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多次元空間へのお誘い(8):通用しない一般常識

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3次元空間で交わる立体?

注意:この記事には誤りが含まれています。たとえば「4次元空間では面と面の交わりは点です。」が正しいのです。この記事はそのままにして、後日訂正記事を書きます。


通用しない一般常識

前回の記事の最後で矛盾がでてきてしまいましたので、今日はこれを解決することにしましょう。

前回は4次元空間の中の垂直空間にいる「彼」に手伝ってもらいながら、次の結論を得たのでした。

- 4次元空間に1次元物体を置くと一般的に3次元空間からは0次元の点として観測される。
- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。
- 4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。

その後、3次元空間で経験的事実として知っている次の事がらをあてはめた結果、矛盾がでてきてしまったわけです。これらは私たちの世界の一般常識です。

- 線と線の交わりは点、線と面の交わりは点
- 面と面の交わりは線、線と立体の交わりは線
- 面と立体の交わりは面
- 立体と立体の交わりは立体

どこが矛盾しているかというと、たとえば「立体と立体の交わりは立体」についていえば、3次元のものと3次元のものの交わりのことについて述べているから、立体(3次元)と3次元空間の交わりを考えることにも使えるわけです。すると「3次元空間で観測される立体の次元は3次元です。」という文章ができあがりますよね?つまり、あたりまえのことを言っているだけにすぎません。

でもこれは上の「4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。」とは明らかに矛盾しています。


矛盾を解決する方法をひとことで言ってしまうと、あなたが「立体と立体の交わりは面である。」ということを理解できるかどうかにかかっているのです。

「えっ!それおかしいでしょ!」という声が聞こえてくるようです。なぜなら一般常識と違うわけですから。

理解できていない方が多いと思いますので、ひとつずつ確認していきましょう。全部確認しなくても大丈夫なので、交わる物体が同じ次元の組み合わせのものだけ使って確認させていただくことにします。


3次元空間の一般常識

「線と線の交わりは点」については、きっとこういう状況を思い浮かべたと思います。3次元空間の中で青い線と赤い線が交わっています。そして交わりは「点」です。



「面と面の交わりは線」のときは、こういう状況ですよね?3次元空間の中で青い面と赤い面が交わっています。交わっている部分は「線」です。



そして最後に「立体と立体の交わりは立体」のときはこういう状況を思い浮かべていると思うのです。3次元空間の中で青い立方体と赤い立方体が交わっていて、交わっている部分を黄色で示しています。



でも実をいうとこれは「交わっている」のではなく「重なっている」だけです。おわかりでしょうか?

おわかりにならない方のために、次元をひとつ下げてご説明しましょう。「2次元空間の一般常識」です。2次元空間には点と線と面しか存在できません。


2次元空間の一般常識

「線と線の交わり」について、2次元生物としての「彼」は、次のような状況を思い浮かべます。2次元空間の中で青い線と赤い線が交わっています。そして交わりは「点」です。



「面と面の交わり」については、次の状況を思い浮かべます。2次元空間の中で青い線と赤い線が交わって....いや、重なっています。そして重なっている部分は線ではなく「面」です。2次元空間には「高さ」がとれないので、こういう重なり方しかできません。



おわかりになりましたよね?

まだおわかりにならない方のために、もうひとつ次元を下げてみます。「1次元空間の一般常識」です。1次元空間には点と線しか存在できません。


1次元空間の一般常識

「線と線の交わり」について、1次元生物の「彼」は、次のような状況を思い浮かべます。1次元空間の中で青い線と赤い線が交わって...いや「重なって」います。そして重なっている部分は点ではなく「線」です。




「交わる」と「重なる」の違いがおわかりになりましたでしょうか?

「交わる」ためには、物体の次元よりひとつ大きい次元の空間が必要で、その空間の中で物体と物体が共通部分を持つのです。

「重なる」ためには、物体の次元と同じ次元の空間の中で、物体と物体が共通部分を持つわけです。

ですから、私たちの3次元空間での立体は「交わっている」のではなく「重なっている」だけです。立体と立体が交わるためには4次元空間が必要なのです。

ですから、3次元空間の一般常識は次のように書き換えなければなりません。

- 線と線の交わりは点、線と面の交わりは点
- 面と面の交わりは線、線と立体の重なりは線
- 面と立体の重なりは面
- 立体と立体の重なりは立体

あともうひとつ気がつくことは2次元の一般常識の中の「面と面の重なりが面」になっていることです。3次元空間での常識だと「面と面の交わりは線」ですよね?「重なり」が「交わり」に変わることで「面」が「線」になるのです。次元がひとつ下がります。他の例でも確認していただけるとわかりますが、該当するすべてのケースでこのことはあてはまるのです。

言葉の言い換えだけで結論を出している感じですが、3次元空間で「立体と立体の重なりは立体(3次元)」ならば「立体と立体の交わりは面(2次元)」ということが言えるのです。そして、交わるために4次元空間が必要になります。


4次元空間の一般常識

同様にして「重なり」を「交わり」に置き換えて、2つの物体の共通部分の次元をひとつ下げてすべて書き出すと次のようになります。

- 線と線の交わりは点、線と面の交わりは点
- 面と面の交わりは線、線と立体の交わりは点
- 面と立体の交わりは線
- 立体と立体の交わりは面

これにもうひとつ次の常識を加えれば「4次元空間の一般常識」が得られます。

- 超立体と超立体の重なりは超立体


そして「4次元空間の一般常識」の中の次のものが、前回の記事の結論と一致していることは、次の項目を見ればおわかりですね?

- 線と立体の交わりは点
- 面と立体の交わりは線
- 立体と立体の交わりは面

- 4次元空間に1次元物体を置くと一般的に3次元空間からは0次元の点として観測される。
- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。
- 4次元空間に3次元物体を置くと一般的に3次元空間からは2次元の曲面として観測される。

これで矛盾が解決しました。めでたし、めでたしです!

矛盾が生じてしまった理由は、一般常識にとらわれて3次元空間で交わることができる物体が2次元までだということを気付かなかった、もしくは忘れていたからです。


一般に次のような結論になります。2つの同じ次元数の物体が交わるとき、その交わりは1つ次元が小さい物体になるわけです。きれいに数字が並びます。

- 1次元物体どうしの交わりは0次元物体
- 2次元物体どうしの交わりは1次元物体
- 3次元物体どうしの交わりは2次元物体
- 4次元物体どうしの交わりは3次元物体
- 5次元物体どうしの交わりは4次元物体
- 6次元物体どうしの交わりは5次元物体
- N次元物体どうしの交わりはN-1次元物体


表にするとわかりやすいですね。次元が違う物体の組み合わせも埋めておきます。

赤い物体の次元数を横にとり、青い物体の次元数を縦に取ります。そして赤と青の物体が交わっている部分の次元数が黒い数字です。赤と青の箇所は物体でも空間でもかまいません。2つが交わるために必要な空間は、赤と青の次元数の大きいほうよりさらに1つ高い次元の空間となります。




このように次元が違う空間は、それぞれ少しずつ違う一般常識をもっています。

私たちの世界の一般常識では立方体と立方体の重なりは3次元になるわけです。これは一般常識が4次元空間の事情を考慮していないからです。

4次元以上の高次元空間では「立体と立体の交わりは面」ということが言えるわけですし、これが3次元以上のすべての次元の空間で成り立っているわけですから「普遍的な事実」として受け入れるべきないのでしょう。

けれども、就職試験や入学試験では、やはり「立体と立体の交わりは立体」、「立体と面の交わりは面」、「立体と線の交わりは線」と回答してください。会社や学校は4次元空間にあるわけではないですから。


「交わり」と「重なり」の使い分けのあいまいさ

日常生活で使われる「交わり」と「重なり」という言葉にはあいまいな部分がありますし、それどころか算数や数学の教科書でも使い方はまちまちなのです。

たとえば「集合」を学ぶときに使われるベン図では重なっている部分を集合の「交わり」と呼んでいます。



また次のように2つの円柱の共通部分の体積を求める問題では「円柱と円柱が交わっている部分の体積を求めよ。」などと表現しています。今回の記事の言い方では「重なっている部分」となるべきですよね。




義務教育では「空間図形」のところで「物体と物体の交わり」のことを学びます。それでは教科書は私たちに間違ったことを教えていたのでしょうか?

いいえ、違います。調べてみると「物体と物体の交わり」のところで教科書では「線と面の組み合わせについてだけ説明しているのです。「立体と平面の交わり」や「立体と直線の交わり」については触れていません。

「そんなはずは。。。」と私たちが思ってしまうとしたら、それは教科書のほかのところで、次のような図を目にしていたからだと思うのです。

たとえば「立体の断面」について学ぶ箇所では、次のような図を目にします。「4次元空間での交わり」は必要ありませんね。



また、「直方体の対角線」について学ぶ箇所では、次のような図を使います。これも「物体の交わり」とは関係ありません。




時がたち、何をどこで学んだか忘れてしまった時点で、立体のことも含めて「交わりの関係」が私たちの一般常識に組み込まれてしまったのではないでしょうか?

人間の記憶などあてにならないものです。


さて、次回の記事では前回の記事で導いたことのうち、以下のことを別の方法を使って確認することにいたします。

- 4次元空間に2次元物体を置くと一般的に3次元空間からは1次元の曲線として観測される。

なぜ、しつこくこのことを確認したいかというと、4次元空間で絡まっている面と面が、私たちの3次元空間からどのように見えるかということを知るための前段階になるからです。


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