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番組の感想:NHK-BS1「神の数式 完全版」

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今日から4夜に渡って放送されるNHK-BS1「神の数式 完全版」。番組を見た後の感想記事だ。毎晩放送後に書き足していくことにしよう。

9月に放送された番組から追加された箇所と変更された箇所について、それぞれ良かった点、不満に思った点を書き出すことにした。

第1回 「この世は何からできているのか〜美しさの追求 その成功」

良かった点:

- ヒッグス粒子の発見、ヒッグス博士の紹介

番組冒頭でヒッグス粒子の発見、12月10日にノーベル物理学賞を受賞したヒッグス博士が映像で紹介されていた。

参考記事:速報:2013年ノーベル物理学賞はヒッグス博士とアングレール博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e4c4d6d15d52e86a94caccd6da8edb5e

- 自発的対称性の破れの持つ意味

倒れる鉛筆が意味するところの自発的対称性の破れが南部陽一郎博士の発見であることは9月の番組でも紹介されていたが、それがヒッグス粒子の発見と素粒子の数式の扉を開けるきっかけになったことが明確に述べられていた。

- 素粒子の数式の最初のLの意味

素粒子の数式の最初のLがこの世のすべての数式をあらわすという宣言であることが述べられていた。このLはラグランジアン密度と呼ばれる量であるが9月の放送では全く触れられていなかった。

- ポール・ディラックの娘さん

ディラックの娘さんが登場し、ディラックの几帳面な性格をうかがわせる逸話が紹介されていた。

晩年のディラック博士による量子力学の講義(Paul Dirac: 1902-1984) 動画は途中から安定します。



- 反粒子、反物質について

ディラック方程式から反粒子(電子に対する陽電子)の存在も予言され、それが実験で確認されていたことが紹介されていた。

参考記事:ディラックによる陽電子の予言(1928年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0764eaa33a765ffff27bccee3e35b4f3

- 並進対称性について

並進対称性の例として東京とテキサスでは物理法則が同じであることが紹介されていたこと。

- 戦時中の朝永博士のこと

9月の放送では戦時中に朝永博士が研究チームを率いて困難な状況の中で研究を続けていたという説明だったが、今回の放送では「軍から命じられた研究を行ないながらも、同僚たちと協力して密かに電磁気力の研究を進めていた。」と正確な説明がされていたこと。

- くりこみ理論について

朝永博士、ファインマン博士、シュウィンガー博士がそれぞれ独立して発見した「くりこみ理論」のことがきちんと「くりこみの手法」として説明されていたこと、3種類のくりこみの手法があることが紹介されていた。9月の放送では「特殊な計算方法」というあいまいな呼び方で紹介されていた。

- ミルズ博士

ヤン博士だけでなくミルズ博士も紹介され、非可換ゲージ理論がお二人の業績であることが説明されていた。9月の放送ではヤン博士だけ紹介されていた。

不満に思った点:

- シュレーディンガー方程式

ディラック方程式の元となったシュレーディンガー方程式が紹介されていたが、この方程式が量子力学というミクロの世界の基礎方程式であることに言及してほしかった。その意味を解説するには時間が足りないが、そのような紹介をするだけで素粒子の数式が量子力学という理論とつながりがあることが視聴者に伝わると思う。

- 非可換ゲージ対称性

9月の放送では全く解説されていなかったが、今回は陽子(P)と中性子(N)の例を紹介して説明を試みていたのは良かった。ただ、この説明だと「非可換」であることの意味合いが視聴者に伝わらない。ヤン-ミルズ理論を説明するにはワインバーグ-サラム理論(SU(2)×U(1)対称性)やクォークの理論(量子色力学=QCD、SU(3)対称性)を紹介すべきで、この番組で説明するのはとても無理だが、あと2〜3分くらい時間をとれば「非可換な回転」という意味だけでもある程度伝えることができたと思う。

非可換な回転については、このページの説明がわかりやすい。

無限小回転1(物理のかぎしっぽ)
http://hooktail.sub.jp/mechanics/infinitesimalRot1/


参考図書:第1回放送分の内容をより深く理解したい方には次の本をお勧めしたい。

強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

ヒッグス粒子の発見:イアン・サンプル
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/46c46f676c631634b83fb9616161ec4d

物理法則はいかにして発見されたか:R.P.ファインマン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ab31086d3d97f72d800893033189592d

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学: R.P.ファインマン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4b34cd4e7d077d037022e62734d1ee76


第2回 「“重さ”はどこから生まれるのか〜自発的対称性の破れ」

第3回 「宇宙はなぜ始まったのか〜残された“最後の難問”〜」

第4回 「異次元宇宙は存在するか〜超弦理論“革命”〜」


★ 番組情報 ★
NHK-BS1「神の数式 完全版」全4回

12月24日(火)〜27(金)午後7時00分〜7時50分

人類の思索の歴史。それは、全宇宙の謎を解く唯一無二の“神の数式”を追い求めた歴史でもあった。ニュートン、アインシュタイン以来、科学者たちは「あらゆる自然現象は、最終的には一つの数式で説明できるはずだ」と信じてきたのだ。そしてノーベル賞を受賞したヒッグス粒子の発見によって、人類はその究極の数式の輪郭をつかもうとしている。9月に放送し大きな反響を得た番組を4回シリーズの「完全版」として届ける。
【出演】オジェル・ノザキ,【語り】小倉久寛

神の数式 完全版
12月24日(火)午後7:00〜7:49 第1回 「この世は何からできているのか〜美しさの追求 その成功」
12月25日(水)午後7:00〜7:49 第2回 「“重さ”はどこから生まれるのか〜自発的対称性の破れ」
12月26日(木)午後7:00〜7:49 第3回 「宇宙はなぜ始まったのか〜残された“最後の難問”〜」
12月27日(金)午後7:00〜7:49 第4回 「異次元宇宙は存在するか〜超弦理論“革命”〜」


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