「量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル」(Kindle版)
内容紹介:
ギリシャ以来、物質の最小の構成単位への人類の探求は、原子核とそれをまわる電子というモデルまでいきつく。しかし、1912年のある日、物理学者のニールス・ボーアは気がつく。なぜ、電子は原子核に墜落しないのか?まったく新しい物理学が誕生した瞬間だった。人類の極小を探る旅は、加速器というものさしを得て進歩する。それは宇宙の始まりを解き明かす旅になった。
アメリカのフェルミ研究所で加速器を使い、極小の世界を追い求めたノーベル賞物理学者が、この新しい物理学の誕生から現在そして未来を綴る。
2016年9月23日刊行、308ページ。
著者について:
レオン・M・レーダーマン(Leon M. Lederman): 著書をAmazonで検索
1922年生まれのアメリカの実験物理学者。ボトムクォークの発見で知られる。1988年にミューニュートリノの発見によるレプトンの二重構造の実証でノーベル物理学賞受賞。イリノイ数学科学アカデミーのグレート・マインズ・プログラム常任研究員、フェルミ国立粒子加速器研究所名誉所長であり、イリノイ工科大学プリツカー科学教授。著書にThe God Particle(邦訳『神がつくった究極の素粒子』高橋健次訳、草思社)などがある。
クリストファー・T・ヒル(Christopher T. Hill): 著書をAmazonで検索
理論物理学者。シカゴ大学物理学科非常勤教授、客員研究員、オックスフォード大学客員研究員を経て、フェルミ国立粒子加速器研究所理論物理学部長。米国物理学協会特別会員。理論物理学と宇宙論についての論文を100編以上執筆している。
訳者について:
青木薫: 訳書をAmazonで検索
1956年、山形県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専門は理論物理学。翻訳家。サイモン・シンの一連の著作『フェルマーの最終定理』『暗号解読』『宇宙創成』(以上、新潮社)をはじめ、ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの』(草思社)、マーシャ・ガッセン『完全なる証明』(文藝春秋)、マンジット・クマール『量子革命』(新潮社)など、数学・物理学系の一般向けの書籍から専門書まで幅広く手がける。数学の普及への貢献により2007年度日本数学会出版賞受賞。
今年の秋はこの本がヒットするだろう。まだ読めていないので発売情報としてのお知らせである。日本語版は数々の科学教養書の翻訳で知られている青木薫さんによるもの。この日本語版は今月23日に発売されたばかりだ。(電子書籍は今月末に発売)
翻訳のもとになった原書は2013年10月に刊行された「Beyond the God Particle(神の粒子を超えて)」、つまりヒッグス粒子の先に何があるのか?というタイトルの本だ。
「Beyond the God Particle: Leon M. Lederman, Christopher T. Hill」(Kindle版)
原書のタイトルにはない「量子物理学の発見」を補ったのがよいと思った。「数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル」(これも青木薫さんの訳書)でも使われていたが、「量子物理学」は前期量子論から量子力学、素粒子物理学、超弦理論までをカバーする現代物理学をあらわすのにちょうどよい言葉だ。
以前紹介した「ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル」はヒッグス博士がたどった道のり、理論物理学に焦点をあてた本だが、本書のほうは実験物理学の醍醐味と重要性を強調し、この分野の将来を見据えて書かれている。
章立ては次のとおり。僕としては第5章以降が興味深々というところ。
第1章 宇宙の始まりを探る旅
第2章 その時、ニュートン物理学は崩れた
第3章 世界は右巻きか左巻きか
第4章 相対性理論の 合法的な抜け道
第5章 初めに質量あれ
第6章 何もないところになぜ何かが生まれたのか?
第7章 星が生まれた痕跡
第8章 加速器は語る
第9章 ヒッグス粒子を超えて
まだ読んでいないのでこれ以上詳しいことはお伝えできない。差し当たり青木薫さんと大栗博司先生による紹介ページが公開されているので、これを読んでから書店で本書を手にとっていただきたい。
『量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語』量子物理学に今、革命が起ころうとしている
訳者解説 by 青木 薫
http://honz.jp/articles/-/43259
量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語』を読み解く。「量子物理学」はいかに発見され、次にどうなるか?
by 大栗 博司(理論物理学者、カリフォルニア工科大学教授、東京大学カブリIPMU主任研究員)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49714
関連記事:
祝!:ヒッグス粒子発見
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f88350541542f732fec74af583a29e50
速報:2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e
ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/46c46f676c631634b83fb9616161ec4d
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「量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語: レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル」(Kindle版)
第1章 宇宙の始まりを探る旅
2012年に世界の新聞の一面を飾った「ヒッグス粒子」の発見。本書では、その発見にいたるまでの人類の歴史を、ノーベル賞量子物理学者が綴る。それは、この世界の極小の構成単位を探る旅でもあり、同時に宇宙の始まりを探る旅でもあった。
第2章 その時、ニュートン物理学は崩れた
ギリシャ以来、物質の最小の構成単位への人類の探求は、原子核とそれをまわる電子というモデルまでいきつく。しかし、1912年のある日、物理学者のニールス・ボーアは気がつく。なぜ、電子は原子核に墜落しないのか? 全く新しい物理学の誕生。
第3章 世界は右巻きか左巻きか
水の分子を鏡に写しても左右対称で変わらない。しかし、変わってしまう分子もある。例えば、われわれの世界の食べ物は右旋体の糖でできている。さてでは物理法則はどうだろうか? その対称性が破れていることを発見したのがこの本の著者だった。
第4章 相対性理論の 合法的な抜け道
エネルギーは光速の自乗にそのものの質量をかけたものに等しい。E=mc2。アインシュタインは、物質の質量はエネルギーに転換できることを示した。しかし、光に質量はないはずだ。とすれば、光はエネルギーに転換できないのか?
第5章 初めに質量あれ
宇宙が始まった時、すべてのものは無であり、質量はなかった。完全な対称性がなりたつ世界だった。その対称性が崩れ去る引き金をひいたものがいる。それが「ヒッグス粒子」だ。「ヒッグス粒子」が質量を生み出し、宇宙を生み出すことになった。
第6章 何もないところになぜ何かが生まれたのか?
ではどのようにして何もないところからヒッグス粒子が生まれ質量が生まれるのか?
10の マイナス25乗の非常に短い時間では不変と思われたエネルギー保存則がなりたたない瞬間がある。その「量子ゆらぎ」とよばれる時間のことから説明しよう。
第7章 星が生まれた痕跡
宇宙誕生時にできた原子星の内部で、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、鉄などの重い元素がつくられる。しかし、これらの元素があまねく宇宙に行き渡るためには、崩壊による解放が必要だ。その痕跡がいまもふりそそぐ「ニュートリノ」という粒子だ。
第8章 加速器は語る
著者らのフェルミ研究所は、標準理論のその先を探索する新加速器「プロジェクトX」を進めている。それは高エネルギー追求から転換してコストは抑え、膨大な数の粒子を観測して珍しい現象を探す新たなアプローチだ。
第9章 ヒッグス粒子を超えて
量子物理学はまだ道半ばだ。ヒッグス粒子は物質に質量を与えるが、それ自身の質量がどこから来るかはわかっていない。宇宙のほとんどを占める暗黒物質も検出できていない。未知の物理現象を求める実験は続く。