「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」
内容紹介:
ぼくはクリノヒコ。身長3センチ2ミリ。コロボックルの中では大きいほうだ。ぼくたちの国で新聞を出す話をしているときに、大ニュース。先祖が飼っていた豆つぶくらいの小さないぬ“マメイヌ”が、今も生きているかもしれないという。創刊号はこのスクープだ!日本が誇る傑作ファンタジー。
1959年初版、2010年~2012年に文庫化。
著者について:
佐藤さとる(さとう さとる): ホームページ
1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあさんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本ファンタジー作家の第一人者で作品も多い。
村上 勉(むらかみ つとむ): ホームページ
1943年、兵庫県生まれ。1965年、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作・講談社)の挿絵でデビュー。以来、挿絵、絵本、装幀など、出版美術界と深く関わってきた。主な作品に『おばあさんのひこうき』(小学館絵画賞受賞)、『おおきなきがほしい』、『きつね三吉』、『旅猫リポート』、「コロボックル」シリーズ他多数。
第1巻の「だれも知らない小さな国: 佐藤さとる、村上勉」に続き、第2巻も読んでみた。記憶が確かならば幼いころ、この巻がいちばん興奮して読んだのだと思う。
「せいたかさん」と「オチビ先生」はその後めでたく結婚し、小山に建てた小屋で大ぜいのコロボックルと暮らし始めた。せいたかさんは電気技師なので、小屋の電気設備も自分で作ることができる。第1巻で子供だったコロボックルもこの頃には成長し、大人のコロボックルとして「小国」を守るために、それぞれの役割を果たすようになっていた。
第2巻の話は「マメイヌ探し」である。コロボックルはアイヌ民族の伝承として伝えられてきたわけだが、コロボックルたちにも昔から伝えられている伝承があった。それは彼らよりも小さい犬のことで、大昔のコロボックルはその犬を飼いならしていたのだという。マメイヌはコロボックルよりもずっとすばしっこかったそうだ。しかし、いまはもうその生き残りさえ見られなくなっていた。
ところがある日、風に飛ばされたコロボックルの男が、そのマメイヌらしき生き物と遭遇したのだ。もしかしたらマメイヌはいまでも生きていて、どこかに潜んでいるのかもしれない。そのように思ったコロボックルたちは、せいたかさんやママ先生(オチビ先生のこと)に協力をあおいでマメイヌ探しを始めることになる。果たしてマメイヌは見つかるのだろうか?彼らはマメイヌを捕獲するためにカタツムリの殻で作った罠をしかけることにした。
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コロボックルたちは「通信社」を立ち上げ、彼らだけの新聞を発行するのだという。その創刊号にはぜひ「マメイヌ発見!」という記事を載せたいと思っていた。
第2巻の内容は6割ほど覚えていた。子供だった頃の僕をワクワクさせた要素もいくつか見つかった。
まず、せいたかさんがコロボックルたちにプレゼントしたのが使わなくなった郵便ポストである。彼らはこれを改造して「事務所」にしたのだ。1階には新聞を印刷するための部屋もある。各部屋には電気を引き、豆電球の照明を取り付けた。電気はそのままだと容量が大きすぎるので、せいたかさんは「変電所」も彼らに作ってあげる。コロボックルたちの街が小屋の中にいくつもできはじめた。
ミニチュアの部屋に豆電球の電灯をつけることに、僕は喜んだのだろう。模型やプラモデルに興味を持つ年頃だったから。今でもドールハウスとか一部のマニアには人気があるようだし。
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そして次に面白かったのが印刷機である。当時は活版印刷の時代だ。せいたかさんは彼らの新聞を印刷するために「ルビ」用の活字をたくさん用意する。差し当たりひらがなだけの新聞になってしまうが、そのうち漢字の活字の作り方も教えたいと考えていた。
さらにいちばんワクワクしたのが、せいたかさんがコロボックルや近所の少年にプレゼントした「手作りラジオ」である。当時のラジオは真空管式だ。
小学5年生のとき僕の家は建て替えをしたのだが、建築中の3カ月間は隣の区にある親戚の家に間借りをしていたことがある。その家には息子さん(当時は会社員になっていて別の家で暮らしていた)が使っていた部屋があり、真空管ラジオ製作のための入門書が本棚に1冊あった。おそらく彼が大学生の頃に読んだ本なのだろう。それ以外の本はサマセット・モームの「月と六ペンス」やカフカの「変身」など外国の小説がほとんどだったから、本棚全体としては「文系」の香りがしていた。
その中に1冊だけあったラジオ製作の本。僕はわからないながらも「すごいなー。」と飽きることなく眺めていた。僕もいつかラジオを作ってみたいと思っていたことを思い出した。その後、中学生になって一時期、電子工作に熱中したことがあるのだが、1つだけトランジスタラジオを作ったことがある。あと技術家庭科の授業でも1台作ったことを思い出した。こちらはラジオ製作用のキットだったので簡単だった。
そのようなわけで第2巻にでてくる真空管ラジオは、僕にとって特別なものだった。現代では真空管マニアは知り合いにもいるし、それはレトロ趣味、オーディオマニアだったりすることが多いわけだが、この物語の舞台となった時代では最新式の電子部品である。いまこの物語を読むと当時の電子工作マニアの世界が彷彿としてきて、もう一度電子工作やってみようかという気分になるのだ。
懐かしい真空管ラジオのページ
http://www.asahi-net.or.jp/~hp6y-isym/
引き続き第3巻を読むことにしよう。
佐藤さとる版は僕が小学生の頃までに4巻まで、大学生の頃に第5巻と第6巻が単行本として刊行されていた。だから僕は第5巻と第6巻は読んでいない。
1959年:コロボックル物語1『だれも知らない小さな国』刊行
1962年:コロボックル物語2『豆つぶほどの小さないぬ』刊行
1965年:コロボックル物語3『星からおちた小さな人』刊行
1971年:コロボックル物語4『ふしぎな目をした男の子』刊行
1983年:コロボックル物語5『小さな国のつづきの話』刊行
1987年:コロボックル物語6『コロボックルむかしむかし』刊行
コロボックル物語特設ページ(講談社)
http://kodanshabunko.com/colobockle.html
講談社文庫版:佐藤さとる、村上勉:2010年から2012年に刊行
「コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」(紹介記事)
「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」
「コロボックル物語3 星からおちた小さな人」
「コロボックル物語4 ふしぎな目をした男の子」
「コロボックル物語5 小さな国のつづきの話」
「コロボックル物語6 コロボックルむかしむかし」
青い鳥文庫版は1980年から2005年に刊行された。
講談社青い鳥文庫版: Amazonで検索
単行本も新品で買うことができる。購入される方はここまたはここをクリックしていただきたい。
新イラスト版:佐藤さとる、村上勉:2015年に刊行
新イラスト版は第3巻までしかでていない。今後、続きが出るのかもしれないが。新イラスト版の判型は有川版と同じだ。
「コロボックル物語1 だれも知らない小さな国」
「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」
「コロボックル物語3 星からおちた小さな人」
新イラスト版: Amazonで検索
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「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」
第1章:コロボックル通信社となかまたち
第2章:コロボックル通信社は動きだした
第3章:コロボックル通信社の事務所
第4章:コロボックル通信社が見つけたこと
第5章:コロボックル通信社に春がくる
あとがき(その1~その3)
解説:有川浩
以下は文庫版(佐藤さとる作)の帯に書かれたコロボックル物語ファンのメッセージ
有川版についている帯