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「Newton別冊『ゼロからわかる人工知能』 (ニュートン別冊) 」
内容紹介:
私たちのまわりには「人工知能(AI)」がどんどん普及しています。人工知能が賢いのは,「ディープラーニング」,「機械学習」といった画期的な学習方法を使って,大量のデータから,ものの特徴や概念を学習できるためです。その活躍の場は病院での診断補助,自動運転,道路や橋などのインフラの劣化・損傷の検出など,私たちの命にかかわる領域にもおよんでいます。
便利な人工知能ですが,普及にともない,セキュリティやプライバシーの問題,人工知能が人間を追い抜いて,予測不能なレベルにまで進化する「シンギュラリティ」到来の懸念など新たな問題も浮上しています。
本書は,基本のしくみから最新の応用技術,普及によって懸念される問題など,人工知能を幅広く紹介した一冊になります。ぜひご一読ください。
2018年4月18日刊行、144ページ。
理数系書籍のレビュー記事は本書で365冊目。(月刊誌のほうは全部読むわけではないからカウントに含めない。)
今月発売されているNewtonの2冊。みなさんは「あれ?また人工知能?」と思わなかっただろうか?。人工知能特集は「Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能」(紹介記事)として特集したばかりなのだ。
僕はこの分野に関心があるし、できればもっと専門的な本、プログラミングを交えて解説した本にそろそろ取り組みたい。別冊でも伝えきれないことがあったから月刊誌のほうでも再び特集したのだろうか?気になったので読んでみた。
今月発売された2冊、特に別冊を読んで思ったのは、この技術が私たちの仕事や生活全般にとてつもない影響を及ぼすことを知らせたかったのではないだろうかということ。
鉄腕アトムや「2001年未来の旅」のHAL 9000を見た頃は遠い未来の技術に明るい展望を思い描くことができた。けれどもSFの世界がじわじわと現実のものになってくると、これまでは見えなかった新しい技術の別の側面が見えてくる。良かれ悪しかれ、社会も人も変化に適応していかなければならない。変化を受け入れるとき、戸惑いや苦痛を伴うことがある。
人工知能が役立っていく領域、雇用が人工知能に置き換えられいく職域をおよその時間的見通しも含めて知っておいたほうがよいだろう。漠然と自分でイメージしているだけでは限界がある。具体的に知ることが大切だ。特にこれから進路を決める高校生、就活中の大学生、そして転職を考えている人には必読書だと思うのだ。Newtonは一般誌だからどなたでも読めるのがよい。
まず「別冊」である。
「Newton別冊『ゼロからわかる人工知能』 (ニュートン別冊) 」(詳細)
目次はこのとおりだ。
1 基礎から学ぶ人工知能
人工知能の分類
人工知能の歴史
ヒトとコンピューターの画像認識
ヒトの視覚野のしくみ
ディープラーニング
機械学習
ディープラーニングの未来
2 人工知能の最新応用技術
人工知能の進化
将棋プログラム
アルファ碁
保健医療分野におけるAIの活用
人工知能の病理診断
人工知能の内視鏡検査
人工知能の眼底検査
人工知能の言語処理
自動運転
人工知能のひび割れ点検
人工知能の惑星探査
3 人工知能の未来
人工知能とセキュリティ
人工知能と公平性
人工知能とプライバシー
汎用人工知能
シンギュラリティ
4 人工知能の新領域へ
【インタビュー】山川 宏博士
人間と調和できる人工知能をつくりたい
【インタビュー】金井良太博士
AIに意識をもたせることで意識の本質にせまりたい
【インタビュー】山本一成氏
AIが将棋の可能性を広げてくれた
【インタビュー】坊農真弓博士
「ロボットは井戸端会議に入れるか」
会話にあるルールを解き明かしたい
【インタビュー】井上智洋博士
AIが人間を仕事から「解放」してくれる
【インタビュー】佐藤 健博士
AIに裁判の結果の理由を説明させる
【インタビュー】平野 晋博士
AIに常識や倫理観,感情は必要か
第1章で人工知能のしくみの概要が学ぶことができ、第2章ではすでに実現している技術と実現するであろう領域での活用例を知ることができる。
つまり第2章までは機械学習やディープラーニング(深層学習)のしくみが理解できるし、それを応用したAI技術がもたらしてくれる恩恵の紹介としくみの概説だから楽しく読める。
第3章は、深く考えさせられる内容。社会が人工知能を受け入れるときにおこる問題と解決へのアプローチ。技術的な解決方法がまだ見えていないし、人工知能に求められる要件や法改正など、倫理的、社会的に議論を尽くして決めていかなければならない。技術が実現するスピードに人や社会が決定する対策が追いついていくのだろうか?
そして第4章の「インタビュー記事」が特に重要だ。最先端の研究者をはじめ、各界を代表する専門家が取り組んでいること、人工知能に求めている要件や思い描いている未来予想図を知ることができる。
Newtonを読む最大のメリットはここにある。さまざまな研究者や周辺の識者の考えや取り組みを公平にまんべんなく紹介しているからだ。
執筆者が1人か2人の本だと、どうしても人工知能の特定分野へのこだわりや思い入れが強く出てしまい、内容にバイアスがかかったり社会への影響を無視しがちだからである。研究者は自分の研究内容の未来の可能性を信じているのだからそうなるのは自然の成り行きだ。
僕はAI将棋ファンだからPonanzaの開発者の山本一成さんの「AIが将棋の可能性を広げてくれた」はワクワクして読ませていただいた。記事で紹介されているBonanzaも自分のPCにインストールしている。(参考記事:「将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)」)
特定の用途のために開発された「特化型人工知能」が労働者の雇用を奪うこともすでに始まっている。今後、どのような職域でどのような変化がおこるのか?最初は補助的に使われるだけだがその後、人工知能はその職種で人間の労働者を完全に排除することになるのだろうか?今後、私たちが生きていく上で重大な問題になる。
人工知能による雇用の喪失に関して、肯定的に考えている研究者が多いことに僕は驚かされた。そのうちのお一人は、仕事はだんだんと人工知能がやってくれるようになり、人間は働かなくても生きられるような未来社会を思い描いている。ベーシックインカムが国民の生活を支えることになるのだ。「生活のために働く」必要がなくなる社会をあなたは想像できるだろうか?そのとき生きがいを保つことができるのだろうか?
アメリカではすでに多くの雇用が人工知能によって奪われている。日本ではその動きが始まったばかりだ。しかし、その理由に苦笑してしまった。日本の人工知能研究はアメリカや中国に大きな遅れをとっているからである。今のところ雇用が維持されているのは労働者としてはありがたい。でも今後どうなるのだろうか?少子高齢化や年金制度、定年の延長など社会の変化と合わせて考えてみたい。
人工知能に「感情」をもたせてはならない。感情を持っているようにAIが振る舞ったとしても、それを感情だと認めてはならないというのが僕の基本的な考えだが、「意識」となると話は少し違うようである。人工知能に意識を持たせて何の意味があるの?と思っていたわけだが、これに有益な使い道があることもインタビュー記事の中で知ることができた。たとえば医療の分野で「麻酔の効きがどのようにおこるか」、「刺激に対する反応」の研究に役立つそうである。
特化型人工知能だけでなく汎用人工知能の研究や、人間の脳の器官を模倣した「全脳アーキテクチャ」の研究も始まっている。なぜそれが必要なのだろうか?それが人間の仕事はすべて奪われてしまうのだろうか?それが自発性を持ったとき、ロボットと連携したときに人類を滅ぼすモンスターに急成長してしまうのだろうか?そうならないためには、何をしなくてはならないのか?考えることはは山ほどある。ひとつずつ具体例を見ながら判断していくことが大切だ。
また、研究者や記事執筆をされた方には申し訳ないが、そんな研究をしても意味ないでしょ!と思うインタビュー記事もあった。けれども、そのように的外れだと思える研究が、将来何かのはずみで意味を持ってくることだってあるかもしれない。
企業が宣伝しているAI技術も鵜呑みにしてはならない。個別のAI技術にはそれぞれ限界や不可能なことがある。2015年に「Googleフォト」が黒人の写真に人工知能が「ゴリラ」とタグ付けした事件があったが、このサービスではそれ以降、「ゴリラ」「チンパンジー」「猿」といった単語ではタグの検索ができなくなっている。あれから3年経つのに解決できていないのだ。
人工知能でグーグルが挑む「3つの課題」
https://wired.jp/2018/04/25/googles-new-ai-head/
次は今月発売されたばかりの月刊誌の紹介。
「Newton(ニュートン) 2018年 06 月号」(詳細)
僕が興味をもって読んだのは次の5つの記事。Newtonのよいところは、僕のように専門書で学んだ人でも知的好奇心が満たされる「最新の発見」、「最新技術」、「著名な物理学者の見解」を知ることができることだ。
追悼 ホーキング博士
ホーキング博士の宇宙論【試し読み】
ブラックホールや宇宙創成の謎に挑んだ天才の偉業
人工知能は人より賢くなれるか【試し読み】
「汎用AI」の実現をめざす人工知能研究の最前線
量子テレポーテーション【試し読み】
遠隔地への“転送”が可能に!? 夢の技術のしくみにせまる
ゼロからわかるトポロジー【試し読み】
伸ばして縮めて形を調べる,やわらかい幾何学
時空のゆがみがはかれる時計【試し読み】
100京分の1秒を計測できる「光格子時計」とは
アインシュタイン博士の誕生日に亡くなられたホーキング博士の追悼記事は、僕も「ホーキング博士の訃報に接し (Stephen Hawking passed away)」として書かせていただいた。
Newtonのこの号ではホーキング博士の研究、業績をわかりやすく解説しているほか、日本を代表する物理学者の先生方による博士の思い出と追悼文を読むことができる。
人工知能の記事は「汎用AI」、シンギュラリティの解説を「別冊」からさらに深く掘り下げ、最前線の話題を紹介している。ロボットとのつながりを解説しているのが「別冊」では取り上げられなかったところだ。
量子テレポーテーションは「とね日記」が科学ブログ化したひとつの原因でもある。(参考記事:「テレポーテーションは実現している。(リンク集)」そのしくみをカラフルなイラストで図示ながら、量子だけでなく大きな物体を転送するしくみも解説している。テレポーテーションによる宅配サービスが開始されるのはいつになるだろうか?
昨日は板門店で歴史的対談が行われた。北朝鮮の核の脅威は言うまでもないことだし、ハッキングやサイバー攻撃も周知のことだ。しかし「AI研究はどこまで進んでいるのだろうか?そういう情報は見たことないな。」とツイートしたところ、友達のアマサイさんが教えてくれた。なるほど!あの国にビッグデータはなさそうだ。研究できたとしても、ビッグデータを必要としない「教師なし型の囲碁AI」がせいぜいといったところだろう。
人工知能による雇用喪失も、日本ではゆっくり進みそうだ。日本の意思決定システムは緩慢過ぎるから。「EMANの物理学」の広江克彦さんの次のツイートに気持が救われた気がした。今日の記事のオチと
させていただこう。
関連記事:
グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ec7f96712045560b6cf3d7b1e851e49e
グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その2)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06a11387485b7835d8147229d541497b
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内容紹介:
私たちのまわりには「人工知能(AI)」がどんどん普及しています。人工知能が賢いのは,「ディープラーニング」,「機械学習」といった画期的な学習方法を使って,大量のデータから,ものの特徴や概念を学習できるためです。その活躍の場は病院での診断補助,自動運転,道路や橋などのインフラの劣化・損傷の検出など,私たちの命にかかわる領域にもおよんでいます。
便利な人工知能ですが,普及にともない,セキュリティやプライバシーの問題,人工知能が人間を追い抜いて,予測不能なレベルにまで進化する「シンギュラリティ」到来の懸念など新たな問題も浮上しています。
本書は,基本のしくみから最新の応用技術,普及によって懸念される問題など,人工知能を幅広く紹介した一冊になります。ぜひご一読ください。
2018年4月18日刊行、144ページ。
理数系書籍のレビュー記事は本書で365冊目。(月刊誌のほうは全部読むわけではないからカウントに含めない。)
今月発売されているNewtonの2冊。みなさんは「あれ?また人工知能?」と思わなかっただろうか?。人工知能特集は「Newton(ニュートン) 2018年 01 月号: ゼロからわかる人工知能」(紹介記事)として特集したばかりなのだ。
僕はこの分野に関心があるし、できればもっと専門的な本、プログラミングを交えて解説した本にそろそろ取り組みたい。別冊でも伝えきれないことがあったから月刊誌のほうでも再び特集したのだろうか?気になったので読んでみた。
今月発売された2冊、特に別冊を読んで思ったのは、この技術が私たちの仕事や生活全般にとてつもない影響を及ぼすことを知らせたかったのではないだろうかということ。
鉄腕アトムや「2001年未来の旅」のHAL 9000を見た頃は遠い未来の技術に明るい展望を思い描くことができた。けれどもSFの世界がじわじわと現実のものになってくると、これまでは見えなかった新しい技術の別の側面が見えてくる。良かれ悪しかれ、社会も人も変化に適応していかなければならない。変化を受け入れるとき、戸惑いや苦痛を伴うことがある。
人工知能が役立っていく領域、雇用が人工知能に置き換えられいく職域をおよその時間的見通しも含めて知っておいたほうがよいだろう。漠然と自分でイメージしているだけでは限界がある。具体的に知ることが大切だ。特にこれから進路を決める高校生、就活中の大学生、そして転職を考えている人には必読書だと思うのだ。Newtonは一般誌だからどなたでも読めるのがよい。
まず「別冊」である。
「Newton別冊『ゼロからわかる人工知能』 (ニュートン別冊) 」(詳細)
目次はこのとおりだ。
1 基礎から学ぶ人工知能
人工知能の分類
人工知能の歴史
ヒトとコンピューターの画像認識
ヒトの視覚野のしくみ
ディープラーニング
機械学習
ディープラーニングの未来
2 人工知能の最新応用技術
人工知能の進化
将棋プログラム
アルファ碁
保健医療分野におけるAIの活用
人工知能の病理診断
人工知能の内視鏡検査
人工知能の眼底検査
人工知能の言語処理
自動運転
人工知能のひび割れ点検
人工知能の惑星探査
3 人工知能の未来
人工知能とセキュリティ
人工知能と公平性
人工知能とプライバシー
汎用人工知能
シンギュラリティ
4 人工知能の新領域へ
【インタビュー】山川 宏博士
人間と調和できる人工知能をつくりたい
【インタビュー】金井良太博士
AIに意識をもたせることで意識の本質にせまりたい
【インタビュー】山本一成氏
AIが将棋の可能性を広げてくれた
【インタビュー】坊農真弓博士
「ロボットは井戸端会議に入れるか」
会話にあるルールを解き明かしたい
【インタビュー】井上智洋博士
AIが人間を仕事から「解放」してくれる
【インタビュー】佐藤 健博士
AIに裁判の結果の理由を説明させる
【インタビュー】平野 晋博士
AIに常識や倫理観,感情は必要か
第1章で人工知能のしくみの概要が学ぶことができ、第2章ではすでに実現している技術と実現するであろう領域での活用例を知ることができる。
つまり第2章までは機械学習やディープラーニング(深層学習)のしくみが理解できるし、それを応用したAI技術がもたらしてくれる恩恵の紹介としくみの概説だから楽しく読める。
第3章は、深く考えさせられる内容。社会が人工知能を受け入れるときにおこる問題と解決へのアプローチ。技術的な解決方法がまだ見えていないし、人工知能に求められる要件や法改正など、倫理的、社会的に議論を尽くして決めていかなければならない。技術が実現するスピードに人や社会が決定する対策が追いついていくのだろうか?
そして第4章の「インタビュー記事」が特に重要だ。最先端の研究者をはじめ、各界を代表する専門家が取り組んでいること、人工知能に求めている要件や思い描いている未来予想図を知ることができる。
Newtonを読む最大のメリットはここにある。さまざまな研究者や周辺の識者の考えや取り組みを公平にまんべんなく紹介しているからだ。
執筆者が1人か2人の本だと、どうしても人工知能の特定分野へのこだわりや思い入れが強く出てしまい、内容にバイアスがかかったり社会への影響を無視しがちだからである。研究者は自分の研究内容の未来の可能性を信じているのだからそうなるのは自然の成り行きだ。
僕はAI将棋ファンだからPonanzaの開発者の山本一成さんの「AIが将棋の可能性を広げてくれた」はワクワクして読ませていただいた。記事で紹介されているBonanzaも自分のPCにインストールしている。(参考記事:「将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)」)
特定の用途のために開発された「特化型人工知能」が労働者の雇用を奪うこともすでに始まっている。今後、どのような職域でどのような変化がおこるのか?最初は補助的に使われるだけだがその後、人工知能はその職種で人間の労働者を完全に排除することになるのだろうか?今後、私たちが生きていく上で重大な問題になる。
人工知能による雇用の喪失に関して、肯定的に考えている研究者が多いことに僕は驚かされた。そのうちのお一人は、仕事はだんだんと人工知能がやってくれるようになり、人間は働かなくても生きられるような未来社会を思い描いている。ベーシックインカムが国民の生活を支えることになるのだ。「生活のために働く」必要がなくなる社会をあなたは想像できるだろうか?そのとき生きがいを保つことができるのだろうか?
アメリカではすでに多くの雇用が人工知能によって奪われている。日本ではその動きが始まったばかりだ。しかし、その理由に苦笑してしまった。日本の人工知能研究はアメリカや中国に大きな遅れをとっているからである。今のところ雇用が維持されているのは労働者としてはありがたい。でも今後どうなるのだろうか?少子高齢化や年金制度、定年の延長など社会の変化と合わせて考えてみたい。
人工知能に「感情」をもたせてはならない。感情を持っているようにAIが振る舞ったとしても、それを感情だと認めてはならないというのが僕の基本的な考えだが、「意識」となると話は少し違うようである。人工知能に意識を持たせて何の意味があるの?と思っていたわけだが、これに有益な使い道があることもインタビュー記事の中で知ることができた。たとえば医療の分野で「麻酔の効きがどのようにおこるか」、「刺激に対する反応」の研究に役立つそうである。
特化型人工知能だけでなく汎用人工知能の研究や、人間の脳の器官を模倣した「全脳アーキテクチャ」の研究も始まっている。なぜそれが必要なのだろうか?それが人間の仕事はすべて奪われてしまうのだろうか?それが自発性を持ったとき、ロボットと連携したときに人類を滅ぼすモンスターに急成長してしまうのだろうか?そうならないためには、何をしなくてはならないのか?考えることはは山ほどある。ひとつずつ具体例を見ながら判断していくことが大切だ。
また、研究者や記事執筆をされた方には申し訳ないが、そんな研究をしても意味ないでしょ!と思うインタビュー記事もあった。けれども、そのように的外れだと思える研究が、将来何かのはずみで意味を持ってくることだってあるかもしれない。
企業が宣伝しているAI技術も鵜呑みにしてはならない。個別のAI技術にはそれぞれ限界や不可能なことがある。2015年に「Googleフォト」が黒人の写真に人工知能が「ゴリラ」とタグ付けした事件があったが、このサービスではそれ以降、「ゴリラ」「チンパンジー」「猿」といった単語ではタグの検索ができなくなっている。あれから3年経つのに解決できていないのだ。
人工知能でグーグルが挑む「3つの課題」
https://wired.jp/2018/04/25/googles-new-ai-head/
次は今月発売されたばかりの月刊誌の紹介。
「Newton(ニュートン) 2018年 06 月号」(詳細)
僕が興味をもって読んだのは次の5つの記事。Newtonのよいところは、僕のように専門書で学んだ人でも知的好奇心が満たされる「最新の発見」、「最新技術」、「著名な物理学者の見解」を知ることができることだ。
追悼 ホーキング博士
ホーキング博士の宇宙論【試し読み】
ブラックホールや宇宙創成の謎に挑んだ天才の偉業
人工知能は人より賢くなれるか【試し読み】
「汎用AI」の実現をめざす人工知能研究の最前線
量子テレポーテーション【試し読み】
遠隔地への“転送”が可能に!? 夢の技術のしくみにせまる
ゼロからわかるトポロジー【試し読み】
伸ばして縮めて形を調べる,やわらかい幾何学
時空のゆがみがはかれる時計【試し読み】
100京分の1秒を計測できる「光格子時計」とは
アインシュタイン博士の誕生日に亡くなられたホーキング博士の追悼記事は、僕も「ホーキング博士の訃報に接し (Stephen Hawking passed away)」として書かせていただいた。
Newtonのこの号ではホーキング博士の研究、業績をわかりやすく解説しているほか、日本を代表する物理学者の先生方による博士の思い出と追悼文を読むことができる。
人工知能の記事は「汎用AI」、シンギュラリティの解説を「別冊」からさらに深く掘り下げ、最前線の話題を紹介している。ロボットとのつながりを解説しているのが「別冊」では取り上げられなかったところだ。
量子テレポーテーションは「とね日記」が科学ブログ化したひとつの原因でもある。(参考記事:「テレポーテーションは実現している。(リンク集)」そのしくみをカラフルなイラストで図示ながら、量子だけでなく大きな物体を転送するしくみも解説している。テレポーテーションによる宅配サービスが開始されるのはいつになるだろうか?
昨日は板門店で歴史的対談が行われた。北朝鮮の核の脅威は言うまでもないことだし、ハッキングやサイバー攻撃も周知のことだ。しかし「AI研究はどこまで進んでいるのだろうか?そういう情報は見たことないな。」とツイートしたところ、友達のアマサイさんが教えてくれた。なるほど!あの国にビッグデータはなさそうだ。研究できたとしても、ビッグデータを必要としない「教師なし型の囲碁AI」がせいぜいといったところだろう。
人工知能による雇用喪失も、日本ではゆっくり進みそうだ。日本の意思決定システムは緩慢過ぎるから。「EMANの物理学」の広江克彦さんの次のツイートに気持が救われた気がした。今日の記事のオチと
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グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その1)
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グラフィック・サイエンス・マガジン Newton の作り方(その2)
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