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新版 電子と原子核の発見(ちくま学芸文庫):S.ワインバーグ

新版 電子と原子核の発見(ちくま学芸文庫):S.ワインバーグ

内容紹介
100年ほど前まで、人類は電子も原子核も陽子も中性子も知らなかった。これら究極の物質はすべて、優れた科学者たちの深い洞察と巧みな実験によってその存在が突き止められた。トムソンによる電子の発見、ミリカンによる電子の電荷の測定、ラザフォードによる原子核の発見、チャドウィックによる中性子の発見…。彼らはどのように推論し、どのような実験で未知の粒子を追いつめていったのか。壮大なドラマが、物理的な厳密さを貫きながら具体的に語られ、力学や電磁気学、熱学も必要に応じわかりやすく解説される。ノーベル賞学者による20世紀物理学への格好の入門書。名著の最新改訂版。
2006年2月刊行。432ページの文庫本。

著者略歴
スティーブン・ワインバーグ
1933年、ニューヨーク生まれ。コーネル大学を卒業し、コロンビア大学でPh.D.を取得。現在テキサス大学教授。専門は素粒子物理学。1979年にS・グラショウ、A・サラムとともに電弱理論への貢献でノーベル物理学賞を受賞。


理数系書籍のレビュー記事は本書で220冊目。

原子の発見史の次は電子と原子核の発見史を学ぼう。

本書は「だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋」の次に読むとよい本だ。

電子の流れが電流であることはもはや一般常識だ。けれどもそれはいつ頃どのようにして理解されるようになったのだろうか?また原子核についてはどうだろうか?

本書は20世紀初頭の物理学者による実験と推論の積み重ねによって電子と原子核の存在が明らかにされ、原子の構造が解明されていったプロセスを詳細に解説した科学史ドキュメントである。

電子はJ.J.トムソンが1897年に行なった陰極線の実験によって発見され、この実験で比電荷の値(電子の質量と素電荷の比率)が求められた。さらに1909年にミリカンが行なった油滴実験によって素電荷の値(電気素量)が求められたことが知られている。その結果、電子の質量が求められたわけだ。

電子の発見
http://www.kutl.kyushu-u.ac.jp/seminar/MicroWorld/Part1/P17/electron.htm

また原子核の発見はラザフォードによるもので、1909年に有名なガイガー=マースデンの実験を指揮し、1911年に原子核が原子の中心に集中しているという原子模型が発表された。

ラザフォードの実験 
http://www.geocities.jp/hiroyuki0620785/k0dennsikotai/30c2ruthford.htm

本書では本編でこれらの実験の詳細が解説されるだけでなく、65ページにおよぶ「付録」で具体的な計算手順を示してくれている。計算に使われる数学は高校までの範囲に抑えているのがうれしい。さらに言えば微積分の知識も不要だ。

ラザフォードは実験屋で、現実離れした量子力学に懐疑的だったそうだ。彼による散乱実験は古典物理学的に導かれていた。後になって量子力学的に導いても同じ結果が得られたのは幸運だったと言える。

ラザフォード散乱の古典物理学的導出
http://www.astr.tohoku.ac.jp/~chinone/Rutherford_Scattering_1/

ラザフォード散乱の量子力学的導出
http://www.astr.tohoku.ac.jp/~chinone/Rutherford_Scattering_2/

ところで電子や原子核の発見をもたらしたこれらの実験が行われた時期について注意してほしい。

だれが原子をみたか(岩波現代文庫):江沢洋」ではドルトンの原子説は1805年に発表されたものの、原子の存在が最終的に確実なものと認識されるようになったのは1905年のアインシュタインによるブラウン運動を計算によって示した論文や1908年から行われたジャン・ペランによるブラウン運動の精密な検証実験によるものであった。

つまり原子の存在が確実視された時期と電子、原子核が発見された時期は重なっていたのだ。

本書ではさらに陽子と中性子の発見の過程も詳細に解説している。中性子は1928年頃から行われたいくつかの実験によって最終的に1932年にチャドウィックが発見したとされている。

中性子の発見
http://www.kutl.kyushu-u.ac.jp/seminar/MicroWorld3/3Part1/3P13/DiscoverNeutron.htm

さらにディラックによる陽電子の予言は1928年、実験による存在確認は1933年である。(関連記事:「ディラックによる陽電子の予言(1928年)」)

1930年頃までには原子を構成する粒子の種類が次々と明らかになり、原子核の崩壊についての理解も飛躍的に進んだことがわかる。20世紀初頭の物理学の発展は本当にめまぐるしいものだったのだ。


本書はアルファ線、ベータ線、ガンマ線などの放射線や放射能、放射性同位体、原子核の崩壊などについても詳しく学ぶことができる。原子力や放射線に関心をお持ちの方には大いに参考になるだろう。

なお、本書のはじめのほうで「摩擦によって静電気が発生する現象はまだ解明されていない。」と書かれていたのは意外だった。物性物理でとっくの昔に解き明かされていると思っていたからだ。摩擦現象は奥が深い。


著者は素粒子物理学の電弱標準理論でノーベル賞を受賞した超一流の物理学者だ。一般向けの書籍とはいえ記述は正確なので安心してお読みいただける。対象読者は高校生から研究者までということだそうだ。


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第1章:粒子の世界
- 基本的な粒子を求めて
- 科学的表示(指数表示)

第2章:電子の発見
- 電子をめぐる物理学の歴史
- 真空放電と陰極線
- FLASHBACK 電気の性質
- 真空放電と陰極線
- FLASHBACK ニュートンの運動法則
- FLASHBACK 第2法則に関する補足説明
- 陰極線の偏向
- FLASHBACK 電気力
- 電気力による陰極線の偏向
- FLASHBACK 磁気力
- 磁気による陰極線の偏向
- トムソンの実験結果
- FLASHBACK エネルギー
- トムソンの実験におけるエネルギーの関係
- 素粒子としての電子

第3章:原子
- 電荷を測定する
- FLASHBACK 原子の重さ
- FLASHBACK 電気分解
- 電子の電荷の測定

第4章:原子核
- ラザフォードと原子核の発見
- 放射能の発見とその解明
- 原子核の発見
- 原子番号と放射系列
- 中性子

第5章:その他の粒子
- その他の素粒子
- 光子
- ニュートリノ
- 陽電子
- その他の反粒子
- ミューオンとパイ中間子
- W粒子とZ粒子
- 奇妙な粒子
- さらに多くのハドロン
- クォーク
- グルーオン
- 素粒子物理学

引用文献

付録A:ニュートンの運動の第2法則
付録B:電気と磁気による陰極線の偏向
付録C:電場と力線
付録D:仕事と運動エネルギー
付録E:陰極線の実験でのエネルギー保存
付録F:気体の性質とボルツマンの定数
付録G:ミリカンの油滴の実験
付録H:放射性崩壊
付録I:原子内でのポテンシャルエネルギー
付録J:ラザフォード散乱
付録K:運動量保存と粒子の衝突

訳者あとがき
物理単位・定数・元素の表
参考文献
図版・写真出典一覧
索引

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