第1回ノーベル賞授賞式(1901年)
毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、「とね日記賞」を発表している。今年で14回目。
ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもないことに気がついたのは物理学を学び始め、このブログを書き始めた頃だった。なんだか悔しいと思ったのである。しばらくもやもやと考えていたところ、あることを思いついた。それはどうせもらえないのなら自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!という逆転の発想だった。
「とね日記賞」はその年に読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞も設けている。
名著であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても読んでいなければ対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。
メダルも賞金も授賞式もスピーチも晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観だらけのアンフェアな賞だ。
次の賞を発表している。今年は数学書を読んでいないので授賞対象外。
- 物理学賞
物理学の教科書、専門書から選考。
- 数学賞
数学の教科書、専門書から選考。
- 教養書賞
一般向け書籍から分野別に選考。
- ブルーバックス賞
講談社ブルーバックスの書籍から分野別に選考。
- 文学賞
ジャンルを問わない小説、文学書から選考。
- アカデミー賞
今年観た映画の中からよかったものを選考。
- テレビドラマ賞
テレビドラマの中からよかったものを選考。
- クリスマス賞
クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。
この1年で読んだのは10冊で、次のような本である。通算479冊~488冊目。ここ3年、本業の仕事が忙しくなったのと生活パターンに大きな変化があったため、以前のように年間30~50冊の本を読むことはできなくなっていた。(参考:「400冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)
479/宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ
480/なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美
481/Visual Studio Codeパーフェクトマスター:金城俊哉
482/いちばんやさしいGit&GitHubの教本 第2版 人気講師が教えるバージョン管理&共有入門
483/Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ
484/量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー
485/ロヴェッリ 一般相対性理論入門: カルロ・ロヴェッリ
486/大規模言語モデルは新たな知能か―ChatGPTが変えた世界:岡野原大輔
487/電卓技術教科書〈基礎編〉(1971年)
488/電卓技術教科書〈研究編〉増補版 (1976年)
今年のマイブームは「物理学、数学以外も広く学ぶ」である。物理のシミュレーションができるようになることを目指したソフトウェア系の読書、10年前からの夢だった電卓のしくみを理解するための読書を進めた。
それでは2023年の「とね日記賞」を発表しよう。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)
* 物理学賞
今年は次の本に授賞することにした。
「量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー」(Kindle版)
相対性理論から「情報」と「現実」の未来まで
授賞理由: 量子情報科学、量子テレポーテーションの技術を確立、発展したことに対して昨年のノーベル物理学賞が授賞された。(参考記事:「2022年 ノーベル物理学賞はアスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士に決定!」)本書は受賞者のおひとり、世界で初めて量子テレポーテーションの実験を成功させたツァイリンガー博士自らが、一般の方向けに解説した科学教養書である。出版社は数々のSF小説でおなじみの早川書房だという点もユニークだ。量子テレポーテーションはもはやSFではなく、現実なのだから。英語版は最新の情報を加える形で今年5月に改訂され、日本語版もこれに合わせる形で5月に刊行された。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3dec53bae7fe10fee8803eafe12c18e0
* 数学賞
該当なし。
* 電子工学賞
今年は次の本に授賞することにした。
「電卓技術教科書〈基礎編〉(1971年)」B6版、356ページ
「電卓技術教科書〈研究編〉増補版 (1976年)」B6版、396ページ
授賞理由: 10年前に抱いた「電卓の仕組みを理解したい」という夢を叶えてくれた本だ。電卓にはCPUがまだ使われていなかった1960年代後半から1970年代前半、電卓の回路はワイヤードロジック(結線論理)で設計されていた。基礎編では当時最先端の電卓としてシャープ株式会社で開発、販売が行われていた卓上電卓Compet CS-12Dの全回路図をひもとき、そのすべてを解説、研究編 増補版では、その後の電卓およびプログラム電卓、関数電卓のしくみを解説している。入手困難な本だけにとても貴重な技術資料なのだ。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
電卓技術教科書〈基礎編〉(1971年)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/da4eb2abbdc54127bcd01a01621f5957
電卓技術教科書〈研究編〉増補版 (1976年)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4029989f8a617abc61d332f6aead47a8
* 教養書賞
今年は次の本に授賞することにした。
「なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美」(Kindle版)
授賞理由: みなさんは理系に女性の割合が少ないことを当たり前だと思ってはいないだろうか?理系に女性が少ないのは日本だけのことだろうか?理系の中でも女性が多い分野もある。それはなぜなのだろうか?国内および海外でのデータおよび研究論文をもとに、国内、国外の大学での状況、高校生、大学生、親の意識などさまざまな視点からこの問題を掘り下げ、解決するための案を提示した本である。「日本の理系女性の割合はOECD内で最下位」だとか「15歳の時点で日本の学生の数学の成績はは男女ともに世界トップクラス」、「海外の理系大学、理系学部では、むしろ女子学生のほうが多い」などは予想外だった。そして「女子生徒が物理を嫌いになるのは中学時代」だということを突き止め、対策をするのであれば中学生までの生徒、児童に対して働きかけなければならないと主張している。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/527495b79b13bdd9fbde172b34a1346d
* ブルーバックス賞
今年は次の本に授賞することにした。
「宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ」(Kindle版)
授賞理由: ハーバード大学で300年近い歴史がある「ホリス数学・自然哲学教授」にして、「超弦理論」などの研究で理論物理学をリードしてきたカムラン・バッファ氏が、1年生向けの講義で使っているパズル満載の型破りなテキストを書籍化!トランプやコイン、アリやカメらが繰り出す問題に悩むうち、物理学はどう進歩してきたのか、対称性やその破れがなぜ重要なのか、さらにいま注目の概念「双対性」の本質までが見えてくる。バッファ氏の盟友・大栗博司氏が監訳者として随所で注釈をほどこした、楽しみながら物理学の「真髄」に迫れる本!
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cd8113758a0fa0255b884e701e803c84
* 文学賞(コミック賞)
「合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版) 」
授賞理由: 今年はこの漫画が連載され始めてからちょうど50年。いつか全巻読みたいと思っていたのだが、ようやく今年読み終えることができた。連載開始から50年ということ、広島市の平和教育からこの作品が排除されたこととで、報道や関連番組が放送されていたため、読みたいという気持ちが高まった。日本のみならず全世界の悲劇を繰り返さないために、この作品が存在する意義は大きい。すでに世界24か国語に翻訳されている。ウクライナ-ロシア、イスラエル-パレスチナの惨状を見れば戦争や虐殺が人倫に反すること、一部の金持ちを利するために引き起こされる戦争、虐殺に対して断固としたNoを突きつけなければならない。この作品を通じて平和の大切さを後世に伝えていきたい。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75d56406860e23915579530c53bdba59
* アカデミー賞
映画『オッペンハイマー(公式HP)』を観て授賞するつもりだったのだが、残念ながら日本で公開されるには至らなかった。しかし、来年中には日本でも劇場公開されるというニュースがつい先日飛び込んできた。
ということでアカデミー賞は、次の作品に授賞することにした。現在劇場公開中である。
『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナス1.0)』
https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/
映画『ゴジラ-1.0』公開記念特番 Behind the scenes -No.30-ト云フモノ
来年はゴジラ第1作(1954年)が公開されてからちょうど70年、そして本作品はちょうど第30作目にあたる。映画の詳細やメーキング映像は、上記の動画をご覧いただきたい。
* テレビドラマ賞
今年ダントツで面白かったのがTBSで放送された『VIVANT』だ。ご覧になっていない方は、U-NEXTで全話配信されているので見てほしい。
日曜劇場『VIVANT』
https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
次に個人的にハマったのがNHKの朝ドラ『らんまん』である。植物学者の牧野富太郎の生涯を描いた作品。こちらはNHKオンデマンドで全話配信されている。個人的な神回は第56話である。12月30日、総集編が放送されるそうだ。
連続テレビ小説「らんまん」
https://www.nhk.jp/p/ranman/ts/G5PRV72JMR/
連続テレビ小説「らんまん 総集編」
明治の世を舞台に植物学者・槙野万太郎の大冒険を描いた「らんまん総集編」を一挙放送
愛する植物のために一途に情熱的に突き進んだ主人公・槙野万太郎(神木隆之介)とその妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯をじっくりご覧ください
【放送予定】
2023年12月30日(土)
午前7時20分から午前8時45分 前編
午前8時45分から午前10時10分 後編
各編85分
総合・NHKBSプレミアム4K同時放送
* クリスマス賞
1938年に発表されたアガサ・クリスティ作のエルキュール・ポアロが登場する推理小説。本作の日本語訳は1957年、1976年、2003年に刊行されたが、どれも翻訳品質が悪く、新訳がつい先月刊行されたばかりなのだ。これがクリスマス賞授賞の理由である。
アガサ・クリスティ(1890-1976)は、生涯66冊の探偵小説と14冊の短編集を発表したが、本作は作者の長編作品の中で唯一の密室殺人ものである。
「ポアロのクリスマス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫): アガサ・クリスティ」(Kindle版)
「Hercule Poirot’s Christmas: Agatha Christie」(Kindle版)
「Le Noël d'Hercule Poirot: Agatha Christie」
導入部: クリスマスも間近に迫るゴーストン館の当主である老富豪シメオン・リーは、クリスマスのイベントとして家族を集めようと決めて、シメオンと同居している長男のアルフレッドとその妻リディアを困惑させる。シメオンは、彼の他の息子たち、国会議員のジョージと画家のデヴィッド、彼らの妻マグダリーンとヒルダはともかくとして、1度も会ったことのない孫娘のピラールや、シメオンの金を着服して行方をくらまし、その後も不始末を起こしては金をせびる放蕩息子のハリーまで呼び戻すというのであった。
こうして再会した一同だが、そこにシメオンの旧友の息子のスティーヴン・ファーも訪れ、邸に滞在することとなった。不仲のアルフレッドとハリー、不遇に死んだ母親を思い父親への長年の恨みを募らせるデヴィッド、妻の浪費と議員活動に金が必要なジョージ、さらに彼らの感情を煽るかのように遺言を書き換えるというシメオンの発言により、邸内には不穏な空気が流れた。
そしてクリスマス・イヴに事件は起こる。シメオンの部屋から凄まじい騒音と絶叫が聞こえて来た。鍵のかかっていたドアを破壊して部屋の中に入った一同が目にしたものは、崩れた家具と、その横に倒れるシメオンの血まみれの死体であった。
推理作家の霞流一は、本作がチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を二重写しにした作品で、殺された老富豪は強欲で気難しい「スクルージ老人」、老富豪を訪れる3人の来訪者は「3人のゴースト」、舞台となる館の名前が「ゴーストン」、大量の血の赤色と小道具の木釘の茶色がクリスマスカラーであることなどを指摘している。
本作がどのような作品なのか、読書が苦手な方にYouTubeで無料で視聴できるオーディオブック(英仏)、テレビドラマ(英日仏)とラジオドラマ(英仏)を紹介しておこう。
オーディオブック:
ポアロのクリスマス
英語音声: 再生
英語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
フランス語音声: 第1部 第2部と第3部前半 第3部後半 第4部と第5部 第6部と第7部
テレビドラマ:
ポアロのクリスマス
英語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
日本語吹き替え: 再生 再生2
フランス語吹き替え、日本語自動翻訳字幕: 再生
名探偵ポアロ(全70話、英語音声、日本語自動翻訳字幕): プレイリスト
名探偵ポワロ(全120話、日本語吹き替え): プレイリスト
ラジオドラマ:
ポアロのクリスマス
英語音声:再生 再生2
英語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
フランス語音声: 再生 再生2
フランス語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
Prime Videoで観れるアガサ・クリスティの映画作品一覧: 開く
アガサ・クリスティ沼にハマりたい方には、次の2つのサイトを紹介しておく。
アガサ・クリスティ・ファンクラブ
http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/index.htm
The Home Of Agatha Christie
http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/index.htm
* ノーベル物理学賞2023
最後になりますが、本日受賞される先生方、ノーベル賞受賞おめでとうございます!
量子力学万歳!量子テレポーテーション万歳!
記念講演はこの動画で見ることができる。
2023 Nobel Prize lectures in physics:
YouTubeで再生
2023年 ノーベル物理学賞はアゴスティニ博士、クラウス博士、ルイリエ博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c4f26fa595b9cea8c20a85f116d5256f
2023年ノーベル賞授賞式、セレモニーの様子はここからご覧いただける。
2023 Nobel Prize award ceremony:
YouTubeで再生
関連記事:
過去の「とね日記賞」一覧: 開く
毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、「とね日記賞」を発表している。今年で14回目。
ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもないことに気がついたのは物理学を学び始め、このブログを書き始めた頃だった。なんだか悔しいと思ったのである。しばらくもやもやと考えていたところ、あることを思いついた。それはどうせもらえないのなら自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!という逆転の発想だった。
「とね日記賞」はその年に読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞も設けている。
名著であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても読んでいなければ対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。
メダルも賞金も授賞式もスピーチも晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観だらけのアンフェアな賞だ。
次の賞を発表している。今年は数学書を読んでいないので授賞対象外。
- 物理学賞
物理学の教科書、専門書から選考。
- 数学賞
数学の教科書、専門書から選考。
- 教養書賞
一般向け書籍から分野別に選考。
- ブルーバックス賞
講談社ブルーバックスの書籍から分野別に選考。
- 文学賞
ジャンルを問わない小説、文学書から選考。
- アカデミー賞
今年観た映画の中からよかったものを選考。
- テレビドラマ賞
テレビドラマの中からよかったものを選考。
- クリスマス賞
クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。
この1年で読んだのは10冊で、次のような本である。通算479冊~488冊目。ここ3年、本業の仕事が忙しくなったのと生活パターンに大きな変化があったため、以前のように年間30~50冊の本を読むことはできなくなっていた。(参考:「400冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)
479/宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ
480/なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美
481/Visual Studio Codeパーフェクトマスター:金城俊哉
482/いちばんやさしいGit&GitHubの教本 第2版 人気講師が教えるバージョン管理&共有入門
483/Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ
484/量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー
485/ロヴェッリ 一般相対性理論入門: カルロ・ロヴェッリ
486/大規模言語モデルは新たな知能か―ChatGPTが変えた世界:岡野原大輔
487/電卓技術教科書〈基礎編〉(1971年)
488/電卓技術教科書〈研究編〉増補版 (1976年)
今年のマイブームは「物理学、数学以外も広く学ぶ」である。物理のシミュレーションができるようになることを目指したソフトウェア系の読書、10年前からの夢だった電卓のしくみを理解するための読書を進めた。
それでは2023年の「とね日記賞」を発表しよう。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)
* 物理学賞
今年は次の本に授賞することにした。
「量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー」(Kindle版)
相対性理論から「情報」と「現実」の未来まで
授賞理由: 量子情報科学、量子テレポーテーションの技術を確立、発展したことに対して昨年のノーベル物理学賞が授賞された。(参考記事:「2022年 ノーベル物理学賞はアスペ博士、クラウザー博士、ツァイリンガー博士に決定!」)本書は受賞者のおひとり、世界で初めて量子テレポーテーションの実験を成功させたツァイリンガー博士自らが、一般の方向けに解説した科学教養書である。出版社は数々のSF小説でおなじみの早川書房だという点もユニークだ。量子テレポーテーションはもはやSFではなく、現実なのだから。英語版は最新の情報を加える形で今年5月に改訂され、日本語版もこれに合わせる形で5月に刊行された。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
量子テレポーテーションのゆくえ: アントン・ツァイリンガー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3dec53bae7fe10fee8803eafe12c18e0
* 数学賞
該当なし。
* 電子工学賞
今年は次の本に授賞することにした。
「電卓技術教科書〈基礎編〉(1971年)」B6版、356ページ
「電卓技術教科書〈研究編〉増補版 (1976年)」B6版、396ページ
授賞理由: 10年前に抱いた「電卓の仕組みを理解したい」という夢を叶えてくれた本だ。電卓にはCPUがまだ使われていなかった1960年代後半から1970年代前半、電卓の回路はワイヤードロジック(結線論理)で設計されていた。基礎編では当時最先端の電卓としてシャープ株式会社で開発、販売が行われていた卓上電卓Compet CS-12Dの全回路図をひもとき、そのすべてを解説、研究編 増補版では、その後の電卓およびプログラム電卓、関数電卓のしくみを解説している。入手困難な本だけにとても貴重な技術資料なのだ。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
電卓技術教科書〈基礎編〉(1971年)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/da4eb2abbdc54127bcd01a01621f5957
電卓技術教科書〈研究編〉増補版 (1976年)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4029989f8a617abc61d332f6aead47a8
* 教養書賞
今年は次の本に授賞することにした。
「なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美」(Kindle版)
授賞理由: みなさんは理系に女性の割合が少ないことを当たり前だと思ってはいないだろうか?理系に女性が少ないのは日本だけのことだろうか?理系の中でも女性が多い分野もある。それはなぜなのだろうか?国内および海外でのデータおよび研究論文をもとに、国内、国外の大学での状況、高校生、大学生、親の意識などさまざまな視点からこの問題を掘り下げ、解決するための案を提示した本である。「日本の理系女性の割合はOECD内で最下位」だとか「15歳の時点で日本の学生の数学の成績はは男女ともに世界トップクラス」、「海外の理系大学、理系学部では、むしろ女子学生のほうが多い」などは予想外だった。そして「女子生徒が物理を嫌いになるのは中学時代」だということを突き止め、対策をするのであれば中学生までの生徒、児童に対して働きかけなければならないと主張している。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
なぜ理系に女性が少ないのか:横山広美
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/527495b79b13bdd9fbde172b34a1346d
* ブルーバックス賞
今年は次の本に授賞することにした。
「宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ」(Kindle版)
授賞理由: ハーバード大学で300年近い歴史がある「ホリス数学・自然哲学教授」にして、「超弦理論」などの研究で理論物理学をリードしてきたカムラン・バッファ氏が、1年生向けの講義で使っているパズル満載の型破りなテキストを書籍化!トランプやコイン、アリやカメらが繰り出す問題に悩むうち、物理学はどう進歩してきたのか、対称性やその破れがなぜ重要なのか、さらにいま注目の概念「双対性」の本質までが見えてくる。バッファ氏の盟友・大栗博司氏が監訳者として随所で注釈をほどこした、楽しみながら物理学の「真髄」に迫れる本!
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cd8113758a0fa0255b884e701e803c84
* 文学賞(コミック賞)
「合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版) 」
授賞理由: 今年はこの漫画が連載され始めてからちょうど50年。いつか全巻読みたいと思っていたのだが、ようやく今年読み終えることができた。連載開始から50年ということ、広島市の平和教育からこの作品が排除されたこととで、報道や関連番組が放送されていたため、読みたいという気持ちが高まった。日本のみならず全世界の悲劇を繰り返さないために、この作品が存在する意義は大きい。すでに世界24か国語に翻訳されている。ウクライナ-ロシア、イスラエル-パレスチナの惨状を見れば戦争や虐殺が人倫に反すること、一部の金持ちを利するために引き起こされる戦争、虐殺に対して断固としたNoを突きつけなければならない。この作品を通じて平和の大切さを後世に伝えていきたい。
紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。
合本版 はだしのゲン①~⑦ (中公文庫コミック版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75d56406860e23915579530c53bdba59
* アカデミー賞
映画『オッペンハイマー(公式HP)』を観て授賞するつもりだったのだが、残念ながら日本で公開されるには至らなかった。しかし、来年中には日本でも劇場公開されるというニュースがつい先日飛び込んできた。
ということでアカデミー賞は、次の作品に授賞することにした。現在劇場公開中である。
『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナス1.0)』
https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/
映画『ゴジラ-1.0』公開記念特番 Behind the scenes -No.30-ト云フモノ
来年はゴジラ第1作(1954年)が公開されてからちょうど70年、そして本作品はちょうど第30作目にあたる。映画の詳細やメーキング映像は、上記の動画をご覧いただきたい。
* テレビドラマ賞
今年ダントツで面白かったのがTBSで放送された『VIVANT』だ。ご覧になっていない方は、U-NEXTで全話配信されているので見てほしい。
日曜劇場『VIVANT』
https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
次に個人的にハマったのがNHKの朝ドラ『らんまん』である。植物学者の牧野富太郎の生涯を描いた作品。こちらはNHKオンデマンドで全話配信されている。個人的な神回は第56話である。12月30日、総集編が放送されるそうだ。
連続テレビ小説「らんまん」
https://www.nhk.jp/p/ranman/ts/G5PRV72JMR/
連続テレビ小説「らんまん 総集編」
明治の世を舞台に植物学者・槙野万太郎の大冒険を描いた「らんまん総集編」を一挙放送
愛する植物のために一途に情熱的に突き進んだ主人公・槙野万太郎(神木隆之介)とその妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯をじっくりご覧ください
【放送予定】
2023年12月30日(土)
午前7時20分から午前8時45分 前編
午前8時45分から午前10時10分 後編
各編85分
総合・NHKBSプレミアム4K同時放送
* クリスマス賞
1938年に発表されたアガサ・クリスティ作のエルキュール・ポアロが登場する推理小説。本作の日本語訳は1957年、1976年、2003年に刊行されたが、どれも翻訳品質が悪く、新訳がつい先月刊行されたばかりなのだ。これがクリスマス賞授賞の理由である。
アガサ・クリスティ(1890-1976)は、生涯66冊の探偵小説と14冊の短編集を発表したが、本作は作者の長編作品の中で唯一の密室殺人ものである。
「ポアロのクリスマス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫): アガサ・クリスティ」(Kindle版)
「Hercule Poirot’s Christmas: Agatha Christie」(Kindle版)
「Le Noël d'Hercule Poirot: Agatha Christie」
導入部: クリスマスも間近に迫るゴーストン館の当主である老富豪シメオン・リーは、クリスマスのイベントとして家族を集めようと決めて、シメオンと同居している長男のアルフレッドとその妻リディアを困惑させる。シメオンは、彼の他の息子たち、国会議員のジョージと画家のデヴィッド、彼らの妻マグダリーンとヒルダはともかくとして、1度も会ったことのない孫娘のピラールや、シメオンの金を着服して行方をくらまし、その後も不始末を起こしては金をせびる放蕩息子のハリーまで呼び戻すというのであった。
こうして再会した一同だが、そこにシメオンの旧友の息子のスティーヴン・ファーも訪れ、邸に滞在することとなった。不仲のアルフレッドとハリー、不遇に死んだ母親を思い父親への長年の恨みを募らせるデヴィッド、妻の浪費と議員活動に金が必要なジョージ、さらに彼らの感情を煽るかのように遺言を書き換えるというシメオンの発言により、邸内には不穏な空気が流れた。
そしてクリスマス・イヴに事件は起こる。シメオンの部屋から凄まじい騒音と絶叫が聞こえて来た。鍵のかかっていたドアを破壊して部屋の中に入った一同が目にしたものは、崩れた家具と、その横に倒れるシメオンの血まみれの死体であった。
推理作家の霞流一は、本作がチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を二重写しにした作品で、殺された老富豪は強欲で気難しい「スクルージ老人」、老富豪を訪れる3人の来訪者は「3人のゴースト」、舞台となる館の名前が「ゴーストン」、大量の血の赤色と小道具の木釘の茶色がクリスマスカラーであることなどを指摘している。
本作がどのような作品なのか、読書が苦手な方にYouTubeで無料で視聴できるオーディオブック(英仏)、テレビドラマ(英日仏)とラジオドラマ(英仏)を紹介しておこう。
オーディオブック:
ポアロのクリスマス
英語音声: 再生
英語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
フランス語音声: 第1部 第2部と第3部前半 第3部後半 第4部と第5部 第6部と第7部
テレビドラマ:
ポアロのクリスマス
英語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
日本語吹き替え: 再生 再生2
フランス語吹き替え、日本語自動翻訳字幕: 再生
名探偵ポアロ(全70話、英語音声、日本語自動翻訳字幕): プレイリスト
名探偵ポワロ(全120話、日本語吹き替え): プレイリスト
ラジオドラマ:
ポアロのクリスマス
英語音声:再生 再生2
英語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
フランス語音声: 再生 再生2
フランス語音声、日本語自動翻訳字幕: 再生
Prime Videoで観れるアガサ・クリスティの映画作品一覧: 開く
アガサ・クリスティ沼にハマりたい方には、次の2つのサイトを紹介しておく。
アガサ・クリスティ・ファンクラブ
http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/index.htm
The Home Of Agatha Christie
http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/index.htm
* ノーベル物理学賞2023
最後になりますが、本日受賞される先生方、ノーベル賞受賞おめでとうございます!
量子力学万歳!量子テレポーテーション万歳!
記念講演はこの動画で見ることができる。
2023 Nobel Prize lectures in physics:
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2023年 ノーベル物理学賞はアゴスティニ博士、クラウス博士、ルイリエ博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c4f26fa595b9cea8c20a85f116d5256f
2023年ノーベル賞授賞式、セレモニーの様子はここからご覧いただける。
2023 Nobel Prize award ceremony:
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