数学の言葉で世界を見たら(朝日カルチャーセンター)
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/2e7f0295-b67b-c893-5222-54b9eb5ca711
数学には、普段の生活にすぐに役に立つものも、すぐには役に立たなくても、ものの考え方や 世界の見方を変えるようなものもあります。そこで今回の講座では、日常生活に関わる確率計算やフェルミ推定の方法から、ユークリッドの幾何学やゲーデルの不確定性原理、宇宙のかたちを測る方法まで、数学に関する様々な話題の中からいくつかを選んで紹介しながら、数学を学ぶ意義について考えてみます。
昨日は朝日カルチャーセンター新宿教室で大栗博司先生による「数学の言葉で世界を見たら」という講座を聴講してきた。先生の著書「数学の言葉で世界を見たら」の発売に合わせ、本の中からトピックを厳選した一般市民向けの数学講座である。今回は平日の夜6時半に開講だ。
2月下旬から本業の仕事で激務が続いているので、当日の夜、残業にならないかやきもきしていた。3月の末日ということで、この日のうちに発注しなければならない案件があり、朝から複数の部門の部門長と社長の承認を得るために、はらはらしながら細かい作業に没頭していた。またこの日の翌日には父が腰部脊柱管狭窄症の手術を控えており、夕方5時にオフィスを出て頼まれていた物を病院に届けなければならない。(参考:「それは突然やってきた」)
幸い父が入院している病院と講座が行われる新宿教室はとても近い。とりあえずできるだけのことは全部してから予定どおり5時にオフィスを出た。その後、病院の待合室で発注依頼した件の承認状況を確認してから新宿教室に向かった。
スタッフの方が先生を紹介してから6時半に予定通り講義が始まる。いつもの71番教室、当然のように満席だ。
僕は前から2列目に陣取り、ノートパソコンで仕事の承認状況を確認しながら講義を聴いた。結局、講座の始まる直前に承認手続きが完了し、講座が始まってから30分後に無事発注されたのを確認することができた。打ち上げた人工衛星が無事静止軌道を回り始めたのを確認したようなものだ。
肩が楽になり、ほっと胸をなでおろした。講義に集中できるようになったのがうれしい。
いつものように先生はにこやかでお元気そうだ。風邪ひいたり体調をくずされたりすることはないのかなといつも思うのだ。前もって著書を読んでいたこと、そして昨年9月に受講した「素数の話、解の公式の話(朝日カルチャーセンター)」と内容がかぶるので、楽な気持ちで聴講することができた。
配布されたコピーにはスライドが全部で139枚。2時間の講座にしては多い。次のような流れで解説が進む。
- 数の種類、ウォームアップ:なぜ (-1)x(-1) = 1か
- 整数から有理数へ、有利数から無理数へ
- 古代ギリシア数学の危機(無理数の連分数表示)
- 極限という考え方(1=0.999999・・・?)
- ゼノンのパラドックス
- ゲーデルの不完全性定理(無限のふしぎの例)、第1不完全性定理
- プログラムの停止問題
- 素数は数のアルファベット
- 素数、算術の基本定理、エラトステネスの篩
- パナソニックのiPadアプリ(Prime Smash!)
- 素数は無限にある(ピタゴラスの証明)
- ガウス(数学は科学の女王である。そして、素数の性質を調べる数論は数学の女王である。)
- 素数定理(ボブ・ディランと素数、素数ゼミ)
- 役に立つ素数
- 素数の判定、フェルマー検定、フェルマーの小定理
- 12を法とする算術(足し算、引き算、掛け算ができる)
- 素数を法とする算術(足し算、引き算、掛け算だけでなく割り算もできる)
- AKS素数検定
- インターネット通信への素数の応用(公開カギ暗号、RSA暗号、オイラーの定理)
- ウィッテン博士(京都賞記念座談会)
- 量子コンピュータが実現すると素因数分解が効率的にできるようになり、RSA暗号は破れてしまう
- 素数の魅力、素数の歌(シカゴ大学教授の加藤和也)
- 素数の理論は素粒子論にも使われている
- ラマヌジャンが最後に書いた手紙
- ヘンリー・デイビッド・ソロー(数学は詩のようだといわれるけれど、そのほとんどはまだ詠われていない
- 自然数や素数の不思議に引きつけられた数学者が、純粋な探究心から研究してきた素数の性質は、現在のインターネット経済で中心的な役割を果たしている
全体的に昨年9月の講座よりやさしいと感じた。すでに理解している内容なので、そのまま聞いて考えるより、数学が苦手な高校生になったつもりで聴講してみた。
数学が苦手な人はどこをどう難しく感じるのか、どのようなところを面白く感じるのか。そのような聞き方をするのである。とはいっても知っていることを知らないつもりになるのは結構難しい。それぞれ書き出してみると次のようになった。
難しいと感じる箇所:
連分数の計算、ゲーデルの不完全性定理とプログラムの停止問題の関係、ピタゴラスによる素数が無限にあることの証明、12を法とする算術
面白く感じる箇所:
素数は数のアルファベット、ボブ・ディランと素数、数論は数学の女王、RSA暗号、素数の理論は素粒子論にも使われる
講座が半分ほど進んだところで、先生はイギリスで購入されたお土産のクッキーをふるまってくださった。今回のは大きい缶なので重かったそうだ。
いつもの4時間の講義に慣れてしまっているので楽しい2時間はあっという間だ。講義中には質問も活発に行われ、講義の後で個別に先生に質問する受講者も多かった。恒例のサイン会も長蛇の列である。
次回の講座も予定されているそうだ。詳細は朝日カルチャーセンターからの正式発表を待っていただきたい。
講座ですでに顔見知りになっているいつものメンバーとのオフ会は、平日の夜ということもあり、近くの喫茶店で30分ほどコーヒーを飲みながら雑談。参加者は僕を含めて5人だった。
その後、僕は地元笹塚のイタリアン居酒屋に向かった。その店で友達になった常連の男性、そして彼の同僚の女性と待ち合わせをしていたからだ。
僕の物理学の話を聞きたいということで、だいぶ前から依頼を受けていたお二人である。ビールを飲みながら深夜までとめどない物理小話、数学小話をさせていただいた。話した内容は次のようなことだった。ずいぶん楽しんでいただけたようで僕は大満足だった。
- その日の大栗先生の講座のこと
- 量子テレポーテーション、量子の絡み合いの話、電子のスピンのはなし
- 不確定性原理、可逆な運動と不可逆な運動、AND回路など計算は不可逆であること、情報かがエネルギーに変換されること
- 特殊相対性理論、空間の縮み、時間の伸び、空間が曲がるとはどういうことか、E=mc^2、原爆の話
- 次元の話、3脚の脚はなぜ3本か、ひもとひもが絡むのは3次元空間特有の現象、エキゾチックな球面
- 電気通信の歴史、電磁波が飛ぶ原理、電磁気学の歴史
- 電卓の歴史、電卓の構造、どのように計算がおこなわれるか
余談: 翌日午後から行われた父の手術は結局4時間におよぶ大手術になった。酸素マスクをつけていたので父と会話することはできなかったが、お医者さんの話によると、杖をつけば歩けるような状態にまでは回復すると思いますとのこと。これからリハビリテーションの日々が続く。しっかりサポートを続けたい。
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2015年4月2日に追記:
この記事は大栗先生のブログからリンクしていただきました。
東京 その3(大栗博司のブログ)
http://planck.exblog.jp/23818449/
関連記事:
素数の話、解の公式の話(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f8c531f52d2a788ea6906555dcbfb87c
数学の言葉で世界を見たら: 大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8ffea17402dcf34e5991b154acef39d9
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