Prime Videoで再生 DVDを購入
コロナ禍の影響で、貧困と経済格差の問題がますます深刻になっている。2014年12月にこの問題を扱った「21世紀の資本:トマ・ピケティ」(Kindle版)の日本語版が刊行され、728ページもあるこの分厚い経済学所がベストセラーになった。読みたいと思いつつ7年が経とうとしているが、2019年に映画化されていることを知り、まず映画で入門することにした。本も近いうちに読んでみたい。
経済学書を読むのは本当に久しぶりで、1980年にベストセラーになったM&Rフリードマンという経済学者が書いた「選択の自由―自立社会への挑戦」(新装版)(英語版)(英語Kindle版)を予備校生の頃に読んで以来だ。
この本は経済における自由の重要性をわかりやすく訴え、小さな政府、規制緩和といった政策の実現をとおして現代世界を変えた「革命の書」だ。アメリカ、ヨーロッパだけでなく日本もこの自由主義経済の理念を採用した。この本の主張はふたつ。ひとつは徹底した市場原理至上主義(新自由主義)、もうひとつは政府による通貨管理の重要性(マネタリズム)であり、イギリスのサッチャリズム、アメリカのレーガノミクスの種本とも言われている。
その結果40年後の現在はどうなっただろうか?それが「21世紀の資本」で解説されている貧困と経済格差なのである。市場原理至上主義は労働組合、労働者階級の力を弱め、低賃金・長時間労働をもたらしたからだ。また金融の規制緩和は大企業と資本家階級をますます富ませることになった。
「21世紀の資本」は過去300年にわたり、30か国の経済の状況を丹念に調べ上げ、富の集中と分配がどのように変遷したかを具体的なデータで示し、過去に極めて深刻な貧富の差があったこと、そしていったんは中産階級が増えて改善されたこと、現在はその問題が急速に進みつつあることを示し、その進行を止めるために私たちがどのような選択をすべきかということを提唱している。経済学書で、これほど長い期間にわたる調査・分析をし、学問的に実証した本はこれまでなかった。本書の説得力はデータによる裏付けがされていることにある。
映画を観てから本を読むほうがよさそうだ。分厚い本は無理という方は、映画だけでもご覧いただきたい。以下は公式ホームページからの引用である。
『ウォール街』『プライドと偏見』『レ・ミゼラブル』『ザ・シンプソンズ』『エリジウム』…。
700ページを超える原作本とは異なり、映画版『21世紀の資本』は名作映画や小説などをふんだんに使い、過去300年に渡る世界各国の歴史を”資本”の観点から切り取ってみせる。世の中が成熟すると資本主義は平等になる、というクズネッツの定説をひっくり返した原作者トマ・ピケティは、「現代は第一次世界大戦前の不平等な時代に戻ってしまっている」と警鐘を鳴らす。
日本でも大きな社会問題となっている「格差社会」の真相を分かりやすく描いた、唯一無二の”学べる”映画。ピケティ自身が映画の監修・出演をこなし、世界中の著名な政治・経済学者とともに本で実証した資本主義社会の諸問題を映像で解説。世の中に『渦巻く格差社会への不満や政治不信。誰も正しく教えてくれなかった本当の答えがこの映画にはある。ピケティとの共同作業で、ニュージーランドを代表を代表するヒット監督ジャスティン・ペンバートンが描く、目からうろこの驚きに満ちた103分。昭和の高度経済成長や平成のリーマン・ショックは何だったのか?21世紀を生きる日本人必見の経済ムービーが登場。
映画公式ホームページ:
https://21shihonn.com/
予告編(YouTube動画): YouTubeで再生
21世紀の資本: Prime Videoで再生 DVDを購入
映画のセリフのひとつひとつが心に突き刺ささった。つまり、貧困や経済格差は日本だけの問題ではないことがわかるのだ。
本のほうはフランス語版(2013年8月)、英語版(2014年4月)、日本語版(2014年12月)の順に刊行されたことに注意していただきたい。第二次安倍政権が発足したのは2012年、アベノミクス、モリカケ桜は2013年以後のこと、非常識な額の発注・中抜きが行われたり、公文書改ざんが行われ始めたのも第二次安倍政権からである。この期間に貧困、経済格差はますます進行していった。非正規労働は小泉政権から拡大し、安倍政権からその度合いをますます強めていった。つまり、日本そして世界の貧困、経済格差は本や映画で示されているよりもさらに進行しているのだ。
本や映画では富の集中により社会的権力が強まると主張している。日本では政権が司法、行政、メディア、企業を支配し独裁政治が行われるようになってしまったが、それは世界的に同じなのだ。アメリカでは幸い、ドナルド・トランプを民主的な選挙で引きずり下ろすことができたが、社会全体の富の集中の勢いは止めることができていない。
「成長なくして分配なし」は「経済成長したら賃金を上げる」ということだが、本当にそうなるのだろうか?本や映画にでてくる「トリクルダウン」というのがこれのことだ。富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する、という考え方。 富裕層や大企業を優遇する政策をとって経済活動を活性化させれば、富が低所得者層に向かって流れ落ち、国民全体の利益になるということ。アベノミクスでは「シャンパンタワー」に例えて説明されていた。
昨年のノーベル経済学賞は「最低賃金の引上げが雇用創出につながる」ことを実証した経済学者に対して授賞されたことを思い出した。
ノーベル経済学賞を受賞したカードによる最低賃金の研究をどこよりもわかりやすく解説!
https://diamond.jp/articles/-/284535
しかし、「21世紀の資本」では富の集中、増大は雇用とは無関係だと解説している。雇用が創出され貧困者の生活が改善したとしても、それは富や財産を独占している一部の金持ち、大企業の不労所得(金利による利益、証券や土地の売買による利益)のほうがはるかに大きいからだ。
富の集中と格差拡大は、貧困層の不満を増大させ支配階級への攻撃よりもむしろヘイトや差別などの社会問題を引き起こす。そのように思いをめぐらせると、
- 公的年金や生活保護支給の問題など社会保障が抱える問題
- ヤングケアラーの増加、子供の貧困化
- 少子高齢化、生涯未婚率の増加
- 自殺率の増加、失業者の増加、低賃金の非正規労働の拡大
- 裁量労働制導入による残業代支払いの廃止(実質的なサービス残業)
- 多重下請けによる中抜き問題
- 政権による司法、行政、企業、メディアの支配、
- 特定企業への優遇措置、政権による公職選挙法違反
- 公文書、経済の基幹統計データの改ざん、隠蔽、消去による嘘の経済成長の公表
- さまざまな教育問題(共通テストの問題の品質劣化や学習指導要領の悪化(特に英語、数学、理科)、共通テストへの特定民間事業者への参入)
- 国公立大学の入学金、授業料の値上げ、教育費の上昇と貧困の連鎖
- 大学への助成金削減、研究者の有期雇用問題、科学の軽視
- 社会保障削減、高齢者医療費の値上げ、保健所や職員の削減、重労働低賃金による看護師、介護士の不足
- 消費税増税、法人税の減税
- 外国人技能実習生への暴力や劣悪な待遇、入管職員による外国人への暴力
- あらゆる差別と分断の問題(女性蔑視、LGBT、障碍者、国籍、人種、肌の色、宗教、経済力、高齢者、学力や知能、家柄や出自、容貌)
など、報道されているありとあらゆる問題の根っこが同じだということがよくわかる。私たちはたまたま日本に住んでいるから国内のことばかり目につくが、世界のどこでも似たり寄ったりなのだ。
政権交代するだけで、これらの問題は解決するのだろうか?また政権交代のほかに私たちができることはあるのだろうか?格差を是正して社会を持続可能なものに変えていくためには、今後どのような選択をすべきなのだろうか?「21世紀の資本」は、そのための案を私たちに提示し、この問題に正面から取り組む必要性を説いているのだ。現代の若者には無関心、変化を嫌う現状を容認する人が多いと聞く。しかし、現状維持は不可能であることが「21世紀の資本」が教えてくれることである。
ネタバレになるから詳しく書かないが、格差の拡大による貧困者の不満を支配階級がどのように利用したか、その結果、社会がどのように変化したか、戦争が貧困問題、経済格差に何をもたらしたかなどについても、歴史をひも解きながら「21世紀の資本」で解説されている。その意味では日本も例外ではなかった。
関連動画:
ピケティ氏は日本語版の本が刊行された2015年に来日している。そのときに行われた記者会見の動画が公開されている。(日本語通訳または日本語字幕あり)これらの動画はとてもためになる。ぜひご覧いただきたい。(特に2つめの動画)日本記者クラブでの会見と東京大学での講義は同じ日に行われている。
日本語字幕あり
若者に有利な税制に 「21世紀の資本」のピケティ氏: YouTubeで再生
日本語通訳あり
トマ・ピケティ 仏経済学者 『21世紀の資本』 2015.1.31: YouTubeで再生
日本語字幕あり
Thomas Piketty: New thoughts on capital in the twenty-first century: YouTubeで再生
2014年度「トマ・ピケティ教授東大講義「21世紀の資本」(日本語字幕あり)」(開く)
「21世紀の資本」の関連動画: YouTubeで検索
関連書籍:
本は日本語、英語、フランス語版のどれもが日本のアマゾンサイトから紙の本とKindle版が購入できる。Kindleで読めるフランス語書籍は少ないから貴重だ。また英語版とフランス語版はAudibleから聴くことができる。
「21世紀の資本:トマ・ピケティ」(Kindle版)
「Capital in the Twenty-First Century: Thomas Piketty」(Kindle版)(Audible)
「Le Capital au XXIe siècle: Thomas Piketty」(Kindle版)(Audible)
内容:
資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す。本書の唯一の目的は、過去からいくつか将来に対する慎ましい鍵を引き出すことだ。
著者について:
トマ・ピケティ(Thomas Piketty): ウィキペディアの紹介記事
ホームページ: http://piketty.pse.ens.fr/en/
1971年、フランス・クリシー生まれ。格差研究における世界の第一人者。数学モデル偏重の経済学に背を向けて、租税データに基づく世界的な所得分布と資産分布のデータベース構築に尽力し、所得と資産がトップ1%にますます集中している状況を明確に指摘。それをまとめた2014年の大著「21世紀の資本」が世界的ベストセラーとなった。現在、パリ経済学院教授。社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。EHESSおよびロンドン経済学校(LSE)で博士号を取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭を執る。2000年からEHESS教授、2007年からパリ経済学校教授。多数の論文を the Quarterly Journal of Economics, the Journal of Political Economy, the American Economic Review, the Review of Economic Studies で発表。著書も多数。経済発展と所得分配の相互作用について、主要な歴史的、理論的研究を成し遂げた。特に、国民所得に占めるトップ層のシェアの長期的動向についての近年の研究を先導している。
「21世紀の資本」関連の書籍: 書籍版を検索 Kindle版を検索
コロナ禍の影響で、貧困と経済格差の問題がますます深刻になっている。2014年12月にこの問題を扱った「21世紀の資本:トマ・ピケティ」(Kindle版)の日本語版が刊行され、728ページもあるこの分厚い経済学所がベストセラーになった。読みたいと思いつつ7年が経とうとしているが、2019年に映画化されていることを知り、まず映画で入門することにした。本も近いうちに読んでみたい。
経済学書を読むのは本当に久しぶりで、1980年にベストセラーになったM&Rフリードマンという経済学者が書いた「選択の自由―自立社会への挑戦」(新装版)(英語版)(英語Kindle版)を予備校生の頃に読んで以来だ。
この本は経済における自由の重要性をわかりやすく訴え、小さな政府、規制緩和といった政策の実現をとおして現代世界を変えた「革命の書」だ。アメリカ、ヨーロッパだけでなく日本もこの自由主義経済の理念を採用した。この本の主張はふたつ。ひとつは徹底した市場原理至上主義(新自由主義)、もうひとつは政府による通貨管理の重要性(マネタリズム)であり、イギリスのサッチャリズム、アメリカのレーガノミクスの種本とも言われている。
その結果40年後の現在はどうなっただろうか?それが「21世紀の資本」で解説されている貧困と経済格差なのである。市場原理至上主義は労働組合、労働者階級の力を弱め、低賃金・長時間労働をもたらしたからだ。また金融の規制緩和は大企業と資本家階級をますます富ませることになった。
「21世紀の資本」は過去300年にわたり、30か国の経済の状況を丹念に調べ上げ、富の集中と分配がどのように変遷したかを具体的なデータで示し、過去に極めて深刻な貧富の差があったこと、そしていったんは中産階級が増えて改善されたこと、現在はその問題が急速に進みつつあることを示し、その進行を止めるために私たちがどのような選択をすべきかということを提唱している。経済学書で、これほど長い期間にわたる調査・分析をし、学問的に実証した本はこれまでなかった。本書の説得力はデータによる裏付けがされていることにある。
映画を観てから本を読むほうがよさそうだ。分厚い本は無理という方は、映画だけでもご覧いただきたい。以下は公式ホームページからの引用である。
『ウォール街』『プライドと偏見』『レ・ミゼラブル』『ザ・シンプソンズ』『エリジウム』…。
700ページを超える原作本とは異なり、映画版『21世紀の資本』は名作映画や小説などをふんだんに使い、過去300年に渡る世界各国の歴史を”資本”の観点から切り取ってみせる。世の中が成熟すると資本主義は平等になる、というクズネッツの定説をひっくり返した原作者トマ・ピケティは、「現代は第一次世界大戦前の不平等な時代に戻ってしまっている」と警鐘を鳴らす。
日本でも大きな社会問題となっている「格差社会」の真相を分かりやすく描いた、唯一無二の”学べる”映画。ピケティ自身が映画の監修・出演をこなし、世界中の著名な政治・経済学者とともに本で実証した資本主義社会の諸問題を映像で解説。世の中に『渦巻く格差社会への不満や政治不信。誰も正しく教えてくれなかった本当の答えがこの映画にはある。ピケティとの共同作業で、ニュージーランドを代表を代表するヒット監督ジャスティン・ペンバートンが描く、目からうろこの驚きに満ちた103分。昭和の高度経済成長や平成のリーマン・ショックは何だったのか?21世紀を生きる日本人必見の経済ムービーが登場。
映画公式ホームページ:
https://21shihonn.com/
予告編(YouTube動画): YouTubeで再生
21世紀の資本: Prime Videoで再生 DVDを購入
映画のセリフのひとつひとつが心に突き刺ささった。つまり、貧困や経済格差は日本だけの問題ではないことがわかるのだ。
本のほうはフランス語版(2013年8月)、英語版(2014年4月)、日本語版(2014年12月)の順に刊行されたことに注意していただきたい。第二次安倍政権が発足したのは2012年、アベノミクス、モリカケ桜は2013年以後のこと、非常識な額の発注・中抜きが行われたり、公文書改ざんが行われ始めたのも第二次安倍政権からである。この期間に貧困、経済格差はますます進行していった。非正規労働は小泉政権から拡大し、安倍政権からその度合いをますます強めていった。つまり、日本そして世界の貧困、経済格差は本や映画で示されているよりもさらに進行しているのだ。
本や映画では富の集中により社会的権力が強まると主張している。日本では政権が司法、行政、メディア、企業を支配し独裁政治が行われるようになってしまったが、それは世界的に同じなのだ。アメリカでは幸い、ドナルド・トランプを民主的な選挙で引きずり下ろすことができたが、社会全体の富の集中の勢いは止めることができていない。
「成長なくして分配なし」は「経済成長したら賃金を上げる」ということだが、本当にそうなるのだろうか?本や映画にでてくる「トリクルダウン」というのがこれのことだ。富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する、という考え方。 富裕層や大企業を優遇する政策をとって経済活動を活性化させれば、富が低所得者層に向かって流れ落ち、国民全体の利益になるということ。アベノミクスでは「シャンパンタワー」に例えて説明されていた。
昨年のノーベル経済学賞は「最低賃金の引上げが雇用創出につながる」ことを実証した経済学者に対して授賞されたことを思い出した。
ノーベル経済学賞を受賞したカードによる最低賃金の研究をどこよりもわかりやすく解説!
https://diamond.jp/articles/-/284535
しかし、「21世紀の資本」では富の集中、増大は雇用とは無関係だと解説している。雇用が創出され貧困者の生活が改善したとしても、それは富や財産を独占している一部の金持ち、大企業の不労所得(金利による利益、証券や土地の売買による利益)のほうがはるかに大きいからだ。
富の集中と格差拡大は、貧困層の不満を増大させ支配階級への攻撃よりもむしろヘイトや差別などの社会問題を引き起こす。そのように思いをめぐらせると、
- 公的年金や生活保護支給の問題など社会保障が抱える問題
- ヤングケアラーの増加、子供の貧困化
- 少子高齢化、生涯未婚率の増加
- 自殺率の増加、失業者の増加、低賃金の非正規労働の拡大
- 裁量労働制導入による残業代支払いの廃止(実質的なサービス残業)
- 多重下請けによる中抜き問題
- 政権による司法、行政、企業、メディアの支配、
- 特定企業への優遇措置、政権による公職選挙法違反
- 公文書、経済の基幹統計データの改ざん、隠蔽、消去による嘘の経済成長の公表
- さまざまな教育問題(共通テストの問題の品質劣化や学習指導要領の悪化(特に英語、数学、理科)、共通テストへの特定民間事業者への参入)
- 国公立大学の入学金、授業料の値上げ、教育費の上昇と貧困の連鎖
- 大学への助成金削減、研究者の有期雇用問題、科学の軽視
- 社会保障削減、高齢者医療費の値上げ、保健所や職員の削減、重労働低賃金による看護師、介護士の不足
- 消費税増税、法人税の減税
- 外国人技能実習生への暴力や劣悪な待遇、入管職員による外国人への暴力
- あらゆる差別と分断の問題(女性蔑視、LGBT、障碍者、国籍、人種、肌の色、宗教、経済力、高齢者、学力や知能、家柄や出自、容貌)
など、報道されているありとあらゆる問題の根っこが同じだということがよくわかる。私たちはたまたま日本に住んでいるから国内のことばかり目につくが、世界のどこでも似たり寄ったりなのだ。
政権交代するだけで、これらの問題は解決するのだろうか?また政権交代のほかに私たちができることはあるのだろうか?格差を是正して社会を持続可能なものに変えていくためには、今後どのような選択をすべきなのだろうか?「21世紀の資本」は、そのための案を私たちに提示し、この問題に正面から取り組む必要性を説いているのだ。現代の若者には無関心、変化を嫌う現状を容認する人が多いと聞く。しかし、現状維持は不可能であることが「21世紀の資本」が教えてくれることである。
ネタバレになるから詳しく書かないが、格差の拡大による貧困者の不満を支配階級がどのように利用したか、その結果、社会がどのように変化したか、戦争が貧困問題、経済格差に何をもたらしたかなどについても、歴史をひも解きながら「21世紀の資本」で解説されている。その意味では日本も例外ではなかった。
関連動画:
ピケティ氏は日本語版の本が刊行された2015年に来日している。そのときに行われた記者会見の動画が公開されている。(日本語通訳または日本語字幕あり)これらの動画はとてもためになる。ぜひご覧いただきたい。(特に2つめの動画)日本記者クラブでの会見と東京大学での講義は同じ日に行われている。
日本語字幕あり
若者に有利な税制に 「21世紀の資本」のピケティ氏: YouTubeで再生
日本語通訳あり
トマ・ピケティ 仏経済学者 『21世紀の資本』 2015.1.31: YouTubeで再生
日本語字幕あり
Thomas Piketty: New thoughts on capital in the twenty-first century: YouTubeで再生
2014年度「トマ・ピケティ教授東大講義「21世紀の資本」(日本語字幕あり)」(開く)
「21世紀の資本」の関連動画: YouTubeで検索
関連書籍:
本は日本語、英語、フランス語版のどれもが日本のアマゾンサイトから紙の本とKindle版が購入できる。Kindleで読めるフランス語書籍は少ないから貴重だ。また英語版とフランス語版はAudibleから聴くことができる。
「21世紀の資本:トマ・ピケティ」(Kindle版)
「Capital in the Twenty-First Century: Thomas Piketty」(Kindle版)(Audible)
「Le Capital au XXIe siècle: Thomas Piketty」(Kindle版)(Audible)
内容:
資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す。本書の唯一の目的は、過去からいくつか将来に対する慎ましい鍵を引き出すことだ。
著者について:
トマ・ピケティ(Thomas Piketty): ウィキペディアの紹介記事
ホームページ: http://piketty.pse.ens.fr/en/
1971年、フランス・クリシー生まれ。格差研究における世界の第一人者。数学モデル偏重の経済学に背を向けて、租税データに基づく世界的な所得分布と資産分布のデータベース構築に尽力し、所得と資産がトップ1%にますます集中している状況を明確に指摘。それをまとめた2014年の大著「21世紀の資本」が世界的ベストセラーとなった。現在、パリ経済学院教授。社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。EHESSおよびロンドン経済学校(LSE)で博士号を取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭を執る。2000年からEHESS教授、2007年からパリ経済学校教授。多数の論文を the Quarterly Journal of Economics, the Journal of Political Economy, the American Economic Review, the Review of Economic Studies で発表。著書も多数。経済発展と所得分配の相互作用について、主要な歴史的、理論的研究を成し遂げた。特に、国民所得に占めるトップ層のシェアの長期的動向についての近年の研究を先導している。
「21世紀の資本」関連の書籍: 書籍版を検索 Kindle版を検索