「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
内容
MITの学部学生向けの講義から生まれた教育的な弦理論の教科書。
“基礎編”では相対論的な開弦および閉弦の基本的な量子化までを丁寧に解説する。まず特殊相対論と光錐座標系、高次元時空、余剰次元のコンパクト化などの背景概念を導入し、非相対論的な弦の力学を復習する。そして相対論的な点粒子や弦の古典論を論じ、それらに対して光錐量子化を施して、Lorentz不変性の要請から弦理論の臨界次元が決まることや、弦の量子状態として光子や重力子が現れることなどを見る。最終章では超対称性を導入した超弦理論の考え方を簡潔に紹介する。
日本語版の翻訳者略歴
樺沢宇紀
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師
理数系書籍のレビュー記事は本書で236冊目。
このブログの紹介欄に「超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!」と無謀な目標を掲げてから6年以上たっている。僕のような素人でも勉強を続けていれば、現代物理学の最先端の理論を理解できるようになるのだろうか?
標準的な教科書とされている「ストリング理論:J.ポルチンスキー」をめくってみると、今の自分にはとうてい読める本ではないことがわかる。入門レベルではすまされない高度なトポロジー理論や代数学の理解が必要なので、数学的な準備にものすごく長い時間がかかりそうに思えるのだ。
しょせんアマチュアは一般読者向けに書かれた「大栗先生の超弦理論入門」や「現代物理学3大理論:Newton別冊」に甘んじているしかないのだろうか?そう思うとなんだか悔しい。
そのような失望感を払拭してくれそうな教科書がこの秋に邦訳されたのだから飛びつかずにはいられない。「MITの学部学生向けの講義から生まれた教育的な弦理論の教科書。」という触れ込みだ。そんな都合のよい教科書があるのだろうか?にわかには信じられなかった。学部学生向けとはいえ天下のMITである。半信半疑のまま読み始めたのが2週間前のことだ。
結論から言うと読んで大正解。最初から没頭することができ、最後まで熱中しながら読み終えることができた。久しぶりに興奮できた物理学の教科書だった。全体の理解度は9割を超えていたと思う。本書を翻訳していただいた樺沢先生には大感謝である。
基礎編を読むために必要な知識は学部レベルの解析力学、電磁気学、特殊相対論、量子力学、ディラック場の量子化あたりまでの場の量子論くらいで、必要な数学もそれらの分野で使われる範囲に限定される。基礎的なトポロジーは本書で説明されるので高度なトポロジー理論は知らなくても大丈夫。一般相対論は時空の計量やその添字の上げ下げの計算規則を知っていれば十分で、リーマン・テンソルは理解していなくても大丈夫だ。これらの前提知識を復習するのあれば「EMANの物理学」をお読みになるのがよい。
全体の章立ては次のとおり。(詳細目次はこの記事のいちばん下を参照。)
第1章:緒論
第2章:特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
第3章:様々な次元における電磁気学と重力
第4章:非相対論的な弦
第5章:相対論的な点粒子
第6章:相対論的な弦
第7章:弦のパラメーター付けと古典的な運動
第8章:世界面カレントと保存量
第9章:相対論的な光錐弦
第10章:各種の光錐場とボゾン
第11章:点粒子の光錐量子化
第12章:相対論的な量子開弦
第13章:相対論的な量子閉弦
第14章:超弦理論入門
第10章までは100パーセント理解できた。第11章から第14章で難易度は上がり、3回読み直したのだが理解度は80パーセント止まりというところ。全体の流れは次のようになる。
第1章:緒論
物理学における弦理論、超弦理論の意義が解説される。理論全体を俯瞰し、この理論がどこまで進んでいるのかを知ることができる。
第2章:特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
本書の第9章で導入されるのが「光錘座標」と呼ばれる座標系だ。これは特殊相対論から得られるミンコフスキー時空を基準にした座標系である。私たちが学んだ通常の4次元時空の座標系を使って表現されていた物理法則はすべてこの座標系を使って書き直される。この特殊な座標系は4次元時空で直交する空間軸と時間軸を45度回転させて得られるもので、1次元の「光錘時間軸」と3次元の「光錘空間軸」によって張られる時空間になる。これは私たちから見ると時間と空間が半分ずつ混ざり合った座標系になる。D次元の時空を考えるときは(D−1)次元の「光錘空間軸」を考えることになる。
また4次元以上の空間を考える場合、日常の3次元空間以外の次元は「余剰次元」として扱うことが説明される。この章で紹介されるのはそのうちいちばんシンプルな円筒形に丸まった1次元の余剰次元と「オービフォールド」と呼ばれるクリスマス・パーティーでかぶるとんがり帽子のような形に巻かれた形の空間だ。
そして量子力学で学ぶ「矩形井戸におけるポテンシャルの問題」はシュレーディンガー方程式を使って解くことができるわけだが、円筒形の余剰次元が存在すると、方程式がどのように変更され、余剰次元のサイズの変化がこの量子現象にどのような影響を与えるかが紹介される。
第3章:様々な次元における電磁気学と重力
これまでに学んだ物理法則は次元の数によらずに成り立つことが、電磁気学と重力の例をとって解説される。
電磁気学については2次元(平面)空間で成り立っていることが述べられているのが興味深かった。というのはこれまで僕は3次元以上の空間がないと電磁波は存在できないと思っていた。電場のベクトルと磁場のベクトル、電磁波の進行方向はそれぞれ直交する必要があると考えていたたからである。この章での解説によると2次元空間での磁場は「スカラー量」になるという。そして4次元以上の空間における電場に成り立つ「ガウスの法則」も紹介されている。
重力についてはその逆2乗則が短距離では破れている可能性が残っていることが紹介され、この前提で余剰次元のサイズや重力定数を各次元数で計算している。その結果、巻き取られた余剰次元のサイズがプランク長さ程度である必要はなく、光学顕微鏡で見えるほど大きい可能性が出てくることが解説される。これは弦理論で扱われる「弦」のサイズが同じようなオーダーのサイズであると予想される。余剰次元の次元数によっては「弦」の存在を実験で検証することができるかもしれないのだ。
第4章:非相対論的な弦
ここではじめて「弦」が導入される。この章で取り扱うのは古典力学的で非相対論的な弦だ。高校物理で学ぶ弦のイメージに近い。両端にディリクレ境界条件を課した固定端の弦とノイマン境界条件を課した自由端の弦を想定する。そしてこの弦の持つ物理的性質が明らかにされる。それは弦の長さ、張力、エネルギー、運動量、質量、横波の速度、振動数などだ。そして解析力学を使って弦のラグランジアンが求められ、最終的に「弦の運動方程式」が導出される。
第5章:相対論的な点粒子
この章は第6章に進む前の準備的な役割を果たしている。4次元時空内を運動する点粒子を相対論的、解析力学的に取り扱い、相対論的な作用や時空座標におけるパラメーター付け替えに伴う不変性、電荷の相対論的な運動方程式など、基礎的な事柄が解説されている。
第6章:相対論的な弦
この章から弦理論っぽくなってくる。とはいえここで扱っているのは第4章で紹介したのと同じ古典弦だ。しかし、この章では特殊相対論的な物理条件の制約が課され、さらにD次元時空に拡張されている。開弦と閉弦がD次元時空の中で運動することによって描かれる面(世界面)の固有面積を「作用」として利用する。(南部-後藤作用)これを出発点として第4章で求めたような弦の物理量をひとつづつ計算しなおす。その結果、自由端を持つ開弦の2つの端点はそれぞれ光速で振動しているという驚くべき結果が得られる。またこの章ではDブレーンやDpブレーンとそれに張り付く開弦の境界条件についての説明がされている。
第7章:弦のパラメーター付けと古典的な運動
弦が描く世界面上の位置はτとそれに直交するσという2つのパラメーターで指定されるが、弦によって運ばれるエネルギー密度によってσのパラメーター付けを完全に行うことができる。その結果として得られる弦の方程式の組は、波動方程式と2つの非線形な制約条件を含むものとなる。この章では開弦と閉弦について考察が行なわれる。開弦は漢数字の一のような形の弦で、閉弦は輪ゴムのように閉じた形の弦のことだ。
まず自由な端点を持つ開弦の運動を記述する一般解を求める。次に閉弦の自由な時間発展を調べ、弦の上に「尖点」が現れては消失するという性質が一般的に見られることが示される。そして最後に宇宙弦(宇宙紐)と、それによって生じる重力レンズ効果について解説されている。
第8章:世界面カレントと保存量
力学系において対称性と保存量は密接に関係している。この章では弦のラグランジアンにLorentz対称性を要請することで弦理論において弦が描く2次元の世界面にカレントが存在することを計算で示し、このカレントによって保存されるチャージが弦の自由な運動を特徴づける鍵となっていることを学ぶ。
第9章:相対論的な光錐弦
この章から光錘座標系をとったゲージを導入し、世界面に対するパラメーター付けの方法を適切な形で固定する。その結果、弦の座標に対するひと組の制約条件が導かれ、運動方程式として波動方程式が導かれる。光錘ゲージでの「X+座標」がτに比例するように設定することで、完全な運動方程式の解を得ることができる。光錘ゲージにおいて弦の力学は横方向の運動と、光錘ゼロモードに関する2つの値によって決まる。また「X−座標」の振動モードの2次の項の組み合わせとして「横方向のVirasoroモード」が得られ、任意の形の弦の質量を計算することができるようになる。
第10章:各種の光錐場とボゾン
この章では「弦」をいったん離れ、弦理論以前の通常の物理学で学んだスカラー場、Maxwell場、重力場の古典的な運動方程式を学ぶ。そして光錘ゲージを採用することでそれらの運動方程式に対する平面波解と、それらをそれぞれ特徴づける自由度の数を計算する。次にそのような古典場を量子化することでスカラー粒子、光子、重力子などの粒子状態が得られることが導かれる。またその計算を行なう中で、後の章で解説される相対論的な弦の量子状態とこれらのボゾンを同定するための準備が行われる。
この章で考察されるのはD次元の場である。Maxwell場によって導かれる1光子状態ではその偏向状態が(D−2)種類あることが示される。また重力場についても、その自由度は4次元時空において2個、5次元時空では5個、10次元時空では35個、26次元時空では299個であることが計算によって示される。
第11章:点粒子の光錐量子化
D次元時空における量子力学を光錘ゲージで記述するのがこの章で行なうことだ。弦を量子化するための準備として、この章では相対論的な点粒子の光錘ゲージによる量子化を学ぶ。そのためにはハイゼンベルグ演算子が古典的な運動方程式を満たすという要請において量子論を構築する。相対論的な点粒子の量子状態は、量子スカラー場の1粒子状態に対応することが示される。さらに、波動関数を与えるシュレーディンガー方程式が、古典的なスカラー場の方程式に一致することがわかる。最後に光錘ゲージのLorentz生成子を構築する。
第12章:相対論的な量子開弦
超弦理論は量子力学と重力理論を含むものであることは一般向けの本でも紹介されているが、どのような形で量子力学が含まれているのかを想像することは難しい。この章に至ってやっと弦理論が量子化されるのだ。
この章では相対論的な開弦を量子化する。交換関係を構築するために光錘ゲージを採用し、ハイゼンベルグ描像のハミルトニアンを定義する。その結果、無限個の生成・消滅演算子の組を見出すことになるが、それらはひとつの整数とひとつの横方向ベクトルの添字によって識別される。「X−方向」の振動子は横方向のVirasoro演算子の形で与えられる。量子論の定義において遭遇するさまざまな曖昧さは、理論にLorentz不変性を要請することによって解消される。時空次元の数は26に確定し、弦の質量の式は、そのスペクトルが質量のない光子状態を許容するように古典的な式から修正される。弦のスペクトルは超光速で運動するタキオン状態も含んでいるが、これを採用するとD25-ブレインが不安定であることが示される。
弦理論の次元数が26であることは「大栗先生の超弦理論入門」でも計算手順が示されているが、この教科書での導出手順のほうが難しかった。けれども次元の数という大域的な数値が弦の量子化というミクロの世界での制約によって導かれることが僕には不思議なことのように思えた。
量子力学によって素粒子の波動的描像と粒子的描像の両方が示される。弦理論で素粒子があらわされる理由は弦の量子的な波動(振動)が粒子的描像に同一視されることによるものだ。量子弦において粒子の無限個の生成・消滅演算子の組が見出されることは、この理論が無限種類の素粒子を記述できることを示している。
第13章:相対論的な量子閉弦
量子閉弦に関わる演算子の内容は、ゼロモードの位置と運動量が共有されるという点を除き、開弦の演算子の相互に可換な複製2組から成るものとしてとらえることができる。閉弦は光錘ゲージにおいても、パラメーター付け替え不変性の自由度が完全に固定されるわけではない。つまり閉弦には、始点を選ぶ自然な方法がない。その結果、閉弦の巡回的な回転の下で不変な状態だけが許容されることになる。この章では閉弦の無質量状態が重力子状態を含んでおり、弦理論が量子重力理論となり得ることが示される。また、無質量のKalb-Ramond状態とディラトン状態の存在も導かれる。ディラトン状態は弦の相互作用を制御するものと解釈される。
第14章:超弦理論入門
基礎編の最後の章でようやく超弦理論が紹介される。現実的な弦理論は、電子やクォークのようなフェルミオンに対応する粒子状態も含んでいる必要がある。超弦は、弦の位置を記述するための可換な座標変数X^μに加えて反可換な力学変数(グラスマン数)も備えている。開弦については、それを量子化することによってNeveu-Schwarz (NS)セクターと呼ばれるボゾン的な部分空間と、Ramond (R)セクターと呼ばれるフェルミオン的な状態を持つ部分空間から成る状態空間が与えられる。この理論は、ボゾン的な自由度とフェルミオン的な自由度が、任意の質量レベルにおいて同じであることを保証するような対称性、すなわち超対称性を備えている。さらにこの章ではIIA型とIIB型の閉弦理論を調べる、これには開いた超弦の状態空間を取捨選択して組み合わせることによって得られる理論だ。
そしてこの章では超弦理論が成り立つ時空の次元数が10であることが示されるほか、Neveu-Schwarz (NS)セクターと、Ramond (R)セクターについて、それぞれ弦の振動の状態数(=表現し得る粒子の種類数)がとても大きな数になることが、具体的な計算で示される。ただ基礎編ではカラビ-ヤウ空間が紹介されないので、10の500乗とも言われる超弦理論の持つ自由度が計算されるわけではない。
この章の最後では、IIA型、IIB型のほかにどのようにしてE8xE8ヘテロ型、SO(32)ヘテロ型、I型の超弦理論が導かれるか、それらの弦の結合を無限大に取った極限(T双対性やS双対性)からM理論と呼ばれる11次元時空の膜の理論が得られることが解説されている。しかし26次元の弦理論も含めてそれら6つの理論を統一する理論の中央部は、まだわかっていないのだ。
以上が基礎編のあらましである。「弦」という新しい要素を出発点に置き、これまで人類が発見してきた物理法則を制約条件として順番に適用することで、これまでとは少し違った物理世界の姿が少しずつ明らかになっていくのだ。このような形で新しい世界が再構築されていく姿を目の当たりにすると自分が世界の創造主になったような感覚にとらわれる。これが超弦理論を学ぶ醍醐味なのだ。
あと気が付いたことがひとつある。余剰次元のコンパクト化は第2章や第3章で例示されているが、基礎編全体を通してみるとコンパクト化されていない余剰次元として計算が行なわれている。つまり余剰次元がコンパクト化されていなくても理論は成り立っているわけで、コンパクト化を想定する根拠が希薄に思えることだ。コンパクト化されない場合「大きい余剰次元」が存在する根拠もなくなってwしまう。余剰次元のコンパクト化の根拠について注意しながら発展編を読んでみたい。
数式の導出は章が進むにつれて難しくなる。けれども、最終的に得られる結果は案外シンプルな数式になるので、途中で計算についていけなくなっても、数式から読み取れる物理的解釈は理解することができる。つまり、落ちこぼれを救うしくみが本書には内蔵されているのだ。各章末に設けられた「問題」も本書の理解を深める上で役に立つ。ただし解答は与えられてない。
翻訳の元となったのは2009年1月に刊行された次の本で、これが第2版である。
「A First Course in String Theory: Barton Zwiebach」
この第2版ではAdS/CFT対応、超弦理論 、orbifold、宇宙ひも、ひも理論のランドスケープ などを新しく網羅したという。
「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
関連記事:
発売情報:初級講座弦理論 基礎編、発展編:B.ツヴィーバッハ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8acd8a8c69f88d687ccd0290421c6d86
販売状況:日本語の超弦理論・M理論の教科書
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61e4dd2232d54cf4a5f3da1aeb83975a
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「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
序
初版への前書き
第2版への前書き
第1章:緒論
- 統一理論への道
- 物理学の統一理論としての弦理論
- 弦理論とその検証
- 展望と概観
第2章:特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
- 単位系と理論のパラメーター
- 不変距離とLorentz変換
- 光錘座標
- 相対論的なエネルギーと運動量
- 光錘座標系のエネルギーと運動量
- 余剰次元とLorentz不変性
- コンパクト化した余剰次元
- オービフォールド
- 量子力学と矩形井戸
- 余剰次元を伴う句形井戸
第3章:様々な次元における電磁気学と重力
- 古典電磁力学
- 3次元時空の電磁気学
- 相対論的な電磁力学
- 高次元の球面
- 高次元における電場
- 重力とPlanck長さ
- 重力ポテンシャル
- 次元とPlanck長さ
- 重力定数とコンパクト化
- 大きな余剰次元
第4章:非相対論的な弦
- 横方向の振動に関する運動方程式
- 境界条件と初期条件
- 横方向振動の振動数
- より一般的な弦の振動
- ラグランジアン力学の復習
- 非相対論的な弦のラグランジアン
第5章:相対論的な点粒子
- 相対論的な点粒子の作用
- パラメーター付け替え不変性
- 運動方程式
- 電荷を持つ相対論的な粒子
第6章:相対論的な弦
- 空間内の面に関する面積汎関数
- 面積のパラメーター付け替え不変性
- 時空内の面に関する面積汎関数
- 南部-後藤作用
- 運動方程式、境界条件、D-ブレイン
- 静的ゲージ
- 弦の張力とエネルギー
- 横方向速度から見た作用
- 自由な開弦の端点の運動
第7章:弦のパラメーター付けと古典的な運動
- σのパラメーター付けの選択
- 弦の運動方程式の物理的な解釈
- 波動方程式と制約条件
- 開弦の一般的な運動
- 閉弦の運動と尖点
- 宇宙弦(宇宙紐)
第8章:世界面カレントと保存量
- 電荷の保存
- ラグランジアンの対称性とチャージの保存
- 世界面において保存するカレント
- 全運動量カレント
- Lorentz対称性とカレント
- 勾配パラメーターα’
第9章:相対論的な光錐弦
- τの選択の方法
- σのパラメーター付け
- パラメーター付けの制約条件と波動方程式
- 波動方程式とモード展開
- 運動方程式の光錘解
第10章:各種の光錐場とボゾン
- 序論
- スカラー場の作用
- スカラー場の古典的な平面波解
- スカラー場の量子化と粒子状態
- Maxwell場と光子状態
- 重力場と重力子状態
第11章:点粒子の光錐量子化
- 光錘粒子
- Heisenberg描像とSchodinger描像
- 量子力学的な点粒子とスカラー粒子
- 光錘運動量演算子
- 光錘Lorentz生成子
第12章:相対論的な量子開弦
- 光錘ハミルトニアンと交換子
- 振動子の交換関係
- 調和振動子群としての弦
- 横方向のVirasoro演算子
- Lorentz生成子
- 状態空間の構築
- 運動方程式
- タキオンとD-ブレイン崩壊
第13章:相対論的な量子閉弦
- モード展開と交換関係
- 閉弦のVirasoro演算子
- 閉弦の状態空間
- 弦の結合とディラトン
- R^1/Z_2オービフォールドにおける閉弦
- オービフォールドにおけるツイストしたセクター
第14章:超弦理論入門
- 序論
- 反可換な変数と演算子
- 世界面フェルミオン
- Neveu-Schwarzセクター
- Ramondセクター
- 状態の勘定
- 開いた超弦
- 閉じた超弦
内容
MITの学部学生向けの講義から生まれた教育的な弦理論の教科書。
“基礎編”では相対論的な開弦および閉弦の基本的な量子化までを丁寧に解説する。まず特殊相対論と光錐座標系、高次元時空、余剰次元のコンパクト化などの背景概念を導入し、非相対論的な弦の力学を復習する。そして相対論的な点粒子や弦の古典論を論じ、それらに対して光錐量子化を施して、Lorentz不変性の要請から弦理論の臨界次元が決まることや、弦の量子状態として光子や重力子が現れることなどを見る。最終章では超対称性を導入した超弦理論の考え方を簡潔に紹介する。
日本語版の翻訳者略歴
樺沢宇紀
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師
理数系書籍のレビュー記事は本書で236冊目。
このブログの紹介欄に「超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!」と無謀な目標を掲げてから6年以上たっている。僕のような素人でも勉強を続けていれば、現代物理学の最先端の理論を理解できるようになるのだろうか?
標準的な教科書とされている「ストリング理論:J.ポルチンスキー」をめくってみると、今の自分にはとうてい読める本ではないことがわかる。入門レベルではすまされない高度なトポロジー理論や代数学の理解が必要なので、数学的な準備にものすごく長い時間がかかりそうに思えるのだ。
しょせんアマチュアは一般読者向けに書かれた「大栗先生の超弦理論入門」や「現代物理学3大理論:Newton別冊」に甘んじているしかないのだろうか?そう思うとなんだか悔しい。
そのような失望感を払拭してくれそうな教科書がこの秋に邦訳されたのだから飛びつかずにはいられない。「MITの学部学生向けの講義から生まれた教育的な弦理論の教科書。」という触れ込みだ。そんな都合のよい教科書があるのだろうか?にわかには信じられなかった。学部学生向けとはいえ天下のMITである。半信半疑のまま読み始めたのが2週間前のことだ。
結論から言うと読んで大正解。最初から没頭することができ、最後まで熱中しながら読み終えることができた。久しぶりに興奮できた物理学の教科書だった。全体の理解度は9割を超えていたと思う。本書を翻訳していただいた樺沢先生には大感謝である。
基礎編を読むために必要な知識は学部レベルの解析力学、電磁気学、特殊相対論、量子力学、ディラック場の量子化あたりまでの場の量子論くらいで、必要な数学もそれらの分野で使われる範囲に限定される。基礎的なトポロジーは本書で説明されるので高度なトポロジー理論は知らなくても大丈夫。一般相対論は時空の計量やその添字の上げ下げの計算規則を知っていれば十分で、リーマン・テンソルは理解していなくても大丈夫だ。これらの前提知識を復習するのあれば「EMANの物理学」をお読みになるのがよい。
全体の章立ては次のとおり。(詳細目次はこの記事のいちばん下を参照。)
第1章:緒論
第2章:特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
第3章:様々な次元における電磁気学と重力
第4章:非相対論的な弦
第5章:相対論的な点粒子
第6章:相対論的な弦
第7章:弦のパラメーター付けと古典的な運動
第8章:世界面カレントと保存量
第9章:相対論的な光錐弦
第10章:各種の光錐場とボゾン
第11章:点粒子の光錐量子化
第12章:相対論的な量子開弦
第13章:相対論的な量子閉弦
第14章:超弦理論入門
第10章までは100パーセント理解できた。第11章から第14章で難易度は上がり、3回読み直したのだが理解度は80パーセント止まりというところ。全体の流れは次のようになる。
第1章:緒論
物理学における弦理論、超弦理論の意義が解説される。理論全体を俯瞰し、この理論がどこまで進んでいるのかを知ることができる。
第2章:特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
本書の第9章で導入されるのが「光錘座標」と呼ばれる座標系だ。これは特殊相対論から得られるミンコフスキー時空を基準にした座標系である。私たちが学んだ通常の4次元時空の座標系を使って表現されていた物理法則はすべてこの座標系を使って書き直される。この特殊な座標系は4次元時空で直交する空間軸と時間軸を45度回転させて得られるもので、1次元の「光錘時間軸」と3次元の「光錘空間軸」によって張られる時空間になる。これは私たちから見ると時間と空間が半分ずつ混ざり合った座標系になる。D次元の時空を考えるときは(D−1)次元の「光錘空間軸」を考えることになる。
また4次元以上の空間を考える場合、日常の3次元空間以外の次元は「余剰次元」として扱うことが説明される。この章で紹介されるのはそのうちいちばんシンプルな円筒形に丸まった1次元の余剰次元と「オービフォールド」と呼ばれるクリスマス・パーティーでかぶるとんがり帽子のような形に巻かれた形の空間だ。
そして量子力学で学ぶ「矩形井戸におけるポテンシャルの問題」はシュレーディンガー方程式を使って解くことができるわけだが、円筒形の余剰次元が存在すると、方程式がどのように変更され、余剰次元のサイズの変化がこの量子現象にどのような影響を与えるかが紹介される。
第3章:様々な次元における電磁気学と重力
これまでに学んだ物理法則は次元の数によらずに成り立つことが、電磁気学と重力の例をとって解説される。
電磁気学については2次元(平面)空間で成り立っていることが述べられているのが興味深かった。というのはこれまで僕は3次元以上の空間がないと電磁波は存在できないと思っていた。電場のベクトルと磁場のベクトル、電磁波の進行方向はそれぞれ直交する必要があると考えていたたからである。この章での解説によると2次元空間での磁場は「スカラー量」になるという。そして4次元以上の空間における電場に成り立つ「ガウスの法則」も紹介されている。
重力についてはその逆2乗則が短距離では破れている可能性が残っていることが紹介され、この前提で余剰次元のサイズや重力定数を各次元数で計算している。その結果、巻き取られた余剰次元のサイズがプランク長さ程度である必要はなく、光学顕微鏡で見えるほど大きい可能性が出てくることが解説される。これは弦理論で扱われる「弦」のサイズが同じようなオーダーのサイズであると予想される。余剰次元の次元数によっては「弦」の存在を実験で検証することができるかもしれないのだ。
第4章:非相対論的な弦
ここではじめて「弦」が導入される。この章で取り扱うのは古典力学的で非相対論的な弦だ。高校物理で学ぶ弦のイメージに近い。両端にディリクレ境界条件を課した固定端の弦とノイマン境界条件を課した自由端の弦を想定する。そしてこの弦の持つ物理的性質が明らかにされる。それは弦の長さ、張力、エネルギー、運動量、質量、横波の速度、振動数などだ。そして解析力学を使って弦のラグランジアンが求められ、最終的に「弦の運動方程式」が導出される。
第5章:相対論的な点粒子
この章は第6章に進む前の準備的な役割を果たしている。4次元時空内を運動する点粒子を相対論的、解析力学的に取り扱い、相対論的な作用や時空座標におけるパラメーター付け替えに伴う不変性、電荷の相対論的な運動方程式など、基礎的な事柄が解説されている。
第6章:相対論的な弦
この章から弦理論っぽくなってくる。とはいえここで扱っているのは第4章で紹介したのと同じ古典弦だ。しかし、この章では特殊相対論的な物理条件の制約が課され、さらにD次元時空に拡張されている。開弦と閉弦がD次元時空の中で運動することによって描かれる面(世界面)の固有面積を「作用」として利用する。(南部-後藤作用)これを出発点として第4章で求めたような弦の物理量をひとつづつ計算しなおす。その結果、自由端を持つ開弦の2つの端点はそれぞれ光速で振動しているという驚くべき結果が得られる。またこの章ではDブレーンやDpブレーンとそれに張り付く開弦の境界条件についての説明がされている。
第7章:弦のパラメーター付けと古典的な運動
弦が描く世界面上の位置はτとそれに直交するσという2つのパラメーターで指定されるが、弦によって運ばれるエネルギー密度によってσのパラメーター付けを完全に行うことができる。その結果として得られる弦の方程式の組は、波動方程式と2つの非線形な制約条件を含むものとなる。この章では開弦と閉弦について考察が行なわれる。開弦は漢数字の一のような形の弦で、閉弦は輪ゴムのように閉じた形の弦のことだ。
まず自由な端点を持つ開弦の運動を記述する一般解を求める。次に閉弦の自由な時間発展を調べ、弦の上に「尖点」が現れては消失するという性質が一般的に見られることが示される。そして最後に宇宙弦(宇宙紐)と、それによって生じる重力レンズ効果について解説されている。
第8章:世界面カレントと保存量
力学系において対称性と保存量は密接に関係している。この章では弦のラグランジアンにLorentz対称性を要請することで弦理論において弦が描く2次元の世界面にカレントが存在することを計算で示し、このカレントによって保存されるチャージが弦の自由な運動を特徴づける鍵となっていることを学ぶ。
第9章:相対論的な光錐弦
この章から光錘座標系をとったゲージを導入し、世界面に対するパラメーター付けの方法を適切な形で固定する。その結果、弦の座標に対するひと組の制約条件が導かれ、運動方程式として波動方程式が導かれる。光錘ゲージでの「X+座標」がτに比例するように設定することで、完全な運動方程式の解を得ることができる。光錘ゲージにおいて弦の力学は横方向の運動と、光錘ゼロモードに関する2つの値によって決まる。また「X−座標」の振動モードの2次の項の組み合わせとして「横方向のVirasoroモード」が得られ、任意の形の弦の質量を計算することができるようになる。
第10章:各種の光錐場とボゾン
この章では「弦」をいったん離れ、弦理論以前の通常の物理学で学んだスカラー場、Maxwell場、重力場の古典的な運動方程式を学ぶ。そして光錘ゲージを採用することでそれらの運動方程式に対する平面波解と、それらをそれぞれ特徴づける自由度の数を計算する。次にそのような古典場を量子化することでスカラー粒子、光子、重力子などの粒子状態が得られることが導かれる。またその計算を行なう中で、後の章で解説される相対論的な弦の量子状態とこれらのボゾンを同定するための準備が行われる。
この章で考察されるのはD次元の場である。Maxwell場によって導かれる1光子状態ではその偏向状態が(D−2)種類あることが示される。また重力場についても、その自由度は4次元時空において2個、5次元時空では5個、10次元時空では35個、26次元時空では299個であることが計算によって示される。
第11章:点粒子の光錐量子化
D次元時空における量子力学を光錘ゲージで記述するのがこの章で行なうことだ。弦を量子化するための準備として、この章では相対論的な点粒子の光錘ゲージによる量子化を学ぶ。そのためにはハイゼンベルグ演算子が古典的な運動方程式を満たすという要請において量子論を構築する。相対論的な点粒子の量子状態は、量子スカラー場の1粒子状態に対応することが示される。さらに、波動関数を与えるシュレーディンガー方程式が、古典的なスカラー場の方程式に一致することがわかる。最後に光錘ゲージのLorentz生成子を構築する。
第12章:相対論的な量子開弦
超弦理論は量子力学と重力理論を含むものであることは一般向けの本でも紹介されているが、どのような形で量子力学が含まれているのかを想像することは難しい。この章に至ってやっと弦理論が量子化されるのだ。
この章では相対論的な開弦を量子化する。交換関係を構築するために光錘ゲージを採用し、ハイゼンベルグ描像のハミルトニアンを定義する。その結果、無限個の生成・消滅演算子の組を見出すことになるが、それらはひとつの整数とひとつの横方向ベクトルの添字によって識別される。「X−方向」の振動子は横方向のVirasoro演算子の形で与えられる。量子論の定義において遭遇するさまざまな曖昧さは、理論にLorentz不変性を要請することによって解消される。時空次元の数は26に確定し、弦の質量の式は、そのスペクトルが質量のない光子状態を許容するように古典的な式から修正される。弦のスペクトルは超光速で運動するタキオン状態も含んでいるが、これを採用するとD25-ブレインが不安定であることが示される。
弦理論の次元数が26であることは「大栗先生の超弦理論入門」でも計算手順が示されているが、この教科書での導出手順のほうが難しかった。けれども次元の数という大域的な数値が弦の量子化というミクロの世界での制約によって導かれることが僕には不思議なことのように思えた。
量子力学によって素粒子の波動的描像と粒子的描像の両方が示される。弦理論で素粒子があらわされる理由は弦の量子的な波動(振動)が粒子的描像に同一視されることによるものだ。量子弦において粒子の無限個の生成・消滅演算子の組が見出されることは、この理論が無限種類の素粒子を記述できることを示している。
第13章:相対論的な量子閉弦
量子閉弦に関わる演算子の内容は、ゼロモードの位置と運動量が共有されるという点を除き、開弦の演算子の相互に可換な複製2組から成るものとしてとらえることができる。閉弦は光錘ゲージにおいても、パラメーター付け替え不変性の自由度が完全に固定されるわけではない。つまり閉弦には、始点を選ぶ自然な方法がない。その結果、閉弦の巡回的な回転の下で不変な状態だけが許容されることになる。この章では閉弦の無質量状態が重力子状態を含んでおり、弦理論が量子重力理論となり得ることが示される。また、無質量のKalb-Ramond状態とディラトン状態の存在も導かれる。ディラトン状態は弦の相互作用を制御するものと解釈される。
第14章:超弦理論入門
基礎編の最後の章でようやく超弦理論が紹介される。現実的な弦理論は、電子やクォークのようなフェルミオンに対応する粒子状態も含んでいる必要がある。超弦は、弦の位置を記述するための可換な座標変数X^μに加えて反可換な力学変数(グラスマン数)も備えている。開弦については、それを量子化することによってNeveu-Schwarz (NS)セクターと呼ばれるボゾン的な部分空間と、Ramond (R)セクターと呼ばれるフェルミオン的な状態を持つ部分空間から成る状態空間が与えられる。この理論は、ボゾン的な自由度とフェルミオン的な自由度が、任意の質量レベルにおいて同じであることを保証するような対称性、すなわち超対称性を備えている。さらにこの章ではIIA型とIIB型の閉弦理論を調べる、これには開いた超弦の状態空間を取捨選択して組み合わせることによって得られる理論だ。
そしてこの章では超弦理論が成り立つ時空の次元数が10であることが示されるほか、Neveu-Schwarz (NS)セクターと、Ramond (R)セクターについて、それぞれ弦の振動の状態数(=表現し得る粒子の種類数)がとても大きな数になることが、具体的な計算で示される。ただ基礎編ではカラビ-ヤウ空間が紹介されないので、10の500乗とも言われる超弦理論の持つ自由度が計算されるわけではない。
この章の最後では、IIA型、IIB型のほかにどのようにしてE8xE8ヘテロ型、SO(32)ヘテロ型、I型の超弦理論が導かれるか、それらの弦の結合を無限大に取った極限(T双対性やS双対性)からM理論と呼ばれる11次元時空の膜の理論が得られることが解説されている。しかし26次元の弦理論も含めてそれら6つの理論を統一する理論の中央部は、まだわかっていないのだ。
以上が基礎編のあらましである。「弦」という新しい要素を出発点に置き、これまで人類が発見してきた物理法則を制約条件として順番に適用することで、これまでとは少し違った物理世界の姿が少しずつ明らかになっていくのだ。このような形で新しい世界が再構築されていく姿を目の当たりにすると自分が世界の創造主になったような感覚にとらわれる。これが超弦理論を学ぶ醍醐味なのだ。
あと気が付いたことがひとつある。余剰次元のコンパクト化は第2章や第3章で例示されているが、基礎編全体を通してみるとコンパクト化されていない余剰次元として計算が行なわれている。つまり余剰次元がコンパクト化されていなくても理論は成り立っているわけで、コンパクト化を想定する根拠が希薄に思えることだ。コンパクト化されない場合「大きい余剰次元」が存在する根拠もなくなってwしまう。余剰次元のコンパクト化の根拠について注意しながら発展編を読んでみたい。
数式の導出は章が進むにつれて難しくなる。けれども、最終的に得られる結果は案外シンプルな数式になるので、途中で計算についていけなくなっても、数式から読み取れる物理的解釈は理解することができる。つまり、落ちこぼれを救うしくみが本書には内蔵されているのだ。各章末に設けられた「問題」も本書の理解を深める上で役に立つ。ただし解答は与えられてない。
翻訳の元となったのは2009年1月に刊行された次の本で、これが第2版である。
「A First Course in String Theory: Barton Zwiebach」
この第2版ではAdS/CFT対応、超弦理論 、orbifold、宇宙ひも、ひも理論のランドスケープ などを新しく網羅したという。
「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
関連記事:
発売情報:初級講座弦理論 基礎編、発展編:B.ツヴィーバッハ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8acd8a8c69f88d687ccd0290421c6d86
販売状況:日本語の超弦理論・M理論の教科書
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61e4dd2232d54cf4a5f3da1aeb83975a
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「初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ」
序
初版への前書き
第2版への前書き
第1章:緒論
- 統一理論への道
- 物理学の統一理論としての弦理論
- 弦理論とその検証
- 展望と概観
第2章:特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
- 単位系と理論のパラメーター
- 不変距離とLorentz変換
- 光錘座標
- 相対論的なエネルギーと運動量
- 光錘座標系のエネルギーと運動量
- 余剰次元とLorentz不変性
- コンパクト化した余剰次元
- オービフォールド
- 量子力学と矩形井戸
- 余剰次元を伴う句形井戸
第3章:様々な次元における電磁気学と重力
- 古典電磁力学
- 3次元時空の電磁気学
- 相対論的な電磁力学
- 高次元の球面
- 高次元における電場
- 重力とPlanck長さ
- 重力ポテンシャル
- 次元とPlanck長さ
- 重力定数とコンパクト化
- 大きな余剰次元
第4章:非相対論的な弦
- 横方向の振動に関する運動方程式
- 境界条件と初期条件
- 横方向振動の振動数
- より一般的な弦の振動
- ラグランジアン力学の復習
- 非相対論的な弦のラグランジアン
第5章:相対論的な点粒子
- 相対論的な点粒子の作用
- パラメーター付け替え不変性
- 運動方程式
- 電荷を持つ相対論的な粒子
第6章:相対論的な弦
- 空間内の面に関する面積汎関数
- 面積のパラメーター付け替え不変性
- 時空内の面に関する面積汎関数
- 南部-後藤作用
- 運動方程式、境界条件、D-ブレイン
- 静的ゲージ
- 弦の張力とエネルギー
- 横方向速度から見た作用
- 自由な開弦の端点の運動
第7章:弦のパラメーター付けと古典的な運動
- σのパラメーター付けの選択
- 弦の運動方程式の物理的な解釈
- 波動方程式と制約条件
- 開弦の一般的な運動
- 閉弦の運動と尖点
- 宇宙弦(宇宙紐)
第8章:世界面カレントと保存量
- 電荷の保存
- ラグランジアンの対称性とチャージの保存
- 世界面において保存するカレント
- 全運動量カレント
- Lorentz対称性とカレント
- 勾配パラメーターα’
第9章:相対論的な光錐弦
- τの選択の方法
- σのパラメーター付け
- パラメーター付けの制約条件と波動方程式
- 波動方程式とモード展開
- 運動方程式の光錘解
第10章:各種の光錐場とボゾン
- 序論
- スカラー場の作用
- スカラー場の古典的な平面波解
- スカラー場の量子化と粒子状態
- Maxwell場と光子状態
- 重力場と重力子状態
第11章:点粒子の光錐量子化
- 光錘粒子
- Heisenberg描像とSchodinger描像
- 量子力学的な点粒子とスカラー粒子
- 光錘運動量演算子
- 光錘Lorentz生成子
第12章:相対論的な量子開弦
- 光錘ハミルトニアンと交換子
- 振動子の交換関係
- 調和振動子群としての弦
- 横方向のVirasoro演算子
- Lorentz生成子
- 状態空間の構築
- 運動方程式
- タキオンとD-ブレイン崩壊
第13章:相対論的な量子閉弦
- モード展開と交換関係
- 閉弦のVirasoro演算子
- 閉弦の状態空間
- 弦の結合とディラトン
- R^1/Z_2オービフォールドにおける閉弦
- オービフォールドにおけるツイストしたセクター
第14章:超弦理論入門
- 序論
- 反可換な変数と演算子
- 世界面フェルミオン
- Neveu-Schwarzセクター
- Ramondセクター
- 状態の勘定
- 開いた超弦
- 閉じた超弦