岩波書店もついにAmazon Kindle版についても電子書籍化に踏み切った。その第1弾にはお気に入りのこの本が含まれている。取り急ぎお伝えしておこう。岩波書店には「ファインマン物理学、全5巻」も含め、たくさんの理数系書籍があるからどんどん進めていただくことを期待している。
「ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉」(Kindle版)
「ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉」(Kindle版)
「"Surely You're Joking, Mr. Feynman!": Adventures of a Curious Character」(Kindle版)



内容紹介:
R.P.ファインマンは1965年にJ.S.シュウィンガー、朝永振一郎とともにノーベル物理学賞を授賞した天才的な物理学者である。こう書くと「理数系が苦手」な人は逃げ出したくなるかもしれないが、そんな人にこそ本書を手にとっていただきたい。
本書は20世紀を代表する天才物理学者の自伝ではない。R.P.ファインマンという人生を楽しむ天才から我々への贈りものである。
「ファインマンと聞いたとたんに思い出してもらいたいのは、ノーベル賞をもらったことでもなければ、理論物理学者であったことでもなく、ボンゴドラムでもマンハッタン計画でもない。僕が好奇心でいっぱいの人間であったということ、それだけだ」といつも言っていた(下巻訳者あとがきより)。
「なぜだろう?」といつも好奇心いっぱいの子どものように世界を見て、いったん好奇心をひかれたらそれに夢中になり納得のいくまで追求する。彼は一切の虚飾と権威を嫌い、相手がそれをかさに着ているとみるや容赦しなかった。それは、そのような態度が、楽しいはずの真実の探求を邪魔する厄介なものだったからである。
上巻では、彼の少年時代、物理学者としての修行時代、また駆け出しの物理学者として携わったマンハッタン計画から終戦を迎えるころまでのエピソードが収録されている。どの時代においても彼はその状況を最大限楽しみ、そして、決して流儀を変えなかった。
自分が理系か文系かなんて関係ない。もし少しでも本書に「好奇心」を持ったなら、ぜひ一読をおすすめする。
本書の上巻では若く初々しかったファインマンの姿に触れることができるが、下巻では、成長したファインマンが1人の「物理学者として」物理のみならず社会や芸術とかかわってゆくさまに触れることができる。
どんなに権威者になっても(彼はそう呼ばれるのを何よりも嫌ったが)、彼は決して物理学者としての誠実さを変えることはなかった。サバティカルでブラジルの国立研究所に滞在した彼は「教科書を丸暗記するだけ」の物理の大学教育に業を煮やし、ブラジルの「お偉方」の大学教授たちの前で「この国では科学教育が行われていない」と言い放った。またあるときは、学校教科書の選定委員としてすべての教科書に目を通し、教科書の内容が科学的誠実さを欠いているのを真剣に怒り、他の委員たちと闘った。
彼の信条でもある「好奇心」は年齢を重ねてもとどまる所を知らず、カジノではプロの博打うちに弟子入りしたり、ボンゴドラムでバレエの国際コンクールの伴奏をしたり、また、幻覚に強い興味を持った彼は、旺盛な好奇心からアイソレーションタンク(J.C.リリーが発明した感覚遮断装置)にまで入ってしまう。彼は他人のことなど気にとめず、素直な心で物事を見つめ、興味をひかれたらそれに夢中になる。彼は何より人生を楽しみ、人生を愛していた。
そんな彼の書いた本書に触れていると、いろんなことを話したくってうずうずしている彼が、目を輝かせて楽しそうに自分に向かって話しかけてくれているような気分になる。そんな気分にさせるのは、大貫昌子による素晴らしい訳のおかげでもあろう。訳者はファインマンと親交があり、彼に相談しながら翻訳作業を行っているため、原文の持ち味が十分に表れている。
上巻の目次
まえがき
はじめに
僕の略歴
1 ふるさとファー・ロッカウェイからMITまで
- 考えるだけでラジオを直す少年
- いんげん豆
- ドア泥棒は誰だ?
- ラテン語?イタリア語?
- 逃げの名人
- メタプラスト社化学研究主任
2 プリンストン時代
- 「ファインマンさん、ご冗談でしょう!」
- 僕、僕、僕にやらせてくれ!
- ネコの地図?
- モンスター・マインド
- ペンキを混ぜる
- 毛色の違った道具
- 読心術師
- アマチュア・サイエンティスト
3 ファインマンと原爆と軍隊
- 消えてしまう信管
- 猟犬になりすます
- 下から見たロスアラモス
- 二人の金庫破り
- 国家は君を必要とせず!
4 コーネルからキャルテクへ ブラジルの香りをこめて
- お偉いプロフェッサー
- エニ・クウェスチョンズ?
- 1ドルよこせ
- ただ聞くだけ?
下巻の目次
4 コーネルからキャルテクへ ブラジルの香りをこめて(続)
- ラッキー・ナンバー
- オー、アメリカヌ、オウトラ、ヴェズ
- 言葉の神様
- 親分、かしこまりました!
- 断わらざるを得ない招聘
5 ある物理学者の世界
- 「ディラック方程式を解いていただきたいのですが」
- 誤差は7パーセント
- 13回目のサイン
- 唐人の寝言
- それでも芸術か?
- 電気は火ですか?
- 本の表紙で中身を読む
- ノーベルのもう1つの間違い
- 物理学者の教養講座
- パリではがれた化けの皮
- 変えられた精神状態
- カーゴ・カルト・サイエンス
訳者あとがき
文庫版あとがき
解説 とらわれない発想
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「ファインマン物理学 I 力学」(1986)
「ファインマン物理学 II 光・熱・波動」(1986)
「ファインマン物理学 III 電磁気学」(1986)
「ファインマン物理学 IV 電磁波と物性〔増補版〕」(2002)
「ファインマン物理学 V 量子力学」(1986)
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