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古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆

古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆

内容紹介:
「ニュートン力学」と称される古典力学は、ニュートン以後のヨーロッパの数学者たちによる協同作業で形成されていったものであった。最新の科学史学を踏まえた、近代自然科学理論生成の物語。1997年刊行、372ページ。

著者について:
山本義隆(やまもとよしたか)
1941年大阪生まれ。大阪府出身。大阪市立船場中学校、大阪府立大手前高等学校卒業。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。 東京大学大学院博士課程中退。
1960年代、学生運動が盛んだったころに東大全共闘議長を務める。1969年の安田講堂事件前に警察の指名手配を受け地下に潜伏するが、同年9月の日比谷での全国全共闘連合結成大会の会場で警察当局に逮捕された。日大全共闘議長の秋田明大とともに、全共闘を象徴する存在であった。
学生時代より秀才でならし、大学では物理学科に進んで素粒子論を専攻した。大学院在学中には、京都大学の湯川秀樹研究室に国内留学しており、物理学者としての将来を嘱望されていたが、学生運動の後に大学を去り、大学での研究生活に戻ることはなかった。
その後は予備校教師に転じ、駿台予備学校では「東大物理」などのクラスに出講している。一方で科学史を研究しており、当初エルンスト・カッシーラーの優れた翻訳で知られたが、後に熱学・熱力学や力学など物理学を中心とした自然思想史の研究に従事し今日に至っている。遠隔力概念の発展史についての研究をまとめた『磁力と重力の発見』全3巻は、第1回パピルス賞、第57回毎日出版文化賞、第30回大佛次郎賞を受賞して読書界の話題となった。

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理数系書籍のレビュー記事は本書で290冊目。

3年前に書いた「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」という記事や6年前に書いた「日本語版「プリンキピア」が背負った不幸」という記事でNewton(ニュートン)の業績の偉大さや彼が残した著書『プリンキピア(自然哲学の数学的原理)』の凄さを讃えたことがある。それは現代の私たちが「Newton力学」と呼んでいるもののすべてを彼が発見し、数学的に証明し、発表した人類史上の偉業だ。『プリンキピア』の日本語訳は昨年電子書籍として復刊された。(参考:Kindle版で復刊: 日本語版プリンキピア(自然哲学の数学的原理):アイザック・ニュートン

けれども今回本書を読んでそのような僕の理解は大きな修正を余儀なくされた。Newtonの業績と思っていたいくつかの事柄は、実際には彼は第一発見者ではなかったり、結果を述べるだけで証明には成功していなかったというのだ。彼の業績と私たちが信じ込んでいるもののいくつかに「ほころび」があることが書かれている。読み始めてすぐ目から鱗が落ちるような思いがした。

また彼と同時代を生きたLeibniz(ライプニッツ)は微積分をどちらが先に発明したかNewtonと争ったことで知られているが、それはどのような形で決着したのか。


本書について

本書はNewtonが『プリンキピア』を著し、その後100年に渡って古典力学がどのように発展していったかを著者の山本先生が科学者や科学史家の著作を読み解きながら解説したものだ。

地動説を発表したCopernicus(コペルニクス)からGalilei(ガリレイ)、Kepler(ケプラー)そしてNewtonに至る100年間を解説した科学書籍はたくさん出版されている。彼らの功績はあまりにも大きく、科学史の本だけでなく高校の世界史の教科書にも書かれているほどだ。

それに対して本書のようにNewton以降100年間の古典力学史を解説した本はほとんどない。この100年間にLeibniz(ライプニッツ)、Varignon(ヴァリニョン)、Hermann(ヘルマン)Johan Bernoulli(ヨハン・ベルヌーイ), Jacob Bernoulli(ヤコブ・ベルヌーイ), Daniel Bernoulli(ダニエル・ベルヌーイ)、Euler(オイラー)、D'Alenbert(ダランベール)、Maupertuis(モーペルテュイ)、Lagrange(ラグランジュ)ら、ヨーロッパ大陸の数学者たちが創り出していった新しい微積分の手法によって力学の問題は洗練された「解析力学」という形に結実し、「汎用化」、「簡易化」した。これは「力学の解析化」-力学の問題を代数方程式や幾何学を使って解く方法から微積分や微分方程式などの解析学を使って解く方法への移行-のプロセスである。そもそもLeibnizの時代には座標の概念や曲線が代数方程式であらわされることは知られていたものの、「関数」の概念はなかったのである。

一般の方への注意:「解析学」とは数学の分野のひとつで微積分や微分方程式のことである。いっぽう「解析力学」は高校物理で学ぶ力学を微積分を駆使して一般化、汎用化させたもので物理学の分野のひとつである。Lagrangeによって完成した解析力学はその後、古典力学だけでなく電磁気学、相対性理論、量子力学、素粒子物理学などあらゆる物理現象に適用できる普遍的な理論であることが実証される。解析学と解析力学は名前が似ているので補足させていただいた。

Newtonが著した『プリンキピア』の初版が出版されたのは1687年、第2版は1713年、第3版は1726年に出版された。日本史で言えば綱吉(5代将軍)から吉宗(8代将軍)の時代に相当する。第2版、第3版が出版された頃にははるかに時代遅れになっていたのである。

Newton以降の100年間に主に上記の数学者たちによってエネルギー原理、仮想速度の原理、最小作用の原理など力学の新しい原理の探求が続けられた。最終的に総括したのはEulerの『力学の新しい原理の発見(1750)』とLagrangeの『解析力学(1788)』である。これで現在「Newton力学」と呼ばれる古典力学が出来上がった。

Keplerによる天体運動の法則化とGalileiによる運動理論を総合したのは『プリンキピア』であり「Newtonの力学」である。そして通常「Newton力学」と呼ばれている古典力学はNewtonによる総合を批判的に継承し発展させたヨーロッパの知的エリート、とりわけ大陸の数学者たちのネットワークのほぼ1世紀にわたる連続した協同作業により形成されていったのだ。

著者の山本先生がNewtonを始め上記の数学者たちの論文、1960年以降に書かれた科学史家たちの著作をみずから読み解き、当時の数式手法が難し過ぎるときは理数系の大学生でも読めるように現代の数式表示に書き改めてくださっている。

これは壮大な科学史、歴史ロマンだ。この時代は中世ではなく近世なのだが、まるでウンベルト・エーコの知的歴史ミステリー小説さながら古文書を読み解いて分析し、解説する。この時代の数学者たちの息づかいが聞こえてくるような本なのだ。

第1部ではKepler問題をめぐる力学理論の整備と洗練の過程、第2部では力学原理の形成と発展を追跡、解説する。その過程は力学を問題毎に特殊で難解な技法を必要とし、極めて限られた特別の人間にだけ伝授可能、習得可能な秘伝から、あるレベル以上の能力の持ち主には誰にでも教育可能、使用可能な道具に作り変えていく過程でもあった。その結果、力学はフランス革命以降、科学者と技術者の集団の存在が職業として社会的に要請され、組織的に要請される時代の科学理論へと変貌していったのだ。

章立てはこのとおり。

序:「Newtonの力学」と「Newton力学」

●●●第1部:Kepler問題

1.『プリンキピア』の問題設定と論理構成
2.「順Newton問題」の解法と重力の導出
3.「逆Newton問題」の解法と『プリンキピア』の限界
4.『プリンキピア』第2篇の解読
5.Leibnizと微分方程式の導入
6.Leibnizと『プリンキピア』
7.Varignonと「順Newton問題」
8.「逆Newton問題」の初めての解析解
9.Kepler問題の完成

●●●第2部:力学原理をめぐって

10.Eulerによる力学原理の整備
11.新しい問題--拘束運動とその解法
12.Daniel Bernoulliと非剛体的拘束運動
13.D'Alembertの原理
14.最小作用の原理とその周辺
15.Lagrangeと変分法
16.『解析力学』第1部・静力学
17.『解析力学』第2部・動力学


全容をここに紹介するのは無理なので、本書冒頭のNewtonとLeibnizにフォーカスして概要を述べておこう。


Newtonに対する私たちの認識

まず一般にNetwonの業績と私たちがみなしているのは次のような事柄である。

1)万有引力の法則を導き、古典力学(Newton力学)を創始。これによって天体の運動を解明した。その前提として絶対空間、絶対時間の考え方を提唱した。

2)ケプラーの惑星運動3法則を力学的に証明し、万有引力によって天体の軌道が条件によって楕円、双曲線、放物線などの円錐曲線に分かれることを示した。

3)運動の3法則を提唱。これを前提として惑星や月など天体の運動法則と地上の力学(当時は機械学と呼ばれていた)の法則を統一した。

4)空気など「媒質」の抵抗を受けながら落下する物体の運動を計算して求めた。物体の速度に比例する抵抗を受ける場合と速度の2乗に比例する抵抗を受ける場合について。

5)流体力学を考察し、月の引力によって生じる潮汐、海洋の物理学の問題を解いた。

4)数学分野においては微分積分法の発見が特に重要な業績である。彼はこれを「流率法」と呼んだ。


本書の冒頭部分

本書ではまず「Newton力学」と「Newtonの力学」を区別する。前者は上記のように現代の私たちが認識している力学の内容であり、後者は実際にNewtonが導けた範囲、Newton自身が認識していた力学の内容のことである。

そして次に区別するのは「Newtonの順問題」と「Newtonの逆問題」である。順問題とは楕円軌道から逆2乗の万有引力を導くプロセス、逆問題とは逆2乗の万有引力から楕円軌道(そして他の円錐曲線)を導くプロセスのことだ。

本書ではNewtonは順問題は『プリンキピア』の中で幾何学を使って証明できていたが、逆問題については解の天下りな記述はあるものの証明できていなかったことが述べられている。これが最初に僕が受けた衝撃だ。

そして空気など「媒質」の抵抗を受けながら落下する物体の運動を求める問題は、抵抗が速度に比例する場合と速度の2乗に比例する場合についての計算プロセスと結果を書いているが、どちらのケースでも証明に至っていないことが解説されている。この2つは現代では微分方程式を解いて求める問題である。Newtonが証明に用いた幾何学的手法の限界がここにある。

Leibnizはみずから考案した微積分の記法を使ってNewtonが『プリンキピア』に載せた問題をひとつずつ解いていった。そしてNewtonが幾何学を使って解いた順問題、Newtonが解けなかった物体が媒質の抵抗を受けて落下する問題(速度に比例する場合と速度の2乗に比例する場合)の解を導くことに成功したのだ。ちなみに逆問題を初めて解いたのはVarignon(ヴァリニョン)である。(参照:ケプラーの3法則

ただ、Leibnizは惑星に作用する力の原因が太陽による「中心力」ではなく、惑星を軌道の外側から(つまり惑星を太陽の方向に向かって)押している力だと考えていたのだという。計算結果は同じになるが物理法則の理解という点ではNewtonのほうが正しい。

現代の私たちは完成した微積分の手法、公式を使って問題を解く。3つ以上の天体の運動の場合は解析的に解けないことがわかっているが、与えられる問題はたいてい解けることが保証されていものばかりだ。Leibnizは微積分の表記を創りながら、それを代数的に解いていったのだと思うと驚嘆せずにはいられない。


キリスト教徒としてのNewton

絶対的時間や絶対的空間の概念を打ち立てたNewtonではあるが、彼自身はそれらがキリスト教の教義と矛盾するとは考えておらず、『プリンキピア』一般注にて宇宙の体系を生み出した至知至能の「唯一者」に触れ、それは万物の主だと述べていた。

Newtonはキリスト教徒であり神を必要とした。惑星の初速度は「神の一撃」でありその後は運動法則にしたがって惑星は運動を続けるので神の存在は不要なのだと僕は思っていた。キリスト教信者としての立場と彼の学説が矛盾していると思っていたのだ。しかし、そうではないことを本書を読んで知った。

太陽系全体をみたときに同一平面上を楕円軌道を描いて調和的に設定していること、すべての運動は摩擦や粘性による減衰があること、彗星は惑星による摂動の影響を受けるし、不規則性は累積していくとNewtonは考えていた。だから太陽系の調和が保たれるためは常に神の監視が必要だとNewtonは考えていたそうなのだ。惑星の運動が未来永劫続くためには全能の神の意図が前提とされていた。

Newtonは我が強く気難しくて偏屈な一面もあり、議論において意見の合わぬ者は反論の余地すら与えず叩き潰すまで論破した。パワハラである。講義があまりに高度で難解なためにお手上げになった学生から順に退散、誰も居なくなった教室で一人講義を続けていた。生涯で一度だけ笑ったことがあるが、それは論敵がボロを出した嘲りの笑いだったという逸話が残っている。


『プリンキピア』について

『プリンキピア』はすべて円や直線、曲線による「幾何学」を使って解説されている。当時の数学者にとっても難解極まりない著作である。本書ではNewtonが意図的にそうしたのであり、それは自身の理論に対する批判回避のためであったことが述べられている。長い間出版を渋っていたのも批判を恐れたためだという。その難解さは秘術・秘伝と言ってよいレベル。Newtonは錬金術にも没頭したことは意外に思われているが、秘術・秘伝という意味で整合性が取れる。(参考:「アイザック・ニュートンのオカルト研究」)

その結果『プリンキピア』はごく一部の数学者を除いて、解読不能なものとなった。ヨーロッパ大陸の多くの科学者、科学史家にとって(そして現代の私たちにとってもそうであるが)Newtonは万有引力の発見者としてのイメージが強すぎて、運動の3法則を力学の基礎に置いたという重要な点は忘れ去られることが多かったのである。運動の3法則はNewton以前のGalileiが落体の法則を考える段階ですでに知っていた経験的事実であり、Newtonが発見したものではなかったという理由もある。(参照:運動の3法則


微積分の発明者は誰?

微積分の発明者は誰?という論争にも本書は詳しい解説を行っている。Newtonは『プリンキピア』執筆以前に微積分(流率法)を考案して惑星の問題を解いていたと主張しているし、Leibnizは『プリンキピア』刊行より前に微積分を発明したと主張している。しかしどちらにも証拠がない。

注意: 「無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語」の130ページにはNewtonについて次のような記述がある。『プリンキピア』に結実する研究を続けていた時期に書かれていた未公表のノートや草稿を含む「ポーツマス文書(Portsmouth Papers)」などの調査研究から、このころすでにニュートンが微積分法の基本的概念を得ていたことがわかっている。

この論争に後世の科学史家が決着をつけた。決定的だったのはLeibnizによる書き込みがされた『プリンキピア』が発見されたことである。本書の表紙に掲げたのは『プリンキピア』の一部であるがこのページの問題に対して図の右側に手書きされているのがLeibnizによって書かれた部分。同じ問題を微積分を使って解いている。また次のページについても同様である。

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物証を優先するという立場をとればNewtonに軍配が上がることは明らかだろう。しかしNewtonの『プリンキピア』の幾何学的手法、難解な記述が反面教師的に作用したおかげでLeibniz以降Lagrangeまで力学の洗練化、物理学的な理解の進展が推し進められることになった。


対象読者、関連書籍

本書には幾何学による説明、微積分の数式を使った説明が多く記述されているので、すべて理解するためには高校物理の力学、大学の微積分、常微分方程式、解析力学の知識が必要である。数式を全く理解できない人でもかろうじて流れはつかめると思う。

力学の発展に微積分学、解析学が果たした寄与は大きいことはさきにも述べたが、本書は力学という物理学的側面から書かれた本である。数学者たちが使った微積分がどのような背景をもって進展したかという数学的側面は省略されている。

本書のこの不足部分を補う恰好の本が今年の初めに刊行されていることに僕は気が付いた。微分積分学の発展の歴史を解説した本である。この本で取り上げられている数学者(あるいは哲学者、自然科学者)はデカルト、ニュートン、フェルマー、ライプニッツ、ヤコブ・ベルヌーイ、ヨハン・ベルヌーイ、オイラー、ラグランジュ、高木貞治、コーシー、フーリエなど。今日紹介した「古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆」に登場する人物たちとかなりの部分が重なっている。食べ合わせならぬ「読み合わせ」するのにちょうどよい。

次回の記事ではこの本を紹介する予定だ。

微分積分学の史的展開 ライプニッツから高木貞治まで:高瀬正仁」(Kindle版

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あと上の本の姉妹編(下の白い表紙のほうが妹)として今年の7月に刊行されたのがこちらの本。内容は似ているが姉妹で補い合う関係にあるというので両方読んでも大丈夫だと著者の高瀬先生はお書きになっている。

微分積分学の誕生 デカルト『幾何学』からオイラー『無限解析序説』まで:高瀬正仁」(Kindle版

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関連記事: これまでに紹介した山本義隆先生の本

新・物理入門(増補改訂版):山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8ea0ef12c20ef703b81afe2752b4c3a2

熱学思想の史的展開〈1〉:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d1b18caf10c0e9a10baff20434eb9ffc

熱学思想の史的展開〈2〉:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f852e9510c040c23ae18c4da6df2dcbf

熱学思想の史的展開〈3〉:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c4f5c84e9854ddd2e60a1300044c9efc

福島の原発事故をめぐって― いくつか学び考えたこと:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7940dcbcf9929b45269dc9efae303848

原子・原子核・原子力―わたしが講義で伝えたかったこと:山本義隆
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/605f519af238e6b41871e81829f46e43


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古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆

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序:「Newtonの力学」と「Newton力学」

●●●第1部:Kepler問題

1.『プリンキピア』の問題設定と論理構成
- 発端
- 『プリンキピア』の問題設定
- 『プリンキピア』の運動法則
- 運動法則の吟味

2.「順Newton問題」の解法と重力の導出
- 面積定理の証明
- 中心力を求める基本方程式
- 一つの例:2次元調和振動
- Kepler運動の場合
- 順Newton問題の別解
- Keplerの第3法則
- 議論の再検討

3.「逆Newton問題」の解法と『プリンキピア』の限界
- 『プリンキピア』をめぐる神話
- Newtonは「逆問題」を解いたか
- 『プリンキピア』の「命題17」
- 微分法と『プリンキピア』
- 一直線上の降下
- 任意の曲線上の運動
- 若干の書き直し

4.『プリンキピア』第2篇の解読
- 『プリンキピア』第2篇の歴史的意義
- 第2篇の今日的意義
- 速度に比例する抵抗のもとでの運動--極限移行の問題
- 速度に比例する抵抗--Newtonの限界性
- 一定の駆動力のあるとき
- 速度の2乗に比例する抵抗のあるとき
- 『プリンキピア』という書物

5.Leibnizと微分方程式の導入
- Leibnizの『試論(1689)』をめぐって
- Leibnizの前提と方法--「調和回転」
- 遠心力の公式の導出
- 動径方向の運動方程式
- 楕円軌道と万有引力--順Newton問題

6.Leibnizと『プリンキピア』
- Leibnizの手になる書き込みの発見
- 速度に比例する抵抗中の落下
- 『プリンキピア』の微分法に関する補題
- 速度の2乗に比例する抵抗中の落下--I
- 速度の2乗に比例する抵抗中の落下--II
- Leibnizによる解

7.Varignonと「順Newton問題」
- Varignonの評価について
- 1次元運動とエネルギー積分
- 中心力の新しい表式
- 例--2次元調和
- Kepler運動と万有引力の導出
- 「逆Newton問題」の必要性

8.「逆Newton問題」の初めての解析解
- 問題の設定--方程式の導出
- 方程式の積分--Hermannの解
- Riccatiによる補注と若干のコメント
- Bernoulliの別解--極座標の方程式
- Kepler問題の解

9.Kepler問題の完成
- 楕円軌道の極座標表示
- Kepler運動の運動学
- 極座標による運動方程式の表現
- 運動方程式の第1積分
- 万有引力のもとでの運動
- D.Bernoulliとエネルギー積分の導入

●●●第2部:力学原理をめぐって

10.Eulerによる力学原理の整備
- 1740年前後の状況:Newtonと力学原理
- Eulerの出発点
- 力学原理としての運動方程式
- 慣性原理について
- 力の尺度をめぐる議論
- 見掛けの運動と見掛けの力
- 仕事関数の導入

11.新しい問題--拘束運動とその解法
- はじめに--新しい問題
- Jacob Bernoulliによる問題設定
- 梃子の釣り合いの条件
- 問題の解

12.Daniel Bernoulliと非剛体的拘束運動
- 一般的な問題設定と方針
- 一つの例--動く斜面上の落下
- 二重振子にたいする問題設定
- mにたいする拘束の効果
- 固有振動と相当単子

13.D'Alembertの原理
- D'Alembertとその力学
- 力学の原理
- 力概念への翻訳
- いくつかの具体例
- 二重振子
- D'Alembertの時代的制約

14.最小作用の原理とその周辺
- Maupertuis
- 最小作用の原理
- Eulerによる定式化
- Eulerによる見解
- 静力学と動力学の統一

15.Lagrangeと変分法
- Lagrangeの出発点
- 最小作用の原理
- 複数個の物体系
- D'Alembert-Lagrangeの原理

16.『解析力学』第1部・静力学
- 『解析力学』の出現前後
- 『解析力学』の特徴と意図
- 静力学と仮想速度の原理
- 拘束系と未定乗数法

17.『解析力学』第2部・動力学
- D'Alembertの原理をめぐって
- 動力学の基本方程式の導出:『解析力学(初版)』より
- 動力学の基本方程式の導出:『解析力学(第2版)』
- 諸「原理」の導出
- Lagrange方程式
- 『解析力学』の切り開いたもの
- 力学のマニュアル化


あとがきにかえて
人名索引
事項索引

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