金曜の夜、仕事を終えて何気にツイッターを見ていたら、このお知らせに気が付いた。
「2017年度 理系交流会」(@RikeiPlus)
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画像には大学生・大学院生が対象と書いてあるが、紹介文の下のほうには社会人も参加可能と書かれている。面白そうだ。参加してみようかという気持ちがムクムクと湧いてきた。
公私ともに日頃僕の周りにいる人たちは学生も含めて非理数系の人ばかり。大学を卒業してからずっとそうなのだ。たまに行く一般人向けの物理学講座で知り合うのは40歳から70歳くらいまでの人たちばかり。
現代の理系大学生って昔と違うのだろうか?「とね日記」のことはどれくらいの人が知っているだろうか?いろいろな疑問が湧いてくる。また、社会人になっても趣味で物理や数学の勉強をしたり、理系ライフを楽しんでいる人がたくさんいることを伝えておきたいし。
社会人もOKとはいえ、これまで開催したときの写真で大学生からせいぜい30歳くらいまでの集いであることがわかる。ほとんど僕の息子や娘の世代ばかりだ。でもなんだか楽しそう。浮いちゃうだろうなーと思ったが好奇心には勝てなかった。申し込みボタンをクリック。
僕は大学で数学を専攻したものの、社会に出てIT企業に勤めて20年間は理系とは無縁の生活を送ってきた。10年ほど前になって趣味で物理や数学の勉強を始めただけである。参加する学生たちのように理系生活の真っただ中にいるわけではない。
会場は代々木の「国立オリンピック記念 青少年総合センター」だ。この施設にははるか昔に一度だけ来たことがある。大学1年の秋、1983年10月10日。それは故浦口明憲さんが開催した「秋の1日点字講習会」に参加したときのこと。その後、僕は大学4年になるまで当時36歳でデパート勤務の会社員だった浦口さんに視覚障碍者のための福祉活動を通して可愛がっていただいていた。といっても僕はボランティア活動に熱心だったわけではない。数学点字のことも含めて6ビットで情報伝達する点字のしくみに興味があっただけである。(参考記事:「視覚障害者が読める理数系書籍や学習環境について」、「宇宙の形、ガウスの曲面論と内在幾何(第1回)」)
月に一度ほど新宿西口の思い出横丁で浦口さんの点訳サークル設立、パソコン点訳や拡大写本への取り組みにかける熱い想いを聞くのが僕の役目だった。僕の就職活動を機にお会いすることがなくなり、就職して忙殺されるうちに浦口さんのことを忘れていった。ふと思い出して最後にお会いしたのは2005年のこと。浦口さんが癌で2007年にお亡くなりになっていたことを2010年頃にたまたま見つけたホームページで知り、恩返しをすることもできずに疎遠になっていたことついて申し訳ない気持ちになった。浦口さんや僕の点訳ボランティアのことは今日の記事の趣旨から脱線するので、詳しいことは後日別の記事で書くことにしよう。
前回訪れた1983年10月10日も今日のように快晴だった。ただし建物は今のように新しくはなく、1964年の東京オリンピックの選手村で使われた当時の施設が利用されていた時代だ。今回の理系交流会のように民間人への施設貸出も行われていた。
1980年頃の入口
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現在の入口(以下の写真はクリックで拡大する)
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今回の会場は研修棟だ。この巨大な建物の4階。建物の前は子供向けのイベントで盛り上がっていた。
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会場の416号室は300人くらい入れそうな大きな部屋だった。テーブルとイスは部屋の後方に寄せられ、参加者は前半分に置かれた6つのテーブルにそれぞれ6~7人ずつ着席する。もちろん僕はずば抜けて最年長者である。
このような催しに参加する学生は大学のブランドの優劣に関係なく「意識高い系」である。女子学生は1割ほど。その場の空気は理系人たちの集いであることがすぐわかるほど「特殊」だった。ふだん理系人と接しない僕にはとてもよくわかる。大学生の頃に周囲にいた学友たちと同じオーラを発散する若者ばかりだ。
午後1時半から4時過ぎまで催しは続いた。その間、席の交換は1度行われたので全参加者(60名ほど)のうち、最低14人くらいとは言葉を交わすことになる。様子はこのような感じだ。主催者のおひとり横山明日希さん(別名「数学のお兄さん」@asunokibou)が撮影した写真を許可を得た上で載せさせていただくことにする。
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また、フリータイムが設けられ、部屋の中ほどのドリンクスペースのまわりで自由に相手を選んで話すこともできた。各人は大学名(あるいは会社名)と氏名が書かれた名札をつけている。
理系といっても物理や数学専攻の人はほんの一部だ。誰にとってもそれは同じことで、自分の専門以外の相手と話すことになる。最初のテーブルでは1分間の自己紹介タイムがあり、その後は「理系の好きなところ」、「理系の課題点やその解決案」などテーマを決めて自分の経験を交えて話すことになる。ひと区切りついたところで、司会の横山さんが全体を仕切り、テーブル毎にどのようなことが話題に上がったかを発表するという段取りで進んだ。
座席交換をした後は、まったく違う人たちと話すことになる。忘れてしまったテーマもあるが「超個人的に理系で好きなこと、楽しいこと」というテーマが強烈だった。自分の変人ぶりをいかんなく自慢するための時間だ。
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結局2つのテーブルやフリータイムで、僕は東大農学部の修士で稲の遺伝子の発現の研究をされている男性、7月にネット関連企業を立ち上げる予定の男性、早稲田大学卒業で9月からフランスで金属材料系の研究生活を送る男性、理化学研究所で勤務予定の女性、プログラミングなどソフトウェア技術を学んでいる男性、細胞生物学の修士の女性で食育サポーターをしている女性、薬学部卒で理系+のメンバーの女性、東京電機大学に在籍しているけれども天文・宇宙に関心がある学生、東海大で応用化学を専攻している大学1年の女性、東京農工大の修士の男性、横浜国立大学の修士の男性、僕の後輩にあたる東京理科大の学生2人など、実にさまざまな分野の人たちおよそ20人ほどとお話することができた。中には圧電素子とパチンコ玉を入れた透明なアクリルチューブを振って赤い光を出すおもちゃ(?)を作ってきて見せてくれた東工大の男性もいた。
僕はというと珍しくおとなしくしていることにしていた。もともとおしゃべりで自己主張が強いのだが、自分の子供くらいの年代の若者たちを前にすると、どうしても「昔はこうだったオジサン」になってしまいがちで、そう見られるのが嫌だったからである。それに最近の学生がどんな感じか知りたいのだから、勝手にしゃべってもらっていたほうが都合がよい。量子力学ではないけれど、僕が質問を投げて観測すると、本来の彼らの姿がかき乱されてしまう。
僕が理科大卒だからなかもしれないが、僕の時代の学生より明らかにコミュニケーション能力が高く、服装もおしゃれな学生が多い。またインターネット環境の有無の違いは大きく、現在の理系大学生のほうが他大学、他学部の状況に関する知識が圧倒的に多く、情報収集能力に長けている。昔は自分の大学や学部の情報収集だけで閉じていた。自分が進むべき道をより多くの選択肢から客観的に検討して決められる時代に変わっている。
でも話を始めると物事に対する妙なこだわり感、考え方や取り組みのための発想や思考パターンがよくわかる。「理系学生の気質って昔も今もまったく変わってない。w」というのが今日の結論だ。脳内だけでなく顔つきも含めて、むかし僕の周りにいた学友の中にいたのとそっくりな「同型人間」や「同相人間」がたくさん見つかったのが可笑しかった。
さて、僕のブログのことを知っている学生はいたかどうかということだが、話すことができた20人の中でお二人がご存知だった。2番目のテーブルでたまたま隣に座った農工大修士の方に「ブログ読んでます。昨日ツイッターで僕が参加表明されたのを見てびっくりしてました。」と言われたので、僕のほうが驚いた次第。そしてもう一人は一緒のテーブルには着かなかったのだが、「とね日記いつも読んでいます。」と声をかけてくださった横浜国立大学の修士の方。お二人とも僕のツイッターアカウントをフォローしてくださっていることがわかった。ありがたい。
最後は全員で記念撮影。ピントが合ったちゃんとした写真もあるのだが、プライバシーを保護してツイートされた写真がこちら。理系ならではの「ブラし」のテクニックが使われている。
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集いが終わると全員で会場復帰作業。机と椅子をもとのように並べなおして解散となった。
なお、来週の土曜には次のイベントが予定されている。場所は「阿佐ヶ谷ロフトA」ということだ。興味のある方は申し込まれるとよいだろう。
【イベント開催決定!科学エンタイベント】
『サイコラボvol.3』5/27開催!科学×◯◯のコラボレーション。科学で楽しみたい人遊びにおいで!
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/61603
なお理系交流会関連のツイートは「#理系交流会」というハッシュタグで読むことができる。
今日はいつもの土曜のように勉強はできなかったが有意義に過ごすことができた。現在ノイマンの「量子力学の数学的基礎」の100ページ目あたりを読書中である。紹介記事はもう少しお待ちいただきたい。
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