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「9次元からきた男」ブロガー特別試写会の感想


昨日の土曜日は大栗先生ブログで告知されていた『「9次元からきた男」ブロガー特別試写会』に行ってきた。

3Dドーム映像作品『9次元からきた男』 | 日本科学未来館
http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/9dimensions/

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試写会の感想

試写会はこれまでも行われていたようだが、今回は大栗先生の講演会付きだというので見逃すわけにはいかない。会場となった日本科学未来館にも行ったことがないので、この日が来るのを楽しみにしていた。試写会は最上階(6階)のドームシアターで行われる。プラネタリウムのドームを45度に傾けて設置したスクリーンなのでプラネタリウムと映画の両方を楽しめる施設だ。

ドームシアターの収容人数に限りがあるため、試写会は大栗先生の講演会を挟んで2回行なわれた。

試写会1回目:18:15-18:45
講演会:19:00-20:00
試写会2回目:20:15-20:45

朝日カルチャーセンターで大栗先生の物理学講座をご一緒している「朝カル仲間」も4人参加している。たけのやさんと僕は1回目、271828さん、Tさん、Mさんは2回目の上映を見ることになった。

映画はT.o.E.(トーエ)というおかしな名前の男が主人公。記事冒頭のような帽子をかぶり、マフラーを口の回りに巻いたアヤシイ男である。T.o.E.はTheory of Everything(万物の理論)というわけで、その究極理論の候補と考えられている超弦理論の9次元空間を自由に移動できる男だ。そして副主人公を3次元空間に住む科学者が演じ、T.o.E.をなんとか捕まえて万物の理論の秘密を知りたいと願っているという物語の設定。科学者を演じた俳優はテレビで見たことのある方だった。(ヨシダ朝さんである。)

映画『呪怨』の監督として知られている清水崇さんが監督、CGを作ったのが山本信一さん、そして監修をされたのが大栗先生である。制作には1年ほどかかったという力作なのだ。

とにかくすごい体感映画だった。生まれて初めて経験した非日常体験、異世界体験と言ってよい。この日の僕の非日常感覚は科学未来館に入って、最上階までぶちぬかれた巨大な吹き抜けの空間を目の当りにしたときにすでに始まっていたのだけど、試写会でそれがピークに達したことになる。

僕がこれまでに見た3D映像は、高島屋東京IMAXシアター(1996-2002)が開業して間もないころに見た短編の試験映像のような作品と、同じ頃に見た東京ディズニーランドのキャプテンEOだけだ。そのどちらでも気分が悪くなり吐き気をもよおしていた。今回も気持ち悪くなるのかと覚悟して臨んだのだが、まったくそのようなことはなかった。なぜだかわからないが3D映像技術は確実に進歩していることが実感できた。試写会ではこのようなメガネをつけて見る。

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3D映像が飛び出して見えるのは当たり前だが、これまでに見た作品と決定的に違うのはスクリーンが半球形のドームであることだ。つまり映像が飛び出すだけでなく、自分の周囲全体を包み込むような形で見える。リクライニングシートに寝そべった状態の頭上から、そして視界の左右のぼやけて見える場所に突如現れる奇妙な物体や人物に驚いたり、段階的にスケールが変わっていく宇宙空間に放り出されたときに見るであろう世界が自分を包み込み、心は驚異と好奇心が交錯するおかしな状態になる。そこにはあるはずがないのに見えている無数の素粒子に取り囲まれたときに感じる奇妙な感覚。それは「迫力」という言葉を超える深い存在感だった。

おかしな気分を少しやわらげてくれたのは、渋い声のナレーションで語られる物理学の説明だった。ミクロの世界で泡立つ時空と不確定性原理、余剰次元の話、カラビ-ヤウ空間、膨張する宇宙などこれまで学び、親しんできた解説は目の前に広がる非現実世界を自分の脳内の知識と結び付けてくれる。全体としては体感映画なので、解説は最小限に抑えられていた。息を飲んだのはぐにゃりと曲がって倒れてきた2本の高層ビルが消えて赤い鳥居の列が現れるという現実世界では絶対におこらない映像だった。夢の中ではそういう体験をするかもしれないがとても奇妙な光景だ。3D CG作品ならではの表現である。

大栗先生が監修されたことによって映像は科学的に正確なものに仕上がっている。それは講演会で明らかにされたことなのだが、映像にでてくる光子や電子、ヒッグス粒子、クォークの表現はその実態を映したものになっている。ナレーションでは語られないので注意が必要だ。僕自身、空中を浮遊しながら形を変えるカラビ-ヤウ空間の動きは不確定性原理による量子的な揺らぎをあらわしているのだと思ったり、襟巻で顔を隠しているT.o.E.の姿は万物の理論がまだ明らかになっていないことを意味しているのだと思ったりしていた。

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講演会の感想

会場を移して大栗先生の講演会が始まった。最初の15分は科学未来館の外国人スタッフによる挨拶と映画についての説明、次の45分は大栗先生の講演会と質疑応答に割り当てられた。

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講演会のために先生は54枚のスライドを用意されていた。僕は2012年以来、朝日カルチャーセンターで先生の物理学講座を受講させていただいているのだが、毎回その講演、講座に合わせて先生がスライドを作り直されているのに感心させられている。講演はこれまで受講した物理学講座のダイジェスト版のような感じだった。試写会から続いていたふわふわした非現実感覚からようやく日常の世界に戻ることができた。

講演はガリレオ以来400年にわたる物理学の歴史を一般相対性理論、素粒子物理学、宇宙論の3側面から解説し、超弦理論にまで話を進められていた。その中で先生の著書4冊も紹介された。一般の方が理論物理学の世界に入門するために最適な組み合わせだ。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863

数学の言葉で世界を見たら: 大栗博司http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8ffea17402dcf34e5991b154acef39d9

数学は自然科学を記述するのに最適な言葉である。そして不思議なことに9次元の超弦理論の世界と最先端の数学理論は密接なつながりを持ち、互いに影響を与えながら発展しているのだ。(参考書籍:「見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス」、「数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル」)


講演ではさらに『9次元からきた男』が完成するまでのいきさつ、映画の見どころ、物理学の内容が映像にどのように反映されているかを解説された。2回目の試写会を見たほうがよかったかもしれないと思った。帰りのゆりかもめでも朝日カルチャーの仲間は口々に「講演会は動画で一般公開したほうがいいよね。」と言っていたし。(講演の内容は特設ウェブページに掲載される予定だそうです。)

講演会の最後に清水崇監督と山本信一さんも登壇され、ひとことずつ制作時の話は感想を述べられていた。お二人の思わぬ登場に会場は大いに沸き立った。

左から山本さん、清水さん、大栗先生
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『9次元からきた男』は4月20日の科学未来館のリニューアルオープンに合わせて一般公開される。異世界体験してみたい方、最先端物理学の世界を体感したい方はぜひ足をお運びいただきたい。


大栗先生と奥様のこと

試写会には大栗先生だけでなく奥様や(おそらく)大栗先生ご夫妻のご友人の方々もいらっしゃっていた。映画と講演会の前後には先生とお話できたし、映画の後には奥様が「たけのやさん」や僕がいる席までいらっしゃったのでご挨拶することができた。お会いするのは初めてである。

奥様もブログをお書きになっており、僕はときおり読ませていただきアメリカでの生活の様子を愉しませていただいていたのだが、なんと奥様も僕のブログをお読みになっていたという。これはうれしかったと同時に驚き、恐れ入ってしまった。ブログに迂闊なことは書けないぞ。。。

ということで奥様のブログもここに紹介しておこう。米国在住20年である。

ローズ家の台所
http://crowncity.exblog.jp/

そして大栗先生のブログはもちろんこちらだ。

大栗博司のブログ
http://planck.exblog.jp/


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以下、日本科学未来館で撮った写真を貼っておく。

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