内容紹介:
ヒルベルト空間と線形作用素の理論の基本的なアイデアと結果を系統的に叙述し,ヒルベルト空間の形式を用いて量子力学の数学的基礎を解説。
改訂増補版である本著は,関数解析への接続を意識し,新たにバナッハ空間とコンパクト作用素についての記述をそれぞれ大幅に追加した。また,量子力学の応用例として「水素原子のスペクトル解析」についての章も追加している。
平成9年の初版以来,多くの方にご愛読を頂いた本書に,新たな応用的知識を増補することにより,ヒルベルト空間に関する更なる広い知識と深い理解の修得を目指す。2014年7月刊行、338ページ。(改訂前の版は276ページ)
著者略歴:
新井朝雄
1979年東京大学理学系大学院修士課程修了。現在、北海道大学大学院理学研究院教授。理学博士
5年前に「ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄」の記事で紹介した数理物理学書が、2014年7月に改訂増補版として発売されていることに気がついた。すでにご存知の方もいると思うがツイートしている人が少ないので発売情報として紹介しておこう。
初学者の方へ: 「量子力学の数学的基礎を解説」と言っても、本書は量子力学を学ぶために必要な数学を解説した本ではないのでご注意いただきたい。量子力学を学ぶのならば本書ではなく物理学の教科書を読んでほしい。本書は量子力学の理論を数学的に厳密な形で裏づけを与えるための数学書である。これは「物理学の問題を解くための道具としての数学からの脱却」を意味するものだ。量子力学をひととおり学んでから読んでいただきたい。
これから読もうと思っている方は改訂増補版をお買い求めいただきたい。
「ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版:新井朝雄」

正誤表は共立出版のホームページで確認できる。
本書の紹介ページ(共立出版)
http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320110892
改訂前の版の紹介記事の中で僕は「読後の感想としては、後半の量子力学系の解説にもう少しページを割いてほしかった。」と書いている。改訂増補版の第8章は、まるで僕の要望にこたえていただいたかのようだ。
細かい改訂箇所はいくつかあると思うが、増補された箇所を青字で示しておこう。今回の改訂増補によってページ数は276ページから338ページに増えた。
第1章 ヒルベルト空間
1.1 ベクトル空間
1.2 内積空間
1.3 ヒルベルト空間
1.4 正射影空間
1.5 完全正規直交系
1.6 L2(Rd)におけるいくつかの基本的事実
1.7 より一般的な空間への上昇 ―ノルム空間とバナッハ空間
第2章 ヒルベルト空間上の線形作用素
2.1 線形作用素
2.2 有界線形作用素
2.3 有界線形汎関数とリースの表現定理
2.4 ユニタリ作用素とヒルベルト空間の同型
2.5 有界作用素の基本的性質
2.6 非有界作用素
2.7 作用素の拡大と共役作用素
2.8 閉作用素と可閉作用素
2.9 レゾルヴェントとスペクトル
2.10 自己共役作用素
2.11 自己共役作用素のスペクトル
2.12 コンパクト作用素
2.13 一般の線形作用素のスペクトルの分類
第3章 作用素解析とスペクトル定理
3.1 正射影作用素
3.2 単位の分解と作用素値汎関数
3.3 作用素値汎関数の性質 ―作用素解析
3.4 スペクトル定理
第4章 自己共役作用素の解析
4.1 自己共役性に対する判定条件
4.2 本質的自己共役性
4.3 強連続1パラメータユニタリ群とストーンの定理
4.4 自己共役作用素の強可換性
第5章 偏微分作用素の本質的自己共役性とスペクトル
5.1 急減少関数の空間とフーリエ変換
5.2 偏微分作用素とその本質的自己共役性
5.3 スペクトル
5.4 一般化されたラプラシアン
第6章 量子力学の数学的原理
6.1 量子力学とはどういうものか
6.2 量子力学の基礎概念 ―状態と物理量
6.3 ハイゼンベルクの不確定性関係
6.4 正準量子化
6.5 状態の時間発展 ―シュレーディンガー方程式
6.6 物理量の時間発展 ―ハイゼンベルクの運動方程式
6.7 最低エネルギーに対する変分原理
第7章 量子調和振動子
7.1 量子調和振動子のハミルトニアンと固有値問題
7.2 固有値問題の抽象的定式化とその解
7.3 ハミルトニアンのスペクトルと固有関数
第8章 球対称なポテンシャルをもつ量子系と水素原子
8.1 水素様原子のハミルトニアン
8.2 球対称ポテンシャルをもつ量子系
付録A ルベーグ積分論における基本定理
付録B 確率論の基本的事項
練習問題解答
あとがき
索引
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