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宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ

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宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ」(Kindle版

内容紹介:
ハーバード大学で300年近い歴史がある「ホリス数学・自然哲学教授」にして、「超弦理論」などの研究で理論物理学をリードしてきたカムラン・バッファ氏が、1年生向けの講義で使っているパズル満載の型破りなテキストを書籍化!
ブライアン・グリーン氏、エドワード・ウィッテン氏が驚きつつも絶賛した(文末に記載)類のない一冊の日本語版!
「宇宙はどうなっているのだろう?」この素朴な問いにとりつかれた人類が宇宙の謎を解明してきた結果わかったのは、宇宙はあまりにも人類の直観に反しているということだった。なにしろ空間や時間は歪んでいて、光は波でも粒でもあり、物質の最小単位は「ひも」かもしれないというのだ! このような宇宙をどう理解すればいいのか?
バッファ氏は言う。「理論物理学者の仕事は、宇宙の難解な問題を、単純なパズルに分解して解くことだ」
トランプやコイン、アリやカメらが繰り出す問題に悩むうち、物理学はどう進歩してきたのか、対称性やその破れがなぜ重要なのか、さらにいま注目の概念「双対性」の本質までが見えてくる。バッファ氏の盟友・大栗博司氏が監訳者として随所で注釈をほどこした、楽しみながら物理学の「真髄」に迫れる本!

【たとえば、こんな問題があります】
缶が2つあって、一方には緑のペンキが、もう一方には白のペンキが入っている。缶は同じ大きさで、入っているペンキの量もまったく同じだとしよう。ここで緑のペンキを少量すくって、白の缶に入れる。次にその混ざったペンキの缶から同じ量をすくって、緑の缶に戻す。
そこで問題。白の缶に入っている緑のペンキの濃度と、緑の缶に入っている白のペンキの濃度、どちらのほうが高いか?

【理論物理学の大家たちも絶賛!】
「現代の物理学と数学の中核をなす概念を、パズルを通してひととおり説明するというすばらしい本。私が知る中でももっとも風変わりで魅力的なアプローチで、初学者も専門家も頭の体操に楽しく取り組みながら学べる。世界屈指の物理学者から、最先端の本質的な考え方を楽しみながら効果的に吸収できる」――ブライアン・グリーン
「簡単で愉快なパズルを解きながら、物理学と数学の高度な概念の数々を楽しく巡っていくという独特な本。たくさん楽しんで、たくさん学べるはずだ」――エドワード・ウィッテン

【監訳者の大栗博司氏より】
「本書は、完成した成果ではなく、そこのいたる過程をパズルを解くことで体験できるようになっているのが斬新です」

2020年10月20日刊行、320ページ。

著者、監訳者、訳者について:
カムラン・バッファ: HP: https://www.cumrunvafa.org/
理論物理学者。1960年イラン生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業後、1985年にプリンストン大学でPh.D.を取得。1990年からハーバード大学教授。2018年、同大学ホリス数学・自然哲学教授。専門は素粒子論。

大栗 博司: HP: https://ooguri.caltech.edu/japanese
理論物理学者。1962年岐阜県生まれ。カリフォルニア工科大学カブリ教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構機構長、アスペン物理学センター理事長。専門は素粒子論。『重力とは何か』(幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』ほか著書多数。

水谷 淳: Twitter:@junjmizutani
みずたに・じゅん 翻訳家。主な訳書にチャム、ホワイトソン『僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない』(ダイヤモンド社)、アル=カリーリ、マクファデン『量子力学で生命の謎を解く』(SBクリエイティブ)など。


理数系書籍のレビュー記事は本書で479冊目。

世の中に存在する物理やパズルの本は数えきれないほどある。しかし「物理とパズルの本」はこれ1冊しかない。物理とパズルがなぜ結び付くのか?これが発売開始前に本のタイトルだけ見たとき僕が思ったことだった。すでにでている英語版や英語で行われている講義の動画を見て、その謎は解くことができた。

そして僕の興味が書きたてられたのは、この10年さまざまな著書、朝日カルチャーセンターでの講義を通じてお知り合いにならせていただいた大栗先生が宣伝されていること、著者が先生の共同研究者、ご友人のバッファ先生であることだ。最前線の理論物理学者がお書きになり、推薦していた本だからである。

章立てはこのとおりだ。

序章 現代物理学への招待
第1章 対称性と保存則
第2章 対称性の破れ
第3章 単純で抽象的な数学のパワー
第4章 直観に反する数学
第5章 物理的直観
第6章 直観に反する物理
第7章 双対性
終章 本書をふりかえって

このブログ記事の最後には詳細目次を載せておいたが、実にバラエティに富んだ物理法則が解説されているのがわかるだろう。本書を読んでみてそれらの法則にぴったり対応するパズルがあることに驚かされた。パズルだけ先に解いてみると、それが物理法則、物理現象の理解に結び付くものであるか僕はおそらく気が付かないだろう。解説を読んで「あ、なるほど!」となるわけである。

本書全体に流れている思想は「物理と数学の不思議なつながり」である。単に物理とパズルを結び付けて解説しているわけではない。対称性が物理法則で重要なことはよく理解している人でも、双対性(S双対性、T双対性)が物理だけでなく、数学においても不思議な役割を果たしていることまで解説していることにはきっと驚くと思う。つまり「ラングランズ予想」にまで踏み込んで第7章「双対性」解説している。解けない難問に双対性があり、対応する問題を解くのが易しいことがある。易しい方の問題を解くと、難問のほうも自然に解けてしまうのだ。けれども、なぜ双対性がある問題が存在するのか、なぜ解けるのかはわからないのだという。本書は「楽しくて深い本」である。(僕はこの第7章がいちばん萌えた。)

これまで科学教養書を読んでいない読者には少し難しすぎると思った。そのような方には、この記事の「関連記事:」で紹介した大栗先生の著書などを事前にお読みになるとよい。


余談: 講演や本では「正方形の4頂点を結ぶ最短の高速道路」が次のようになることを対称性の自発的破れの例として紹介している。



これが五角形になると次のようになる。対称性はさらに破れていることがわかる。



そして六角形では対称性の破れは起きない。解説はこの記事をお読みいただきたい。




翻訳のもとにされた英語原書はこちらである。Kindle版はkindleunlimittedの対象だ。

Puzzles to Unravel the Universe: Cumrun Vafa」(Kindle版



関連動画:

この本の発売日前日にオンラインで講演と対談が行われた。

「直観に反する宇宙」カムラン・バッファ氏と大栗博司氏のオンライン講演(2022年10月19日)
YouTube: 再生する


後半の対談の部分は英語音声の動画も公開されている。

Dialogue with Cumrun Vafa in Tokyo
YouTube: 再生する



英語で行われる講演動画は以下のとおり。日本での講演では紹介されなかったパズルも紹介されている。

Cumrun Vafa, "Puzzles to Unravel the Universe"(YouTubeで再生時、自動翻訳による日本語字幕付き)
YouTube: 再生する




Fundamental laws of the cosmos: Puzzles to Unravel the Universe
YouTube: 再生する



関連記事:

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

探究する精神 職業としての基礎科学:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a8ed519784843aad20780a2811f5d2d


超弦理論の双対性については、この本がいちばん詳しい。

エレガントな宇宙:ブライアン・グリーン(英語原書
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/404c24b68f57609900bc3d7a030333d5

ラングランズ予想、双対性について知るには、この本がお勧め。

数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/43ca100e56e15427613b009af55c8f7d


 

 


宇宙を解くパズル:カムラン・バッファ」(Kindle版


はしがき
監訳者まえがき

序章 現代物理学への招待
- 数学と物理学の違い
- 古代の考え方
- ニュートン力学
- ラグランジュ力学とハミルトン力学
- マクスウェルの電磁気学
- 相対性理論
- 量子力学
- 場の量子論
- 量子重力理論

第1章 対称性と保存則
- 対称性とは何か
- さまざまな対称性
- ネーターの定理
- 超対称性
- 準結晶と対称性
- 弦理論と電荷の保存則
- 対称性の自発的な破れとは
○パズル:1~13

第2章 対称性の破れ
- 対称性が破れていることの重要性
- 地球の運動と対称性の破れ
- さまざまな対称性の破れ
- 対称性の自発的な破れと磁石
- 対称性の破れとヒッグスボソン
- 力の大統一
- 超伝導
- 剛性
- 利き手
○パズル:14~18

第3章 単純で抽象的な数学のパワー
- 法則と制約条件
- 複素数入門
- 代数学の基本定理
- 重力レンズ
○パズル:19~27

第4章 直観に反する数学
- 直観は間違っていることもある
- 無限のパラドックス
- 直観に反する級数
- 直観に反する複素数
○パズル:28~42

第5章 物理的直観
- 直観的な物理とは?
- ガリレオ・ガリレイの論証
- ニュートンの思考実験
- 数学における物理的直観
- 回帰直線
- アルキメデスの「エウレーカ!」
- ピタゴラスの定理
- 特殊相対性理論
- 統計力学
○パズル:43~53

第6章 直観に反する物理
- 浮力についてあらためて考える
- 飛行機はなぜ飛べるのか
- 夜空はなぜ暗いのか?
- マクスウェルと「エーテル」
- 相対性理論と「速度の合成則」
- ある古典的な実験
- 量子力学におけるパラドックス
- 二重スリット実験
- EPRパラドックス
- ブラックホール
- ホログラフィー
○パズル:54~55

第7章 双対性
- 双対性とは何か
- 数学における2つの例
- マクスウェル理論における双対性
- 弦理論における双対性
- T双対性とは何か
- カラビ-ヤウ多様体とミラー対称性
- そのほかの対称性:幾何と力
- ブラックホールにおける双対性
- AdS/CFT対応
- ウィグナーの半円則
○パズル:56~59

終章 本書をふりかえって
- 対称性とその破れ
- ゲージ対称性
- 直観的な数学
- 直観に反する数学
- 直観的な物理と直観に反する物理
- 双対性は宇宙を解く魔法なのか
○パズル:60~63

監訳者まえがきの問題 答え
付録

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