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発売情報:入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として:堀田 昌寛

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入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として:堀田 昌寛」(Kindle版予定あり)

内容紹介:
今世紀の標準! 次世代を担う物理学徒に向けて、量子力学を根本的に再構成した。原理から本当に理解する15章。
「量子力学は20世紀前半には場の理論を含めて完成を見た。しかしその完成に至るまでの試行錯誤では、現在では間違っていることがわかっている物質波の解釈の仕方や、正確ではなかった不確定性関係の議論もなされていた。そこで本書では、そのような歴史的順序そのままの紆余曲折のある論理を辿らないことにした。一方で、線形的な状態空間やボルン則を用いた確率解釈やシュレディンガー方程式などを天下り的に公理とするスタイルもとらない。代わりに情報理論の観点からの最小限の実験事実に基づいた論理展開で、確率解釈のボルン則や量子的重ね合わせ状態の存在などを証明する。」〈本書「まえがき」より〉
2021年7月12日刊行、304ページ

著者:
堀田 昌寛(ほった まさひろ)
プロフィール: http://www.tuhep.phys.tohoku.ac.jp/profile/hotta.html
Twitter: @hottaqu
1993年東北大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。現在、東北大学大学院理学研究科助教。専門は相対論的量子情報物理学。特に、ブラックホールエントロピー、情報喪失問題。著書に『別冊数理科学 量子情報と時空の物理』(サイエンス社)がある。


待望の教科書が週明けの月曜日に刊行される。僕もさっそく地元の書店で注文した。水曜日には受け取れるようだ。専門書であるにもかかわらず、現在予約段階でAmazonではベストセラーがつき、「物理学一般関連書籍」「理論物理学」「量子物理学」の3部門で1位、そして何と総合部門で53位という人気ぶりである。


「量子力学の不思議さをことさら強調するのはそろそろやめませんか?」という言葉を初めて聞いてから10年以上たっている。量子コンピュータは実現しているし、その基礎技術としての量子テレポーテーションは20年以上前に実験が成功している。けれども、大学で使われている教科書は相変わらず古いまま、一般人に興味をもってもらうための入門書は、ことさら「不思議さ」を売り物にした本がほとんどだ。

確かに量子力学の歴史をひもとけば、現象や理論の解釈をめぐって論争が引き起こされ、決着がついていないものがあった。しかし、現代ではそのほとんどが解決している。現代の理解に基づいた教科書の必要性が唱えられていたものの、量子力学の入門的教科書でこの視点に基づいて書かれた本は皆無だったのだ。それが本書によって叶えられたのである。量子ネイティブを目指す、すべての学生、専門家、社会人に向け、堀田先生が精魂を込めて投げかけた貴重な一冊である。

この流れには僕も賛成だ。しかし、一抹の不安があった。それは次の2点についてである。

- 量子情報、量子工学を目指す方向に偏った本になってしまっているのではないだろうか?
- 量子力学に入門する初学者にとって難し過ぎる本になってしまっているのではないだろうか?つまり量子力学の2冊目の教科書の位置づけではないだろうか?

最初の不安は払拭することができた。量子力学は量子情報、量子工学に進む基礎としてだけではなく、場の量子論、素粒子物理、物性物理、電子工学などの領域の基礎でもある。詳細目次を見たところ、将来どの分野に進むのであっても役立つ教科書だということがわかった。

難易度については、実際に読んでみないと断定的なことは言えないが、目次を見る限り1冊j目の教科書として読めると思った。

章立ては次の通りで、斬新な教科書だということがすぐわかる。(詳細目次はこの記事のいちばん最後に載せておく。)

第1章 隠れた変数の理論と量子力学
第2章 二準位系の量子力学
第3章 多準位系の量子力学
第4章 合成系の量子状態
第5章 物理量の相関と量子もつれ
第6章 量子操作および時間発展
第7章 量子測定
第8章 一次元空間の粒子の量子力学
第9章 量子調和振動子
第10章 磁場中の荷電粒子
第11章 粒子の量子的挙動
第12章 空間回転と角運動量演算子
第13章 三次元球対称ポテンシャル問題
第14章 量子情報物理学
第15章 なぜ自然は「量子力学」を選んだのだろうか
付録

以下、堀田先生がツイートされている本書の解説を引用しておこう。

『今世紀の標準!』と帯に書いて頂きましたが、これは私の発案ではありません。しかし私の気持ちとしては、新しい量子力学への登頂ルートとして、この路線の教科書がどんどんと出てくることに期待をしております。

この教科書では、前期量子論から始めるスタイルでもなく、また要請(公理)を最初に与えるスタイルでもありません。シュテルン=ゲルラッハの実験結果からボルン則や量子状態線形重ね合わせを導出します。その意味で、JJサクライの衣鉢を継いでいる教科書という位置づけです。

解析力学の知識は、ハミルトニアンを知っているくらいでOKです。前提知識は普通の力学、電磁気学、複素数も採り入れた線形代数および多変数関数の微積分です。なお線形代数の最低限の説明とフーリエ級数とフーリエ変換とディラックのデルタ関数については付録がついてます。

実数ではなく複素数の値をとる波動関数の正体は、量子系に関する情報の集まりに過ぎないことを明らかにしながら、観測すると波動関数が光速度を越えた速さで収縮するのは理論の不備だと思ってしまう、初学者のよくある誤解も回避させていきます。

量子情報や量子測定の理論の基礎となる、量子もつれなどの様々なアイテムを網羅的に紹介し、量子技術の応用にもスムーズに繋がる知識を身に付けさせることも目標にしています。これからの人材としても重要な量子ネイティブ達を育成する教科書を目指しました。

「量子力学自体が情報理論の一種である」という視点をきちんと持てるような構成にしています。また初学者をよく悩ませる「物理量はエルミート行列」と考える話も天下り的に済ませず、なぜそのように扱うのかという、その背景も説明をしています。

またJ.S.ベルが考えた二準位系の隠れた変数の理論モデルを、より自然で簡単なモデルに仕立て上げて、付録で説明をしました。量子力学既修者のレビュアーの方には、特にこれと第15章の情報因果律の話を誉められました。その他にも、従来の学部生教科書にはなかった特徴が多々あります。

最後の章は、量子力学とは異なる理論を含む広い枠組みにおける解析を行って、多数の候補からなぜ自然が量子力学の実装を選択したのかについて考察し、それを通じて理論としての量子力学をより深く理解させることを狙っています。これからの基礎物理学の1つの方向性を示しました。

理論物理学私塾や物理教育インフルエンサーの皆さまに、この教科書に沿った量子力学のオンライン授業を常識的な授業料で行って頂ければ嬉しいです。教科書を買って著作権を守って頂ければ、開講されてもこちらは他に何も要りません。この国で民間の物理学高等教育の場が成熟することを願っております。


今後、この教科書を使って授業を行う大学が増えていくことを期待している。


関連記事:

量子情報と時空の物理 第2版: 堀田昌寛
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/12f7ead2e710ad2b70955c62a6f268fa

量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみ: 松浦壮
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/22f04399c3fc59c9e20e95531b251935


 

 


入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として:堀田 昌寛」(Kindle版予定あり)


まえがき
記号表

第1章 隠れた変数の理論と量子力学
1.1 はじめに
1.2 シュテルン=ゲルラッハ実験とスピン
1.3 隠れた変数の理論の実験的な否定

第2章 二準位系の量子力学
2.1 測定結果の確率分布
2.2 量子状態の行列表現
2.3 観測確率の公式
2.4 状態ベクトル
2.5 物理量としてのエルミート行列という考え方
2.6 空間回転としてのユニタリー行列
2.7 量子状態の線形重ね合わせ
2.8 確率混合

第3章 多準位系の量子力学
3.1 基準測定
3.2 物理操作としてのユニタリー行列
3.3 一般の物理量の定義
3.4 同時対角化ができるエルミート行列
3.5 量子状態を定める物理量
3.6 N準位系のブロッホ表現
3.7 基準測定におけるボルン則
3.8 一般の物理量の場合のボルン則
3.9 ρ^の非負性
3.10 縮退
3.11 純粋状態と混合状態

第4章 合成系の量子状態
4.1 テンソル積を作る気持ち
4.2 テンソル積の定義
4.3 部分トレース
4.4 状態ベクトルのテンソル積
4.5 多準位系でのテンソル積
4.6 縮約状態

第5章 物理量の相関と量子もつれ
5.1 相関と合成系量子状態
5.2 もつれていない状態
5.3 量子もつれ状態
5.4 相関二乗和の上限

第6章 量子操作および時間発展
6.1 はじめに
6.2 物理操作の数学的表現
6.3 シュタインスプリング表現
6.4 時間発展とシュレディンガー方程式
6.5 磁場中の二準位スピン系のハミルトニアン
6.6 ハイゼンベルグ描像
6.7 対称性と保存則

第7章 量子測定
7.1 はじめに
7.2 測定の設定
7.3 測定後状態
7.4 不確定性関係

第8章 一次元空間の粒子の量子力学
8.1 はじめに
8.2 状態空間次元の無限大極限
8.3 位置演算子と運動量演算子
8.4 運動量演算子の位置表示
8.5 N^の固有状態の位置表示波動関数
8.6 エルミート演算子のエルミート性
8.7 粒子系の基準測定
8.8 粒子の不確定性関係

第9章 量子調和振動子
9.1 ハミルトニアン
9.2 シュレディンガー方程式の位置表示
9.3 伝播関数

第10章 磁場中の荷電粒子
10.1 調和振動子から磁場中の荷電粒子へ
10.2 伝播関数

第11章 粒子の量子的挙動
11.1 自分自身と干渉する
11.2 電場や磁場に触れずとも感じる
11.3 トンネル効果
11.4 ポテンシャル勾配による反射
11.5 離散的束縛状態
11.6 連続準位と離散準位の共存

第12章 空間回転と角運動量演算子
12.1 はじめに
12.2 二準位スピンの角運動量演算子
12.3 角運動量演算子と固有状態
12.4 角運動量の合成
12.5 軌道角運動量

第13章 三次元球対称ポテンシャル問題
13.1 はじめに
13.2 三次元調和振動子
13.3 球対称ポテンシャルのハミルトニアン固有値問題
13.4 角運動量保存則
13.5 クーロンポテンシャルの基底状態

第14章 量子情報物理学
14.1 はじめに
14.2 複製禁止定理
14.3 量子テレポーテーション
14.4 量子計算

第15章 なぜ自然は「量子力学」を選んだのだろうか
15.1 確率分布を用いたCHSH不等式とチレルソン不等式
15.2 ポぺスク=ローリッヒ箱の理論
15.3 情報因果律
15.4 ポペスク=ローリッヒ箱の強さ

付録
A 量子力学におけるチレルソン不等式の導出
B.1 有限次元線形代数
B.2 パウリ行列
C.1 クラウス表現の証明
C.2 クラウス表現を持つΓがシュタインスプリング表現を持つ証明
D.1 フーリエ変換
D.2 デルタ関数
E 角運動量合成の例
F ラプラス演算子の座標変換
G.1 シュテルン=ゲルラッハ実験を説明する隠れた変数の理論
G.2 棒磁石モデルにおけるCHSH不等式

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