「数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学:大栗博司」(Kindle版)
内容紹介:
考える力・創造する力がグングン伸びる。
人生がもっとワクワクしてくる。
基礎の基礎から役立つ話、驚く話、美しい話まで。
楽しみながら学ぶ、数と論理の世界。
数学は、英語や日本語では表すことができないくらい、シンプルに正確にそして本質的に、物事を表現するために作られた言葉です。だから数学がわかれば、これまで見えなかったことが見えるようになり、言えなかったことが言えるようになり、考えたこともなかったことが考えられるようになります。
本書では、世界的に有名な物理学者である著者が、高校生になる娘に語りかけるかたちをとりながら、驚きと感動に満ちた数学の世界を道案内します。イラスト多数。
自分の頭で考える。物事の本質を捉える。新しい価値を創造する。君が幸せに生きていくための魔法の言葉を教えよう。楽しく学ぶ数学入門。2015年3月刊行、263ページ。
著者について:
大栗博司(おおぐりひろし):ホームページ: http://ooguri.caltech.edu/japanese
カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長、フレッド・カブリ冠教授、数学・物理・天文部門副部門長。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員も務める。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。東京大学助手、プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。専門は素粒子論。2008年アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)、高木レクチャー(日本数学会)、09年フンボルト賞、仁科記念賞、12年サイモンズ研究賞授賞。アスペン物理学センター理事、アメリカ数学会フェロー。著書に『重力とは何か』『強い力と弱い力』(ともに幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス、講談社科学出版賞受賞)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)、『マンガでわかる超ひも理論』(監修、サイエンス・アイ新書)がある。
理数系書籍のレビュー記事は本書で271冊目。
科学ファンなら誰でも知っている物理学者の大栗博司先生が一般向けの数学書をお書きになった。発売前からネット上の反響は大きく、3月18日に発売されたばかりなのにAmazonでは「科学テクノロジー部門」でのベストセラーで3位にランクインしている。あらゆるジャンルを含めた一般のランキングではなんと106位。数式がたくさん書かれている数学書としては極めて異例だと思う。僕も発売と同時に購入し、さっそく読ませていただいた。
先生がこれまでお書きになった物理学の教養書が「です/ます調」で書かれているのに対し、今回は娘さんに語りかける「である調」のスタイルだ。文体を変えるだけで雰囲気はずいぶん変わるものだなぁというのが第一印象だった。
先生の娘さんについては、朝日カルチャーセンターの物理学講座でLHCが建設中に、素粒子加速器を背景に撮られた子供の頃の写真を見せていただいたことがある。先生は超多忙な方だから、ご家族とゆっくり話をする時間をとれているだろうかとか、娘さんに数学や理科を教えることはあるのかなとか、よそのご家庭のことなのにあれこれ想像しながら僕は物理学講座を聞いていた。(先生の奥様が書いているブログに本書のことが紹介されていて、その中に子供のころの娘さんと先生のお写真が公開されている。その記事はこちらをクリック。)
無事第一志望の高校に合格し、寄宿舎生活を始める娘さんへの愛情と期待がこめられた本である。科学に数学は不可欠であるだけでなく、人生を生きていくうえでも数学はこれほど大きな意味をもつのだいうことが明快に示されている本なのだ。
数学嫌いの子供は「数学っていったい何の役に立つのかわからない。数学使わなくても生きていけるでしょ!」と思いがちだが、本書を読めば、たとえ半分くらいしか理解できなかったとしても、大いに刺激を受けることだろう。そんな力を持った本である。
本書の中でいちばん僕の印象に残ったのは「数学は人間の都合とはお構いなしに、自分自身の生命を持って発展していく。」という言葉だった。
大栗先生は刊行に合わせて特設ページを開設されている。本書をお読みになった後はぜひ確認してほしい。
『数学の言葉で世界を見たら』 特設ページ
https://ooguri.caltech.edu/japanese/mathematics
章立ては次のとおり。「第4話 素数はふしぎ」と「第9話「難しさ」「美しさ」を測る」は昨年9月に「素数の話、解の公式の話(朝日カルチャーセンター)」を受講していたから僕にとっては既習の内容だ。
第1話 不確実な情報から判断する
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
第3話 大きな数だって怖くない
第4話 素数はふしぎ
第5話 無限世界と不完全性定理
第6話 宇宙のかたちを測る
第7話 微積は積分から
第8話 本当にあった「空想の数」
第9話「難しさ」「美しさ」を測る
数学の話の中でも特に人気の高いテーマがこの1冊にたくさん詰め込まれているので、とても「お得感」がある。それは「本書で紹介する定理たち」の数を見るとおわかりだろう。また特設ページには、本書の付録として「補遺」が公開されていて、これがまた充実しているのだ。大学で数学を専攻していた僕にとっても読み応えのある内容である。
各話の感想を書いておこう。
第1話 不確実な情報から判断する
導入部の「つかみ」がとてもよい。当時全米の話題をさらったO.J.シンプソン事件と数学がどう関係してくるのか、読者はいきなり本書に没頭できると思った。彼は妻を殺したのかどうか?弁護団の1人の主張によれば「妻を虐待している夫の中で妻を殺してしまう夫は2500人に1人しかいない。」そうなのだ。確率としてはものすごく小さい。でもこれは彼が無実だということを示しているのだろうか?大栗先生は「条件付き確率」や「ベイズの定理」を解説しながら、この問題をどう考えるべきかを明らかにしている。アメリカは陪審員制、日本では裁判員制だが、その立場になる可能性は誰にでもある。将来自分がこのような確率の問題にごまかされないようにするためにも、ベイズの定理は大切なのだということが強く印象付けられる。
また乳がん検診を受ける意味はあるのか?原発に重大事故が再び起こる確率を計算することも、そのような確率が計算できることに驚きながら、自分自身のこととして確率の計算が重要な意味を持っていることを納得できるはずだ。
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
この章でいう「基本原理」とは足し算や掛け算の分配則、結合則、交換則のことだ。これらを学校で学んだとき、みなさんはどのような気持になっただろうか。僕の場合「そんなの当たり前じゃん!」だった。けれども、第2話ではこれらの法則が思いもよらない威力を発揮するのを知ることになるだろう。
人類が数の概念としてゼロ、マイナスの数を受け入れるのが容易でなかったことは数学史が示しているとおりだ。(-1)×(-1)はなぜ1になるか、うまい説明ができないかと頭をひねって考えたことがある方もいるに違いない。ところが分配則、結合則を使うことでゼロやマイナスの数の存在や(-1)×(-1)はなぜ1になるかが自然に導き出せるのだ。
また連分数の話題も興味深かった。連分数は面白いけど何の役に立つのだろう?円周率の近似値が355/113であることは連分数を使って導くのだ。また「暦」を作るためにも連分数が活躍する。そしてこの章で紹介されているのが冲方丁の小説「天地明察」である。
「天地明察(上) :冲方丁」(Kindle版)
「天地明察(下) :冲方丁」(Kindle版)
第3話 大きな数だって怖くない
数学では解を厳密に求めるのが普通だが、概数を知ることも大切なことだ。その例として取り上げられているのが「フェルミ推定」である。「大気中の二酸化炭素の増加量」や「人類のエネルギー消費量、二酸化炭素排出量」など、日ごろの生活で気になる数値を求めることができるのだ。フェルミ推定は昨年放送された「NHK宇宙白熱教室:第2回:物理学者の秘密のお仕事 ~物事を大ざっぱに捉える!~」で取り上げられていたので、ご存知の方も多いだろう。さまざまな例を通して「勘」をつかむことが大事だと思った。
概数で重要なのは「対数」である。対数の発見は天文学者の計算にとてつもない省力化をもたらした。昨年僕が購入した明治時代の対数表のことを「五桁ノ 對數表 及 三角函數表:えふ.げい.がうす著」という記事で紹介していたことを思い出した。
第4話 素数はふしぎ
素数については語るべきことが多く、これだけのページ数にまとめていらっしゃることに僕は驚いた。昨年9月の朝日カルチャーセンターの講座でしっかりノートをとっていたが、細かいところを忘れてしまっている。第4話は僕にとってよい復習になった。
また、クレジットカード番号を守る「公開カギ暗号」に素数が使われているのはよく知られているが、一般の方はその計算手順はとてつもなく難しいと誤解している人もいると思う。本書で解説されている説明を理解できれば大いに自信がつくことだろう。
素数や初等整数論については昨年の秋に「素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武」という記事を書いたので、さらに学んでみたい方はこの本をお読みになるとよいだろう。
第5話 無限世界と不完全性定理
ホテル・カリフォルニアは僕にとっても懐かしい曲である。この曲は高校時代によく流れていたなぁという思いにとらわれたが、すぐ「なぜ、ホテルカリフォルニアなの?」と我に返り、先を読み進めることになる。
私たちが認識できるのは有限の数だ。でも「無限の世界」を数学が取り込むことで、日常感覚ではとても理解しがたいことが導かれてくるのだ。
第5話のテーマは「メタ数学」。数学基礎論という分野のことで、数学自身のことを数学を使って研究するものだ。その中でもいちばん有名な「ゲーデルの不完全性定理」の内容を初心者にもわかるように説明しているのが素晴らしいと思った。
大栗先生がここで紹介している本については「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩」という記事で僕のブログでも紹介したことがある。ぜひこの本もお読みになってほしい。
また第5話のゲーデルの不完全性定理に対する誤解の文脈で紹介されていた「「知」の欺瞞」とはこの本のことだ。
「「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用 (岩波現代文庫):アラン・ソーカル, ジャン・ブリクモン」
第6話 宇宙のかたちを測る
第6話の意味はとても深い。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の話である。なぜ深いかというと「デカルト座標」の発見の偉大さを気がつかせてくれるからだ。私たちが数学を学ぶとき「座標」は当たり前のように使われている。けれどもよく考えてみれば、それ以前の幾何学は座標のない世界だ。初等幾何学の証明を解いたときには座標を気にせず、長さと角度だけを使っていたことを思い出してほしい。デカルト座標を導入することで初めて幾何の問題は代数の問題として解けるようになったのだ。
先生が紹介していたデカルトの「方法序説」は文庫本やKindle版で読むことができる。
「方法序説 (岩波文庫):デカルト」(Kindle版)
またここで紹介されていた「一生忘れないピタゴラスの定理の証明法」のことも僕は知らなかった。確かにこれは素晴らしい!
そして最後に大宇宙に描く巨大な3角形を測ることで、3次元の宇宙空間の曲率を計算することを学ぶ。これについては昨年放送された「NHK宇宙白熱教室:第4回:そしてダークエネルギーの発見 ~私たちのみじめな最後~」でも取り上げられていた。
第7話 微積は積分から
第7話は「高校数学で微積分は習ったけれど、何のことだか結局わからなかった。」という人にはうってつけの内容だ。本書を読むと科学史では積分→微分の順に発見されていたということが新鮮に思えるかもしれない。それは微分のほうが「極限」という高度な概念の理解が必要だったからだ。数学において何が高度で何がそうでないかということを考えさせてくれるのがよいと思う。
最後のほうで指数関数の微分と積分を取り上げているところは、次の第8話に話をつなげやすくするためかなと思った。
微分、積分についてさらに深く学んでみようという方には次の2冊を僕はお勧めしたい。
「改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平」
「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」
第8話 本当にあった「空想の数」
虚数や複素数が第8話のテーマだ。出だしの「空想の数」という話がとても面白かった。2歳から7歳ぐらいの子供は「空想の友達」、つまり想像上の友達を持つことがあるという話だ。空想の友達は子供が小学校にあがるころにはいなくなってしまうのだが、空想の数はいなくならない。虚数の実在性は数学の世界の中で確固たるものとして受け入れられていく。
ここでそれを裏付けるのに用いられたのは「加法定理」である。第2話で強調されていた基本原理の大切さがここでも示されているのがよいと思った。加法定理の重要性については、先日たまたま僕は「複素数 a+bi のプラス記号は「足す」という意味?」という記事で紹介したばかりだ。
そしてこの話の最後では、その後の数学や科学の発展に大きな役割を果たす「オイラーの公式」が紹介される。
第9話 「難しさ」「美しさ」を測る
本書でいちばん難しいのが第9話、群論とガロア理論の話だ。朝日カルチャーセンターの講座で学んだことのうち、いちばん復習したかったのがこの部分だ。
「群」は図形の対称性を表しているだけでなく、代数方程式の解のあり様と密接に結びついている。5次以上の方程式の解はべき根で表すことができないことをガロア理論で証明できる。
アーベルが証明したのは「5次方程式の解の公式が存在しないこと。」であり、ガロアが発見したのしたのは「あらゆる次数の方程式について、その方程式がべき根で解けるかどうかを判定する方法」だ。両者を区別して覚えておくのは大切だ。
この話の中で先生がお勧めしているのが「群の発見:原田耕一郎」である。また先生は「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩」もお勧めになっている。最近の動向にもアンテナを張っていらっしゃることに僕は驚かされた。
僕としてはひとつ前の記事で紹介した「ガロア理論の頂を踏む:石井俊全」もお勧めしておきたい。
本書の巻末で僕の目をひいたのは「参考文献」だ。内容は特設ページの中に公開されている。
この中には本書を書くにあたって先生が参考になった本とコメントが一覧されている。その中には若い頃先生が勉強に使われた本もある。私たちにとって、先生がどのような数学書で学ばれたかはとても興味があるところ。ぜひ確認してほしい。
先生が挙げた参考文献は「とね書店」の中の「大栗先生お勧め」のページにまとめておいた。Kindle版が出ている本もあるので、購入するときは電子書籍をまず確認してほしい。
本書はご自身でお読みになるだけでなく、友達や(高校生以上の)お子さんへのプレゼントとしてもふさわしい。ぜひお読みになっていただきたい。
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翌日に追記:
この感想文記事を大栗先生はさっそくご自身のブログで紹介してくださいました。
ケンブリッジ大学 その1(大栗博司)のブログ
http://planck.exblog.jp/23741943/
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関連記事:
重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69
強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177
大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863
素粒子論のランドスケープ:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5201583450c82ac59cb4d71efe52b3d9
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「数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学:大栗博司」(Kindle版)
はじめに - 父から娘に贈る数学
第1話 不確実な情報から判断する
- O.J.シンプソン裁判、弁護側教授の言い分
- まずはサイコロを振ってみる
- ギャンブルで負けない方法
- 条件付き確率とベイズの定理
- 乳がん検診は受ける意味がないのか
- 「経験に学ぶ」を数学的に学ぶ
- 原発重大事故が再び起こる確率
- O.J.シンプソンは妻を殺したか
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
- イノベーションを起こすために必要なこと
- 足し算、掛け算と3つの規則
- 引き算、そしてゼロの発見
- (-1)×(-1)はなぜ1になる?
- 分数があれば何でも割れる
- 仮分数→帯分数→連分数!
- 連分数で暦を作る
- 本当は認めたくなかった「無理数」
- 2次方程式の華麗な歴史
第3話 大きな数だって怖くない
- 世界初の原爆実験とフェルミ推定
- 大気中の二酸化炭素はどのくらい増えているか
-- 人類はどれくらいエネルギーを消費しているか
-- 人類はどれくらい二酸化炭素を排出しているのか
- 大きな数が出てきても恐れない
- 天文学者の寿命を2倍にした秘密兵器
- 福利効果を最大にする預金の方法とは?
- 銀行預金、倍になるのに何年かかる?
- 自然法則は「対数」で見抜ける
第4話 素数はふしぎ
- 純粋数学の華として
- 「エラトステネスの篩」で素数を見つける
- 素数は無限個ある
- 素数出現にはパターンがある
- 「パスカルの3角形」で素数を判定する
- フェルマー・テストに合格すれば素数?
- 通信の秘密を守る「公開カギ暗号」とは?
- クレジットカード番号を送る、受け取る
第5話 無限世界と不完全性定理
- ホテル・カリフォルニアにようこそ!
- 「1=0.99999・・・」は納得できない?
- アキレウスはカメに追いつけないのか
- 「今、私は嘘をついている」
- 「アリバイ証明」は「背理法」
- これがゲーデルの不完全性定理だ!
第6話 宇宙のかたちを測る
- 古代ギリシア人は地球の大きさをどう測ったか
- 基本の基本、3角形の性質
-- 「内角の和は180度」を証明する
-- 一生忘れない「ピタゴラスの定理」の証明法
- デカルト座標という画期的アイデア
- 6次元でも9次元でも10次元でも
- ユークリッドの公理が成り立たない世界
- 平行線公理だけが成り立たない世界
- 外から見ないでかたちを知る「驚異の定理」
- 1辺が100億光年の3角形を描く
第7話 微積は積分から
- アルキメデスからの手紙
- なぜ「積分から先に」なのか
- そもそも面積はどう計算する?
- どんな図形でもOK、「アルキメデスのはさみうち」
- 「積分」では何を計算しているのか
- いろいろな関数を積分してみる
- 飛んでる矢は止まっているか
- 微分は積分の逆
- 指数関数の微分と積分
第8話 本当にあった「空想の数」
- 空想の友達、空想の数
- どうしても出てくる「2乗して負になる数」
- 1次元の実数から2次元の複素数へ
- 複素数の掛け算は「回して伸ばす」
- 掛け算で導く「加法定理」
- 幾何の問題が方程式で解ける!
- 3角関数と指数関数をつないだオイラーの公式
第9話 「難しさ」「美しさ」を測る
- ガロア、20年の生涯と不滅の功績
- 図形の対称性とは何か
- 「群」の発見
- 2次方程式「解の公式」のひみつ
- 3次方程式はなぜ解けるのか
- 「方程式が解ける」とはどういうことか
- 5次方程式と正20面体
- ガロアからの最後の手紙
- 式の難しさと形の美しさ
- もうひとつの魂を得る
あとがき
補遺と参考文献
事項索引
人名索引
内容紹介:
考える力・創造する力がグングン伸びる。
人生がもっとワクワクしてくる。
基礎の基礎から役立つ話、驚く話、美しい話まで。
楽しみながら学ぶ、数と論理の世界。
数学は、英語や日本語では表すことができないくらい、シンプルに正確にそして本質的に、物事を表現するために作られた言葉です。だから数学がわかれば、これまで見えなかったことが見えるようになり、言えなかったことが言えるようになり、考えたこともなかったことが考えられるようになります。
本書では、世界的に有名な物理学者である著者が、高校生になる娘に語りかけるかたちをとりながら、驚きと感動に満ちた数学の世界を道案内します。イラスト多数。
自分の頭で考える。物事の本質を捉える。新しい価値を創造する。君が幸せに生きていくための魔法の言葉を教えよう。楽しく学ぶ数学入門。2015年3月刊行、263ページ。
著者について:
大栗博司(おおぐりひろし):ホームページ: http://ooguri.caltech.edu/japanese
カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長、フレッド・カブリ冠教授、数学・物理・天文部門副部門長。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員も務める。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。東京大学助手、プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。専門は素粒子論。2008年アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)、高木レクチャー(日本数学会)、09年フンボルト賞、仁科記念賞、12年サイモンズ研究賞授賞。アスペン物理学センター理事、アメリカ数学会フェロー。著書に『重力とは何か』『強い力と弱い力』(ともに幻冬舎新書)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス、講談社科学出版賞受賞)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)、『マンガでわかる超ひも理論』(監修、サイエンス・アイ新書)がある。
理数系書籍のレビュー記事は本書で271冊目。
科学ファンなら誰でも知っている物理学者の大栗博司先生が一般向けの数学書をお書きになった。発売前からネット上の反響は大きく、3月18日に発売されたばかりなのにAmazonでは「科学テクノロジー部門」でのベストセラーで3位にランクインしている。あらゆるジャンルを含めた一般のランキングではなんと106位。数式がたくさん書かれている数学書としては極めて異例だと思う。僕も発売と同時に購入し、さっそく読ませていただいた。
先生がこれまでお書きになった物理学の教養書が「です/ます調」で書かれているのに対し、今回は娘さんに語りかける「である調」のスタイルだ。文体を変えるだけで雰囲気はずいぶん変わるものだなぁというのが第一印象だった。
先生の娘さんについては、朝日カルチャーセンターの物理学講座でLHCが建設中に、素粒子加速器を背景に撮られた子供の頃の写真を見せていただいたことがある。先生は超多忙な方だから、ご家族とゆっくり話をする時間をとれているだろうかとか、娘さんに数学や理科を教えることはあるのかなとか、よそのご家庭のことなのにあれこれ想像しながら僕は物理学講座を聞いていた。(先生の奥様が書いているブログに本書のことが紹介されていて、その中に子供のころの娘さんと先生のお写真が公開されている。その記事はこちらをクリック。)
無事第一志望の高校に合格し、寄宿舎生活を始める娘さんへの愛情と期待がこめられた本である。科学に数学は不可欠であるだけでなく、人生を生きていくうえでも数学はこれほど大きな意味をもつのだいうことが明快に示されている本なのだ。
数学嫌いの子供は「数学っていったい何の役に立つのかわからない。数学使わなくても生きていけるでしょ!」と思いがちだが、本書を読めば、たとえ半分くらいしか理解できなかったとしても、大いに刺激を受けることだろう。そんな力を持った本である。
本書の中でいちばん僕の印象に残ったのは「数学は人間の都合とはお構いなしに、自分自身の生命を持って発展していく。」という言葉だった。
大栗先生は刊行に合わせて特設ページを開設されている。本書をお読みになった後はぜひ確認してほしい。
『数学の言葉で世界を見たら』 特設ページ
https://ooguri.caltech.edu/japanese/mathematics
章立ては次のとおり。「第4話 素数はふしぎ」と「第9話「難しさ」「美しさ」を測る」は昨年9月に「素数の話、解の公式の話(朝日カルチャーセンター)」を受講していたから僕にとっては既習の内容だ。
第1話 不確実な情報から判断する
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
第3話 大きな数だって怖くない
第4話 素数はふしぎ
第5話 無限世界と不完全性定理
第6話 宇宙のかたちを測る
第7話 微積は積分から
第8話 本当にあった「空想の数」
第9話「難しさ」「美しさ」を測る
数学の話の中でも特に人気の高いテーマがこの1冊にたくさん詰め込まれているので、とても「お得感」がある。それは「本書で紹介する定理たち」の数を見るとおわかりだろう。また特設ページには、本書の付録として「補遺」が公開されていて、これがまた充実しているのだ。大学で数学を専攻していた僕にとっても読み応えのある内容である。
各話の感想を書いておこう。
第1話 不確実な情報から判断する
導入部の「つかみ」がとてもよい。当時全米の話題をさらったO.J.シンプソン事件と数学がどう関係してくるのか、読者はいきなり本書に没頭できると思った。彼は妻を殺したのかどうか?弁護団の1人の主張によれば「妻を虐待している夫の中で妻を殺してしまう夫は2500人に1人しかいない。」そうなのだ。確率としてはものすごく小さい。でもこれは彼が無実だということを示しているのだろうか?大栗先生は「条件付き確率」や「ベイズの定理」を解説しながら、この問題をどう考えるべきかを明らかにしている。アメリカは陪審員制、日本では裁判員制だが、その立場になる可能性は誰にでもある。将来自分がこのような確率の問題にごまかされないようにするためにも、ベイズの定理は大切なのだということが強く印象付けられる。
また乳がん検診を受ける意味はあるのか?原発に重大事故が再び起こる確率を計算することも、そのような確率が計算できることに驚きながら、自分自身のこととして確率の計算が重要な意味を持っていることを納得できるはずだ。
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
この章でいう「基本原理」とは足し算や掛け算の分配則、結合則、交換則のことだ。これらを学校で学んだとき、みなさんはどのような気持になっただろうか。僕の場合「そんなの当たり前じゃん!」だった。けれども、第2話ではこれらの法則が思いもよらない威力を発揮するのを知ることになるだろう。
人類が数の概念としてゼロ、マイナスの数を受け入れるのが容易でなかったことは数学史が示しているとおりだ。(-1)×(-1)はなぜ1になるか、うまい説明ができないかと頭をひねって考えたことがある方もいるに違いない。ところが分配則、結合則を使うことでゼロやマイナスの数の存在や(-1)×(-1)はなぜ1になるかが自然に導き出せるのだ。
また連分数の話題も興味深かった。連分数は面白いけど何の役に立つのだろう?円周率の近似値が355/113であることは連分数を使って導くのだ。また「暦」を作るためにも連分数が活躍する。そしてこの章で紹介されているのが冲方丁の小説「天地明察」である。
「天地明察(上) :冲方丁」(Kindle版)
「天地明察(下) :冲方丁」(Kindle版)
第3話 大きな数だって怖くない
数学では解を厳密に求めるのが普通だが、概数を知ることも大切なことだ。その例として取り上げられているのが「フェルミ推定」である。「大気中の二酸化炭素の増加量」や「人類のエネルギー消費量、二酸化炭素排出量」など、日ごろの生活で気になる数値を求めることができるのだ。フェルミ推定は昨年放送された「NHK宇宙白熱教室:第2回:物理学者の秘密のお仕事 ~物事を大ざっぱに捉える!~」で取り上げられていたので、ご存知の方も多いだろう。さまざまな例を通して「勘」をつかむことが大事だと思った。
概数で重要なのは「対数」である。対数の発見は天文学者の計算にとてつもない省力化をもたらした。昨年僕が購入した明治時代の対数表のことを「五桁ノ 對數表 及 三角函數表:えふ.げい.がうす著」という記事で紹介していたことを思い出した。
第4話 素数はふしぎ
素数については語るべきことが多く、これだけのページ数にまとめていらっしゃることに僕は驚いた。昨年9月の朝日カルチャーセンターの講座でしっかりノートをとっていたが、細かいところを忘れてしまっている。第4話は僕にとってよい復習になった。
また、クレジットカード番号を守る「公開カギ暗号」に素数が使われているのはよく知られているが、一般の方はその計算手順はとてつもなく難しいと誤解している人もいると思う。本書で解説されている説明を理解できれば大いに自信がつくことだろう。
素数や初等整数論については昨年の秋に「素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武」という記事を書いたので、さらに学んでみたい方はこの本をお読みになるとよいだろう。
第5話 無限世界と不完全性定理
ホテル・カリフォルニアは僕にとっても懐かしい曲である。この曲は高校時代によく流れていたなぁという思いにとらわれたが、すぐ「なぜ、ホテルカリフォルニアなの?」と我に返り、先を読み進めることになる。
私たちが認識できるのは有限の数だ。でも「無限の世界」を数学が取り込むことで、日常感覚ではとても理解しがたいことが導かれてくるのだ。
第5話のテーマは「メタ数学」。数学基礎論という分野のことで、数学自身のことを数学を使って研究するものだ。その中でもいちばん有名な「ゲーデルの不完全性定理」の内容を初心者にもわかるように説明しているのが素晴らしいと思った。
大栗先生がここで紹介している本については「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩」という記事で僕のブログでも紹介したことがある。ぜひこの本もお読みになってほしい。
また第5話のゲーデルの不完全性定理に対する誤解の文脈で紹介されていた「「知」の欺瞞」とはこの本のことだ。
「「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用 (岩波現代文庫):アラン・ソーカル, ジャン・ブリクモン」
第6話 宇宙のかたちを測る
第6話の意味はとても深い。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の話である。なぜ深いかというと「デカルト座標」の発見の偉大さを気がつかせてくれるからだ。私たちが数学を学ぶとき「座標」は当たり前のように使われている。けれどもよく考えてみれば、それ以前の幾何学は座標のない世界だ。初等幾何学の証明を解いたときには座標を気にせず、長さと角度だけを使っていたことを思い出してほしい。デカルト座標を導入することで初めて幾何の問題は代数の問題として解けるようになったのだ。
先生が紹介していたデカルトの「方法序説」は文庫本やKindle版で読むことができる。
「方法序説 (岩波文庫):デカルト」(Kindle版)
またここで紹介されていた「一生忘れないピタゴラスの定理の証明法」のことも僕は知らなかった。確かにこれは素晴らしい!
そして最後に大宇宙に描く巨大な3角形を測ることで、3次元の宇宙空間の曲率を計算することを学ぶ。これについては昨年放送された「NHK宇宙白熱教室:第4回:そしてダークエネルギーの発見 ~私たちのみじめな最後~」でも取り上げられていた。
第7話 微積は積分から
第7話は「高校数学で微積分は習ったけれど、何のことだか結局わからなかった。」という人にはうってつけの内容だ。本書を読むと科学史では積分→微分の順に発見されていたということが新鮮に思えるかもしれない。それは微分のほうが「極限」という高度な概念の理解が必要だったからだ。数学において何が高度で何がそうでないかということを考えさせてくれるのがよいと思う。
最後のほうで指数関数の微分と積分を取り上げているところは、次の第8話に話をつなげやすくするためかなと思った。
微分、積分についてさらに深く学んでみようという方には次の2冊を僕はお勧めしたい。
「改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平」
「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」
第8話 本当にあった「空想の数」
虚数や複素数が第8話のテーマだ。出だしの「空想の数」という話がとても面白かった。2歳から7歳ぐらいの子供は「空想の友達」、つまり想像上の友達を持つことがあるという話だ。空想の友達は子供が小学校にあがるころにはいなくなってしまうのだが、空想の数はいなくならない。虚数の実在性は数学の世界の中で確固たるものとして受け入れられていく。
ここでそれを裏付けるのに用いられたのは「加法定理」である。第2話で強調されていた基本原理の大切さがここでも示されているのがよいと思った。加法定理の重要性については、先日たまたま僕は「複素数 a+bi のプラス記号は「足す」という意味?」という記事で紹介したばかりだ。
そしてこの話の最後では、その後の数学や科学の発展に大きな役割を果たす「オイラーの公式」が紹介される。
第9話 「難しさ」「美しさ」を測る
本書でいちばん難しいのが第9話、群論とガロア理論の話だ。朝日カルチャーセンターの講座で学んだことのうち、いちばん復習したかったのがこの部分だ。
「群」は図形の対称性を表しているだけでなく、代数方程式の解のあり様と密接に結びついている。5次以上の方程式の解はべき根で表すことができないことをガロア理論で証明できる。
アーベルが証明したのは「5次方程式の解の公式が存在しないこと。」であり、ガロアが発見したのしたのは「あらゆる次数の方程式について、その方程式がべき根で解けるかどうかを判定する方法」だ。両者を区別して覚えておくのは大切だ。
この話の中で先生がお勧めしているのが「群の発見:原田耕一郎」である。また先生は「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理:結城浩」もお勧めになっている。最近の動向にもアンテナを張っていらっしゃることに僕は驚かされた。
僕としてはひとつ前の記事で紹介した「ガロア理論の頂を踏む:石井俊全」もお勧めしておきたい。
本書の巻末で僕の目をひいたのは「参考文献」だ。内容は特設ページの中に公開されている。
この中には本書を書くにあたって先生が参考になった本とコメントが一覧されている。その中には若い頃先生が勉強に使われた本もある。私たちにとって、先生がどのような数学書で学ばれたかはとても興味があるところ。ぜひ確認してほしい。
先生が挙げた参考文献は「とね書店」の中の「大栗先生お勧め」のページにまとめておいた。Kindle版が出ている本もあるので、購入するときは電子書籍をまず確認してほしい。
本書はご自身でお読みになるだけでなく、友達や(高校生以上の)お子さんへのプレゼントとしてもふさわしい。ぜひお読みになっていただきたい。
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翌日に追記:
この感想文記事を大栗先生はさっそくご自身のブログで紹介してくださいました。
ケンブリッジ大学 その1(大栗博司)のブログ
http://planck.exblog.jp/23741943/
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関連記事:
重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69
強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177
大栗先生の超弦理論入門:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/75dfba6307d01a5d522d174ea3e13863
素粒子論のランドスケープ:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5201583450c82ac59cb4d71efe52b3d9
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はじめに - 父から娘に贈る数学
第1話 不確実な情報から判断する
- O.J.シンプソン裁判、弁護側教授の言い分
- まずはサイコロを振ってみる
- ギャンブルで負けない方法
- 条件付き確率とベイズの定理
- 乳がん検診は受ける意味がないのか
- 「経験に学ぶ」を数学的に学ぶ
- 原発重大事故が再び起こる確率
- O.J.シンプソンは妻を殺したか
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
- イノベーションを起こすために必要なこと
- 足し算、掛け算と3つの規則
- 引き算、そしてゼロの発見
- (-1)×(-1)はなぜ1になる?
- 分数があれば何でも割れる
- 仮分数→帯分数→連分数!
- 連分数で暦を作る
- 本当は認めたくなかった「無理数」
- 2次方程式の華麗な歴史
第3話 大きな数だって怖くない
- 世界初の原爆実験とフェルミ推定
- 大気中の二酸化炭素はどのくらい増えているか
-- 人類はどれくらいエネルギーを消費しているか
-- 人類はどれくらい二酸化炭素を排出しているのか
- 大きな数が出てきても恐れない
- 天文学者の寿命を2倍にした秘密兵器
- 福利効果を最大にする預金の方法とは?
- 銀行預金、倍になるのに何年かかる?
- 自然法則は「対数」で見抜ける
第4話 素数はふしぎ
- 純粋数学の華として
- 「エラトステネスの篩」で素数を見つける
- 素数は無限個ある
- 素数出現にはパターンがある
- 「パスカルの3角形」で素数を判定する
- フェルマー・テストに合格すれば素数?
- 通信の秘密を守る「公開カギ暗号」とは?
- クレジットカード番号を送る、受け取る
第5話 無限世界と不完全性定理
- ホテル・カリフォルニアにようこそ!
- 「1=0.99999・・・」は納得できない?
- アキレウスはカメに追いつけないのか
- 「今、私は嘘をついている」
- 「アリバイ証明」は「背理法」
- これがゲーデルの不完全性定理だ!
第6話 宇宙のかたちを測る
- 古代ギリシア人は地球の大きさをどう測ったか
- 基本の基本、3角形の性質
-- 「内角の和は180度」を証明する
-- 一生忘れない「ピタゴラスの定理」の証明法
- デカルト座標という画期的アイデア
- 6次元でも9次元でも10次元でも
- ユークリッドの公理が成り立たない世界
- 平行線公理だけが成り立たない世界
- 外から見ないでかたちを知る「驚異の定理」
- 1辺が100億光年の3角形を描く
第7話 微積は積分から
- アルキメデスからの手紙
- なぜ「積分から先に」なのか
- そもそも面積はどう計算する?
- どんな図形でもOK、「アルキメデスのはさみうち」
- 「積分」では何を計算しているのか
- いろいろな関数を積分してみる
- 飛んでる矢は止まっているか
- 微分は積分の逆
- 指数関数の微分と積分
第8話 本当にあった「空想の数」
- 空想の友達、空想の数
- どうしても出てくる「2乗して負になる数」
- 1次元の実数から2次元の複素数へ
- 複素数の掛け算は「回して伸ばす」
- 掛け算で導く「加法定理」
- 幾何の問題が方程式で解ける!
- 3角関数と指数関数をつないだオイラーの公式
第9話 「難しさ」「美しさ」を測る
- ガロア、20年の生涯と不滅の功績
- 図形の対称性とは何か
- 「群」の発見
- 2次方程式「解の公式」のひみつ
- 3次方程式はなぜ解けるのか
- 「方程式が解ける」とはどういうことか
- 5次方程式と正20面体
- ガロアからの最後の手紙
- 式の難しさと形の美しさ
- もうひとつの魂を得る
あとがき
補遺と参考文献
事項索引
人名索引