「素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫」
内容
ついに、あなたの素粒子に対するイメージが具体的になる!
ヒッグス粒子発見のニュースで興味をもった方にもおすすめ!
素粒子論の「やさしい解説」を何度聞いても、どうにも腑に落ちない…。それもそのはず、多くの人は、素粒子論を理解するためには避けて通れない「場」の考え方について、ほとんど学ぶ機会がないからだ。素朴な“粒子”のイメージから脱却し、現代物理学の物質観に目覚める、今度こそわかりたいあなたのための素粒子入門。 2014年1月刊行。
著者について
吉田伸夫
東京大学理学部物理学専門課程修了。素粒子論(量子色力学)で東京大学から博士号取得。
著書には、『宇宙に果てはあるか』(新潮社)、『明解 量子重力理論入門』(講談社)、『日本人とナノエレクトロニクス』(技術評論社)などがある。
理数系書籍のレビュー記事は本書で247冊目。
次の代数学の本に進む前に、最近気になっていたこの本を読んでみた。一般読者向けに書かれた「場の量子論解説の決定版」がついに出たというのが僕がまず思ったことだ。
これまでに読ませていただいた吉田伸夫先生の本はどれもお勧めである。今回も期待が裏切られることはなかった。発売されてからまだ3ヶ月しか経っていないのに、アマゾンでは8つのレビューが投稿されており、そのうちの7つが高い評価であることからも本書が大好評であることを裏付けている。
NHKの「神の数式」をご覧になったり、ヒッグス粒子の関連本や大栗先生の「強い力と弱い力」をはじめとする素粒子物理学の入門書をお読みになった後で、本書を読むとその有り難味を実感することができるだろう。本書はNHKの番組や入門書では伝えることのできなかった「理論の土台の部分」を補っているのである。
NHKの番組や素粒子物理学の入門書では、放送時間やページ数の制限のために素粒子を「粒」としてみなすという一面しか取り上げていない。また理論の本質的な部分=標準理論の枠組みを支える「場の量子論」の解説がほとんど省略されてしまっている。そして場の量子論を支えているのが「量子力学」である。
量子力学の一般向け入門書はたくさんあるが場の量子論の入門書はほとんどなかった。数式無しには説明できないと思われてきたのがその理由だ。本書は科学教養書として書かれた「場の量子論解説の決定版」である。
NHKの番組を見たり素粒子物理学の入門書を読んだ方、量子力学の入門書を読んだ方には、次のような質問をしてみたい。
質問1) 量子力学では光は波であると同時に粒子(光子)でもあることを学ぶ。それだけでなく電子やその他の素粒子も同じで「粒子的描像」と「波動的描像」が両立している。だとすると素粒子物理学の番組や入門書ではなぜ「粒」としての側面しか取り上げていないのだろうか?量子力学で言っていたことは無視してもよいのだろうか?
質問2) 電子など素粒子は観測をするまではその位置が確定せず「ぼやけた状態」であるとされ、観測してはじめてその位置が1つに決まり粒子として観測されることを量子力学では学ぶ。だとすると加速器で素粒子と素粒子が衝突(相互作用)するということはいったいどういうことなのか?ぼやけた状態のものどうしが衝突するという意味なのだろうか?
質問3) ボルンの確率解釈では波動関数の絶対値の2乗はその位置における素「粒子」の存在確率をあらわすとされるが、量子力学では「波動性を持つ」と言っておきながら、やっぱり「粒子」だと言うこと?と思えてしまう。矛盾している気がするのだが。。。
質問4) 4つの力は「2つの素粒子の間でゲージ粒子をやり取りすることで伝えられる。」と説明され、その比喩として2つのボートに乗った2人がキャッチボールをしている例が使われる。でもそれで説明できるのは斥力(反発力)だけで、引力は説明できないと思う。一般向けの物理学講座では必ずといってよいほど受講生から質問としてあがることだ。
質問5) そもそも電荷とは何だろうか?電子の電荷はマイナス1で、クォークの電荷は1/3を単位とする分数の値であることが説明される。その「電荷」という性質は電子やクォークという「粒」に貼り付いている「何か」なのであろうか?本書を読むとそれは間違った理解であることがわかる。
質問6) 原子核のアルファ崩壊では崩壊する前と後の素粒子の数や種類は保たれる。それは化学反応式で反応の前後で原子の数と種類が保たれることに似ているので理解しやすい。ところがベータ崩壊では素粒子の数と種類は保たれていない。全く異なる素粒子に変化するというのがよくわからない。まるで錬金術のようではないか。素粒子は基本的な粒子なのだから他の素粒子に変化してはならないはずなのに。。。
これらの「もやもや(=疑問、質問)」は本書で解決される事柄のほんの一例である。素粒子を粒子としての側面だけで考えると、不自然なことがいくつも残ってしまうのだ。これらのもやもやを解決するためには素粒子を波として考え(というより本来は波であるものが素粒子に見える)、振動する場を考える(場の理論を採用する)必要がある。
上記のような疑問を解消し、読者をすっきりさせてくれた後、標準理論の解説に突入する。ゲージ対称性 U(1)、SU(2)、SU(3)、摂動法、繰り込み理論。その説明内容もこれまでに刊行された本とは違うアプローチである。それは素粒子の「波動性」を主軸に本書が書かれているからできることなのだ。「へぇ、こんなふうに説明すれば一般の人でも理解できるようになるのか。」と感心させられた。
本文では数式はほとんど使われていないが、空間の「計量(曲がり具合を表すための量)」について説明する箇所で中学レベルの数式が少しだけ使われている。本書末尾の付録では「素粒子の計算にチャレンジ」が設けられているが、ここには高校レベルの微積分と複素関数が使われている。場の量子論の数式のあらましや雰囲気をつかみたい方にとっては参考になるだろう。(数式の苦手な読者は読み飛ばしても構わない。)
以下は著者の吉田先生ご自身による本書の紹介である。
本書の「まえがき」から抜粋
2013年のノーベル物理学賞は、クォークや電子などの素粒子が質量を持つメカニズムを、半世紀以上も前に理論的に解明したヒッグスとアングレールに贈られた。前年に、このメカニズムから予想される粒子(いわゆるヒッグス粒子)の存在が確認され、「素粒子の標準模型」が一応の完成を見たとされるだけに、素粒子論の専門家にとっては、すっきりする授賞だったろう。
しかし、すっきりしないのが、専門家以外の人たちである。ヒッグス粒子の発見以来、素粒子に関する一般向けの解説書がいろいろと出版されたものの、その内容がきちんと理解できる人は、あまり多くないはずだ。こうした解説書を執筆する物理学者は、最先端研究の華やかな部分を中心に紹介しがちだが、素粒子の標準模型は、長い年月にわたる理論的発展の最終段階であり、これを理解するには、前提となるさまざまな知識が必要となるからである。
標準模型を理解するのに必要な知識には、場の量子論・ゲージ対称性とその破れ・摂動法・繰り込みなどがあり、いずれも、物理学専攻の学生を対象として、大学3、4年次から大学院で教えられる内容である。数式を使わずに説明するのはほとんど困難で、多くの解説書は、名称に言及することはあっても、内容にまで踏み込まない。しかし、こうした知識は、素粒子論の全体像を把握する上で不可欠であり、これなしには、そもそも「素粒子とは何か」についての基本的な理解すら得られない。
本書は、できるだけ数式を用いず、具体的なイメージに基づいて場の量子論やゲージ対称性についての解説を行い、一般の人にも「素粒子とは何か」を理解してもらおうという試みである。厳格な物理学者は、数式こそが物理法則を記述する唯一の言語であり、数式を使わない説明は粗雑なアナロジーにすぎないと批判するかもしれない。だが、素粒子論を理解するための第1歩としては、こうした試みも必要ではないだろうか。 吉田伸夫
本書の最後のほうで参考文献として吉田先生は次の本を紹介している。
1) 「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
2) 量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
3) ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
4) 光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
2)と3)は物理学科3年以上の人が学ぶための教科書なので、僕としては1)と4)をお勧めしたい。これら4冊はすでにレビュー記事を書いているので以下の「関連記事:」で内容をご確認いただきたい。
関連記事:
光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02
明解量子重力理論入門:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e0ab2fd9fafe3568c24ed358dd4ea92c
「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/25297abb5d996b0c1e90b623a475d1aa
量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2b9d934a542cf04be54cbede8b16ecde
番組告知:NHK-BS1「神の数式 完全版」全4回
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d763b4d8161efae445f37e05ab23f1e6
強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177
速報:2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e
ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/70cf88639447bd012cc0a70b0ccb2229
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「素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫」
まえがき
第1章:素“粒子"という虚構
- 素粒子論のわかりにくさ
- 原子論と場の理論
- 素粒子の実態が語られないわけ
第2章:場と原子
- 場とは何か
- 場の振動とその伝播
- 量子論の登場
- 幾何光学と波動光学
- 古典論から量子論へ
- 最小作用のげんりと量子論
- 波を閉じ込める
- バネの量子論
- 場の量子論と素粒子
第3章:流転する素粒子
- 素粒子の生成と消滅
- フェルミオンとボソン
- 素粒子と質量
- 素粒子と電荷
- 流転する素粒子
- 電磁波の偏向
- 内部空間の対称性
第4章:素粒子の標準模型
- グランドデザインのない世界
- 2次元世界の座標系
- 重力理論と計量の場
- ゲージ変換と対称性
- 外部空間から内部空間へ
- 素粒子の標準模型(ヒッグス場抜き)
- ゲージ対称性SU(3)
- ゲージ対称性SU(2)
- 対称性の破れ
第5章:摂動法と繰り込み
- 摂動法のアイデア
- スイングバイと摂動法
- 場の量子論の摂動法
- 量子電磁気学の摂動法
- 仮想粒子の意味
- 摂動法の困難とその克服
- 有効理論と繰り込み
- 標準模型の限界
第6章:何が究極理論を阻むのか
- 標準模型を拡張する試み
- 革新的理論の必要性
- 量子重力理論の候補
- 超ひも理論とは何か
- 超ひも理論の功罪
- 素粒子論はなぜわかりにくいのか?
おわりに
参考文献
付録:素粒子の計算にチャレンジ
内容
ついに、あなたの素粒子に対するイメージが具体的になる!
ヒッグス粒子発見のニュースで興味をもった方にもおすすめ!
素粒子論の「やさしい解説」を何度聞いても、どうにも腑に落ちない…。それもそのはず、多くの人は、素粒子論を理解するためには避けて通れない「場」の考え方について、ほとんど学ぶ機会がないからだ。素朴な“粒子”のイメージから脱却し、現代物理学の物質観に目覚める、今度こそわかりたいあなたのための素粒子入門。 2014年1月刊行。
著者について
吉田伸夫
東京大学理学部物理学専門課程修了。素粒子論(量子色力学)で東京大学から博士号取得。
著書には、『宇宙に果てはあるか』(新潮社)、『明解 量子重力理論入門』(講談社)、『日本人とナノエレクトロニクス』(技術評論社)などがある。
理数系書籍のレビュー記事は本書で247冊目。
次の代数学の本に進む前に、最近気になっていたこの本を読んでみた。一般読者向けに書かれた「場の量子論解説の決定版」がついに出たというのが僕がまず思ったことだ。
これまでに読ませていただいた吉田伸夫先生の本はどれもお勧めである。今回も期待が裏切られることはなかった。発売されてからまだ3ヶ月しか経っていないのに、アマゾンでは8つのレビューが投稿されており、そのうちの7つが高い評価であることからも本書が大好評であることを裏付けている。
NHKの「神の数式」をご覧になったり、ヒッグス粒子の関連本や大栗先生の「強い力と弱い力」をはじめとする素粒子物理学の入門書をお読みになった後で、本書を読むとその有り難味を実感することができるだろう。本書はNHKの番組や入門書では伝えることのできなかった「理論の土台の部分」を補っているのである。
NHKの番組や素粒子物理学の入門書では、放送時間やページ数の制限のために素粒子を「粒」としてみなすという一面しか取り上げていない。また理論の本質的な部分=標準理論の枠組みを支える「場の量子論」の解説がほとんど省略されてしまっている。そして場の量子論を支えているのが「量子力学」である。
量子力学の一般向け入門書はたくさんあるが場の量子論の入門書はほとんどなかった。数式無しには説明できないと思われてきたのがその理由だ。本書は科学教養書として書かれた「場の量子論解説の決定版」である。
NHKの番組を見たり素粒子物理学の入門書を読んだ方、量子力学の入門書を読んだ方には、次のような質問をしてみたい。
質問1) 量子力学では光は波であると同時に粒子(光子)でもあることを学ぶ。それだけでなく電子やその他の素粒子も同じで「粒子的描像」と「波動的描像」が両立している。だとすると素粒子物理学の番組や入門書ではなぜ「粒」としての側面しか取り上げていないのだろうか?量子力学で言っていたことは無視してもよいのだろうか?
質問2) 電子など素粒子は観測をするまではその位置が確定せず「ぼやけた状態」であるとされ、観測してはじめてその位置が1つに決まり粒子として観測されることを量子力学では学ぶ。だとすると加速器で素粒子と素粒子が衝突(相互作用)するということはいったいどういうことなのか?ぼやけた状態のものどうしが衝突するという意味なのだろうか?
質問3) ボルンの確率解釈では波動関数の絶対値の2乗はその位置における素「粒子」の存在確率をあらわすとされるが、量子力学では「波動性を持つ」と言っておきながら、やっぱり「粒子」だと言うこと?と思えてしまう。矛盾している気がするのだが。。。
質問4) 4つの力は「2つの素粒子の間でゲージ粒子をやり取りすることで伝えられる。」と説明され、その比喩として2つのボートに乗った2人がキャッチボールをしている例が使われる。でもそれで説明できるのは斥力(反発力)だけで、引力は説明できないと思う。一般向けの物理学講座では必ずといってよいほど受講生から質問としてあがることだ。
質問5) そもそも電荷とは何だろうか?電子の電荷はマイナス1で、クォークの電荷は1/3を単位とする分数の値であることが説明される。その「電荷」という性質は電子やクォークという「粒」に貼り付いている「何か」なのであろうか?本書を読むとそれは間違った理解であることがわかる。
質問6) 原子核のアルファ崩壊では崩壊する前と後の素粒子の数や種類は保たれる。それは化学反応式で反応の前後で原子の数と種類が保たれることに似ているので理解しやすい。ところがベータ崩壊では素粒子の数と種類は保たれていない。全く異なる素粒子に変化するというのがよくわからない。まるで錬金術のようではないか。素粒子は基本的な粒子なのだから他の素粒子に変化してはならないはずなのに。。。
これらの「もやもや(=疑問、質問)」は本書で解決される事柄のほんの一例である。素粒子を粒子としての側面だけで考えると、不自然なことがいくつも残ってしまうのだ。これらのもやもやを解決するためには素粒子を波として考え(というより本来は波であるものが素粒子に見える)、振動する場を考える(場の理論を採用する)必要がある。
上記のような疑問を解消し、読者をすっきりさせてくれた後、標準理論の解説に突入する。ゲージ対称性 U(1)、SU(2)、SU(3)、摂動法、繰り込み理論。その説明内容もこれまでに刊行された本とは違うアプローチである。それは素粒子の「波動性」を主軸に本書が書かれているからできることなのだ。「へぇ、こんなふうに説明すれば一般の人でも理解できるようになるのか。」と感心させられた。
本文では数式はほとんど使われていないが、空間の「計量(曲がり具合を表すための量)」について説明する箇所で中学レベルの数式が少しだけ使われている。本書末尾の付録では「素粒子の計算にチャレンジ」が設けられているが、ここには高校レベルの微積分と複素関数が使われている。場の量子論の数式のあらましや雰囲気をつかみたい方にとっては参考になるだろう。(数式の苦手な読者は読み飛ばしても構わない。)
以下は著者の吉田先生ご自身による本書の紹介である。
本書の「まえがき」から抜粋
2013年のノーベル物理学賞は、クォークや電子などの素粒子が質量を持つメカニズムを、半世紀以上も前に理論的に解明したヒッグスとアングレールに贈られた。前年に、このメカニズムから予想される粒子(いわゆるヒッグス粒子)の存在が確認され、「素粒子の標準模型」が一応の完成を見たとされるだけに、素粒子論の専門家にとっては、すっきりする授賞だったろう。
しかし、すっきりしないのが、専門家以外の人たちである。ヒッグス粒子の発見以来、素粒子に関する一般向けの解説書がいろいろと出版されたものの、その内容がきちんと理解できる人は、あまり多くないはずだ。こうした解説書を執筆する物理学者は、最先端研究の華やかな部分を中心に紹介しがちだが、素粒子の標準模型は、長い年月にわたる理論的発展の最終段階であり、これを理解するには、前提となるさまざまな知識が必要となるからである。
標準模型を理解するのに必要な知識には、場の量子論・ゲージ対称性とその破れ・摂動法・繰り込みなどがあり、いずれも、物理学専攻の学生を対象として、大学3、4年次から大学院で教えられる内容である。数式を使わずに説明するのはほとんど困難で、多くの解説書は、名称に言及することはあっても、内容にまで踏み込まない。しかし、こうした知識は、素粒子論の全体像を把握する上で不可欠であり、これなしには、そもそも「素粒子とは何か」についての基本的な理解すら得られない。
本書は、できるだけ数式を用いず、具体的なイメージに基づいて場の量子論やゲージ対称性についての解説を行い、一般の人にも「素粒子とは何か」を理解してもらおうという試みである。厳格な物理学者は、数式こそが物理法則を記述する唯一の言語であり、数式を使わない説明は粗雑なアナロジーにすぎないと批判するかもしれない。だが、素粒子論を理解するための第1歩としては、こうした試みも必要ではないだろうか。 吉田伸夫
本書の最後のほうで参考文献として吉田先生は次の本を紹介している。
1) 「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
2) 量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
3) ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
4) 光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
2)と3)は物理学科3年以上の人が学ぶための教科書なので、僕としては1)と4)をお勧めしたい。これら4冊はすでにレビュー記事を書いているので以下の「関連記事:」で内容をご確認いただきたい。
関連記事:
光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02
明解量子重力理論入門:吉田伸夫
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e0ab2fd9fafe3568c24ed358dd4ea92c
「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/25297abb5d996b0c1e90b623a475d1aa
量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2b9d934a542cf04be54cbede8b16ecde
番組告知:NHK-BS1「神の数式 完全版」全4回
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d763b4d8161efae445f37e05ab23f1e6
強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177
速報:2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e
ワインバーグ場の量子論(1巻):素粒子と量子場
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/70cf88639447bd012cc0a70b0ccb2229
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「素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫」
まえがき
第1章:素“粒子"という虚構
- 素粒子論のわかりにくさ
- 原子論と場の理論
- 素粒子の実態が語られないわけ
第2章:場と原子
- 場とは何か
- 場の振動とその伝播
- 量子論の登場
- 幾何光学と波動光学
- 古典論から量子論へ
- 最小作用のげんりと量子論
- 波を閉じ込める
- バネの量子論
- 場の量子論と素粒子
第3章:流転する素粒子
- 素粒子の生成と消滅
- フェルミオンとボソン
- 素粒子と質量
- 素粒子と電荷
- 流転する素粒子
- 電磁波の偏向
- 内部空間の対称性
第4章:素粒子の標準模型
- グランドデザインのない世界
- 2次元世界の座標系
- 重力理論と計量の場
- ゲージ変換と対称性
- 外部空間から内部空間へ
- 素粒子の標準模型(ヒッグス場抜き)
- ゲージ対称性SU(3)
- ゲージ対称性SU(2)
- 対称性の破れ
第5章:摂動法と繰り込み
- 摂動法のアイデア
- スイングバイと摂動法
- 場の量子論の摂動法
- 量子電磁気学の摂動法
- 仮想粒子の意味
- 摂動法の困難とその克服
- 有効理論と繰り込み
- 標準模型の限界
第6章:何が究極理論を阻むのか
- 標準模型を拡張する試み
- 革新的理論の必要性
- 量子重力理論の候補
- 超ひも理論とは何か
- 超ひも理論の功罪
- 素粒子論はなぜわかりにくいのか?
おわりに
参考文献
付録:素粒子の計算にチャレンジ