「惑星探査機の軌道計算入門: 半揚稔雄」
内容紹介:
数値計算をしながら宇宙飛行の楽しさを味わう!人工衛星や惑星探査機における軌道計算と軌道決定のカラクリを、高校数学、物理の知識をもとに分かりやすく紹介!
2017年9月20日刊行、132ページ。
著者について:
半揚稔雄(はんよう としお)
1947年、九州生まれ。北海道札幌育ち。東京大学大学院工学系研究科航空学専門課程博士課程修了、工学博士。防衛大学校および東京大学宇宙航空研究所などで宇宙飛翔力学を研究。現在、明治大学兼任講師、成蹊大学および神奈川大学非常勤講師。
半揚先生の著書: Amazonで検索
軌道計算萌えの本が発売された。それも高校数学や物理の知識があれば学べるというから嬉しい。高校時代に関数電卓(CASIO fx-2200)やプログラム関数電卓(TI-59)を使って天文計算に熱中していた僕にとっては、青春時代のワクワク感が蘇ってくる。高校生だった僕は電卓の小さな黄色い窓の中に宇宙を見ていたのだ。1970年代から2000年頃までは天文計算、天体の軌道計算の仕方を解説する本がいくつも出版されていた。
天文計算の本: Amazonで検索
軌道計算の本: Amazonで検索
また、映画『ドリーム』の公開も9月28日に控えている。これはアメリカ南東部のラングレー研究所で計算手として3人の黒人女性が偏見や差別と戦いながら、いかにして科学史に残る偉業であるマーキュリー計画の達成に貢献したかを描いた作品だ。また、1997年に打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」は、つい先日20年におよぶミッションを終えたばかり。世間はちょっとした軌道計算ブームなのだ。(と僕は勝手に思っている。)
132ページという比較的薄い本である。理論の解説の部分は高校数学レベルの数式や説明のための図が豊富に載っている。そして、解説した数式に具体的な数値を入れて計算手順を示しているのがよいところ。これなら勘違いせずに計算を進めることができる。
章立ては次のとおり。
序 宇宙飛翔力学とは
第1章 円錐曲線の幾何学
第2章 ケプラー運動
第3章 軌道遷移
第4章 軌道決定
第5章 ロケットの性能
第6章 惑星間飛行
本書を読みながら自分で計算すれば、NASAやJAXAの計算担当になった気分が味わえる。電卓を使ってもよいし、Excelで計算するのもよいだろう。
これを機会としてブログに「天文、宇宙」というカテゴリーを新設しておいた。
本書の「はしがき」には次のように書かれている。
宇宙飛行の醍醐味は、何といっても惑星等の探査を目的とする惑星間飛行であろう。世界初の惑星探査は、1962年8月27日にアメリカが打ち上げた金星探査機マリナー2号によるものである。そして、その後の惑星探査で最も成果を挙げたのは、何と言ってもボイジャー1号、2号による木星、土星、天王星、海王星の外惑星を次々と巡る一連の探査であろう。これら2機の探査機は打ち上げから40年を経た2017年現在、太陽系から離脱しつつあるとともに、今なお観測データを送り続けている。ただ一つ残された冥王星探査は、マリナー2号の打ち上げから53年を経た2015年7月14日、探査機ニューホライズンズの接近で遂に達成されるに至った。これにより、以前に計画された太陽系における九つの惑星探査が完結したのである。(冥王星は2006年8月まで太陽系第9惑星の座にあった。)この間に、新たに水星から土星までの惑星探査と、彗星や小惑星、準惑星といった天体へ次々と探査機を送り込み、太陽系誕生の謎をとき明かそうという人類の挑戦が続いている。
マリナー2号が打ち上げられた当時、筆者は中学3年生で、宇宙飛行に関する知識を得ることも困難な時代にこれに興味を覚え、今に至っている。今日では、宇宙工学に関する邦書も多数出版されて、容易に専門的なレベルまで学べる環境が整ったと言ってよかろう。
本書では、宇宙飛翔力学の入門的な内容として「円錐曲線」、「ケプラー運動」、「軌道遷移」、そして「ロケットの性能」といった5章からなる項目を取り上げ、それぞれ数値計算を通して学ぶことから、地球近傍や太陽系規模で見たときの宇宙における距離や速度、さらに飛行時間などの物理量を肌感覚で理解できるようになることを目指している。そして、最後の総仕上げの第6章では、つい先頃行なわれた冥王星探査の立役者、探査機ニューホライズンズの惑星間遷移軌道を計算してみる。このことを通して、読者諸賢の宇宙科学技術に対する理解がさらに一層深められたならば、筆者の意図は尽くされたと言ってよい。
関連書籍:
半揚先生による、より専門性の高い本も2014年に発売されている。「惑星探査機の軌道計算入門: 半揚稔雄」で飽き足らない方は、こちらもどうぞ。
「ミッション解析と軌道設計の基礎: 半揚稔雄」
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
「惑星探査機の軌道計算入門: 半揚稔雄」
序 宇宙飛翔力学とは
第1章 円錐曲線の幾何学
1.1 放物線
1.2 楕円
1.3 双曲線
1.4 円錐曲線の極方程式
第2章 ケプラー運動
2.1 速度と加速度の極座標表示
2.2 軌道の極方程式
2.3 楕円軌道
2.4 円軌道
2.5 放物線軌道
2.6 双曲線軌道
2.7 飛行時間
2.8 ケプラー方程式
2.9 経路角
第3章 軌道遷移
3.1 軌道面内の円軌道間の遷移
3.2 軌道面内の楕円軌道間の遷移
3.3 軌道面の異なる円軌道間の遷移
第4章 軌道決定
4.1 座標系と軌道要素
4.2 宇宙機や天体の位置決定
4.3 初期値からの軌道決定
4.4 弾道ミサイルの軌道決定
4.5 境界値からの軌道決定
第5章 ロケットの性能
5.1 ロケットの運動方程式
5.2 推力と比推力
5.3 ツィオルコフスキーの式
5.4 多段ロケット
5.5 ペイロード能力の簡易評価法
第6章 惑星間飛行
6.1 惑星間遷移軌道の一般的特性
6.2 スウィングバイ
6.3 冥王星探査機ニューホライズンズ
6.4 追憶:惑星探査機ボイジャーの航跡
●付録
付録A 球体の万有引力
付録B 諸定数
付録C ロケットの性能諸元
付録D ユリウス日
付録E ケプラー方程式の数値解法
付録F ランベルト問題の数値解法
内容紹介:
数値計算をしながら宇宙飛行の楽しさを味わう!人工衛星や惑星探査機における軌道計算と軌道決定のカラクリを、高校数学、物理の知識をもとに分かりやすく紹介!
2017年9月20日刊行、132ページ。
著者について:
半揚稔雄(はんよう としお)
1947年、九州生まれ。北海道札幌育ち。東京大学大学院工学系研究科航空学専門課程博士課程修了、工学博士。防衛大学校および東京大学宇宙航空研究所などで宇宙飛翔力学を研究。現在、明治大学兼任講師、成蹊大学および神奈川大学非常勤講師。
半揚先生の著書: Amazonで検索
軌道計算萌えの本が発売された。それも高校数学や物理の知識があれば学べるというから嬉しい。高校時代に関数電卓(CASIO fx-2200)やプログラム関数電卓(TI-59)を使って天文計算に熱中していた僕にとっては、青春時代のワクワク感が蘇ってくる。高校生だった僕は電卓の小さな黄色い窓の中に宇宙を見ていたのだ。1970年代から2000年頃までは天文計算、天体の軌道計算の仕方を解説する本がいくつも出版されていた。
天文計算の本: Amazonで検索
軌道計算の本: Amazonで検索
また、映画『ドリーム』の公開も9月28日に控えている。これはアメリカ南東部のラングレー研究所で計算手として3人の黒人女性が偏見や差別と戦いながら、いかにして科学史に残る偉業であるマーキュリー計画の達成に貢献したかを描いた作品だ。また、1997年に打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」は、つい先日20年におよぶミッションを終えたばかり。世間はちょっとした軌道計算ブームなのだ。(と僕は勝手に思っている。)
132ページという比較的薄い本である。理論の解説の部分は高校数学レベルの数式や説明のための図が豊富に載っている。そして、解説した数式に具体的な数値を入れて計算手順を示しているのがよいところ。これなら勘違いせずに計算を進めることができる。
章立ては次のとおり。
序 宇宙飛翔力学とは
第1章 円錐曲線の幾何学
第2章 ケプラー運動
第3章 軌道遷移
第4章 軌道決定
第5章 ロケットの性能
第6章 惑星間飛行
本書を読みながら自分で計算すれば、NASAやJAXAの計算担当になった気分が味わえる。電卓を使ってもよいし、Excelで計算するのもよいだろう。
これを機会としてブログに「天文、宇宙」というカテゴリーを新設しておいた。
本書の「はしがき」には次のように書かれている。
宇宙飛行の醍醐味は、何といっても惑星等の探査を目的とする惑星間飛行であろう。世界初の惑星探査は、1962年8月27日にアメリカが打ち上げた金星探査機マリナー2号によるものである。そして、その後の惑星探査で最も成果を挙げたのは、何と言ってもボイジャー1号、2号による木星、土星、天王星、海王星の外惑星を次々と巡る一連の探査であろう。これら2機の探査機は打ち上げから40年を経た2017年現在、太陽系から離脱しつつあるとともに、今なお観測データを送り続けている。ただ一つ残された冥王星探査は、マリナー2号の打ち上げから53年を経た2015年7月14日、探査機ニューホライズンズの接近で遂に達成されるに至った。これにより、以前に計画された太陽系における九つの惑星探査が完結したのである。(冥王星は2006年8月まで太陽系第9惑星の座にあった。)この間に、新たに水星から土星までの惑星探査と、彗星や小惑星、準惑星といった天体へ次々と探査機を送り込み、太陽系誕生の謎をとき明かそうという人類の挑戦が続いている。
マリナー2号が打ち上げられた当時、筆者は中学3年生で、宇宙飛行に関する知識を得ることも困難な時代にこれに興味を覚え、今に至っている。今日では、宇宙工学に関する邦書も多数出版されて、容易に専門的なレベルまで学べる環境が整ったと言ってよかろう。
本書では、宇宙飛翔力学の入門的な内容として「円錐曲線」、「ケプラー運動」、「軌道遷移」、そして「ロケットの性能」といった5章からなる項目を取り上げ、それぞれ数値計算を通して学ぶことから、地球近傍や太陽系規模で見たときの宇宙における距離や速度、さらに飛行時間などの物理量を肌感覚で理解できるようになることを目指している。そして、最後の総仕上げの第6章では、つい先頃行なわれた冥王星探査の立役者、探査機ニューホライズンズの惑星間遷移軌道を計算してみる。このことを通して、読者諸賢の宇宙科学技術に対する理解がさらに一層深められたならば、筆者の意図は尽くされたと言ってよい。
関連書籍:
半揚先生による、より専門性の高い本も2014年に発売されている。「惑星探査機の軌道計算入門: 半揚稔雄」で飽き足らない方は、こちらもどうぞ。
「ミッション解析と軌道設計の基礎: 半揚稔雄」
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
「惑星探査機の軌道計算入門: 半揚稔雄」
序 宇宙飛翔力学とは
第1章 円錐曲線の幾何学
1.1 放物線
1.2 楕円
1.3 双曲線
1.4 円錐曲線の極方程式
第2章 ケプラー運動
2.1 速度と加速度の極座標表示
2.2 軌道の極方程式
2.3 楕円軌道
2.4 円軌道
2.5 放物線軌道
2.6 双曲線軌道
2.7 飛行時間
2.8 ケプラー方程式
2.9 経路角
第3章 軌道遷移
3.1 軌道面内の円軌道間の遷移
3.2 軌道面内の楕円軌道間の遷移
3.3 軌道面の異なる円軌道間の遷移
第4章 軌道決定
4.1 座標系と軌道要素
4.2 宇宙機や天体の位置決定
4.3 初期値からの軌道決定
4.4 弾道ミサイルの軌道決定
4.5 境界値からの軌道決定
第5章 ロケットの性能
5.1 ロケットの運動方程式
5.2 推力と比推力
5.3 ツィオルコフスキーの式
5.4 多段ロケット
5.5 ペイロード能力の簡易評価法
第6章 惑星間飛行
6.1 惑星間遷移軌道の一般的特性
6.2 スウィングバイ
6.3 冥王星探査機ニューホライズンズ
6.4 追憶:惑星探査機ボイジャーの航跡
●付録
付録A 球体の万有引力
付録B 諸定数
付録C ロケットの性能諸元
付録D ユリウス日
付録E ケプラー方程式の数値解法
付録F ランベルト問題の数値解法