやヨーロッパで行なわれた記者会見は、こちらの動画でご覧いただける。
Scientists From The NSF Hold Conference On Results From The Event Horizon Telescope | TIME
Breakthrough discovery in astronomy: First Black Hole image
関連記事:
ホーキング、ブラックホールを語る:BBCリース講義
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6fb5c3578db1c26382c831983fd44e04
ホーキング、宇宙を語る:スティーヴン・W. ホーキング
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1e3dbc9b3d10d4a9b6518b6b32429e22
ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/76795b03e7dc89cd08dac67dc25b73ab
ブラックホール戦争:レオナルド・サスキンド
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c8ad22de70df7be8e51a066ca8354106
ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論:小林晋平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f4401f2ce79451070b7b9c089f304315
ホーキング博士の訃報に接し (Stephen Hawking passed away)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/63860b8ac08b47f1fc9c5cbac3f9ca8f
神は老獪にして…: アブラハム・パイス:アインシュタインの人と学問
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d9258ed7a2d52173116ccd6e61ba0881
映画『インターステラー(2014)』
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/58711fc5335ca00f51a5d22df3f6cc58
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日本時間4月10日22時、世界6か所から同時発表のライブ配信で史上初のブラックホール画像が公開された。専門のページで詳しい解説がされているので、記録として手短かにブログ記事として残しておこう。今回は日本語で発表が見れたのがよかった。
記者会見:イベント・ホライズン・テレスコープによる研究成果
本間先生の解説開始: 4分30秒後
ブラックホールの画像公開: 9分28秒後
質疑応答開始: 38分16秒後
ブラックホールが丸い形で観測される様子を説明する動画=国際研究チーム提供
黒い部分がブラックホールではない。ブラックホールの事象の地平面(ブラックホールの表面)は黒い部分の40%の直径ほど。(40%はだいたい1/2.6)、この動画を見ると意味がよくわかる。
How to Understand the Image of a Black Hole
今回撮影されたブラックホール(正確にはブラックホールの影)の質量は太陽の65億倍だという。2015年9月に重力波初検出をもたらしたブラックホール連星の質量は、それぞれ太陽質量の30倍程度であることから、いかに巨大なブラックホールであることがおわかりだろう。またこのブラックホールは5500万光年離れたM87銀河の中心部にあるので、宇宙全体からみるとかなり近い場所にある。(重力波初検出のときのブラックホールは13億光年離れている。)
会見が行われる前にしていたツイート: 連投ツイート
会見中にしていたツイート: 連投ツイート
会見で映された主なスライドを載せておこう。








テレビ朝日の報道ステーションでも取り上げられた。



ブラックホールは1915年に発表された、アインシュタインの一般相対性理論によるアインシュタイン方程式(重力場の方程式)から理論的に導かれる。これは質量のある物体が存在すると、その周囲の空間の長さが縮み(結果として空間が曲がる)、時間が遅れることを示す数式だ。しかし、アインシュタイン自身はブラックホールのようなものは現実の宇宙には存在しないとし、否定的な論文も書いたそうだ。空間が曲がることの意味がわからない人は「宇宙の形、ガウスの曲面論と内在幾何(第1回)」から始まる連作記事をお読みいただきたい。
アインシュタイン方程式(重力場の方程式): 解説動画

意味はこのようなものである。

この式からカール・シュヴァルツシルトが1916年に導いたのがシュヴァルツシルト解というブラックホールをあらわす最初の解である。(球対称で回転していないブラックホール)

学んでみたい方は「ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論:小林晋平」や「一般相対性理論に挑戦しよう!」をお読みになるとよい。
その後「ライスナー・ノルドシュトロム解(1916、1918)」、「カー解(1963)」、「カー・ニューマン解(1965)の順に発見されていった。
シュバルツシルト解(電荷を持たず、角運動量も持たない解)
ライスナー・ノルドシュトロム解(電荷を持ち、角運動量を持たない解)
カー解(電荷を持たず、角運動量を持つ解)
カー・ニューマン解(電荷を持ち、角運動量も持つ解)
参考:「ブラックホールの種類」
1965年までに発見されたのは「数式上」であることにご注意いただきたい。この分野のパイオニアのひとりホイーラー博士がブラックホールという名称を考え出したのは1967年のことであり、ブラックホールの存在が白鳥座X-1の観測により間接的に検証されたのが1971年のことだ。2015年になるまでブラックホールの存在は確定的ではなかった。だから1916年から1971年までブラックホールは理論上の存在だったのである。
イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・プロジェクトによる今回の成果は、ブラックホール天文学の幕開けであり、ノーベル物理学賞級であることは間違いない。ただ、国際チームであること、協力者の人数が多いことから、受賞者を選考するのは相当困難だと想像している。
ともあれ、このようなライブ配信を見ると毎回感動させられる。この10年の間にヒッグス粒子の発見、重力波の直接初観測、重力波を中性子星で観測、ブラックホールの直接撮影という人類史に残る発見を目の当たりにできる僕たちは、本当に恵まれているとじみじみ思うのだ。
4月11日午後10時00分~ 午後11時00分にコズミック フロント☆NEXT「史上初!ブラックホール直接観測」が放送される。お見逃しなく!

内容:強烈な重力を持つ魔の天体・ブラックホール。アインシュタインが予言した謎の天体だ。このブラックホールを直接観測しようという、史上初のプロジェクトが進められている。世界各地の望遠鏡をネットワークで結んで、仮想的に地球サイズの巨大望遠鏡を作ったのだ。しかし、10年に及ぶ準備期間をへて始まった観測では、次々とトラブルが発生。研究者たちに難題が襲いかかった。果たしてその結果は?最新の研究成果を密着報告!
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