「経理のExcel強化書: 平井明夫」
内容紹介:
経理・経営企画部門のExcel力を強化! 明日の会議ですぐに使えるデータ分析が満載。具体的に実例でハウツーを説明するから「文系」の人も無理なくスキルアップが可能。
たった1日でデータ分析をマスター!
2015年12月刊行、186ページ。
著者について:
平井明夫(ひらい あきお)
株式会社エムキューブ・プラスハート取締役。大阪大学基礎工学部卒。ソフトウェアベンダーのマーケティング担当として事業企画に携わった後、コンサルティング会社役員として自ら中小企業経営を経験する。現在は、この経験を活かして、IT業界を中心に、中堅・中小企業の新規事業立ち上げ、事業再編の支援を行っている。並行して、ライフワークとしてデータ分析に関する講演・執筆活動を行っており、多数の著書・共著書がある。自ら講師を務める翔泳社主催『1日でわかる企業データ分析講座』は多くの卒業生を送り出している。
平井さんの著書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で346冊目。
とね日記でビジネス書を紹介するのは初めてのことだ。数値を扱って分析するという意味で、ギリギリ「理数系書籍」ということにさせていただこう。
実をいうと僕は大のExcel好きである。本業の業務では自分なりの使い方を編み出したり、裏技を身に着けたりして、いつもお世話になっている。もともとプログラマだからスクリプトを書いて、ちょっとした作業をこなすこともできるが、プログラミングしなくて済むのなら、それに越したことはない。
自分の仕事では本書に紹介されているデータ分析は、しなくても済むのだが、以前から興味をもっていたということもある。だが本を探してみるとやたらと分厚かったり、専門的過ぎて読むのに手間がかかり過ぎる本が多い。もやもやしながら探しているうちに見つけたのがページ数が手ごろな本書だった。そして、そして偶然、著者の平井明夫さんは元同僚だった。これは買うしかない。平井さんには連絡せず、僕はこっそり買い置きしていたのである。
あと、本書を読んだのにはもうひとつ理由がある。
いつも勉強に利用させていただいているカフェの店員さんたちは、ほとんどが非理数系の大学生だ。もう何年も利用させていただいているので、年度が替わるたびに彼らは1年ずつ進級する。就活の様子を聞いたりすることもあり、内定が決まった学生には「お祝い」に本をプレゼントしているのだ。今年の3年生、特に数字に関わりそうな職種に内定が決まった学生には、次の本を贈っていた。タイトルにインパクトがあるのでウケもよい。
「テキパキこなす! ゼッタイ定時に帰る エクセルの時短テク 121」(Kindle版)
この本は僕も使っていて、良さはじゅうぶん承知している。この手の本はいろいろ出ているけれど、分厚いものを買っても覚えきれるものではない。128ページに抑えた手ごろなTipsを覚えるだけで、仕事はとてもはかどるのだ。先輩社会人から「ひよっこ社会人」へのプレゼントに最適である。少なくともExcel操作に手こずって残業することからは解放される。
さて、その次の段階がデータ分析だ。Excel操作の基本をマスターした後は、「経理のExcel強化書: 平井明夫」で、Excelの活用例を実際のビジネス・データを使って学ぶことができれば申し分ない。
とはいっても、会社の売り上げデータは平社員に公開されるわけがない。本書のサンプル・データで学び、個人レベルで蓄積するデータを使って自分なりのデータ分析をするのがよいだろう。小規模な会社へ就職したり、自営業として社会人の一歩を踏み出すのであれば、直接役立てることができる。
また、まめにデータをとって家計簿の分析や日々の健康データの分析、食生活の分析に使うのもよいだろう。そのためには何ができるのかを、まず知る必要がある。
本書は文系の大学生でも理解可能なレベルに抑えてあるので、内定が決まった学生に紹介することにした。気に入るようだったら、こちらの本は自分で買ってもらうことにしよう。
理数系の人は統計学や統計解析を学んでいることが多いから、あえてビジネス系のデータ分析を学ぶ必要はないのではないか、自己流でデータをグラフにすればなんとかなるのではないか、と思っている人がいるかもしれない。(少なくとも僕はそうだった。)
けれども、少し調べるだけでそれは大間違いであることに気が付くはずだ。統計解析と重複するのは相関係数や回帰分析くらいで、あとはデータ分析固有の手法である。本書では次の章立てに従ってデータ分析の手法が10種類も解説される。
第1章 ピボット分析~セグメント別損益分析で不調の原因を見つける
第2章 パレート図~コントロールすべき経費科目を洗い出す
第3章 ファンチャート~増減の大きい経費科目を見つける
第4章 ヒストグラム~店舗来客数の現状を知る
第5章 CAGR~事業の成長性を分析する
第6章 What-If分析~損益分岐点売上をシミュレーションする
第7章 散布図~偏った在庫を見つける
第8章 相関係数~最適な商品を見つける
第9章 単回帰分析~価格弾力性を調べる
第10章 重回帰分析~人件費と広告宣伝費から売上を予測する
週末の1日(1章約1時間×10テーマ)を使えば読める分量だ。平日の夜なら2~3日かかると思われる。でも、たったそれだけで、これだけの知識が得られるのなら願ったり叶ったりである。
僕が良いと思ったことを箇条書きしておこう。
- 全体の分量が186ページに抑えてある。
- その結果、1章ぶんのページ数が少ないから、長い時間をいちどに割けなくてもOK。
- 代表的な手法を10種類も学べる。
- 具体的なデータを示し、データから何を知りたいか、手法の目的がわかるように書かれている。
- 分析手法をExcelの表を使いながら具体的に解説している。
- 最後にExcelを使いながら、操作方法を示している。操作手順も少ない。
最低限必要なことを手短かに、わかりやすく解説しているのが、忙しい僕にはとても受け入れやすかった。
もちろん生データを見たり、それをグラフ化するだけで見えてくることもたくさんある。しかし、本書で紹介されている手法でデータを加工し視覚化することで、よりいっそう豊かな視点からデータを分析できることが、はっきりと印象付けられることだろう。
僕がいちばん気に入ったのは「第4章 ヒストグラム~店舗来客数の現状を知る」である。ヒストグラムは手法として、とても易しく取るに足らないものだと思っていたが、「ああ、こういうときに威力を発揮するのだなぁ。」と、本書は自分の盲点を明らかにしてくれた。
本書のタイトルには「経理の」とあるが、データ分析はすべてのビジネスマンに役立つ手法であり、一般教養として身につけておいて損はない。
10年以上前からBI (ビジネス・インテリジェンス)が経営判断に活用され始め、東日本大震災以降、ビジネスの世界ではビッグデータがトレンドとなった。そして今年のトレンドワードはAI(人工知能)である。
将来、データ分析もAIに置き換えられていくのかもしれないが、それは大企業から始まることだ。最終的にビジネス判断をすべてAIに任せることになったとき、人が働く価値はどこに求めればよいのだろうか?
少なくとも今のうちに自分でデータ分析の経験を積み、自分なりのセンスを磨いておくことが、AIには実現することができない領域で、自らの価値を高めていくことにつながるのではないかという気がしている。
なお、本書で使われているExcelファイルのサンプル・データは、出版社の以下のページからダウンロードすることができる。
経理のExcel強化書―データ分析入門(中央経済社): ページを開く
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「経理のExcel強化書: 平井明夫」
第1章 ピボット分析~セグメント別損益分析で不調の原因を見つける
第2章 パレート図~コントロールすべき経費科目を洗い出す
第3章 ファンチャート~増減の大きい経費科目を見つける
第4章 ヒストグラム~店舗来客数の現状を知る
第5章 CAGR~事業の成長性を分析する
第6章 What-If分析~損益分岐点売上をシミュレーションする
第7章 散布図~偏った在庫を見つける
第8章 相関係数~最適な商品を見つける
第9章 単回帰分析~価格弾力性を調べる
第10章 重回帰分析~人件費と広告宣伝費から売上を予測する
内容紹介:
経理・経営企画部門のExcel力を強化! 明日の会議ですぐに使えるデータ分析が満載。具体的に実例でハウツーを説明するから「文系」の人も無理なくスキルアップが可能。
たった1日でデータ分析をマスター!
2015年12月刊行、186ページ。
著者について:
平井明夫(ひらい あきお)
株式会社エムキューブ・プラスハート取締役。大阪大学基礎工学部卒。ソフトウェアベンダーのマーケティング担当として事業企画に携わった後、コンサルティング会社役員として自ら中小企業経営を経験する。現在は、この経験を活かして、IT業界を中心に、中堅・中小企業の新規事業立ち上げ、事業再編の支援を行っている。並行して、ライフワークとしてデータ分析に関する講演・執筆活動を行っており、多数の著書・共著書がある。自ら講師を務める翔泳社主催『1日でわかる企業データ分析講座』は多くの卒業生を送り出している。
平井さんの著書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で346冊目。
とね日記でビジネス書を紹介するのは初めてのことだ。数値を扱って分析するという意味で、ギリギリ「理数系書籍」ということにさせていただこう。
実をいうと僕は大のExcel好きである。本業の業務では自分なりの使い方を編み出したり、裏技を身に着けたりして、いつもお世話になっている。もともとプログラマだからスクリプトを書いて、ちょっとした作業をこなすこともできるが、プログラミングしなくて済むのなら、それに越したことはない。
自分の仕事では本書に紹介されているデータ分析は、しなくても済むのだが、以前から興味をもっていたということもある。だが本を探してみるとやたらと分厚かったり、専門的過ぎて読むのに手間がかかり過ぎる本が多い。もやもやしながら探しているうちに見つけたのがページ数が手ごろな本書だった。そして、そして偶然、著者の平井明夫さんは元同僚だった。これは買うしかない。平井さんには連絡せず、僕はこっそり買い置きしていたのである。
あと、本書を読んだのにはもうひとつ理由がある。
いつも勉強に利用させていただいているカフェの店員さんたちは、ほとんどが非理数系の大学生だ。もう何年も利用させていただいているので、年度が替わるたびに彼らは1年ずつ進級する。就活の様子を聞いたりすることもあり、内定が決まった学生には「お祝い」に本をプレゼントしているのだ。今年の3年生、特に数字に関わりそうな職種に内定が決まった学生には、次の本を贈っていた。タイトルにインパクトがあるのでウケもよい。
「テキパキこなす! ゼッタイ定時に帰る エクセルの時短テク 121」(Kindle版)
この本は僕も使っていて、良さはじゅうぶん承知している。この手の本はいろいろ出ているけれど、分厚いものを買っても覚えきれるものではない。128ページに抑えた手ごろなTipsを覚えるだけで、仕事はとてもはかどるのだ。先輩社会人から「ひよっこ社会人」へのプレゼントに最適である。少なくともExcel操作に手こずって残業することからは解放される。
さて、その次の段階がデータ分析だ。Excel操作の基本をマスターした後は、「経理のExcel強化書: 平井明夫」で、Excelの活用例を実際のビジネス・データを使って学ぶことができれば申し分ない。
とはいっても、会社の売り上げデータは平社員に公開されるわけがない。本書のサンプル・データで学び、個人レベルで蓄積するデータを使って自分なりのデータ分析をするのがよいだろう。小規模な会社へ就職したり、自営業として社会人の一歩を踏み出すのであれば、直接役立てることができる。
また、まめにデータをとって家計簿の分析や日々の健康データの分析、食生活の分析に使うのもよいだろう。そのためには何ができるのかを、まず知る必要がある。
本書は文系の大学生でも理解可能なレベルに抑えてあるので、内定が決まった学生に紹介することにした。気に入るようだったら、こちらの本は自分で買ってもらうことにしよう。
理数系の人は統計学や統計解析を学んでいることが多いから、あえてビジネス系のデータ分析を学ぶ必要はないのではないか、自己流でデータをグラフにすればなんとかなるのではないか、と思っている人がいるかもしれない。(少なくとも僕はそうだった。)
けれども、少し調べるだけでそれは大間違いであることに気が付くはずだ。統計解析と重複するのは相関係数や回帰分析くらいで、あとはデータ分析固有の手法である。本書では次の章立てに従ってデータ分析の手法が10種類も解説される。
第1章 ピボット分析~セグメント別損益分析で不調の原因を見つける
第2章 パレート図~コントロールすべき経費科目を洗い出す
第3章 ファンチャート~増減の大きい経費科目を見つける
第4章 ヒストグラム~店舗来客数の現状を知る
第5章 CAGR~事業の成長性を分析する
第6章 What-If分析~損益分岐点売上をシミュレーションする
第7章 散布図~偏った在庫を見つける
第8章 相関係数~最適な商品を見つける
第9章 単回帰分析~価格弾力性を調べる
第10章 重回帰分析~人件費と広告宣伝費から売上を予測する
週末の1日(1章約1時間×10テーマ)を使えば読める分量だ。平日の夜なら2~3日かかると思われる。でも、たったそれだけで、これだけの知識が得られるのなら願ったり叶ったりである。
僕が良いと思ったことを箇条書きしておこう。
- 全体の分量が186ページに抑えてある。
- その結果、1章ぶんのページ数が少ないから、長い時間をいちどに割けなくてもOK。
- 代表的な手法を10種類も学べる。
- 具体的なデータを示し、データから何を知りたいか、手法の目的がわかるように書かれている。
- 分析手法をExcelの表を使いながら具体的に解説している。
- 最後にExcelを使いながら、操作方法を示している。操作手順も少ない。
最低限必要なことを手短かに、わかりやすく解説しているのが、忙しい僕にはとても受け入れやすかった。
もちろん生データを見たり、それをグラフ化するだけで見えてくることもたくさんある。しかし、本書で紹介されている手法でデータを加工し視覚化することで、よりいっそう豊かな視点からデータを分析できることが、はっきりと印象付けられることだろう。
僕がいちばん気に入ったのは「第4章 ヒストグラム~店舗来客数の現状を知る」である。ヒストグラムは手法として、とても易しく取るに足らないものだと思っていたが、「ああ、こういうときに威力を発揮するのだなぁ。」と、本書は自分の盲点を明らかにしてくれた。
本書のタイトルには「経理の」とあるが、データ分析はすべてのビジネスマンに役立つ手法であり、一般教養として身につけておいて損はない。
10年以上前からBI (ビジネス・インテリジェンス)が経営判断に活用され始め、東日本大震災以降、ビジネスの世界ではビッグデータがトレンドとなった。そして今年のトレンドワードはAI(人工知能)である。
将来、データ分析もAIに置き換えられていくのかもしれないが、それは大企業から始まることだ。最終的にビジネス判断をすべてAIに任せることになったとき、人が働く価値はどこに求めればよいのだろうか?
少なくとも今のうちに自分でデータ分析の経験を積み、自分なりのセンスを磨いておくことが、AIには実現することができない領域で、自らの価値を高めていくことにつながるのではないかという気がしている。
なお、本書で使われているExcelファイルのサンプル・データは、出版社の以下のページからダウンロードすることができる。
経理のExcel強化書―データ分析入門(中央経済社): ページを開く
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「経理のExcel強化書: 平井明夫」
第1章 ピボット分析~セグメント別損益分析で不調の原因を見つける
第2章 パレート図~コントロールすべき経費科目を洗い出す
第3章 ファンチャート~増減の大きい経費科目を見つける
第4章 ヒストグラム~店舗来客数の現状を知る
第5章 CAGR~事業の成長性を分析する
第6章 What-If分析~損益分岐点売上をシミュレーションする
第7章 散布図~偏った在庫を見つける
第8章 相関係数~最適な商品を見つける
第9章 単回帰分析~価格弾力性を調べる
第10章 重回帰分析~人件費と広告宣伝費から売上を予測する