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オイラー探検:黒川信重

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オイラー探検(シュプリンガー版)」(丸善版

内容紹介:
本書ではオイラーの数学のうち、ゼータ関数周辺に焦点を絞り、素数の逆数和が無限大というオイラーの画期的業績の解説からはじめて、オイラーが発見した美しい数式を次々と紹介してゆきます。第I部「オイラーと無限大の滝」ではオイラーの行った研究を、関連する話題にも触れながら、解説しています。説明は高校生からわかるように心がけました。第II部「オイラー12峰探検」ではオイラーを直接体験するためにオイラーが書き残した式を『全集』からそのまま紹介します。当時の書き方を味わいつつ、オイラーの美しい式たちを観賞してください。

シュプリンガー版:2007年10月3日刊行、184ページ
丸善版:2012年5月1日刊行、184ページ

著者:
黒川信重(くろかわ のぶしげ): ウィキペディアの記事
1952年栃木県生まれ。栃木県立宇都宮高校出身。東京工業大学理学部数学科卒業。同大学院修士課程修了。理学博士(東京工業大学)。東京工業大学助手、東京工業大学助教授、東京大学助教授、東工大教授を経て、現在、東京工業大学名誉教授。専門は数論、特に解析的整数論、多重三角関数論、ゼータ関数論、保型形式。著書・共著多数。

黒川先生の著書: 書籍版 Kindle版


理数系書籍のレビュー記事は本書で462冊目。

オイラーの業績の全体像を把握するために、前回の記事では「オイラー入門: W.ダンハム」を読んで紹介記事を書いた。そしてさらにゼータ関数やリーマン予想を知るために読んだのが、今回の「オイラー探検(シュプリンガー版)」である。

著者の黒川先生は「高校生からわかるように心がけました」とお書きになっているが、それは第I部までのことである。第II部のほうは容赦なく打ちのめされた。自分の計算力のなさを思い知る結果となった。

とはいっても読書が無駄になったわけではない。「無限」には魔物が潜んでいることがよく理解できたし、魔物に果敢に挑んでいくつもの糸口をつかんだオイラーの奮闘ぶりを実感できた。無限乗積と無限級数が一致するという驚くべき等式や数式がオイラーの数学の大きな魅力である。それは無限に続く自然数全体と無限に続く素数全体との間に成り立つ関係式が得られたということなのだ。そしてオイラー以後、数学的に厳密な形で完成した複素関数論(動画で学ぶ)の解析接続(動画で学ぶ)によりゼータ関数がリーマン予想へ発展していく道筋を見ることができたからだ。

そしてオイラーの数学の研究は「底なし沼」だということも理解した。一生をかけて研究し尽せない数学領域なのだ。それは1911年から刊行されている『オイラー全集(Opera Omnia)』は、すでに第70巻を超え、現在もなお刊行が続いていることからもわかる。この全集は次のように構成されている。Amazonからも販売されている。(検索してみる

第一シリーズ 数学著作集 
29巻、30冊 (このシリーズは完結した)
第二シリーズ 力学と天文学
31巻、32冊 (このシリーズも完結した)
第三シリーズ 物理学、その他
12巻  (このシリーズも完結した)
第四シリーズ
この系列はさらに二つの系列に分かれる
4-A 書簡集(全10巻の予定。)
4-B オイラーのマニュスクリプト。手書きの研究ノートと日記。

参考ページ:その量は5万ページ以上! 論文をまとめきれないほどの天才数学者がいた!
https://mikata.shingaku.mynavi.jp/article/5545/

この全集を読むのは不可能だから、コンパクトにまとめられた本書が役立つのである。第I部ではゼータに関する美しく興味深い等式が幾つも紹介されている。第II部では12峰と称してオイラーが発見した美しい数式が紹介されている。数式変形まで詳しく解説されている第I部とは異なり、ここでは簡潔な『解説』が与えられているだけだ。オイラー数学の研究者を目指すのであれば、自分で計算して確かめるべきだが、ほとんどの人には無理なことで「高嶺の花」を鑑賞するしかない。本書の第II部はオイラーの数学公式集のようなものだと、無理矢理納得することにした。

「オイラー数学の沼」を垣間見たい方には、生誕300年を記念して刊行された本書をお勧めしたい。以下の2冊はペアである。重複箇所はほとんどないから、2冊ともお買い求めになるとよいだろう。

オイラー入門(シュプリンガー版)」(丸善版)(紹介記事
オイラー探検(シュプリンガー版)」(丸善版
 

「オイラー入門」の翻訳のもとに担った英語版はこちら。

Euler the Master of Us All: William Dunham」(Amazon.com


さらに学んでみたい方には、オイラー自身が書いたこちらの2冊をお勧めしたい。

オイラーの無限解析
オイラーの解析幾何
 

『オイラー全集(Opera Omnia)』: Amazonで検索

参考: The Euler Archive
http://eulerarchive.maa.org/


関連動画:

著者の黒川信重先生の講義動画、出演されている動画を紹介しておこう。最終講義のほうは一般の方でも理解できる内容である。

黒川信重教授.最終講義「絶対数学の世界を旅して」


対談「ラマヌジャンを語る」:黒川信重x小山信也


オイラー以降、ゼータの研究がリーマン予想に発展していたことがざっくりわかる動画を紹介しておこう。ヨビノリさんがとても上手に説明している。

高校生でも楽しめるリーマン予想【前編】


高校生でも楽しめるリーマン予想【後編】



関連記事:

オイラー入門: W.ダンハム
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6a5d54f254fa7af0c2361d93995cea4


 

 


オイラー探検(シュプリンガー版)」(丸善版


第I部 オイラーと無限大の滝
- オイラーと現代数学
- オイラーとサンクト・ペテルブルグ
- 素数
- オイラーと素数
- 素数いろいろ:オイラーの足跡
- 素数の逆数の和:オイラーの着眼
- オイラーによる条件付き素数分布
- 佐藤-テイト予想への道
- 平方数の逆数の和:オイラーと円周率
- オイラーからの三角関数の発展
- 自然数全体の和:オイラー瀑布
- 平均極限からの接近
- ゼータの風景
- ゼータと波
- ゼータの一年
- オイラーの羽箒
- 文献案内

第II部 オイラー12峰探検
- 指数関数・三角関数
- 三角関数無限積表示
- ゼータ特殊値:正偶数
- ゼータ特殊値:負整数
- ゼータ関数等式
- オイラー積
- 素数逆数和
- ゼータ積分表示
- ゼータ正規和
- オイラー定積分
- 発散級数
- 五角数定理

付録A:オイラー生誕300年記念集会
付録B:オイラー作用素の行列式
付録C:ゼータと地球
あとがき
索引

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