「半導体デバイスの基礎 (中) ダイオードと電界効果トランジスタ」
内容紹介:
本書は半導体デバイスの動作原理と特性を学ぶための実用的・総合的な教科書である。一般の理工系学生を読者として想定し、特別な予備知識を前提とせずに、徹底的に平易なデバイス物理の解説を行う。中巻では、前半において、半導体デバイスの基本中の基本であるダイオード(主としてpn接合)の動作原理と動作特性について、通常の解説では省かれている誘電緩和過程の検討なども含めた十全な説明を与える。後半では半導体を用いた代表的な3端子素子である電界効果トランジスタ(FET)の動作を、基礎的な長チャネルモデルから説き起こして、現実的な微細素子の特性に至るまでを論じ、CMOS回路やメモリー(記憶装置)への応用についても簡単に紹介する。
2012年2月刊行、391ページ。(シュプリンガー版は2008年5月刊行)
著者について:
Betty Lise Anderson, Richard L. Anderson
http://www2.ece.ohio-state.edu/~anderson/
訳者について:
樺沢宇紀(かばさわ うき): 訳書: https://adx50150.wixsite.com/kabasawa-yakusho
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師。
樺沢先生の訳書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で367冊目。
上巻に続き中巻をやっと読み終えることができた。僕は電子工学の専門家になるわけではないし、このブログはたくさんの理工系書籍を紹介したいから、おのづと朝読みになってしまう。でも、素粒子物理からマクロな世界の物理や工学がどのように具現されているかを知りたいし、要素還元主義の方針は崩したくない。丁寧に翻訳してくださった樺沢先生には申し訳ないが、ざっと理解できればそれでよいという方針で読ませていただいた。
上巻で半導体の物性を物理的な視点で理解した後、この中巻では現実の半導体デバイス、ダイオードと電界効果トランジスタ(FET)の内部でどのようなことがおきているかを、定性的議論(理論)と定量的議論(解析的計算)の2つの側面で学ぶことができる。
計算といっても加減乗除、平方根、指数関数など高校数学レベルのものがほとんど。三角関数もでてこない。導出過程は示されていないが、なんとか理解可能なレベルである。
定性的な説明、計算手順を読んでいると古典物理の現象だと錯覚するようになる。しかし図版にエネルギーバンドが描かれていたり井戸型ポテンシャルの説明を見て「あ、やはりこれは量子的現象なのだな。」と気が付くのだ。
ダイオードやトランジスタなど半導体の製造工程は「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」で学んでいたのが理解の助けになった。
さらに、これら2つの半導体について、SPICEという無料の電子回路シミュレータを使って電気的特性を計算し、グラフによって視覚化するというおまけつきだ。一般人が家で半導体を作って実験することなどできないし、実際に買うことができる半導体を使って測定するのも大変だから、これはありがたい。
SPICEの部分については具体的な操作方法は示されないものの、設定するパラメータの値が載せられているので、このソフトの使い方を学べば自分でも試すことができると思う。2016年に次の本が刊行されているので、本で学ぶのならばこれをお読みになるとよいだろう。
「回路シミュレータLTspiceで学ぶ電子回路 第2版: 渋谷道雄」(Kindle版)
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ネット上の資料で学ぶのであれば、以下のサイトで学ぶとよい。
LTspice(提供元)
http://www.analog.com/jp/design-center/design-tools-and-calculators/ltspice-simulator.html
LTspice
http://easylabo.com/ltspice/
初心者のためのLTspice入門の入門(1)(Ver.3) 入手方法とインストール
http://www.denshi.club/ltspice/2015/03/ltspice1.html
LTspice入門
http://www.geocities.jp/side2949be/LTspice.html
LTspice入門に役立つサイト集
https://matome.naver.jp/odai/2144215117802740101
さて、本書の中身についてである。
上中下「全巻の構成」はリンクを開いていただくとわかる。中巻の章立てはこのようなものだ。
第II部 ダイオード
第5章 理想的なpnホモ接合
第6章 一般のダイオード
補遺2 ダイオードに関する補足
第Ⅲ部 電界効果トランジスタ(FET)
第7章 MOSFET
第8章 FETに関する追加的な考察
補遺3 MOSデバイスに関する補足
第II部はダイオードの特性の解説だ。
第5章では理想的なpnホモ接合のモデルでダイオードを理論と解析的計算によって考察する。現実のpn接合は、不純物濃度が一に依存する複雑な関数であらわされるため、電気的な特性を得るためには数値計算が必要だ。しかしこれを行なうソフトウェアを利用しても実際の半導体で起きる物理過程を再現することはほとんど望めないのだ。この章で使われる理想的なモデルとはpn接合の両側で不純物濃度が位置によらない一定値を取ることを仮定している。つまり接合面で不純物濃度が不連続な段差関数になっていると考えるのである。
第6章では理想的でない、より現実的なダイオードのモデルが考察される。理想的でないホモ接合やヘテロ接合、金属-半導体接合などである。この章は定性的な議論が中心だ。定量的な議論をするためには不純物濃度の分布やバンドの接続状態を詳しく知らなければならないが、このような問題は閉じた形で解くことが難しい。数値計算で解くことのできるデバイス・シミュレータを使う必要がある。
補遺2ではダイオードに関する補足事項が論じられる。まず「誘電緩和時間」の物理だ。そして次にpn接合やSchottky接合に対するC-V特性(容量と電圧)の測定によって、接合における不純物濃度を調べる方法が解説される。またSchottkyダイオードや低抵抗の金属-半導体接合におけるトンネル電流についても述べられる。最後に回路解析ソフトウェアSPICEを用いて、ダイオードの静的特性と過渡特性を解析する方法が紹介される。
第III部は電界効果トランジスタの解説である。
第7章はMOSFET(metal-oxide-semiconductor)つまり電界効果トランジスタの物理的な動作原理である。ドレインとソースの間に形成されるチャネルの抵抗が、ゲート電極に印加される電圧によって制御される。ゲート電圧から酸化膜に印加される電界を通じてチャネルのコンダクタンスが制御されるので「電界効果トランジスタ」と呼ばれている。定性的な議論、定量的な議論、長チャネルモデルと実験結果の比較が解説される。
第8章はFETに関する追加的な考察である。閾値電圧と低電界移動度の測定、閾値領域における漏れ電流、相補型MOSFET(CMOS)、CMOSインバーター回路におけるスイッチ動作、MOSFETの等価回路、電流利得と遮断周波数f_T、短チャネル効果、MOSFETのスケーリング(寸法規則)、絶縁体上シリコン(SOI)、他のFETなど盛沢山だ。この章の例題で2000万組のCMOS集積回路を想定して動的な消費電力を計算し、36.3kWという値が求められたのが印象的だった。集積回路技術で消費電力を抑えることが重要であることがわかる。
補遺3はMOSデバイスに関する補足である。MOSFETとMOS構造を持つキャパシターに関する話題が紹介される。チャネル電荷Q_chに関する注意、MOSFETの閾値電圧、低電界移動度に関する普遍的な関係式、V_Tの測定、長チャネルMOSFETのV_Tとμ_lfを求める別の方法、MOSキャパシター、デバイスの劣化、MOSFETの低温動作、SPICEによるMOSFETの特性の計算などだ。DRAMやCCDの原理もこの補遺3で解説されている。
このように物理学専攻の学生とはとても相性のよい半導体入門の教科書である。青と黒の二色刷り。翻訳も読みやすく、訳者による補足説明が脚注に書かれているのが助かった。ぜひご一読されるとよいだろう。
本書を訳された樺沢先生による紹介文、刊行までの経緯は次のページでお読みいただける。
《樺沢の訳書》No.8 半導体デバイスの基礎
https://adx50150.wixsite.com/kabasawa-yakusho/08
樺沢先生、上巻に比べてだいぶ難しいと感じましたが、教育的な本を翻訳していただき、ありがとうございました。
「半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性」(紹介記事)
「半導体デバイスの基礎 (中) ダイオードと電界効果トランジスタ」
「半導体デバイスの基礎 (下) バイポーラ・トランジスタと光デバイス」
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シュプリンガー版も含めて: Amazonでまとめて検索
翻訳の元になった原書はこちら。2004年に刊行された。
「Fundamentals of Semiconductor Devices」
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その後、原書のほうは昨年改訂されたばかり。いま買える最新のものは第2版である。
「Fundamentals of Semiconductor Devices 2nd Edition」
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関連記事:
半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef603af1cd207a1b80be4110b91066b3
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「半導体デバイスの基礎 (中) ダイオードと電界効果トランジスタ」
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第I部 半導体物性
第1章 半導体内部の電子状態
- はじめに
- 歴史的な経緯
第II部 ダイオード
第5章 理想的なpnホモ接合
- はじめに
- 理想的なpn接合(定性的議論)
- 理想的なpnホモ接合(定量的議論)
- 理想的なホモ接合の小信号インピーダンス
- 過渡的な効果
- 温度の効果
- まとめ
- 付録の参考文献リスト
- 復習のポイント
- 練習問題
第6章 一般のダイオード
- はじめに
- 非段差ホモ接合
- 半導体ヘテロ接合
- 金属-半導体接合
- 理想的でない接合やヘテロ接合の容量
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第6章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
補遺2 ダイオードに関する補足
- はじめに
- 誘電緩和時間
- 接合容量
- Schottkyダイオードにおける2次的効果
- ダイオードのSPICEモデル
- まとめ
- 付録の参考文献リスト
- 補遺2の参考文献
- 練習問題
第Ⅲ部 電界効果トランジスタ(FET)
第7章 MOSFET
- はじめに
- MOSFET(定性的議論)
- MOSFET(定量的議論)
- 長チャネルモデルと実験結果の比較
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第7章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
第8章 FETに関する追加的な考察
- はじめに
- 閾値電圧と低電界移動度の測定
- 閾値領域における漏れ電流
- 相補型MOSFET(CMOS)
- CMOSインバーター回路におけるスイッチ動作
- MOSFETの等価回路
- 電流利得と遮断周波数f_T
- 短チャネル効果
- MOSFETのスケーリング(寸法規則)
- 絶縁体上シリコン(SOI)
- 他のFET
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第8章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
補遺3 MOSデバイスに関する補足
- はじめに
- チャネル電荷Q_chに関する注意
- MOSFETの閾値電圧
- 低電界移動度に関する普遍的な関係式
- V_Tの測定
- 長チャネルMOSFETのV_Tとμ_lfを求める別の方法
- MOSキャパシター
- MOSキャパシターの混成図
- デバイスの劣化
- MOSFETの低温動作
- SPICEによるMOSFETの特性の計算
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 補遺3の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
索引
内容紹介:
本書は半導体デバイスの動作原理と特性を学ぶための実用的・総合的な教科書である。一般の理工系学生を読者として想定し、特別な予備知識を前提とせずに、徹底的に平易なデバイス物理の解説を行う。中巻では、前半において、半導体デバイスの基本中の基本であるダイオード(主としてpn接合)の動作原理と動作特性について、通常の解説では省かれている誘電緩和過程の検討なども含めた十全な説明を与える。後半では半導体を用いた代表的な3端子素子である電界効果トランジスタ(FET)の動作を、基礎的な長チャネルモデルから説き起こして、現実的な微細素子の特性に至るまでを論じ、CMOS回路やメモリー(記憶装置)への応用についても簡単に紹介する。
2012年2月刊行、391ページ。(シュプリンガー版は2008年5月刊行)
著者について:
Betty Lise Anderson, Richard L. Anderson
http://www2.ece.ohio-state.edu/~anderson/
訳者について:
樺沢宇紀(かばさわ うき): 訳書: https://adx50150.wixsite.com/kabasawa-yakusho
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師。
樺沢先生の訳書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で367冊目。
上巻に続き中巻をやっと読み終えることができた。僕は電子工学の専門家になるわけではないし、このブログはたくさんの理工系書籍を紹介したいから、おのづと朝読みになってしまう。でも、素粒子物理からマクロな世界の物理や工学がどのように具現されているかを知りたいし、要素還元主義の方針は崩したくない。丁寧に翻訳してくださった樺沢先生には申し訳ないが、ざっと理解できればそれでよいという方針で読ませていただいた。
上巻で半導体の物性を物理的な視点で理解した後、この中巻では現実の半導体デバイス、ダイオードと電界効果トランジスタ(FET)の内部でどのようなことがおきているかを、定性的議論(理論)と定量的議論(解析的計算)の2つの側面で学ぶことができる。
計算といっても加減乗除、平方根、指数関数など高校数学レベルのものがほとんど。三角関数もでてこない。導出過程は示されていないが、なんとか理解可能なレベルである。
定性的な説明、計算手順を読んでいると古典物理の現象だと錯覚するようになる。しかし図版にエネルギーバンドが描かれていたり井戸型ポテンシャルの説明を見て「あ、やはりこれは量子的現象なのだな。」と気が付くのだ。
ダイオードやトランジスタなど半導体の製造工程は「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」で学んでいたのが理解の助けになった。
さらに、これら2つの半導体について、SPICEという無料の電子回路シミュレータを使って電気的特性を計算し、グラフによって視覚化するというおまけつきだ。一般人が家で半導体を作って実験することなどできないし、実際に買うことができる半導体を使って測定するのも大変だから、これはありがたい。
SPICEの部分については具体的な操作方法は示されないものの、設定するパラメータの値が載せられているので、このソフトの使い方を学べば自分でも試すことができると思う。2016年に次の本が刊行されているので、本で学ぶのならばこれをお読みになるとよいだろう。
「回路シミュレータLTspiceで学ぶ電子回路 第2版: 渋谷道雄」(Kindle版)
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ネット上の資料で学ぶのであれば、以下のサイトで学ぶとよい。
LTspice(提供元)
http://www.analog.com/jp/design-center/design-tools-and-calculators/ltspice-simulator.html
LTspice
http://easylabo.com/ltspice/
初心者のためのLTspice入門の入門(1)(Ver.3) 入手方法とインストール
http://www.denshi.club/ltspice/2015/03/ltspice1.html
LTspice入門
http://www.geocities.jp/side2949be/LTspice.html
LTspice入門に役立つサイト集
https://matome.naver.jp/odai/2144215117802740101
さて、本書の中身についてである。
上中下「全巻の構成」はリンクを開いていただくとわかる。中巻の章立てはこのようなものだ。
第II部 ダイオード
第5章 理想的なpnホモ接合
第6章 一般のダイオード
補遺2 ダイオードに関する補足
第Ⅲ部 電界効果トランジスタ(FET)
第7章 MOSFET
第8章 FETに関する追加的な考察
補遺3 MOSデバイスに関する補足
第II部はダイオードの特性の解説だ。
第5章では理想的なpnホモ接合のモデルでダイオードを理論と解析的計算によって考察する。現実のpn接合は、不純物濃度が一に依存する複雑な関数であらわされるため、電気的な特性を得るためには数値計算が必要だ。しかしこれを行なうソフトウェアを利用しても実際の半導体で起きる物理過程を再現することはほとんど望めないのだ。この章で使われる理想的なモデルとはpn接合の両側で不純物濃度が位置によらない一定値を取ることを仮定している。つまり接合面で不純物濃度が不連続な段差関数になっていると考えるのである。
第6章では理想的でない、より現実的なダイオードのモデルが考察される。理想的でないホモ接合やヘテロ接合、金属-半導体接合などである。この章は定性的な議論が中心だ。定量的な議論をするためには不純物濃度の分布やバンドの接続状態を詳しく知らなければならないが、このような問題は閉じた形で解くことが難しい。数値計算で解くことのできるデバイス・シミュレータを使う必要がある。
補遺2ではダイオードに関する補足事項が論じられる。まず「誘電緩和時間」の物理だ。そして次にpn接合やSchottky接合に対するC-V特性(容量と電圧)の測定によって、接合における不純物濃度を調べる方法が解説される。またSchottkyダイオードや低抵抗の金属-半導体接合におけるトンネル電流についても述べられる。最後に回路解析ソフトウェアSPICEを用いて、ダイオードの静的特性と過渡特性を解析する方法が紹介される。
第III部は電界効果トランジスタの解説である。
第7章はMOSFET(metal-oxide-semiconductor)つまり電界効果トランジスタの物理的な動作原理である。ドレインとソースの間に形成されるチャネルの抵抗が、ゲート電極に印加される電圧によって制御される。ゲート電圧から酸化膜に印加される電界を通じてチャネルのコンダクタンスが制御されるので「電界効果トランジスタ」と呼ばれている。定性的な議論、定量的な議論、長チャネルモデルと実験結果の比較が解説される。
第8章はFETに関する追加的な考察である。閾値電圧と低電界移動度の測定、閾値領域における漏れ電流、相補型MOSFET(CMOS)、CMOSインバーター回路におけるスイッチ動作、MOSFETの等価回路、電流利得と遮断周波数f_T、短チャネル効果、MOSFETのスケーリング(寸法規則)、絶縁体上シリコン(SOI)、他のFETなど盛沢山だ。この章の例題で2000万組のCMOS集積回路を想定して動的な消費電力を計算し、36.3kWという値が求められたのが印象的だった。集積回路技術で消費電力を抑えることが重要であることがわかる。
補遺3はMOSデバイスに関する補足である。MOSFETとMOS構造を持つキャパシターに関する話題が紹介される。チャネル電荷Q_chに関する注意、MOSFETの閾値電圧、低電界移動度に関する普遍的な関係式、V_Tの測定、長チャネルMOSFETのV_Tとμ_lfを求める別の方法、MOSキャパシター、デバイスの劣化、MOSFETの低温動作、SPICEによるMOSFETの特性の計算などだ。DRAMやCCDの原理もこの補遺3で解説されている。
このように物理学専攻の学生とはとても相性のよい半導体入門の教科書である。青と黒の二色刷り。翻訳も読みやすく、訳者による補足説明が脚注に書かれているのが助かった。ぜひご一読されるとよいだろう。
本書を訳された樺沢先生による紹介文、刊行までの経緯は次のページでお読みいただける。
《樺沢の訳書》No.8 半導体デバイスの基礎
https://adx50150.wixsite.com/kabasawa-yakusho/08
樺沢先生、上巻に比べてだいぶ難しいと感じましたが、教育的な本を翻訳していただき、ありがとうございました。
「半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性」(紹介記事)
「半導体デバイスの基礎 (中) ダイオードと電界効果トランジスタ」
「半導体デバイスの基礎 (下) バイポーラ・トランジスタと光デバイス」
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翻訳の元になった原書はこちら。2004年に刊行された。
「Fundamentals of Semiconductor Devices」
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その後、原書のほうは昨年改訂されたばかり。いま買える最新のものは第2版である。
「Fundamentals of Semiconductor Devices 2nd Edition」
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半導体デバイスの基礎 (上) 半導体物性
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第I部 半導体物性
第1章 半導体内部の電子状態
- はじめに
- 歴史的な経緯
第II部 ダイオード
第5章 理想的なpnホモ接合
- はじめに
- 理想的なpn接合(定性的議論)
- 理想的なpnホモ接合(定量的議論)
- 理想的なホモ接合の小信号インピーダンス
- 過渡的な効果
- 温度の効果
- まとめ
- 付録の参考文献リスト
- 復習のポイント
- 練習問題
第6章 一般のダイオード
- はじめに
- 非段差ホモ接合
- 半導体ヘテロ接合
- 金属-半導体接合
- 理想的でない接合やヘテロ接合の容量
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第6章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
補遺2 ダイオードに関する補足
- はじめに
- 誘電緩和時間
- 接合容量
- Schottkyダイオードにおける2次的効果
- ダイオードのSPICEモデル
- まとめ
- 付録の参考文献リスト
- 補遺2の参考文献
- 練習問題
第Ⅲ部 電界効果トランジスタ(FET)
第7章 MOSFET
- はじめに
- MOSFET(定性的議論)
- MOSFET(定量的議論)
- 長チャネルモデルと実験結果の比較
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第7章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
第8章 FETに関する追加的な考察
- はじめに
- 閾値電圧と低電界移動度の測定
- 閾値領域における漏れ電流
- 相補型MOSFET(CMOS)
- CMOSインバーター回路におけるスイッチ動作
- MOSFETの等価回路
- 電流利得と遮断周波数f_T
- 短チャネル効果
- MOSFETのスケーリング(寸法規則)
- 絶縁体上シリコン(SOI)
- 他のFET
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 第8章の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
補遺3 MOSデバイスに関する補足
- はじめに
- チャネル電荷Q_chに関する注意
- MOSFETの閾値電圧
- 低電界移動度に関する普遍的な関係式
- V_Tの測定
- 長チャネルMOSFETのV_Tとμ_lfを求める別の方法
- MOSキャパシター
- MOSキャパシターの混成図
- デバイスの劣化
- MOSFETの低温動作
- SPICEによるMOSFETの特性の計算
- まとめ
- 付録の参考文献リストについて
- 補遺3の参考文献
- 復習のポイント
- 練習問題
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