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潮騒(新潮文庫): 三島由紀夫

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潮騒(新潮文庫): 三島由紀夫

内容紹介:
文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、著者を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。(ウィキペディア
1954年6月初版刊行。

著者について:
三島 由紀夫(みしま ゆきお、本名:平岡 公威〈ひらおか きみたけ〉: ウィキペディア
1925年〈大正14年〉1月14日 - 1970年〈昭和45年〉11月25日)は、日本の小説家・劇作家・随筆家・評論家・政治活動家・皇国主義者。戦後の日本文学界を代表する作家の一人であると同時に、ノーベル文学賞候補になるなど、日本語の枠を超え、海外においても広く認められた作家である。代表作は小説に『仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』『鏡子の家』『憂国』『豊饒の海』など、戯曲に『近代能楽集』『鹿鳴館』『サド侯爵夫人』などがある。晩年は政治的な傾向を強め、自衛隊に体験入隊し、民兵組織「楯の会」を結成。1970年(昭和45年)11月25日、楯の会隊員4名と共に自衛隊市ヶ谷駐屯地(現・防衛省本省)を訪れ東部方面総監を監禁。バルコニーでクーデターを促す演説をしたのち、割腹自殺を遂げた。この一件は社会に大きな衝撃を与え、新右翼が生まれるなど、国内の政治運動や文学界に大きな影響を与えた。(詳細は三島事件を参照)

三島由紀夫の作品(新潮文庫): Amazonで検索


なぜだかわからないし、これと言ったきっかけを思いつかないのだが、急にこの小説を無性に読みたくなった。三島由紀夫が作家デビューしてから10作目として書いたのが『潮騒』である。彼の作品の中では異色のピュアな恋愛小説だ。若い男女が一緒にいるだけで友達からは揶揄され、世間からは非難されていた時代背景、閉鎖的なムラ社会の規律が残っていた離島で繰り広げられる美しい純愛小説である。そう、恋は障害があってこそ想いがつのり、燃え上がる。面と向かえば気のないそぶりをし、ほんの些細なことで気持ちは浮き沈みをする。すっかり忘れてしまった恋心、若き日の記憶を思い起こすのにはちょうどよい。この作品を世に出した三島は当時29歳だった。

三重県鳥羽市に属する歌島(現在の神島の古名)を舞台に、若く純朴な恋人同士の漁夫と海女が、いくつもの障害や困難を乗り越え、成就するまでを描いた純愛物語。古代ギリシアの散文作品『ダフニスとクロエ』(Kindle版)に着想を得て書かれた作品である。この小説の舞台となった島は実在し、三島は1953年(昭和28年)3月と、8月から9月に、三島は取材のため鳥羽港から神島を訪れ、八代神社、神島灯台、観的哨、島民の生活、例祭神事、漁港、歴史、海女や漁船員の仕事や生活、台風などについてつぶさに観察してノートを取っている。どのような景色を三島が見ていたか、次のページでご覧いただける。

三島由紀夫の『潮騒』をたずねて~神島散策プラン~
https://www.iseshima-kanko.jp/course/1849/


三島の作品には耽美的、思索的なものが多いが、この小説はいたってシンプルで読みやすい。文才あふれる三島の名文に浸ることができる。文庫で実質180ページしかないため、読書の習慣がついていない人の「小説入門」としてうってつけだ。特に異性とはスマホで連絡をすぐ取れて、親や世間から邪魔されることがまったくない現代の若者たちに読んでもらいたい。僕が青春時代を過ごした1980年頃にはすでに恋愛は自由だったが、それでも固定電話しかなかったから、付き合っている異性と連絡をとるのは少し不自由だった。手紙を書いて想いを伝えることもあった。相手の写真は大切に手帳や定期入れに入れていた時代である。そう、不自由さと不便さは恋心をつのらせるのだ。

ほんの束の間、若き日の熱情(若き日の思い込み?)をかき立てられた時間を過ごすことができた。読後感がすがすがしい小説である。ぜひ読んでみてほしい。


『潮騒』各国語に翻訳されている。英語版とフランス語版のリンクを載せておこう。英語版は電子書籍として読むことができる。新潮文庫の三島作品はご遺族の意向により電子書籍化はされていないそうだ。日本語版の電子書籍化は著作権が切れる2041年まで待たなければならない。(参考ページ

潮騒(新潮文庫): 三島由紀夫
The Sound of Waves (英語): Yukio Mishima」(Kindle版
Tumulte Des Flots (仏語): Yukio Mishima
   


『潮騒』の初版本

1954年6月に刊行された初版本にはプレミアがついていて高値で売られている。特に帯付きで状態のよいものは高価だ。掘り出し物がでてくるかもしれないので、検索用のリンクを載せておこう。

拡大


初版本の検索: Amazon.co.jp 日本の古本屋 ヤフオク メルカリ


映画化された『潮騒』

小説のほうを僕はお勧めするが、映画で観たいという方がおられることだろう。この作品は映画化しやすいストーリーで、これまで5回映画化されている。第1作は小説が刊行された年に公開されているのだ。

潮騒 (1954年) - 谷口千吉監督、久保明・青山京子主演。(ウィキペディア
潮騒 (1964年) - 森永健次郎監督、浜田光夫・吉永小百合主演。(ウィキペディア
潮騒 (1971年) - 森谷司郎監督、朝比奈逸人・小野里みどり主演。(ウィキペディア
潮騒 (1975年) - 西河克己監督、三浦友和・山口百恵主演。(ウィキペディア
潮騒 (1985年) - 小谷承靖監督、鶴見辰吾・堀ちえみ主演。(映画情報

このうち3つはYouTubeで予告編、Prime Videoで本編をご覧いただける。

1964年版: YouTube予告編 Prime Video
1975年版: YouTube予告編 Prime Video
1985年版: YouTube予告編 Prime Video

  

以下の2作品は、YouTubeだけでなく、Prime Video、DVDでもご覧いただくことはできない。映画のポスターをようやく見つけることができた。ネットで画像検索すると、映画のシーンをいくつか見つけることができる。

1954年版: ポスター拡大 画像検索
1971年版: ポスター拡大 画像検索
 


関連記事:

三島由紀夫『豊饒の海』の初版本
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/42650d60a4009468fe9d63e89083edb4

昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃: 中川右介
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aae6dd28574e06eb3c3c0c63791e80cc


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