「出題者心理から見た入試数学: 芳沢光雄」(Kindle版)
内容紹介:
日本初!出題側が明かす入試数学の全て。
入試問題とは、大学側から受験生へのメッセージでもある。出題者の意図、問題作りの工夫、指導要領の制約、マークシート の裏技対策など、いま初めて明かされる。
大学入試の問題作りの現場には、外からは想像もつかない葛藤や苦悩がある。30年近く、入試数学の出題と採点に携わってきた著者が、これまで一切語られることのなかった作問の背景や意図、採点、その他諸々の事情について、余すところなく率直に論じる。
2008年10月刊行、184ページ。
著者について:
芳沢光雄(よしざわみつお)
1953年東京生まれ。学習院大学理学部数学科卒業。東京理科大学理学部教授(大学院理学研究科教授)を経て、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。専門は数学・数学教育。理学博士。
理数系書籍のレビュー記事は本書で336冊目。
本書はウォーキングの途中で立ち寄る下北沢の古書店でたまたま目にとまった本だ。9年前に発売された。
ユニークな切り口だと思った。同じことでも視点を変えると見えなかった部分を発見できる。300円だったので買って読んでみた。
先日「学習参考書が電子書籍化され始めている件」という記事で高校数学の参考書を紹介したので流れとしてはちょうどよい。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」わけで、社会人になってからこのブログを書き始めるまでの20年は高校数学や大学受験のときのことなど、ほとんど意識に上っていなかった。
受験生として過ごす1、2年は長い人生からみればほんのわずかな期間だが、この短い期間に入試を突破するための知識とノウハウを習得しなければならないのだから大変なことだ。
受験生には僕のブログは「ほどほどに」読んでほしい。相対性理論や量子力学の教養書でワクワクするのは受験勉強のモチベーションを高めるために利用してほしい。試験問題にこの2つの理論は絶対に出ないのだから。
数学だと高校3年間に学ぶ内容出題されるから設問の範囲と(難関国立大を除けば)難易度は限定されている。(受験生には出題範囲はとても広いと感じるだろうけど。)
1、2年という定められた期間に、設問パターンが限定されているとはいえ、問題へのアプローチと解法パターンをすべて身に着けなければならないのだから、自分で解き方をいちいち模索していては間に合わない。すべて丸暗記というわけではないけれども、テキパキと解いていくために「覚えること」が重要になるのが受験数学、入試数学だ。
予備校や学習塾を利用しない独習者はとかく好きな分野に偏りがちである。嫌いな分野であっても分け隔てなく高校3年間の範囲をまんべんなく習得しなければならない。
だから問題を見た瞬間に「あ、これに似たのは前にやったことがある!」と思えれば、しめたものである。
そして「このタイプの問題は初めてだな。」という事態に遭遇してしまったときに救いの手を差し伸べてくれるのが本書なのだ。
入試問題は通常大学の先生が作問している。1947年に新制大学制度が施行されて70年たっているのに出題範囲は毎年だいたい同じ、全国の大学で入試が行われてきたのだから、どう頑張っても過去問に似た問題になってしまう。「盗用」だと疑惑を持たれるとマスコミから叩かれてしまうから、かなり神経を使って先生方は作問しているのだ。
たとえばある問題がたまたま数Iの範囲で解けるとしよう。そしてその問題は数IIIの微分を使う別解も存在するケースがある。すると試験問題範囲外の数IIIの問題を出題したとバッシングを受けてしまうことがあるのだ。作問する側には相当なプレッシャーがかかり、慎重にならざるを得なくなる。
本書は高校3年間の数学の分野からまんべんなく例を取り上げ、どのような苦労をして作っているかを語っている。「入試問題ってこんなだったよなぁ。」と懐かしく読みながら、そして受験していた側の自分の心理状態を思い出しながら読んでみた。
章立てはこのとおりである。
第1章 学習指導要領と出題者心理
第2章 マークシート問題の出題者心理
第3章 計算と小問配列で見る出題者心理
第4章 グラフ・図形問題の出題者心理
第5章 証明・論理問題の出題者心理
運悪く初めてお目にかかる問題に遭遇してしまったとき、本書を読んでいれば「どのような意図で問題が作られたか」、「問題を作った先生がどのように解いてほしいと思っているか」が想像できるようになる。
試験を受ける側も大変には違いないが、試験させる側はもっと大変なのである。本書で相手のことを知ると、臨もうとしている「入試」の裏事情が手に取るようにわかるのだ。
僕としては本書を大学入試関係者や教育行政当局者というより、むしろ大学受験生にお勧めしたいのだ。
関連記事:
大学への数学(研文書院)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6124158481ed8d9d4655478643be0db8
復刻版 チャート式 代数学、幾何学(数研出版)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/709402c3bc0ad74ebb4fe0969f9f7e4
寺田文行先生の「数学の鉄則」シリーズ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/412539f939c8058c9b57368f98abce16
学習参考書が電子書籍化され始めている件
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cdbd82914186c4b8dda69ab77e6efa07
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「出題者心理から見た入試数学: 芳沢光雄」(Kindle版)
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まえがき
第1章 学習指導要領と出題者心理
- 「出題範囲外」とは何か
- 絶滅の危機にある「融合問題」
- 受験生が意外に弱いのは小学生でも考えられる整数の問題
- 履修範囲外のハミルトン・ケイリーやロピタルの定理で解いてもよいか
第2章 マークシート問題の出題者心理
- マークシート形式化が無理な問題(数値編)
- マークシート形式化が無理な問題(選択肢編)
- 「1」の多出とベンフォードの法則
第3章 計算と小問配列で見る出題者心理
- 「きたない数字の正解」は「不安心理に負けない精神力」を見る
- 「センス」を見る計算問題と「努力」を見る計算問題
- 「直列問題」と「並列問題」のプラス・マイナス
第4章 グラフ・図形問題の出題者心理
- 受験生を悩ますグラフを描く問題
- 幾何的センスを見る空間図形問題
第5章 証明・論理問題の出題者心理
- 数学的帰納法の「困った答案」回避法
- 想定外の答案が目立つ論理の問題
- インドの大学入試問題で考える証明問題の意外な長所と短所
- 東大の円周率問題が開いた突破口
あとがき
さくいん
内容紹介:
日本初!出題側が明かす入試数学の全て。
入試問題とは、大学側から受験生へのメッセージでもある。出題者の意図、問題作りの工夫、指導要領の制約、マークシート の裏技対策など、いま初めて明かされる。
大学入試の問題作りの現場には、外からは想像もつかない葛藤や苦悩がある。30年近く、入試数学の出題と採点に携わってきた著者が、これまで一切語られることのなかった作問の背景や意図、採点、その他諸々の事情について、余すところなく率直に論じる。
2008年10月刊行、184ページ。
著者について:
芳沢光雄(よしざわみつお)
1953年東京生まれ。学習院大学理学部数学科卒業。東京理科大学理学部教授(大学院理学研究科教授)を経て、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。専門は数学・数学教育。理学博士。
理数系書籍のレビュー記事は本書で336冊目。
本書はウォーキングの途中で立ち寄る下北沢の古書店でたまたま目にとまった本だ。9年前に発売された。
ユニークな切り口だと思った。同じことでも視点を変えると見えなかった部分を発見できる。300円だったので買って読んでみた。
先日「学習参考書が電子書籍化され始めている件」という記事で高校数学の参考書を紹介したので流れとしてはちょうどよい。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」わけで、社会人になってからこのブログを書き始めるまでの20年は高校数学や大学受験のときのことなど、ほとんど意識に上っていなかった。
受験生として過ごす1、2年は長い人生からみればほんのわずかな期間だが、この短い期間に入試を突破するための知識とノウハウを習得しなければならないのだから大変なことだ。
受験生には僕のブログは「ほどほどに」読んでほしい。相対性理論や量子力学の教養書でワクワクするのは受験勉強のモチベーションを高めるために利用してほしい。試験問題にこの2つの理論は絶対に出ないのだから。
数学だと高校3年間に学ぶ内容出題されるから設問の範囲と(難関国立大を除けば)難易度は限定されている。(受験生には出題範囲はとても広いと感じるだろうけど。)
1、2年という定められた期間に、設問パターンが限定されているとはいえ、問題へのアプローチと解法パターンをすべて身に着けなければならないのだから、自分で解き方をいちいち模索していては間に合わない。すべて丸暗記というわけではないけれども、テキパキと解いていくために「覚えること」が重要になるのが受験数学、入試数学だ。
予備校や学習塾を利用しない独習者はとかく好きな分野に偏りがちである。嫌いな分野であっても分け隔てなく高校3年間の範囲をまんべんなく習得しなければならない。
だから問題を見た瞬間に「あ、これに似たのは前にやったことがある!」と思えれば、しめたものである。
そして「このタイプの問題は初めてだな。」という事態に遭遇してしまったときに救いの手を差し伸べてくれるのが本書なのだ。
入試問題は通常大学の先生が作問している。1947年に新制大学制度が施行されて70年たっているのに出題範囲は毎年だいたい同じ、全国の大学で入試が行われてきたのだから、どう頑張っても過去問に似た問題になってしまう。「盗用」だと疑惑を持たれるとマスコミから叩かれてしまうから、かなり神経を使って先生方は作問しているのだ。
たとえばある問題がたまたま数Iの範囲で解けるとしよう。そしてその問題は数IIIの微分を使う別解も存在するケースがある。すると試験問題範囲外の数IIIの問題を出題したとバッシングを受けてしまうことがあるのだ。作問する側には相当なプレッシャーがかかり、慎重にならざるを得なくなる。
本書は高校3年間の数学の分野からまんべんなく例を取り上げ、どのような苦労をして作っているかを語っている。「入試問題ってこんなだったよなぁ。」と懐かしく読みながら、そして受験していた側の自分の心理状態を思い出しながら読んでみた。
章立てはこのとおりである。
第1章 学習指導要領と出題者心理
第2章 マークシート問題の出題者心理
第3章 計算と小問配列で見る出題者心理
第4章 グラフ・図形問題の出題者心理
第5章 証明・論理問題の出題者心理
運悪く初めてお目にかかる問題に遭遇してしまったとき、本書を読んでいれば「どのような意図で問題が作られたか」、「問題を作った先生がどのように解いてほしいと思っているか」が想像できるようになる。
試験を受ける側も大変には違いないが、試験させる側はもっと大変なのである。本書で相手のことを知ると、臨もうとしている「入試」の裏事情が手に取るようにわかるのだ。
僕としては本書を大学入試関係者や教育行政当局者というより、むしろ大学受験生にお勧めしたいのだ。
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大学への数学(研文書院)
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まえがき
第1章 学習指導要領と出題者心理
- 「出題範囲外」とは何か
- 絶滅の危機にある「融合問題」
- 受験生が意外に弱いのは小学生でも考えられる整数の問題
- 履修範囲外のハミルトン・ケイリーやロピタルの定理で解いてもよいか
第2章 マークシート問題の出題者心理
- マークシート形式化が無理な問題(数値編)
- マークシート形式化が無理な問題(選択肢編)
- 「1」の多出とベンフォードの法則
第3章 計算と小問配列で見る出題者心理
- 「きたない数字の正解」は「不安心理に負けない精神力」を見る
- 「センス」を見る計算問題と「努力」を見る計算問題
- 「直列問題」と「並列問題」のプラス・マイナス
第4章 グラフ・図形問題の出題者心理
- 受験生を悩ますグラフを描く問題
- 幾何的センスを見る空間図形問題
第5章 証明・論理問題の出題者心理
- 数学的帰納法の「困った答案」回避法
- 想定外の答案が目立つ論理の問題
- インドの大学入試問題で考える証明問題の意外な長所と短所
- 東大の円周率問題が開いた突破口
あとがき
さくいん