「コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子」
内容紹介:
日本が誇る小人、コロボックル。彼らは人間と“トモダチ”になる前に、細かく審議をする。つむじ曲がりのじい様ツムジイは、コロボックルの迅速な動きが「見える」不思議な目を持つタケルと“トモダチ”になった。二人の友情と別れ、タケルの成長、汚染された池の救出大作戦。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。
著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。
村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。
有川浩さんの「だれもが知ってる小さな国」を読んだのがきっかけで、小学生の時に読んだ佐藤さとる先生のコロボックル物語シリーズを第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」から読み直している。今回紹介するのはその4巻目だ。
人間に存在を気づかれてはならないというのは昔からのおきてだった。人間の目では見えないほど速く動けるコロボックルたちであるが、第3巻でおチャ公という少年に捕まってしまったミツバチ坊やのようにたまにへまをして見つかってしまうことがある。
しかし時がたちコロボックルの国にも変化がおとずれる。おきても少し緩められた。信用できることを証明する審議をパスした人間にとは「トモダチ」になってもよいという新しいおきてができたのだ。ただしその人間とトモダチになれるのはただ1人のコロボックルだけという条件付きではあった。
第4巻はコロボックルの爺さんの紹介からはじまる。ツムジイと呼ばれているこの爺さんは学者で昔から言い伝えられているコロボックルの歴史をよく知っている。少々気難しいところがあり、つむじ曲がりであることからそのような呼ばれ方をされるようになったのかもしれない。ツムジイには、これから少し先におこる出来事を予測できる不思議な能力をもっていた。
ツムジイは土瓶を利用した家で一人住まい
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若者たちにいろいろなことを教えるツムジイ
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そのようなツムジイの「トモダチ」として選ばれたのはタケルという人間の男の子だった。この子がまだ小さい頃からずっとツムジイはタケルのことを見守っている。タケルは独特な目つきをしている男の子で、ツムジイがいくら早く動いても目でツムジイのことを追うことができた。ふつうの人間はそんなことはできない。タイトルの「ふしぎな目をした男の子」とは、そのように特殊な視力をもつタケルのことを意味している。
物語の舞台はおそらく昭和30年代なのだろう。タケルの住む小さな町も開発の波が押し寄せてきて、次々と住宅が建てられていった。タケルには一緒に遊んでくれるヒロシという中学生のお兄さんがいる。
タケルが住んでいる街の風景
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タケルは小学生になった。ツムジイもそろそろ体がいうことを聞かなくなり隠居する時期がきていた。ツムジイの後任として選ばれたのが「ツムちゃん」という男の子だった。ツムちゃんはツムジイと似て気難しいところがあり、性格は似ているちょっと生意気なコロボックルの少年だった。そして偶然なのだが顔は独特な目つきも含めてタケルにそっくりだったのである。ツムちゃんはツムジイからタケルのことを教わり、トモダチになる準備をしていた
ツムジイとツムちゃん
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タケルとヒロシの住む街の近くには小山があり、そこにはむかし池があったそうだ。開発の波は小山にもおよび、タケルが子供のころに池は用水地として使われ、小学生になったころいは用水地もせき止められ、汚い水がたまっているだけのありさまだった。そして濁った水のたまった用水地さえも埋め立てられようとしていた。
用水地がまだ池だった大昔、コロボックルはその地下に街を作って暮らしていたそうだ。これはツムジイが覚えているコロボックルの伝承のひとつだった。なんとか埋め立てを阻止したい。祖先たちが作り上げた地下の街を確認したい。ツムジイはじめ他のコロボックルたちはそのように考えていた。
タケルのほうも小さなころから遊んでいた小山や用水地の美しい景色が忘れられないでいた。なんとか元通りのきれいな水をたたえた用水地に戻したい。タケルはヒロシに相談し、ある計画をたてるのだ。それがどのような計画か知りたい方は本書を読んでいただきたい。
第4巻はこのような話で始まる。第3巻までとはずいぶん違う雰囲気だ。ゆったりとした昭和の田舎の風景を彷彿とさせられる。自然豊かな土地が宅地造成によって壊されていくのは、都内に住んでいたとはいえ僕もよく覚えている社会の変化だった。また、時の流れの中で本に描かれている人々も成長し、コロボックルの社会のほうでも世代交代がおきる。そして人々とコロボックルたちの付き合い方も、少しずつ密なものへと変わっていく。もちろん「せいたかさん」や彼の家族も物語に登場する。また彼らと出会えてよかったなという喜びも感じられるだろう。
第4巻は僕が小学校2年だった1971年に刊行されたのだが、これまでに読んでいなかったことに気が付いた。てっきり読んでいたと勘違いしていた。あいかわらず僕の記憶はあてにならない。
引き続き第5巻を読むことにしよう。
佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。
1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行
コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html
講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行
「コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事)
「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」(紹介記事)
「コロボックル物語3 星からおちた小さな人」(紹介記事)
「コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子」
「コロボックル物語5 小さな国のつづきの話」
「コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし」
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青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。
講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索
単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。
新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行
新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。
「コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」
「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」
「コロボックル物語3 星からおちた小さな人」
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「コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子」
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第1章:つむじまがりの学者
第2章:タケルとヒロシと用水地
第3章:二つのいいつたえ
第4章:かわいそうな池
第5章:本当のトモダチ
あとがき(その1~その4)
解説:中島京子
以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ
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有川版についている帯
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