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ベティ・ブルー(1986)原題: 37°2 le matin、英題: Betty Blue


これは大学卒業直前の1987年3月、南仏のニースで観た映画。

1986年の2月から3月、そして1987年の2月から3月にパリでホームステイをしながら語学学校(ユーロセンターのパリ校)に通っていた。この映画は語学学校の期間が終わってから国内を一人旅。南仏のニースにも立ち寄った。

ニースの駅を降りて宿泊先のホテル「トロカデロ」に着くと、顔見知りの女の子2人と出くわした。数日前まで過ごしていたパリの語学学校で一緒だったIさんとAさんだ。

女子大生二人の旅だから少し心配だったらしい。「とねさんがいるから安心して泊まれるわね。」と彼女たちは勝手に僕をボディガードにしてしまった。(頼りないボディガードだが)

翌日Aさんのほうは一人で行きたい場所があるというので、僕はIさんと街を散歩することになった。AさんもIさんも学校では僕と違うクラスだったから、それほど親しいわけではない。

『ベティ・ブルー』はフランスではその前の年に公開されていて、年が明けたこの時期まで上映されていた。Iさんは評判を耳にしていたらしく、彼女から誘われるまま映画館に入ることになった。

フランスでのタイトルは「37°2 le matin」だ。何のことかわからない。「le matinは「朝」だけど37.2度は朝の気温にしては高すぎるわね。」とIさんは言った。後日帰国してからわかったのだが、原題の「37度2分・朝」は女性の基礎体温のことだった。なぜ基礎体温なのかは映画を観ればわかる。

音声はフランス語、英語の字幕付きである。僕は問題ないが、Iさんは英語がそれほどできるわけではないから苦労していた。

というより問題は別のところにあった。映画が始まってすぐ、2分間ほど濃厚なセックスシーンが続く。一人ならともかく、恋人でもない異性が隣にいるのだ。二人とも固まってしまった。

ニースの青い空を彷彿させる鮮やかで開放的な映像が美しい。主役のゾーグとベティの会話が粋だし、特に音楽が印象的だ。

けれども、終わりに近づくにつれて悲劇が始まる。アンハッピー・エンドの映画だ。映画館を後にしたIさんと僕は、しばらく無言で歩いていた。


帰国してから、日本語字幕付きのVHSビデオでもう一度見てみた。台詞を全部理解して、なかなか良い映画だったと思ったものである。日本では1987年12月に公開され、そこそこヒットしたようだ。副題の「愛と激情の日々」は、似つかわしくなくダサいと思った。邦画だとありがちなことである。

映画を観て「こんな風に開放的で自由で自堕落な生活を一度はしてみたいものだ。」と思ったが、愛も激情もどうやら自分には無縁である。妄想だけにとどめておくことにした。

日本語や英語のタイトルの「ベティ・ブルー」は良いと思う。主演のベアトリス・ダルはこの作品でデビューした。彼女はベティを演じ、ブルーは作品のテーマ色の青(または青空)、そしてベティの憂鬱な気持を意味している。


あらすじはウィキペディアの「ベティ・ブルー」をお読みいただきたい。監督はジャン=ジャック・ベネックス。1981年、長編作品『ディーバ(1981)』を監督してデビューした。『ベティ・ブルー(1986)』は彼の3作目の映画だ。女優ベアトリス・ダルのデビュー作であり代表作に数えられる。本能のままに愛し合う男女の姿を赤裸々に描写した、その衝撃的な内容と鮮烈なビジュアルで公開当時はパリを始め、世界的なロングランヒットとなった。

原作は1985年に刊行されたフィリップ・ディジャン(Philippe Djian)の同名小説である。(名前の綴りはDjianなので「ジャン」と発音されるが、日本では「ディジャン」と表記されている。)


ぜひご覧いただきたい。フランス語を学んでいる方には、特にお勧めしたい。若者の粋でくだけた会話が盛りだくさんだ。丸暗記することで日常会話の表現力が大幅にアップすることだろう。

ベティ・ブルー/愛と激情の日々 デジタル・リマスター版 劇場予告編



僕がニースの映画館や、後にVHSビデオで見た映画は121分のショートバージョンだが、英語の字幕付きのフルバージョン(184分)をYouTubeで見ることができる。ショートバージョンでは不自然に感じた箇所(特に後半)を自然な流れで観ることができる。

Betty Blue (França 1986) Subtitle: pt-br /eng /esp /swe)



以下は映画で印象的なシーン。

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Blu-ray、DVD

日本語字幕が必要な方は、Blu-ray、DVDでどうぞ。Prime Videoなどのネット配信では見つからなかった。

「ベティ・ブルー インテグラル リニューアル完全版」は185分、「ベティ・ブルー インテグラル 完全版」は178分、「ベティ・ブルー HDリマスター版]は121分」など種類が多い。再生時間が異なるバージョン、ブルーレイとDVDの別、日本語字幕付き/無し、値段もまちまちなど、違いがある。購入の際は注意していただきたい。

ベティ・ブルー/愛と激情の日々: ジャン=ジャック・ベネックス
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ウィキペディアによると複数のバージョンがあるのは次の経緯による。1992年に60分弱の未公開シーンを付け加えた「インテグラル」が公開された。2002年には公開当時、猥褻シーンとみなされ修正された10シーンの内の9シーンが無修正で収録された「ノーカット完全版」のDVDが日本で発売された。日本公開時、「『ベティ・ブルー』を低俗なポルノ映画の次元に引きおろさせてはならない」という強い信念の元、監督自らが来日して映倫管理委員会に抗議したが、監督の望みは叶わず、全てのシーンにおいて修正が付け加えられ公開された。DVD発売元である20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンは監督の意思を尊重し、「完全無修正版」の発売を試みたが、税関において1シーンのみが猥褻なものとみなされ、修正を余儀なくされた。


原作本

原作本をお読みになりたい方は、こちらからどうぞ。日英仏のどれも日本のECサイトでのKinde化、電子書籍化はされていない。

37°2 le matin: Philippe Djian」(French, 1985)
Betty Blue: The Story Of Passion: Philippe Djian」(English, 1988)
ベティ・ブルー―愛と激情の日々: フィリップ・ディジャン」(Japanese, 1987)
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関連記事:

「ディーバ <製作30周年記念 HDリマスター・エディション>」
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/291cfe4636f7f7adf10aa394257cc824


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