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日本物理学会2016年度公開講座 「一般相対性理論と宇宙 -重力波研究の最前線-」


昨日の土曜日はこのような講座を受講してきた。東大の赤門は今年8月の「グラショー博士(1979年ノーベル物理学賞)一般公開講演会」で訪れたばかりだ。


日本物理学会2016年度公開講座 「一般相対性理論と宇宙 -重力波研究の最前線-」
http://www.jps.or.jp/public/koukai/koukai-2016-11-26.php

内容: 1916年にアインシュタインが発表した重力波の理論から今年でちょうど100年。その間の目覚ましい科学技術の進展により、去る2月、アメリカのLIGOグループがアインシュタインですら困難と考えていた重力波の直接検出に成功し、大きな話題となりました。新たな重力波の世紀が幕を開けたいま、第一線で活躍されている研究者による「重力波研究の歴史」「重力波の理論とシミュレーション」「重力波の観測」などのお話で、はるか彼方、宇宙の出来事を奏でる波に思いを馳せてみませんか?

期日: 2016年11月26日(土)13:00~16:45
会場: 東京大学本郷キャンパス 伊藤謝恩ホール(赤門の右隣)
参加費: 無料(要事前申込。)
定員: 350名(申込先着順で定員になり次第締め切らせていただきます。)-> 定員に達しました。

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今回の講座のことはYoshYさんから教えていただき早々と申し込みを済ませていたので僕の受付番号は93番。日頃、このようなイベントのチェックが甘い僕としてはとてもありがたい。YoshYさん、ありがとうございます。

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登壇されるのは一般相対論をご専門にされる大先生ばかり。物理学徒のひとりとしては見逃すことができない。会場は350名収容の大ホール。前のほうの数列席は机付きなので前から3列目に着席した。通路をはさんで僕の左側には関係者席が設けられている。開会前に僕から見て左前の席に近いほうから須藤先生、柴田先生、梶田先生、藤井先生が横一列に着席された。

物理学講座でいつもご一緒しているメンバーも着席した。僕の隣には271828さん、そして離れた席にはYoshYさん、たけのやさん、Iさん、Yさんがいる。

今回の公開講座は後に日本物理学会のHPから動画として一般公開されるそうなので、この記事では概略と感想を書いておくことにしよう。(参考:講座の内容と動画

受付で配布資料をいただいた。日本物理学会の歴史や活動内容が書かれた資料と登壇される3人の先生方の講義内容、スライドが光沢のある紙に印刷された立派な冊子である。そして日本物理学会特製のクリアファイルはとてもうれしい。

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全体の進行役を務めたのは山形大学の安田淳一郎先生。ひと通りの注意事項を説明された後、日本物理学会会長の藤井先生を紹介。


開会挨拶 藤井保彦(日本物理学会 会長)

今年は日本物理学会が創立されてから140年、設立されてから70年という節目の年であることをご説明された。創立と設立という言葉を使い分けているそうである。詳細は日本物理学会のホームページの「沿革」をご覧いただけるとわかる。ホームページの整備にも力を入れているそうで、「物理学70の不思議」というページを紹介された。

一般市民向けに毎年行っている公開講座は「公開講座(高校生・大学生・一般向け)」でご覧いただける。この公開講座の運営や配布資料などにかかる費用は科研費からでているそうだ。その申請期限が1年前なので、今回の講座の内容も1年前に決まっていたのだという。

重力波の直接観測の発表が今年の2月であるから、こういう偶然もあるのかと驚いてしまった。観測が成功したかもしれないという噂が日本の研究者に伝わったのは1月に入ってからだ。(そのことはサイエンスZEROの「世紀の観測!重力波?~アインシュタイン最後の宿題~」で述べられていた。)

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「一般相対論と天文学」須藤靖(東京大学大学院理学系研究科 教授)

須藤先生は次の項目に従って説明をされた。

- はじめに(一般相対論は根源的な「法則の中の法則」である)
- 水星の近日点移動:1859年
- エディントンと光の湾曲: 1919年
- マンドルと重力レンズ: 1936年
- 重力レンズ天文学: 1979年
- 重力波: 2015年

特に印象に残ったのは一般相対論のどこがすごいかを浮き彫りにしていただいた点である。一般相対論は教科書ですでに学んでいたので、上にあげた項目は目新しいものではない。しかし須藤先生のご説明は一般相対論以前のニュートン力学のものすごい予言力があったことを思い起こさせてくれた。

ニュートン力学における太陽の周りの水星の楕円軌道公転運動
- 他の惑星がなければこの楕円は変化しない
- ただし、他の惑星の重力のために、この楕円の軸が100年間に531秒角だけずれる(水星の近日点移動)
- 観測値は574秒角、すなわち100年に43秒角だけの差が謎→一般相対論で解決

つまりニュートン力学の驚異的な予言力と天文観測の驚異的な精度と信頼性をもってはじめて一般相対論による水星の近日点移動の量が検証可能になった。

また重力マイクロレンズによる増光の解説も興味深かった。この効果を利用することにより系外惑星の探査が可能になり、この方法を用いて現在まで50個程度の系外惑星が見つかっているそうだ。

須藤先生は笑いをとることも忘れていなかった。ご出身の高知県の新聞に寄稿するために準備していたノーベル物理学賞についての「幻の高知県新聞2016年10月8日朝刊」の話、恩師の佐藤勝彦先生の出身地香川県の四国新聞のトップ記事が重力波ではなく「かけうどんの値上げ」だったことなど。

僕はいま「重力 アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル」の下巻を勉強中だが、講演を機に須藤先生の教科書を注文しておいた。

一般相対論入門:須藤靖
もうひとつの一般相対論入門:須藤靖

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「重力波の源」柴田大(京都大学基礎物理学研究所 教授)

柴田先生も一般相対論の研究者として有名な方だ。特に数値相対論と重力波を研究されていて先生のホームページには数値相対論による計算結果やアニメーションが数多く掲載されている。先生は「一般相対論の世界を探る―重力波と数値相対論」という本をお書きになっている。次の順番でお話しをしてくださった。

- はじめに: 重力波とは
- 重力波の源
- 数値相対論: 重力波の波形を予言する
- 重力波の初検出: GW150914
- 重力波天文学の可能性
- まとめ

数値相対論のことは特に気になっていたのでとても興味深くお話を聞くことができた。お見せいただいたアニメーションは初めて見るものもあり、またブラックホール連星だけでなく、中性子連星の合体やそのときの波形を音声化して聞かせてくださったりした。その周波数は偶然人間の耳が聞くことができる周波数帯に一致しているから聞くことができるわけである。

鉄より重い元素(重元素)の起源がわかっていないことも僕は知らなかった。連星中性子星の合体が重元素の起源であるとする仮説が最近注目を引いているのだという。一般相対論や重力波とは一見関係ないことが、このような説を派生させているのが面白い。

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「KAGRAプロジェクトと重力波天学」梶田隆章(東京大学宇宙線研究所 教授)

昨年ノーベル物理学賞を受賞された梶田先生の講演である。(参考記事:「2015年 ノーベル物理学賞は梶田隆章先生、アーサー・マクドナルド先生に決定!」)開始直前まで先生は持ち込んだノートPCでスライドを修正されていた。今回の3つの講演はどれも一般相対論と重力波がテーマなので、内容が被ってしまうのを避けるためだ。真摯で誠実な先生だと僕は思った。先生は次のように話を進められた。

- はじめに
- LIGOによる重力波の初観測
- KAGRAプロジェクト
-- KAGRAプロジェクトまでの道のり
-- KAGRAの特徴
-- KAGRAプロジェクトの現状と予定
- 重力波天文学の展望
-- 世界の状況
- 今後の重力波天文学
- まとめ

僕がいちばん知りたかったのがKAGRAのことである。特にLIGOとの違いについてだ。観測精度を上げるためにどのような工夫をされているかを先生は詳しく説明してくださった。それは次の点にまとめられる。

- 地面振動の小さな地下に設置する
- 鏡の熱雑音を抑えるために絶対温度20Kの極低温鏡を用いる
- 鏡を吊るす、多重振子にして振動を低減させる
- 間に半透明の鏡を設置しレーザー光を何往復もさせ有効長を長くする
- 光の揺らぎを抑えるために強力なレーザー光を使う

LIGOに比べてKAGRAの予算や研究者の人数はとても小さいのだという。LIGOと同程度(もしくはそれ以上の)精度を得るためには、日本の高い技術力と知恵が必要だということがよくわかった。特に装置全体をクリーンブースに入れたり、レーザー光を何往復もさせるので要求される鏡面の精度は非常に高くなるのだ。

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質疑応答

先生方の講演の最後にはそれぞれ10分間の質疑応答の時間が設けられた。1人ひとつまで質問することができる。たくさんの方がそれぞれ素晴らしい質問をされ、先生方は的確かつとても親切にお答えになっていた。

僕は梶田先生の枠で「頻発する震度1以下の地震は観測に影響を与えるのか?震度7以上の激震がおきたときKAGRAは大丈夫なのか?」という質問をさせていただいた。

先生のお答えによると「微弱な地震は観測に影響を与えない。大地震に対してKAGRAには安全対策がほどこされいる。たとえば鏡を吊しているケーブルが切れても大丈夫なように作っている。」ということだった。知恵と労力を結集し、多額の費用を投じて作り上げる装置なので地震で壊れてしまったら大変である。先生のご説明を聞いて安心することができた。


3つとも刺激に満ちた講演で充実した数時間を過ごすことができた。須藤先生、柴田先生、梶田先生、貴重なお時間とお手間を割いていただき、ありがとうございました!


閉会挨拶 川村光(日本物理学会 副会長)

川村先生による閉会の挨拶をもって、この日の講演はすべて終了した。

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オフ会

物理学講座の後は、仲間とオフ会をする習慣が続いている。しかしいつものメンバーはほとんど参加できず、271828さんだけ参加可能だった。どうしようか考えていると、たけのやさんが僕に紹介したい人がいると話をされた。それは僕のブログを読んでいただいている方々で「物理数学勉強会」のメンバーだった。この勉強会に僕は一度も参加したことがないのだが「「物理数学勉強会」のご紹介」という記事に書いたような経緯で、主催者の「おーにしさん」と連絡をとっていた。

ということで昨日のオフ会は271828さんと物理数学勉強会のメンバー5名(うち女性1名)、そしてその日飯田橋で別の物理講座を受講していたTさんが合流して、1次会を赤門近くのサイゼリヤで、2次会を本郷三丁目駅前の居酒屋で行った。Tさんが受講した講座も重力波についてだったそうである。いつもそうだが同じ趣味をもった仲間との酒盛りはとても楽しいものだ。

今回の講演会の受講者は老若男女のバランスがとれていたのを僕は不思議に思っていた。これまで受講してきた朝日カルチャーセンターの一般市民向け物理学講座だと圧倒的に年配の受講者が多く、ほとんどが男性である。メンバーに話したところ「それは無料だからじゃないかなぁ。」という意見が多かった。たしかにそう言われてみればそうだ。高校生だと数千円出すのはちょっときついだろうし、大学生でもよほど物理好きでないとその金額を支払ってまで受講しようとは思わないことだろう。


271828さんからはお手製のジャムをいただいた。今回は紅玉を使ったリンゴジャムである。271828さん、ありがとうございました。

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2次会で行った居酒屋にはこのような「健康十訓」が壁にかけてあったので載せておこう。クリックで拡大する。

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関連記事:

重力波の直接観測に成功!
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発売情報: 重力(上)(下) アインシュタインの一般相対性理論入門: ジェームズ・B・ハートル
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時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
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