「ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」(古書のシュプリンガー版)
内容
本書はゲージ理論の数学的な側面、特にその中心であるヤン‐ミルズ方程式について解説。本書では、序論で数学の関連諸分野を歴史的に概観し、ゲージ理論の数学的位置づけを与えている。また、位相幾何学、微分幾何学、代数幾何学、関数解析学などについて、本書と関わる部分については随所でその概観を与えている。主題であるヤン‐ミルズ方程式の解のモジュライ空間の構造とその4次元位相幾何学への応用については、理論の基本的な骨組みを示す部分とそれを詳しく証明する部分とを分離して解説することにより、中心的なアイディアを理解しやすいように構成。
著者について
深谷 賢治 教授(京都大学大学院理学研究科)
1959年に神奈川県に生まれる。中学時代には天文、物理などの科学を好み、高校時代にはすでに数学研究の道に進むことを決めていたという。1981年に東京大学理学部を卒業。1986年に博士号取得。同大理学部助手、同助教授をへて1994年から京都大学理学部数学科教授に。日本学士院会員。
おもな著作に「数学者の視点」(岩波書店、1996年)、「シンプレクティック幾何学」(岩波書店、2008年)など。教科書、概説書などの学術書のみならず、数学者の日々や現代数学の動向を軽妙な語り口で綴るエッセイも評価が高い。
2009年度には「シンプレクティック幾何学の研究」により朝日新聞文化財団朝日賞、2012年には「位相的場の理論の幾何学的実現とその数学的基礎理論の構築」で藤原科学財団藤原賞を受賞。
インタビュー記事:
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/forefront/vol13.htm
次に紹介する本(「アンネの日記」ではない)を読み始めたばかりなので、今日は軽めの記事にした。
「理論物理学のための幾何学とトポロジー:中原幹夫」の第1分冊の第7章や第2分冊の第13章でゲージ理論とトポロジーに関連があることが解説されていたが、「ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」の初めのほうに次のような年表が掲載されているのを見つけた。本書のシュプリンガー版がでたのが1995年なので、当時の最新の理論まで記載されている。
現代物理学に現代幾何学の知識が不可欠であることがよくわかる。学ぶべきことはまだまだたくさんあるのだ。もちろん今の自分に理解できるはずもないレベルのことばかりなので今回のブログ記事はキーワードの整理用である。
1980年代後半以降に記載のあるウィッテン(Witten)は、もちろんNHKの「神の数式」に登場していた1995年に11次元時空のM理論を提唱して第2次超弦理論革命をもたらしたエドワード・ウィッテン博士のことである。
目次によると第4章に「フリードマン-モーガンの爆発公式」というのがある。いったい何が爆発するのだろう??数学の本で「爆発」という言葉を見たの初めてだ。
ゲージ理論とトポロジーの年表
注意:*付きのものは関係論文の出版年に基づいており、発見されてから数年遅く、順番が逆転している場合もある。
1918年*:ワイル(Weyl): ゲージ変換の発見
192?年:カルタン(Cartan): 接続の概念
1931年*:ド・ラーム(De Rham): ド・ラームの定理
1934年*:モース(Morse): モース理論
1935年*:ホッジ(Hodge): 調和積分論
1946年*:チャーン(Chern): チャーン・ヴェイユ理論
1946年*:ヴェイユ(Weil): ド・ラーム理論に基づく特性類の理論
1952年*:ロホリン(Rochlin): ロホリンの定理
195?年*:トム(Thom)、スメイル(Smale)、ミルナー(Milnor): 微分位相幾何学始まる
1958年*:小平: 複素構造の変形理論
1958年*:スペンサー(Spencer): 現代的なモジュライ理論の創始
1963年*:アティヤ(Atiyah): 楕円型作用素の指数定理
1974年:ヤウ(Yau): カラビ(Calabi)予想解ける(非線形偏微分方程式に基づく微分幾何学の最大の成果)
1978年*:アティヤ、ヒッチン、シンガー: ゲージ理論の数学が本格的に始まる
1978年*:アティヤ、ドリンフェルト(Drinfeld)、ヒッチン、マニン(Mannin): S^4上の自己共役接続を決定
1981年:フリードマン(Freedman): 4次元ポアンカレ予想解ける
1982年*:ウーレンベック(Uhlenbeck): ヤン-ミルズ方程式の除去可能特異点定理
1982年*:タウベス: 多くの4次元多様体上でヤン-ミルズ方程式の解が存在することの証明
1982年:ドナルドソン(Donaldson): ゲージ理論の4次元位相幾何学への最初の応用
1985年:ドナルドソン: ドナルドソン多項式
1985年:キャッソン(Casson): キャッソン不変量
1987年*:ジョーンズ(Jones): 結び目の新しい不変量を作用素環を用いて導入
1987年*:ドナルドソン: 4次元h同境定理の反例
1988年*:ウィッテン(Witten): 位相的場の理論
1989年*:ウィッテン: ジョーンズ不変量をチャーン-サイモンズゲージ理論で解釈
1990年*:タウベス: キャッソン不変量をゲージ理論で解釈
1990年:クロンハイマー(Kronheimer): トム予想とゲージ理論の関係
1993年:クロンハイマー、ミュロフカ(Mrowka): ドナルドソン多項式の構造定理
1994年:サイバーグ(Seiberg): モノポール方程式(サイバーグ-ウィッテン方程式)がヤン-ミルズ方程式と等価であると予言
1995年:タウベス: サイバーグ-ウィッテン不変量と量子コホモロジーの一種(グロモフ-ウィッテン不変量)の等価性を証明
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「ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」(古書のシュプリンガー版)
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序論
- 初めに
- モース理論の過去と現在
- ド・ラームの定理から楕円型作用素の指数定理へ
- 4次元位相幾何学概観
第1章:ベクトル束と接続
- 接続とゲージ変換
- 曲率と特性類
- スピン構造とディラック作用素
第2章:ゲージ理論概説
- ドナルドソン不変量の概観
- 反自己双対接続のモジュライ空間の基本的性質(局所理論)
- モジュライ空間の大域構造I
- モジュライ空間の大域構造II
第3章:モジュライ空間の解析学
- ソボレフ空間
- 局所理論再説
- ウーレンベックの原理
- 横断正則性
- ドナルドソン不変量のまとめ
第4章:フレアーホモロジーと相対ドナルドソン不変量
- 位相的場の理論
- フレアーホモロジー概説
- 相対ドナルドソン多項式
- コンパクトでない多様体の上の楕円型作用素
- ASD接続の減衰評価
- ASD接続のはり合わせ
- 楕円型作用素の指数の和公式
- 可約接続の扱い
- フリードマン-モーガンの爆発公式
- 相対ドナルドソン多項式のまとめ
第5章:エキゾチックK3曲面
- SO(3)不変量
- ホモとピーK3曲面の不変量
付録:サイバーグ-ウィッテン理論瞥見
参考文献
記号索引
事項索引
内容
本書はゲージ理論の数学的な側面、特にその中心であるヤン‐ミルズ方程式について解説。本書では、序論で数学の関連諸分野を歴史的に概観し、ゲージ理論の数学的位置づけを与えている。また、位相幾何学、微分幾何学、代数幾何学、関数解析学などについて、本書と関わる部分については随所でその概観を与えている。主題であるヤン‐ミルズ方程式の解のモジュライ空間の構造とその4次元位相幾何学への応用については、理論の基本的な骨組みを示す部分とそれを詳しく証明する部分とを分離して解説することにより、中心的なアイディアを理解しやすいように構成。
著者について
深谷 賢治 教授(京都大学大学院理学研究科)
1959年に神奈川県に生まれる。中学時代には天文、物理などの科学を好み、高校時代にはすでに数学研究の道に進むことを決めていたという。1981年に東京大学理学部を卒業。1986年に博士号取得。同大理学部助手、同助教授をへて1994年から京都大学理学部数学科教授に。日本学士院会員。
おもな著作に「数学者の視点」(岩波書店、1996年)、「シンプレクティック幾何学」(岩波書店、2008年)など。教科書、概説書などの学術書のみならず、数学者の日々や現代数学の動向を軽妙な語り口で綴るエッセイも評価が高い。
2009年度には「シンプレクティック幾何学の研究」により朝日新聞文化財団朝日賞、2012年には「位相的場の理論の幾何学的実現とその数学的基礎理論の構築」で藤原科学財団藤原賞を受賞。
インタビュー記事:
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/forefront/vol13.htm
次に紹介する本(「アンネの日記」ではない)を読み始めたばかりなので、今日は軽めの記事にした。
「理論物理学のための幾何学とトポロジー:中原幹夫」の第1分冊の第7章や第2分冊の第13章でゲージ理論とトポロジーに関連があることが解説されていたが、「ゲージ理論とトポロジー:深谷賢治」の初めのほうに次のような年表が掲載されているのを見つけた。本書のシュプリンガー版がでたのが1995年なので、当時の最新の理論まで記載されている。
現代物理学に現代幾何学の知識が不可欠であることがよくわかる。学ぶべきことはまだまだたくさんあるのだ。もちろん今の自分に理解できるはずもないレベルのことばかりなので今回のブログ記事はキーワードの整理用である。
1980年代後半以降に記載のあるウィッテン(Witten)は、もちろんNHKの「神の数式」に登場していた1995年に11次元時空のM理論を提唱して第2次超弦理論革命をもたらしたエドワード・ウィッテン博士のことである。
目次によると第4章に「フリードマン-モーガンの爆発公式」というのがある。いったい何が爆発するのだろう??数学の本で「爆発」という言葉を見たの初めてだ。
ゲージ理論とトポロジーの年表
注意:*付きのものは関係論文の出版年に基づいており、発見されてから数年遅く、順番が逆転している場合もある。
1918年*:ワイル(Weyl): ゲージ変換の発見
192?年:カルタン(Cartan): 接続の概念
1931年*:ド・ラーム(De Rham): ド・ラームの定理
1934年*:モース(Morse): モース理論
1935年*:ホッジ(Hodge): 調和積分論
1946年*:チャーン(Chern): チャーン・ヴェイユ理論
1946年*:ヴェイユ(Weil): ド・ラーム理論に基づく特性類の理論
1952年*:ロホリン(Rochlin): ロホリンの定理
195?年*:トム(Thom)、スメイル(Smale)、ミルナー(Milnor): 微分位相幾何学始まる
1958年*:小平: 複素構造の変形理論
1958年*:スペンサー(Spencer): 現代的なモジュライ理論の創始
1963年*:アティヤ(Atiyah): 楕円型作用素の指数定理
1974年:ヤウ(Yau): カラビ(Calabi)予想解ける(非線形偏微分方程式に基づく微分幾何学の最大の成果)
1978年*:アティヤ、ヒッチン、シンガー: ゲージ理論の数学が本格的に始まる
1978年*:アティヤ、ドリンフェルト(Drinfeld)、ヒッチン、マニン(Mannin): S^4上の自己共役接続を決定
1981年:フリードマン(Freedman): 4次元ポアンカレ予想解ける
1982年*:ウーレンベック(Uhlenbeck): ヤン-ミルズ方程式の除去可能特異点定理
1982年*:タウベス: 多くの4次元多様体上でヤン-ミルズ方程式の解が存在することの証明
1982年:ドナルドソン(Donaldson): ゲージ理論の4次元位相幾何学への最初の応用
1985年:ドナルドソン: ドナルドソン多項式
1985年:キャッソン(Casson): キャッソン不変量
1987年*:ジョーンズ(Jones): 結び目の新しい不変量を作用素環を用いて導入
1987年*:ドナルドソン: 4次元h同境定理の反例
1988年*:ウィッテン(Witten): 位相的場の理論
1989年*:ウィッテン: ジョーンズ不変量をチャーン-サイモンズゲージ理論で解釈
1990年*:タウベス: キャッソン不変量をゲージ理論で解釈
1990年:クロンハイマー(Kronheimer): トム予想とゲージ理論の関係
1993年:クロンハイマー、ミュロフカ(Mrowka): ドナルドソン多項式の構造定理
1994年:サイバーグ(Seiberg): モノポール方程式(サイバーグ-ウィッテン方程式)がヤン-ミルズ方程式と等価であると予言
1995年:タウベス: サイバーグ-ウィッテン不変量と量子コホモロジーの一種(グロモフ-ウィッテン不変量)の等価性を証明
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序論
- 初めに
- モース理論の過去と現在
- ド・ラームの定理から楕円型作用素の指数定理へ
- 4次元位相幾何学概観
第1章:ベクトル束と接続
- 接続とゲージ変換
- 曲率と特性類
- スピン構造とディラック作用素
第2章:ゲージ理論概説
- ドナルドソン不変量の概観
- 反自己双対接続のモジュライ空間の基本的性質(局所理論)
- モジュライ空間の大域構造I
- モジュライ空間の大域構造II
第3章:モジュライ空間の解析学
- ソボレフ空間
- 局所理論再説
- ウーレンベックの原理
- 横断正則性
- ドナルドソン不変量のまとめ
第4章:フレアーホモロジーと相対ドナルドソン不変量
- 位相的場の理論
- フレアーホモロジー概説
- 相対ドナルドソン多項式
- コンパクトでない多様体の上の楕円型作用素
- ASD接続の減衰評価
- ASD接続のはり合わせ
- 楕円型作用素の指数の和公式
- 可約接続の扱い
- フリードマン-モーガンの爆発公式
- 相対ドナルドソン多項式のまとめ
第5章:エキゾチックK3曲面
- SO(3)不変量
- ホモとピーK3曲面の不変量
付録:サイバーグ-ウィッテン理論瞥見
参考文献
記号索引
事項索引