左:CASIO fx-502P (1979), 右:fx-602P (1981)拡大
fx-202P (1976)に続き、後継機種も計算速度を測ってみた。わずか数年の間に電卓は劇的に進化している。
今回紹介するfx-502P (1979)は「世界初の手帳型プログラム関数電卓」だ。そして2年後に発売されたfx-602P (1981)はプログラミング容量を2倍に増やした後継機種。
CASIO fx-502P(51関数、22メモリー、プログラム:256ステップ): 24,800円
CASIO fx-602P(51関数、22メモリー、プログラム:512ステップ): 29,500円
fx-502Pの登場によって数百から数万回の繰り返し計算が必要な定積分をはじめ、解析的には解けない非線型な方程式/微分方程式の数値解の計算、数値シミュレーションが2万円台のパーソナル電卓で行えるようになった。
ちなみに日本初のパーソナルコンピュータ NEC PC-8001 が発売されたのも1979年である。本体価格16万8千円、モニター込みで30万円ほど。当時の大卒初任給は11万円ほどだった。
「世界初」、「日本初」といってもいろいろある。関数電卓、プログラム電卓について年代順にはこのようになる。
世界初の卓上プログラム電卓 CASIO AL-1000 (1967): 価格328,000円。12.3Kg。(詳細)
世界初の卓上プログラム関数電卓 HP-9100A (1968):価格5000ドル。(詳細)
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 (1972):価格395ドル。(詳細)
日本初の卓上関数電卓 CASIO fx-1 (1972):価格32万5千円(詳細)
日本初のポータブル関数電卓 CASIO fx-10 (1974):価格24,800円。(詳細)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓 CASIO PRO-101 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976), CASIO PRO fx-1 (1976)(動画)
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-501P (1979), fx-502P (1979):(紹介記事)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓のところに4機種書いたのは、どれも同じ年に発売されたからだ。順番はこのページの次の写真を参考にした。
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CASIO PRO-101 (1976):4万9800円。256ステップ。(詳細1、詳細2)
CASIO fx-201P (1976):2万9000円。127ステップ。電源を切るとプログラムも消えた。(詳細1、詳細2)
fx-202P (1976):3万9千円。fx-201Pにプログラム保護回路を内蔵したもの。(詳細)
PRO fx-1はPRO-101に磁気カードリーダーがついた機種(詳細)(動画)
厳密に言えばPRO-101が日本初なのだろうけど、これら4機種は同じ年に発売されたのでどれも日本発と言ってよいだろう。PRO-101の「PRO」は「プログラム」ということなのだろう。
サイズはこれくらいだ。(カッコ悪いけど)ワイシャツの胸ポケットにぎりぎり収まる。ボタン電池2個で動作する。
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プログラミング関数電卓として今のところ最上位機種の fx-5800P (2006) と比べても小さくて薄い。
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fx-202P (1976)のときと同様、同じ定積分の問題を同じアルゴリズムで計算させてみる。長方形近似を使ってこの計算を行うわけだ。
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この面積を求めるわけである。
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現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。
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fx-502P (1979)での計算
プログラムのサイズは40ステップ。不必要な演算が一部含まれているが fx-202P でのプログラムと同じにするためなので気にしないでほしい。
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計算結果
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ループ1回につき1.245秒。fx-202Pよりも計算時間が2.8分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると235秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は81.1パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.505秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が2.83分の1に短縮されている。
fx-602P (1981)での計算
プログラムはこのようになる。fx-502Pでメモリ番号の指定が1桁だったのが2桁に変わるだけだ。
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計算結果
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ループ1回につき0.744秒。fx-202Pよりも計算時間が4.68分の1に短縮されている。(fx-502Pに対して1.67分の1)
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると210秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は71.8パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.267秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が5.36分の1に短縮されている。(fx-502Pに対して1.89分の1)
ところで fx-602P (1981) はスマホアプリがある。アプリでも計算速度を測ってみた。
fx-602P Androidアプリでの計算
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使用した機種はSH-01H
http://www.sharp.co.jp/products/sh01h/
Qualcomm MSM8992ヘキサコア(1.8GHzデュアルコア+1.4GHzクァッドコア)
計算結果はこのとおり。
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ループ1回につき0.144秒。fx-602Pの実機に対して計算時間が5.17分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると107秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は25.7パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.037秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-602Pの実機よりも計算時間が7.22分の1に短縮されている。
fx-602P iPhoneアプリでの計算
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使用した機種はiPhone6
https://support.apple.com/kb/SP705?locale=ja_JP&viewlocale=ja_JP
64ビットアーキテクチャ搭載A8チップ
クロック周波数 1.1GHz
計算結果はこのとおり。
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めちゃくちゃ速い!
ループ1回につき0.128ミリ秒。fx-602Pの実機に対して計算時間が5813分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000000回の分割で計算すると107秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は16.4パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.01ミリ秒ということになる。三角関数についてだけ言えば実機のfx-602Pよりも計算時間が26074分の1に短縮されている。
パソコンを持ち歩いていないときプログラム関数電卓アプリは何かと重宝だ。特にfx-602Pは覚えやすくできているからお勧めである。
fx-602Pのマニュアル(日本語): PDF
fx-602Pのマニュアル(英語): PDF
今回のテストはこれでおしまい。次回は2006年に発売されたプログラム関数電卓 CASIO fx-71F と fx-5800P で試すことにしよう。
所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。
関連記事:
日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55c4832a2ca95087960c2ec0e532b1e6
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fx-202P (1976)に続き、後継機種も計算速度を測ってみた。わずか数年の間に電卓は劇的に進化している。
今回紹介するfx-502P (1979)は「世界初の手帳型プログラム関数電卓」だ。そして2年後に発売されたfx-602P (1981)はプログラミング容量を2倍に増やした後継機種。
CASIO fx-502P(51関数、22メモリー、プログラム:256ステップ): 24,800円
CASIO fx-602P(51関数、22メモリー、プログラム:512ステップ): 29,500円
fx-502Pの登場によって数百から数万回の繰り返し計算が必要な定積分をはじめ、解析的には解けない非線型な方程式/微分方程式の数値解の計算、数値シミュレーションが2万円台のパーソナル電卓で行えるようになった。
ちなみに日本初のパーソナルコンピュータ NEC PC-8001 が発売されたのも1979年である。本体価格16万8千円、モニター込みで30万円ほど。当時の大卒初任給は11万円ほどだった。
「世界初」、「日本初」といってもいろいろある。関数電卓、プログラム電卓について年代順にはこのようになる。
世界初の卓上プログラム電卓 CASIO AL-1000 (1967): 価格328,000円。12.3Kg。(詳細)
世界初の卓上プログラム関数電卓 HP-9100A (1968):価格5000ドル。(詳細)
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 (1972):価格395ドル。(詳細)
日本初の卓上関数電卓 CASIO fx-1 (1972):価格32万5千円(詳細)
日本初のポータブル関数電卓 CASIO fx-10 (1974):価格24,800円。(詳細)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓 CASIO PRO-101 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976), CASIO PRO fx-1 (1976)(動画)
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-501P (1979), fx-502P (1979):(紹介記事)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓のところに4機種書いたのは、どれも同じ年に発売されたからだ。順番はこのページの次の写真を参考にした。

CASIO PRO-101 (1976):4万9800円。256ステップ。(詳細1、詳細2)
CASIO fx-201P (1976):2万9000円。127ステップ。電源を切るとプログラムも消えた。(詳細1、詳細2)
fx-202P (1976):3万9千円。fx-201Pにプログラム保護回路を内蔵したもの。(詳細)
PRO fx-1はPRO-101に磁気カードリーダーがついた機種(詳細)(動画)
厳密に言えばPRO-101が日本初なのだろうけど、これら4機種は同じ年に発売されたのでどれも日本発と言ってよいだろう。PRO-101の「PRO」は「プログラム」ということなのだろう。
サイズはこれくらいだ。(カッコ悪いけど)ワイシャツの胸ポケットにぎりぎり収まる。ボタン電池2個で動作する。

プログラミング関数電卓として今のところ最上位機種の fx-5800P (2006) と比べても小さくて薄い。

fx-202P (1976)のときと同様、同じ定積分の問題を同じアルゴリズムで計算させてみる。長方形近似を使ってこの計算を行うわけだ。

この面積を求めるわけである。

現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。

fx-502P (1979)での計算
プログラムのサイズは40ステップ。不必要な演算が一部含まれているが fx-202P でのプログラムと同じにするためなので気にしないでほしい。

計算結果

ループ1回につき1.245秒。fx-202Pよりも計算時間が2.8分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると235秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は81.1パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.505秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が2.83分の1に短縮されている。
fx-602P (1981)での計算
プログラムはこのようになる。fx-502Pでメモリ番号の指定が1桁だったのが2桁に変わるだけだ。

計算結果

ループ1回につき0.744秒。fx-202Pよりも計算時間が4.68分の1に短縮されている。(fx-502Pに対して1.67分の1)
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると210秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は71.8パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.267秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が5.36分の1に短縮されている。(fx-502Pに対して1.89分の1)
ところで fx-602P (1981) はスマホアプリがある。アプリでも計算速度を測ってみた。
fx-602P Androidアプリでの計算


使用した機種はSH-01H
http://www.sharp.co.jp/products/sh01h/
Qualcomm MSM8992ヘキサコア(1.8GHzデュアルコア+1.4GHzクァッドコア)
計算結果はこのとおり。

ループ1回につき0.144秒。fx-602Pの実機に対して計算時間が5.17分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると107秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は25.7パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.037秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-602Pの実機よりも計算時間が7.22分の1に短縮されている。
fx-602P iPhoneアプリでの計算


使用した機種はiPhone6
https://support.apple.com/kb/SP705?locale=ja_JP&viewlocale=ja_JP
64ビットアーキテクチャ搭載A8チップ
クロック周波数 1.1GHz
計算結果はこのとおり。

めちゃくちゃ速い!
ループ1回につき0.128ミリ秒。fx-602Pの実機に対して計算時間が5813分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000000回の分割で計算すると107秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は16.4パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.01ミリ秒ということになる。三角関数についてだけ言えば実機のfx-602Pよりも計算時間が26074分の1に短縮されている。
パソコンを持ち歩いていないときプログラム関数電卓アプリは何かと重宝だ。特にfx-602Pは覚えやすくできているからお勧めである。
fx-602Pのマニュアル(日本語): PDF
fx-602Pのマニュアル(英語): PDF
今回のテストはこれでおしまい。次回は2006年に発売されたプログラム関数電卓 CASIO fx-71F と fx-5800P で試すことにしよう。
所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。
関連記事:
日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)
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