「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」アインシュタインの人と学問
内容紹介:
本書は表題通り、人間アインシュタインばかりでなく、むしろその研究や思想に光を当てた最初の伝記である。
著者パイスはプリンストン時代にアインシュタイン の若い同僚だったこともあり、1983年アメリカン・ブック賞その他を得ているように、従来のアインシュタインの伝記書の水準を超える力作である。
1987年2月1日刊行、741ページ。(原書は1982年9月23日刊行)
著者について:
アブラハム・パイス: Wikipedia
1918‐2000。ユダヤ系オランダ人としてアムステルダムに生まれる。アムステルダム大学、ユトレヒト大学で物理学を学ぶ。1941年、博士号を取得した直後、大学からのユダヤ人追放令にともない潜伏生活に入り、ドイツ占領下の苛烈な時代を辛うじて生き抜いた。戦後ただちにデンマークのニールス・ボーア研究所に留学し、ボーアの助手を務めた。1947年渡米し、アインシュタインのいるプリンストン高等研究所所員となる。1956年、米国籍取得。1963年以降、ロックフェラー大学教授、この間、優れた素粒子論研究者として大きな業績を収めたが、1970年代には、現代物理学史に転じ、自らの研究生活と豊かな交友経験にもとづく多くの著作を書いた。
パイス博士の著書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で402冊目。
「ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン」を読み、ブラックホール研究や重力波検出の歴史を知り、それらを予言した一般相対性理論やアインシュタインの人生を振り返ってみたくなった。
「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」がアインシュタインの伝記のなかで、いちばん詳しく正確だということを聞いたことがあったので迷わず購入。741ページをなんとか読み切った。
本書は伝記ではあるのだけれども、8割は科学者アインシュタインの研究過程や成果を数式を引用しながら解説する「半専門書」だ。残りの2割が通常の意味での伝記である。だからこの本を読めるのは、大学の物理学科で電磁気学、熱力学・統計力学、特殊相対論と一般相対論、量子力学を学び終えた大学生以上ということになる。敷居が高い。
著者はアブラハム・パイスという理論物理学者で、晩年のアインシュタインとプリンストン高等研究所で共同研究した経歴をもつ。アインシュタイン本人もこの伝記に協力している。「いちばん詳しく正確」なのはそのためだ。
本書はアインシュタインの研究過程や成果を数式を引用しながら解説しているだけに、彼の論文をまとめた「アインシュタイン選集」を読むための、最良のガイドブックとしても使うことができる。2008年に僕は論文が収録された第1巻と第2巻を読んで紹介記事を書いている。
「アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―」(紹介記事)
「アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論―」(紹介記事)
「アインシュタイン選集 3 ―アインシュタインとその思想―」
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「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」の章立ては次のとおり。
I:序論
第1章:本書の目的と構成
第2章:相対論と量子論
第3章:若き物理学者の肖像
II: 統計物理学
第4章:エントロピーと確率
第5章:分子の実在性
III: 特殊相対性理論
第6章:神は老獪にして
第7章:新しい運動学
第8章:歴史の縁
IV:一般相対性理論
第9章:わが生涯で最も素晴らしい考え
第10章:ヘル・プロフェッソール・アインシュタイン
第11章:プラハの論文
第12章:アインシュタイン―グロスマンの共同研究
第13章:重力の場の理論:初めの50年
第14章:重力の場の方程式
第15章:新しい動力学
V:その後の旅路
第16章:「突然有名になったアインシュタイン博士」
第17章:統一場理論
第18章:序論
VI:量子力学
第19章:光量子
第20章:アインシュタインと比熱
第21章:光子
第22章:間奏曲:BKS提案
第23章:アイデンティテイの喪失―量子統計の誕生
第24章:過渡期の人、アインシュタイン―波動力学の誕生
第25章:新しい力学に対するアインシュタインの反応
第26章:アインシュタインの考え方
VII:旅路の終り
第27章:最後の10年
第28章:結び
第29章:テンソル、補聴器、その他:アインシュタインの共同研究者
第30章:アインシュタインは如何にしてノーベル賞を手にしたか
第31章:アインシュタインはノーベル賞に誰を推薦したか
第32章:アインシュタイン年譜
深い感動を味わえる本である。私たちはすでに物質が原子や分子からできていること、特殊・一般相対性理論や量子論・量子力学を知っている。しかし19世紀末の物理学の状況はどうであっただろうか?原子や分子の存在すらも確定しておらず、証明と検証が必要とされていた。熱力学・統計力学、電磁気学、そしてニュートン力学でこの世界の現象をすべて説明しようとしていた時代だ。
アインシュタインが成し遂げたブラウン運動の理論、特殊・一般相対性理論、光量子仮説と光子の理論は、発表するまでにそれぞれ10年以上の考察を必要とし、観測や実験によって検証されるまでさらに10年ほどの年月を必要とした。そして世界の科学者たちに受け入れられるまでには、さらに年月を要したのだ。
「奇跡の年」として記憶される1905年に発表された5つの論文についても同様である。1905年の特殊相対性理論の段階ではアインシュタインはまだまだ無名で、世界的に知られるようになったのは1916年の一般相対性理論から予言される光線の湾曲が、1919年にエディントンにより観測された後、1921年頃なのだ。新しいことが受け入れられるまで時間がかかるのは昔も今も同じである。偉業は一朝一夕でなされるものではない。
物理学はそれまでに発見された理論の上に構築されていくものだ。アインシュタインが何を前提とし、どのような考察をしたか、どのように新しい発想をして具体的な計算を行なったかを解説する中で、彼がよりどころとした他の科学者の理論や実験が紹介される。特殊相対論を発表する前に彼がローレンツ収縮を知っていたかどうか?ポアンカレの論文を読んでいたか?などは重要なポイントである。特殊相対性理論はアインシュタインが一人だけで構築できたわけではなかった。
また一般相対性理論に関しては、スカラー場からテンソル場への拡張が必要であり、リーマン幾何学という新しい微分幾何学を習得することが必要だったことも知られている。これを学ぶために長年の友人の数学者グロスマンの協力が必要であり、彼の協力をもってしても最終ゴールにたどり着くことができなった。数学者ヒルベルトの協力も必要とした。有名な「重力場の方程式」を得るためには「ビアンキの恒等式」が必要であり、これをアインシュタインもヒルベルトも気が付いていなかったことは本書で知ることとなった。
光量子仮説、そして光子の発見はもちろん読み応えのある章だ。エネルギーの量子性は1900年にプランクが発見したものだが、彼は実験データの内挿公式の結果から ε = hν としたわけではない。電磁気学の段階、熱力学的段階、統計力学的段階という3つの段階を経てこの式が導かれた。これが量子論が生まれた経緯である。(連投ツイートを参照)また1905年にアインシュタインが光量子仮説を提唱し、ε = hν の式と並べて p = hν / c の式を書き下ろすまで12年を要した。この運動量量子をエネルギー量子に結びつける偉大な洞察によって光量子は光子になった。(このツイートを参照)そして、1922年の「コンプトン散乱」の実験によって光子の実在性は最終決着をみたのである。
量子力学は1955年に亡くなるまで受け入れることができなかったとされる点に関しても注意が必要だ。アインシュタインが受け入れなかったのは、量子力学が示す確率的な振る舞いとEPRパラドックスに関してである。 粒子像と波動像の融合すると考えていたし、プランクだけでなく、ボーアやハイゼンベルク、シュレーディンガー、パウリなどの業績を高く評価し、アインシュタインは後年、彼ら量子力学創成期の物理学者たちをノーベル物理学賞の候補者として推薦している。そして、なぜだかわからないがディラックの業績は評価していなかった。
本書でいちばん興奮したのは、アインシュタインの洞察の深さと大胆な発想だけでなく、彼の理論を理解できなかったり反対する物理学者たちの理論や言い分が詳しく書かれていることだ。彼らが間違っていることを知っているだけに「天才」と「天才の中の天才」の違いが浮き彫りになる。そこから読み取れるのは普通の人間の限界であり、それを一歩も二歩も超えたアインシュタインの天才ぶりである。読んでいてスカッとした後に深い感動がもたらされる。新理論はすぐには受け入れられないし、100パーセントの確証があるわけではない。アインシュタインは慎重に裏付けをとっていく。
物理学史を舞台とするこのような人間ドラマを、鮮やかに描く著者パイスの文才にも驚かされる。各章の「つかみ」は素晴らしく、ぐいぐいとアインシュタイン物語に読者を引きずりこんでいく。専門的な記述がほとんどの本だけに集中して読むと疲れがちであるが、絶妙なタイミングでほっと息をつけるように「人間アインシュタイン」のエピソードが挿入されている。
ブラックホール(シュヴァルツシルト解)や重力波の話は少なかったが、それは一般相対性理論から予測はできても現実の宇宙には存在しないとアインシュタインが考えていたからだろう。それでも、本書と出会うことができて本当によかったと思う。ぜひ読んでいただきたい。今日ちょうどこのようなニュースが飛び込んできた。来週の発表が楽しみだ。
史上初のブラックホール画像、来週公開か 国際プロジェクト「EHT」
https://www.afpbb.com/articles/-/3219585
史上初!中国科学アカデミーのニュースで、世界の天文学者から成る宇宙観測チームは4月10日21時に世界初のブラックホールの写真を発表する世界的記者会見を開く事を決定した。
EHTによって史上初のブラックホールの写真の撮影に成功しました。
今年最も重要な発見となるでしょう
The Wait is Almost Over. We’ll Finally See a Picture of a Black Hole’s Event Horizon on April 10th
https://www.universetoday.com/141903/the-wait-is-almost-over-well-finally-see-a-picture-of-a-black-holes-event-horizon-on-april-10th/
Astronomers may release first-ever image of a black hole on April 10
https://www.theweek.in/news/sci-tech/2019/04/03/Astronomers-release-first-ever-image-of-black-hole-eht-eso-on-April-10.html
翻訳の元にされた原書は1982年に刊行されたこの本だ。
「Subtle Is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein: Abraham Pais」(ハードカバー)
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原書には2005年に刊行された新版「Subtle Is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein: Abraham Pais」(Kindle版)がある。
本書にはパイス博士による続編がある。
「アインシュタインここに生きる: アブラハム・パイス」
「Einstein Lived Here: Abraham Pais」
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こんな分厚い本は無理、ましてアインシュタイン選集なんて論外という方は、「奇跡の年」と呼ばれる1905年の5つの論文と解説を収めたこの文庫本がお勧め。青木薫さんの翻訳なので安心して読むことができる。
「アインシュタイン論文選: 「奇跡の年」の5論文」
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アインシュタイン博士ご本人がお書きになった本も、岩波文庫で読める。
「相対性理論(岩波文庫): A.アインシュタイン」(Kindle版)
「相対論の意味(岩波文庫): A.アインシュタイン」
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数式はまったく読めないが、アインシュタインの人生や業績を知りたいという方には、こちらがお勧め。ただし2016年2月に発表された「重力波の直接初観測」以前に刊行された本であることにご注意。
「アインシュタイン 相対論の100年 (ニュートンムック Newton別冊)」(詳細)
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関連記事:
アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559
アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e
だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f1e91e296d8d83ff2759c2de190be57
ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/76795b03e7dc89cd08dac67dc25b73ab
アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fa38724ad6881636cdff2903ee14a5b
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「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」アインシュタインの人と学問
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監訳者の序
日本語版への序
読者へ
I:序論
第1章:本書の目的と構成
第2章:相対論と量子論
- 秩序ある変化と革命の時期
- タイム・カプセル
第3章:若き物理学者の肖像
- アインシュタインの伝記についての追記
II: 統計物理学
第4章:エントロピーと確率
- アインシュタインの寄与の概観
- マクスウェルとボルツマン
- 1905年への前奏曲
- アインシュタインとボルツマンの原理
第5章:分子の実在性
- 19世紀について、簡単に
1)化学、2)気体分子運動論、3)非可分性の終焉、4)非可視性の終焉
- ベッファーの瓶とファント・ホッフの法則
- 博士論文
- 11日後:ブラウン運動
1)19世紀の歴史のもう一コマ、2)Nの重複決定、3)ブラウン運動についてのアインシュタインの第1論文、4)マルコフ過程としての拡散、5)その後の論文
III: 特殊相対性理論
第6章:神は老獪にして
- マイケルソン-モーリ―の実験
- 先駆者たち
1)アインシュタインの知っていたこと、2)フォークト、3)フィッツジェラルド、4)ローレンツ、5)ラーモア、6)ポアンカレ
- 1905年のポアンカレ
- 1905年以前のアインシュタイン
1)パヴィアの小論、2)アーラウでの疑問、3)ETHの学生、4)ヴィンターツールの手紙、5)ベルンの講演、6)京都講演、7)まとめ
第7章:新しい運動学
- 1905年6月:特殊相対性が定義され、ローレンツ変換が導かれる
1)相対論の審美的起源、2)二つの基本原理、3)基本原理からローレンツ変換へ、4)応用、5)相対論と量子論、6)「私は、そのことをもっと簡単に言えたはずだ。」
- 1905年9月:E=mc^2について
- 初期の反応
- 1905年以降のアインシュタインと特殊理論
- 電磁質量:最初の1世紀
第8章:歴史の縁
- 新しい思考方法
- アインシュタインと文献
- ローレンツとエーテル
- ポアンカレと第3の仮説
- ホイテッカーと相対論の歴史
- ローレンツとポアンカレ
- ローレンツとアインシュタイン
- ポアンカレとアインシュタイン
- コーダ(終曲)
- マイケルソン-モーリ―の実験
IV: 一般相対性理論
第9章:わが生涯で最も素晴らしい考え
第10章:ヘル・プロフェッソール・アインシュタイン
- ベルンからチューリッヒへ
- 3年半の沈黙
第11章:プラハの論文
- チューリッヒからプラハへ
- 1911年、光の湾曲は検出できる
- 1912年、無人の領域にいるアインシュタイン
第12章:アインシュタイン―グロスマンの共同研究
- プラハからチューリッヒへ
- スカラーからテンソルへ
- 共同研究
- 障害
- 余波
第13章:重力の場の理論:初めの50年
- ウィーンのアインシュタイン
- アインシュタイン-フォッカーの論文
第14章:重力の場の方程式
- チューリッヒからベルリンへ
- 幕合いの出来事:磁化による回転
- 最後の歩み
1)危機、2)11月4日、3)11月11日、4)11月18日、5)11月25日
- アインシュタインとヒルベルト
第15章:新しい動力学
- 1915年から1980年
- 三つの成功
- エネルギーと運動量の保存:ビアンキの恒等式
- 重力波
- 宇宙論
- 特異点;運動の問題
- GR9で他に何が新しかったか
V: その後の旅路
第16章:「突然有名になったアインシュタイン博士」
- 病気;再婚;母の死
- アインシュタイン列聖に叙せられる
- 伝説の誕生
- アインシュタインとドイツ
- その後の著作
1)文化人として、2)科学者として
第17章:統一場理論
- 1920年頃の粒子と場
- もう10年の懐胎期間
- 第5の次元
1)カルーツァとオスカー・クライン、2)アインシュタインとカルーツァ-クライン理論、3)補遺、4)二つの自由選択
- 相対論とポスト-リーマン微分幾何学
- その後の旅路:科学年代記
- 統一についてのあと書き、量子論への序
VI: 量子力学
第18章:序論
- アインシュタインの貢献の概略
- 素粒子物理学:最初の50年間
- 量子論:影響の相関図
第19章:光量子
- キルヒホッフからプランクへ
- プランクに基づいたアインシュタイン:1905年、レイリー-アインシュタイン-ジーンズの法則
- 光量子仮説と発見法的原理
- プランクに基づいたアインシュタイン:1906年
- 光電効果:hの2度目の登場
1)1887年:ヘルツ、2)1888年:ハルヴァックス、3)1899年:J.J.トムソン、4)1902年:レナルト、5)アインシュタイン、6)1915年:ミリカン;デュアヌ-ハント極限
- 光量子仮説に対する反応
1)アインシュタインの慎重さ、2)電磁気学:自由場と相互作用、3)実験の衝撃
第20章:アインシュタインと比熱
- 19世紀における比熱
- アインシュタイン
- ネルンスト:ソルヴェイI
第21章:光子
- 粒子像と波動像の融合:アインシュタインの運命
- 自発および誘導輻射遷移
- 粒子像の完成
1)光量子と光子、2)運動量のゆらぎ:1909年、3)運動量のゆらぎ:1916年
- 偶然性についての最初の不快感
- わき道:変数分離不能な古典運動に対する量子条件
- コンプトン効果
第22章:間奏曲:BKS提案
第23章:アイデンティテイの喪失―量子統計の誕生
- ボルツマンからディラックへ
- ボース
- アインシュタイン
- ボース-アインシュタイン凝縮への補遺
第24章:過渡期の人、アインシュタイン―波動力学の誕生
- アインシュタインからドゥ・ブロイへ
- ドゥ・ブロイからアインシュタインへ
- ドゥ・ブロイ、アインシュタインからシュレーディンガーへ
第25章:新しい力学に対するアインシュタインの反応
- 1925年-31年:論争の始まり
- プリンストンでのアインシュタイン
- 客観的実在とアインシュタイン
第26章:アインシュタインの考え方
- アインシュタイン、ニュートンと成功
- 相対論と量子論
- 超因果律
VII: 旅路の終り
第27章:最後の10年
第28章:結び
第29章:テンソル、補聴器、その他:アインシュタインの共同研究者
第30章:アインシュタインは如何にしてノーベル賞を手にしたか
第31章:アインシュタインはノーベル賞に誰を推薦したか
第32章:アインシュタイン年譜
本書解題に代えて
人名索引
事項索引
内容紹介:
本書は表題通り、人間アインシュタインばかりでなく、むしろその研究や思想に光を当てた最初の伝記である。
著者パイスはプリンストン時代にアインシュタイン の若い同僚だったこともあり、1983年アメリカン・ブック賞その他を得ているように、従来のアインシュタインの伝記書の水準を超える力作である。
1987年2月1日刊行、741ページ。(原書は1982年9月23日刊行)
著者について:
アブラハム・パイス: Wikipedia
1918‐2000。ユダヤ系オランダ人としてアムステルダムに生まれる。アムステルダム大学、ユトレヒト大学で物理学を学ぶ。1941年、博士号を取得した直後、大学からのユダヤ人追放令にともない潜伏生活に入り、ドイツ占領下の苛烈な時代を辛うじて生き抜いた。戦後ただちにデンマークのニールス・ボーア研究所に留学し、ボーアの助手を務めた。1947年渡米し、アインシュタインのいるプリンストン高等研究所所員となる。1956年、米国籍取得。1963年以降、ロックフェラー大学教授、この間、優れた素粒子論研究者として大きな業績を収めたが、1970年代には、現代物理学史に転じ、自らの研究生活と豊かな交友経験にもとづく多くの著作を書いた。
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理数系書籍のレビュー記事は本書で402冊目。
「ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン」を読み、ブラックホール研究や重力波検出の歴史を知り、それらを予言した一般相対性理論やアインシュタインの人生を振り返ってみたくなった。
「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」がアインシュタインの伝記のなかで、いちばん詳しく正確だということを聞いたことがあったので迷わず購入。741ページをなんとか読み切った。
本書は伝記ではあるのだけれども、8割は科学者アインシュタインの研究過程や成果を数式を引用しながら解説する「半専門書」だ。残りの2割が通常の意味での伝記である。だからこの本を読めるのは、大学の物理学科で電磁気学、熱力学・統計力学、特殊相対論と一般相対論、量子力学を学び終えた大学生以上ということになる。敷居が高い。
著者はアブラハム・パイスという理論物理学者で、晩年のアインシュタインとプリンストン高等研究所で共同研究した経歴をもつ。アインシュタイン本人もこの伝記に協力している。「いちばん詳しく正確」なのはそのためだ。
本書はアインシュタインの研究過程や成果を数式を引用しながら解説しているだけに、彼の論文をまとめた「アインシュタイン選集」を読むための、最良のガイドブックとしても使うことができる。2008年に僕は論文が収録された第1巻と第2巻を読んで紹介記事を書いている。
「アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―」(紹介記事)
「アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論―」(紹介記事)
「アインシュタイン選集 3 ―アインシュタインとその思想―」
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「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」の章立ては次のとおり。
I:序論
第1章:本書の目的と構成
第2章:相対論と量子論
第3章:若き物理学者の肖像
II: 統計物理学
第4章:エントロピーと確率
第5章:分子の実在性
III: 特殊相対性理論
第6章:神は老獪にして
第7章:新しい運動学
第8章:歴史の縁
IV:一般相対性理論
第9章:わが生涯で最も素晴らしい考え
第10章:ヘル・プロフェッソール・アインシュタイン
第11章:プラハの論文
第12章:アインシュタイン―グロスマンの共同研究
第13章:重力の場の理論:初めの50年
第14章:重力の場の方程式
第15章:新しい動力学
V:その後の旅路
第16章:「突然有名になったアインシュタイン博士」
第17章:統一場理論
第18章:序論
VI:量子力学
第19章:光量子
第20章:アインシュタインと比熱
第21章:光子
第22章:間奏曲:BKS提案
第23章:アイデンティテイの喪失―量子統計の誕生
第24章:過渡期の人、アインシュタイン―波動力学の誕生
第25章:新しい力学に対するアインシュタインの反応
第26章:アインシュタインの考え方
VII:旅路の終り
第27章:最後の10年
第28章:結び
第29章:テンソル、補聴器、その他:アインシュタインの共同研究者
第30章:アインシュタインは如何にしてノーベル賞を手にしたか
第31章:アインシュタインはノーベル賞に誰を推薦したか
第32章:アインシュタイン年譜
深い感動を味わえる本である。私たちはすでに物質が原子や分子からできていること、特殊・一般相対性理論や量子論・量子力学を知っている。しかし19世紀末の物理学の状況はどうであっただろうか?原子や分子の存在すらも確定しておらず、証明と検証が必要とされていた。熱力学・統計力学、電磁気学、そしてニュートン力学でこの世界の現象をすべて説明しようとしていた時代だ。
アインシュタインが成し遂げたブラウン運動の理論、特殊・一般相対性理論、光量子仮説と光子の理論は、発表するまでにそれぞれ10年以上の考察を必要とし、観測や実験によって検証されるまでさらに10年ほどの年月を必要とした。そして世界の科学者たちに受け入れられるまでには、さらに年月を要したのだ。
「奇跡の年」として記憶される1905年に発表された5つの論文についても同様である。1905年の特殊相対性理論の段階ではアインシュタインはまだまだ無名で、世界的に知られるようになったのは1916年の一般相対性理論から予言される光線の湾曲が、1919年にエディントンにより観測された後、1921年頃なのだ。新しいことが受け入れられるまで時間がかかるのは昔も今も同じである。偉業は一朝一夕でなされるものではない。
物理学はそれまでに発見された理論の上に構築されていくものだ。アインシュタインが何を前提とし、どのような考察をしたか、どのように新しい発想をして具体的な計算を行なったかを解説する中で、彼がよりどころとした他の科学者の理論や実験が紹介される。特殊相対論を発表する前に彼がローレンツ収縮を知っていたかどうか?ポアンカレの論文を読んでいたか?などは重要なポイントである。特殊相対性理論はアインシュタインが一人だけで構築できたわけではなかった。
また一般相対性理論に関しては、スカラー場からテンソル場への拡張が必要であり、リーマン幾何学という新しい微分幾何学を習得することが必要だったことも知られている。これを学ぶために長年の友人の数学者グロスマンの協力が必要であり、彼の協力をもってしても最終ゴールにたどり着くことができなった。数学者ヒルベルトの協力も必要とした。有名な「重力場の方程式」を得るためには「ビアンキの恒等式」が必要であり、これをアインシュタインもヒルベルトも気が付いていなかったことは本書で知ることとなった。
光量子仮説、そして光子の発見はもちろん読み応えのある章だ。エネルギーの量子性は1900年にプランクが発見したものだが、彼は実験データの内挿公式の結果から ε = hν としたわけではない。電磁気学の段階、熱力学的段階、統計力学的段階という3つの段階を経てこの式が導かれた。これが量子論が生まれた経緯である。(連投ツイートを参照)また1905年にアインシュタインが光量子仮説を提唱し、ε = hν の式と並べて p = hν / c の式を書き下ろすまで12年を要した。この運動量量子をエネルギー量子に結びつける偉大な洞察によって光量子は光子になった。(このツイートを参照)そして、1922年の「コンプトン散乱」の実験によって光子の実在性は最終決着をみたのである。
量子力学は1955年に亡くなるまで受け入れることができなかったとされる点に関しても注意が必要だ。アインシュタインが受け入れなかったのは、量子力学が示す確率的な振る舞いとEPRパラドックスに関してである。 粒子像と波動像の融合すると考えていたし、プランクだけでなく、ボーアやハイゼンベルク、シュレーディンガー、パウリなどの業績を高く評価し、アインシュタインは後年、彼ら量子力学創成期の物理学者たちをノーベル物理学賞の候補者として推薦している。そして、なぜだかわからないがディラックの業績は評価していなかった。
本書でいちばん興奮したのは、アインシュタインの洞察の深さと大胆な発想だけでなく、彼の理論を理解できなかったり反対する物理学者たちの理論や言い分が詳しく書かれていることだ。彼らが間違っていることを知っているだけに「天才」と「天才の中の天才」の違いが浮き彫りになる。そこから読み取れるのは普通の人間の限界であり、それを一歩も二歩も超えたアインシュタインの天才ぶりである。読んでいてスカッとした後に深い感動がもたらされる。新理論はすぐには受け入れられないし、100パーセントの確証があるわけではない。アインシュタインは慎重に裏付けをとっていく。
物理学史を舞台とするこのような人間ドラマを、鮮やかに描く著者パイスの文才にも驚かされる。各章の「つかみ」は素晴らしく、ぐいぐいとアインシュタイン物語に読者を引きずりこんでいく。専門的な記述がほとんどの本だけに集中して読むと疲れがちであるが、絶妙なタイミングでほっと息をつけるように「人間アインシュタイン」のエピソードが挿入されている。
ブラックホール(シュヴァルツシルト解)や重力波の話は少なかったが、それは一般相対性理論から予測はできても現実の宇宙には存在しないとアインシュタインが考えていたからだろう。それでも、本書と出会うことができて本当によかったと思う。ぜひ読んでいただきたい。今日ちょうどこのようなニュースが飛び込んできた。来週の発表が楽しみだ。
史上初のブラックホール画像、来週公開か 国際プロジェクト「EHT」
https://www.afpbb.com/articles/-/3219585
史上初!中国科学アカデミーのニュースで、世界の天文学者から成る宇宙観測チームは4月10日21時に世界初のブラックホールの写真を発表する世界的記者会見を開く事を決定した。
EHTによって史上初のブラックホールの写真の撮影に成功しました。
今年最も重要な発見となるでしょう
The Wait is Almost Over. We’ll Finally See a Picture of a Black Hole’s Event Horizon on April 10th
https://www.universetoday.com/141903/the-wait-is-almost-over-well-finally-see-a-picture-of-a-black-holes-event-horizon-on-april-10th/
Astronomers may release first-ever image of a black hole on April 10
https://www.theweek.in/news/sci-tech/2019/04/03/Astronomers-release-first-ever-image-of-black-hole-eht-eso-on-April-10.html
翻訳の元にされた原書は1982年に刊行されたこの本だ。
「Subtle Is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein: Abraham Pais」(ハードカバー)
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原書には2005年に刊行された新版「Subtle Is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein: Abraham Pais」(Kindle版)がある。
本書にはパイス博士による続編がある。
「アインシュタインここに生きる: アブラハム・パイス」
「Einstein Lived Here: Abraham Pais」
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こんな分厚い本は無理、ましてアインシュタイン選集なんて論外という方は、「奇跡の年」と呼ばれる1905年の5つの論文と解説を収めたこの文庫本がお勧め。青木薫さんの翻訳なので安心して読むことができる。
「アインシュタイン論文選: 「奇跡の年」の5論文」
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アインシュタイン博士ご本人がお書きになった本も、岩波文庫で読める。
「相対性理論(岩波文庫): A.アインシュタイン」(Kindle版)
「相対論の意味(岩波文庫): A.アインシュタイン」
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数式はまったく読めないが、アインシュタインの人生や業績を知りたいという方には、こちらがお勧め。ただし2016年2月に発表された「重力波の直接初観測」以前に刊行された本であることにご注意。
「アインシュタイン 相対論の100年 (ニュートンムック Newton別冊)」(詳細)
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関連記事:
アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559
アインシュタイン選集 2 ―一般相対性理論および統一場理論―
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e
だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0f1e91e296d8d83ff2759c2de190be57
ブラックホールと時空の歪み: キップ・S. ソーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/76795b03e7dc89cd08dac67dc25b73ab
アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fa38724ad6881636cdff2903ee14a5b
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「神は老獪にして…: アブラハム・パイス」アインシュタインの人と学問
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監訳者の序
日本語版への序
読者へ
I:序論
第1章:本書の目的と構成
第2章:相対論と量子論
- 秩序ある変化と革命の時期
- タイム・カプセル
第3章:若き物理学者の肖像
- アインシュタインの伝記についての追記
II: 統計物理学
第4章:エントロピーと確率
- アインシュタインの寄与の概観
- マクスウェルとボルツマン
- 1905年への前奏曲
- アインシュタインとボルツマンの原理
第5章:分子の実在性
- 19世紀について、簡単に
1)化学、2)気体分子運動論、3)非可分性の終焉、4)非可視性の終焉
- ベッファーの瓶とファント・ホッフの法則
- 博士論文
- 11日後:ブラウン運動
1)19世紀の歴史のもう一コマ、2)Nの重複決定、3)ブラウン運動についてのアインシュタインの第1論文、4)マルコフ過程としての拡散、5)その後の論文
III: 特殊相対性理論
第6章:神は老獪にして
- マイケルソン-モーリ―の実験
- 先駆者たち
1)アインシュタインの知っていたこと、2)フォークト、3)フィッツジェラルド、4)ローレンツ、5)ラーモア、6)ポアンカレ
- 1905年のポアンカレ
- 1905年以前のアインシュタイン
1)パヴィアの小論、2)アーラウでの疑問、3)ETHの学生、4)ヴィンターツールの手紙、5)ベルンの講演、6)京都講演、7)まとめ
第7章:新しい運動学
- 1905年6月:特殊相対性が定義され、ローレンツ変換が導かれる
1)相対論の審美的起源、2)二つの基本原理、3)基本原理からローレンツ変換へ、4)応用、5)相対論と量子論、6)「私は、そのことをもっと簡単に言えたはずだ。」
- 1905年9月:E=mc^2について
- 初期の反応
- 1905年以降のアインシュタインと特殊理論
- 電磁質量:最初の1世紀
第8章:歴史の縁
- 新しい思考方法
- アインシュタインと文献
- ローレンツとエーテル
- ポアンカレと第3の仮説
- ホイテッカーと相対論の歴史
- ローレンツとポアンカレ
- ローレンツとアインシュタイン
- ポアンカレとアインシュタイン
- コーダ(終曲)
- マイケルソン-モーリ―の実験
IV: 一般相対性理論
第9章:わが生涯で最も素晴らしい考え
第10章:ヘル・プロフェッソール・アインシュタイン
- ベルンからチューリッヒへ
- 3年半の沈黙
第11章:プラハの論文
- チューリッヒからプラハへ
- 1911年、光の湾曲は検出できる
- 1912年、無人の領域にいるアインシュタイン
第12章:アインシュタイン―グロスマンの共同研究
- プラハからチューリッヒへ
- スカラーからテンソルへ
- 共同研究
- 障害
- 余波
第13章:重力の場の理論:初めの50年
- ウィーンのアインシュタイン
- アインシュタイン-フォッカーの論文
第14章:重力の場の方程式
- チューリッヒからベルリンへ
- 幕合いの出来事:磁化による回転
- 最後の歩み
1)危機、2)11月4日、3)11月11日、4)11月18日、5)11月25日
- アインシュタインとヒルベルト
第15章:新しい動力学
- 1915年から1980年
- 三つの成功
- エネルギーと運動量の保存:ビアンキの恒等式
- 重力波
- 宇宙論
- 特異点;運動の問題
- GR9で他に何が新しかったか
V: その後の旅路
第16章:「突然有名になったアインシュタイン博士」
- 病気;再婚;母の死
- アインシュタイン列聖に叙せられる
- 伝説の誕生
- アインシュタインとドイツ
- その後の著作
1)文化人として、2)科学者として
第17章:統一場理論
- 1920年頃の粒子と場
- もう10年の懐胎期間
- 第5の次元
1)カルーツァとオスカー・クライン、2)アインシュタインとカルーツァ-クライン理論、3)補遺、4)二つの自由選択
- 相対論とポスト-リーマン微分幾何学
- その後の旅路:科学年代記
- 統一についてのあと書き、量子論への序
VI: 量子力学
第18章:序論
- アインシュタインの貢献の概略
- 素粒子物理学:最初の50年間
- 量子論:影響の相関図
第19章:光量子
- キルヒホッフからプランクへ
- プランクに基づいたアインシュタイン:1905年、レイリー-アインシュタイン-ジーンズの法則
- 光量子仮説と発見法的原理
- プランクに基づいたアインシュタイン:1906年
- 光電効果:hの2度目の登場
1)1887年:ヘルツ、2)1888年:ハルヴァックス、3)1899年:J.J.トムソン、4)1902年:レナルト、5)アインシュタイン、6)1915年:ミリカン;デュアヌ-ハント極限
- 光量子仮説に対する反応
1)アインシュタインの慎重さ、2)電磁気学:自由場と相互作用、3)実験の衝撃
第20章:アインシュタインと比熱
- 19世紀における比熱
- アインシュタイン
- ネルンスト:ソルヴェイI
第21章:光子
- 粒子像と波動像の融合:アインシュタインの運命
- 自発および誘導輻射遷移
- 粒子像の完成
1)光量子と光子、2)運動量のゆらぎ:1909年、3)運動量のゆらぎ:1916年
- 偶然性についての最初の不快感
- わき道:変数分離不能な古典運動に対する量子条件
- コンプトン効果
第22章:間奏曲:BKS提案
第23章:アイデンティテイの喪失―量子統計の誕生
- ボルツマンからディラックへ
- ボース
- アインシュタイン
- ボース-アインシュタイン凝縮への補遺
第24章:過渡期の人、アインシュタイン―波動力学の誕生
- アインシュタインからドゥ・ブロイへ
- ドゥ・ブロイからアインシュタインへ
- ドゥ・ブロイ、アインシュタインからシュレーディンガーへ
第25章:新しい力学に対するアインシュタインの反応
- 1925年-31年:論争の始まり
- プリンストンでのアインシュタイン
- 客観的実在とアインシュタイン
第26章:アインシュタインの考え方
- アインシュタイン、ニュートンと成功
- 相対論と量子論
- 超因果律
VII: 旅路の終り
第27章:最後の10年
第28章:結び
第29章:テンソル、補聴器、その他:アインシュタインの共同研究者
第30章:アインシュタインは如何にしてノーベル賞を手にしたか
第31章:アインシュタインはノーベル賞に誰を推薦したか
第32章:アインシュタイン年譜
本書解題に代えて
人名索引
事項索引