「宝くじが当たったら (講談社文庫) :安藤祐介」(Kindle版)
内容紹介:
32歳、わくわく食品経理課勤務、独身。ごく普通のサラリーマン・修一の趣味は宝くじをバラで10枚買うこと。ところが今年、一等、2億円が降ってきた。あくまで堅実でつつましい生活を続けようとした修一の目の前に、急に現れた親戚、慈善団体に同級生。さらにネットに実名が流出、会社の電話が鳴りやまない! 最高の幸福が招いた大混乱、いったい誰を信じれば? ジャンボなドリーム、宝くじエンタテインメント!
2015年12月刊行、304ページ。
著者について:
安藤祐介
1977年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、学習塾に入社するも過労で倒れて退職、2社目の酒類業界新聞社では試用期間で解雇通告を受ける。その後は営業職としてITベンチャー3社を渡り歩き、現在公務員。2007年、『被取締役新入社員』でTBS・講談社第1回ドラマ原作大賞を受賞。(著書を検索)
先日紹介した映画『インセプション(2010)』と同様、今回も「夢」にまつわる記事。
昨年末に3枚だけ買った年末ジャンボ宝くじのうち1枚が3000円当たった。ジャンボ宝くじはいつも3枚買っていて、昨年のハロウィンジャンボと一昨年の年末ジャンボは、それぞれ300円ずつ当たっている。ときどき3000円当たるので、過去の勝ち負けをならすと損も得もしていない。(運が強いほうだと思う。)
当せん番号
豆知識: 宝くじでは「当せん」のようにひらがなで表記する。漢字だと「当籤(とうせん)」となって読めない人がでるからだ。「当選」は選挙で選ばれるときや、懸賞などで選抜されるときに使う。
1等の7億円が当せんする確率は、北海道全体で3枚だけ落ちてくる1円玉が頭にぶつかる確率くらいだとか、隕石に当たって死ぬ確率くらいだとか言われている。
ジャンボ宝くじの1等当せん確率は雷に撃たれるのと同じ!?
https://matome.naver.jp/odai/2140479404950634801
当せん確率や当せん金の期待値を考えたら、ナンバーズのほうがずっと有利なのだ。でも、僕がジャンボ宝くじを選ぶのは「夢を買う」からなのだろう。購入日から抽選会の日までワクワクしていられるからだ。
「1等が当たったらどうしよう?」、「どんなことが待ち受けているのだろうか?」そのような妄想に満たれて、過ごす数週間に対して払う対価だと思ったらハズレてもがっかりしない。僕が買うのは毎回3枚だけなのだから。
本書はこのような妄想をシミュレーションするための本である。完全なシミュレーション本であり、実際の当せん者の「その後の人生」を書いたドキュメンタリー本ではない。
もし、自分が同じテーマで小説を書くとしたらと考えると、ストーリーはかなり制限されてくると思った。テーマを自由に選べる小説と違い、1等の当せん後に予想されることはだいたい同じだからである。
- 当せん者はごく普通の一般庶民(会社社長や有名人であってはならない。)
- 当せんがわかったときの驚き
- 銀行での説明や手続き
- 秘密を守ることの難しさ
- 家族や親族の反応
- 「秘密はあり得ない」ことを思い知る
- 友達にばれてしまう
- 募金・寄付依頼の電話、断ると「それでも人間ですか!」と非難される
- 投資話、儲け話の電話
- 人間不信になる
- ネットに拡散、炎上してしまう。
- 嫌がらせや脅迫電話
- 借金や支払いの無心を受ける
- 同僚のやっかみ、人間関係の変化、交友関係の変化
- 飲み会やパーティー、結婚式、家の改築など増え続ける出費
- 詐欺にあったり闇金から強迫を受けたりする
- あっという間にお金がなくなる
つまり、この流れになることがほぼ決まっているのだ。この流れを守りながら、どれくらい面白い文章を書けるか、読者を楽しませることができるかが、作家の技量にかかってくる。このテーマの本に「意外性」を求めてはいけない。「宝くじが当たったら」は数ある小説のひとつのジャンル、お題目なのである。
読んでみたところ、まあまあ面白かった。小説としては上手に書かれている。本書で主人公が1等で受け取るのは2億円である。微妙な金額だ。32歳だから会社を辞めるまでの決断はできない。まさか当せんするとは思っていなかったから、どのように使ったらよいか大いに悩むわけである。
世の中には億単位の資産を持っている人がたくさんいるわけだから、2億円はたいした金額ではない。ちゃんと管理しようとすればできるのである。しかし、そのような大金を持ったことがない人だと、よほど注意しなければ同じような末路をたどることになるのだ。
当せんすることで不幸にならないようにと、1000万円以上の高額当せん者に渡されるのが「【その日】から読む本」とう小冊子。非売品である。(内容全文はこのページに公開されている。)
この冊子は、たまにヤフオクに出品されていて、相場はこのとおり。(画像クリックで拡大)
幸運な人だけが手に取れる【その日から読む本】とは?
https://matome.naver.jp/odai/2139381299063048901
宝くじ高額当せん者だけに配布される冊子に書かれた「驚愕の注意点」…不幸なトラブルも多数
http://biz-journal.jp/2017/01/post_17823.html
一般庶民がいきなり大金を手にすると、ろくなことにはならない。そうは言っても、現在のジャンボ宝くじの1等は7億円である。
もし7億円あったら、自分は何をするだろう?
ふたたび大学を受験して物理学を専攻し、研究者への道を目指してみたい。(趣味で博士課程、趣味でポスドク、趣味で物理学者をするのである。)時間がたくさんあるから「とね日記」も毎日更新することになるだろう。
実際はそうはならず、自堕落で贅沢な生活に流れてしまうのだろうなぁ。本書が示す不幸へのルートを脱して、本当の夢を追うのは相当むずかしそうだ。
宝くじに当たった人は人生変わったのか?高額当せん者6人の使い道
https://www.a9note.com/takarakuji-tousensha/
僕がいつもジャンボ宝くじを買っている店舗はこちら。(クリックで拡大)
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「宝くじが当たったら (講談社文庫) :安藤祐介」(Kindle版)
プロローグ
第1章:ぼくは辞めません
第2章:吉事、千里を走る
第3章:33歳で大ブレイク
第4章:持っちゃった人
第5章:札束でかがり火を焚く
第6章:諭吉のリトマス試験紙
第7章:ひとりぼっちのあいつ
第8章:人として人に迷う
第9章:それでも人しか愛せない
エピローグ
内容紹介:
32歳、わくわく食品経理課勤務、独身。ごく普通のサラリーマン・修一の趣味は宝くじをバラで10枚買うこと。ところが今年、一等、2億円が降ってきた。あくまで堅実でつつましい生活を続けようとした修一の目の前に、急に現れた親戚、慈善団体に同級生。さらにネットに実名が流出、会社の電話が鳴りやまない! 最高の幸福が招いた大混乱、いったい誰を信じれば? ジャンボなドリーム、宝くじエンタテインメント!
2015年12月刊行、304ページ。
著者について:
安藤祐介
1977年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、学習塾に入社するも過労で倒れて退職、2社目の酒類業界新聞社では試用期間で解雇通告を受ける。その後は営業職としてITベンチャー3社を渡り歩き、現在公務員。2007年、『被取締役新入社員』でTBS・講談社第1回ドラマ原作大賞を受賞。(著書を検索)
先日紹介した映画『インセプション(2010)』と同様、今回も「夢」にまつわる記事。
昨年末に3枚だけ買った年末ジャンボ宝くじのうち1枚が3000円当たった。ジャンボ宝くじはいつも3枚買っていて、昨年のハロウィンジャンボと一昨年の年末ジャンボは、それぞれ300円ずつ当たっている。ときどき3000円当たるので、過去の勝ち負けをならすと損も得もしていない。(運が強いほうだと思う。)
当せん番号
豆知識: 宝くじでは「当せん」のようにひらがなで表記する。漢字だと「当籤(とうせん)」となって読めない人がでるからだ。「当選」は選挙で選ばれるときや、懸賞などで選抜されるときに使う。
1等の7億円が当せんする確率は、北海道全体で3枚だけ落ちてくる1円玉が頭にぶつかる確率くらいだとか、隕石に当たって死ぬ確率くらいだとか言われている。
ジャンボ宝くじの1等当せん確率は雷に撃たれるのと同じ!?
https://matome.naver.jp/odai/2140479404950634801
当せん確率や当せん金の期待値を考えたら、ナンバーズのほうがずっと有利なのだ。でも、僕がジャンボ宝くじを選ぶのは「夢を買う」からなのだろう。購入日から抽選会の日までワクワクしていられるからだ。
「1等が当たったらどうしよう?」、「どんなことが待ち受けているのだろうか?」そのような妄想に満たれて、過ごす数週間に対して払う対価だと思ったらハズレてもがっかりしない。僕が買うのは毎回3枚だけなのだから。
本書はこのような妄想をシミュレーションするための本である。完全なシミュレーション本であり、実際の当せん者の「その後の人生」を書いたドキュメンタリー本ではない。
もし、自分が同じテーマで小説を書くとしたらと考えると、ストーリーはかなり制限されてくると思った。テーマを自由に選べる小説と違い、1等の当せん後に予想されることはだいたい同じだからである。
- 当せん者はごく普通の一般庶民(会社社長や有名人であってはならない。)
- 当せんがわかったときの驚き
- 銀行での説明や手続き
- 秘密を守ることの難しさ
- 家族や親族の反応
- 「秘密はあり得ない」ことを思い知る
- 友達にばれてしまう
- 募金・寄付依頼の電話、断ると「それでも人間ですか!」と非難される
- 投資話、儲け話の電話
- 人間不信になる
- ネットに拡散、炎上してしまう。
- 嫌がらせや脅迫電話
- 借金や支払いの無心を受ける
- 同僚のやっかみ、人間関係の変化、交友関係の変化
- 飲み会やパーティー、結婚式、家の改築など増え続ける出費
- 詐欺にあったり闇金から強迫を受けたりする
- あっという間にお金がなくなる
つまり、この流れになることがほぼ決まっているのだ。この流れを守りながら、どれくらい面白い文章を書けるか、読者を楽しませることができるかが、作家の技量にかかってくる。このテーマの本に「意外性」を求めてはいけない。「宝くじが当たったら」は数ある小説のひとつのジャンル、お題目なのである。
読んでみたところ、まあまあ面白かった。小説としては上手に書かれている。本書で主人公が1等で受け取るのは2億円である。微妙な金額だ。32歳だから会社を辞めるまでの決断はできない。まさか当せんするとは思っていなかったから、どのように使ったらよいか大いに悩むわけである。
世の中には億単位の資産を持っている人がたくさんいるわけだから、2億円はたいした金額ではない。ちゃんと管理しようとすればできるのである。しかし、そのような大金を持ったことがない人だと、よほど注意しなければ同じような末路をたどることになるのだ。
当せんすることで不幸にならないようにと、1000万円以上の高額当せん者に渡されるのが「【その日】から読む本」とう小冊子。非売品である。(内容全文はこのページに公開されている。)
この冊子は、たまにヤフオクに出品されていて、相場はこのとおり。(画像クリックで拡大)
幸運な人だけが手に取れる【その日から読む本】とは?
https://matome.naver.jp/odai/2139381299063048901
宝くじ高額当せん者だけに配布される冊子に書かれた「驚愕の注意点」…不幸なトラブルも多数
http://biz-journal.jp/2017/01/post_17823.html
一般庶民がいきなり大金を手にすると、ろくなことにはならない。そうは言っても、現在のジャンボ宝くじの1等は7億円である。
もし7億円あったら、自分は何をするだろう?
ふたたび大学を受験して物理学を専攻し、研究者への道を目指してみたい。(趣味で博士課程、趣味でポスドク、趣味で物理学者をするのである。)時間がたくさんあるから「とね日記」も毎日更新することになるだろう。
実際はそうはならず、自堕落で贅沢な生活に流れてしまうのだろうなぁ。本書が示す不幸へのルートを脱して、本当の夢を追うのは相当むずかしそうだ。
宝くじに当たった人は人生変わったのか?高額当せん者6人の使い道
https://www.a9note.com/takarakuji-tousensha/
僕がいつもジャンボ宝くじを買っている店舗はこちら。(クリックで拡大)
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プロローグ
第1章:ぼくは辞めません
第2章:吉事、千里を走る
第3章:33歳で大ブレイク
第4章:持っちゃった人
第5章:札束でかがり火を焚く
第6章:諭吉のリトマス試験紙
第7章:ひとりぼっちのあいつ
第8章:人として人に迷う
第9章:それでも人しか愛せない
エピローグ