「フーリエ 熱の解析的理論(朝倉書店)」
内容紹介:
後世の数学・科学技術に多大な影響を与えた19世紀フランスの数学者フーリエの主著の全訳。熱伝播の問題のためにフーリエが編み出した数学と、彼の自然思想が展開される。学術的知見に基づいた正確な翻訳に、豊富な注釈・解説を付す。
2019年12月16日刊行、500ページ。
著者について:
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ男爵(Jean Baptiste Joseph Fourier, Baron de、1768年3月21日 - 1830年5月16日)は、フランスの数学者・物理学者。(ウィキペディア)
固体内での熱伝導に関する研究から熱伝導方程式(フーリエの方程式)を導き、これを解くためにフーリエ解析と呼ばれる理論を展開した。フーリエ解析は複雑な周期関数をより簡単に記述することができるため、音や光といった波動の研究に広く用いられ、現在調和解析という数学の一分野を形成している。
このほか、方程式論や方程式の数値解法の研究があるほか、次元解析の創始者と見なされることもある。また統計局に勤務した経験から、確率論や誤差論の研究も行った。
科学史上の名著がまた1冊翻訳され、朝倉書店から刊行された。同じタイトルの本は以前翻訳され、2005年に大学教育出版から刊行され、2013年に「熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂」という記事で紹介したことがある。
科学史上の名著のひとつ
フランスの数学者、物理学者のジョゼフ・フーリエ(1768-1830)が1822年に著した「Theorie analytique de la chaleur」という本の日本語訳だ。(正確に言えば数学者ガストン・ダルブー(1842-1917)が編纂した1890年刊行本の日本語訳である。)これは19世紀でもっとも重要な書物のひとつと言われている。
フーリエはこの中でフーリエ級数やフーリエ変換の方法をはじめて紹介し、これを使って固体の熱伝導現象を表す偏微分方程式を解析的に解いた。この本は数理科学、応用数学上きわめて重要な意味を持っている。
1822年の初版本は金沢工業大学ライブラリーセンターに所蔵されていて、次のページで説明を読むことができる。
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ (1768-1839) 熱の解析的理論 パリ, 1822年初版
http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/182201.html
フランス語版の著作権はとっくの昔に切れているので、ネット上では現在次の2つの版を読むことができる。(PDFファイルとしてダウンロードも可)
1822年刊行、フーリエ著のオリジナル(見てみる)
1883年刊行、フーリエ著、バロン版(見てみる)- バロン(baron)とは「男爵」の意味。
Archive.org: フランス語版を検索
フランス語版や英語版の書籍はそれぞれの国のアマゾンから購入できる。いろいろな版がでているのでお求めになるときは注意したほうがよい。ダルブー編纂の本は偏微分方程式に現代と同じ「∂」記号が使われているが、フーリエ(オリジナル)やバロンの本は「∂」のかわりに「d」が使われているからだ。(ダルブー編纂の本h「∂」を使っている。)
フランス語版:Theorie Analytique De La Chaleur:Amazon.co.jpで検索
英語版:The Analytical Theory Of Heat:Amazon.comで検索、Amazon.co.jpで検索
今回刊行された日本語版について
初めて「熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂」を翻訳されたのは竹内貞雄先生。大学教育出版から「熱の解析的理論」が日本語版として刊行されたのは2005年のことである。この本に関しては2013年に次の記事で詳しく紹介している。
熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5bcc7bc3efc16463743cd01d3c989622
「訳者あとがき」によると翻訳はフーリエの原書(1822)を用いたが、説明文の中に数式が入っていることが多く、現在のテキストとは違和感があるので途中からダルブー編纂(1890)のものを使ったそうだ。
この大学教育出版の「熱の解析的理論」はその後、紙の本は絶版になり電子書籍が発売された。
またフランス語原典に関しては、以下の種類のものが無料で公開されている。
1. 大学教育出版(電子書籍):開く
2. 1822原著:開く
3. Darboux編・Fourier全集t.1:開く
4. (参考)Fourier全集t.2(完):開く
5. reprint (Gabay):開く
今回、朝倉書店から刊行された翻訳書ではフーリエが出版した1822年版を中心に底本として参照している。また監訳者・訳者による歴史的解説がとても参考になるそうだ。
章立ては次のとおりだ。
第1章 序 論
第2章 熱の運動方程式
第3章 無限直方体における熱伝播
第4章 環における熱の線的変動運動
第5章 球体における熱伝播
第6章 円筒体における熱の運動
第7章 四角柱における熱伝播
第8章 立方体における熱の運動
第9章 熱の拡散
監訳者解説 フーリエ解析の泉
訳者後記
フーリエ科学論文一覧
学者名一覧
文 献
ネット上に公開されている文書について
なお、ネット上には次の文書があり、本書のエッセンスはこれら2つ文書に凝縮されている。購入を検討されている方は、前もって目を通しておくとよいだろう。
「熱の解析的理論」
熱方程式の導出に至る過程
(本書の第1章、第2章:フーリエの法則と熱伝導方程式の導出)
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1317-03.pdf
「熱の解析的理論」
Fourier 展開公式と Fourier 積分公式 その Fourier 自身による証明
(本書の第3章、第4章、第9章:フーリエ級数やフーリエ変換の導出)
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1257-8.pdf
ご覧になるとわかるが、フーリエ級数やフーリエ変換は三角関数を使った表示であり、よりエレガントなネイピア数 e の指数関数を使った表示(オイラーの公式を使った表示)にはなっていない。
関連記事:
熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5bcc7bc3efc16463743cd01d3c989622
高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aa1e79d97684f88319d9d4e96e6a89a3
伝熱工学(東京大学機械工学):庄司正弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cdbbfe5c89a57b812d43448297966fcc
伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bfd58adf704e39cb64ca95224c7262b5
なっとくする偏微分方程式:斎藤恭一
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/16d054ebc14ad1c4336f2b9f997eb00c
図解 熱力学の学び方 (第2版):北山直方
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f48fd3b842e6330e42fe682dd680e315
メルマガを書いています。(目次一覧)
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「フーリエ 熱の解析的理論(朝倉書店)」
まえがき
第1章 序 論
第1節 本書のテーマの説明
第2節 諸概念と予備的諸定義
第3節 熱伝導の原理
第4節 熱の一様な線的運動
第5節 細い四角柱における定常温度の法則
第6節 閉じた空間を温めること
第7節 三方向に広がる熱の一様運動
第8節 固体の与えられた一点における熱運動の大きさ
第2章 熱の運動方程式
第1節 環における熱の変動運動の方程式
第2節 球体における熱の変動運動の方程式
第3節 円筒体における熱の変動運動の方程式
第4節 無限柱体における熱の一様運動の方程式
第5節 立方体における熱の変動運動の方程式
第6節 固体内部における熱伝播の一般方程式
第7節 表面に関する一般方程式
第8節 一般方程式の応用
第9節 一般的諸注意
第3章 無限直方体における熱伝播
第1節 問題の説明
第2節 熱の理論における三角級数の最初の使用例
第3節 これらの級数に関する諸注意
第4節 一般解
第5節 解の結果の有限表示
第6節 任意関数の三角級数展開
第7節 本題への適用
第4章 環における熱の線的変動運動
第1節 問題の一般解
第2節 離散物体間の熱伝導
第5章 球体における熱伝播
第1節 一般解
第2節 この解に関する諸注意
第6章 円筒体における熱の運動
第7章 四角柱における熱伝播
第8章 立方体における熱の運動
第9章 熱の拡散
第1節 無限直線における熱の自由運動
第2節 無限固体における熱の自由運動
第3節 無限固体内の最も高い温度
第4節 積分の比較
内容一覧
ダルブー版「序文」
監訳者解説 フーリエ解析の泉
訳者後記
フーリエ科学論文一覧
学者名一覧
文 献
内容紹介:
後世の数学・科学技術に多大な影響を与えた19世紀フランスの数学者フーリエの主著の全訳。熱伝播の問題のためにフーリエが編み出した数学と、彼の自然思想が展開される。学術的知見に基づいた正確な翻訳に、豊富な注釈・解説を付す。
2019年12月16日刊行、500ページ。
著者について:
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ男爵(Jean Baptiste Joseph Fourier, Baron de、1768年3月21日 - 1830年5月16日)は、フランスの数学者・物理学者。(ウィキペディア)
固体内での熱伝導に関する研究から熱伝導方程式(フーリエの方程式)を導き、これを解くためにフーリエ解析と呼ばれる理論を展開した。フーリエ解析は複雑な周期関数をより簡単に記述することができるため、音や光といった波動の研究に広く用いられ、現在調和解析という数学の一分野を形成している。
このほか、方程式論や方程式の数値解法の研究があるほか、次元解析の創始者と見なされることもある。また統計局に勤務した経験から、確率論や誤差論の研究も行った。
科学史上の名著がまた1冊翻訳され、朝倉書店から刊行された。同じタイトルの本は以前翻訳され、2005年に大学教育出版から刊行され、2013年に「熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂」という記事で紹介したことがある。
科学史上の名著のひとつ
フランスの数学者、物理学者のジョゼフ・フーリエ(1768-1830)が1822年に著した「Theorie analytique de la chaleur」という本の日本語訳だ。(正確に言えば数学者ガストン・ダルブー(1842-1917)が編纂した1890年刊行本の日本語訳である。)これは19世紀でもっとも重要な書物のひとつと言われている。
フーリエはこの中でフーリエ級数やフーリエ変換の方法をはじめて紹介し、これを使って固体の熱伝導現象を表す偏微分方程式を解析的に解いた。この本は数理科学、応用数学上きわめて重要な意味を持っている。
1822年の初版本は金沢工業大学ライブラリーセンターに所蔵されていて、次のページで説明を読むことができる。
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ (1768-1839) 熱の解析的理論 パリ, 1822年初版
http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/182201.html
フランス語版の著作権はとっくの昔に切れているので、ネット上では現在次の2つの版を読むことができる。(PDFファイルとしてダウンロードも可)
1822年刊行、フーリエ著のオリジナル(見てみる)
1883年刊行、フーリエ著、バロン版(見てみる)- バロン(baron)とは「男爵」の意味。
Archive.org: フランス語版を検索
フランス語版や英語版の書籍はそれぞれの国のアマゾンから購入できる。いろいろな版がでているのでお求めになるときは注意したほうがよい。ダルブー編纂の本は偏微分方程式に現代と同じ「∂」記号が使われているが、フーリエ(オリジナル)やバロンの本は「∂」のかわりに「d」が使われているからだ。(ダルブー編纂の本h「∂」を使っている。)
フランス語版:Theorie Analytique De La Chaleur:Amazon.co.jpで検索
英語版:The Analytical Theory Of Heat:Amazon.comで検索、Amazon.co.jpで検索
今回刊行された日本語版について
初めて「熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂」を翻訳されたのは竹内貞雄先生。大学教育出版から「熱の解析的理論」が日本語版として刊行されたのは2005年のことである。この本に関しては2013年に次の記事で詳しく紹介している。
熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5bcc7bc3efc16463743cd01d3c989622
「訳者あとがき」によると翻訳はフーリエの原書(1822)を用いたが、説明文の中に数式が入っていることが多く、現在のテキストとは違和感があるので途中からダルブー編纂(1890)のものを使ったそうだ。
この大学教育出版の「熱の解析的理論」はその後、紙の本は絶版になり電子書籍が発売された。
またフランス語原典に関しては、以下の種類のものが無料で公開されている。
1. 大学教育出版(電子書籍):開く
2. 1822原著:開く
3. Darboux編・Fourier全集t.1:開く
4. (参考)Fourier全集t.2(完):開く
5. reprint (Gabay):開く
今回、朝倉書店から刊行された翻訳書ではフーリエが出版した1822年版を中心に底本として参照している。また監訳者・訳者による歴史的解説がとても参考になるそうだ。
章立ては次のとおりだ。
第1章 序 論
第2章 熱の運動方程式
第3章 無限直方体における熱伝播
第4章 環における熱の線的変動運動
第5章 球体における熱伝播
第6章 円筒体における熱の運動
第7章 四角柱における熱伝播
第8章 立方体における熱の運動
第9章 熱の拡散
監訳者解説 フーリエ解析の泉
訳者後記
フーリエ科学論文一覧
学者名一覧
文 献
ネット上に公開されている文書について
なお、ネット上には次の文書があり、本書のエッセンスはこれら2つ文書に凝縮されている。購入を検討されている方は、前もって目を通しておくとよいだろう。
「熱の解析的理論」
熱方程式の導出に至る過程
(本書の第1章、第2章:フーリエの法則と熱伝導方程式の導出)
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1317-03.pdf
「熱の解析的理論」
Fourier 展開公式と Fourier 積分公式 その Fourier 自身による証明
(本書の第3章、第4章、第9章:フーリエ級数やフーリエ変換の導出)
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1257-8.pdf
ご覧になるとわかるが、フーリエ級数やフーリエ変換は三角関数を使った表示であり、よりエレガントなネイピア数 e の指数関数を使った表示(オイラーの公式を使った表示)にはなっていない。
関連記事:
熱の解析的理論:ジョゼフ・フーリエ著、ガストン・ダルブー編纂
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5bcc7bc3efc16463743cd01d3c989622
高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aa1e79d97684f88319d9d4e96e6a89a3
伝熱工学(東京大学機械工学):庄司正弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cdbbfe5c89a57b812d43448297966fcc
伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bfd58adf704e39cb64ca95224c7262b5
なっとくする偏微分方程式:斎藤恭一
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/16d054ebc14ad1c4336f2b9f997eb00c
図解 熱力学の学び方 (第2版):北山直方
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f48fd3b842e6330e42fe682dd680e315
メルマガを書いています。(目次一覧)
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「フーリエ 熱の解析的理論(朝倉書店)」
まえがき
第1章 序 論
第1節 本書のテーマの説明
第2節 諸概念と予備的諸定義
第3節 熱伝導の原理
第4節 熱の一様な線的運動
第5節 細い四角柱における定常温度の法則
第6節 閉じた空間を温めること
第7節 三方向に広がる熱の一様運動
第8節 固体の与えられた一点における熱運動の大きさ
第2章 熱の運動方程式
第1節 環における熱の変動運動の方程式
第2節 球体における熱の変動運動の方程式
第3節 円筒体における熱の変動運動の方程式
第4節 無限柱体における熱の一様運動の方程式
第5節 立方体における熱の変動運動の方程式
第6節 固体内部における熱伝播の一般方程式
第7節 表面に関する一般方程式
第8節 一般方程式の応用
第9節 一般的諸注意
第3章 無限直方体における熱伝播
第1節 問題の説明
第2節 熱の理論における三角級数の最初の使用例
第3節 これらの級数に関する諸注意
第4節 一般解
第5節 解の結果の有限表示
第6節 任意関数の三角級数展開
第7節 本題への適用
第4章 環における熱の線的変動運動
第1節 問題の一般解
第2節 離散物体間の熱伝導
第5章 球体における熱伝播
第1節 一般解
第2節 この解に関する諸注意
第6章 円筒体における熱の運動
第7章 四角柱における熱伝播
第8章 立方体における熱の運動
第9章 熱の拡散
第1節 無限直線における熱の自由運動
第2節 無限固体における熱の自由運動
第3節 無限固体内の最も高い温度
第4節 積分の比較
内容一覧
ダルブー版「序文」
監訳者解説 フーリエ解析の泉
訳者後記
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文 献