「天に向かって続く数: 加藤文元、中井保行」
内容紹介:
やさしい数遊びから出発し、現代数学で重要な役割をはたす《p進数》まで、ゆっくりじっくり学ぶ。初等整数論の好入門書でもある。
2016年9月刊行、216ページ。
著者について:
加藤文元: HP: http://www.math.titech.ac.jp/~bungen/index-j.html
1968年宮城県仙台市に生まれる。1993年京都大学理学部卒業。1997年京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻博士後期課程修了。その後、九州大学大学院数理学研究科(当時)助手、京都大学大学院理学研究科准教授、熊本大学大学院自然科学研究科教授を経て、東京工業大学理学院数学系教授。理学博士。専門は数論幾何学。
加藤先生の著書: Amazonで検索
中井保行
1951年京都市に生まれる。1974年京都大学工学部化学工学科卒業。1976年京都大学大学院工学研究科修了。その後、三菱重工業高砂研究所勤務を経て、高校教師となり、現在、京都府立嵯峨野高等学校教諭。京都府立高等学校数学研究会役員、京都府高等学校数学研究会役員。
理数系書籍のレビュー記事は本書で360冊目。
本書は2016年の秋に発売され、加藤先生(@fumiharukato)のツイートを見てすぐ購入していた。いつものことながら僕は読み始めるまでの積読期間が長い。なぜだろう?と不思議に思う。
p進数に入門するまでを数遊びの段階から順に積み上げ、じっくりゆっくりと進んでいく本だ。理工系の大学生ならば教養書レベル、数学と無縁な人ならば専門書だと感じる難易度である。
共著者の中井先生が教鞭をとられている京都府立嵯峨野高等学校で、加藤先生は本書で紹介されるペレリマン数列からp進数にいたる講義をしたことがあり、その内容を二人で本に書いてみようということになったという。これが本書誕生の経緯である。つまり高校生でも理解できる本だと言ってよい。
でも、ツイッターでときどき目にするp進数って何だろう?
p進大好きbot(@non_archimedean)やp進大好きbot大好きbot(@von_archimedean)というアカウントがあるくらいだし、何か特別なものということはわかる。しかし、次のような説明では何のことかさっぱりわからなかった。
小学生の頃、周りに「p進がわからない」と言っている子供は一人もいなかった。つまり皆小学生の頃からp進が分かっていたのだ。
p進はですね...。数学の、数論と言われる値域に過ごしていまして、付値や位相が、超距離から入りますので、そういったところで議論しやすいように、p進、あの、完備付値体」で。であと濃度も大きいので、多くの超越数を持つように、全不連結ぅ...ですかねぇ...。
よくありがちな勘違いとしては、pはprimeで素数だからp進数は「2、3、5、7...など素数を基数とした位取り記数法」だという解釈。でも、これだと十進数と本質的に違いはないから見当はずれだとすぐわかる。
本書のテーマは「数を拡張していくこと」だ。私たちが学び、慣れ親しんできた「自然数→整数→有理数→実数→複素数」、そしてさらに「→四元数→八元数→十六元数→...→2^n元数」という拡張の道筋以外にも「数」と認めてよいものがあること、それがp進数であることを紹介しているのだ。
p進数(p-adic number)とは、1897年にクルト・ヘンゼルによって導入された、数の体系の一つである。結論から言うと、私たちが知っている数に対してp進数はこのような関係をもって存在している。(画像は本書からの引用)
Zpはp進整数環、Qpはp進数体と呼ばれていて、それぞれ整数、有理数を拡張したものとなっている。「環」や「体」が呼び方に含まれていることからわかるように、この2つのグループのp進数は、それぞれ整数や有理数で成り立つ計算規則を満たしている。「計算することができる記号」を数と考えるならば、p進数を数と認めてよいことになる。
本書の章立ては次のとおり。
第1章:2乗してもとにもどる数
第2章:初等整数論の基礎
第3章:ペレリマン数列
第4章:無限m進数とp進数
付録A:補遺
さらに進んだ内容を知りたい読者へ
第1章は、いわゆる「数遊び」である。ここで紹介される誰でも目にしたことがある数遊びにp進数へ至るための出発点があったのだ。
5を2乗すると25で下1桁が5で同じ
25を2乗すると625で下2桁が25で同じ
625を2乗すると390625で下3桁が同じ
これって偶然だろうか?また6でも同じようなことがおこる。
6を2乗すると36で下1桁が6で同じ
76を2乗すると5776で下2桁が同じ
376を2乗すると141376で下3桁が同じ
このように「下m桁が同じ」ということは、ずっと続くのだろうか?もし、ずっと続くとしたらその数は数が一致しない部分も含めて桁数がどんどん大きくなっていく。本書のタイトル「天に向かって続く数」とは、そのように無限桁に増えていく数という意味合いからつけられている。
第2章はいわゆる「初等整数論の基礎」。「初等初等整数論」と言ってもよい。本書でカバーしている範囲を僕は「素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武」で学んだから、すらすら読み進んだ。次のようなことを学ぶわけである。
- 約数と倍数
- ユークリッドの互除法
- 素数と合成数
- 素因数分解の一意性
- 合同式
- 二項定理
- 二項係数と合同式
- オイラーの定理
- 中国式剰余定理
- 10進数とm進数
ここまでの段階で「天に向かって続く無限自然数」は「数かもしれない」ほどの存在である。この無限m進数は第3章以降、証明を積み重ねることで「数もどき」になり、最終的に「数と呼んでもよい」ほど確固たる地位を獲得していくのだ。
そもそも「2乗してもとにもどる数」を方程式で書けばx^2=xのことであり、変形すると
x^2-x=0
x(x-1)=0
だから、実数の範囲ではx=0または1である。この2つの解をAとBということにすれば、この2次方程式の解と係数の関係により、次が成り立っている。
A+B=1
AB=0
本書ではこのA、B以外に「2乗してもとにもどる数」が存在しているというのだ。それも2つである。この「数もどき」の無限m進数をPとQとすれば
P+Q=1
PQ=1
ということになる。詳細は省くが「第3章:ペレリマン数列」と「第4章:無限m進数とp進数」で、無限m進数のmを素数に制限して「p進整数となって整数で成り立つ計算法が満たされることを確認し、さらに割り算を導入することで「p進有理数」であることが明らかにされていく。
そのための証明はとても丁寧に書かれているので理系の素養がある高校生以上ならば、ついていけるだろう。数学とは無縁な方は証明の箇所を飛ばしてお読みになってもよい。大筋はつかめるはずなので、どのように話が進んでいくかを理解できるはずだ。話の流れを追うだけでも満足できると思う。
ペレリマン数列とは本書で解説される無限m進数のことで、白ロシア(現在のベラルーシ共和国)生まれのヤコフ・イシードロヴィッチ・ペレリマンが1911年を皮切りに出版したシリーズのうち『おもしろい数学教室』の94ページのに「2乗しても変わらない無限につづく数」として紹介されているものだ。
ネット上でp進数について本書に比較的近くやさしめな説明をしているページには、次のようなものが見つかった。難しめな説明をしているページはたくさんあるので「p進数で検索」してみるとよい。
p進展開について
http://d.hatena.ne.jp/lemniscus/20111206/1323165927
無限桁の数・無限に数字が続く数 p-進数への足がかりとして
http://materia.jp/blog/20080121.html
「さらに進んだ内容を知りたい読者へ」で、p進数を学ぶために和書2冊、洋書2冊が紹介されている。また、p進数解析、p進数解析幾何学を学ぶための和書として加藤先生ご自身の著書も紹介している。
p進数は現代数学において基本的かつ必要不可欠な概念のひとつになっている。p進数が使われているのは整数論だけではない、幾何学や解析学においてもp進数は重要な役割を果たしているのだ。
「数論講義:J-P.セール」
「数論〈1〉Fermatの夢と類体論:加藤和也、斎藤毅、黒川信重」
「A Course in p-adic Analysis: Alain M. Robert」(Kindle版)
「p-adic Numbers: An Introduction 2nd Edition: Fernando Quadros Gouvea」(Kindle版)
「リジッド幾何学入門:加藤文元」
僕としては、次の本もお勧めしたい。未読なのにお勧めするのは無責任だと思い、1冊注文しておいた。今回、積読本は1冊減ったわけだが、1冊注文したので積読本の冊数は変わらない。
「整数論1: 初等整数論からp進数へ: 雪江明彦」
以上が本書の内容である。加藤先生は数学者でいらっしゃるから数学の範囲でお書きになっている。
しかし、この不可思議な数は数学以外に何の役に立つのだろうか?現実の世界とかかわりをもっているのだろうか?物理学で使われるのだろうか? どうしてもそう思ってしまう。
調べてみると意外なことに(まだ理論や仮説の段階ではあるが)現代物理学と強いつながりがあることがわかった。
たとえばウィキペディアの「p進数」や「p-進量子力学」という項目をお読みになるとよい。
この中に次のようなことが書かれている。
プランク長よりも小さな(領域の)幾何学やトポロジーは、通常の幾何学やトポロジーには関係する必要がないと考えた。一方、まさに花の色が原子から出現するように、通常の幾何学やトポロジーがプランク長よりも小さな領域の幾何学やトポロジーから出現すると考える者もいる。現在、この問題への多くのフレームワークが提案されていて、p-進解析はその中でいくつかの完成されたものを持つ妥当な候補である。
鍵となるのはp進数の離散性である。有理数と同様、p進数は実数のように連続した数ではない。
先日紹介した「量子的世界像 101の新知識: ケネス・フォード」という本の紹介記事の中で「時空の量子化」や「プランクスケールでの空間の幾何学」について言及したが、この極微の世界の離散的な在り様を解き明かすために、p進幾何学や離散的なフラクタルポテンシャル井戸におけるエネルギーの振る舞いが使えるのではないかというアイデアである。
このほかp進数、p進解析は「場の量子論」、「経路積分」、「ローレンツ群のp進一般化」、「弦理論で対称性を交叉させるヴェネチアーノ振幅」、「p進表現論」などでの応用が研究されているようだ。
加藤先生、中井先生、本当は難しく深淵なp進数をやさしくかみ砕き、多くの人が読める形でご紹介いただき、ありがとうございました。とても興味深く読むことができました。
関連記事:
数学する精神―正しさの創造、美しさの発見: 加藤文元
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4d706bf3aeba7eb5fe876b55b8a8496c
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
「天に向かって続く数: 加藤文元、中井保行」
第1章:2乗してもとにもどる数
- ある発見
- 2乗してもとにもどる数
- 天に向かって続く数
- この本の内容
第2章:初等整数論の基礎
- 数の概念
- 初等整数論とは
- 割り算
- 約数と倍数
- ユークリッドの互除法
- 互除法の応用
- 素数と合成数
- 素因数分解の一意性
- 素因数分解の一意性の応用
- 合同式
- 1次合同式
- 二項定理
- 二項係数と合同式
- オイラーの定理
- 中国式剰余定理
- 10進数とm進数
第3章:ペレリマン数列
- ペレリマン数列
- 第一の定義
- 第二の定義
- 第三の定義
- 解と係数の関係もどき
第4章:無限m進数とp進数
- 数に対する新しい見方
- 無限m進数
- 無限m進数の計算
- 無限m進数と1次方程式
- 無限m進数と分数
- ヘンゼルの補題
- 無限m進数の体系
- p進整数
- p進数
- p進数と近似
付録A:補遺
- 整域上のn次方程式の解の個数
- <無限桁数>中国式剰余定理と<解と係数の関係もどき>
- n乗してもとにもどる数
- 有理数の無限m進表示
- 分数べき二項定理とp進数
さらに進んだ内容を知りたい読者へ
あとがき
内容紹介:
やさしい数遊びから出発し、現代数学で重要な役割をはたす《p進数》まで、ゆっくりじっくり学ぶ。初等整数論の好入門書でもある。
2016年9月刊行、216ページ。
著者について:
加藤文元: HP: http://www.math.titech.ac.jp/~bungen/index-j.html
1968年宮城県仙台市に生まれる。1993年京都大学理学部卒業。1997年京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻博士後期課程修了。その後、九州大学大学院数理学研究科(当時)助手、京都大学大学院理学研究科准教授、熊本大学大学院自然科学研究科教授を経て、東京工業大学理学院数学系教授。理学博士。専門は数論幾何学。
加藤先生の著書: Amazonで検索
中井保行
1951年京都市に生まれる。1974年京都大学工学部化学工学科卒業。1976年京都大学大学院工学研究科修了。その後、三菱重工業高砂研究所勤務を経て、高校教師となり、現在、京都府立嵯峨野高等学校教諭。京都府立高等学校数学研究会役員、京都府高等学校数学研究会役員。
理数系書籍のレビュー記事は本書で360冊目。
本書は2016年の秋に発売され、加藤先生(@fumiharukato)のツイートを見てすぐ購入していた。いつものことながら僕は読み始めるまでの積読期間が長い。なぜだろう?と不思議に思う。
p進数に入門するまでを数遊びの段階から順に積み上げ、じっくりゆっくりと進んでいく本だ。理工系の大学生ならば教養書レベル、数学と無縁な人ならば専門書だと感じる難易度である。
共著者の中井先生が教鞭をとられている京都府立嵯峨野高等学校で、加藤先生は本書で紹介されるペレリマン数列からp進数にいたる講義をしたことがあり、その内容を二人で本に書いてみようということになったという。これが本書誕生の経緯である。つまり高校生でも理解できる本だと言ってよい。
でも、ツイッターでときどき目にするp進数って何だろう?
p進大好きbot(@non_archimedean)やp進大好きbot大好きbot(@von_archimedean)というアカウントがあるくらいだし、何か特別なものということはわかる。しかし、次のような説明では何のことかさっぱりわからなかった。
小学生の頃、周りに「p進がわからない」と言っている子供は一人もいなかった。つまり皆小学生の頃からp進が分かっていたのだ。
p進はですね...。数学の、数論と言われる値域に過ごしていまして、付値や位相が、超距離から入りますので、そういったところで議論しやすいように、p進、あの、完備付値体」で。であと濃度も大きいので、多くの超越数を持つように、全不連結ぅ...ですかねぇ...。
よくありがちな勘違いとしては、pはprimeで素数だからp進数は「2、3、5、7...など素数を基数とした位取り記数法」だという解釈。でも、これだと十進数と本質的に違いはないから見当はずれだとすぐわかる。
本書のテーマは「数を拡張していくこと」だ。私たちが学び、慣れ親しんできた「自然数→整数→有理数→実数→複素数」、そしてさらに「→四元数→八元数→十六元数→...→2^n元数」という拡張の道筋以外にも「数」と認めてよいものがあること、それがp進数であることを紹介しているのだ。
p進数(p-adic number)とは、1897年にクルト・ヘンゼルによって導入された、数の体系の一つである。結論から言うと、私たちが知っている数に対してp進数はこのような関係をもって存在している。(画像は本書からの引用)
Zpはp進整数環、Qpはp進数体と呼ばれていて、それぞれ整数、有理数を拡張したものとなっている。「環」や「体」が呼び方に含まれていることからわかるように、この2つのグループのp進数は、それぞれ整数や有理数で成り立つ計算規則を満たしている。「計算することができる記号」を数と考えるならば、p進数を数と認めてよいことになる。
本書の章立ては次のとおり。
第1章:2乗してもとにもどる数
第2章:初等整数論の基礎
第3章:ペレリマン数列
第4章:無限m進数とp進数
付録A:補遺
さらに進んだ内容を知りたい読者へ
第1章は、いわゆる「数遊び」である。ここで紹介される誰でも目にしたことがある数遊びにp進数へ至るための出発点があったのだ。
5を2乗すると25で下1桁が5で同じ
25を2乗すると625で下2桁が25で同じ
625を2乗すると390625で下3桁が同じ
これって偶然だろうか?また6でも同じようなことがおこる。
6を2乗すると36で下1桁が6で同じ
76を2乗すると5776で下2桁が同じ
376を2乗すると141376で下3桁が同じ
このように「下m桁が同じ」ということは、ずっと続くのだろうか?もし、ずっと続くとしたらその数は数が一致しない部分も含めて桁数がどんどん大きくなっていく。本書のタイトル「天に向かって続く数」とは、そのように無限桁に増えていく数という意味合いからつけられている。
第2章はいわゆる「初等整数論の基礎」。「初等初等整数論」と言ってもよい。本書でカバーしている範囲を僕は「素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武」で学んだから、すらすら読み進んだ。次のようなことを学ぶわけである。
- 約数と倍数
- ユークリッドの互除法
- 素数と合成数
- 素因数分解の一意性
- 合同式
- 二項定理
- 二項係数と合同式
- オイラーの定理
- 中国式剰余定理
- 10進数とm進数
ここまでの段階で「天に向かって続く無限自然数」は「数かもしれない」ほどの存在である。この無限m進数は第3章以降、証明を積み重ねることで「数もどき」になり、最終的に「数と呼んでもよい」ほど確固たる地位を獲得していくのだ。
そもそも「2乗してもとにもどる数」を方程式で書けばx^2=xのことであり、変形すると
x^2-x=0
x(x-1)=0
だから、実数の範囲ではx=0または1である。この2つの解をAとBということにすれば、この2次方程式の解と係数の関係により、次が成り立っている。
A+B=1
AB=0
本書ではこのA、B以外に「2乗してもとにもどる数」が存在しているというのだ。それも2つである。この「数もどき」の無限m進数をPとQとすれば
P+Q=1
PQ=1
ということになる。詳細は省くが「第3章:ペレリマン数列」と「第4章:無限m進数とp進数」で、無限m進数のmを素数に制限して「p進整数となって整数で成り立つ計算法が満たされることを確認し、さらに割り算を導入することで「p進有理数」であることが明らかにされていく。
そのための証明はとても丁寧に書かれているので理系の素養がある高校生以上ならば、ついていけるだろう。数学とは無縁な方は証明の箇所を飛ばしてお読みになってもよい。大筋はつかめるはずなので、どのように話が進んでいくかを理解できるはずだ。話の流れを追うだけでも満足できると思う。
ペレリマン数列とは本書で解説される無限m進数のことで、白ロシア(現在のベラルーシ共和国)生まれのヤコフ・イシードロヴィッチ・ペレリマンが1911年を皮切りに出版したシリーズのうち『おもしろい数学教室』の94ページのに「2乗しても変わらない無限につづく数」として紹介されているものだ。
ネット上でp進数について本書に比較的近くやさしめな説明をしているページには、次のようなものが見つかった。難しめな説明をしているページはたくさんあるので「p進数で検索」してみるとよい。
p進展開について
http://d.hatena.ne.jp/lemniscus/20111206/1323165927
無限桁の数・無限に数字が続く数 p-進数への足がかりとして
http://materia.jp/blog/20080121.html
「さらに進んだ内容を知りたい読者へ」で、p進数を学ぶために和書2冊、洋書2冊が紹介されている。また、p進数解析、p進数解析幾何学を学ぶための和書として加藤先生ご自身の著書も紹介している。
p進数は現代数学において基本的かつ必要不可欠な概念のひとつになっている。p進数が使われているのは整数論だけではない、幾何学や解析学においてもp進数は重要な役割を果たしているのだ。
「数論講義:J-P.セール」
「数論〈1〉Fermatの夢と類体論:加藤和也、斎藤毅、黒川信重」
「A Course in p-adic Analysis: Alain M. Robert」(Kindle版)
「p-adic Numbers: An Introduction 2nd Edition: Fernando Quadros Gouvea」(Kindle版)
「リジッド幾何学入門:加藤文元」
僕としては、次の本もお勧めしたい。未読なのにお勧めするのは無責任だと思い、1冊注文しておいた。今回、積読本は1冊減ったわけだが、1冊注文したので積読本の冊数は変わらない。
「整数論1: 初等整数論からp進数へ: 雪江明彦」
以上が本書の内容である。加藤先生は数学者でいらっしゃるから数学の範囲でお書きになっている。
しかし、この不可思議な数は数学以外に何の役に立つのだろうか?現実の世界とかかわりをもっているのだろうか?物理学で使われるのだろうか? どうしてもそう思ってしまう。
調べてみると意外なことに(まだ理論や仮説の段階ではあるが)現代物理学と強いつながりがあることがわかった。
たとえばウィキペディアの「p進数」や「p-進量子力学」という項目をお読みになるとよい。
この中に次のようなことが書かれている。
プランク長よりも小さな(領域の)幾何学やトポロジーは、通常の幾何学やトポロジーには関係する必要がないと考えた。一方、まさに花の色が原子から出現するように、通常の幾何学やトポロジーがプランク長よりも小さな領域の幾何学やトポロジーから出現すると考える者もいる。現在、この問題への多くのフレームワークが提案されていて、p-進解析はその中でいくつかの完成されたものを持つ妥当な候補である。
鍵となるのはp進数の離散性である。有理数と同様、p進数は実数のように連続した数ではない。
先日紹介した「量子的世界像 101の新知識: ケネス・フォード」という本の紹介記事の中で「時空の量子化」や「プランクスケールでの空間の幾何学」について言及したが、この極微の世界の離散的な在り様を解き明かすために、p進幾何学や離散的なフラクタルポテンシャル井戸におけるエネルギーの振る舞いが使えるのではないかというアイデアである。
このほかp進数、p進解析は「場の量子論」、「経路積分」、「ローレンツ群のp進一般化」、「弦理論で対称性を交叉させるヴェネチアーノ振幅」、「p進表現論」などでの応用が研究されているようだ。
加藤先生、中井先生、本当は難しく深淵なp進数をやさしくかみ砕き、多くの人が読める形でご紹介いただき、ありがとうございました。とても興味深く読むことができました。
関連記事:
数学する精神―正しさの創造、美しさの発見: 加藤文元
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4d706bf3aeba7eb5fe876b55b8a8496c
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
「天に向かって続く数: 加藤文元、中井保行」
第1章:2乗してもとにもどる数
- ある発見
- 2乗してもとにもどる数
- 天に向かって続く数
- この本の内容
第2章:初等整数論の基礎
- 数の概念
- 初等整数論とは
- 割り算
- 約数と倍数
- ユークリッドの互除法
- 互除法の応用
- 素数と合成数
- 素因数分解の一意性
- 素因数分解の一意性の応用
- 合同式
- 1次合同式
- 二項定理
- 二項係数と合同式
- オイラーの定理
- 中国式剰余定理
- 10進数とm進数
第3章:ペレリマン数列
- ペレリマン数列
- 第一の定義
- 第二の定義
- 第三の定義
- 解と係数の関係もどき
第4章:無限m進数とp進数
- 数に対する新しい見方
- 無限m進数
- 無限m進数の計算
- 無限m進数と1次方程式
- 無限m進数と分数
- ヘンゼルの補題
- 無限m進数の体系
- p進整数
- p進数
- p進数と近似
付録A:補遺
- 整域上のn次方程式の解の個数
- <無限桁数>中国式剰余定理と<解と係数の関係もどき>
- n乗してもとにもどる数
- 有理数の無限m進表示
- 分数べき二項定理とp進数
さらに進んだ内容を知りたい読者へ
あとがき