2017年6月12日
量子コンピューターに弾み「時間結晶」実験成功(筑波大らのグループ)
http://blog.goo.ne.jp/kzunoguchi/e/db84605448e4ab00d07e262e0eaae720
2017年3月9日
世界最高濃度の室温量子スピンを有するダイヤモンド結晶の作製により、
理論的に存在が予測されていた「時間結晶」の室温観測に成功(筑波大らのグループ)
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201703090300.html
日本経済新聞で再び「時間結晶」の実験が成功したことが報じられた。3月のときの発表とどこが違うのか僕にはよくわからないのだが。
実験の価値は大いに称賛したいが、ネーミングがよくないと思う。この現象を「時間結晶」と名付けて発表するのは虚構新聞の「世界初「粉末の水」完成 カップめんの技術を応用」と五十歩百歩である。
「時間結晶」という強烈な言葉はひとり歩きして、時間それ自体を水晶やダイヤモンドのような結晶として実体化できたようなイメージを与えることになってしまう。ネット民たちの反応はきっと次のようなものだろう。
「なんだとーっ!」
「キタ―――(゚∀゚)―――― !!」
「\(>ヮ<)/きゃっほぉ♪」
「やべぇよ・・・やべぇよ・・・」
「大丈夫だ、問題ない」
「好きかも・・・」
「すげすげヴォー」
「超!エキサイティン!!」
「まあ、そうなるな」
「ホゥアwwwホゥアwwwファーッハッハハォゥwwww」
「(゚Д゚)ホワァ!!」
「はいっつーことで」
「萌え萌えキュン♡」
「ブヒィィィィ!!」
「なにそれこわい」
「もうどうにでもな~れ」
「ファッ!?」
「m9(^Д^)プギャー」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「じわじわくる」
「dボタンおしてしもた」
もちろん時間そのものの固体化、結晶化に成功したわけではない。この実験は時間の流れに従って物質に周期的な変化を生じさせることに成功したという意味なのだ。「結晶」というのは通常、原子と原子の結合による同じ構造が空間的な方向に繰り返される状態のことをいう。
今回の実験で観測されたのは時間が進む方向に原子どうしの結合の同じ構造が周期的に現れた状態ということだ。
記事トップの掲載画像に思わせぶりな写真を使ってしまった僕にも罪がある。筑波大学にしたって3月9日に発表したページのトップにこんな写真を載せているから同罪だろう。
でも実験はダイヤモンド結晶を使ったようだから筑波大学のページの写真は、本当と思わせぶりが半分ずつというところだろうか。
ダイヤモンド結晶で見られるこの写真のような変化が実際のものだ。(発表ページ、詳細解説PDF)
ともかく「時間結晶」はいただけない。誤解されないようにいくつか考えてみた。
次のようなネーミングはいかがだろうか?このような用語にすれば時間自体が結晶になるという誤解はされなくてすむ。日英で書いておこう。
1)時間性結晶(Time-based Crystal)
2)時間指向性結晶(Time-oriented Crystal, Time-directional Crystal)
3)時間的結晶(Time-wise Crystal)
4)時間間隔結晶(Time-interval Crystal)
5)時間周期結晶(Time-cyclic Crystal)
なお、物理学書の翻訳者として知られる樺沢先生(@adx50150)は「定常巡回状態」という呼び方を提案され、次のようにコメントされている。
「当初ウィルチェックが意図したような基底状態or平衡状態における周期性の実現(これは渡辺・押川論文で既に理論的に否定されているそうですが)ならば「結晶」と呼んでもよさそうだけれども、実験で実現されたような"駆動された"周期性に「結晶」という言葉を充てるのは不自然かもしれませんね。」
また、物理学者の堀田先生(@hottaqu)は次のようにツイートされている。
「第2種の時間結晶。駆動力の周期の整数倍の周期の長期振動が現れるのを、対称性の破れと呼ぶのはどうだろう。非線形素子で半分の振動数の粒子が2つできるだけでも長周期振動は出るだろうし。非線形逆パラメトリック共鳴という感じが妥当かもしれない。」
いずれにせよ、誤解を与える「時間結晶」が物理学界のみならず一般社会に定着しないうちに、ふさわしい言葉に代えていただきたいものだ。
このままだと「時間結晶水」や「時間結晶ペンダント」、「時間結晶ウォッチ」、「時間結晶パウダー」などの商品が発売されかねない。
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